説明

熱可塑性樹脂成形品およびそれらの製造法

本発明は、ポリエチレンテレフタレート成形品および前記成形品の製造法に関する。その態様の1つにおいては、本発明は、成形後の工程においてポリエチレンテレフタレート成形品に着色剤または添加剤を施す方法、およびこのような製造法によって得られる物品に関し、特に、ポリエチレンテレフタレートの容器または容器予備成形物を供給すること;容器または容器予備成形物のポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する1種以上の着色剤を、液状媒体中溶液または液状媒体中分散液として収容する着色ゾーンを設けること;および着色ゾーンにおいて、容器または容器予備成形物と1種以上の着色剤とを、1種以上の着色剤の少なくとも一部を液状媒体から移行させ、そして容器または容器予備成形物に結合させるのに効果的な条件下において、液状媒体中にてある時間にわたって接触させること;を含む、着色されたポリエチレンテレフタレート容器または容器予備成形物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂成形品およびそれらの製造法に関する。さらに詳細には、本発明は、着色剤または添加剤を組み込んだ熱可塑性樹脂成形品、およびこのような物品の製造法に関する。本発明の態様の1つにおいては、本発明は、成形後の工程において、着色剤または添加剤を熱可塑性樹脂成形品に施す方法、およびこのような方法によって製造される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートは、食品包装材料(たとえばボトル)の製造に対して大規模に使用されている。このようなボトルは、飲料(たとえば、炭酸清涼飲料、ビール、またはミネラルウォーター)をパッケージするのに広く利用されている。一部の飲料ボトルに対しては顔料なしの透明ボトルが好まれるけれども、他の飲料ボトルに対しては着色ボトルが好まれる。特に、炭酸飲料を収容すべく意図されているボトルの場合は、ボトルのガスバリヤ性を改良するために、ナイロンまたはエチレンビニルアルコール樹脂が、ポリエチレンテレフタレートと共に多層予備成形物の形で組み込まれているサンドイッチ構造が使用されている。同じ目的に対して、ポリアミドとポリエチレンテレフタレートとを混合することが提唱されている。ポリアミドの存在がガスバリヤ性をもたらすからである。
【0003】
さらに、紫外線フィルター、酸素吸収剤、抗菌剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤、難燃剤、およびこれら物質の類似物等の、1種以上の着色剤または添加剤をボトルまたは他のパッケージ中に組み込むのが望ましいことが多い。
【0004】
ポリエチレンテレフタレートを含んだ成形コンパウンドからボトルを製造するのに通常使用される手法は、一般には二段階プロセスを含む。第1の工程においては、成形コンパウンドの顆粒を射出成形して予備成形物を作製する。第2の工程においては、この予備成形物を所望の形状にブロー成形する。
【0005】
他のポリエステルからの、そして他の熱可塑性材料からのボトルや他のパッケージの製造に対しても、類似の加工工程が使用されている。
このようなプロセスにおいては、一般にはポリエチレンテレフタレートに対して後縮合が施され(post-condensed)、ポリエチレンテレフタレートは約25,000〜30,000の範囲の分子量を有する。しかしながら、繊維グレードのポリエチレンテレフタレート(より安価である)を使用することも提唱されているが、後縮合は施されず、約20,000の範囲のより低い分子量を有する。さらに、少なくとも85モル%のテレフタル酸と少なくとも85モル%のエチレングリコールで構成される反復構造単位を含有するポリエチレンテレフタレートのコポリエステルを使用することも提唱されている。テレフタル酸と共に組み込むことのできるジカルボン酸の例としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸などが挙げられる。エチレングリコールのほかに、コポリエステル中に組み込むことのできる他のジオールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、3-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-1,4-ジオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジエチルプロパン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,3-ジオール、1,4-ジ-(ヒドロキシエトキシ)-ベンゼン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチル-シクロブタン、2,2-ビス-(3-ヒドロキシエトキシフェニル)-プロパン、および2,2-ビス-(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)-プロパンがある。本明細書における“ポリエチレンテレフタレート”という用語は、ポリエチレンテレフタレートだけでなくこうしたコポリエステルも含む。
【0006】
最終的に得られるボトルを着色しようとする場合は、ボトル予備成形物を製造するのに使用される射出成形機のホッパーに装入されるポリエチレンテレフタレートの顆粒と単一の着色剤または複数種の着色剤の混合物とを混合するのが適切である。このためには、着色剤または着色剤混合物を、固体濃縮物(a solid concentrate)として、あるいは粉末形態にて、あるいは液体キャリヤー中分散液として加えることができる。さらに、同一時点において、あるいはその付近の時点において(すなわち、コンパウンドの成形前において)、熱可塑性成形コンパウンドに添加剤を加えることもできる。
【0007】
熱可塑性材料の1つの重要な特性はそれらの結晶化度である。結晶化度は、ポリマーの光透明性と引張特性に特定の影響を及ぼす。結晶化度は、種々の方法(たとえば、体積変化率、熱容量、エンタルピー変化、X線散乱、赤外線分光法、およびラマン分光法)で測定することができる。実際的な目的に対しては、ポリマーの結晶化度は、広いエリアにわたって顕著であるか又は存在している場合には、目視観察によって判定することができる。しかしながら、小さなエリアの局所的な結晶化度を目視観察することは、特に不透明であるような最終ポリマー物品の場合には困難なことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
物品を成形する前よりむしろ成形後に、熱可塑性成形品に色を付与するための、あるいは望ましい付加的な特性を付与するための手段が求められている。こうした手段により、メーカーは、物品の最終的な色がどうなるか、あるいは物品の付加的なプロフィールがどうなるか、ということが必ずしもわからなくても、物品の成形を進めることができるようになる。このように、ボトルメーカーは、ボトル製造プロセスの大部分を進めてから、1種以上の着色剤または添加剤を加えることによって製品を仕上げることができる。したがって、同じ形状とサイズを有していて異なった色で着色された物品に対する注文、あるいは同じ形状とサイズを有していて異なった付加的プロフィールを有する物品に対する注文には、これまでよりも迅速に対応することができる。さらに、困難な目視検査や時間のかかる分析試験に依存しない、熱可塑性成形品の結晶化度を評価する簡便な方法が求められている。
【0009】
さらに、成形工程において、たとえば射出成形機中に着色剤成分もしくは添加剤成分を不必要に導入することなく成形品を着色するための手段、あるいは成形品に付加的特性を付与するための手段を提供することも有利であると思われる(着色剤成分もしくは添加剤成分の不必要な導入は、たとえば、色および/または付加的プロフィール以外の点において同一である物品の異なった成形工程間に、射出成形機のクリーニングを必要とする)。
【0010】
さらに、これまでよりも明確な及び/又は制御可能な色鮮明度もしくは付加的鮮明度(additive definition)を有する成形品を提供することが求められている。たとえば、異なった色の装飾的パターンを有する物品を製造するのが望ましい。
【0011】
さらに、これまでと同等の美的もしくは機能的効果を達成する上でこれまでよりも少量の着色剤もしくは添加剤を使用する着色成形品または望ましい付加的プロフィールを有する成形品を製造する方法を提供するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】

本発明によれば、熱可塑性材料の成形品を供給すること;成形品の熱可塑性材料に対して化学的親和力を有する1種以上の着色剤を、液状媒体中溶液または液状媒体中分散液として収容する着色ゾーンを設けること;および着色ゾーンにおいて、成形品と1種以上の着色剤とを、1種以上の着色剤の少なくとも一部を液状媒体から移行させ、そして成形品に結合させるのに効果的な条件下において、液状媒体中にてある時間にわたって接触させること;を含む、着色熱可塑性成形品を製造する方法が提供される。
【0013】
本発明の製造法は、熱可塑性樹脂成形コンパウンドを供給すること;および前記熱可塑性樹脂成形コンパウンドを成形工程に付して成形品を作製し、次いでこの成形品と1種以上の着色剤とを着色ゾーンにおいて接触させること;を含んでよい。
【0014】
したがって、本発明の製造法は、熱可塑性樹脂成形コンパウンドを供給すること;前記熱可塑性樹脂成形コンパウンドを成形工程に付して成形品を作製すること;および前記成形品に対して化学的親和力を有する着色剤と前記成形品とを、着色剤と接触する成形品の少なくとも表面への着色剤の結合を起こさせるのに効果的な条件下においてある時間にわたって接触させること;を含んでよい。
【0015】
本発明によればさらに、熱可塑性材料の成形品を供給すること;成形品の熱可塑性材料に対して化学的親和力を有する1種以上の添加剤を、液状媒体中溶液または液状媒体中分散液として収容する添加剤付与ゾーンを設けること;および添加剤付与ゾーンにおいて、成形品と1種以上の添加剤とを、1種以上の添加剤の少なくとも一部を液状媒体から移行させ、そして成形品に結合させるのに効果的な条件下において、液状媒体中にてある時間にわたって接触させること;を含む、添加剤付与による機能性(additive-imparted functionality)を有する熱可塑性成形品を製造する方法が提供される。
【0016】
したがって本発明の製造法は、熱可塑性樹脂成形コンパウンドを供給すること;前記熱可塑性樹脂成形コンパウンドを成形工程に付して成形品を作製すること;および成形品と成形品に対して化学的親和力を有する添加剤とを、添加剤と接触する成形品の少なくとも表面への添加剤の結合を起こさせるのに効果的な条件下においてある時間にわたって接触させること;を含んでよい。
【0017】
添加剤は、成形品に対して化学的親和力を有していて、成形品に望ましい特性を付与するような物質であれば、いかなる物質であってもよい。添加剤の種類の例としては、紫外線フィルター、酸素吸収剤、抗菌剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤、難燃剤、およびこれら物質の類似物がある。
【0018】
本発明の製造法においてはさらに、2種以上の着色剤の混合物、2種以上の添加剤の混合物、または1種以上の着色剤と1種以上の添加剤との混合物と成形品とを接触させるのが望ましい。これとは別に、あるいは同様に、成形品を、種々の異なった着色剤および/または添加剤と順次接触させるのが望ましい場合がある。さらに、特定の着色剤および/または添加剤を成形品の特定部位に向けて施すことで、おそらくは、快い美的効果をもたらしたり、あるいは成形品の特定部位における添加剤によって得られる機能性を高めたりすることができる。たとえば、本発明の製造法によれば、成形品を多くの逐次的な着色工程に付すことによって、異なった色の装飾用ストライプを有する成形品を簡便に製造することができる。
【0019】
成形品と着色剤もしくは添加剤とを接触させる前に、成形品の1つ以上の部位をバリヤ材料(たとえばワックスフィルム)で被覆して、その後の着色剤/添加剤接触工程時において、バリヤ材料で被覆された部位における成形品への着色剤もしくは添加剤の結合を防止するのが望ましいことがある。このように、たとえば、最終的な成形品上により複雑な色パターンを得ることが可能となる。
【0020】
本発明による好ましい製造法においては、着色剤付与または添加剤付与の前に、成形品の材料を予備処理する必要がない。
本発明の製造法においては、着色剤または添加剤が、成形品を製造するのに使用される熱可塑性材料に対して化学的親和力を有することが重要である。このような化学的親和力は、たとえば、イオン結合、共有結合、または水素結合によってもたらすことができる。この点で、異なったタイプの熱可塑性材料に対しては、異なったタイプの着色剤と添加剤が適している。成形品の熱可塑性材料が主としてポリエチレンテレフタレートまたは他のポリエステルであれば、着色剤は分散染料であるのが適切である。しかしながら、成形品の熱可塑性材料がナイロンであれば、着色剤は、たとえば酸性染料であるのが適切である。適切な酸性染料の1つの例は、ダイアシッド・ターコイズ・ブルー(Dyacid Turquoise Blue)VBである。
【0021】
適切な分散染料としては、アントラキノン染料、インダンスロン染料、モノアゾ染料、ジアゾ染料、ミチン染料(mithine dye)、キノフタロン染料、ペリノン染料、ナフタリジミド染料(naphthalidimide dye)、およびチオインジゴ染料などがある。本発明の製造法における着色剤として使用するのに適している分散染料の例としては、ケムレッツ社(Chemrez Incorporated)(www.chemrez.com)から市販のディスパーゾル(Dispersol)(商標)染料、チバ・スペシャルティーズ・ケミカルズ社(Ciba Specialties Chemicals Inc.)(www.cibasc.com)から市販のテラシル(Terasil)(商標)染料とテラトップ(Teratop)(商標)染料、およびBASF AG(www.basf.com)から市販のパレガル(Palegal)(商標)染料などがあるが、これらに限定されない。分散染料はさらに、バイエルAGを含めた他の種々の製造業者から市販されている〔特に、ダイスター(Dystar)(商標)系〕。
【0022】
成形品の熱可塑性材料がナイロンを含む場合に本発明の製造法において使用するための酸性染料も、これらの製造業者から市販されている。適切な酸性染料の例としては、CIアシッド・バイオレット90〔アルビオン・カラーズ社(Albion Colours)から市販のダイアラン・ボルデュークス(Dyalan Bordeux)S-B200%〕およびCIアシッドEL17〔アルビオン・カラーズ社から市販のダイアシッド・イエロー(Dyacid yellow)2G〕がある。ナイロンは、酸性条件下では一般に、ポリマーのアミノ末端基を介して染料と結合する。中性の染色条件下では、非特異的な疎水性相互作用とファンデルワールス力が大きく寄与し、ナイロンと酸性染料との間の静電結合が強化される。
【0023】
着色剤組成物は、成形品に対して要求される着色に応じて、単一の染料を含有しても、あるいは染料の混合物を含有してもよい。たとえば、琥珀色のボトルを製造するためには、赤色染料と黄色染料と青色染料との混合物が必要とされる。
【0024】
本発明の製造法において使用するのに適した添加剤の例としては、ベンゾフェノン、ジフェニルアクリレート、シンナメート、および立体障害アミン(HALS)等の紫外線吸収剤があるが、これらに限定されない。
【0025】
分散染料は繊維工業における着色剤として長年にわたって使用されており、たとえばポリエステル繊維を着色するのに使用されている。しかしながら、成形品と着色剤(たとえば分散染料)とを、成形品の接触表面と着色剤との結合を起こさせるのに効果的な条件下にてある時間にわたって直接接触させることによって、成形品に色を付与することはこれまで知られていない。さらに、機能性添加剤を成形品にこのように施すことができる、ということもこれまで認識されていない。
【0026】
成形品の熱可塑性材料への着色剤または添加剤の結合を起こさせるのに効果的な条件は、意図する最終結果(すなわち、たとえば要求される色の深み)、着色剤もしくは添加剤の種類、および使用する熱可塑性材料の種類、を含めた多くのファクターに応じて変わる。
【0027】
本発明の製造法においては、着色剤または添加剤は、染料もしくは添加剤を、水性媒体、有機溶媒、または分散媒中に混合して得られる溶液または分散液として供給するのが好ましい。コスト、環境適合性、および入手しやすさ等の点から、水ベースの分散媒を使用するのが好ましい。したがって、本発明の1つの好ましい製造法においては、着色剤は、分散染料の水中分散液として供給される。本発明の別の好ましい製造法においては、添加剤は、添加剤の水中分散液として供給される。
【0028】
着色剤または添加剤は、適切な容器(たとえば染浴)中に収容された溶液または分散液として供給するのが好ましく、この染浴中に成形品を浸漬して、成形品の外部表面と着色剤または添加剤とを接触させることができる。
【0029】
染料の溶液中濃度または分散媒中濃度は、成形品に付与すべく要求される着色剤の量、成形品が着色剤と接触状態にある滞留時間、および他の条件(接触がなされる場合に一般的な物理的および化学的条件)に応じて選択することができる。染料の濃度は、一般には成形品の約0.01重量%〜約15重量%であり、好ましくは成形品の約0.05重量%〜約10重量%であり、さらに好ましくは成形品の約0.1重量%〜約5重量%である。
【0030】
添加剤の溶液中濃度または分散媒中濃度は、成形品に付与すべく要求される添加剤の量、成形品が添加剤と接触状態にある滞留時間、および他の条件(接触がなされる場合に一般的な物理的および化学的条件)に応じて選択することができる。添加剤の濃度は、一般には約0.01重量%〜約10重量%であり、好ましくは約0.05重量%〜約5重量%であり、さらに好ましくは約0.01重量%〜約1重量%である。
【0031】
本発明の製造法において、成形品が着色剤または添加剤と接触状態にある滞留時間は、上記の着色剤または添加剤の濃度;成形品に要求される、色の深み、もしくは添加剤によって付与される機能性のレベル;および接触がなされる場合に一般的な他の条件;を含めた多くの考慮すべき点に応じて選択することができる。滞留時間は、一般には約10秒〜約15分であり、好ましくは約20秒〜約10分であり、さらに好ましくは約30秒〜約3分である。
【0032】
成形品と着色剤または添加剤とを接触させる温度は、少なくとも約40℃であるのが好ましく、少なくとも約60℃であるのがさらに好ましく、そして少なくとも約80℃であるのがさらに好ましい。分散媒が水であるとき、好ましい温度は通常約80℃〜約100℃である。しかしながら、成形品と着色剤または添加剤との接触が加圧容器中で行われるならば、そして加圧容器中での接触が、成形品のより速やかな及び/又はより深い着色あるいは添加剤付与による機能性向上を果たすのに望ましいのであれば、より高い温度を使用することができる。
【0033】
ポリエチレンテレフタレートや他のポリエステル成形コンパウンドの射出成形は一般に、射出成形機と約260℃〜約285℃の範囲もしくは約285℃以上の最高バレル温度(たとえば最高約310℃)を使用して行われる。この最高温度における滞留時間は、一般には約15秒〜約5分の範囲もしくは約5分以上であり、好ましくは約30秒〜約2分の範囲である。着色予備成形物または着色成形品を製造する場合、これまでは、これらの条件に耐える着色剤添加剤含有成形コンパウンド(a colourant additive composition)を選択することが望ましかった。ポリエステル予備成形物からボトルを製造するためのブロー成形工程においては一般に、約100℃より高くて最高約170℃までもしくはそれ以上という幾分低めの温度が使用される。本発明の製造法の場合、成形品が予備成形物のみであるときは、着色剤または添加剤がこれらのそれほど激しくはない条件に耐えられることが必要である。本発明の製造法においては、成形品が褐色ボトルまたは他のパッケージであるとき、着色剤または添加剤がこれらのそれほど激しくはない条件に耐えられる必要はない。なぜなら、成形工程とブロー成形工程の後にのみ成形品が着色されるか、あるいは成形工程とブロー成形工程の後にのみ成形品に機能性添加剤が組み込まれるからである。高温での滞留時間を延長すると、特にポリエチレンテレフタレートボトル予備成形物を製造するのに使用される射出成形工程時においてだけでなく、おそらくはその後のブロー成形工程時においても、予備成形物またはブロー成形ボトルの着色品質の低下を起こしやすい、ということは当業界に認識されている現象である。したがって、これらの温度において良好な安定性と着色特性を有する着色添加剤を見いだすべく多大の研究がなされている。本発明の製造法は、これらの問題点を解消した、成形品を着色するための代替手段を提供する。
【0034】
本発明はさらに、成形品の結晶化度を評価するための簡便な方法を提供する。結晶質の部分では、ポリマー鎖が密に詰まっているので、熱可塑性材料への着色剤の結合はそれほど効果的にはなされていない。したがって本発明は、熱可塑性成形品と、成形品の熱可塑性材料に対して化学的親和力を有する1種以上の着色剤とを、1種以上の着色剤の少なくとも一部を成形品に結合させるのに効果的な条件下においてある時間にわたって接触させること;および成形品における1つ以上の結晶性部分をその後の検査によって識別すること;を含む、熱可塑性成形品の結晶化度を評価するための方法を提供する。
【0035】
本発明はさらに、
i ポリエステル成形コンパウンドを供給すること;
ii ポリエステル成形コンパウンドを加熱すること;
iii 高温のポリエステル成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
iv ポリエステルに対して化学的親和力を有する着色剤とボトル予備成形物とを、ポリエステルへの着色剤の結合を起こさせるのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;および
v ボトル予備成形物を、着色ボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;
を含む、ポリエステル成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法を提供する。
【0036】
本発明はさらに、
a ポリエステル成形コンパウンドを供給すること;
b ポリエステル成形コンパウンドを加熱すること;
c 高温のポリエステル成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
d ボトル予備成形物を、ボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;および
e ポリエステルに対して化学的親和力を有する着色剤とボトルとを、着色剤とポリエステルとの結合を引き起こすのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;
を含む、ポリエステル成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法を提供する。
【0037】
本発明はさらに、
I ポリエステル成形コンパウンドを供給すること;
II ポリエステル成形コンパウンドを加熱すること;
III 高温のポリエステル成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
IV ポリエステルに対して化学的親和力を有する添加剤とボトル予備成形物とを、ポリエステルへの前記添加剤着色剤の結合を引き起こすのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;および
V ボトル予備成形物を、結合した添加剤による望ましい機能性を有するボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;
を含む、ポリエステル成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法を提供する。
【0038】
本発明はさらに、
A ポリエステル成形コンパウンドを供給すること;
B ポリエステル成形コンパウンドを加熱すること;
C 高温のポリエステル成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
D ボトル予備成形物を、ボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;および
E ポリエステルに対して化学的親和力を有する添加剤とボトルとを、添加剤とポリエステルとの結合を起こさせるのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;
を含む、ポリエステル成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法を提供する。
【0039】
本発明はさらに、内側表面;外側表面;および前記表面の主として一方に結合して、他方には結合しない、成形品の材料に対して化学的親和力を有する着色剤または添加剤;を有する熱可塑性成形品を提供する。
【0040】
一般には、着色剤または添加剤が結合するのは外側表面である。着色剤または添加剤はさらに、接触箇所から熱可塑性成形品の材料中に移行したときには、表面より下に結合する場合もある。
【0041】
本発明の成形品は、容器(たとえばボトル)またはその予備成形物であるのが好ましい。
本発明の製造法は、成形コンパウンドの層の間にナイロンもしくはエチレン/ビニルアルコールコポリマーの層がサンドイッチされた形の多層ボトルを製造するのに使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、温度は℃による表示であり、部とパーセントは重量基準である。
(実施例1)
水中に5部のディスパーゾルオレンジ(Dispersol Orange)A-G(商標)を含有する染浴を90℃にて調製した。
【0043】
170℃で4時間加熱することによってあらかじめ乾燥しておいたイーストマン(Eastman)9921ポリエチレンテレフタレート顆粒をボイ(Boy)80射出成形機のホッパーに供給し、約275℃の温度(この温度にて約2分の滞留時間)で押出して多くのボトル予備成形物を作製した(重量はいずれも34.5g)。
【0044】
ボトル予備成形物はいずれも無色であった。
次いでボトル予備成形物の一部を染浴中に約5分浸漬した。
染浴から取り出して乾燥すると、ボトル予備成形物のそれぞれが満足できる色を有していることが確認された。
【0045】
(実施例2〜5)
種々の染浴を下記のように調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
170℃で4時間加熱することによってあらかじめ乾燥しておいたイーストマン9921ポリエチレンテレフタレート顆粒をボイ80射出成形機のフィードホッパーに供給し、約275℃の温度(この温度にて約2分の滞留時間)で押出して多くの無色のボトル予備成形物を作製した(重量はいずれも34.5g)。
【0048】
次いで、無色のボトル予備成形物の一部を上記の染浴中に90℃にて約5分浸漬して、下記のような仕方で実施例2〜5の物品を製造した。
【0049】
【表2】

【0050】
染浴から取り出して乾燥すると、実施例2〜5はいずれも満足できる色を示し、この手法を使用した場合に可能な色パターンの範囲を示す、ということがわかった。
(実施例6)
水中に5%のICIディスパーゾルオレンジA-Gを含有する染浴を調製した。
【0051】
0.8%(ポリエチレンテレフタレートの重量を基準として)のプレミアシルバー(Premier Silver)-11281-019-11(カラーマトリックス)と共に170℃で4時間加熱することによってあらかじめ乾燥しておいたイーストマン9921ポリエチレンテレフタレート顆粒をボイ80射出成形機のフィードホッパーに供給し、約275℃の温度(この温度にて約2分の滞留時間)で押出して、メタリックシルバーの外観を示す多くのボトル予備成形物を作製した(重量はいずれも34.5g)。
【0052】
次いでこれらのボトル予備成形物を部分的に染浴中に約5分浸漬した。
染浴から取り出して乾燥すると、ボトル予備成形物が満足できる二色効果を示していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形されたポリエチレンテレフタレート容器または容器予備成形物を供給すること;ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する1種以上の着色剤を、液状媒体中溶液または液状媒体中分散液として収容する着色ゾーンを設けること;および着色ゾーンにおいて、容器または容器予備成形物と1種以上の着色剤とを、1種以上の着色剤の少なくとも一部を液状媒体から移行させ、そして容器または容器予備成形物のポリエチレンテレフタレートに結合させるのに効果的な条件下において、液状媒体中にてある時間にわたって接触させること;を含む、着色されたポリエチレンテレフタレート容器または容器予備成形物の製造法。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを供給すること;および前記ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを成形工程に付し、これにより容器または容器予備成形物を作製すること;を含む、請求項1記載の製造法。
【請求項3】
1種以上の着色剤が分散染料を含む、請求項1または請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
ポリエチレンテレフタレート成形品を供給すること;ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する1種以上の添加剤を、液状媒体中溶液または液状媒体中分散液として収容する添加剤付与ゾーンを設けること;および添加剤付与ゾーンにおいて、容器または容器予備成形物と1種以上の添加剤とを、1種以上の添加剤の少なくとも一部を液状媒体から移行させ、そして容器または容器予備成形物に結合させるのに効果的な条件下において、液状媒体中にてある時間にわたって接触させること;を含む、添加剤付与による機能性を有するポリエチレンテレフタレート容器または容器予備成形物の製造法。
【請求項5】
1種以上の添加剤が、紫外線フィルター、酸素吸収剤、抗菌剤、酸化防止剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤、難燃剤、およびこれらの2種以上の混合物を含む群から選択される、請求項4記載の製造法。
【請求項6】
効果的な条件が少なくとも約40℃の温度を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項7】
効果的な条件が少なくとも約60℃の温度を含む、請求項6記載の製造法。
【請求項8】
容器または容器予備成形物がボトルまたはボトル予備成形物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項9】
i ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを供給すること;
ii ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを加熱すること;
iii 高温のポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
iv ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する着色剤とボトル予備成形物とを、ポリエチレンテレフタレートへの着色剤の結合を起こさせるのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;および
v ボトル予備成形物を、着色ボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;
を含む、ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法。
【請求項10】
a ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを供給すること;
b ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを加熱すること;
c 高温のポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
d ボトル予備成形物を、ボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;および
e ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する着色剤とボトルとを、着色剤とポリエチレンテレフタレートとの結合を引き起こすのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;
を含む、ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法。
【請求項11】
I ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを供給すること;
II ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを加熱すること;
III 高温のポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
IV ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する添加剤とボトル予備成形物とを、ポリエチレンテレフタレートへの前記添加剤着色剤の結合を引き起こすのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;および
V ボトル予備成形物を、結合した添加剤による望ましい機能性を有するボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;
を含む、ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法。
【請求項12】
A ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを供給すること;
B ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを加熱すること;
C 高温のポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドを、ボトル予備成形物が形成されるように押出すこと;
D ボトル予備成形物を、ボトルが形成されるようにブロー成形温度にてブロー成形すること;および
E ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する添加剤とボトルとを、添加剤とポリエチレンテレフタレートとの結合を起こさせるのに効果的な条件下にてある時間にわたって接触させること;
を含む、ポリエチレンテレフタレート成形コンパウンドからブロー成形ボトルを製造する方法。
【請求項13】
容器または容器予備成形物と着色剤または添加剤との位置選択的な接触によって、着色剤または添加剤を容器または容器予備成形物の特定の部位に向ける、請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項14】
容器または容器予備成形物に結合される着色剤または添加剤の量は、容器または容器予備成形物と着色剤または添加剤との接触時間を調節することによって制御することができる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項15】
容器または容器予備成形物に結合される着色剤または添加剤の量は、溶液/分散液中の着色剤または添加剤の濃度を調節することによって制御することができる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項16】
容器または容器予備成形物と着色剤または添加剤との間の効果的な結合をもたらすのに、容器または容器予備成形物が、着色剤または添加剤を接触させる前に化学的な前処理を必要としない、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項17】
容器または容器予備成形物と着色剤または添加剤との間の第1の接触を施した後に、乾燥工程を施し、次いで容器または容器予備成形物と別の着色剤または添加剤とのさらなる接触を施す、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の製造法によって製造される物品。
【請求項19】
内側表面;外側表面;および前記表面の主として一方に結合して、他方には結合しない、ポリエチレンテレフタレートに対して化学的親和力を有する着色剤または添加剤;を有する、請求項18記載のポリエチレンテレフタレート成形品。
【請求項20】
着色剤または添加剤が、表面の接触箇所からポリエチレンテレフタレート容器または容器予備成形物の材料中への移行の結果として、容器または容器予備成形物の表面より下に結合される、請求項18または請求項19に記載の容器または容器予備成形物。

【公表番号】特表2006−502886(P2006−502886A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544435(P2004−544435)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004387
【国際公開番号】WO2004/035296
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(501415361)カラーマトリクス・ヨーロッパ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】