説明

熱分解処理システム

【課題】汚泥を熱分解して炭化処理するにあたり、廃プラスチックを混合させることにより助燃料を用いることなく熱分解処理できる熱分解処理システムを提供する。
【解決手段】下水汚泥11と廃プラスチック12とを混合して、熱分解装置13により低酸素環境で加熱して熱分解処理し、熱分解ガス15と炭化物14とを得る熱分解処理システムであって、下水汚泥11に対する廃プラスチック12の混合比率を、前記熱分解により生じる熱分解ガス15により、補助燃料を用いることなく前記下水汚泥11を熱分解する量の熱分解ガスを発生可能な最小適正比率以上とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水等から生じる汚泥と廃プラスチックとを混合して、熱分解装置により低酸素環境で加熱して熱分解処理し、熱分解ガスと炭化物とを得る熱分解処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス排出削減対策として、バイオマスの総合的な利活用が求められている。バイオマスの原材料のひとつである下水汚泥は、賦存量は多いが、水分の含有量が多いため、燃料化(熱分解)を行うためには大量のエネルギーが必要になる。
【0003】
下水汚泥を熱分解し炭化燃料として有効活用する事業は、従来から多く行われているが、汚泥の熱分解を行うための補助燃料として、石炭、石油等の化石由来燃料を利用するものが一般的である。そこで、補助燃料として化石燃料の使用を抑制することを目的に木質系バイオマスを使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記公報で記載されている技術では、炭化炉での炭化処理で汚泥から発生する熱分解ガスに木質系バイオマスから発生する熱分解ガスが加わることで、熱分解ガスを燃料として燃焼機関を運転し、汚泥を炭化処理するのに必要なエネルギーを得ることができるとしている。
【特許文献1】特許第3861093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、木質系バイオマスの中には発熱量の低い間伐材や剪定材、枝、葉なども多く含まれており発熱量が安定しないため、炭化炉の一定温度制御が行い難い。このため、炭化炉での熱分解処理運転等を安定させる必要から助燃料として多量の木質系バイオマスを使用しなくてはならなくなるという新たな問題が生じた。
【0006】
また、これまで熱分解により生じる排熱は、再利用・回収されることなく捨てられている。一方で、特に寒冷地において、凍結防止や微生物処理(水温10℃以上)のために、水道水や排水を加温しておりそのための熱源が別途必要になるなど、熱エネルギーの有効活用化が充分でなかった。
【0007】
すなわち、熱分解処理のため汚泥加熱に有効利用されるのは、投入した熱量の一部のみであり、残りの大部分は有効利用されないまま、排熱として捨てられてしまう。一方では、水道水や排水を加温するために、多くの燃料が使用されている。
【0008】
本発明の目的は、下水等から生じる汚泥を熱分解して炭化処理するにあたり、廃プラスチックを混合させることにより補助燃料を用いることなく熱分解処理できる熱分解処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる熱分解処理システムは、汚泥と廃プラスチックとを混合して、熱分解装置により低酸素環境で加熱し、熱分解ガスと炭化物とを得る熱分解処理システムであって、前記汚泥に対する廃プラスチックの混合比率を、前記熱分解により生じる熱分解ガスの量が、前記加熱用の燃料として補助燃料を用いることなく前記汚泥を熱分解可能な量となる最小適正比率以上とすることを特徴とする。
【0010】
本発明では、熱分解装置の処理容量Cpは、ある標準的な汚泥量W´に対する熱分解装置への廃プラスチックの最大混合可能量Pmaxが、前記標準的な汚泥量W´に対する前記最小適正比率から求まる必要プラスチック量Pneed´より大きな投入量となるように設定されており、前記熱分解装置によって実際に処理される汚泥量Wとそれに対する必要プラスチック量Pneedと熱分解装置の処理容量Cpとから廃プラスチックの最大混合可能量Pmaxを決定する制御手段を有する。
【0011】
また、本発明では、熱分解装置により処理される汚泥量W、及びこの汚泥に混合可能な廃プラスチックの備蓄量Pstockのデータを収集する手段と、この収集されたデータから前記汚泥量Wに対する最大混合可能量Pmaxを求める手段と、この最大混合可能量Pmaxが廃プラスチックの備蓄量Pstockより多い場合は、廃プラスチック供給元に廃プラスチックの供給要求を行う手段とをさらに備えた構成でもよい。
【0012】
また、本発明では、熱分解装置の排熱を加熱源とし低温水を冷却源として沸点の低い作動媒体に対する加温及び冷却が行われ、前記加温により前記作動媒体を気化させてタービンを駆動し、タービン駆動後の作動媒体を前記冷却により凝縮させるランキンサイクル発電設備をさらに設けた構成でもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、汚泥に対し廃プラスチックを混合させて熱分解処理するので、従来汚泥を加熱するために必要であった補助燃料が不要となり、しかも余剰分は他の燃料源としても有効活用することができる。
【0014】
また、熱分解に用いられた後の排熱をランキンサイクル発電などに利用することで、熱源のより一層の有効活用化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる熱分解処理システムの一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
下水などから生じる汚泥を熱分解処理して炭化燃料を生成する場合、汚泥を熱分解装置の炭化炉内に投入し、低酸素状態で加熱して所謂蒸し焼きの状態にし、この過程で生じる乾留ガスを加熱用の燃料としている。このような熱分解処理により、炭化炉からは乾留ガスと炭化燃料(炭化材)が得られる。この場合、下水汚泥は含水率が高いため、多くの加熱量が必要であり、自己から生成される乾留ガスだけでは充分な熱量を得ることができない。このため化石由来の燃料を補助燃料として用いなければならなかった。
【0017】
そこで、本発明では、汚泥加熱用の助燃材として、化石由来燃料の代わりに、工場等から廃棄物として処分されている廃プラスチックを回収し、熱分解炉で汚泥とともに混合熱分解して、炭化燃料を生成する。
【0018】
すなわち、この実施の形態は、図1で示すように、汚泥11と廃プラスチック12とを混合して、熱分解装置13により低酸素環境で加熱して熱分解処理し、熱分解ガスと炭化物とを得る熱分解処理システムであって、汚泥11に対する廃プラスチック12の混合比率を、後述する最小適正比率以上とすることを特徴とする。ここで、熱分解により汚泥11と廃プラスチック12との混合物から炭化燃料(炭化物)14と熱分解ガス15とが生じる。熱分解ガス15は、従来と同様に汚泥11から生じる乾留ガス15aと廃プラスチック12から生成される可燃性のガス成分15b(その一部は油として回収される)とからなる。乾留ガス15aは従来と同様に熱分解用の加熱用燃料に用いられるが、前述のようにこれだけでは不足する。
【0019】
しかし、本実施の形態では、廃プラスチック12からも可燃性のガス成分15bが生成されており、この油及びガス15bも熱分解用の加熱用燃料に用いることができる。この廃プラスチック12から生成される油、ガスの量は、汚泥11に混合される廃プラスチック12の割合が高いほど多くなる。
【0020】
前記最小適正比率とは、熱分解により汚泥11と廃プラスチック12との混合物から生成される熱分解ガスの量が、補助燃料を用いることなく下水汚泥を熱分解できる量のとなる、最小限度の廃プラスチック12の混合比率である。この最小適正比率より廃プラスチック12が多く混合されていれば、熱分解に要する以上の余剰分が生成されることになる。この余剰分は熱分解以外に用いればよく、無駄になることはない。したがって、汚泥11に対する廃プラスチック12の混合比率は、前述したように、最小適正比率以上とする。この最小適正比率は、質量比で約10%程度である。
【0021】
以下、実際の処理例を説明する。まず、下水汚泥を乾燥工程において含水率80%程度から含水率50%程度まで乾燥させる。乾燥に必要な熱源は、熱分解工程からの排熱を利用できる。この後、乾燥させた汚泥11と廃プラスチック12とを混合して熱分解装置13に投入し、500℃程度で熱分解を行う。汚泥加熱用として補助燃料を使用せずに必要なエネルギーを賄うためには、エネルギー収支と物質収支の試算によれば、乾燥汚泥(50wt%)に対して、質量比で約10%強のプラスチックを混合する。ただしこの値は、汚泥の性状や含水率など、諸条件によって異なる。大体の目安は下表に示す通りである。
【表1】

【0022】
このように、最低適正比率で廃プラスチック12を混合させることで、熱分解用の加熱用補助燃料として用いられていた化石由来燃料は不要となり、省エネルギー効果を得ることができる。
【0023】
また、混合する廃プラスチック12の量を多くすれば、熱分解により生成される油やガス15bに余剰が生じるため、この分を、例えば下水処理場内で活用することにより、更なる省エネルギーを図ることも可能となる。
【0024】
図2は混合熱分解装置のエネルギー収支を説明するイメージ図である。図2(a)は、ある所定量の汚泥11に対し、前述した最低適正比率による必要最小限の廃プラスチック12を混合させた場合のエネルギー収支を表している。この場合、熱分解装置13からは、熱分解に伴い炭化燃料14と熱分解ガス15(乾留ガス15a、油・ガス15b)が生成される。このうち、熱分解ガス15は熱分解装置13に対する加熱熱源として燃焼される。また、熱分解装置13からは、熱分解ガス15の燃焼熱による加熱後の排熱16が生じる。この図2(a)では、所定量の汚泥11に対して最低適正比率による必要最小限の廃プラスチック12を混合させた場合であり、生成された熱分解ガス15はすべて熱分解装置13の加熱用熱源として用いられている。
【0025】
これに対し、図2(b)の例では、図2(a)と同量の汚泥11に対して廃プラスチック12の混合量を、最低適正比率による必要最小限より多くしている(12Aの部分)。この場合、廃プラスチック12の混合量が多い分、熱分解ガス15の生成量も多くなる。処理される汚泥11の量は同じであるため、熱分解装置13に対する加熱用燃料としてのガス量は図2(a)とほぼ等しくなり、残りは余剰分15Aとなる。この余剰分15Aは前述のように下水処理場等における他の用途に活用することができる。
【0026】
ここで、汚泥の処理量は、諸々の条件により日々変化する。一方、熱分解装置の処理容量は、一般に最大時の汚泥処理量を想定して設計する。したがって、汚泥処理量が少ない時には、装置の処理容量に余裕を残したまま、熱分解処理を行うことになり、装置を最大限利用していないことになる。
【0027】
そこで、汚泥処理量と装置の処理容量から廃プラスチックの最大混合可能量を算出し、プラスチックの投入量を調整して、熱分解装置の処理容量を最大限に利用することが好ましい。このようにすれば、汚泥は常に全量を利用することを前提とするため、汚泥の貯留施設は不要となる。その代わりに廃プラスチックの投入量は変化するため、ある程度の量を備蓄しておく。廃プラスチックの備蓄量が不足した場合は、廃プラスチックの供給源である、例えば周辺工場へ廃プラスチックの臨時提供を要求する。この時、輸送コストが最小となるように要求順位、要求量を制御する。
【0028】
図3は上記関係を模式的に表している。図3において、熱分解装置13は下水処理場1に設置されているものとする。この下水処理場1は、他の下水処理場2,3からの下水汚泥を受け入れ、併せて熱分解処理するものとする。また、熱分解装置13は、廃プラスチック12の備蓄設備12Aを持っており、廃プラスチック12の供給源である、周辺の工場A,B,Cから定期的に廃プラスチックの供給を受けているものとする。ここで、各工場A,B,Cは、備蓄設備12Aとの輸送距離の関係から、輸送費はA<B<Cとする。
【0029】
熱分解装置13を設計するにあたっては、汚泥処理量:W´(ある標準的な汚泥処理量)を想定する。この汚泥処理量W´を、補助燃料を使わずに熱分解するために最低限必要なプラスチック量:Pneed´は、次の(1)から求める。
【0030】
Pneed´=W´×最小適正比率(約10%強) ・・・(1)
熱分解装置13の処理容量を設計する際には、汚泥処理量の変動を想定して、処理量に適度な係数を乗じて処理容量を決定するので、熱分解装置の処理容量:Cpは、次の(2)式から求められる。
【0031】
Cp=(W´+Pneed´)×係数(1.2〜1.5程度) ・・・(2)
熱分解装置13は、汚泥処理量の変動に関わらずに装置を最大限に活用するために、装置の処理容量Cpの最大になるまで廃プラスチックを投入する。すなわち、廃プラスチックの最大混合可能量:Pmaxは、次の(3)式から求められる。
【0032】
Pmax=Cp−W ・・・(3)
プラスチックの最大混合可能量Pmaxは、実際の汚泥処理量:Wによって変動する。実際の汚泥処理量Wを補助燃料を用いることなく熱分解するために最低限必要なプラスチック量:Pneedは前記(1)式から以下の様に求まる。
【0033】
Pneed=W×最小適正比率(約10%強) ・・・(1)´
これらの関係から、熱分解処理時に、実際に熱分解装置13に投入される廃プラスチック量(最大混合可能量)Pmaxは、実際の汚泥処理量Wに応じて図4で示すように変化する。
【0034】
図4(a)は設計時の想定内容を表しており、ある標準的な汚泥処理量W´に対する、補助燃料を使わずに熱分解するために最低限必要なプラスチック量Pneed´に対し、熱分解装置13の処理容量Cpから、熱分解ガスの余剰分を生じる最大混合可能量Pmaxが想定されている。すなわち、熱分解装置13の処理容量Cpは、ある標準的な汚泥量W´に対する熱分解処理装置13への廃プラスチックの最大混合可能量Pmaxが、標準的な下水汚泥量W´に対する最小適正比率から求まる必要プラスチック量Pneed´より大きな投入量となるように設定されている。
【0035】
図4(b)は、汚泥処理量Wが設計時の最大値よりも多い場合である。この場合、Pmax<Pneedとなってしまうため、Pmaxを混合しても汚泥処理量Wの全てを熱分解するためにはエネルギーが不足する。そのため、補助燃料の投入が必要になるので、このような運用は避ける。
【0036】
図4(c)は、汚泥処理量Wが設計時の最大値と等しい場合である。この場合、Pmax=Pneedとなるため、Pmaxを投入すれば、過不足なく汚泥を熱分解することができる。
【0037】
図4(d)は、汚泥処理量Wが設計時の最大値よりも少ない、想定内の場合である。この場合、Pmax>Pneedとなるため、Pmaxを混合すればエネルギーに余剰が発生する。
【0038】
図4(e)は、汚泥処理量Wが設計時の最大値よりも大幅に少ない場合である。この場合も、Pmax>Pneedであり、Pmaxを混合すると多くの余剰エネルギーが発生する。
【0039】
このように、熱分解装置13は、図示しない制御手段により、実際に処理される汚泥量Wに対し、それに対する必要プラスチック量Pneedと熱分解装置の処理容量Cpとから求まる廃プラスチックの最大混合可能量Pmaxを決定し、廃プラスチック12の投入量を制御する。
【0040】
図3で説明したように、熱分解装置13は、廃プラスチック12の備蓄設備12Aを持っている。この備蓄設備(倉庫等)12Aには、廃プラスチック供給源である近隣工場A,B,Cから回収したプラスチックを備蓄しておく。この備蓄量をPstockとする。熱分解装置13に対する廃プラスチック12の投入量(最大混合可能量)Pmaxは、前述のように汚泥消費量Wによって変化する。したがって、汚泥処理量Wと廃プラスチック備蓄量Pstockを常に把握し、それぞれの変動を予測する。そのために、熱分解装置13を含む熱分解処理システムでは、図5で示すように、サーバ21及びデータベース22を有するデータ処理装置を設けている。
【0041】
サーバ21は、図3で示した下水処理場1,2,3からの汚泥回収量(汚泥処理量でもある)Wや廃プラスチック備蓄量Pstock、及び廃プラスチック供給源である近隣工場A,B,C,・・・,Xでの廃プラスチック備蓄量Pa,Pb,Pc,・・・,Pxなどのデータを収集する。そして、データベース22に保持された熱分解装置13の処理容量Cp、各工場からの輸送費データなどを用いて、必要な量の廃プラスチック12を適切な工場に対し要求する。
【0042】
このように、汚泥処理量Wの変動予測値から廃プラスチック12の最大投入可能量Pmaxを予測し、廃プラスチック備蓄量Pstockが不足する場合は、近隣工場に対して臨時で廃プラスチックの提供要求を行う。すなわち、サーバ21及びデータベース22を有するデータ処理装置は、熱分解装置13により処理される下水汚泥量W、及びこの下水汚泥に混合可能な廃プラスチックの備蓄量Pstockのデータを収集する手段と、この収集されたデータから下水汚泥量Wに対する最大混合可能量Pmaxを求める手段と、この最大混合可能量Pmaxが廃プラスチックの備蓄量Pstockより多い場合は、廃プラスチック供給先に廃プラスチックの供給要求を行う手段とを備えている。
【0043】
一般的に、近隣工場A,B,C,・・・,Xからの廃プラスチック回収は、定期的(週1回、月1回 等)に行うことが考えられる。したがって、これら近隣工場には、前回の回収時から現時点にいたるまで、一定量のプラスチックが蓄積されていると考えられる。工場Xの現時点のプラスチック蓄積量をPxとする。
【0044】
廃プラスチックの臨時提供要求を実施する場合には、各工場からの輸送費を考慮し、輸送費が最小となるように要求を行う。この動作を図6のフローチャートで説明する。なお、近隣工場A、B、Cからの輸送費は、前述のように、A<B<Cであるとする。
【0045】
まず、図3で示した下水処理場1,2,3からの汚泥回収量(汚泥処理量でもある)Wや廃プラスチック備蓄量Pstockなどのデータ収集を行う(ステップ601)。次に、上記汚泥回収量から熱分解装置13による汚泥処理量Wを予測すると共に、データベース22に保持された熱分解装置13の処理容量Cpから廃プラスチック投入量Pmaxを予測演算する(ステップ602)。また、廃プラスチック供給源である近隣工場A,B,C,・・・,Xでの廃プラスチック備蓄量Pa,Pb,Pc,・・・,Pxなどのデータを収集する(ステップ603)。
【0046】
前記廃プラスチック投入量Pmaxの予測演算の結果、Pmax≦Pstockであれば(ステップ604:Yes)、汚泥と廃プラを混合して熱分解処理装置13に投入する(ステップ605)。これに対し、Pmax≦Pstockでない(ステップ604:No)場合は、廃プラスチック12の不足分:P(不足)=Pmax−Pstockを求める(ステップ606)。
【0047】
この場合、輸送費の大小関係から、まず、近隣工場Aに対して、廃プラスチック不足分:P(不足)=Pmax−Pstockを要求する(ステップ607)。工場Aのプラスチック蓄積量:Paが、P(不足)以上であれば(ステップ608:Yes)、工場AからP(不足)分を臨時で回収し(ステップ609)、廃プラスチック備蓄量Pstockに加える(ステップ610)。この後、汚泥と廃プラを混合して熱分解処理装置13に投入する(ステップ605)。
【0048】
工場Aのプラスチック蓄積量:Paが、P(不足)より少ない場合(ステップ608:No)は、工場Aから備蓄量Paは全て回収し、輸送費に基く次の優先順位の工場Bに対して、不足分:P(不足)−Paを要求する(ステップ611,612)。
【0049】
これ以降同様の処理を、P(不足)≦Pxとなるまで繰り返し(ステップ613〜617)、各工場に臨時で要求するプラスチックの量を決定する。決定後、各工場を巡回して、必要プラスチックを臨時回収する。
【0050】
これらの結果、廃プラスチック備蓄量Pstockと臨時回収した廃プラスチックの合計はPmaxとなるので(ステップ615又は618)、これと汚泥を混合して熱分解を行う(ステップ605)。
【0051】
熱分解装置13からは、図2で示したように熱分解のための加熱後の排熱16が生じる。従来、この排熱は有効活用されることなく単に放熱されていた。そこで、この排熱と下水処理場等の低温水(水道水/排水)の温度差を利用して温度差発電を行い、排熱の有効活用化を図る。この場合、中低温熱源を想定し、ランキンサイクル発電システムを利用する。すなわち、熱分解装置13の排熱を加熱源とし、下水処理場等における低温水を冷却源として沸点の低い作動媒体(例えば、アンモニアなど)に対する加温及び冷却を行う。そして、前記加温により作動媒体を気化させてタービンを駆動し、タービン駆動後の作動媒体は前記冷却により凝縮させるランキンサイクル発電設備を構成する。
【0052】
図7はランキンサイクルを用いたシステムを示している。熱分解装置13からは550℃程度の排ガスが生じるのでこれを排熱ボイラ25に供給して、例えば、汚泥乾燥機用の加熱蒸気を生成する。この排熱ボイラ25を経た排ガスは200℃程度となり、さらに、熱交換器HEX-aを経て160℃程度の排ガスとなる。この熱交換器HEX-aは、ランキンサイクル発電システム26に高温水を供給するものである。
【0053】
一方、下水処理場27では、冬季など0℃程度の低温水(水道水、排水など)が得られるので、この低温水を熱交換器HEX- dに通す。この熱交換器HEX- dは、ランキンサイクル発電システム26に低温水を供給するものである。下水処理場27における低温水は、熱交換器HEX- dを経ることにより10℃程度に温められ、ボイラなどに供給される。
【0054】
ランキンサイクル発電システム26は沸点の低い作動媒体(例えば、アンモニアなど)に対する加温用の熱交換器HEX-b及び冷却用の熱交換器HEX-cを有する。熱交換器HEX-bは熱分解装置13の排熱を熱源とするもので、熱交換器HEX-aから供給される約90℃の高温水により沸点の低い作動媒体を加温し、気化させる。なお、熱交換器HEX-bを経た高温水は80℃程度に温度低下し、前記熱交換器HEX-aに戻され、ここで再び約90℃の高温水となる。
【0055】
前記加温により気体となった作動媒体はタービン28を駆動し、発電機29による発電に供される。タービン駆動後の作動媒体は熱交換器HEX-cに送られ、熱交換器HEX- dからの10℃程度の低温水により冷却され、凝縮して液状となる。熱交換器HEX-cに供給された低温水は、作動媒体を凝縮させることにより20℃程度に温度上昇し、熱交換器HEX- dに戻される。そして、この熱交換器HEX- dで再び10℃程度の低温水となる。
【0056】
このように、熱分解装置13から排出される熱の一部を熱交換器HEX-aで回収し、高温水の温度を上昇させる。この高温水の熱を利用して、熱交換器HEX-bで、ランキンサイクル内の熱媒体を液体から気体に加熱し、タービン28を回して発電機29による発電を行う。発電後の熱媒体は熱交換器HEX-cで冷却され液体となる。熱交換器HEX-cで熱媒体から回収した熱を、熱交換機:HEX-dで下水処理場27の低温水(水道水や排水)に移動させることにより、水道水や排水を加温する。
【0057】
なお、熱交換器HEX-a、HEX-dは、熱分解装置13とランキンサイクル発電システム26、及びランキンサイクル発電システム26と下水処理場27との責任分解点を明確にするために設置した。
【0058】
これにより、排熱の回収利用による電力が得られるだけでなく、特に寒冷地で見られる凍結防止や微生物処理を目的とした水道水や排水の加温に必要なエネルギーを削減することができる。または、ボイラの予熱として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による熱分解処理システムの一実施の形態を示す概念図である。
【図2】同上一実施の形態におけるエネルギー収支を説明する図である。
【図3】同上一実施の形態における処理汚泥と供給源から回収される廃プラスチックとの関係を説明するイメージ図である。
【図4】同上一実施の形態に用いる熱分解装置における汚泥処理量と廃プラスチック投入量との関係を説明する図である。
【図5】同上一実施の形態に用いる情報処理システムの構成例を示す図である。
【図6】同上一実施の形態における廃プラスチック追加要求に関する制御フローの一例を示す図である。
【図7】本発明を利用したランキンサイクル発電システムを説明するブロック構成図である。
【符号の説明】
【0060】
11 汚泥
12 廃プラスチック
13 熱分解装置
14 炭化燃料
15 熱分解ガス
26 ランキンサイクル発電設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥と廃プラスチックとを混合して、熱分解装置により低酸素環境で加熱し、熱分解ガスと炭化物とを得る熱分解処理システムであって、
前記汚泥に対する廃プラスチックの混合比率を、前記熱分解により生じる熱分解ガスの量が、前記加熱用の燃料として補助燃料を用いることなく前記汚泥を熱分解可能な量となる最小適正比率以上とすることを特徴とする熱分解処理システム。
【請求項2】
前記熱分解装置の処理容量Cpは、ある標準的な汚泥量W´に対する熱分解装置への廃プラスチックの最大混合可能量Pmaxが、前記標準的な汚泥量W´に対する前記最小適正比率から求まる必要プラスチック量Pneed´より大きな投入量となるように設定されており、
前記熱分解装置によって実際に処理される汚泥量Wとそれに対する必要プラスチック量Pneedと熱分解装置の処理容量Cpとから廃プラスチックの最大混合可能量Pmaxを決定する制御手段を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の熱分解処理システム。
【請求項3】
前記熱分解装置により処理される汚泥量W、及びこの汚泥に混合可能な廃プラスチックの備蓄量Pstockのデータを収集する手段と、
この収集されたデータから前記下水汚泥量Wに対する最大混合可能量Pmaxを求める手段と、
この最大混合可能量Pmaxが廃プラスチックの備蓄量Pstockより多い場合は、廃プラスチック供給元に廃プラスチックの供給要求を行う手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の熱分解処理システム。
【請求項4】
熱分解装置の排熱を加熱源とし低温水を冷却源として沸点の低い作動媒体に対する加温及び冷却が行われ、前記加温により前記作動媒体を気化させてタービンを駆動し、タービン駆動後の作動媒体を前記冷却により凝縮させるランキンサイクル発電設備をさらに設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱分解処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−296084(P2008−296084A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141984(P2007−141984)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】