説明

熱処理装置

【課題】 半導体ウェハ等の板状被加熱物の面内照度分布を半径方向で均一化し、照度分布がブロードになるまでの距離を短くすることができる熱処理装置を提供することにある。
【解決手段】 ランプ、抵抗ヒータ等の加熱サークル4を同心円状に配置した面状加熱装置1に対し、板状被加熱物5を対向させ且つ回転させるように構成し、板状被加熱物5の回転中心C2を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心C1からずらせ、板状被加熱物5が温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物5の面内温度差が緩和されるように偏心させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ、抵抗ヒータ等の加熱源サークルを同心円状に配置した面状加熱装置に対し、半導体ウェハ等の板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置に係り、特にその板状被加熱物の面内温度分布の均一化を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に、従来の半導体製造装置の構成例を示す。この半導体製造装置は、板状被加熱物としてウェハ保持機構6に支持されたウェハ5の上方に、面状加熱装置1を有する。この面状加熱装置1は、加熱源たる点光源又は線光源のハロゲンランプから成る加熱ランプ3を円弧に沿って配置した加熱源サークル4を1つの群とし、この加熱源サークル4を複数個同心円状に配置して、全体をランプバンクLBとした加熱ユニットから構成されている。なお、ランプバンクLBの背後には反射板2が配置され、各加熱源サークル4から後方へ向かう光を反射して下方のウェハ5を均一に照射するように構成される。
【0003】
加熱ランプ3が線光源のハロゲンランプから成る場合について説明する。図6に示すように、個々の線光源ハロゲンランプ30は、フィラメント34を円形の螺旋状に巻回したコイルフィラメント36を、筒状石英ガラスから成るチューブ40内に直線状に配置して発光体とし、内部に、バネを兼ねた支持ワイヤ42から成る保持機構を配設してコイルフィラメント36を中央に保持すると共に、フィラメントをチューブ両端から引き出してチューブ40を封止し、封止部41に電極36aを設けた構造を有する。
【0004】
この線光源ハロゲンランプ30から成る加熱ランプ3は、ランプのチューブの平面的形状を図8に示す如くサークル(円弧状チューブ)にして、サークル(円形)ランプに構成する。すなわち、図8に示す如く、複数個の加熱ランプ3を円弧に沿って配置することにより1つの加熱源サークル4を構成する。そして、この加熱源サークル4を複数個同心円状に配置して、全体をランプバンクLBとする加熱ユニットとして構成する。
【0005】
また、上記ランプバンクLBの領域を複数個の同心円状のゾーンに区分けする場合もある。例えば、図9に示すように、反応チャンバーを構成する処理容器10内にウェハ5を配設し、該処理容器の上部に光源ハロゲンランプ30の集合から成るランプバンクLBを配置した半導体製造装置において、ランプバンクLBの領域を、同心円状の数で見て3つのゾーンI、II、III(断面で見た6つの区分I、I、II、II、III、IIIのうち、同じ符号I、II、IIIがそれぞれ同じ同心円のゾーン属する)に分割している。このようにランプ領域分割したゾーンごとに、ランプ電力を制御し、それぞれに温度制御用熱電対(炉内に対して配置し、後で抜き出す)を設け、所定の温度になるようにランプ電力を制御する。この制御されたランプからの輻射熱及びランプ光源の反射等で赤外線加熱を行っている。
【0006】
また、ウェハ5の面内温度分布を均一化するため、通常はウェハ5の裏面に密接する均熱板(サセプタ)を配設する等の形で、温度をならすための機構を備えている。また、これだけでは、ランプの配置間隔に比例した温度ムラが生じるため、ウェハ保持機構6によりウェハ5を回転させて温度ムラをなくす様な制御を加えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の熱処理装置では、板状被加熱物たるウェハ5の回転中心が、面状加熱装置1における同心円状の加熱源サークルの中心又は同心円状のゾーンの中心と一致した構造となっている。
【0008】
このため、図7に示すように、下方のウェハ(板状被加熱物)5上における照度Tの分布(板状被加熱物の温度分布と相似)は、面状加熱装置1の中心C1から半径方向に存在するランプの位置r1、r2、r3…rmが到来する毎に、その都度照度Tが最大となり且つその各ランプ相互間では中央で照度Tが最小となる。つまり、ウェハ(板状被加熱物)5の面内照度分布が半径方向で不均一となる。
【0009】
また、この面状加熱装置1から距離dだけ離れた位置の被加熱面の平均照度(被加熱面の平均温度と相似)をTm、振幅をΔTとすると、面状加熱装置1からの距離dがd1、d2と遠く離れるほど平均照度Tm及び振幅ΔTがTm1、Tm2及びΔT、ΔT2と小さくなり、ついには面内照度の高低差が許容できる程度のものとなって、いわゆる照度分布がブロードになる。しかし、従来では、この照度分布がブロードになるまでの距離dを比較的大きくとる必要があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、半導体ウェハ等の板状被加熱物の面内照度分布を半径方向で均一化し、照度分布がブロードになるまでの距離を短くすることのできる熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
第1の発明に係る熱処理装置は、加熱源を円弧に沿って配置した加熱源サークルを複数個同心円状に配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、上記面状加熱装置に対し上記板状被加熱物を面的に対向させた状態で相対的に回転させる回転機構を設け、この回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせ、板状被加熱物が温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物の面内温度差が緩和されるように偏心させたことを特徴とする。
本発明は、板状被加熱物を回転させる機構を有する装置において、加熱源に対する被加熱物の相対回転中心位置を偏心させることにより、加熱源からの照度(エネルギー照射量の強弱)の面的なムラを緩和するように構成したものである。
【0012】
ここで、「加熱源を円又は円弧に沿って配置した加熱源サークル」といった場合、ランプ、抵抗ヒータ等の加熱源を、同一円上に連続的又は断続的に配置した形態のみならず、円、楕円又は渦巻き等の円弧に沿って、つまり円形、楕円状、又は渦巻き状に、連続的又は断続的に配置した形態をも含む。何故なら、本発明は、板状被加熱物の回転中心を、面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせて偏心させることにより、結果的に、板状被加熱物が温度の異なる高低区域(照度の大小区域)を通過する過程で、板状被加熱物の面内温度差が緩和されれば良いからである。
【0013】
本発明は、面状加熱装置の製作的な容易さから見ると、加熱源サークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで、同心円状に複数配置して、面状加熱装置(加熱ユニット)を構成すると良い。
【0014】
しかし、本発明の熱処理装置においては、加熱源サークルの集合である加熱源バンクの領域を、同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割し、これらの加熱源ゾーンに対し、本発明を適用することもできる。
【0015】
本発明の代表的形態は加熱源として加熱ランプを扱った熱処理装置であり、加熱ランプを同一円上に配置して成る加熱ランプサークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで同心円状に配置して面状加熱装置(加熱ユニット)を構成し、この複数の加熱ランプサークルから成る面状加熱装置に対し、シリコンウェハ等の板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した形態のものである。
【0016】
第2の発明に係る熱処理装置は、加熱源を円弧に沿って配置した加熱源サークルを複数個同心円状に配置して加熱源バンクとし、その加熱源バンクの領域を同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、上記回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせ、板状被加熱物が上記加熱源ゾーンの区分について温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物の面内温度差が緩和されるように偏心させたことを特徴とする。
【0017】
これは加熱ゾーンの形態に特定したものである。すなわち、加熱源サークルの集合である加熱源バンクの領域を、同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割し、その同心円状に配置した加熱源ゾーンの各々に、それぞれ複数個の加熱源サークルを所属させた形態のものであり、好ましくは、この加熱源ゾーンの区分と上記偏心量を最適化して、板状被加熱物の面内温度差が無くなるようにする形態のものである。
【0018】
第3の発明に係る熱処理装置は、加熱源を同一円上に配置した加熱源サークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで複数同心円的に配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、上記面状加熱装置に対し上記板状被加熱物を面的に対向させた状態で相対的に回転させる回転機構を設け、この回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円の中心から、その加熱源サークル群のピッチの整数倍だけずらせて偏心させたことを特徴とする。
【0019】
これは加熱源の配置を同一円に、また加熱源サークルの配置をピッチの整数倍とする形態に特定したものである。この形態の代表的なものとしては、上記回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円の中心から、その加熱源サークル群の1ピッチ分だけずらせて偏心させたこと形態がある。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、上記加熱源として加熱ランプを用い、この加熱ランプを同一円上に配置した加熱ランプサークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで複数配置して面状加熱装置を構成し、この複数の加熱ランプサークルから成る面状加熱装置に対し、板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成したことを特徴とする。
これは上記加熱源として加熱ランプを用いた形態を特定したものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。
請求項1の発明によれば、加熱源を円弧に沿って配置した加熱源サークルを複数個同心円状に配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、上記面状加熱装置に対し上記板状被加熱物を面的に対向させた状態で相対的に回転させる回転機構を設け、この回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせ、板状被加熱物が温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物の面内温度差が緩和されるように偏心させたので、例えば加熱源たるランプからの照度(エネルギー照射量の強弱)の面的なムラを、時間的な照射量の平均化効果により緩和することができる。
【0022】
また、従来装置では、温度むらが出ないよう照度分布がブロードになるまで対向距離を大きくとる必要があったが、本発明では板状被加熱物に対する時間的な照射量の平均化効果により、加熱源と被加熱物の対向距離を縮めることが可能であり、省エネルギー化が図られる。
【0023】
また請求項2の発明によれば、加熱源を円弧に沿って配置した加熱源サークルを複数個同心円状に配置して加熱源バンクとし、その加熱源バンクの領域を同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、上記回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせ、板状被加熱物が上記加熱源ゾーンの区分について温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物の面内温度差が緩和されるように偏心させたので、例えばランプによる加熱源ゾーンからの照度(エネルギー照射量の強弱)の面的なムラを緩和することができる。
【0024】
また前提として、加熱源バンクの領域をゾーンに区分したので、照射量の平均化効果が大きくなり均一加熱が実現しやすくなる。
【0025】
また、従来装置では、温度むらが出ないよう照度分布がブロードになるまで対向距離を大きくとる必要があったが、本発明では板状被加熱物に対する時間的な照射量の平均化効果により、加熱源と被加熱物の対向距離を縮めることが可能であり、省エネルギー化が図られる。
【0026】
請求項3の発明によれば、加熱源を同一円上に配置した加熱源サークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで複数同心円的に配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、上記面状加熱装置に対し上記板状被加熱物を面的に対向させた状態で相対的に回転させる回転機構を設け、この回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円の中心から、その加熱源サークル群のピッチの整数倍だけずらせて偏心させたので、その偏心量に相当する振幅で、板状被加熱物の同一箇所が光源側の照度の高い2箇所の間(つまり2つの加熱サークル間)を繰り返し通過する。つまり、第一の加熱サークルに最も近い位置では第二の加熱サークルから最も遠い位置となり、また第二の加熱サークルに最も近い位置では第一の加熱サークルから最も遠い位置となる関係になるため、例えば第一の加熱サークルと第二の加熱サークルのランプによる照度の強弱を互いに相殺し、加熱源たるランプからの照度(エネルギー照射量の強弱)の面的なムラを、効果的に緩和することができる。また、本発明では板状被加熱物に対する照射量の平均化効果により、加熱源と被加熱物の対向距離を縮めることができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、上記加熱源として加熱ランプを用いたので、第一の加熱サークルに最も近い位置では第二の加熱ランプサークルから最も遠い位置となり、また第二の加熱ランプサークルに最も近い位置では第一の加熱ランプサークルから最も遠い位置となる関係になるため、第一の加熱ランプサークルと第二の加熱ランプサークルによる照度の強弱を互いに相殺し、加熱ランプからの照度(エネルギー照射量の強弱)の面的なムラを、効果的に緩和することができる。また、本発明では板状被加熱物に対する照射量の平均化効果により、加熱源と被加熱物の対向距離を縮めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1において、反応チャンバーを構成する処理容器10内には、板状被加熱物たる半導体ウェハ(この例ではシリコンウェハ)5がウェハ保持機構6により支持されている。このウェハ保持機構6は筒状部材6a及びその頂部に設けた支持アーム6bとから構成されている。筒状部材6aは中心柱7の周囲に嵌装され、両者の周面間に設けた軸受8により回転可能に支承されている。また、筒状部材6aの外周面の下部にギヤ9を有し、該ギヤは、処理容器10外に設けたモータ11により回転されるギヤ12と噛み合っている。従って、モータ11によりウェハ保持機構6が回転されると、これに伴い半導体ウェハ5も、筒状部材6aの中心線を、回転中心C2として回転される。なお、中心柱7の頂面は反射面(裏面反射板)14として構成され、そこでの温度を測定するため、中心柱7中に放射温度計15が挿入されている。
【0029】
上記ウェハ保持機構6に支持された半導体ウェハ5の上方には、処理容器10外において、面状加熱装置1が配置されている。この面状加熱装置1は、加熱源たる点光源又は線光源のハロゲンランプから成る加熱ランプ3を円弧に沿って配置した加熱源サークル4を、図8の如く複数個同心円状に配置して、全体をランプバンクLBとした加熱ユニット(ここでは同心円状ランプユニット)から構成されている。そして、ランプバンクLBの背後には反射板2が配置され、各加熱源サークル4から後方へ向かう光を反射して下方の半導体ウェハ5を均一に照射するように構成される。また、処理容器10の頂部には、面状加熱装置1からの光を処理容器内部に透過させるため、石英ガラスから成る照射窓20が形成されている。
【0030】
換言すれば、加熱源として加熱ランプ3を用い、加熱ランプ3を同一円上に配置した加熱ランプサークル4を、平面的に且つ半径方向に等ピッチで複数配置して面状加熱装置(加熱ユニット)1を構成し、この複数の加熱ランプサークル4から成る面状加熱装置1に対し、板状被加熱物たる基板としてシリコンウェハ等の半導体ウェハ5を対向させ且つ回転させるように構成している。また、面状加熱装置1に対し半導体ウェハ5を相対的に回転させる回転機構13として、筒状部材6a、軸受8、ギヤ9、13及びモータ11を設けている。
【0031】
上記の回転機構13による上記半導体ウェハ5の回転中心C2は、上記面状加熱装置1の中心である加熱ランプサークル群の円の中心C1に対し、その加熱ランプサークル群のピッチの整数倍だけずらされている。図1の例では、導体ウェハ5の回転中心C2が1ピッチ分だけずらされており、図示するように、回転中心C2はこれに対応する偏心量δだけ面状加熱装置1の中心C1から偏心している。
【0032】
図2にこの関係を示す。ここでは、偏心量δをランプの1ピッチ分としたときの例を示している。すなわち、加熱ランプサークル4として半径r1、r2、r3、r4、r5、r6を持つ6つのサーキュラーランプを配置し、その中心C1に対し、半導体ウェハ5の回転中心C2を偏心量δだけずらせた例となっている。
【0033】
かかる構成において、半導体ウェハ5上の中心C2から半径距離Rの任意点Pとして、丁度半径r4のランプ直下の点をとり、半導体ウェハ5を矢印方向に回転させたとする。半導体ウェハ5上の点Pは、回転につれて偏心量δ相当分である半径r4と半径r3の間を往復する。図3に点線で示すように、ランプr4(半径r4の位置のランプ)による照度Tr4は、P点がランプr4の直下(ゼロ位相)にあるとき最大で、ランプr3(半径r3の位置のランプ)の直下(位相π)に来たとき最小となる、という変化を繰り返す。
【0034】
このとき、図3に実線で示すように、P点におけるランプr3(半径r3の位置のランプ)による照度Tr3は、P点がランプr4の直下(ゼロ位相)にあるとき最小で、ランプr3(半径r3の位置のランプ)の直下(位相π)に来たとき最大となる、という変化を繰り返す。
【0035】
そこで、P点にランプr4とランプr3の光が同時に作用した場合、つまりP点におけるランプr4による照度Tr4と、P点におけるランプr3による照度Tr3を重ね合わせると、照度Tr4とTr3の変動が互いに相殺されて、平均的な照度の値Tmに落ち着く。よって、均一な照度の光で半導体ウェハが照射され均一に加熱されて、その面内温度分布が均一になる。
【0036】
また、ランプ間隔、つまり加熱源サークル4の間隔(ピッチ)が不均一である場合や、半導体ウェハ5が加熱源サークル4の間隔と異なる間隔分だけ偏心している場合でも、結果的に、半導体ウェハ5が温度の異なる高低区域(照度の大小区域)を通過する過程で、半導体ウェハ5の面内温度差が緩和される。
【0037】
また、面状加熱装置1から半導体ウェハ5までの距離dについては、上記光源に対する回転中心の偏心により効果的に半導体ウェハ5の面内温度分布の均一化が図られることから、従来より短い距離で、半導体ウェハの面内照度分布をブロードにすることができる。すなわち、図4に示すように、面状加熱装置1から半導体ウェハ5までの距離dを従来(偏心させてない図7の場合)と同じd1、d2としたとき、それぞれの距離における照度T1、T2の分布曲線は、従来より振幅ΔT1、ΔT2が小さいなものになる。
【0038】
上記した面内照度分布の均一化及び従来より短い距離でのブロード化の作用効果は、加熱源の種類や配置形状の如何に関わらず得ることができるので、加熱源としてランプだけでなく抵抗ヒータ等を用いても良い。
【0039】
また、そのランプ、抵抗ヒータ等は、連続したサークル(円形)となっていても良いし、図8の如く途中でサークルが切れていても良い。要するに、加熱源(ランプ、抵抗ヒータ等)を円弧(円状又は楕円状、渦巻き状等)に沿って連続的又は断続的に配置した加熱源サークルの形態であればよい。このような形態であっても、板状被加熱物の回転中心を、面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせて偏心させることにより、結果的に、板状被加熱物が温度の異なる高低区域(照度の大小区域)を通過する過程で、板状被加熱物の面内温度差が緩和される。
【0040】
また、本発明の熱処理装置においては、加熱源サークルの集合である加熱源バンク(ランプバンクLB)の領域を、図9で説明したように、同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割した形態とすることもできる。すなわち、ランプバンクLBの領域を、同心円状の数で見て3つのゾーンI、II、III(断面で見た6つの区分I、I、II、II、III、IIIのうち、同じ符号I、II、IIIがそれぞれ同じ同心円のゾーン属する)に分割する。このようにランプ領域分割したゾーンごとに、ランプ電力を制御し、それぞれに温度制御用熱電対(炉内に対して配置し、後で抜き出す)を設け、所定の温度になるようにランプ電力を制御する。この制御されたランプからの輻射熱及びランプ光源の反射等で赤外線加熱を行う。
【0041】
これは、加熱源サークルの集合である加熱源バンクの領域を、同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割し、その同心円状に配置した加熱源ゾーンの各々に、それぞれ複数個の加熱源サークルを所属させた形態のものであり、好ましくは、この加熱源ゾーンの区分と上記偏心量を最適化して、板状被加熱物の面内温度差が無くなるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の熱処理装置の概要を示す断面図である。
【図2】本発明の図1の部分拡大図である。
【図3】本発明の照度均一化の原理の説明に供する図である。
【図4】本発明の照度のブロード化の説明に供する図である。
【図5】従来の熱処理装置の概要を示す断面図である。
【図6】公知の線光源ハロゲンランプの構造を示す図である。
【図7】従来の熱処理装置の作用を示す断面図である。
【図8】公知の加熱源サークル群によるランプバンクを示す図である。
【図9】公知のランプバンクの領域を複数のゾーンに区分けした形態を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 面状加熱装置
3 加熱ランプ
4 加熱源サークル
5 半導体ウェハ(板状被加熱物)
6 ウェハ保持機構
7 中心柱7
10 処理容器
11 モータ
13 回転機構
20 照射窓
30 線光源ハロゲンランプ
LB ランプバンク
C1 面状加熱装置1の中心
C2 半導体ウェハの回転中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源を円弧に沿って配置した加熱源サークルを複数個同心円状に配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、
上記面状加熱装置に対し上記板状被加熱物を面的に対向させた状態で相対的に回転させる回転機構を設け、
この回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせ、板状被加熱物が温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物の面内温度差が緩和されるように偏心させたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
加熱源を円弧に沿って配置した加熱源サークルを複数個同心円状に配置して加熱源バンクとし、その加熱源バンクの領域を同心円状の複数の加熱源ゾーンに分割して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、
上記回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円弧の中心からずらせ、板状被加熱物が上記加熱源ゾーンの区分について温度の異なる高低区域を通過する過程で板状被加熱物の面内温度差が緩和されるように偏心させたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
加熱源を同一円上に配置した加熱源サークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで複数同心円的に配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成した熱処理装置において、
上記面状加熱装置に対し上記板状被加熱物を面的に対向させた状態で相対的に回転させる回転機構を設け、
この回転機構による板状被加熱物の回転中心を、相対的に上記面状加熱装置の加熱源サークル群の円の中心から、その加熱源サークル群のピッチの整数倍だけずらせて偏心させたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の熱処理装置において、
上記加熱源として加熱ランプを用い、この加熱ランプを同一円上に配置した加熱ランプサークルを、平面的に且つ半径方向に等ピッチで複数配置して面状加熱装置を構成し、これに対し板状被加熱物を対向させ且つ回転させるように構成したことを特徴とする熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−78019(P2006−78019A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260105(P2004−260105)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(592230092)株式会社国際電気セミコンダクターサービス (17)
【Fターム(参考)】