説明

熱伝導性粘着剤ならびに該熱伝導性粘着剤が用いられた熱伝導性粘着シート

【課題】 電子機器用として求められる接着力を備えつつ移行性成分の残存が抑制された熱伝導性粘着剤およびこの熱伝導性粘着剤が用いられた熱伝導性粘着シートの提供を課題としている。
【解決手段】 電子機器の発熱部品と、該発熱部品の熱を電子機器外部に放熱させるための放熱部品との接着に用いられ、前記発熱部品から前記放熱部品に熱伝達を行う熱伝導性粘着剤であって、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させたポリウレタン組成物が用いられてなり、前記イソシアネート成分中のイソシアネート基数は、前記ポリオール成分中の水酸基数の50〜65%とされていることを特徴とする熱伝導性粘着剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性粘着剤に関し、より詳しくは、電子機器の発熱部品と、該発熱部品の熱を電子機器外部に放熱させるための放熱部品との接着に用いられる熱伝導性粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータやプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう)などの電子機器においては、発熱部品の熱を放熱させて発熱部品の温度上昇を抑制させるために放熱部品が用いられている。例えば、パーソナルコンピュータでは、CPUやメモリなどの発熱部品の熱をアルミフィンなどの放熱部品で放熱させたりしている。このとき、発熱部品の熱が放熱部品へ効率良く熱伝達されないと発熱部品の温度が上昇し故障を招いたりするおそれがある。そのため、この発熱部品と放熱部品との間に空気層が形成されたりして発熱部品と放熱部品との間の熱抵抗が高くなったりすることを防止するため、従来、放熱グリースや放熱シートといったものが用いられたりしている。これら放熱用グリースや放熱シートは、電子機器内で用いられるため、通常、絶縁体で形成されており、例えば、放熱グリースとしては、無機フィラーを含有したシリコーングリースなどが用いられ、放熱シートとしては無機フィラーを含有したゴムシートなどが用いられたりしている。
【0003】
この放熱グリースは、発熱部品や放熱部品などそれぞれの表面への付着性に優れているが、それ自身は、発熱部品と放熱部品とを接着させるものではなく、例えば、発熱部品と放熱部品とが離間する方向に力が作用した場合には、発熱部品と放熱部品とのずれを抑制させることができず、放熱グリース内部に空気層を形成させてしまう。そのため、このような場合に発熱部品と放熱部品との間の熱抵抗を高くするおそれを有している。また、放熱グリースは、グリース状であるため必要個所以外の部分にも付着しやすく、例えば、接点個所などに付着した場合には導通不良を発生させるおそれを有する。
一方、放熱シートは、通常、発熱部品や放熱部品の表面への付着力が備えられていない。そのため、前述のように発熱部品と放熱部品とが離間する方向に力が作用した場合には、発熱部品や放熱部品の表面と放熱シートとの界面で空気層を形成させ易いものである。
このようなことから、従来、放熱グリースや放熱シートを用いる場合は、通常、発熱部品と放熱部品とをネジや板バネなどの固定用部品を用いて固定する方法が採用されている。そして、放熱シートでは、このネジや板バネの締め付け力により、発熱部品や放熱部品の表面と十分に接触する面圧が加えられている。
【0004】
近年、このような放熱グリースや放熱シートに代えて特許文献1に記載されているような、熱伝導性粘着剤や、この熱伝導性粘着剤をシート状に形成した熱伝導性粘着シートが電子機器用に用いられるようになってきている。この電子機器に用いられる熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートは、表面接着性に優れ発熱部品や放熱部品などの表面に高い接着力で接着すると共に、発熱部品と放熱部品との位置ずれが生じた場合でもそれらに追従する柔軟性(易変形性)が備えられており、特許文献1では、フィラーが含有されたアクリルモノマーを重合させることにより4.4N/cmの表面接着力と、JIS E硬度が58の熱伝導性粘着シートを形成させることがその実施例に記載されている。このような、熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートは、放熱グリースや放熱シートに比べて空隙の形成による熱抵抗が増大するおそれを抑制させるとともに、発熱部品と放熱部品とを固定するためのネジや板バネなどの固定用部品での固定を省略させ発熱部品と放熱部品との固定作業を簡略化させ得るという点から、近年、広く用いられるようになっている。
しかし、従来の電子機器に用いられる熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートは、特許文献1にも記載されているように所望の接着力を備えさせるべくアクリルモノマーを重合させているために、出来上がった熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートにアクリルモノマーなどの低分子成分(移行性成分)が残存しやすいという問題を有している。このアクリルモノマーなどの移行性成分が残存していると、この熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートが使用される電子機器の内部がこの移行性成分で汚染され、導体腐食や、導通不良といった問題を発生させるおそれも有する。さらには、アクリル臭を発して電子機器を使用する使用者に不快感を与えるという問題も有している。
このことに対して、熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートの形成に用いる材料としてポリマー材料を用いることで低分子の移行性成分の残存を抑制させることも考え得るが、従来、特許文献1に示されているようなアクリルモノマーを重合させたもの以外で電子機器に用いられる熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートに求められる接着力を備えるものは得られておらず、したがって、移行性成分の低減についても対策が確立されていない。すなわち、従来の電子機器用の熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートにおいては、求められる接着力を備えつつ移行性成分の残存が抑制されたものを得ることが困難であるという問題を有している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−294192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子機器用の発熱部品と放熱部品と接着に求められる接着力を備えつつ移行性成分の含有が抑制された熱伝導性粘着剤およびこの熱伝導性粘着剤が用いられた熱伝導性粘着シートの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートに用いる材料について検討を行ったところ、ポリオール成分とイソシアネート成分とを所定の割合で反応させることで、熱伝導性粘着剤およびこの熱伝導性粘着剤が用いられた熱伝導性粘着シートを電子機器用として求められる接着力とさせ得ることを見出し、本発明の完成に到ったのである。
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、電子機器の発熱部品と、該発熱部品の熱を電子機器外部に放熱させるための放熱部品との接着に用いられ、前記発熱部品から前記放熱部品に熱伝達を行う熱伝導性粘着剤であって、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させたポリウレタン組成物が用いられてなり、前記イソシアネート成分中のイソシアネート基の数は、前記ポリオール成分中の水酸基の数の50〜65%とされていることを特徴とする熱伝導性粘着剤を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートに用いる材料としてポリマー材料を用いることから、アクリルモノマーを用いた従来の熱伝導性粘着剤および熱伝導性粘着シートに比べて移行性成分の含有を抑制させ得る。
また、熱伝導性粘着剤や熱伝導性粘着シートに用いる材料としてポリオール成分とイソシアネート成分とを、ポリオール成分の水酸基に対してイソシアネート成分のイソシアネート基が数で50〜65%となる割合で反応させることから、熱伝導性粘着剤および熱伝導性粘着シートを電子機器用に求められる接着力とさせ得る。すなわち、熱伝導性粘着剤およびこの熱伝導性粘着剤が用いられた熱伝導性粘着シートを、それらに求められる接着力としつつ移行性成分の含有が抑制されたものとし得る。
したがって、熱伝導性粘着シートによる導体腐食、導通不良、アクリル臭などを抑制させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態についてPDPに用いる熱伝導性粘着シートを例に説明する。
【0010】
本実施形態における熱伝導性粘着シートは、PDPの背面ガラス基板と略同面積を有するシート形状を有し、一面を前記背面ガラス基板略全面に接着させている。また、前記熱伝導性粘着シートの他面は、PDPの背面ガラス基板と略同面積を有する平板形状を備えたアルミシャーシに接着されている。このように熱伝導性粘着シートは、PDPの背面ガラス基板の略全面から発せられる熱をアルミシャーシに伝達すべく、PDPの背面ガラス基板とアルミシャーシとに挟持された状態で配されている。
【0011】
このPDPに用いる電子機器用熱伝導性粘着シートとしては、上記の通り、シートの面積はPDPの背面ガラス基板やアルミシャーシと同等に形成され、厚さは、用いられるPDPの大きさにもよるが通常のPDPに用いられる場合には、好ましくは1.0〜1.5mmとされる。この熱伝導性粘着シートの厚さが1.0〜1.5mmとされることが好ましいのは、通常、PDPのガラス基板では熱膨張による寸法変化が小さいが、アルミシャーシの寸法変化はガラス基板の寸法変化に比べて大きなものとなるため、このガラス基板とアルミシャーシとの寸法変化の違いにより熱伝導性粘着シートに加わる応力を熱伝導性粘着シートの厚さが1.0mm未満の場合には吸収することが困難で熱伝導性粘着シートとガラス基板、あるいは熱伝導性粘着シートとアルミシャーシのいずれかの界面で界面剥離が生じるおそれを有するためである。一方、熱伝導性粘着シートを、1.5mmを超える厚さとしてもそれ以上の界面剥離抑制効果を期待できず、熱伝導性粘着シートの熱抵抗値を増大させてしまうおそれがあるためである。
【0012】
また、このようなPDP用熱伝導性粘着シートとしては、通常、前記背面ガラス基板やアルミシャーシに対する接着力が、2〜10N/cmの引き剥がし強度を有しているものを用いることができる。
なお、この引き剥がし強度とは、10mm幅に切断した熱伝導性粘着シートをステンレス板に接着したときのTピール強度をJIS Z 1541に基づき測定された値を意図している。
【0013】
また、このようなPDP用熱伝導性粘着シートとしては、日本ゴム協会標準規格「SRIS 0101」に規定のASKER C硬度で35以下、特に20〜35の範囲であることが好ましい。
【0014】
次いで、このようなPDP用熱伝導性粘着シートの形成材料について説明する。本実施形態のPDP用熱伝導性粘着シートは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させることにより形成されている。また、このPDP用熱伝導性粘着シートには、無機フィラーが含有されている。
【0015】
前記ポリオール成分としては、アジペート系、ラクトン系、ポリカーボネート系などのポリエステルポリオールや、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールや、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィン系ポリオールや、アクリルポリオールなどを用いることができる。
なお、熱伝導性粘着シートを低硬度で接着性の高いものとし得る点、ならびに、適度な粘度として無機フィラーなどの混練作業の作業性を良好なるものとし得る点において、このポリオール成分としては数平均分子量が1000〜3000且つ平均官能基数2.0〜3.0のポリエステルポリオールを用いることが好ましい。また、このポリオールの数平均分子量(Mn)は、平均官能基数(f)と水酸基価(OHV、単位:mgKOH/g)から下記の式(1)により求めることができる。
Mn=56100×f/OHV ・・・(1)
また平均官能基数(f)は、開始剤の官能基数(fi)と総不飽和度(C=C、単位:meq./g)から下記の式(2)により求めることができる。
f=(OHV/56.1)/[{(OHV/56.1)−(C=C)}/fi+(C=C)]・・・(2)
また、水酸基価(OHV、単位:mgKOH/g)と総不飽和度(C=C、単位:meq./g)とは、JIS K 1557に準じて求めることができる。
【0016】
前記イソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの脂肪族ジイソシアネートや、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI類)、トリジンジイソシアネート(TODI)などの芳香族ジイソシアネートを例示することができる。
なお、前記ポリオール成分としてポリエステルポリオールが用いられる場合には、イソシアネート成分としては、熱伝導性粘着シートを、経年老化による変色を抑制させたものとすることができ、該変色によりPDPの表示性能に悪影響を与えるおそれを抑制し得る点においてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いることが好ましい。
【0017】
前記無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム等の金属酸化物、あるいは、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウム等の窒化物等が用いられる。なかでも、水酸化アルミニウムは安価で、白色性が高く、熱伝導性粘着シートを安価で白色性に優れたPDP用途に好適なものとすることができる点において優れている。さらに水酸化アルミニウムは、200℃前後で結晶水を放出し且つこの結晶水の放出が吸熱反応であることから、熱伝導性粘着シートの難燃性を高めることもできる。
【0018】
これらのポリオール成分、イソシアネート成分およびフィラーは、それぞれ用いる材料の種類にもよるが、ポリオール成分とイソシアネート成分とは、前記ポリオール成分の水酸基に対して前記イソシアネート成分のイソシアネート基が数で50〜65%となる割合で用いられる。なお、ポリオール成分中の水酸基の数は、先述の数平均分子量と平均官能基数とにより求めることができる。すなわち、ポリオールの質量を数平均分子量で除してポリオールの分子数を求め、この分子数と平均官能基数との積がポリオール成分中の水酸基の数となる。
一方イソシアネート成分のイソシアネート基については、用いるイソシアネートの分子構造から分子量と官能基数とを求め、上記ポリオール成分中の水酸基の数の求め方と同様にイソシアネート成分の質量、分子量および官能基数から求めることができる。
また、前記フィラーは、熱伝導性粘着シートの熱伝導率を例えば、0.5W/m・K以上の熱伝導率とし得るように熱伝導性粘着シートに含有される。
【0019】
また、熱伝導性粘着シートには、本発明の効果を損ねない範囲において種々の添加剤を添加することができ、例えば、粘着付与剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、各種安定剤、酸化防止剤、顔料等を添加することができる。
この粘着付与剤としては、天然樹脂系粘着付与剤(水添ロジンやマレイン化ロジン等の変性ロジン、ロジングリセリンエステルや水添ロジングリセリンエステル等のロジンエステル、テルペンフェノール樹脂等)や合成樹脂系粘着付与剤(脂肪族系、脂環族系及び芳香族系の石油樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等)を例示することができる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系、トリアジン系等を例示することができる。
帯電防止剤としては、窒素化合物(長鎖脂肪族アミン、長鎖脂肪族アミド、第4級アンモニウム塩等)、スルホン酸エステル類(アリールアルキルスルホン酸エステル等)、燐酸エステル類(アリールアルキル燐酸エステルや燐酸エステルアミド等)、ポリグリコール及びその誘導体(脂肪酸のポリグリコールエステルやポリグリコールアリル・アルキルエーテル等)を例示することができる。
【0020】
さらに、このような熱伝導性粘着シート形成材料を用いて、熱伝導性粘着シートを形成する方法について説明する。
上記に説明したような熱伝導性粘着シート形成材料を、プラネタリーミキサーなど一般に用いられる混合設備にて混合し、該混合物を、例えば、フッ素コーティングなどの離型処理が両面に施されたPETフィルム上にナイフコート、ロールコート、キスコート、パイプドクターノズルコートなど一般的な方法でコーティングした後に、加熱炉を通過させることでポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させてシート状の成形体(熱伝導性粘着シート)を形成させることができる。
なお、本実施形態においては、移行性成分の低減ならびに表面粘着性と硬度とを求められる値とすることが強く要望されており本発明の効果がより顕著に発揮させ得ることからPDP用熱伝導性粘着シートを例に説明したが、本発明においては熱伝導性剤の使用形態をPDP用熱伝導性粘着シートに限定するものではない。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
(配合)
各実施例、比較例の熱伝導性粘着シートを形成すべく表1に示す配合物を準備した。
なお、各実施例、比較例用の配合物の作成においては、表1に示す配合物の内、ポリイソシアネートを除く配合材料をプラネタリーミキサーを用いて40℃で15分間の混練を行い、室温に冷却した後ポリイソシアネートを加えてさらに10分間の混練を行った。
【0022】
(熱伝導性粘着シートの作成)
次いで、この配合物を離型処理が表面に施された50〜100μm厚さのPETフィルム上にナイフコートによりコーティングし、加熱炉にて140℃×15分間の加熱を行い各実施例、比較例の熱伝導性粘着シートを作成した。
なお、このとき作成した熱伝導性粘着シートの厚さは、約1mmであった。
【0023】
(引き剥がし強度の測定)
25μm厚さのPETフィルムに17μm厚さの接着層を設けてこの接着層に各実施例、比較例の熱伝導性粘着シートを転写して先述の離型処理が表面に施されたPETフィルムを取り去った後に、25μm厚さのPETフィルムごと10mm幅に切断して短冊状試料を作成した。この熱伝導性粘着シートをアルミニウム板、SUS板、ガラス板に手で軽く押付けて接着させ、各部材に対する接着力を測定した。測定は、90度方向に短冊状試料の長手方向端部をつかんで引張り速度300mm/minで引き剥がしたときのTピール強度を室温(23℃)中にて引っ張り試験機を用いて行った。各実施例、比較例の試料を各部材に対して3回ずつ測定した結果についてその平均の値を表2に示す。
【0024】
(硬度の測定)
各実施例、比較例の離型処理が表面に施されたPETフィルムを取り去って熱伝導性粘着シートを10枚重ね合わせて厚さ約10mmの試料を作成し、室温(23℃)中にてASKER C硬度計を用いて日本ゴム協会標準規格「SRIS 0101」に規定のASKER C硬度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0025】
【表1】

※ 表中の配合剤の数値は重量部を表す。また、各配合剤は以下のものを使用した。
ポリオール1:ジエチルペンタジオールからなる分子量2000のポリエステルポリオール(協和発酵ケミカル社製「キョーワポール2000PA」)
ポリオール2:ジエチルペンタジオールからなる分子量1000のポリエステルポリオール(協和発酵ケミカル社製「キョーワポール1000PA」)
ポリオール3:ブチルエチルプロパンジオールからなる分子量2000のポリエステルポリオール(協和発酵ケミカル社製「キョーワポール1000BA」)
触媒:ジブチルジラウレート
老化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社「IRGANOX1135」)
難燃剤1:水酸化アルミニウム(昭和電工社製「ハイジライトH32」)
難燃剤2:水酸化アルミニウム(昭和電工社製「ハイジライトH10」)
イソシアネート1:ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン社製「コロネートHX」)
【0026】
【表2】

※比較例1では、シートが柔らかすぎて接着力ならびに硬度を測定することができなかった。
【0027】
なお、この実施例1〜4、比較例2、3について、別途熱伝導率を測定したところ全て0.45〜0.50W/m・Kの値を有していることも確認された。
また、アクリルモノマーを用いた従来の熱伝導性粘着剤のように臭気を感じることはなかった。
このようにポリオール成分とイソシアネート成分とを、ポリオール成分の水酸基に対してイソシアネート成分のイソシアネート基が数で50〜65%となる割合で反応させることで熱伝導性粘着剤をアルミニウム、ステンレス、ガラスなど種々の部材に対して優れた接着性を示すものとすることができ、電子機器用に求められる接着力とさせ得ることがわかる。
しかも、ポリマー材料を用いていることからも移行性成分の含有を抑制させることができ導体腐食、導通不良、アクリル臭などを抑制させることができることもわかる。
さらに、ポリオール成分とイソシアネート成分とを、ポリオール成分の水酸基に対してイソシアネート成分のイソシアネート基が数で50〜65%となる割合で反応させて形成させた熱伝導性粘着シートは、移行性成分が抑制されて求められる接着力に形成されていることに加えて、求められる柔軟な硬度を有しており、PDP用の熱伝導性粘着シートに好適であることもわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の発熱部品と、該発熱部品の熱を電子機器外部に放熱させるための放熱部品との接着に用いられ、前記発熱部品から前記放熱部品に熱伝達を行う熱伝導性粘着剤であって、
ポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させたポリウレタン組成物が用いられてなり、前記イソシアネート成分中のイソシアネート基の数は、前記ポリオール成分中の水酸基の数の50〜65%とされていることを特徴とする熱伝導性粘着剤。
【請求項2】
前記ポリオール成分には、ポリエステルポリオールが用いられている請求項1に記載の熱伝導性粘着剤。
【請求項3】
電子機器の発熱部品と、該発熱部品の熱を電子機器外部に放熱させるための放熱部品との接着に用いられ、前記発熱部品から前記放熱部品に熱伝達を行う熱伝導性粘着シートであって、
請求項1または2に記載の熱伝導性粘着剤がシート状に成形されてなることを特徴とする熱伝導性粘着シート。
【請求項4】
プラズマディスプレイパネルの背面側ガラス基板と金属シャーシとの接着に用いられる請求項3に記載の熱伝導性粘着シート。

【公開番号】特開2007−169568(P2007−169568A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372849(P2005−372849)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】