説明

熱収縮性フッ素樹脂チューブの製造方法

【課題】溶融押出成形において1段の操作により成形され、外径のばらつきが低減される熱収縮性のフッ素樹脂チューブ等を提供する。
【解決手段】溶融したフッ素樹脂材料を金型20によりチューブ状に押し出す押出工程と、金型から押し出されたチューブ状のフッ素樹脂材料を一定の引き取り速度で連続的に引き取りつつ、金型の近傍においてチューブ状のフッ素樹脂材料の内周面を円筒形状の冷却部材30の外周面に接触させて、チューブ状のフッ素樹脂材料Fを170℃以下の温度に冷却する冷却工程により、フッ素樹脂チューブを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂被覆ロールの離型層の形成等に使用される熱収縮性フッ素樹脂チューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一般に、熱圧力定着方式によって、用紙等の記録材上に形成したトナー像が記録材上に定着される。熱圧力定着方式に使用する定着ロールや加圧ロールの表面は、通常、熱収縮性のフッ素樹脂チューブを用いて形成された離型層が設けられている。
【0003】
このような熱収縮性のフッ素樹脂チューブは、通常、押出成形機を用いる溶融押出成形により成形される。例えば、特許文献1には、押出成形機により押し出された樹脂系材料を径方向に膨張させ、その後、冷却する工程を有する熱収縮チューブの製造方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−001339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フッ素樹脂等の熱収縮性チューブは、押出成形機にセットされた金型からチューブ状に押し出された溶融樹脂材料を連続的に引き取りつつ冷却し(第1段階)、その後、径方向に拡張する(第2段階)という2段階により製造されている。
【0006】
これにより、成形されたチューブの内部に残留応力が残るため、かかる熱収縮性チューブは、チューブが再び加熱により熱収縮する性質を利用し、定着ロール等の表面離型層の形成に用いられている。
【0007】
しかし、溶融押出成形において前記した2段階の操作により熱収縮性チューブを成形すると、製造プロセスが複雑であるため熱収縮性チューブのコストが高いという問題がある。また、成形される熱収縮性チューブの外径のばらつきが大きくなるという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、溶融押出成形において1段階の操作により成形され、外径のばらつきが低減される熱収縮性のフッ素樹脂チューブ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明)
第1発明に係るフッ素樹脂チューブの製造方法は、溶融したフッ素樹脂材料を金型によりチューブ状に押し出す押出工程と、金型から押し出されたチューブ状のフッ素樹脂材料を一定の引き取り速度で連続的に引き取りつつ、金型の近傍においてチューブ状のフッ素樹脂材料の内周面を円筒形状の冷却部材の外周面に接触させて、チューブ状のフッ素樹脂材料を170℃以下の温度に冷却する冷却工程とからなるものである。
【0010】
かかる構成により、チューブ状のフッ素樹脂材料の内周面を直接冷却部材に接触させるので、フッ素樹脂材料を短時間で冷却する(フッ素樹脂材料を急冷する)ことができる。このため、チューブ状のフッ素樹脂材料に応力を残留させることができるので、冷却後にフッ素樹脂チューブを径方向に拡張する必要が無い。
【0011】
また、チューブ状のフッ素樹脂材料の内周面が円筒形状の冷却部材の外周面に直接接触するので、チューブ状のフッ素樹脂材料の形状を整えることができ、径方向の精度が均一でバラツキの少ないフッ素樹脂チューブを製造することができる。
【0012】
さらに、冷却後にフッ素樹脂チューブを径方向に拡張する工程を無くすことができ、押し出し工程と冷却工程という単純な工程(1段階)でフッ素樹脂チューブを製造できるので、フッ素樹脂チューブの製造コストを大幅に下げることができる。
【0013】
(第2発明)
第2発明に係るフッ素樹脂チューブの製造方法は、第1発明において、冷却工程は、冷却装置の外周面に接触したチューブ状のフッ素樹脂材料を、さらに外側からも冷却するものである。
【0014】
かかる構成により、前記した第1発明と同様な効果が得られるだけではなく、より短時間で、径方向の精度が高い(内径および外径が略均一な)フッ素樹脂チューブを製造することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
押し出し工程と冷却工程という単純な工程で、径方向の精度が高度なフッ素樹脂チューブを安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。尚、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
【実施例1】
【0017】
〔溶融押出成形装置〕
図1は、溶融押出成形装置を説明する図(断面図)である。
図1に示す溶融押出成形装置は、フッ素樹脂材料を溶融状態に調製する一軸押出機10と、一軸押出機10の先端に取り付けられた金型(ダイ)20と、金型20から外部にチューブ状に押し出されたフッ素樹脂材料Fの内周面を外周面に接触させて冷却する冷却部材(サイジングイダイ)30と、冷却部材30により冷却・固化されたチューブ状のフッ素樹脂材料Fを、テンションロール40を介し一定の速度でA方向に引き取る引取り機50と、引取り機50により引き取られたチューブ状のフッ素樹脂材料Fを連続的に巻き取る巻取り機60とを備えている。
【0018】
ここで、フッ素樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)が好ましい。
【0019】
(一軸押出機)
一軸押出機10は、複数のヒータ(図示せず)を備えた加熱シリンダー12と、フッ素樹脂材料のペレットPの投入口であるホッパー11と、加熱シリンダー12の内部に設けられたスクリュー13とを有している。ホッパー11から加熱シリンダー12内に投入されたフッ素樹脂材料のペレットPは、フッ素樹脂の融点以上の温度(通常、350〜450℃)に加熱されて溶融状態になる。
【0020】
(金型)
図2は、一軸押出機10の先端に取り付けられた金型20と冷却部材30とを説明する図(断面図)である。図2に示すように、金型20の本体21には、一軸押出機10から押し出された溶融状態のフッ素樹脂材料MPが通過する流動体流路22と、溶融状態のフッ素樹脂材料MPをチューブ状に押し出すための環状(円形状)の出口孔23が形成されている。
【0021】
(冷却部材)
また、冷却部材30は、円筒形状であり、本体21に環状に形成された出口孔23の中央部を貫通し、本体21の下部に突出するように設けられている。本実施例においては、冷却部材30の直径(外径)bを25mmとした。この冷却部材の直径bは、製造しようとするフッ素樹脂チューブの直径の狙い値に応じて決定される。
【0022】
本実施例では、後述するように、金型20の出口孔23から外径aを有するチューブ状に押し出されたフッ素樹脂材料は、一定速度でA方向に引き取られつつ、円筒形状の冷却部材30の外周面と接触し、内径bの断面形状を有するチューブ状になるように冷却され縮径する。
【0023】
図3は、冷却部材30の冷却方法を説明する図である。
図3に示すように、冷却部材30の内部には、市販の冷却機Rと接続された冷媒流路31が設けられている。冷媒としては特に限定されず、例えば、冷却水、エチレングリコール又はプロピレングリコールの水浴液(ブライン)等が挙げられる。本実施例では水を使用している。金型20の内径aの出口孔23から押し出されたフッ素樹脂材料は、冷却部材30により、170℃以下に冷却される。
【0024】
(引取り機)
図1に示すように、引取り機50は、所定の間隔を設けて配置された一対のロールと、これらの一対のロール間に掛け回された1本の無端ベルトとからそれぞれ構成される2組の回転体が、それぞれの無端ベルトの表面を接するように配置された構造を有している。
【0025】
冷却部材30により冷却されたフッ素樹脂材料Fは、テンションロール40を介して引取り機50を構成する2組の回転体のそれぞれの無端ベルトが接する部分に挟まれ、図1において上側に配置された回転体がB方向に回転し、下側に配置された回転体がC方向に回転することにより一定の速度で引き取られる。
【0026】
(巻取り機)
巻取り機60は、引取り機50により引き取られるフッ素樹脂材料Fを所定の速度で巻き取るものであり、公知の回転体を使用することができ特に限定されない。
【0027】
〔熱収縮性フッ素樹脂チューブの製造方法〕
図1に示すように、押出成形機10のホッパー11から投入されたフッ素樹脂材料のペレットPは、加熱シリンダー12に備えられた複数のヒータ(図示せず)によりフッ素樹脂材料の融点以上の温度(通常、350〜450℃)に加熱されて溶融状態になる。溶融状態のフッ素樹脂材料MPは、加熱シリンダー12の内部に設けられたスクリュー13の回転により、加熱シリンダー12の先端に取り付けられた金型20の本体21内部に押し出される。
【0028】
次に、溶融状態のフッ素樹脂材料MPは、金型20の本体21の出口孔22から外部に押し出され(押出工程)、引取り機50によりA方向に一定の引き取り速度で連続的に引き取られながら、出口孔22の近傍に設けた冷却部材30の外周面に接触することにより冷却・固化される(冷却工程)。その後、冷却・固化したフッ素樹脂材料のチューブは、引取り機50により引き取られ、巻取り機60により連続的に巻き取られる。
【0029】
本実施例では、図1に示すように、金型20の出口孔22から外部に押し出されたフッ素樹脂材料Fを一定の引き取り速度で連続的に引き取りつつ冷却部材30により冷却固化し、熱収縮性を有するフッ素樹脂チューブが成形される。
【0030】
また、本実施例では、金型20の出口孔22から外部に押し出されたフッ素樹脂材料Fを冷却部材30により冷却する温度は、170℃以下にする必要がある。このような冷却温度の範囲により金型20から押し出されたフッ素樹脂材料Fを溶融温度から170℃まで急冷することができ、成形後の収縮率Yが5%以上である熱収縮性のフッ素樹脂チューブを成形することができる。
【0031】
表1に、以下の4種類のフッ素樹脂材料(a〜d)を溶融押出成形により成形して得た外径25mm、膜厚20μmのそれぞれのフッ素樹脂チューブについて、冷却部材30の冷却温度X(℃)と成形後のフッ素樹脂チューブの収縮率Y(%)との関係を示した。
【0032】
フッ素樹脂a:三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製350−J
フッ素樹脂b:三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製450HP−J
フッ素樹脂c:三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製451HP−J
フッ素樹脂d:旭硝子株式会社製P−66P
【0033】
【表1】

【0034】
さらに、表2に、膜厚と外径が異なる4種類のフッ素樹脂チューブについて、冷却部材の温度=冷却温度X(℃)と成形後のフッ素樹脂チューブの収縮率Y(%)との関係を示す。
【0035】
【表2】

【0036】
図4は、表1及び表2の結果に基づく冷却温度Xと収縮率Yを示すグラフである。図4に示すように、本実施の形態では、金型20(図1参照)から溶融状態で押し出されたフッ素樹脂材料は、冷却温度Xが低いほど収縮率Yが増大し、冷却温度Xと収縮率Yとは、前述した式(1)の関係を満たしていることが分かる。これは、複数(フッ素樹脂a〜フッ素樹脂d)のフッ素樹脂材料について同様な結果が得られており、さらに、フッ素樹脂チューブの外径及び膜厚を変化させた場合においても同様な結果が得られることが分かる。
【0037】
つまり、溶融状態で押し出されたフッ素樹脂材料を冷却部材(サイジングダイ)30により急冷すると、内部に応力が残留したまま成形され、この残留応力の存在により熱収縮性が発揮されるのである。
【0038】
次に、本実施の形態では、図1に示すように、金型(ダイ)20の出口孔22から外部に押し出されたフッ素樹脂材料Fを一定の引き取り速度で連続的に引き取りつつ冷却部材30により冷却固化している。
【0039】
この場合、冷却工程において、金型20の外部に押し出されたフッ素樹脂材料を引取り速度Z(mm/秒)で連続的に引き取る際に、引取り速度Z(mm/秒)と収縮率Yとが下記式(2)の関係を満たすことが好ましい。
Y=0.7Z×10−3+0.0251 (2)
【0040】
図5は、冷却工程におけるフッ素樹脂材料の引取り速度Zとフッ素樹脂チューブの収縮率Yとの関係を示すグラフである。尚、このときの溶融押出成形の条件は、金型温度370℃、冷却温度35℃である。また、成形後のフッ素樹脂チューブは、外径25mm、膜厚20μmである。
【0041】
図5に示すように、本実施の形態では、金型20(図1参照)から溶融状態で押し出されたフッ素樹脂材料は、引取り速度Zが大きいほど収縮率Yが増大し、引取り速度Zと収縮率Yとは、前述した式(2)の関係を満たしていることが分かる。これは、金型20(図1参照)から押し出されたフッ素樹脂材料が冷却部材30により冷却されるまでの時間が短縮されることによりフッ素樹脂材料の温度低下が低減し、そのため、冷却部材30における急冷効果が増大することによると考えられる。
【0042】
このように、本実施の形態では、フッ素樹脂材料の溶融押出成形において、金型20から押し出された溶融状態のフッ素樹脂材料を冷却部材30により冷却固化するという1段の操作を行うことにより、外径のばらつきが低減された熱収縮性のフッ素樹脂チューブを成形することができる。
【0043】
〔フッ素樹脂被覆ロール〕
図6は、熱収縮性のフッ素樹脂チューブを被覆したフッ素樹脂被覆ロールの製造方法を説明する図である。ここでは、例えば、熱圧力定着方式に使用する定着ロールを例に挙げて説明する。
【0044】
まず、図6(a)に示すように、HT(High Tensile)鋼またはアルミニウムを主成分とする芯金71の表面に、接着剤としてのプライマーを塗布してプライマー層73を形成したロール70を準備する。プライマーとしては、通常、加熱溶融形接着剤が使用される。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、ロール70の軸方向中心位置と、熱縮性フッ素樹脂チューブ80の軸方向中心位置とを略一致させ、ロール70をフッ素樹脂チューブ80内に通して配置する。フッ素樹脂チューブ80は、上述した溶融押出成形により得られたものである。
【0046】
続いて、図6(c)に示すように、フッ素樹脂チューブ80を加熱して熱収縮させることにより、フッ素樹脂チューブ80を径方向に縮径させ、芯金71の表面にプライマー層73を介してフッ素樹脂チューブ80を被覆接着したフッ素樹脂被覆ロール90が形成される。
【実施例2】
【0047】
実施例1に記載した溶融押出成形装置および製造方法を用いて製造した膜厚30μm、狙い値φ26mmのフッ素樹脂チューブの径方向の精度を測定したデータを図8に示す。縦軸がフッ素樹脂チューブの直径(外径)、横軸がフッ素樹脂チューブの長手方向の位置である。図8に示すように、データは、フッ素樹脂チューブの長手方向において8mに渡り採取した。
【0048】
尚、用いたフッ素樹脂材料はフッ素樹脂c(三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製451HP−J)、金型温度は370℃、引き取り速度は70mm/s、冷却部材30の冷却温度は170℃である。
【0049】
図8に示すように、本発明に係る製造方法で製造したフッ素樹脂チューブの直径は、最大値が25.99mm、最小値が25.92mm、平均値が25.96mmで、標準偏差が0.02であった。同等品の従来のフッ素樹脂チューブの直径は、最大値26.11mm、最小値25.54mm、平均値26.00mm、標準偏差が0.15であるので、従来の同等品と比較して高精度なフッ素樹脂チューブを得られたことがわかる。
尚、フッ素樹脂チューブの外径の測定は、フッ素樹脂チューブを長手方向にカッターで切り開き、板状になったフッ素樹脂チューブにおける一方のカッターの切り口から他方のカッターの切り口までの距離を測定することにより行なった。
【実施例3】
【0050】
実施例1に記載した溶融押出成形装置および製造方法を用いて製造した膜厚20μm、狙い値φ26mmのフッ素樹脂チューブの径方向の精度を測定したデータを図9に示す。縦軸がフッ素樹脂チューブの直径(外径)、横軸がフッ素樹脂チューブの長さ方向の位置である。図9に示すように、データは、フッ素樹脂チューブの長さ方向において8mに渡り採取した。
【0051】
尚、用いたフッ素樹脂材料はフッ素樹脂c(三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製451HP−J)、金型温度は370℃、引き取り速度は70mm/s、冷却部材30の冷却温度は100℃である。
【0052】
図9に示すように、本発明に係る製造方法で製造したフッ素樹脂チューブの直径は、最大値が26.01mm、最小値が25.91mm、平均値が25.97mmで、標準偏差が0.02であった。同等品の従来のフッ素樹脂チューブの直径は、最大値26.18mm、最小値25.61mm、平均値26.01mm、標準偏差が0.15であるので、従来の同等品と比較して高精度なフッ素樹脂チューブを得られたことがわかる。
【実施例4】
【0053】
実施例1に記載した溶融押出成形装置および製造方法を用いて製造した膜厚30μm、狙い値φ25.5mmのフッ素樹脂チューブの径方向の精度を測定したデータを図10に示す。縦軸がフッ素樹脂チューブの直径(外径)、横軸がフッ素樹脂チューブの長さ方向の位置である。図10に示すように、データは、フッ素樹脂チューブの長さ方向において8mに渡り採取した。
【0054】
尚、用いたフッ素樹脂材料はフッ素樹脂c(三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製450HP−J)、金型温度は370℃、引き取り速度は70mm/s、冷却部材30の冷却温度は50℃である。
【0055】
図10に示すように、本発明に係る製造方法で製造したフッ素樹脂チューブの直径は、最大値が25.51mm、最小値が25.45mm、平均値が25.47mmで、標準偏差が0.02であった。同等品の従来のフッ素樹脂チューブの直径は、最大値25.80mm、最小値25.48mm、平均値25.80mm、標準偏差が0.08であるので、従来の同等品と比較して高精度なフッ素樹脂チューブを得られたことがわかる。
【実施例5】
【0056】
実施例1に記載した溶融押出成形装置および製造方法を用いて製造した膜厚30μm、狙い値φ30mmのフッ素樹脂チューブの径方向の精度を測定したデータを図11に示す。縦軸がフッ素樹脂チューブの直径(外径)、横軸がフッ素樹脂チューブの長さ方向の位置である。図11に示すように、データは、フッ素樹脂チューブの長さ方向において8mに渡り採取した。
【0057】
尚、用いたフッ素樹脂材料はフッ素樹脂c(三井・デュポン・フロロケミカル株式会社製451HP−J)、金型温度は370℃、引き取り速度は70mm/s、冷却部材30の冷却温度は0℃である。
【0058】
図11に示すように、本発明に係る製造方法で製造したフッ素樹脂チューブの直径は、最大値が30.70mm、最小値が30.57mm、平均値が30.63mmで、σ=0.03であった。同等品の従来のフッ素樹脂チューブの直径は、最大値30.89mm、最小値30.57mm、平均値30.62mm、σ=0.07であるので、従来の同等品と比較して高精度なフッ素樹脂チューブを得られたことがわかる。
【0059】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から当事者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0060】
例えば、図7に示すように、冷却工程を、冷却部材の外周面に接触したチューブ状の前記フッ素樹脂材料を、さらに外側からも冷却するようにしても良い。かかる冷却方法であっても、実施例2〜5と同様な効果が得られるだけではなく、より短時間で、径方向の精度が高いフッ素樹脂チューブを得ることができる。
【0061】
尚、前記した実施例2乃至5において、冷却部材の温度を175℃以上とした場合は、外径のバラツキの大きいフッ素樹脂チューブしか製造できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】溶融押出成形装置を説明する図である。
【図2】一軸押出機の先端に取り付けられた金型(ダイ)と冷却部材(サイジングダイ)とを説明する図である。
【図3】冷却部材(サイジングダイ)の冷却方法を説明する図である。
【図4】表1及び表2の結果に基づく冷却温度Xと収縮率Yを示すグラフである。
【図5】冷却工程におけるフッ素樹脂材料の引取り速度Zとフッ素樹脂チューブの収縮率Yとの関係を示すグラフである。
【図6】熱収縮性のフッ素樹脂チューブを被覆したフッ素樹脂被覆ロールの製造方法を説明する図である。
【図7】一軸押出機の先端に取り付けられた金型(ダイ)と冷却部材(サイジングダイ)とを説明する図である。
【図8】フッ素樹脂チューブの外径を測定したデータである。
【図9】フッ素樹脂チューブの外径を測定したデータである。
【図10】フッ素樹脂チューブの外径を測定したデータである。
【図11】フッ素樹脂チューブの外径を測定したデータである。
【符号の説明】
【0063】
10 一軸押出成形機
11 ホッパー
12 加熱シリンダー
13 スクリュー
20 金型(ダイ)
21 本体
22 流動体流路
23 出口孔
30 冷却部材(サイジングダイ)
31 冷媒流路
40 テンションロール
50 引取り機
60 巻取り機
70 ゴムロール
71 芯金
73 プライマー層
80 フッ素樹脂チューブ
90 フッ素樹脂被覆ロール
P 樹脂ペレット
MP、F フッ素樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融したフッ素樹脂材料を金型によりチューブ状に押し出す押出工程と、
該金型から押し出されたチューブ状の該フッ素樹脂材料を一定の引き取り速度で連続的に引き取りつつ、前記金型の近傍においてチューブ状の該フッ素樹脂材料の内周面を円筒形状の冷却部材の外周面に接触させて、チューブ状の該フッ素樹脂材料を170℃以下に冷却する冷却工程と、からなる熱収縮性フッ素樹脂チューブの製造方法
【請求項2】
前記冷却工程は、前記冷却部材の外周面に接触したチューブ状の前記フッ素樹脂材料を、さらに外側からも冷却する請求項1に記載の熱収縮性フッ素樹脂チューブの製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−125634(P2010−125634A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300284(P2008−300284)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】