説明

煤分散剤及びそれを含有する潤滑油組成物

【課題】強力な煤分散性を提供する化合物と向上した煤分散性能を提供するクランク室潤滑剤の提供。
【解決手段】以下の化合物を提供する:
【化1】


(式中、各Arは独立にアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ハロ及びそれらの組合せから選ばれる0〜3の置換基を有する芳香族部分を表し;各Lは独立に、炭素-炭素単結合又は連結基を含む連結部分を表し;各Yは独立に式H(O(CR2)n)yX-部分を表し、ここでXは(CR'2)z、O及びSから選ばれ、R及びR'はそれぞれ独立してH、C1〜C6のアルキル及びアリールから選ばれ、zは1〜10であり、nは、Xが(CR'2)Zの場合0〜10であり且つXがO又はSの場合2〜10であり、yは1〜30であり;各aは独立して0〜3を表すが、少なくとも1のAr部分は少なくとも1の基Yを有し;mは1〜100である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物において強力な煤分散剤として作用する新規な部類の連結(linked)芳香族化合物及び同化合物を含む潤滑油組成物に関する。より具体的には、本発明は、潤滑油組成物に添加した場合、添加剤の窒素レベルを低減して、工業規格「Mack T11」エンジンテストで煤分散性能を提供する化合物に関する。さらに、本発明は、そのような煤分散性が得られる新規な部類の前駆体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的なヘビーデューティーディーゼル(HDD)エンジン排出立法は、1989年から2009年の間に、NOX及び粒子状排出物を段階的に低減することを要求している。今、多くのディーゼルエンジン製造業者は、HDDエンジンに排気ガス再循環(EGR)系を導入しており、それはエンジンを作動する少なくとも一部の時間(例えば、エンジンを作動する少なくとも10%の時間)圧縮モードで作動され、エンジンタイミングを遅らせてNOX及び粒子状排出物を低減させる。冷却EGR系を備えたエンジンにおいて、EGR流は、NOX及びSOXの露点より低温に冷却され、正圧下でエンジンに逆に流入される。そのような条件下、水蒸気はNOX及びSOXと縮合し、再循環した排出ガス流中で高濃度の硝酸及び硫酸を生じる。そのような条件下、比較的低濃度の煤(例えば、3質量%煤)の存在下でさえ、潤滑油組成物の動粘度(kv)は許容され難く増加することが観察された。
【0003】
潤滑油組成物は、多量の基油、及び潤滑剤の性能を向上し有用な寿命を延ばす添加剤を含む。窒素含有分散剤は、一般的に使用される潤滑剤添加剤である。分散剤の機能は、油内でサスペンジョンにおいて、油の使用の間の酸化及び他の機構により形成された不溶性物質を維持し、スラッジの凝結及び不溶性物質の沈殿を防ぐことである。分散剤の他の機能は、煤粒子の凝集を低減し、従って、使用上の潤滑油の粘度上昇を低減することである。冷却EGR系を備えたエンジンの厳しい環境において、「Mack T-11」試験により測定した場合、煤による粘度上昇は、従来の分散剤により、そのような従来の分散剤の量を増加した場合でさえも制御不能であることが見出された。従って、強力な煤分散性を提供する化合物及び改良された煤分散性能を提供するクランク室潤滑剤が、継続的に要求されている。
【0004】
Davis(1931)の米国特許第1,815,022号は、ナフタレンの縮合物及びナフタレンのフリーデルクラフトアルキル化により形成される本質的に線状の塩素化ワックスを開示している。そのような化合物は、ワックス結晶改質剤又は潤滑油流動性向上剤(LOFI)添加剤としての機能が記載されており、それらの低温流動性を向上するために油に添加される。これらの化合物は多年にわたり使用されておらず、また、高い塩素含量のために、これらの化合物は近年の乗用車又はヘビーデューティーディーゼルモーター油配合物への使用に不適であると考えられている。近年の配合物において、これらの化合物は、フマレート/ビニルアセテートコポリマー又はポリメタクリレートベースLOFIにより代替されている。
【0005】
Davisの米国特許第4,708,809号は、以下の式のフェノール性化合物を含有する潤滑油組成物を記載している:
(R)a-Ar-(OH)b
(式中、Rは、脂肪族炭素原子数が10以上の飽和炭化水素基であり;a及びbは、それぞれ独立して、Arに存在する芳香族核の数の1〜3倍を表し;Arは、所望により置換されている単一、縮合又は結合多核環部分である)。燃料と混合された潤滑剤組成物に、少量のそのような化合物を添加することは、2サイクルエンジンにおいてピストンリング固着の低減を導くと主張されている。
Gutierrezらの米国特許第6,495,496号は、ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド及びアミンの窒素含有低分子量マンニッヒ塩基縮合物であって、潤滑油中の煤分散剤として有用なものを記載している。
【0006】
Gutierrezらの米国特許第6,750,183号は、煤分散剤として有用な一定のオリゴマーを開示しており、そのオリゴマーは以下の式により定義される:
【化1】

{式中、各Arは独立して、H、-OR1、-N(R1)2、F、Cl、Br、I、-(L-(Ar)-T)、-S(O)WR1、-(CZ)X-(Z)y-R1及び-(Z)y-(CZ)x-R1から選ばれる1〜6の置換基により所望により置換された芳香族部分を表し、wは0〜3であり、各Zは独立して、O、-N(R1)2又はSを表し、x及びyは、独立して、0又は1を表し、各R1は独立して、H又は直鎖若しくは分枝鎖の飽和若しくは不飽和の、所望により置換された炭素数1〜約200のヒドロカルビル基を表し;各Lは、独立して、炭素-炭素単結合又は連結基を含む連結部分を表し;各Tは、独立して、H、OR1、N(R1)2、F、Cl、Br、I、S(O)wR1、-(CZ)X-(Z)y-R1又は-(Z)y-(CZ)x-R1を表し、式中、R1、w、x、y及びZは前記定義の通りであり;nは2〜約1000である}。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0007】
本発明の第一の態様により、潤滑油組成物中で強力な煤分散剤として作用することが見出された新規な部類の連結芳香族化合物を提供する。
本発明の第二の態様により、第一の態様の新規化合物を含有し、且つ優れた煤分散性能を提供することができる潤滑油組成物を提供する。
本発明の第三の態様により、EGR系を備えた圧縮点火(ディーゼル)エンジンの操作方法であって、そのようなエンジンのクランク室を第二の態様の潤滑油組成物で潤滑にする工程及びエンジンを操作する工程を含む前記方法を提供する。
第四の態様において、第一の態様の化合物が得られる新規な部類の前駆体化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
新規な部類の煤分散剤が誘導される前駆体として有用な化合物は、以下の式Iにより定義され得る:
【化2】

(式中、
各Arは、独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ハロ及びそれらの組合せからなる群より選ばれる0〜3の置換基を有する芳香族部分を表し;
各Lは、独立して、炭素-炭素単結合又は連結基を含む連結部分を表し;
各Yは、独立して、式H(O(CR2)n)yX-部分を表し、ここで、Xは、(CR'2)z、O及びSからなる群より選ばれ;R及びR'は、それぞれ独立して、H、炭素数1〜6のアルキル及びアリールから選ばれ;zは1〜10であり;nは、Xが(CR'2)Zの場合、0〜10であり、XがO又はSの場合、2〜10であり;yは1〜30であり;
各aは、独立して0〜3を表し、ただし、少なくとも一つのAr部分は少なくとも一つの基Yを有し;
mは1〜100である)。
【0009】
式Iの芳香族部分Arは、単核の炭素環部分(フェニル)又は多核の炭素環部分であり得る。多核の炭素環部分は、各環が炭素数4〜10である二以上の縮合環を含んでいてもよく(例えば、ナフタレン)、又はビフェニルなどの連結した単核芳香族部分であってもよく、又は連結した縮合環(例えば、ビナフチル)を含んでいてもよい。好適な多核炭素環芳香族部分の例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、シクロペンテノフェナントレン、ベンズアントラセン、ジベンズアントラセン、クリセン、ピレン、ベンズピレン及びコロネン、並びにそれらの二量体、三量体及びそれより多い多量体が挙げられる。また、Arは、単核又は多核の複素環部分を表すこともできる。複素環部分Arとしては、N、O及びSから選ばれる1以上のヘテロ原子を含む4〜10の原子をそれぞれ含む1以上の環を含むものが挙げられる。好適な単核の複素環芳香族部分の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン及びプリンが挙げられる。好適な多核の複素環部分Arとしては、例えば、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジピリジル、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン及びフェナントロリンが挙げられる。各芳香族部分(Ar)は、全てのAr部分が同じか又は異なるように、独立して選ばれ得る。多環の炭素環芳香族部分が好ましい。最も好ましいのは、各Arがナフタレンである式Iの化合物である。各芳香族部分Arは、独立して、未置換でもよく、又はアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、ハロ及びそれらの組合せから選ばれる1〜3の置換基で置換されていてもよい。好ましくは、各Arは、基Y及び末端基を除いて、未置換である。
【0010】
各連結基(L)は、同じでも異なっていてもよく、隣接部分Arの炭素原子間の炭素-炭素単結合であるか又は連結基であり得る。好適な連結基としては、アルキレン結合、エーテル結合、ジアシル結合、エーテル-アシル結合、アミノ結合、アミド結合、カルバミド結合、ウレタン結合及び硫黄結合が挙げられる。好ましい連結基は、アルキレン結合、例えば、-CH3CHC(CH3)2-又は-C(CH3)2-;ジアシル結合、例えば、-COCO-又は-CO(CH2)4CO-;及び硫黄結合、例えば-S1-又は-SX-である。より好ましい連結基は、アルキレン結合であり、最も好ましくは-CH2-である。
好ましくは、式(I)のArはナフタレンを表し、より好ましくは、Arは2-(2-ナフチルオキシ)-エタノールから誘導される。好ましくは、各Arは、2-(2-ナフチルオキシ)-エタノールから誘導され、mは2〜25である。好ましくは、式(I)のYは基H(O(CR2)2)yO-であり、yは1〜6である。より好ましくは、Arはナフタレンであり、YはHOCH2CH2O-であり、Lは-CH2-である。
【0011】
式Iの化合物を生成する方法は、当業者に明白であろう。ヒドロキシル芳香族化合物、例えばナフトールを、アルキレンカーボネート(例えば、エチレンカーボネート)と反応させて、式AR-(Y)aの化合物を提供することができる。好ましくは、ヒドロキシル芳香族化合物とアルキレンカーボネートとを、塩基触媒、例えば水酸化ナトリウム水溶液の存在下、温度約25℃〜約300℃で、好ましくは温度約50℃〜約200℃で反応させる。反応の間、水は、共沸蒸留又は他の通常の手段によって反応混合物から除去されてもよい。得られた中間生成物の分離が望ましい場合、反応の完了時(CO2放出の休止(cessation)により示される)に、反応生成物を収集し、冷却して凝固させてもよい。或いは、ヒドロキシル芳香族化合物、例えばナフトールを、エポキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はスチレンオキシドと、同様の条件下で反応させて、1以上のオキシ-アルキレン基を組み込むことができる。
【0012】
式Iの化合物を形成するために、得られる中間体化合物Ar-(Y)aをさらに、ポリハロゲン化(好ましくはジハロゲン化)炭化水素(例えば、1-4-ジクロロブタン、2,2-ジクロロプロパン等)、又はジ-若しくはポリ-オレフィン(例えば、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン等)と反応させて、アルキレン連結基を有する式Iの化合物を得てもよい。Ar-(Y)a部分とケトン又はアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等)との反応は、アルキレン連結化合物を提供する。アシル連結化合物は、Ar-(Y)a部分を二酸又は酸無水物(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、無水コハク酸等)と反応させることにより形成され得る。スルフィド結合、ポリスルフィド結合、スルフィニル結合及びスルホニル結合は、Ar-(Y)a部分と、好適な二官能性硫化剤(例えば、一塩化硫黄、二塩化硫黄、塩化チオニル(SOCl2)、塩化スルフリル(SO2Cl2)等)との反応により提供されてもよい。アルキレンエーテル結合を有する式Iの化合物を提供するために、Ar-(Y)a部分を、ジビニルエーテルと反応させることができる。Lが直接的な炭素-炭素結合である式Iの化合物は、例えば、P.Kovacicらによる文献J.Polymer Science: Polymer Chem. Ed.,21, 457(1983)に記載されるように、塩化アルミニウムと塩化銅(I)との混合物を使用して、酸化的カップリング重合により形成してもよい。或いは、そのような化合物は、例えば、M.G. Stevens、K.M.Sellers、S. Subramoney及びH.C. Foleyの“Catalytic Benzene Coupling on Caesium/Nanoporous Carbon Catalysts”Chemical Communications、2679〜2680頁(1988)に記載されるように、Ar-(Y)a部分とアルカリ金属との反応により形成してもよい。
【0013】
アルキレン連結基、より好ましくはメチレン連結基を有する式(I)の好ましい化合物を形成するために、Ar-(Y)a反応混合物中に残っている塩基を酸、好ましくは過剰の酸(例えば、スルホン酸)で中和し、アルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドと好ましくは残留酸の存在下で反応させて、式(I)のアルキレン架橋、好ましくはメチレン架橋化合物を提供することができる。式(I)の化合物の重合度は、2〜約101(mの値が1〜約100であるのに相当する)、好ましくは約2〜約50、最も好ましくは約2〜約25である。
【0014】
煤分散剤として有用な本発明の化合物は、式(I)の化合物を少なくとも一つのアシル化剤、アルキル化剤及びアリール化剤と反応させることにより形成することが可能であり、以下の式(II)により表される:
【化3】

(式中、
各Y'は、独立して、式Z(O(CR2)n)yX-部分であり;Zは、アシル基、アルキル基、アリール基又はHであり;
Ar、L、X、R、z、n及びyは式(I)で定義したものと同じであるが、ただし、少なくとも1つのAr部分が、ZがHでない置換基Y'を少なくとも1つ有し;
mは1〜100である)。
【0015】
好適なアシル化剤としては、ヒドロカルビル炭酸、ヒドロカルビル炭酸ハロゲン化物、ヒドロカルビルスルホン酸及びヒドロカルビルスルホン酸ハロゲン化物、ヒドロカルビルリン酸及びヒドロカルビルリン酸ハロゲン化物、ヒドロカルビルイソシアネート及びヒドロカルビルコハク酸アシル化剤が挙げられる。好ましいアシル化剤は、ドデシルイソシアネート及びヘキサドデシルイソシアネートなどの炭素数8以上のヒドロカルビルイソシアネート、及び炭素数8以上のヒドロカルビルアシル化剤、より好ましくはポリブテニル又はポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)などのポリブテニルコハク酸アシル化剤である。好ましくは、ヒドロカルビルコハク酸アシル化剤の数平均分子量が、約100〜5000、好ましくは約20〜約3000、より好ましくは約450〜約2500であり得る。数平均分子量は以下の記号によっても表される。

好ましいヒドロカルビルイソシアネートアシル化剤の数平均分子量は、約100〜5000、好ましくは約200〜約3000、より好ましくは約200〜約2000であり得る。
【0016】
アシル化剤は、当業者に公知の通常の方法、例えば、塩素補助(chlorine-assisted)方法、熱的方法、及びラジカルグラフト(radical grafting)方法により製造することができる。アシル化剤は、単官能性であってもよく、又は多官能性であってもよい。好ましくは、アシル化剤は、1.3未満の官能性を有する。アシル化剤は分散剤の製造に使用され、アシル化剤の形成方法のより詳細な説明は、以下に示す好適な分散剤の説明で記載する。
好適なアルキル化剤としては、炭素数8〜30のアルカンアルコール類、好ましくは炭素数8〜18のアルカンアルコール類が挙げられる。好適なアリール化剤としては、炭素数8〜30、好ましくは、炭素数8〜18のアルカン置換アリールモノ-又はポリヒドロキシドが挙げられる。
【0017】
式(I)の化合物、及びアシル化剤、アルキル化剤及び/又はアリール化剤のモル量は、Y基の全てが、又は一部分だけ、例えば25%以上、50%以上若しくは75%以上が、Y'基に変換されるように調整され得る。式(I)の化合物がヒドロキシ及び/又はアルキルヒドロキシ置換基を有する場合、その化合物がアシル基と反応すると、前記ヒドロキシ及び/又はアルキルヒドロキシ置換基の全て又は一部がアシルオキシ又はアシルオキシアルキル基に変換されることが見込まれる。式(I)の化合物がヒドロキシ及び/又はアルキルヒドロキシ置換基を有する場合、その化合物がアリール基と反応すると、前記ヒドロキシ及び/又はアルキルヒドロキシ置換基の全て又は一部がアリールオキシ又はアリールオキシアルキル基に変換されることが見込まれる。従って、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アリールオキシ及び/又はアリールオキシアルキル基で置換された式(II)の化合物は、本発明の範囲内に含まれると考えられる。塩基での中和の結果得られる(例えば、添加剤パッケージ又は配合潤滑剤のいずれかにおいて、金属清浄剤との相互作用のために生じ得る)、Zがアシル化(acylating)基である式(II)の化合物の塩形態も、同様に、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0018】
式(II)の化合物は、式(I)の前駆体をアシル化剤と、好ましくはスルホン酸などの液体酸触媒、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸若しくはポリリン酸、又は、Amberlyst-15、Amberlyst-36、ゼオライト、無機酸クレー若しくはタングステンポリリン酸などの固形酸触媒の存在下で、温度約0℃〜約300℃、好ましくは約50℃〜約250℃で反応させることにより、式(I)の前駆体から誘導することができる。前記条件下、好ましいポリブテニルコハク酸アシル化剤は、式(I)の化合物と、ジエステル、酸エステル又はラクトンエステルを形成できる。
式(II)の化合物は、式(I)の前駆体をアルキル化剤又はアリール化剤と、好ましくはトリフェニルホスフィン及びジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、スルホン酸などの液体酸触媒、例えばドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸若しくはポリリン酸、又は、Amberlyst-15、Amberlyst-36、ゼオライト、無機酸クレー若しくはタングステンポリリン酸などの固形酸触媒の存在下で、温度約0℃〜約300℃、好ましくは約50℃〜約250℃で反応させることにより、式(I)の前駆体から誘導することができる。
【0019】
本発明の潤滑油組成物は、多量の潤滑粘度の油及び少量の式(II)の煤分散化合物を含む。好ましくは、本発明の潤滑油組成物は、式(II)の化合物を約0.005質量%〜15質量%、好ましくは約0.1質量%〜約5質量%、より好ましくは約0.5質量%〜約2質量%含むと考えられる。
本発明に有用な潤滑粘度の油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油、及びそれらの混合物から選ばれ得る。潤滑油は、軽質留出鉱油から、ガソリンエンジン油、無機潤滑油及びヘビーデューティーディーゼル油などの重質潤滑油までの範囲の粘度であってもよい。一般的に、油の粘度は、100℃で測定した場合、約2センチストークス〜約40センチストークス、特に約4センチストークス〜約20センチストークスである。
【0020】
天然の油としては、動物油及び植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液体石油、並びにパラフィン、ナフテン及びパラフィン-ナフテン混合型の水素化精製鉱油、溶媒処理鉱油又は酸処理鉱油が挙げられる。また、石炭又は頁岩から得られた潤滑粘度の油も有用な基油として役立つ。
合成潤滑油としては、炭化水素油及びハロ置換炭素水素油、例えば重合オレフィン類及びインターポリマー化オレフィン類(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン類(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル類(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);並びに、アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類、それらの誘導体、類縁体及び同族体が挙げられる。また、有用なものは、一般的にガスツーリキッド(gas to liquid)又は「GTL」基油と呼ばれる、フィッシャートロプシュ(Fisher-Tropsch)合成炭化水素からガスツーリキッドプロセスによって得られる合成油である。
【0021】
アルキレンオキシドポリマー及びインターポリマー並びにそれらの誘導体であって末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により改変されているものは、別の部類の公知の合成潤滑油を構成する。これらの例としては、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合化により調製されるポリオキシアルキレンポリマー類、ポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル類(例えば、分子量1000のメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテル又は分子量1000〜1500のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);並びに、それらのモノ-及びポリカルボン酸エステル類、例えば、酢酸エステル、混合C3-C8脂肪酸エステル及びテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルが挙げられる。
【0022】
他の好適な部類の合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルを含む。そのようなエステルの具体的な例としては、ジブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、並びにセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モル及び2-エチルへキサン酸2モルの反応により形成される複合エステルが挙げられる。
【0023】
また、合成油として有用なエステルとしては、炭素数5〜12のモノカルボン酸と、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールなどのポリオール及びポリオールエステルから作られるものが挙げられる。
シリコンベース油、例えばポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-又はポリアリールオキシ-シリコーン油及びシリケート油は、別の有用な部類の合成潤滑剤を含む;そのような油としては、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチル-フェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン及びポリ(メチルフェニル)シロキサンが挙げられる。他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)及びテトラヒドロフラン重合体が挙げられる。
【0024】
潤滑粘度の油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV又はグループVベースストック又はそれらのベーストックの基油ブレンドを含んでいてもよい。好ましくは、潤滑粘度の油は、グループII若しくはグループIIIのベースストック又はそれらの混合物、又はグループIベースストックとグループII及びグループIIIの1以上との混合物である。好ましくは、多量の潤滑粘度の油は、グループII、グループIII、グループIV若しくはグループVのベースストック、又はそれらの混合物である。ベースストック又はベースストック混合物は、少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも85%の飽和成分(saturate)含量を有する。最も好ましくは、ベースストック又はベースストック混合物は、90%より高い飽和成分含量を有する。好ましくは、このような油又は油混合物の硫黄含量は、1質量%未満、好ましくは0.6質量%未満、より好ましくは0.4質量%未満である。
好ましくは、そのような油又は油混合物の揮発度は、Noack揮発試験により測定した場合(ASTM D5880)、30%以下、好ましくは、25%以下、より好ましくは20%以下であり、最も好ましくは16%以下である。好ましくは、そのような油又は油混合物の粘度指数(VI)は、少なくとも85、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは約105〜140である。
【0025】
本発明におけるベースストック及び基油に関する定義は、米国石油協会(API)の刊行物「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department、第14版、1996年12月、補遺1、1998年12月に見出されるものと同じである。前記刊行物は、以下のようにベースストックを分類している:
a) グループIベースストックは、表1に明記した試験方法を使用して、飽和成分含量が90%未満及び/又は硫黄含量が0.03%より高く、粘度指数が80以上120未満である。
b) グループIIベースストックは、表1に明記した試験方法を使用して、飽和成分含量が90%以上であり、硫黄含量が0.03%以下であり、粘度指数が80以上120未満である。
c) グループIIIベースストックは、表1に明記した試験方法を使用して、飽和成分含量が90%以上であり、硫黄含量が0.03%以下であり、粘度指数が120以上である。
d) グループIVベースストックは、ポリα-オレフィン類(PAO)である。
e) グループVベースストックは、グループI、II、III又はIVに含まれない他の全てのベースストックを含む。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明の潤滑油組成物は、1以上の無灰分散剤をさらに含んでいてもよく、前記無灰分散剤が潤滑油に加えられた場合、ガソリン及びディーゼルエンジンにおける使用で堆積物の形成を効果的に低減させる。本発明の組成物に有用な無灰分散剤は、分散されるべき粒子と会合できる官能基を有する油溶性の長鎖ポリマー主鎖を含む。典型的に、そのような分散剤は、ポリマー主鎖に、多くの場合は架橋基を介して結合するアミン、アルコール、アミド又はエステル極性部分を含む。無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ-及びポリカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性の塩類、エステル類、アミノエステル類、アミド類、イミド類及びオキサゾリン類;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体類;直接結合したポリアミン部分を有する長鎖脂肪族炭化水素類;並びに、ホルムアルデヒドを有する長鎖置換フェノールとポリアルキレンポリアミンとの縮合により形成されたマンニッヒ縮合生成物;から選ばれてもよい。
【0028】
好ましくは、無灰分散剤は、数平均分子量が4,000以上、例えば4,000〜20,000である「高分子量」分散剤である。正確な分子量は、分散剤を形成するために使用されるポリマーの型、存在する官能基の数、及び使用される極性官能基の型に依存すると考えられる。例えば、ポリイソブチレン誘導化分散剤に関して、高分子量分散剤は、数平均分子量が約1680〜約5600のポリマー主鎖で形成されるものである。市販されている典型的なポリイソブチレンをベースとする分散剤は、無水マレイン酸(MW=98)で官能化され、分子量約100〜約350のポリアミンで誘導された、数平均分子量約900〜約2300のポリイソブチレンポリマーを含む。低分子量のポリマーは、複数のポリマー鎖を分散剤へ組み込むことによって、高分子量分散剤を形成するために使用されてもよく、そのような組み込みは本技術分野で公知の方法を使用して行うことができる。
【0029】
ポリマー分子量、具体的には数平均分子量は、様々な公知の技術により測定できる。一つの好都合な方法はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)であり、それはさらに、分子量分布情報を提供する(W. W. Yau、J. J. Kirkland及びD. D. Bly,“Modern Size Exclusion Liquid Chromatography”、John Wiley and Sons、ニューヨーク、1979年を参照されたい)。アミン含有分散剤 (例えばPIBSA-ポリアミン又はPIBSA-PAM) の分子量が測定される場合、アミンの存在が分散剤をカラムに吸着させて、不正確な分子量測定につながることがある。GPC装置の操作に精通する者は、純粋なTHFとは対照的に、少量のピリジンを混合したテトラヒドロフラン(THF)のような混合溶媒系を使用することにより、この問題が排除できることを理解している。その問題は、アミンを無水酢酸でキャッピングし、キャッピング基の数に基づいて分子量を補正することにより対処してもよい。別の有用な分子量測定方法、特に、低分子量ポリマーの分子量測定方法は、蒸気圧浸透圧計である(例えば、ASTM D3592を参照されたい)。
【0030】
ポリマーの重合度Dpは以下の数式で表され:
【数1】

従って、二つのモノマーのコポリマーについてのDpは以下のように計算され得る:
【数2】

好ましくは、本発明に使用されるポリマー主鎖の重合度は、少なくとも30、一般的には30〜165、より好ましくは35〜100である。
【0031】
本発明に使用される好ましい炭化水素又はポリマーとしては、ホモポリマー、インターポリマー又は低分子量炭化水素が挙げられる。有用なポリマーの一群は、エチレン及び/又は式H2C=CHR1を有する炭素数3〜28の少なくとも一つのα-オレフィン(式中、R1は、炭素数1〜26の直鎖又は分枝鎖のアルキル基である)のポリマーを含み、そのポリマーは炭素-炭素不飽和、好ましくは高度の末端エテニリデン不飽和を含む。本発明に使用されるそのようなポリマーの一つの好ましい部類は、エチレンと少なくとも一つの前記式のα-オレフィンとのインターポリマーを含み、このとき、R1は炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらにより好ましくは炭素数1〜2のアルキル基である。従って、有用なα-オレフィンモノマー及びコモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1、デセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1及びそれらの混合物(例えば、プロピレンとブテン-1との混合物等)が挙げられる。そのようなポリマーの例としては、プロピレンホモポリマー、ブテン-1ホモポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブテン-1コポリマー等が挙げられ、これらのポリマーは少なくとも幾つかの末端及び/又は内部不飽和を含む。好ましいポリマーは、エチレンとプロピレン及びエチレンとブテン-1の不飽和コポリマーである。本発明のインターポリマーは、炭素数4〜18の非共役ジオレフィンコモノマーを少量、例えば0.5〜5モル%含んでいてもよい。しかし、本発明のポリマーは、α-オレフィンホモポリマー、α-オレフィンコモノマーのインターポリマー及びエチレンとα-オレフィンコモノマーとのインターポリマーのみを含むことが好ましい。本発明に使用されるポリマーのエチレンモル含量は、20〜80%、より好ましくは30〜70%である。プロピレン及び/又はブテン-1がコモノマーとしてエチレンと使用される場合、そのようなコポリマーのエチレン含量は45〜65%であることが最も好ましいが、それより高い又はそれより低いエチレン含量であってもよい。
【0032】
これらのポリマーは、α-オレフィンモノマー、α-オレフィンモノマー混合物、又はエチレンと少なくとも一つの炭素数3〜28のα-オレフィンモノマーとを含む混合物を、少なくとも一つのメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル遷移金属化合物)及びアルモキサン(alumoxane)化合物を含む触媒系の存在下で重合することにより、製造してもよい。このプロセスを使用して、ポリマー鎖の95%以上が末端エテニリデン型不飽和を有するポリマーを提供することができる。末端エテニリデン不飽和を示すポリマー鎖の百分率は、FTIR 分光分析、滴定又はC13NMRにより測定され得る。この後者のタイプのインターポリマーは、式POLY-C(R1)=CH2により特徴付けられ、ここで式中、R1は炭素数1〜26のアルキル、好ましくは炭素数1〜18のアルキル、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル、最も好ましくは炭素数1〜2のアルキル(例えば、メチル又はエチル)であり、POLYはポリマー鎖を表す。R1アルキル基の鎖長は、重合に使用されるために選択されるコモノマーに依存して変動すると考えられる。少量のポリマー鎖は、末端エテニル、即ちビニル、不飽和、即ちPOLY-CH=CH2を含むことが可能であり、またポリマーの一部は、内部モノ不飽和、例えばPOLY-CH=CH(R1)(式中R1は、前記定義の通りである)を含むことが可能である。これらの末端不飽和インターポリマーは、公知のメタロセン化学反応により製造してもよく、また米国特許第5,498,809号;第 5,663,130号;第5,705,577号;第5,814,715号;第6,022,929号及び第6,030,930号に記載されているように製造してもよい。
【0033】
他の有用な部類のポリマーは、イソブテン、スチレン等のカチオン性重合により製造されるポリマーである。この部類の一般的なポリマーとしては、ルイス酸触媒、例えば、三塩化アルミニウム又は三フッ化ホウ素の存在下、ブテン含量約35質量%〜約75質量%及びイソブテン含量約30質量%〜約60質量%のC4精製流の重合により得られるポリイソブテンが挙げられる。ポリ-n-ブテンを製造するための好ましいモノマー供給源は、石油供給流、例えばラフィネートIIである。これらのフィードストックは、米国特許第4,952,739号のような文献に開示されている。ポリイソブチレンは、本発明の最も好ましい主鎖であり、それは、ブテン流からカチオン性重合により(例えば、AlCl3又はBF3触媒を使用して)容易に入手可能だからである。このようなポリイソブチレンは、一般的に、1のポリマー鎖当たり約1のエチレン性二重結合を有する量で、鎖にそって位置する残留不飽和を含む。
【0034】
上述のように、使用されるポリイソブチレンポリマーは、一般的に、数平均分子量約900〜2,300の炭化水素鎖をベースとしている。ポリイソブチレンの製造方法は公知である。ポリイソブチレンは、ハロゲン化(例えば塩素化)、熱「エン」反応、又は触媒(例えばペルオキシド)を使用したフリーラジカルグラフト化により、上述するように官能化することができる。
ポリマー性炭化水素と不飽和カルボン酸、酸無水物又はエステルとの反応プロセス及びそのような化合物からの誘導体の製造は、米国特許第3,087,936号;第3,172,892号;第3,215,707号;第3,231,587号;第3,272,746号;第3,275,554号;第3,381,022号;第3,442,808号;第3,565,804号;第3,912,764号;第4,110,349号;第4,234,435号;及びGB-A-1,440,219に開示されている。ポリマー又は炭化水素は、例えば、主に炭素-炭素不飽和(エチレン性又はオレフィン性不飽和とも呼ばれる)の部位でポリマー又は炭化水素鎖上に官能性成分又は官能因子、即ち、酸、無水物、エステル成分等が付加される条件下で、ハロゲン補助官能化(例えば塩素化)プロセス又は熱「エン」反応を用いて、ポリマー又は炭化水素を反応させることによって、カルボン酸生成成分(好ましくは酸又は無水物)で官能化され得る。
【0035】
触媒(例えばペルオキシド)をいたフリーラジカルグラフト化プロセスを使用する場合、官能化は、ポリマー鎖に沿ってランダムにもたらされる。選択的官能化は、不飽和α-オレフィンポリマーを、ポリマー又は炭化水素の質量をベースとして約1〜8質量%、好ましくは3〜7質量%の塩素又は臭素でハロゲン化、例えば、塩素化または臭素化することにより達成することができ、そのようなハロゲン化は温度60〜250℃、好ましくは110〜160℃、例えば120〜140℃で、約0.5〜10時間、好ましくは1〜7時間、塩素又は臭素をポリマーに通すことにより行うことができる。その後、ハロゲン化ポリマー又は炭化水素(以後、主鎖と呼ぶ)は、主鎖に官能性部分を加えることができる充分なモノ不飽和反応体、例えばモノ不飽和カルボキシル反応体と、100〜250℃、通常約180℃〜235℃で、約0.5〜10時間、例えば3〜8時間反応させることが可能であり、そのようにして得られた生成物はハロゲン化主鎖1モルあたり望ましいモル数のモノ不飽和カルボキシル反応体を含むようになるであろう。或いは、主鎖及びモノ不飽和カルボキシル反応体を混合及び加熱し、その間、その熱い材料に塩素を添加してもよい。
【0036】
炭化水素又はポリマー主鎖は、例えば、カルボン酸生成成分(好ましくは酸又は無水物成分)により、三つの前記プロセスのいずれか又はそれらの組合せをいずれかの順序で使用して、ポリマー若しくは炭化水素鎖上の炭素-炭素不飽和部位で選択的に又は主鎖に沿って無作為に、官能化することができる。
主鎖を官能化するために使用される好ましいモノ不飽和反応体は、モノ-及びジカルボン酸材料、即ち、酸、無水物又は酸エステル材料を含み、例えば、(i)炭素数4〜10のモノ不飽和ジカルボン酸であって、(a)カルボキシル基がビシニル(vicinyl)であるもの(即ち、隣接炭素原子上に位置する)及び(b)少なくとも一つ、好ましくは両方の前記隣接炭素原子が、前記モノ不飽和の一部であるもの;(ii)(i)の誘導体、例えば(i)の無水物又は炭素数1〜5のアルコール誘導化モノ又はジエステル;(iii)炭素数3〜10のモノ不飽和モノカルボン酸であって、炭素-炭素二重結合がカルボキシ基で共役している、即ち構造-C=C-CO-のもの;及び(iv)(iii)の誘導体、例えば(iii)の炭素数1〜5のアルコール誘導化モノ又はジエステルが挙げられる。モノ不飽和カルボキシル材料(i)〜(iv)の混合物を使用してもよい。主鎖との反応において、モノ不飽和カルボキシル反応体のモノ不飽和が飽和化される。従って、例えば、無水マレイン酸は、主鎖置換無水コハク酸になり、アクリル酸は、主鎖置換プロピオン酸になる。そのようなモノ不飽和カルボキシル反応体の例としては、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロロマレイン酸、無水クロロマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びそれらの低級アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)酸エステル、例えばメチルマレエート、エチルフマレート及びメチルフマレートが挙げられる。モノ不飽和カルボキシル反応体、好ましくは無水マレイン酸は、典型的に、ポリマー又は炭化水素の質量をベースとして、約0.01〜約20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の量において使用され得る。
【0037】
通常、塩素化は出発オレフィンポリマーとモノ不飽和官能化反応体との反応性の増加を補助するが、本発明への使用が企図されるポリマー又は炭化水素、特にそれらの好ましいポリマー又は炭化水素が高い末端結合含量及び反応性を有することは必要ではない。従って、好ましくは、主鎖とモノ不飽和官能化反応体、例えば、カルボキシル反応体とは、高温で接触させられて、最初の熱「エン」反応を生じる。このようなエン反応は公知である。
炭化水素又はポリマー主鎖は、様々な方法で、ポリマー鎖に沿った官能部分の無作為な結合により官能化することができる。例えば、ポリマーは、溶液又は固形物の形態において、フリーラジカル開始剤の存在下で、上述のようにモノ不飽和カルボキシル反応体でグラフト化されてもよい。溶液形態で行われる場合、グラフト化は、高温で、約100〜260℃、好ましくは120〜240℃の範囲において行われる。好ましくは、フリーラジカル開始グラフト化は、最初の全油溶液をベースとして、例えば1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%のポリマーを含む無機潤滑油溶液において達成される。
【0038】
使用してもよいフリーラジカル開始剤は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド及びアゾ化合物、好ましくは、それらのうち、約100℃より高い沸点を有するもの及びフリーラジカルを与えるグラフト化温度範囲内で熱的に分解するものである。これらのフリーラジカル開始剤の代表例は、アゾブチロニトリル、ビス-tert-ブチルペルオキシド及びジクメンペルオキシドである。開始剤は、使用される場合、典型的には、反応混合物溶液の質量をベースとして0.005質量%〜1質量%の量において使用される。典型的に、前記モノ飽和カルボキシル反応体材料とフリーラジカル開始剤とは、約1.0:1〜30:1、好ましくは3:1〜6:1の質量比範囲において使用される。グラフト化は、好ましくは、不活性雰囲気中、例えば窒素ブランケティング下で行われる。得られるグラフト化ポリマーは、ポリマー鎖に素って無作為に結合したカルボン酸(又はエステル又は無水物)部分を有することにより特徴付けられる:当然のことながら、ポリマー鎖の幾つかがグラフト化されずに残ることは理解されよう。上述するフリーラジカルグラフト化は、本発明の他のポリマー及び炭化水素に使用することができる。
【0039】
官能化された油溶性ポリマー炭化水素主鎖は、その後、求核性反応体、例えば、アミン、アミノアルコール、アルコール、金属化合物又はそれらの混合物でさらに誘導体化されて、対応する誘導体を形成してもよい。官能化されたポリマーを誘導体化するために有用なアミン化合物は、少なくとも一つのアミンを含み、一つ以上の追加のアミン又は他の反応性若しくは極性の基を含むことができる。これらのアミンは、ヒドロカルビルアミンであってもよく又は主にヒドロカルビルアミンであってもよく、ここでヒドロカルビル基は、他の基、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミド基、ニトリル、イミダゾリン基等を含んでいてもよい。特に有用なアミン化合物としては、モノアミン及びポリアミン、例えば、分子当たりの窒素原子数が約1〜12、例えば3〜12、好ましくは3〜9である、全炭素原子数約2〜60、例えば2〜40(例えば3〜20)のポリアルケン及びポリオキシアルキレンポリアミンが挙げられる。アミン化合物の混合物、好都合には、アルキレンジハライドとアンモニアとの反応により製造されるものが使用されてもよい。好ましいアミンは、脂肪族飽和アミン、例えば、1,2-ジアミノエタン;1,3-ジアミノプロパン;1,4-ジアミノブタン;1,6-ジアミノヘキサン;ポリエチレンアミン、例えばジエチレントリアミン;トリエチレンテトラアミン;テトラエチレンペンタミン;ポリプロピレンアミン、例えば1,2-プロピレンジアミン;及びジ-(1,2-プロピレン)トリアミンである。
【0040】
他の有用なアミン化合物としては:脂環式ジアミン、例えば1,4-ジ(アミノメチル)シクロヘキサン及び複素環窒素化合物、例えばイミダゾリンが挙げられる。他の有用な部類のアミンは、ポリアミド及び関連するアミドアミンであって、米国特許第4,857,217号;第4,956,107号;第4,963,275号;及び第5,229,022号に開示されるものである。また、有用なものは、米国特許第4,102,798号;第4,113,639号;第4,116,876号;及びUK989,409に記載されているようなトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TAM)である。また、デンドリマー、星状アミン及び櫛型構造アミンを使用してもよい。同様に、米国特許第5,053,152号に記載されるような縮合アミンを使用してもよい。官能化されたポリマーは、例えば、米国特許第4,234,435号及び第5,229,022号、並びにEP-A-208,560に記載されるような通常の技術を使用して、アミン化合物と反応させてもよい。
【0041】
官能化された油溶性ポリマー炭化水素主鎖を、一価及び多価アルコールなどのヒドロキシ化合物で、又はフェノール及びナフトールなどの芳香族化合物で誘導体化してもよい。好ましい多価アルコールとしては、アルキレン基の炭素数が2〜8のアルキレングリコールが挙げられる。他の有用な多価アルコールとしては、グリセロール、グリセロールのモノオレエート、グリセロールのモノステアレート、グリセロールのモノメチルエーテル、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びそれらの混合物が挙げられる。また、エステル分散剤は、不飽和アルコールから、例えばアリルアルコール、シンナミルアルコール、プロパギルアルコール、1-シクロヘキセン-3-オール及びオレイルアルコールなどから誘導されてもよい。無灰分散剤を得ることが可能なさらに他の部類のアルコールは、エーテル-アルコール、例えばオキシアルキレン及びオキシアリーレンを含む。そのようなエーテル-アルコールの例としては、アルキレン基の炭素数が1〜8のオキシアルキレン基150以下を有するエーテル-アルコールである。エステル分散剤としては、コハク酸のジエステル又は酸-エステル、即ち、部分的にエステル化されたコハク酸、及び部分的にエステル化された多価アルコール又はフェノール、即ち、遊離アルコール又はフェノール性ヒドロキシ基を有するエステルであってもよい。エステル分散剤は、例えば、米国特許第3,381,022号に記載されるような幾つかの公知方法のいずれか一つにより製造してもよい。
【0042】
好ましい分散剤の群としては、ポリアミン誘導化ポリα-オレフィン分散剤、特にエチレン/ブテンα-オレフィン及びポリイソブチレンをベースとする分散剤が挙げられる。特に好ましいものは、無水コハク酸基で置換され、またポリエチレンアミン、例えばポリエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミンと反応したポリイソブチレンから誘導された無灰分散剤;又はポリオキシアルキレンポリアミン、例えばポリオキシプロピレンジアミン、トリメチロールアミノメタン;ヒドロキシ化合物、例えばペンタエリスリトール;及びそれらの組合せである。一つの特に好ましい分散剤の組合せは、(A)無水コハク酸基で置換したポリイソブチレンを、(B)ヒドロキシ化合物、例えばペンタエリスリトール;(C)ポリオキシアルキレンポリアミン、例えばポリオキシプロピレンジアミン、又は(D)ポリアルキレンジアミン、例えばポリエチレンジアミン及びテトラエチレンペンタミンと、(A)1モル当たり、(B)、(C)及び/又は(D)約0.3〜約2モルを使用して反応させたものの組合せである。他の好ましい分散剤の組合せは、(A)ポリイソブテニル無水コハク酸と、(B)ポリアルキレンポリアミン、例えばテトラエチレンペンタミン、及び(C)多価アルコール又はポリヒドロキシ置換脂肪族第一アミン、例えばペンタエリスリトール又はトリスメチロールアミノメタンとの組合せを含み、それらは米国特許第3,632,511号に記載されている。
【0043】
他の部類の無灰分散剤は、マンニッヒ塩基縮合生成物を含む。一般的にこれらの生成物は、アルキル置換モノ-又はポリヒドロキシベンゼン約1モルを、カルボニル化合物約1〜2.5モル(例えば、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒド)及びポリアルキレンポリアミン約0.5〜2モルと縮合させることにより製造され、それらは例えば米国特許第3,442,808号に開示されている。そのようなマンニッヒ塩基縮合生成物は、ベンゼン基上での置換基としてメタロセン触媒重合のポリマー生成物を含んでいてもよいか、又は、米国特許第3,442,808号に記載されるものと同様の方法において、無水コハク酸上で置換されたそのようなポリマーを含む化合物と反応されてもよい。メタロセン触媒系を使用して合成した官能化及び/又は誘導体化したオレフィンポリマーの例は、上述の文献に記載されている。
【0044】
分散剤は、さらに、様々な従来の後処理、例えば米国特許第3,087,936号及び第3,254,025号に一般的に教示されているようなホウ素化によりさらに後処理することができる。分散剤のホウ素化は、アシル窒素含有分散剤を、アシル化窒素組成物1モルについてホウ素約0.1〜約20原子の割合を提供するのに充分な量のホウ素化合物、例えば酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸及びホウ酸のエステルで処理することにより容易に達成される。有用な分散剤は、ホウ素約0,05〜約2.0質量%、例えば約0.05〜約0.7質量%を含む。脱水したホウ酸ポリマー(主に(HBO2)3)のような生成物中に現れるホウ素は、分散剤イミド及びジイミドに結合してアミン塩、例えばジイミドのメタホウ酸塩などにすると考えられる。ホウ素化は、ホウ素化合物、好ましくはホウ酸約0.5〜4質量%、例えば約1〜約3質量%(アシル窒素化合物の質量をベースとして)を、通常はスラリーとして、アシル窒素化合物に添加し、約135℃〜約190℃、例えば140℃〜170℃で、約1〜約5時間攪拌しながら加熱し、その後窒素ストリッピングをすることにより行うことができる。また、ホウ素処理は、水を除去しながら、ホウ酸をジカルボン酸材料とアミンとの熱い反応混合物に添加することにより行うことができる。また、当技術分野に一般的に公知の他の反応後プロセスを適用することができる。
【0045】
また、分散剤は、所謂「キャッピング剤」との反応によりさらに後処理してもよい。通常の方法で、窒素含有分散剤は「キャップ」され、そのような分散剤が有しているフルオロエラストマーエンジンシールへの悪影響が低減される。多くのキャッピング剤及びキャッピング方法は公知である。公知の「キャッピング剤」のうち、塩基性分散剤アミノ基を非塩基性部分(例えば、アミド基またはイミド基)に変換するものが最も好適である。窒素含有分散剤とアルキルアセトアセテート(例えば、エチルアセトアセテート(EAA))との反応は、例えば、米国特許第4,839,071号;第4,839,072号及び第4,579,675号に記載されている。窒素含有分散剤とギ酸との反応は、米国特許第3,185,704号に記載されている。窒素含有分散剤と他の好適なキャッピング剤との反応生成物は、米国特許第4,663,064号(グリコール酸);第4,612,132号;第5,334,321号;第5,356,552号;第5,716,912号;第5,849,676号;第5,861,363号(アルキル及びアルキレンカーボネート、例えばエチレンカーボネート);第5,328,622号(モノ-エポキシド);第5,026,495号;第5,085,788号;第5,259,906号;第5,407,591号(ポリ(例えば、ビス)-エポキシド)及び第4,686,054号(無水マレイン酸または無水コハク酸)に記載されている。前述のリストは、完全ではなく、窒素含有分散剤の他のキャッピング方法は、当業者に公知である。
【0046】
ピストン堆積物の適切な制御のために、窒素含有分散剤を、窒素約0.03質量%〜約0.15質量%、好ましくは約0.07〜約0.12質量%を有する潤滑油組成物を提供する量で提供できる。
さらなる添加剤を本発明の組成物に導入して、本発明の組成物を特定の要求に適合させてもよい。潤滑油組成物に含まれていてもよい添加剤の例は、清浄剤、金属防錆剤、粘度指数向上剤、腐蝕防止剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、他の分散剤、消泡剤、耐摩耗剤及び流動点降下剤である。幾つかについて、さらに以下に詳細に論じる。
金属含有又は灰形成清浄剤は、堆積物を低減又は除去する清浄剤として、また酸中和剤又は防錆剤として機能し、それにより摩耗及び腐蝕を低減してエンジン寿命を延長させる。一般的に、清浄剤は、長い疎水性の尾を有する極性の頭部を含み、極性の頭部は酸性有機化合物の金属塩を含む。そのような塩は、実質的に化学量論的な量の金属を含んでいてもよく、その場合、それらは正塩又は中性塩として通常記載され、全塩基価すなわちTBN(ASTM D2896により測定した場合)は典型的には0〜80であり得る。多量の金属塩基を、過剰の金属化合物(例えばオキシド又はヒドロキシド)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)とを反応させることにより導入してもよい。得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば、カーボネート)ミセルの外層として中性清浄剤を含む。そのような過塩基性清浄剤は、TBN150以上であってもよく、典型的には、TBN250〜450以上であってもよい。
【0047】
使用してもよい清浄剤としては、金属、具体的にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムの油溶性の中性及び過塩基性スルホネート、フェナート、硫化フェナート、チオホスホネート、サリチレート及びナフテネート及び他の油溶性カルボキシレートが挙げられる。最も一般的に使用される金属は、カルシウム及びマグネシウム(それらは潤滑剤に使用される清浄剤に共に含まれていてもよい)、及びカルシウム及び/又はマグネシウムのナトリウムとの混合物である。特に好都合な金属清浄剤は、TBN20〜450の中性及び過塩基性カルシウムスルホネート、TBN50〜450の中性及び過塩基性カルシウムフェナート及び硫化フェナートである。過塩基性、中性又はその両方のいずれかの清浄剤の組合せを使用してもよい。
【0048】
スルホネートは、スルホン酸から製造してもよく、それらはアルキル置換芳香族炭化水素、例えば石油の分留により又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られるもののスルホン化により一般的に得られる。例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はそれらのハロゲン誘導体、例えばクロロベンゼン、クロロトルエン及びクロロナフタレンのアルキル化により得られるものが挙げられる。そのアルキル化は、触媒の存在下、炭素数が約3〜70より多いアルキル化剤を用いて行ってもよい。アルカリールスルホネートの炭素数は、一般的に、アルキル置換芳香族部分当たり、約9〜約80以上、好ましくは約16〜約60である。
【0049】
油溶性のスルホネート又はアルカリール(arkaryl)スルホン酸を、金属のオキシド、ヒドロキシド、アルコキシド、カーボネート、カルボキシレート、スルフィド、ヒドロスルフィド、ニトレート、ボレート及びエーテルにより中和してもよい。金属化合物の量は、最終生成物の望ましいTBNを考慮して選択されるが、一般的に、要求される化学量論的な量の約100〜220質量%(好ましくは少なくとも125質量%)である。
フェノール及び硫化フェノールの金属塩を、好適な金属化合物、例えばオキシド又はヒドロキシドとの反応により製造してもよく、中性又は過塩基性生成物は当技術分野に公知の方法により得てもよい。硫化フェノールは、フェノールと、硫黄又は硫黄含有化合物、例えば硫化水素、一ハロゲン化硫黄又は二ハロゲン化硫黄とを反応させて製造してもよく、一般的に二つ以上のフェノールが硫黄含有ブリッジにより架橋された化合物の混合物である生成物を形成する。
【0050】
ジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩は、耐摩耗剤及び抗酸化剤としてよく使用される。その金属は、アルカリ又はアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル又は銅であってもよい。亜鉛塩は、潤滑油組成物の全質量をベースとして0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量において、潤滑油中、最も一般的に使用される。それらは、公知の技術により、一つ以上のアルコール又はフェノールをP2S5と反応させて、まずジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、その後、形成したDDPAを亜鉛化合物と中和することにより製造してもよい。例えば、ジチオリン酸を、一級及び二級アルコールの混合物を反応させることにより製造してもよい。或いは、複数のジチオリン酸を製造することができ、そこでは、一方のヒドロカルビル基は特性が全て二級であり、他方のヒドロカルビル基は特性が全て一級である。亜鉛塩を製造するために、いずれかの塩基性又は中性の亜鉛化合物を使用することができるが、オキシド、ヒドロキシド及びカーボネートが最も一般的に使用される。市販の添加剤は、過剰の亜鉛を多くの場合含み、なぜなら、中和反応において過剰の塩基性亜鉛化合物が使用されるからである。
【0051】
好ましいジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、以下の式により表すことができる:
【化4】

(式中、
R及びR'は、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜18、好ましくは2〜12のヒドロカルビル基であり、例えばアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール及び脂環式基である)。特に好ましいR及びR'基は、炭素数2〜8のアルキル基である。従って、その基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってもよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の全炭素原子(即ちR及びR')の数は、一般的に約5以上であり得る。従って、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み得る。本発明は、組成物の全質量をベースとして、リン含量約0.02〜約0.12質量%、例えば約0.03〜約0.10質量%、又は約0.05〜約0.08質量%の潤滑剤組成物を使用する場合に特に有用であり得る。ある好ましい態様において、本発明の潤滑油組成物は、主に(例えば、50モル%より多く、例えば60モル%より多く)二級アルコールから誘導されたジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む。
【0052】
酸化防止剤または抗酸化剤は、鉱油が使用中に劣化する傾向を低減する。酸化的劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス様堆積物により、また、粘度上昇により証明され得る。そのような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、好ましくは炭素数5〜12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、カルシウムノニルフェノールスルフィド、油溶性フェナート及び硫化フェナート、ホスホ硫化又は硫化炭化水素、又はリンエステル、チオカルバミン酸金属塩、油溶性銅化合物(米国特許第4,867,890号に記載されたもの)及びモリブデン含有化合物が挙げられる。
一つのアミン窒素に直接結合する少なくとも二つの芳香族基を有する一般的な油溶性芳香族アミンの炭素数は、6〜16である。アミンは、二つより多い芳香族基を含んでいてもよい。また、全部で少なくとも三つの芳香族基を有する化合物であって、そのうちの二つの芳香族基が共有結合により又は原子若しくは基(例えば、酸素若しくは硫黄原子、又は-CO-、-SO2-若しくはアルキレン基)により連結され且つ二つの芳香族基が一つのアミン窒素に直接結合されている化合物は、窒素に直接結合する少なくとも二つの芳香族基を有する芳香族アミンと考えられる。芳香環は、一般的にアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ及びニトロ基から選ばれる一つ以上の置換基により置換される。
【0053】
多くの抗酸化剤は、一般的に組合せで使用される。一つの好ましい態様において、本発明の潤滑油組成物は、アミン性抗酸化剤約0.1〜約1.2質量%及びフェノール性抗酸化剤約0.1〜約3質量%を含む。他の好ましい態様において、本発明の潤滑油組成物は、アミン性抗酸化剤約0.1〜約1.2質量%、フェノール性抗酸化剤約0.1〜約3質量%、及びモリブデン約10〜約1000ppmを潤滑油組成物に提供する量のモリブデン化合物を含む。
好適な粘度調整剤の代表的な例は、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、スチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン及びイソプレン/ブタジエンの部分的水素化コポリマ−、並びにブタジエンとイソプレンの部分的水素化ホモポリマーである。
【0054】
最終的な油の他の成分と相性のよい摩擦調整剤及び燃料節約剤を含んでいてもよい。そのような材料の例としては、高級脂肪酸のグリセリルモノエステル、例えばグリセリルモノオレート;長鎖ポリカルボン酸とジオールとのエステル、例えば、二量化不飽和脂肪酸のブタンジオールエステル;オキサゾリン化合物;並びに、アルコキシル化アルキル置換モノアミン、ジアミン及びアルキルエーテルアミン、例えばエトキシル化獣脂アミン及びエトキシル化獣脂エーテルアミンが挙げられる。
他の公知の摩擦調整剤は、油溶性有機モリブデン化合物を含む。また、そのような有機モリブデン摩擦調整剤は、潤滑油組成物に抗酸化性及び耐摩耗性の性質を提供する。そのような油溶性有機モリブデン化合物の例としては、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、ジチオホスフィネート、キサンテート、チオキサンテート、スルフィド等及びそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいものは、モリブデンジチオカルバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート及びアルキルチオキサンテートである。
【0055】
さらに、モリブデン化合物は、酸性のモリブデン化合物であってもよい。これらの化合物は、ASTM試験D-664又はD-2896滴定方法により測定した場合、塩基性窒素化合物と反応すると考えられ、典型的には六価である。例えば、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、他のアルカリ金属モリブデン酸塩及び他のモリブデン塩、例えばモリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン又は同様な酸性モリブデン化合物が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物に有用なモリブデン化合物は、次の式の有機モリブデン化合物である:
Mo(ROCS2)4及び
Mo(RSCS2)4
(式中、Rは、アルキル、アリール、アラルキル及びアルコキシアルキルからなる群より選ばれる有機基であり、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数2〜12であり、最も好ましくは炭素数2〜12のアルキルである)。特に好ましくはモリブデンのジアルキルジチオカルバメートである。
【0057】
本発明の潤滑剤組成物に有用な他の群の有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、具体的には式Mo3SkLnQzのもの及びそれらの混合物である(式中、Lは、油中において化合物に可溶性又は分散性を与えるのに充分な炭素数の有機基を有する、独立して選ばれたリガンドであり、nは1〜4であり、kは4〜7であり、Qは、中性の電子供与化合物の群、例えば水、アミン、アルコール、ホスフィン及びエーテルから選ばれ、zは0〜5であり且つ非化学量論的な値を含む)。全部で少なくとも21、例えば少なくとも25、少なくとも30、又は少なくとも35の炭素原子は、全てのリガンドの有機基内に存在するべきである。
【0058】
粘度指数向上剤分散剤は、粘度指数向上剤及び分散剤の両方として機能する。粘度指数向上剤分散剤の例としては、アミン、例えばポリアミンの、ヒドロカルビル置換モノ-又はジカルボン酸との反応生成物が挙げられ、そのヒドロカルビル置換基は、化合物に粘度指数向上特性を与えるのに充分な長さの鎖を含む。一般的に、粘度指数向上剤分散剤は、例えば、ビニルアルコールの炭素数4〜24の不飽和エステル又は炭素数3〜10の不飽和モノカルボン酸若しくは炭素数4〜10のジカルボン酸と、炭素数4〜20の不飽和窒素含有モノマーとのポリマー;アミン、ヒドロキシアミン若しくはアルコールで中和された炭素数3〜10の不飽和モノカルボン酸若しくはジカルボン酸と、炭素数2〜20のオレフィンとのポリマー;又は、炭素数4〜20の不飽和窒素含有モノマーをグラフト化するか若しくはポリマー主鎖上に不飽和酸をグラフト化するかのいずれかによりさらに反応させ、その後、グラフト化した酸のカルボン酸基をアミン、ヒドロキシアミン又はアルコールと反応させることによりさらに反応させた、炭素数3〜20のオレフィンと、エチレンとのポリマーであってもよい。
【0059】
流動点降下剤、或いは潤滑油流動性向上剤(LOFI)として公知のものは、液体が流動するか又は注ぐことができる最低温度を低下させる。そのような添加剤はよく知られている。液体の低温流動性を向上させる一般的なそれらの添加剤は、炭素数8〜18のジアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマー及びポリメタクリレートである。泡の制御は、ポリシロキサンタイプ、例えばシリコーン油又はポリジメチルシロキサンの消泡剤により提供され得る。
幾つかの前記添加剤は、多様な効果を提供することが可能であり;従って、例えば単一の添加剤を分散剤-酸化防止剤として作用させてもよい。このアプローチはよく知られており、ここでさらに詳述する必要はない。
【0060】
一つの好ましい態様において、本発明の潤滑油組成物は、式(II)の化合物と組み合わせて、以下のものを含む高分子量ポリマーをさらに含む;(i)水素化ポリ(モノビニル芳香族炭化水素)とポリ(共役ジエン)のコポリマー、ここで水素化ポリ(モノビニル芳香族炭化水素)セグメントは少なくとも約20質量%のコポリマーを含む;(ii)アルキルアミン、アリールアミン若しくはアミド基、窒素含有複素環基又はエステル結合を含むオレフィンコポリマー;及び/又は、(iii)分散基を有するアクリレート又はアルキルアクリレートコポリマー誘導体。
【0061】
水素化ポリ(モノビニル芳香族炭化水素)とポリ(共役ジエン)のコポリマーであって、水素化ポリ(モノビニル芳香族炭化水素)セグメントが前記コポリマーの少なくとも約20質量%を構成するもの(以後「ポリマー(i)」)は、公知の粘度調整剤であり、例えばSV151((Infineum USA L.P.)として市販されている。そのような材料の形成に有用な好ましいモノビニル芳香族炭化水素モノマーとしては、スチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、ビニルナフタレン及びアルキル置換ビニルナフタレンが挙げられる。アルキル及びアルコキシ置換基は、典型的には炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4であってもよい。1分子当たりのアルキル又はアルコキシ置換基の数は、もし存在するならば、1〜3であってもよく、好ましくは1である。
【0062】
そのような材料の形成に有用な好ましい共役ジエンモノマーは、炭素数4〜24の共役ジエンであり、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン(piperylene)、メチルペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン及び4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンが挙げられる。
好ましいものは、少なくとも一つのポリ(モノビニル芳香族炭化水素)ブロック及び少なくとも一つのポリ(共役ジエン)ブロックを含むブロックコポリマーである。好ましいブロックコポリマーは、式ABのものから選ばれ、式中Aは、主にポリ(モノビニル芳香族炭化水素)のブロックポリマーを表し、Bは主にポリ(共役ジエン)のブロックを表す。
【0063】
好ましくは、ポリ(共役ジエン)ブロックは、部分的又は完全に水素化されている。より好ましくは、モノビニル芳香族炭化水素は、スチレン及び/又はアルキル置換スチレン、具体的にはスチレンである。好ましい共役ジエンは、炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜6のものである。イソプレン及びブタジエンは、最も好ましい共役ジエンモノマーである。好ましくは、ポリ(イソプレン)は水素化されている。
ブロックコポリマー及び選択的に水素化されたブロックコポリマーは、当技術分野において公知であり、市販されている。そのようなブロックコポリマーは、sec-ブチルリチウムなどのアルカリ金属開始剤を用いるアニオン性重合により製造することが可能であり、それは例えば米国特許第4,764,572号;第3,231,635号;第3,700,633号及び第5,194,530号に記載されている。
【0064】
ブロックコポリマーのポリ(共役ジエン)ブロックは、典型的にはブロックの残留エチレン性不飽和が水素化前の不飽和レベルの20%以下、より好ましくは5%以下、最も好ましくは2%以下に低減するような程度まで、選択的に水素化されてもよい。これらのコポリマーの水素化は、充分に確立された様々なプロセス、例えば、触媒、例えばラネーニッケル、貴金属、例えば白金等、可溶性遷移金属触媒及びチタン触媒の存在下での水素化を使用して米国特許第5,299,464号に記載されるように行ってもよい。
二価カップリング剤での連続的重合又は反応を使用して、線状ポリマーを形成することができる。また、カップリング剤は、ジビニルベンゼンのような二つの別々の重合可能なビニル基を有するモノマーの重合により、in situ形成され、約6〜約50のアームを有するスターポリマーを提供することができることは知られている。2〜8の官能基を含む二価及び多価カップリング剤並びにスターポリマーの形成方法はよく知られており、そのような材料は市販されている。
【0065】
第二の部類の高分子量ポリマーは、分散基、例えばアルキルアミン、アリールアミン若しくはアミド基、窒素含有複素環基又はエステル結合を含む、オレフィンコポリマー(OCP)である(以後、「ポリマー(ii)」)。これらのポリマーは、潤滑油組成物中の多官能性分散剤粘度調整剤として従来使用されてきた。オレフィンコポリマーは、オレフィンモノマーのいずれかの組合せを含むことが可能であるが、最も一般的にはエチレンと少なくとも一つの他のα-オレフィンとである。少なくとも一つの他のα-オレフィンモノマーは、通常は炭素数3〜18のα-オレフィンであり、最も好ましくはプロピレンである。よく知られているように、エチレンと高級α-オレフィン、例えばプロピレンとのコポリマーは、多くの場合、他の重合可能なモノマーを含む。典型的なこれらの他のモノマーは、例えば、以下のような非共役ジエンであるが、それらの例に限定されない;
a. 直鎖ジエン、例えば1,4-ヘキサジエン及び1,6-オクタジエン;
b. 分枝鎖非環式ジエン、例えば5-メチル-1,4-ヘキサジエン;3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン;3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン;及び、ジヒドロ-マイセン(mycene)及びジヒドロオシネンの混合アイソマー;
c. 単環脂環式ジエン、例えば1,4-シクロヘキサジエン;1,5-シクロオクタジエン;及び1,5-シクロドデカジエン;
d. 多環脂環式縮合及び架橋環ジエン、例えば、テトラヒドロインデン;メチルテトラヒドロインデン;ジシクロペンタジエン;ビシクロ-(2,2,1)-ヘプタ-2,5-ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル及びシクロアルキリデンノルボルネン、例えば、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-プロピレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンチエニル)-2-ノルボルネン;5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン。
【0066】
一般的に使用される非共役ジエンのうち、少なくとも一つの二重結合を張力環中に含むジエンが好ましい。最も好ましいジエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)である。コポリマー中のジエンの量(質量をベースとして)は、0%〜約20%であり、0%〜約15%が好ましく、0%〜約10%が最も好ましい。既に示したように、最も好ましいオレフィンコポリマーは、エチレン-プロピレンである。コポリマーの平均エチレン含量は、質量をベースとして20%程度に少なくてもよい。好ましい最小エチレン含量は、約25%である。より好ましい最小値は、30%である。最大エチレン含量は、質量ベースで90%程度に多くてもよく、好ましくは最大エチレン含量は85%、最も好ましくは約80%である。好ましくはオレフィンコポリマーは、エチレン約35〜75質量%、より好ましくはエチレン約50〜約70質量%を含む。
オレフィンコポリマーの分子量(数平均分子量)は、2000程度に低くてもよいが、好ましい最小値は10,000である。より好ましい最小値は15,000であり、最も好ましい最小数平均分子量は20,000である。最大数平均分子量は、12,000,000程度に高くてもよいと考えられる。好ましい最大値は約1,000,000であり、最も好ましい最大値は約750,000である。本発明のオレフィンコポリマーの特に好ましい範囲の数平均分子量範囲は、約50,000〜約500,000である。
【0067】
オレフィンコポリマーは、窒素含有極性部分(例えば、アミン、アミン-アルコール又はアミド)をポリマー主鎖に結合させることにより、多官能性にすることができる。窒素含有部分は、慣習的に、式R-N-R'R''で表され、式中、R、R'及びR''は、独立して、アルキル、アリール又はHを表す。また、好適なものは、式R-R'-NH-R''-Rの芳香族アミンであり、式中R'及びR''は芳香族基であり、それぞれRはアルキルを表す。多官能性OCP粘度調整剤を形成するための最も一般的な方法は、ポリマー主鎖への窒素含有極性部分のフリーラジカル付加を含む。窒素含有極性部分は、ポリマー中の二重結合(即ちEPDMポリマーのジエン部分の二重結合)を使用するか、又は二重結合を含有する架橋基を提供する化合物(例えば、米国特許第3,316,177号;第3,326,804号に記載される無水マレイン酸;及び、例えば米国特許第4,068,056号に記載されるようなカルボン酸及びケトン)とポリマーとを反応させ、続いて官能化されたポリマーを窒素含有極性部分で誘導体化することにより、ポリマーに結合させることが可能である。官能化OCPと反応することが可能な窒素含有化合物のより完全なリストは、分散剤の議論において以下に記載する。多官能化OCP及びそのような材料の形成方法は本技術分野で公知であり、また市販されている(例えば、Afton Corporationから入手可能なHITEC 5777及びDutch Staaten Minenの製品、PA1160)。
【0068】
好ましくは、エチレン約50質量%を含有し、数平均分子量10,000〜20,000を有し、無水マレイン酸でグラフト化され、アミノフェニルジアミン及び他の分散剤アミンでアミン化された、低級エチレンオレフィンコポリマーである。
本発明の実施に有用な第三の部類のポリマーは、分散基を有するアクリレート又はアルキルアクリレートコポリマー誘導体である(以後、ポリマー(iii))。これらのポリマーは、潤滑油組成物中、多機能性分散剤粘度調整剤として使用されており、このタイプの低分子量ポリマーは、多機能性分散剤/LOFIとして使用されてきた。そのようなポリマーは、例えば、ACRYLOID954、(RohMax USA Inc.の製品)として市販されている。ポリマー(iii)の形成に有用なアクリレート又はメタクリレートモノマー及びアルキルアクリレート又はメタクリレートモノマーは、対応するアクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの誘導体から製造することができる。そのような酸は、公知かつ通常の技術を使用して誘導することができる。例えば、アクリル酸は、酸性加水分解及びエチレンシアノヒドリンの脱水により、又はβ-プロピオラクトンの重合及びアクリル酸を形成するためのポリマーの分解蒸留により、製造することができる。メタクリル酸は、メチルα-アルキルビニルケトンの次亜塩素酸金属での酸化;ヒドロキシイソブチル酸の五酸化リンでの脱水;又は、アセトンシアノヒドリンの加水分解により、製造することができる。
【0069】
アルキルアクリレート又はメタクリレートモノマーは、所望の一級アルコールをアクリル酸又はメタクリル酸と、酸、好ましくはp-トルエンスルホン酸により触媒され、またMEHQ又はヒドロキノンにより重合が阻害される通常のエステル化で反応させることにより製造することができる。好適なアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートは、アルキル炭素鎖中に炭素原子約1〜約30を含む。出発アルコールの一般的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、イソオクチルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、パルミチルアルコール及びステアリルアルコールが挙げられる。出発アルコールは、アクリル酸又はメタクリル酸と反応させられて、それぞれ所望のアクリレート及びメタクリレートを形成することができる。これらのアクリレートポリマーは、数平均分子量10,000〜1,000,000、好ましくは数平均分子量約200,000〜600,000であってもよい。
【0070】
分散基を有するアクリレート又はメタクリレートを提供するために、アクリレート又はメタクリレートモノマーはアミン含有モノマーで共重合されるか、又はグラフト化に好適な部位を含むようなアクリレート若しくはメタクリレート主鎖ポリマーが提供されて、この主鎖上にアミン含有モノマーを重合することによってアミン含有分枝をグラフトされる。
アミン含有モノマーの例としては、塩基性アミノ置換オレフィン、例えばp-(2-ジエチルアミノエチル)スチレン;例えばビニルピリジン又はビニルピロリドンなどの重合可能なエチレン性不飽和置換基を有する、塩基性窒素含有複素環;不飽和カルボン酸とアミノアルコールとのエステル、例えばジメチルアミノエチルメタクリレート;及び、重合不飽和塩基性アミン、例えばアリルアミンが挙げられる。
【0071】
好ましいポリマー(iii)材料としては、窒素0.1〜0.4質量%を含有する平均炭素数8〜12のエステルとアルコールとのブレンドから製造されるポリメタクリレートコポリマーが挙げられる。
最も好ましくは、N-Nジメチルアミノアルキルメタクリレートの形態で提供される、窒素0.2〜0.25質量%を含有する平均炭素数9〜10のエステルとアルコールとのブレンドから製造されるポリメタクリレートコポリマーである。
【0072】
本発明の実施に有用な潤滑油組成物は、ポリマー(i)、(ii)、(iii)又はそれらの混合物を、ポリマー質量をベースとして、約0.10〜約2質量%;より好ましくは約0.2〜約1質量%、最も好ましくは約0.3〜約0.8質量%含む。或いは、多機能性成分の議論において;具体的にはポリマー(ii)及び(iii);これらの成分は、潤滑油組成物に存在して、窒素含量約0.0001〜約0.02質量%、好ましくは約0.0002〜約0.01質量%、最も好ましくは約0.0003〜約0.008質量%を提供する。ポリマー(i)、(ii)、(iii) 及びそれらの混合物は、潤滑油組成物中に唯一のVM及び/又はLOFIを含む必要はなく、他のVM、例えば非官能化オレフィンコポリマーVMと、例えばアルキルフマレート/ビニルアセテートコポリマーLOFIとを、それらと組み合わせて使用してもよい。例えば、本発明のヘビーデューティーディーゼルエンジンは、高分子量ポリマーが水素化スチレン-イソプレンブロックコポリマー約10〜約90質量%と非官能化OCP約10〜約90質量%とを含む混合物である潤滑油組成物を用いて潤滑されてもよい。
【0073】
本発明において、ブレンドの粘度の安定性を維持する添加剤を含むことが必要であってもよい。例えば、極性基含有添加剤は、予備混合段階において好適な低粘度を達成するが、長期間に亘って貯蔵された場合に粘度が増加することが幾つかの組成物で観察された。この粘性を制御するのに効果的な添加剤は、前記のような無灰分散剤の製造に使用されるモノ-若しくはジカルボン酸又は無水物との反応によって官能化される長鎖炭化水素を含む。
潤滑剤組成物が一つ以上の添加剤を含む場合、各添加剤は、一般的に、その望ましい機能を添加剤が提供する量で基油にブレンドされる。そのような添加剤がクランク室潤滑剤に使用される場合の代表的な有効量を以下に記載する。記載した全ての値は、活性成分の質量%として示した。
【表2】

【0074】
本発明の完全配合潤滑油組成物の硫黄含量は、約0.4質量%未満、より好ましくは約0.35質量%未満、より好ましくは約0.03質量%未満、例えば約0.15質量%未満である。好ましくは、完全配合潤滑油組成物(潤滑粘度の油プラス全ての添加剤)のNoack揮発度は、13以下、例えば12以下、好ましくは10以下であり得る。本発明の完全配合潤滑油組成物のリン含量は、好ましくは1200ppm以下、例えばリン1000ppm以下、又はリン800ppm以下である。本発明の完全配合潤滑油組成物の硫酸灰分(SASH)含量は、好ましくは約1.0質量%以下である。
添加剤を含む一つ以上の添加剤コンセントレート(コンセントレート、ある場合には添加剤パッケージと呼ばれる)を製造することは必須ではないが、一方幾つかの添加剤を油に同時に添加して潤滑油組成物を形成することができることが望ましい場合もある。本発明の潤滑油組成物を製造するためのコンセントレートは、例えば、式(II)の化合物約0.15〜約20質量%;窒素含有分散剤約10〜約40質量%;アミン性抗酸化剤、フェノール性抗酸化剤、モリブデン化合物、又はそれらの混合物約2〜約20質量%;清浄剤約5〜40質量%;ジヒドロカルビルジチオリン酸塩約2〜約20質量%を含んでいてもよい。
【0075】
最終的な組成は、そのようなコンセントレート5〜25質量%、好ましくは5〜18質量%、一般的には10〜15質量%を使用してもよく、残りは潤滑粘度の油及び粘度調整剤を使用することができる。
ここに表した全ての質量%(特に規定しない限り)は、添加剤の活性成分(A.I.)含量、及び/又はいずれかの添加剤パッケージ又は配合物の合計質量(各添加剤のA.I質量と、油又は希釈剤の全質量との合計である)をベースとしている。
本発明は、特に規定しない限り、全ての部を質量部で表し、以下の実施例を参考にさらに理解されるであろう。
【実施例】
【0076】
[合成実施例1:式(II)の化合物の製造]
<工程1;2-(2-ナフチルオキシ)エタノールの製造>
機械的スターラー、コンデンサー/Dean-Starkトラップ、及び窒素用入り口を備えた2リットル樹脂ケトルに、2-ナフトール(600g、4.16モル)、エチレンカーボネート(372g、4.22モル)及びキシレン(200g)を充填し、その混合物を窒素下で90℃まで加熱した。水酸化ナトリウム水溶液(50質量%、3.0g)を添加し、165℃の共沸蒸留により水を除去した。この反応混合物を165℃で2時間保持した。反応の進行と共にCO2が放出され、その反応を測定し、CO2の発生が止んだ時、反応が完了に近づいたと判定した。生成物を集め、室温まで冷却しながら凝固させた。反応の完了を、FT-IR及びHPLCにより確認した。2-(2-ナフチルオキシ)エタノール生成物の構造を、1H-NMR及び13C-NMRにより確認した。
<工程2;2-(2-ナフチルオキシ)エタノールのオリゴマー化>
機械的スターラー、コンデンサー/Dean-Starkトラップ、及び窒素用入り口を備えた2リットル樹脂ケトルに、工程1で得られた2-(2-ナフチルオキシ)エタノール、トルエン(200g)、SA117(60.0g)を充填し、その混合物を窒素下で70℃まで加熱した。70〜80℃でパラホルムアルデヒドを15分間かけて加え、90℃まで加熱し、反応混合物をその温度で30分〜1時間保持した。温度を2〜3時間かけて110℃〜120℃まで徐々に上昇させ、水(75〜83ml)を共沸蒸留により除去した。ポリマーを回収し、室温まで冷却しながら凝固させた。内部標準としてポリスチレン標準物質を使用し、GPCにより数平均分子量を測定して、2-(2-ナフチルオキシ)エタノールの溶出量で補正した。THFを溶出剤として使用した。(数平均分子量1000ダルトン)。1H-及び13C-NMRにより構造を確認した。FDMS及びMALDI-TOFは、その生成物が、2〜24の2-(2-ナフチルオキシ)エタノール単位(mは1〜23である)を含有する式(I)のメチレン架橋2-(2-ナフチルオキシ)エタノールオリゴマーの混合物を含むことを示した。
【0077】
<工程3;メチレン架橋2-(2-ナフチルオキシ)エタノールオリゴマーとアシル化剤(PIBSA)との反応>
機械的スターラー、コンデンサー/Dean-Starkトラップ、及び窒素用入り口、さらに漏斗を備えた5リットル樹脂ケトルに、工程2で得られたポリ(2-(2-ナフチルオキシ)エタノール)-コ-ホルムアルデヒド)、トルエン(200g)を充填し、混合物を窒素下で120℃まで加熱した。ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA 数平均分子量450、2,500g)を数回に分けて加え(およそ250gを30分間隔毎)、温度を120℃で2時間維持し、その後、窒素パージ下、さらに2時間、140℃まで加熱し、全ての溶剤を取り除いて恒量にした。ベース油(AMEXOM 100N、1100g)を加え、生成物を室温で回収した。GPC及びFT-IRにより所望の構造を確認した。
前記合成を表す反応スキームを以下に示す:
【化5】

[性能実施例1]
式(II)の化合物の煤分散性能を、カーボンブラックベンチ試験(CBBT)により測定した。CBBTでは、最終油のサンプルを増加量のカーボンブラックと90℃で一晩サンプルを攪拌しながら混合し、回転式粘度計を使用して粘度及びインデックス(index)についてサンプルを評価することにより、カーボンブラックを分散させる最終油サンプルの能力を評価した。回転式粘度計の剪断速度は、300秒-1まで変化し、剪断対ログ粘度のプロットを得た。粘度がニュートンの場合、プロットの傾き(インデックス)が単一に近づくほど、煤が良好に分散性されていることを示す。インデックスが明らかに単一を欠く場合、ずり減粘(shear thinning)が存在して乏しい煤分散性を示す。
市販の完全配合「PC-9」ヘビーデューティーディーゼル (HDD)クランク室潤滑剤を表す対照サンプルを製造した。対照サンプル(Comp. 1)は、多量の潤滑粘度の油;粘度調整剤;並びに、高分子量分散剤、過塩基性清浄剤、耐摩耗剤(ZDDP)、無灰抗酸化剤及び流動性向上剤(LOFI)を含む添加剤パッケージを含んでいた。高分子量分散剤は、窒素含量約0.09質量%の完全配合潤滑剤を提供する量で加えた。本発明(Inv.1)を表すサンプルは、対照サンプルに合成実施例Iの化合物2質量%を加えることにより製造した。カーボンブラック8〜12%を負荷した新鮮なサンプルを、上述の様式により評価した。サンプルのインデックス及び粘性(cP)を、以下の表III及びIVにそれぞれ示した:
【0078】
【表3】

【表4】

【0079】
前記データに示すように、式(II)の化合物を含有する配合潤滑剤は、従来の潤滑剤と比較して、カーボンブラックの存在下、インデックス及び粘性が向上した。
潤滑油組成物中の窒素は、通常のフルオロエラストマーエンジンシールに悪影響を有することが知られている。窒素含有分散剤も含有する潤滑剤中に、式(II)の化合物を含めることにより、これらの悪影響が改善されることが見出された。この作用を示すために、AK6シール材料ダイムラークライスラーシール試験(Daimler Chrysler Seals Test)VDA 675301(「閉カップ(closed cup)」;7日間)を使用して、Comp.1及びInv.1をダイムラークライスラー(メルセデスベンツ)シール試験で比較した。AK6は、Viton(商標)材料;車両エンジンシールに一般的に使用されるフルオロエラストマー材料である。比較の結果を以下の表Vに示した:
【0080】
【表5】

【0081】
試験の終了時でのフルオロエラストマーシール材料の引張強さの変化が低減することにより、式IIの化合物の添加によりシール適合性の向上が達成されたことが示された。
ここに記載した全ての特許、文献及び他の資料は、全体として参考文献として本明細書に含まれるものとする。ここに及び添付の特許請求の範囲に示すように、多数の明記した成分を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる組成物の記載は、前記多数の明記の成分を混合することにより製造される組成物をまた含むと解釈されるべきである。本発明の原理、好ましい態様及び作動形態を前記明細書に記載した。出願人が提示したものはそれらの発明であるが、開示した態様は限定的ではなく説明とみなされるため、開示した特定の態様に限定すると解釈されるべきではない。変更は、本発明の範囲から外れることなしに、当業者により加えられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の化合物:
【化1】

(式中、
各Arは、独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ハロ及びそれらの組合せからなる群より選ばれる0〜3の置換基を有する芳香族部分を表し;
各Lは、独立して、炭素-炭素単結合又は連結基を含む連結部分を表し;
各Yは、独立して、式H(O(CR2)n)yX-部分を表し、ここで、Xは、(CR'2)z、O及びSからなる群より選ばれ;R及びR'は、それぞれ独立して、H、炭素数1〜6のアルキル及びアリールから選ばれ;zは1〜10であり;nは、Xが(CR'2)Zの場合、0〜10であり、XがO又はSの場合、2〜10であり;yは1〜30であり;
各aは、独立して0〜3を表すが、ただし、少なくとも1つのAr部分は、少なくとも1つの基Yを有し;
mは1〜100である)。
【請求項2】
YがH(O(CR2)2)y-であり、yが1〜6である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arがナフタレンであり、YがHOCH2CH2O-であり、且つLがCH2である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Arが、2-(2-ナフチルオキシ)-エタノールから誘導され、mが2〜25である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1の化合物とアシル化剤との反応生成物。
【請求項6】
アシル化剤が、約100〜約5000の数平均分子量を有するポリアルキルコハク酸アシル化剤又はポリアルケニルコハク酸アシル化剤である、請求項5に記載の反応生成物。
【請求項7】
アシル化剤がヒドロカルビルイソシアネートである、請求項5に記載の反応生成物。
【請求項8】
請求項4に記載の化合物と、約100〜約5000の数平均分子量を有するポリアルキルコハク酸アシル化剤又はポリアルケニルコハク酸アシル化剤との反応生成物。
【請求項9】
請求項4に記載の化合物とヒドロカルビルイソシアネートとの反応生成物。
【請求項10】
ナフチルオキシエタノールとホルムアルデヒドを酸の存在下において反応させ、メチレン架橋ナフチルオキシエタノール化合物を生成させることを含む、請求項3に記載の化合物を生成する方法。
【請求項11】
ナフチルオキシエタノールが、(i)ヒドロキシルナフタレン化合物とエチレンカーボネートを塩基触媒の存在下で反応させてナフチルオキシエタノールを生成させる反応;を含む方法の生成物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
残留している塩基を、ホルムアルデヒドとの反応前に過剰の酸で中和する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸が、油溶性スルホン酸又は固形酸触媒である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
酸触媒の存在下における、メチレン架橋ナフチルオキシエタノール化合物とポリアルキルコハク酸アシル化剤又はポリアルケニルコハク酸アシル化剤との反応を含む、請求項8に記載の反応生成物を生成する方法。
【請求項15】
メチレン架橋ナフチルオキシエタノール化合物が、(i) 塩基触媒の存在下でヒドロキシルナフタレン化合物をエチレンカーボネートと反応させて、ナフチルオキシエタノールを生成する工程;(ii)前記塩基を過剰の酸で中和して、中間体を提供する工程;及び、(iii)残留する酸の存在下で、前記中間体をホルムアルデヒドと反応させる工程;を含む方法の生成物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
酸が、油溶性液体酸触媒又は固形酸触媒である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
アシル化剤が、約300〜約5000の数平均分子量を有するポリブテニルコハク酸アシル化剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
メチレン架橋ナフチルオキシエタノール化合物とヒドロカルビルイソシアネートとを酸触媒の存在下で反応させることを含む、請求項9に記載の反応生成物を生成する方法。
【請求項19】
メチレン架橋ナフチルオキシエタノール化合物が、(i) 塩基触媒の存在下でヒドロキシルナフタレン化合物をエチレンカーボネートと反応させて、ナフチルオキシエタノールを生成する工程;(ii)前記塩基を過剰の酸で中和して、中間体を提供する工程;及び、(iii) 残留する酸の存在下で、前記中間体をホルムアルデヒドと反応させる工程;を含む方法の生成物である、請求項9に記載の反応生成物を生成するための請求項9に記載の方法。
【請求項20】
酸が、油溶性液体酸触媒又は固形酸触媒である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
以下の式(II)の化合物:
【化2】

(式中、
各Arは、独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、ハロ及びそれらの組合せからなる群より選ばれる0〜3の置換基を有する芳香族部分を表し;
各Lは、独立して、炭素-炭素単結合又は連結基を含む連結部分を表し;
各Yは、独立して、式Z(O(CR2)n)yX-部分を表し、ここで、Xは、(CR'2)z、O及びSからなる群より選ばれ;R及びR'は、それぞれ独立して、H、炭素数1〜6のアルキル及びアリールから選ばれ;zは1〜10であり;nは、Xが(CR'2)Zの場合、0〜10であり、XがO又はSの場合、2〜10であり;yは1〜30であり;ZはH、アシル基、アルキル基又はアリール基であり;
各aは、独立して0〜3を表すが、ただし、少なくとも1つのAr部分は、ZはHではない基Yを少なくとも1つ有し;
mは1〜100である)。
【請求項22】
各Yが、Z(O(CR2)2)yO-部分であり、Zがアシル基であり、yが1〜6である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
Arがナフタレンであり、YがZOCH2CH2O-であり、Zがアシル基であり、LがCH2である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
Arが2-(2-ナフチルオキシ)-エタノールから誘導され、mが2〜25である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Zが、約100〜約5000の数平均分子量を有するポリアルキルポリアルケニルコハク酸アシル化剤又はポリアルケニルコハク酸アシル化剤から誘導される、請求項21に記載の化合物。
【請求項26】
Zが、約100〜約5000の数平均分子量を有するポリアルキルポリアルケニルコハク酸アシル化剤又はポリアルケニルコハク酸アシル化剤から誘導される、請求項23に記載の化合物。
【請求項27】
Zが、ヒドロカルビルイソシアネートから誘導される、請求項21に記載の化合物。
【請求項28】
Zが、ヒドロカルビルイソシアネートから誘導される、請求項23に記載の化合物。
【請求項29】
多量の潤滑粘度の油と少量の請求項21に記載の化合物とを含む、潤滑油組成物。
【請求項30】
窒素含有分散剤をさらに含む、請求項29に記載の潤滑油組成物。
【請求項31】
潤滑油組成物に窒素約0.03質量%〜約0.15質量%を提供する量の窒素含有分散剤と、請求項21記載の化合物約0.005質量%〜約15質量%とを含む、請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項32】
窒素含有分散剤が、約900〜約2500の数平均分子量を有するポリブテンから誘導されたポリブテニルポリアルキレンアミンスクシンイミドである、請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項33】
ポリブテニルポリアルキレンアミンスクシンイミドが、少なくとも一つの(i)ビス-エポキシド化合物;及び(ii)エチレンカーボネートで後処理する、請求項32に記載の潤滑油組成物。
【請求項34】
清浄剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦調整剤、相溶化剤及び粘度調整剤からなる群から選ばれる少なくとも一つの追加の添加剤をさらに含む、請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項35】
アミン性抗酸化剤約0.1質量%〜約1.2質量%及びフェノール性抗酸化剤約0.1質量%〜約3質量%を含む、請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項36】
さらに、モリブデン約10ppm〜約1000ppmを潤滑油組成物に導入する量のモリブデン化合物を含む、請求項35に記載の潤滑油組成物。
【請求項37】
主に二級アルコールから誘導されたジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩を含む、請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項38】
約1200ppm以下のリンを含む、請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項39】
約1000ppm以下のリンを含む、請求項38に記載の潤滑油組成物。
【請求項40】
約800ppm以下のリンを含む、請求項39に記載の潤滑油組成物。
【請求項41】
硫酸灰分含量が約1質量%以下である、請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項42】
さらに、(i)水素化ポリ(モノビニル芳香族炭化水素)及びポリ(共役ジエン)のコポリマー、ここで水素化ポリ(モノビニル芳香族炭化水素)セグメントは前記コポリマーの少なくとも約20質量%を含み;(ii)アルキルアミン、アリールアミン若しくはアミド基、窒素含有複素環基又はエステル結合を含むオレフィンコポリマー;及び/又は、(iii)分散基を有する、アクリレート又はアルキルアクリレートコポリマー誘導体;を含む1以上の高分子量ポリマーを少量含む、請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項43】
多量の潤滑粘度の油が、グループII、グループIII、グループIV若しくはグループVのベースストック、又はそれらの混合物である、請求項29に記載の潤滑油組成物。
【請求項44】
多量の潤滑粘度の油が、ガスツーリキッドプロセスから得られるベースストックである、請求項29に記載の潤滑油組成物。
【請求項45】
エンジンのクランク室を請求項29に記載の潤滑油組成物で潤滑にすること、及びエンジンを操作することを含む、圧縮点火エンジンの操作方法。
【請求項46】
圧縮点火エンジンが排気ガス再循環系を備えている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
エンジンがヘビーデューティーディーゼルエンジンであり、エンジン作動時間の少なくとも10%の時間のあいだ、排気ガス再循環系が吸気及び/又は排気ガス再循環流を露点より低温まで冷却する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(i) 約0.15質量%〜約20質量%の請求項21に記載の化合物;
(ii) 約10質量%〜約40質量%の高分子量窒素含有分散剤;
(iii) 約2質量%〜約20質量%のアミン性抗酸化剤、フェノール性抗酸化剤、モリブデン化合物、又はそれらの混合物、
(iv) 約5質量%〜約40質量%の清浄剤;及び
(v) 約2質量%〜約20質量%のジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩;
を含む潤滑油コンセントレート。

【公開番号】特開2006−225663(P2006−225663A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40321(P2006−40321)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】