説明

煙道ガスの再循環を用いたガスタービン発電所を運転するための方法

【課題】 ガスタービン発電所を確実に運転するための方法を特定することを提供することである。
【解決手段】可変式圧縮機入口案内翼(38)が、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または煙道ガスの再循環の目安となる工程パラメータの関数として制御されることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙道ガスの再循環を用いたガスタービン発電所を運転するための方法、さらにこの方法を実施するためのガスタービン発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
煙道ガスの再循環は、ガスタービンにおいて基本的に多様な目的に使用できる技術である。従って、煙道ガスの再循環は、例えばNO排出(燃焼時に生成される酸化窒素の排出)の削減あるいは排出すべき煙道ガス流の削減のために提案される。ガスタービンにおける煙道ガスの再循環時に、煙道ガスの本質的割合は、煙道ガス流全体から分岐し、冷却及び洗浄を行われた後、ガスタービンの吸気質量流あるいは圧縮機に供給されるのが一般的であり、再循環された煙道ガス流は、外気と混合され、次いでこの混合物は圧縮機に供給される。
【0003】
煙道ガスの再循環の結果として、煙道ガス中の二酸化炭素の部分圧力が、煙道ガス中の二酸化炭素濃度を上げるために、従って二酸化炭素の分離による発電所の電力損失と効率損失を減らすために上昇されると有利である。さらに、結果としてNOの排出を削減するために、ガスタービンの吸気ガス内の酸素濃度を下げる目的で、煙道ガスの再循環が提案されてきた。
【0004】
煙道ガスの再循環のために、特許文献1には、例えばターボ機械の煙道ガスの再循環流を制御するための方法が記載されており、この煙道ガスの再循環流は、煙道ガスの再循環システムを経由してターボ機械の吸気口へと再循環される。この方法では、煙道ガス
の設定再循環率が確定され、煙道ガスの再循環率は、ターボ機械の吸気流に対する、再循環された煙道ガス流の割合として定義されており、実際の値は設定値に合わせて調節される。
【0005】
煙道ガスの再循環を始動させることにより、あるいは煙道ガスの再循環流を変化させることにより、ガスタービンを運転するための境界条件は、例えば、特許文献2から知られているような、従来の運転概念を使用した場合に、発電所がもはや期待された性能を証明しないか、あるいは期待された電力および効率の目標をもはや達成しないように変えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7536252号明細書
【特許文献2】欧州特許第0718470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様の一つは、ガスタービン発電所を確実に運転するための方法を特定することであり、この方法では、性能に関する、すなわち出力および/または効率による煙道ガスの再循環の影響の少なくとも一部は相殺される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
煙道ガスの再循環を用いたガスタービン発電所は、ガスタービンと、熱回収蒸気発電機と、煙道ガススプリッターを備えており、この煙道ガススプリッターは、ガスタービン発電所の煙道ガスを、ガスタービンの吸気ライン内に再循環させるための第一の煙道ガス流内と、周囲環境へ排出するための第二の煙道ガス流内へと分割し、前記ガスタービン発電所は、煙道ガスの再循環冷却器備えている。ガスタービンはそれ自体、可変式圧縮機入口案内翼を備えた圧縮機、燃焼室およびタービンを備えている。加えて、煙道ガススプリッターは、第一の煙道ガス流を制御するための制御要素として構成されているか、あるいは再循環された煙道ガスがガスタービンの圧縮機に供給されることを用いた再循環ライン内に制御要素を備えている。
【0009】
ガスタービン発電所を運転するための方法の一実施例によれば、可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環率の関数(さらに煙道ガスの再循環割合にも関係する)および/または煙道ガスの再循環を表示する発電所の工程パラメータの関数として制御される。この場合、例えば可変式圧縮機入口案内翼は、再循環が増すことにより広く開放される。すなわち、煙道ガス流全体に対する再循環された煙道ガスの比率が大きくなる。再循環流あるいは再循環率が、少なくとも定性的に同一視できるかあるいは引出すことができる値に基づいたパラメータあるいは値の変化は、単独でもしくは他のパラメータと組合せて、指示する工程パラメータとして理解すべきである。指示する工程パラメータは、再循環流のあるいは再循環率の定性的理論過程(quqlitative derivation)さえも認める。
【0010】
実施例に依存して、可変式圧縮機入口案内翼の制御部は、煙道ガスの再循環率の関数としておよび/または煙道ガスの再循環の目安になる発電所の工程パラメータの関数として、制御装置のあるいは制御アルゴリズムの論理回路内に一体化することができる。さらに制御部は補正またはオフセット量として計算でき、従って従来のガスタービン制御装置に影響を及ぼす設定変数は補正される。
【0011】
本方法の一実施例によれば、圧縮機入口温度と周囲温度の温度差は、可変式圧縮機入口案内翼が制御される関数としてのパラメータとして使用される。再循環された煙道ガスは周囲温度まで冷却されないので、圧縮機入口温度は再循環率と共に上がるのが一般的である。特に外気をヒートシンクとして利用する空気から空気への冷却器の場合、再循環された煙道ガスは、外気に比べて高温である。
【0012】
発電所の工程を最適化するために、またヒートシンクの有用性に依存して、循環された煙道ガスが煙道ガスの再循環冷却器内で冷却される再循環冷却温度は制御される。他方において、この再循環冷却温度は、例えば冷却水が利用できる場合、周囲温度未満であってもよい。その一方で、再循環冷却温度は周囲温度のわずかに上であってもよく、かつ例えば部分負荷運転中の発電所全体の効率を上げるために、空気から空気への冷却器と達成可能な温度より上に上げられてもよい。再循環冷却温度に加えて、発電所の工程に及ぼす循環された煙道ガスの影響は変化する。このことが、本方法の一実施例で、可変式圧縮機入口案内翼が煙道ガスの再循環冷却器の再循環冷却温度関数として制御できる理由である。
【0013】
再循環率の確定が、コスト的にかつ多くは、確定するのが難しい大体積流量のために実際には信頼性がないので、本方法の一実施例によれば、可変式圧縮機入口案内翼は、再循環のための第一の部分煙道ガス流が制御される制御要素の位置の関数として制御される。代替として、可変式圧縮機入口案内翼の設定位置の補正量は、制御要素の設定位置の関数として、制御装置において確定することができる。
【0014】
別の実施例で、可変式圧縮機入口案内翼は煙道ガスの再循環率に比例して、および/または煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータに比例して開放される。
【0015】
本方法の別の実施例で、可変式圧縮機入口案内翼が開放できる可変式圧縮機入口案内翼の全負荷位置は、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータの関数として制御される。
【0016】
可変式圧縮機入口案内翼を、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または煙道ガスの再循環の目安になるパラメータの関数として制御することにより、可変式圧縮機入口案内翼位置の補正量あるいはオフセット量は、従来の運転概念と比較して作られる。可変式圧縮機入口案内翼の開口部を含む、この補正の結果として、圧縮機の吸気体積流量は増える。従って、発電所に及ぼす煙道ガスの再循環の影響が相殺できる結果として、ガスタービンの出力は増す。さらに、廃熱ボイラと関連した水・蒸気のサイクルの出力は、煙道ガスの体積に比例する。同時に、ガスタービンの圧力比は体積流量と共に増える。これは主としてガスタービンの効率に役立つ効果を有しているが、一定の高温ガス温度により、ガスタービンの煙道ガス温度は下がる。
【0017】
圧縮機のサージ限界、許容圧縮機出口温度、もしくは冷却空気流出に関する圧縮機流出圧力の変化などの設計限界のために、可変式圧縮機入口案内翼は無作為に開放することはできない。従って本方法の一実施例によれば、可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または限界値に達するまでは、煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータの関数として開放される。煙道ガスの再循環率がさらに上昇中にでも
、補正はこれとは独立して一定に保たれる。
【0018】
本方法の一実施例によれば、可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環率が変化する間中、煙道ガスの温度が一定であるように開放される。本方法の別の実施例によれば、
可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環率が変化する間中、限界値に達するまで、
煙道ガスの温度が一定であるように開放される。
【0019】
本方法の別の実施例によれば、可変式圧縮機入口案内翼の開放の限界値は、運転周波数および/または圧縮機の空力学的回転速度の影響を受ける。
【0020】
本方法は、いわゆる2段燃焼を用いたガスタービン、すなわち、第一の燃焼室を備えたガスタービン、高圧タービン、第二の燃焼室を備えたガスタービンおよび低圧タービンについて言えば、一つの燃焼室を備えたガスタービンの場合に同等に実施することができる。
【0021】
運転開始時において、二段燃焼と煙道ガスの再循環を用いたガスタービンのための方法の他の実施例では、第一の燃焼室はまず第一に、燃料を供給され、それと共に点火され、次いで第一の燃焼室は燃料を供給され、それと共に点火され、煙道ガスの再循環は第二の燃焼室が始動した後にだけ開始される。従って、さらに可変式圧縮機入口案内翼の位置は、煙道ガスの再循環の関数として、および/または煙道ガスの再循環の目安となる工程パラメータの関数として第二の燃焼室の始動後にだけ制御される。加えて、煙道ガスの再循環は、第二の燃焼室が停止する前に停止され、従って可変式圧縮機入口案内翼の制御は、標準的な運転概念により、一般的には厳密に言えば、補正無しで再度行われる。
【0022】
本方法の別の実施例によれば、煙道ガスは二酸化炭素濃度を高める目的で再循環される。この方法を用いて、第二の煙道ガス流は二酸化炭素分離システムに供給される。これにおいて、二酸化炭素は分離され、かつ以後の処理あるいは保管のために排出される。結果として生じる、二酸化炭素を除去された煙道ガスは周囲に排出される。
【0023】
本方法の実施例に依存して、可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環の関数として、および/または煙道ガスの再循環の目安となる工程パラメータの関数として、部分負荷運転時または全負荷運転時に制御される。可変式圧縮機入口案内翼の制御が、部分負荷運転時にだけ引き受けられると、ガスタービン工程に及ぼす煙道ガスの再循環の影響の相殺は行うことができない。全負荷での制御には、可変式圧縮機入口案内翼をより広く開放するために設計されることが必要である。
【0024】
ガスタービン発電所を制御するための方法に加えて、この方法を実施するための、煙道ガスの再循環を用いたガスタービン発電所は本発明の主題である。このようなガスタービン発電所は、圧縮機と、可変式圧縮機入口案内翼と、燃焼室と、タービンと制御装置を有するガスタービンを備えている。加えて、このようなガスタービン発電所は、熱回収蒸気発電機と煙道ガススプリッターを備え、
この煙道ガススプリッターが、ガスタービン発電所の煙道ガスを、ガスタービンの吸気ライン内に再循環させるための第一の煙道ガス流内と、周囲環境へ排出するための第二の煙道ガス流内へと分割し、
さらに前記ガスタービン発電所が、第一の煙道ガス流を制御するための制御要素を備えている。この場合、可変式圧縮機入口案内翼の設定位置が、前記制御要素の位置の関数として制御されるように、前記制御装置は構成されている。
【0025】
加えて、工程関数のパラメータとして制御する際に、相応する測定センサを設けることができる。特に、圧縮機入口温度と周囲温度の温度差の関数として制御する場合に、圧縮機入口温度を測定するための測定センサと周囲温度を測定するための測定センサを設けるべきである。
【0026】
説明した長所はすべて、各々開示された組合せにおいて適用可能であるのと同時に、本発明の範囲を出ることなく、他の組合せあるいは分離して適用可能である。例えば、制御可能なフラップあるいは弁などの再循環の閉鎖を可能にする制御要素の代わりに、制御可能な煙道ガスの送風機またはブースターを制御要素として使用することもできる。単純性を出すために、可変式圧縮機入口案内翼制御部は、一般的に示した。これは閉ループ制御あるいは開ループ制御の場合に代表的である。二段制御、比例調節器、積分調節器あるいはIPコントローラを用いた制御などの異なる制御手法が当業者に知られている。加えて、再循環された煙道ガスが圧縮機内に導入される前に処理できる、ガス洗浄などの再循環された煙道ガスのための様々な洗浄方法あるいは処理方法が当業者に知られている。煙道ガス流は、煙道ガス質量流量及び煙道ガス体積流量に関する要約用語として使用される。制御システムと相当する方法は、煙道ガス質量流量及び煙道ガス体積流量の場合のどちらにも実施できる。
【0027】
本発明の好ましい実施例は、説明に理論的に応えるとともに限定しているものとしては解釈されない図に関する、以下のテキストに記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】煙道ガスの再循環を用いたガスタービン発電所を概略的に表した図である。
【図2】煙道ガスの二段燃焼と再循環を用いたガスタービン発電所を概略的に表した図である。
【図3】煙道ガスの再循環と二酸化炭素の分離システムを用いたガスタービン発電所を概略的に表した図である。
【図4】煙道ガスの再循環率の関数としての、圧縮機入口案内翼のオフセット量を概略的に示す図である。
【図5】煙道ガスの再循環の結果としての、周囲温度と比較した、増大した圧縮機入口温度の関数としての圧縮機入口案内翼の位置を概略的に示す図である。
【図6】煙道ガスの再循環を行わずに運転するための、および二つの異なる煙道ガスの再循環を用いて運転するためのガスタービンの相対負荷を超えた圧縮機入口案内翼の位置の曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0029】
図1には本発明によるガスタービン発電所の極めて重要な要素が概略的に示してある。ガスタービン6は圧縮機1を備えており、圧縮空気はその中で燃焼室4に供給され、かつそこで燃料5と共に燃焼される。高温燃焼ガスは、次いでタービン7内で膨張される。次いで、タービン7内で生成される有用なエネルギーは、例えば同一のシャフトに配置された第一の発電機25により電気エネルギーに変換される。
【0030】
タービン7から流出する煙道ガス8は、エネルギーを最適に利用するために使用され、さらにそこで蒸気タービン13あるいは他の発電所のための生蒸気30を生成するための熱回収蒸気発電機9(HRSG)内に収納されている。蒸気タービン13内で生成される有用なエネルギーは、例えば同一のシャフトに配置された第二の発電機26により、電気エネルギーに変換される。水・蒸気サイクルは、実例では単純化されており、凝縮器14と供給水ライン16により概略的にしか示していない。様々な圧力段、供給水ポンプ等は、本発明の主題でないので示していない。
【0031】
熱回収蒸気発電機9から来る煙道ガス19は、前記熱回収蒸気発電機9の運転下流側で、フロースプリッター29内で、第一部分煙道ガス流21と第二部分煙道ガス流24に分割される。第一部分煙道ガス流21は、ガスタービン6の吸気ラインに再循環され、かつそこで外気2と混合される。第二部分煙道ガス流24は、再循環されず、単排気管32を介して大気中に排出される。煙道ガスラインの圧力損失を克服するために、そして煙道ガス流の分配のための更なる制御の可能性として、煙道ガス送風機11または制御可能な煙道ガス送風機11を任意に設けることができる。
【0032】
再循環を用いた運転中は、再循環された煙道ガス流21は、凝縮器を備えることができる煙道ガスの再循環冷却器27内で丁度上記大気温度まで冷却される。再循環のためのブースターあるいは煙道ガス送風機11は、煙道ガスの再循環冷却器27の運転下流側に配置することができる。再循環された煙道ガス流21は、外気2と混合され、その後混合物は吸込み流として圧縮機入口3を経由してガスタービン6に供給される。
【0033】
記載した例では、フロースプリッター29は制御要素として構成されており、この制御要素により、再循環質量流量あるいは再循環率を制御することができる。フロースプリッター29の位置は、信号ライン28を経由して制御装置39に伝達される。可変式圧縮機入口案内翼(variable compressor inlet guide vanes)の位置は、フロースプリッター29の位置の関数として、標準の運転概念と比較して制御されるか、あるいは補正される。可変式圧縮機入口案内翼の設定位置と実際の位置の相当するデータ交換は、信号ライン37を介して行われる(従来の信号ライン、測定センサ及び制御要素は全て、本発明の主題でないので、明瞭さを良好にするために示していない)。
【0034】
図1の例には、単一燃焼室4を備えたガスタービン6が示してある。本発明は、例えば特許文献2から公知なので、二段燃焼を用いたガスタービンに関する限定が無くとも適用可能である。図2に概略的に示してあるのは、二段燃焼と再循環を用いたガスタービン発電所の例である。このガスタービンでは、第一の燃焼室4に高圧タービン33が続いている。一部が膨張した高圧タービン33の煙道ガスに、仕事の出力でもって、燃料5が再度供給され、かつ第二の燃焼室34内で燃焼される。さらに第二の燃焼室34高温燃焼ガスは、仕事の出力でもって、低圧タービン35内で膨張される。廃熱を利用し、さらに再循環を利用することも、図1の典型的実施例に相応するように実行される。再循環流を制御し、かつ遮断するために、非可調整であってもよい煙道ガススプリッター29に加えて制御要素36が設けられている。さらに制御要素36は信号ライン28を経由して制御装置39に接続している。
【0035】
図1に基づいた図3では、二酸化炭素分離システム18が付加的に示してある。非再循環式の第二の部分煙道ガス流20は、煙道ガスの再循環冷却器23内で冷却されるのが一般的であり、かつ二酸化炭素分離システム18に供給される。ここから、二酸化炭素除去煙道ガス(carbon dioxide-depleted flue gas)22は、単排気管32を経由して周囲環境に排出される。二酸化炭素分離システム18と煙道ガスラインの圧力損失を克服するために、煙道ガス送風機10が設けられていてもよい。二酸化炭素分離システム18内で分離された二酸化炭素31は、(図示していない)圧縮機で圧縮され、保管もしくは更なる処理のために排出されるのが一般的である。二酸化炭素分離システム18には、蒸気抽出ライン15を介して蒸気タービン13から取られる蒸気、一般的には中圧蒸気、あるいは低圧蒸気が供給される。二酸化炭素分離システム18内でエネルギーを放出した後、蒸気は水・蒸気サイクルに再度戻される。描いた例では、蒸気は凝縮戻りラインを経由して凝縮され、かつ供給水に加えられる。
【0036】
さらに第二の部分煙道ガス流は、バイパスフラップあるいは弁を備えた煙道ガスバイパス24を経由して直接単排気管32に接続されている。
【0037】
図1に示した典型的な実施例では、図3に示した例の煙道ガスの再循環システムは、再循環流を制御するための分離制御要素36を付加的に備えている。
【0038】
図4は、煙道ガスの再循環率FRGの関数としての、可変式圧縮機入口案内翼VGVの角度の補正量ΔVGVあるいはずれ量の典型的な実施例を概略的に示している。補正量は、小さい煙道ガスの再循環率FRGの場合の煙道ガスの再循環率FRGに初めは比例している。一般的に5°〜15°の間にある補正の限界値に達した後、補正量ΔVGVは、煙道ガスの再循環率FRGとは無関係に一定である。補正量ΔVGVは、補正値として制御装置で計算でき、かつ補正値として個別に出力でき、もしくは制御が補正されたVGV値で行われるように論理回路内に一体化することができる。
【0039】
図5は、可変式圧縮機入口案内翼の角度の補正量ΔVGVのための別の典型的な実施例を概略的に示している。この例では、補正量ΔVGVは、ガス再循環の結果としての、周囲温度に匹敵して増大する圧縮機入口温度ΔTに依存している。補正量ΔVGVは、小さい温度変化ΔTの場合、煙道ガスの再循環率に最初は比例する。一般的に5°〜15°の間にある補正の限界値に達した後、補正量ΔVGVは、温度変化ΔTとは無関係に一定である。
【0040】
図6は、ガスタービン6の相対負荷Prelを超える圧縮機入口案内翼位置VGVの曲線を概略的に示す。相対負荷Prelは、同じ境界条件を備えた、ガスタービン6の可能な全負荷出力に対する運転ポイントでの出力である。曲線はガスタービン6を運転するための三つの可能な方法のために示してある。第一の例で、ガスタービン6は煙道ガスの再循環無しで運転される。可変式圧縮機入口案内翼VGVは、煙道ガスの再循環の無い標準的な運転概念に従って運転される。第二および第三の描いた方法では、描いた例では相対負荷Prelの40%〜60%の間にある負荷ポイントにおいて、煙道ガスの再循環が開始され、煙道ガスの再循環率は負荷と共に増大する。煙道ガスの再循環率が上がることにより、可変式圧縮機入口案内翼VGVは開放される。
【0041】
煙道ガスの再循環のための第一の例で、可変式圧縮機入口案内翼VGVは、煙道ガスの再循環率に比例して、従って負荷に比例して開放される。可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環率Iの可変式圧縮機入口案内翼の角度VGVに達するまで、相対負荷に比例して開放される。
【0042】
煙道ガスの再循環のための第二の例で、可変式圧縮機入口案内翼は、煙道ガスの再循環率IIの可変式圧縮機入口案内翼の角度VGVIIに達するまで、煙道ガスの再循環率に比例して、従って負荷に比例して開放される。これは、例えば煙道ガスの再循環のための可変式圧縮機入口案内翼VGVの最大補正量である。この例で、さらに負荷が、例えば可変式圧縮機入口案内翼VGVが更に補正されるまで、煙道ガスの再循環率は増大できる。理由は、可変式圧縮機入口案内翼の補正のための限界に達するからである。角度VGVIIに達した後に、さらに全負荷めで負荷を上げることは、補正量さらに変化させることなく行われる。
【0043】
ガスタービンの負荷を上げると、高負荷で、可変式圧縮機入口案内翼VGVの最大の開放を限定する限界値VIGVLimitに達するまで、可変式圧縮機入口案内翼VGVはより広く開放される。
【符号の説明】
【0044】
1 圧縮機
2 外気
3 圧縮機入口
4 燃焼室、第一燃焼室
5 燃料
6 ガスタービン
7 タービン
8 ガスタービンの高温煙道ガス
9 熱回収蒸気発電機(HRSG)
10 第二煙道ガス部分流のための煙道ガス送風機
11 第一煙道ガス部分流のための煙道ガス送風機
12 バイパスフラップあるいは弁
13 蒸気タービン
14 凝縮器
15 二酸化炭素分離システムのための蒸気抽出ライン
16 供給水ライン
17 凝縮物戻りライン
18 二酸化炭素分離システム
19 熱回収蒸気発電機からの煙道ガス
20 第二煙道ガス部分流
21 第一煙道ガス部分流
22 二酸化炭素除去煙道ガス
23 煙道ガスの再循環冷却器
24 単排気管への煙道ガスバイパス
25 第一の発電機
26 第二の発電機
27 煙道ガスの再循環冷却器
28 制御要素(29,36)への信号ライン
29 煙道ガススプリッター
30 生蒸気
31 分離された二酸化炭素
32 単排気管
33 高圧タービン
34 第二燃焼室
35 低圧タービン
36 制御要素
37 可変式圧縮機入口案内翼への信号ライン
38 可変式圧縮機入口案内翼(VGV)
39 制御装置

VGV 可変式圧縮機入口案内翼の角度
VGV 無負荷(アイドリング)での可変式圧縮機入口案内翼の角度
VGVlimit 可変式圧縮機入口案内翼の最大開口のための限界値
VGV 煙道ガスの再循環が無い、可変式圧縮機入口案内翼の角度
VGV 煙道ガスの再循環率Iの可変式圧縮機入口案内翼の角度
VGVII 煙道ガスの再循環率IIの可変式圧縮機入口案内翼の角度
ΔVGV 煙道ガスの再循環が無い運転と比較された可変式圧縮機入口案内翼の角度の変化
ΔT 周囲温度と比較された圧縮機入口温度の上昇

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスの再循環を用いてガスタービン発電所を運転するための方法であって、
このガスタービン発電所が、ガスタービン(6)と、熱回収蒸気発電機(9)と、煙道ガススプリッター(29)を備え、
この煙道ガススプリッターが、ガスタービン発電所の煙道ガス(19)を、ガスタービン(6)の吸気ライン内に再循環させるための第一の煙道ガス流(21)内と、周囲環境へ排出するための第二の煙道ガス流(24)内へと分割し、
前記ガスタービン発電所が、さらに第一の煙道ガス流(21)を制御するための制御要素(11,29)と煙道ガスの再循環冷却器(27)備えており、
前記ガスタービン(6)が、可変式圧縮機入口案内翼(38)を備えた圧縮機(1)、燃焼室(4,34)およびタービン(7,33,35)を備えている前記方法において、
前記可変式圧縮機入口案内翼(38)が、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または煙道ガスの再循環を表示する工程パラメータの関数として制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、圧縮機入口温度と周囲温度の間の温度差
の関数として制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、煙道ガスの再循環冷却器(27)の再循環冷却温度の関数として制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、第一の部分煙道ガス流(21)を制御するための制御要素(29,36)の位置の関数として制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、煙道ガスの再循環率に比例して、および/または煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータに比例して開放されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、煙道ガス温度が再循環率の変化中に一定に保たれるように、タービン(7,35)の煙道ガス温度の関数として制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、可変式圧縮機入口案内翼のオフセット量の限界値に達するまで、煙道ガスの再循環率の増加と共に、および/または煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータの関数として開放されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
可変式圧縮機入口案内翼(38)の全負荷位置が、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータの関数として制御されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
可変式圧縮機入口案内翼(38)が、煙道ガスの再循環率の関数として、および/または可変式圧縮機入口案内翼位置の限界値に達するまでは、煙道ガスの再循環の目安になる工程パラメータの関数として開放されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
可変式圧縮機入口案内翼(38)の開放の限界値が、運転周波数および/または圧縮機(1)の空力学的回転速度の影響を受けていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガスタービン(6)が、第一の燃焼室(4)と第二の燃焼室(34)を備えていること、および
ガスタービン(6)の始動時に、第一の燃焼室(4)はまず第一に、燃料(5)を供給され、それと共に煙道ガスの再循環は第二の燃焼室(34)が始動した後にだけ開始され
、かつ第二の燃焼室(34)が停止する前に停止されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の煙道ガスの再循環用いてガスタービン発電所を運転するための方法。
【請求項12】
第二の煙道ガス流(24が、二酸化炭素分離システム(18)に供給され、二酸化炭素(31)が、以後の処理あるいは保管のために排出され、二酸化炭素を除去された煙道ガス(22)が周囲に排出されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の煙道ガスの再循環用いてガスタービン発電所を運転するための方法。
【請求項13】
煙道ガスの再循環用いたガスタービン発電所であって、
このガスタービン発電所が、圧縮機(1)と、可変式圧縮機入口案内翼(38)と、燃焼室(4,34)と、タービン(7,33,35)と制御装置を有するガスタービン(6)と、さらに熱回収蒸気発電機(9)と煙道ガススプリッター(29)を備え、
この煙道ガススプリッターが、ガスタービン発電所の煙道ガス(19)を、ガスタービン(6)の吸気ライン内に再循環させるための第一の煙道ガス流(21)内と、周囲環境へ排出するための第二の煙道ガス流(24)内へと分割し、
さらに前記ガスタービン発電所が、第一の煙道ガス流(21)を制御するための制御要素(29,36)を備えているガスタービン発電所において、
可変式圧縮機入口案内翼(38)の設定位置が、前記制御要素(29,36)の位置の関数として制御されるように、前記制御装置が構成されていることを特徴とするガスタービン発電所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83254(P2013−83254A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−221867(P2012−221867)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】