説明

熱処理装置

【課題】ガラス基板を熱処理する熱処理装置を改良するものであり、メンテナンスを容易に行うことができる熱処理装置を開発する。
【解決手段】熱処理室12の略中央部には、基板換装システム18が配されて、基板換装システム18に載置棚16が設けられている。載置棚16の全部の段部23には、中央部分の小梁31が欠落した欠落部37を有し、当該欠落部37によって吹き抜け部38が設けられている。吹き抜け部38に作業者が入ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の被加熱物を熱風によって熱処理する熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されているような熱処理装置が液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display)、有機ELディスプレイ等のようなフラットパネルディスプレイ(FPD:Flat Panel display)の製作に使用されている。
熱処理装置の多くは、特許文献1の様に、加熱室内に載置棚が配された構造を有する。そして熱処理装置は、予めガラス板等の基板(被加熱物)に対して特定の溶液を塗布して加熱乾燥させ、この加熱乾燥した基板をロボットハンドを用いて段部の間隔に出し入れし、加熱室内に導入される所定の温度の熱風に基板を晒して熱処理(焼成)する装置である。
【0003】
ここで載置棚は、基板を支持する段部が上下方向に複数設けられた籠状の形状を有するものである。即ち従来技術の載置棚は、複数の柱を有する。そして当該柱を平面視すると、4角形の4個の角と辺の位置に配置されている。
一方、段部は、梁や板によって構成され、一つの平面を形成している。即ち従来技術の段部は、例えば梁が格子状や平行状に配置されたものである。そして従来技術の段部においては、梁の格子の隙間や梁同士の間隔は一定である。即ち従来技術においては、段部における格子の間隔や、梁の間隔は、いずれの部位も略一定であり、極めて狭いものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−46894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した様に、熱処理装置は、ガラス板等の基板を加熱室内に挿入して焼成する装置であるが、焼成作業中や、基板を加熱室に出入りさせる際に基板が割れることがある。
この際には、載置棚の段部から基板の破片を除去しなければならない。
しかしながら、従来技術の熱処理装置は、段部から基板の破片を除去する作業が困難であった。
【0006】
即ち熱処理装置が専有する面積を小さくする要請から、熱処理装置内に大量の基板を挿入する必要があり、そのため載置棚は、段部同士の間隔が極めて小さい。そのため作業者は、段部同士の間に入ることができない。
従って載置棚の内部に向かって作業者が水平方向に侵入することは不可能である。
【0007】
また前記した様に、従来技術の段部は、梁等が格子状や平行状に配置されたものであり、格子の隙間や梁同士の間隔は一定であって極めて狭い。即ち従来技術においては、段部における格子の間隔や、梁の間隔は、いずれの部位も略一定である。そして従来技術の段部では、格子の間隔や、梁の間隔は、いずれの部位も極めて狭く、作業者が格子の隙間や梁の隙間を抜けることはできない。
【0008】
この様に従来技術の熱処理装置においては、実質的に作業者が載置棚の内部に侵入することは不可能であった。
そのため例えば基板が載置棚上で割れた場合は、載置棚の外側から棒等を挿入して基板の破片を掻き出す他に、載置棚から破片を排出する方法が無かった。
【0009】
さらに載置棚には、基板が傷つくことを防止するために、段部に樹脂部材等を設ける場合があるが、当該樹脂部材は、長期使用によって劣化したり磨耗する場合がある。この様な場合には、樹脂部材等を取り替える必要があるが、従来技術においては、先と同様の理由によって、樹脂部材等の取り替えが面倒であった。
【0010】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、メンテナンスを容易に行うことができる熱処理装置の開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、被加熱物を加熱する加熱室と、当該加熱室の中にあって被加熱物を載置する載置棚とを有する熱処理装置において、前記載置棚は、複数の段部を有し、当該段部は、梁又は床面によって形成されており、一部の段部又は全部の段部に、梁及び床面が欠落した欠落部を有し、当該欠落部によって吹き抜け部が設けられており、当該吹き抜け部は作業者が入ることができるだけの空間を有することを特徴とする熱処理装置である。
【0012】
ここで「作業者が入ることができるだけの空間」は、点検用の空間であり、通常35cm程度以上の幅を持つ隙間であり、常識的には40cm〜60cm程度の幅である。
本発明の熱処理装置は、一部の段部又は全部の段部に、中央部分の梁及び床面が欠落した欠落部を有し、この欠落部によって吹き抜け部が設けられている。そしてこの吹き抜け部は作業者が入ることができるだけの空間がある。
本発明の熱処理装置では、載置棚の内部に吹き抜け部があり、載置棚の内部に作業者が入ることができるから、例えば載置棚の内部で基板が割れた様な場合であっても、基板の破片を容易に排出することができる。
【0013】
前記棚部は、並列に配された少なくとも4本の主梁と、前記主梁に支えられた複数の小梁からなり、各小梁は少なくとも2以上の主梁によって支持されており、両外側の主梁以外のいずれかの主梁と、両外側の主梁以外の他のいずれかの主梁との間に前記欠落部が設けられることで前記載置棚に吹き抜け部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置である。
【0014】
本発明の熱処理装置では、欠落部の開口端あるいはその近傍に主梁があるから、開口端の剛性が高い。従って吹き抜け部の内面の剛性が高い。そのため作業者が吹き抜け部の中で作業する際に、吹き抜け部の内面を壊さない。また吹き抜け部内に梯子を設置して吹き抜け部内を登ったり、載置棚の段部に手足を掛けて吹き抜け部内を登ることができる構造とすることもできる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、被加熱物を加熱する加熱室と、当該加熱室の中にあって被加熱物を載置する載置棚とを有する熱処理装置において、前記載置棚は、2以上のブロックに分割されており、それぞれのブロックはいずれも複数の段部を有し、前記2以上のブロックは間隔を開けた状態で並列的に配置され、被加熱物は、前記並列的に配置されたブロックの段部間に跨がって載置され、ブロック同士の間によって吹き抜け部が形成され、当該吹き抜け部は作業者が入ることができるだけの空間を有することを特徴とする熱処理装置である。
【0016】
本発明の熱処理装置では、載置棚は、例えば前側棚部と後側棚部という様に複数のブロックに分割されている。そしてブロック同士の間によって吹き抜け部が形成されている。本発明の熱処理装置についてもブロックの間に吹き抜け部があり、載置棚の内部に作業者が入ることができるから、例えば載置棚の内部で基板が割れた様な場合であっても、基板の破片を容易に排出することができる。
なおブロック同士の間は、何らかの部材で結合されていることが望ましい。例えば上辺側と下辺近傍が補助梁等で結合されていことが望ましいが、各ブロックの自立性が確保される場合は、ブロック同士を結合する必要はない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、加熱室は天面壁と側面壁を有し、前記側面壁には吹き抜け部に通じる開閉扉があることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0018】
本発明の熱処理装置においては、加熱室に開閉扉があり、作業員は、開閉扉を開いて加熱室に入り、さらに載置棚内の吹き抜け部内に入ることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、載置棚は、梁又は床面を支える複数の柱を有し、一部の柱又は全部の柱にはジャッキ装置が設けられ、ジャッキ装置が設けられた各柱は他の柱から独立して昇降可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0020】
本発明の熱処理装置は、段部に載置された被加熱物の姿勢が水平姿勢となる様にジャッキ装置で補正するものである。
即ち基板等の被加熱物は、段部に水平姿勢に載置されるべきである。そのため段部は、水平姿勢となる様に設計され、水平姿勢となる様に施工される。即ち基板の裏面側に当接する部材が、いずれも地表面から同一の高さとなる様に設計・施工される。
しかしながら、近年のディスプレイの大型化に伴い、熱処理する基板も大型化の一途をたどり、その重量が相当に重いものとなっている。そのため、基板を段部に乗せると、基板の重量によって段部が撓み、基板を水平に保持できない事態が生じている。
ここで基板の重量から段部の撓み量を演算し、基板を乗せた時にその重量で段部が水平になる様に段部の形状を設計することも可能である。しかしながら、基板の重量はロット(製品)によって異なることもあり、撓み量を正確に算出することは困難であり、予め撓み量を見込んだ形状に段部を設計することは事実上不可能である。
そこで本発明は、施工現場において柱の高さを微調整し、被加熱物の姿勢が水平姿勢となる様に段部の姿勢や形状を補正することとした。
即ち本発明の熱処理装置は、一部の柱又は全部の柱にジャッキ装置が設けられ、ジャッキ装置が設けられた柱を他の柱から独立して昇降可能である。そのため施工現場において、実際に基板を載置したり、基板に相当する重量を持つダミーボードを段部に載置し、段部が水平姿勢となる様にジャッキ装置で柱を昇降する。その結果、調整された熱処理装置の載置棚は、基板等の被加熱物を載置したときに、基板等が水平姿勢となる様な形状となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、載置棚は、梁又は床面を支える複数の柱を有し、該柱は載置棚の両端側の位置を支持する柱と、前記両端側の柱の間の位置を支持する柱とから成り、両者の下端位置を相対的に変化させる柱移動手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0022】
柱移動手段には例えばジャッキ装置が使用可能である。
ガラス基板を被加熱物とすると、被加熱物はその両端側が下がる様に撓む。そのため段部においては、両端部側の柱と吹き抜け部の近傍の柱とを相対的に移動させることができれば、段部の形状を、基板等の被加熱物を載置したときに基板等が水平姿勢となる様な形状とすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、被加熱物が載置されていない状態において、各段部における載置棚の梁又は床面の高さは、載置棚の両端側よりも内側の位置の方が低いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0024】
本発明の熱処理装置では、載置棚の段部は、両端側の高さが、吹き抜け部に比べて高いから、基板等の被加熱物を載置したときに基板等が水平姿勢となる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、載置棚は複数の柱を有し、段部は少なくとも平行に配された4本の主梁を有し、前記各主梁は少なくとも2本の柱を一組として結合されたものであり、主梁で結合されていない柱同士が補助梁で結合されており、補助梁の数が主梁に対して少ないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の熱処理装置である
【0026】
本発明の熱処理装置では、載置棚の柱は、主梁と補助梁で結合されているが、補助梁の数が主梁に対して少ない。そのため載置棚の柱の結合力は、補助梁で結合された柱間が小さく、主梁で結合された柱間は、結合力が比較的高い。そのため主梁で結合された柱同士は相対移動の自由度が小さく、補助梁で結合された柱同士は、相対移動の自由度が比較的大きい。
ここで本発明では、主梁で結合されている柱の組み合わせの一つは、開口近傍の柱同士であり、他の組み合わせは、開口から遠い位置の柱同士である。
また補助梁で結合されている柱の組み合わせは、開口近傍の柱と開口から遠い位置にある柱である。
従って本発明で採用する載置棚では、開口近傍の柱同士の結合力が強く、開口近傍の柱と開口から遠い位置にある柱との結合力が弱い。そのため開口近傍の柱同士は、上下に相対移動しにくく、開口近傍の柱と開口から遠い位置にある柱との間は上下に相対移動しやすい。そのため本発明の熱処理装置は、段部に載置された被加熱物の姿勢が水平姿勢となる様に補正しやすい。
【0027】
請求項9に記載の発明は、載置棚を全体的に昇降させる昇降装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0028】
昇降装置を備えることにより、被加熱物を出し入れするための開口部の数を減らすことができる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、加熱室内を通風雰囲気とする通風手段を有し、前記吹き抜け部は、通風手段による加熱室への通風の流れ方向に平行に、載置棚の一辺から他辺側に貫通して設けられており、前記通風は前記吹き抜け部を通過して載置棚の一辺側から他辺側に向かって流れることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の熱処理装置である。
【0030】
本発明の熱処理装置では、通風手段による通風は前記吹き抜け部を通過して加熱室の一辺側から加熱室の他辺側に向かって流れるので、通風によって被加熱物の中央部分が加熱される。そのため本発明の熱処理装置によると、被加熱物の温度分布が平滑化する。
即ち従来技術の熱処理装置によると、熱風を載置棚の辺部から中央部側に向かって流し、被加熱物の中央部を昇温させる。即ち熱風を載置棚の辺部から段部同士の間に導入し、熱風を被加熱物に中央部にまで至らしめて、被加熱物と接触させて被加熱物の中央部を昇温させる。
しかしながら、段部同士の間隔は通常狭いので、段部同士の間に進入する熱風は僅かであり、被加熱物の中央は昇温されにくく、被加熱物に温度ばらつきが生じる。
これに対して本発明では、載置棚の中央に吹き抜け部があり、当該吹き抜け部に熱風(通風)を流す。そのため被加熱物は、中央部分が直接通風に触れ、昇温される。そのため本発明の熱処理装置によると、被加熱物の温度ばらつきが小さいものとなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の熱処理装置は、載置棚の内部に作業者が入ることができるので、メンテナンスが容易である。さらに、被加熱物の中央の通風量が増加するため熱処理性能が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に本発明の具体的実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態である熱処理装置を示す斜視図である。図2は、図1に示す熱処理装置の平面断面図である。図3は、図1に示す熱処理装置の分解斜視図である。
【0033】
図1において、1は本実施形態の熱処理装置である。熱処理装置1は、縦・横・高さが7m、4m、6m程度の巨大な装置である。
熱処理装置1は、金属製で箱形の外壁部2を有し、機器収容部3が設けられており、その上方に基板処理部5が設けられた構成となっている。機器収容部3は、基板処理部5に電力を供給する電源装置(図示せず)や基板処理部5の動作を制御する制御装置(図示せず)等を内蔵している。
【0034】
基板処理部5は略直方体であり、図1や図3に示すように正面側に図示しないロボットハンド等の移載装置によって基板Wを出し入れするための換装口6を4個有している。また換装口6と同じ面には、4個の吸気口7が設けられている。
基板処理部5の一方の側面(吸気口側)からは送風機8の一部が突出している。もう一方の側面には扉10が設けられている。扉10は、メンテナンス時に開いて作業者が出入りするために設けられている。
【0035】
前記した換装口6には、エアシリンダー11の作動に連動して開閉するシャッター9が装着されている。
【0036】
また吸気口7は、モータ(図示せず)によって開度が調節される。
【0037】
基板処理部5の内部は、平面的に見て図2の様に大きく2つの領域に分かれている。即ち基板処理部5の内部は、熱処理室12(加熱室)と熱風供給部14に分かれている。
ここで熱風供給部14は、熱処理室12内に熱風を循環させる装置が内蔵された部位である。より具体的には熱風供給部14は、熱処理装置1の内部に導入された外気や、熱処理室12の下流端から戻ってきた空気等を加熱し、熱処理室12内に送り込むためのものであり、送風機8や加熱器(図示せず)等を備えている。また熱風供給部14の基板処理部5側の面にはフィルター15が設けられている。
【0038】
熱処理室12(加熱室)は、フィルター15が装着された上流壁20および断熱材によって構成される周壁13によって包囲された部屋である。
熱処理室12(加熱室)の中央には載置棚16を含む基板換装システム18が配されている。
【0039】
熱処理室12は、上流壁20を構成するフィルター15の開口を介して熱風供給部14と連通している。
図3に示すように、熱処理室12の略中央部には、基板換装システム18が配されている。基板換装システム18は、基板Wを積載するための載置棚16と、当該載置棚16を全体的に昇降させる昇降装置21によって構成されている。
【0040】
図4は、載置棚の斜視図である。図5は、載置棚のフレームの斜視図である。図6は、載置棚の各層の構造を説明する載置棚の分解斜視図である。なお載置棚は多数の段部を有するが、図6では、段部の多くを省略している。図7は、載置棚の正面図である。図8は、載置棚の側面図である。
【0041】
なお実際の載置棚は、30段以上の段部23を有するが、作図の関係上、8段の段部23を有するものとして図示している。従って図示された載置棚16は、高さ方向の比率が実際よりも縮小されている。
載置棚16は、昇降装置21の昇降台25に設置されており、フレーム26の主梁30に小梁31が設けられ、当該小梁31上に基板を設置するものである。なお図においては、フレーム26の柱35を四角柱状に描き、主梁30と補助梁33を太線で描き、小梁31を細線で描いている。
載置棚16のフレーム26は、図5の様に、8本の柱35と、36本の主梁30及び少数の補助梁33で構成されている。
8本の柱35は、後記する様に下部にジャッキ装置36がある。そして8本の柱35は、図4,5の様に長方形のレイアウトに設置されている。即ち8本の柱35は、長方形の各角にそれぞれ一本設置され、さらに長辺(A列 B列)上に等間隔に2本設置されている。
8本の柱は、長辺(A列 B列)上に等間隔に4本設置されていると考えてもよい。長辺(A列 B列)上の柱の間隔は、40cm〜60cm程度である。
またA列上の柱35と、B列上の柱35は対向する位置にある。即ち長方形の短辺と平行の4行に、それぞれ2本ずつ柱35が配されているといえる。即ちa行、b行、c行、d行にそれぞれ2本ずつ配されているといえる。
以下、各8本の柱の名称をAa、Ab、Ac、Ad、Ba、Bb、Bc、Bdと称する。
【0042】
主梁30は、同一行に含まれる柱35同士の間に9本ずつ平行に設けられている。即ち柱Aa−Ba間、Ab−Bb間、Ac−Bc間、Ad−Bd間にそれぞれ9本ずつ高さ方向に同じピッチで主梁が設けられている。
従って、主梁30の高さに注目すると、図6の様に同一の高さにそれぞれ4本の主梁30が存在する。
【0043】
また同一列(A列 B列)に属する柱35同士は、図5の様に補助梁33で接続されている。補助梁33の数は、全体で10本程度であり、主梁の数の3分の1以下である。
【0044】
そして各段部23における主梁30(最上段を除く)に小梁31が設けられている。なお本実施形態では、各小梁31は、いずれも外側に張り出し状に設けられている。
前記した様に主梁30の高さに注目すると、同一の高さにそれぞれ4本の主梁30が存在するが、その内の外側2本の主梁30にそれぞれ6本ずつ小梁31が設けられている。より具体的に説明すると、図6の様に、各段にはa行、b行、c行、d行に沿って4本の主梁30があるが、この内の外側2本の組み合わせ上に小梁31が設けられている。即ちa−b行間に6本の小梁31があり、c−d行間にも6本の小梁31がある。中央のb−c行間には小梁はなく、欠落部37となっている。
【0045】
従って、各段における欠落部37は、垂直方向に繋がり、9段のすべてが天地方向に吹き抜け状態となって吹き抜け部38を形成している。なお前記した様に、作図の関係上、段部23の段数を減らしているが、実際上は、30段以上に渡って中心部分が天地方向に吹き抜け状態となっている。
【0046】
載置棚16を正面側から外観すると、図3,4,7の様に、正面側は9段の主梁30が短い間隔で上下に並び、その内の8段の主梁30から正面方向に向かって小梁31が突出した形状となっている。また裏面側から見ても同様であり、裏面側は9段の主梁30が短い間隔で上下に並び、その内の8段の主梁30から裏面方向に向かって小梁31が突出した形状となっている。
【0047】
一方、載置棚16の側面側を外観すると、図3,4,8の様に、中央部に主梁30や小梁31が存在しない空間(吹き抜け部)38がある。即ち図3,4,8の様に、柱Bb−Bc間、Ab−Ac間には小梁が無く、内部は空洞状態である。より正確に説明すると、柱Bb−B c−Ac−Abで囲まれる直方体の空間は、小梁31が一切存在しない。
そしてこの空間(吹き抜け部)38は、載置棚16の中央を一方の端部から他方の端部にかけて連通している。さらに前記した様に柱35の間隔は、40cm〜60cm程度であるから、作業者が通行することができる。
【0048】
なお見方を変えると、載置棚16の構造は、二つのブロック46,47が、4本の補助梁50で結合されたものであり、基板Wを二つのブロック46,47の段部23に跨がって載置すると考えることもできる。図4,5に基づいて説明すると、載置棚16は、前側棚部46と、後側棚部47とを有している。前側棚部46は、4本の柱、Ac,Ad,Bc,Bdを有し、前記柱間に対して高さ方向に2列に主梁30が設けられている。また前記した2列に主梁30によって小梁31が支持されている。
後側棚部47についても同様であり、4本の柱、Aa,Ab,Bb,Baを有し、前記柱間に対して高さ方向に2列に主梁30が設けられている。また前記した2列に主梁30によって小梁31が支持されている。
そして前側棚部46と後側棚部47の間の柱Ab,Acの間に2本の補助梁50があり、柱Bb,Bcの間にも2本の補助梁50がある。
【0049】
次に載置棚16の下部の構造について説明する。図9は、載置棚の各柱の下部を示す断面斜視図である。図10は、図9と同一部位の断面図である。
本実施形態では、図9に示すように、各柱35の下部にジャッキ装置36が形成されている。即ち図9,10の様に各柱の下部にはネジ40が一体化されている。一方、昇降装置21の昇降台25には孔41が設けられており、当該孔41にネジ40部分が挿通されている。そして昇降台25を挟んで二つのナット43,45が前記ネジ40に係合している。そのため下部側のナット45を緩めた状態で上部側のナット43を回動させると、ネジ40の推力によって柱35が昇降する。
ここで本実施形態では、8本の柱35の全てにジャッキ装置36が形成されているので、それぞれの柱35を他の柱35から独立して昇降させることができる。
【0050】
しかしながら、載置棚16のフレーム26は、主梁30と補助梁33で結合されているから、8本の柱35を独立的に昇降可能であるといっても、その自由度は大きなものではない。しかしながら、各柱35の相対的な自由度は一様ではなく、列方向(A列、B列)方向に並んだ柱35は、比較的自由度が高い。
即ちフレームは、行方向(a行,b行,c行,d行)と列方向(A列、B列)に柱35が配置されており、行方向(a行,b行,c行,d行)には、36本の主梁30で結合されているのに対し、列方向は、その3分の1以下の数の補助梁33で結合されているに過ぎない。
そのため列方向(A列、B列)方向に並んだ柱35は、高さを相対的に変化させやすい。
【0051】
次に本実施形態の熱処理装置の使用方法について説明する。
本実施形態の熱処理装置は、最初の使用に先立って、主梁30の高さ調整を行う。図11は、高さ調整を行う際の手順を示す説明図であり、主梁と小梁の位置関係及び姿勢を示している。なお、図11は、理解を容易にするために、高さ方向の差異を誇張して図示している。
本実施形態の熱処理装置1では、設置の際には図11(a)の様に各段部23における主梁30の高さを一定に揃えている。
しかしながら、各段部23に基板Wを乗せると、図11(b)の様に基板Wの重量によって両端(a行とd行)の主梁30が、中央の主梁30(b行とc行)に比べて沈下し、基板Wが上に凸状態に反る。
【0052】
そこで本実施形態では、各段23に基板Wを乗せた状態で、柱35下部のジャッキ装置36を操作し、基板Wが水平となる様に柱35の下端の高さを上下させる。即ち前記した様に、下部側のナット45を緩めた状態で上部側のナット43を回動させ、ネジ40の推力によって柱35を昇降させる。そして図11(c)の様に基板Wが水平となる様に、ナット45調整する。
【0053】
基板Wが水平になった状態で、基板Wを外すと、図11(d)の様に、柱35の反力によって両端(a行とd行)の主梁30が、中央の主梁30(b行とc行)よりも高い位置になり、小梁31が跳ね上がり姿勢となる。
【0054】
本実施形態の熱処理装置1は、公知のそれと同様に、熱処理室12内の載置棚16にガラス基板Wを設置し、熱処理する。
即ち昇降装置21を動作させて昇降台25を昇降し、載置棚16のいずれかの段部23の高さをいずれかの換装口6の高さに一致させる。そして図示しないロボットで基板Wを保持し、換装口6を開いて熱処理室12内の載置棚16の前記段部23にガラス基板Wを設置する。
その後に再度昇降装置21の昇降台25を動作させ、他のいずれかの段部23の高さをいずれかの換装口6の高さに一致させて別の基板Wを挿入する。以下、この動作を繰り返して載置棚16の全ての段部23に基板Wを装着する。
【0055】
一方、熱処理装置1内では、熱風供給部14の送風機8及び加熱器(図示せず)を起動し、熱処理室12内を熱風の通風雰囲気とする。
即ち熱風は、図2の矢印の様に熱風供給部14から熱処理室12に供給されるが、熱風の一部は開放された柱Ab−Ac間から載置棚16の中心に入り易く、中心部の吹き抜け部38を通過して載置棚16の他端側に抜ける。その間に各段23の基板Wの中央部を昇温する。
また通風の残部は、柱Aa−Ab間や柱Ac−Ad間や載置棚16の周囲に流れ、基板Wの端部側を昇温する。その結果、基板Wは、全体的に昇温され、温度ばらつきが小さいものとなる。
【0056】
また載置棚16上で基板Wが破損するといった突発故障が生じた場合は、作業者が吹き抜け部38に入って基板Wの破片を除去する。
即ち突発故障が生じた場合は、装置を停止すると共に、内部の基板Wを排出する。その後、熱処理装置1の側面に設けられた扉10を開き、作業者が熱処理室12内に入る。そして柱Bc−Bb間から載置棚16の中に入る。ここで柱Bc−Bb間は、40cm〜60cm程度と広く、作業者が通行するに足る幅を持っている。
さらに、吹き抜け部38を構成する各段部23の欠落部37の開口端には、いずれも図6の様に主梁30が張り渡されているので、吹き抜け部38の端面は剛性が高い。そのため熱処理室12内に梯子を持ち込んで上部側の段部23を掃除したり、各段部23の開口端に足を掛けて吹き抜け部38を登って行くことも可能である。
【0057】
また定期点検を行う場合や、消耗部品を取り替える場合も同様であり、作業者が吹き抜け部38に入って作業を行うことができる。そのため本実施形態の熱処理装置1は、メンテナンスが容易である。
【0058】
以上説明した実施形態では、ネジ式のジャッキ装置36を利用して柱を昇降させたが、例えばリンク式や油圧式のジャッキ装置を利用して柱を昇降させてもよい。
また上記した実施形態では、各柱35にジャッキ装置36を設けたが、中央の柱35だけにジャッキ装置36を設けたり、外側の柱35だけにジャッキ装置36を設けることも考えられる。さらに複数の柱を一つのジャッキ装置で昇降させてもよい。
【0059】
上記した実施形態では、吹き抜け部38を一か所だけに設けたが、装置がより大型化した場合には、複数の吹き抜け部38を設けることも可能である。
図12は、吹き抜け部38を3か所に設けた例を示している。
【0060】
また上記した実施形態では、吹き抜け部38は、図2の様に平面的に見て、載置棚16の一辺から他辺側に連通しているが、必ずしも一辺から他辺側に連通している必要はない。
例えば図13の様に、中央部に小梁31が連通した部分があり、吹き抜け部38が二つの領域に分断されていてもよい。
また吹き抜け部38が図14の様に一方の辺にのみ開放されているものであってもよい。いずれにしても、吹き抜け部38は、平面視していずれかの辺に開口し、かつ柱35で囲まれた領域内にまで連続していることが推奨される。
【0061】
また上記した実施形態では、吹き抜け部38を最下段から最上段まで連通させたが、中途で区切った吹き抜け部であってもよい。例えば、下から10段目までを第一吹き抜け部とし、11段目以上を第二吹き抜け部とする様に、吹き抜け部を分割してもよい。
【0062】
上記した実施形態では、小梁31によって基板Wを支持する構造としたが、小梁31の上に板を取り付けて床状とし、床によって基板を支持する構造とすることも可能である。
【0063】
また上記した実施形態の熱処理装置1では、昇降装置21を備え、載置棚16を昇降装置21によって全体的に昇降させる構成を採用した。しかしながら昇降装置21は、必須ではなく、固定的な載置棚を採用してもよい。固定的な載置棚を採用する場合は、載置棚の各段部に合わせて基板Wを出し入れするための換装口6を多数設けることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態である熱処理装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す熱処理装置の平面断面図である。
【図3】図1に示す熱処理装置の分解斜視図である。
【図4】載置棚の斜視図である。
【図5】載置棚のフレームの斜視図である。
【図6】載置棚の各層の構造を説明する載置棚の分解斜視図である。
【図7】載置棚の正面図である。
【図8】載置棚の側面図である。
【図9】載置棚の各柱の下部を示す断面斜視図である。
【図10】図9と同一部位の断面図である。
【図11】高さ調整を行う際の手順を示す説明図であり、主梁と小梁の位置関係及び姿勢を示している。
【図12】他の実施形態の熱処理装置の平面断面図である。
【図13】さらに他の実施形態の熱処理装置の平面断面図である。
【図14】さらに他の実施形態の熱処理装置の平面断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 熱処理装置
10 扉
12 熱処理室(加熱室)
13 周壁
16 載置棚
21 昇降装置
23 段部
30 主梁
31 小梁
33 補助梁
35 柱
36 ジャッキ装置
37 欠落部
38 吹き抜け部
46 前側棚部(ブロック)
47 後側棚部(ブロック)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱する加熱室と、当該加熱室の中にあって被加熱物を載置する載置棚とを有する熱処理装置において、前記載置棚は、複数の段部を有し、当該段部は、梁又は床面によって形成されており、一部の段部又は全部の段部に、梁及び床面が欠落した欠落部を有し、当該欠落部によって吹き抜け部が設けられており、当該吹き抜け部は作業者が入ることができるだけの空間を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記棚部は、並列に配された少なくとも4本の主梁と、前記主梁に支えられた複数の小梁からなり、各小梁は少なくとも2以上の主梁によって支持されており、両外側の主梁以外のいずれかの主梁と、両外側の主梁以外の他のいずれかの主梁との間に前記欠落部が設けられることで前記載置棚に吹き抜け部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
被加熱物を加熱する加熱室と、当該加熱室の中にあって被加熱物を載置する載置棚とを有する熱処理装置において、前記載置棚は、2以上のブロックに分割されており、それぞれのブロックはいずれも複数の段部を有し、前記2以上のブロックは間隔を開けた状態で並列的に配置され、被加熱物は、前記並列的に配置されたブロックの段部間に跨がって載置され、ブロック同士の間によって吹き抜け部が形成され、当該吹き抜け部は作業者が入ることができるだけの空間を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
加熱室は天面壁と側面壁を有し、前記側面壁には吹き抜け部に通じる開閉扉があることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
載置棚は、梁又は床面を支える複数の柱を有し、一部の柱又は全部の柱にはジャッキ装置が設けられ、ジャッキ装置が設けられた各柱は他の柱から独立して昇降可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項6】
載置棚は、梁又は床面を支える複数の柱を有し、該柱は載置棚の両端側の位置を支持する柱と、前記両端側の柱の間の位置を支持する柱とから成り、両者の下端位置を相対的に変化させる柱移動手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項7】
被加熱物が載置されていない状態において、各段部における載置棚の梁又は床面の高さは、載置棚の両端側よりも内側の位置の方が低いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項8】
載置棚は複数の柱を有し、段部は少なくとも平行に配された4本の主梁を有し、前記各主梁は少なくとも2本の柱を一組として結合されたものであり、主梁で結合されていない柱同士が補助梁で結合されており、補助梁の数が主梁に対して少ないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項9】
載置棚を全体的に昇降させる昇降装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項10】
加熱室内を通風雰囲気とする通風手段を有し、前記吹き抜け部は、通風手段による加熱室への通風の流れ方向に平行に、載置棚の一辺から他辺側に貫通して設けられており、前記通風は前記吹き抜け部を通過して載置棚の一辺側から他辺側に向かって流れることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−133666(P2010−133666A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311525(P2008−311525)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】