説明

熱輸送デバイス、電子機器及び熱輸送デバイスの製造方法

【課題】高い熱輸送性能を有する熱輸送デバイスなどの技術を提供すること。
【解決手段】熱輸送デバイス10は、容器1と、この容器1内に設けられた気相流路11及び液相流路12とを有している。液相流路12は、上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22が積層されて形成される。上層メッシュ部材を形成する、第1のワイヤ16は、y軸に対して所定の角度θ傾いた方向に向けて配置され、第2のワイヤ17は、x軸
に対して所定の角度θ傾いた方向に向けて配置される。一方、下層メッシュ部材22を形成する、第3のワイヤ18は、y軸方向に向けて配置され、第4のワイヤ19は、x軸方向に向けて配置される。これにより、各メッシュ部材21、22が重なり合ってしまうことを防止することができるため、作動流体を流通させる十分な流路を確保することができる。これにより、熱輸送デバイス10の熱輸送性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の相変化を利用して熱を輸送する熱輸送デバイス、この熱輸送デバイスを含む電子機器、及び熱輸送デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からPC(Personal Computer)のCPU(Central Processing Unit)等の熱源からの熱を輸送するデバイスとして、ヒートパイプが広く用いられている。ヒートパイプは、パイプ状の形態や、平面型の形態などが広く知られている。このようなヒートパイプでは、内部に水などの作動流体が封入され、この作動流体がヒートパイプ内部で相変化しながら循環することで、CPU等の熱源からの熱が輸送される。ヒートパイプ内部には、作動流体を循環させるための動力源が必要であり、一般的には、毛細管力を発生させる金属焼結体、金属メッシュなどが使用される。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、金属焼結体、または金属メッシュを用いたヒートパイプが記載されている。
【特許文献1】特開平2006−292355号公報(段落[0003]、[0010]、[0011]図1、図3、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属メッシュの毛細管力を利用して熱を輸送するヒートパイプでは、熱輸送性能を向上させることが困難であるという問題があった。
【0005】
例えば、熱輸送性能を向上させるために、メッシュ部材を積層することが考えられる。この場合、メッシュ部材と、メッシュ部材とが相互に重なり合ってしまい、メッシュ部材と、メッシュ部材との間に適度な空間を確保することができない。これにより、流路抵抗が増加してしまい、毛細管力が低減してしまうため、熱輸送性能を向上させることができないといった問題があった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、高い熱輸送性能を有する熱輸送デバイス、この熱輸送デバイスを含む電子機器、及び熱輸送デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る熱輸送デバイスは、作動流体と、容器と、気相流路と、液相流路とを具備する。
前記作動流体は、相変化により熱を輸送する。
前記容器は、前記作動流体を封入する。
前記気相流路は、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記液相流路は、積層体を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記積層体は、第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材とを有し、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の編み方向が相対的に異なるように積層されて形成される。
「メッシュ部材の編み方向」とは、メッシュ部材を形成する第1のワイヤ及び第2のワイヤが編み込まれる方向である。
本発明では、液相流路を形成する積層体は、第1のメッシュ部材及び第2のメッシュ部材の編み方向が相対的に異なるように積層されて形成される。これにより、第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材との間に適度な空間を形成することができる。これにより、低い流路抵抗及び高い毛細管力を実現することができ、その結果、熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。
【0008】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュのうち少なくとも一方は、複数の第1のワイヤと、複数の第2のワイヤとを有していてもよい。
前記各第1のワイヤは、第1の間隔で並ぶように配置される。
前記各第2のワイヤは、前記各第1のワイヤに編み込まれ、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔で並ぶように配置される。
本発明では、メッシュ部材を構成する、複数の第1のワイヤの間隔及び複数の第2のワイヤの間隔が異なる。例えば、前記各第1のワイヤが液相流路に沿う方向に向けて配置されている場合を想定する。この場合、前記各第2のワイヤの間隔(第2の間隔)を前記各第1のワイヤの間隔(第1の間隔)よりも広く形成することで、流路抵抗を低減することができる。これにより、メッシュ部材の毛細管力を向上させることができ、その結果、熱輸送性能を向上させることができる。
【0009】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記第1のメッシュ部材は、第1のメッシュナンバーを有していてもよい。
この場合、前記第2のメッシュ部材は、前記第1のメッシュナンバーとは異なる第2のメッシュナンバーを有していてもよい。
「メッシュナンバー」とは、メッシュ部材の1インチ(25.4mm)当たりの、メッシュの目の数を指す。
本発明では、第1のメッシュ部材のメッシュナンバーと第2のメッシュ部材のメッシュナンバーとが異なる。これにより、積層されるメッシュ部材が相互に重なり合ってしまうことを防止する効果がさらに大きくなる。これにより、さらに熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。
【0010】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の、編み方向の相対的な角度が5度から85度であってもよい。
このように、編み方向の相対的な角度が5度〜85度の範囲であれば、メッシュ部材が相互に重なり合うことを適切に防止することができ、熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。
【0011】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記気相流路は、第3のメッシュ部材を含んでいてもよい。
本発明では、気相流路がメッシュ部材により構成される。これにより、熱輸送デバイスの耐久性を向上させることができる。例えば、熱輸送デバイスに熱が加えられた場合に、内圧により容器が変形してしまうことを防止することができる。また、熱輸送デバイスが曲げ加工がされる場合に、熱輸送デバイスの耐久性を向上させることができる。
【0012】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記容器は、板形状であってもよい。
【0013】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記容器は、板部材が前記積層体を挟み込むように折り曲げられて形成されてもよい。
これにより、容器を1つの板部材により形成することができるので、コストを削減することができる。
【0014】
本発明の他の形態に係る熱輸送デバイスは、作動流体と、容器と、気相流路と、液相流路とを具備する。
前記作動流体は、相変化により熱を輸送する。
前記容器は、前記作動流体を封入する。
前記気相流路は、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記液相流路は、第1のメッシュ部材を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記第1のメッシュ部材は、複数の第1のワイヤと、複数の第2のワイヤとを有する。
前記各第1のワイヤは、第1の間隔で並ぶように配置される。
前記各第2のワイヤは、前記各第1のワイヤに編み込まれ、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔で並ぶように配置される。
本発明では、第1のメッシュ部材を構成する、複数の第1のワイヤの間隔及び複数の第2のワイヤの間隔が異なる。例えば、前記各第1のワイヤが液相流路に沿う方向に向けて配置されている場合を想定する。この場合、前記各第2のワイヤの間隔(第2の間隔)を前記各第1のワイヤの間隔(第1の間隔)よりも広く形成することで、液相流路の流路抵抗を低減することができる。これにより、第1のメッシュ部材の毛細管力を向上させることができ、その結果、熱輸送性能を向上させることができる。
【0015】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記気相流路は、第2のメッシュ部材を含んでいてもよい。
この場合、前記第2のメッシュ部材は、複数の第3のワイヤと、複数の第4のワイヤとを有していてもよい。
前記各第3のワイヤは、第3の間隔で並ぶように配置される。
前記各第4のワイヤは、前記各第3のワイヤに編み込まれ、前記第3の間隔とは異なる第4の間隔で並ぶように配置される。
例えば、前記各第3のワイヤが気相流路に沿う方向に向けて配置されている場合を想定する。この場合、前記各第4のワイヤの間隔(第4の間隔)を前記各第3のワイヤの間隔(第3の間隔)よりも広く形成することで、気相流路の流路抵抗を低減することができる。これにより、熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。さらに、本発明では、気相流路がメッシュ部材により形成されているため、気相が空洞である場合に比べ、熱輸送デバイスの耐久性を向上させることができる。
【0016】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記第1のワイヤは、前記液相流路に沿う方向に向けて配置されてもよい。
この場合、前記第2のワイヤは、前記液相流路に沿う方向と直交する方向に向けて配置されてもよい。
また、この場合、前記第2の間隔は、前記第1の間隔よりも広くてもよい。
本発明では、液相流路と直交する方向に向けて配置される第2のワイヤの間隔(第2の間隔)が、液相流路に沿う方向に向けて配置される第1のワイヤの間隔(第1の間隔)よりも広く形成される。これにより、上記したように、第1のメッシュ部材の毛細管力を向上させることができ、その結果、熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。
【0017】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記第3のワイヤは、前記気相流路に沿う方向に向けて配置されてもよい。
この場合、前記第4のワイヤは、前記気相流路に沿う方向と直交する方向に向けて配置されてもよい。
また、この場合、前記第4の間隔は、前記第3の間隔よりも広くてもよい。
本発明では、気相流路に沿と直交する方向に向けて配置される第4のワイヤの間隔(第4の間隔)が、気相流路に沿う方向に向けて配置される第3のワイヤの間隔(第3の間隔)よりも広く形成される。これにより、上記したように、気相流路の流路抵抗を低減することができ、その結果、熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。
【0018】
本発明のさらに別の形態に係る熱輸送デバイスは、作動流体と、容器と、気相流路と、液相流路とを具備する。
前記作動流体は、相変化により熱を輸送する。
前記容器は、前記作動流体を封入する。
前記気相流路は、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記気相流路は、第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材とを有し、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記第1のメッシュ部材は、第1のメッシュナンバーである。
前記第2のメッシュ部材は、前記第1のメッシュ部材に積層され、前記第1のメッシュナンバーとは異なる第2のメッシュナンバーである。
本発明では、第1のメッシュ部材のメッシュナンバーと第2のメッシュ部材のメッシュナンバーとが異なる。これにより、メッシュ部材が相互に重なり合ってしまうことを防止することができるため、低い流路抵抗及び高い毛細管力を実現することができる。その結果、熱輸送デバイスの熱輸送性能を向上させることができる。
【0019】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記第1のメッシュナンバー及び前記第2のメッシュナンバーは、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の周期性が一致しないように、設定されていてもよい。
「メッシュ部材の周期性が一致しない」場合とは、例えば、第1のメッシュナンバーが、第2のメッシュナンバーの2/3倍、3/4倍、4/5倍、4倍、5倍などの場合をいう。逆に、メッシュ部材の周期性が一致する場合とは、例えば、第1のメッシュナンバーの1/2倍、1/3倍、2倍、3倍などの場合をいう。
例えば、第1のメッシュナンバーが、前記第2のメッシュナンバーの1/2倍、1/3倍、2倍、3倍である場合、メッシュ部材の周期性が一致してしまうため、メッシュ部材が相互に重なり合ってしまう可能性がある。本発明では、第1のメッシュ部材の周期性と、第2のメッシュ部材の周期性とが一致してしまうことを防止することができるため、適切に、メッシュ部材の重なり合いを防止することができる。
【0020】
上記熱輸送デバイスにおいて、前記気相流路は、第3のメッシュ部材を有していてもよい。
本発明では、気相流路がメッシュ部材により形成されるので、気相が空洞である場合に比べ、熱輸送デバイスの耐久性を向上させることができる。
【0021】
本発明の一形態に係る電子機器は、発熱源と、熱輸送デバイスとを具備する。
前記熱輸送デバイスは、作動流体と、容器と、気相流路と、液相流路とを有する。
前記作動流体は、相変化により前記発熱源の熱を輸送する。
前記容器は、前記作動流体を封入する。
前記気相流路は、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記液相流路は、積層体を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記積層体は、第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材とを有し、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の編み方向が相対的に異なるように積層されて形成される。
【0022】
本発明の他の形態に係る電子機器は、発熱源と、熱輸送デバイスとを具備する。
前記熱輸送デバイスは、作動流体と、容器と、気相流路と、液相流路とを有する。
前記作動流体は、相変化により前記発熱源の熱を輸送する。
前記容器は、前記作動流体を封入する。
前記気相流路は、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記液相流路は、メッシュ部材を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記メッシュ部材は、複数の第1のワイヤと、複数の第2のワイヤとを有する。
前記各第1のワイヤは、第1の間隔で並ぶように配置される。
前記各第2のワイヤは、前記各第1のワイヤに編み込まれ、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔で並ぶように配置される。
【0023】
本発明のさらに別の形態に係る電子機器は、発熱源と、熱輸送デバイスとを具備する。
前記作動流体は、相変化により前記発熱源の熱を輸送する。
前記容器は、前記作動流体を封入する。
前記気相流路は、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記液相流路は、第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材とを有し、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる。
前記第1のメッシュ部材は、第1のメッシュナンバーである。
前記第2のメッシュ部材は、前記第1のメッシュ部材に積層され、前記第1のメッシュナンバーとは異なる第2のメッシュナンバーである。
【0024】
本発明の一形態に係る熱輸送デバイスの製造方法は、相変化により熱を輸送する作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を挟み込むように、板部材を折り曲げることを含む。
前記折り曲げられた板部材が接合される。
これにより、容器を1つの板部材により形成することができるので、コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、高い熱輸送性能を有する熱輸送デバイス、この熱輸送デバイスを含む電子機器、及び熱輸送デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図2は、図1に示すA−A間の断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。なお、本明細書中において説明する、各図では、図面を分かり易く表示するために、熱輸送デバイスや、熱輸送デバイスが有する各部材等を、実際の寸法と異なって表示する場合がある。
【0028】
これらの図に示すように、熱輸送デバイス10は、一方向(y軸方向)に長い、矩形の薄板形状を有する容器1を備えている。容器1は、例えば、容器1の上部1aを構成する上板部材2と、容器1の側周部1b及び下部1cを構成する下板部材3とが接合されて形成される。下板部材3には、凹部が設けられており、この凹部により、容器1内部に空間が形成される。
【0029】
上板部材2及び下板部材3は、典型的には、無酸素銅、タフピッチ銅、あるいは銅合金で構成される。しかしこれに限られず、上板部材2及び下板部材3は、銅以外の金属で構成されてもよく、その他、熱伝導率の高い材料が用いられてもよい。
【0030】
上板部材2及び下板部材3の接合方法としては、拡散接合、超音波接合、ロウ付け、溶接などの方法が挙げられる。
【0031】
容器1の長さL(y軸方向)は、例えば、10mm〜500mmとされ、容器の幅W(x軸方向)は、例えば、5mm〜300mmとされる。また、容器の厚さT(z軸方向)は、例えば、0.3mm〜5mmとされる。容器1の長さL、幅W及び厚さTは、これらの値に限られず、もちろん他の値も取り得る。
【0032】
容器1には、例えば、0.1mm〜1mm程度の直径を有する注入口(図示せず)が設けられており、この注入口を介して容器1内部に作動流体が注入される。作動流体は、典型的には、容器1の内部が減圧された状態で注入される。
【0033】
作動流体としては、純水、エタノールなどのアルコール、フロリナートFC72などのフッ素系の液体、あるいは、純水とアルコールの混合液などが挙げられる。
【0034】
図2に示すように、熱輸送デバイス10の容器1の内部は、上部1a側が空洞とされており、下部1c側には、積層体20が配置される。積層体20は、2つのメッシュ部材21、22が積層されて形成される。熱輸送デバイス10内部に形成された空洞により、気相の作動流体を流通させる気相流路11が形成される。また、熱輸送デバイス10内部に設けられた積層体20により、液相の作動流体を流通させる液相流路12が形成される。
【0035】
以降の説明では、積層された2つメッシュ部材21、22のうち、上層に位置するメッシュ部材21を上層メッシュ部材21、下層に位置するメッシュ部材22を下層メッシュ部材22として説明する。
【0036】
上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22は、例えば、銅、リン青銅、アルミニウム、銀、ステンレス、モリブデン、あるいはこれらの合金により構成される。
【0037】
上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22は、典型的には、面積の大きいメッシュ部材が任意の大きさに切り取られて形成される。
【0038】
図3は、上層メッシュ部材及び下層メッシュ部材を示す平面図である。図4は、上層メッシュ部材及び下層メッシュ部材の平面拡大図である。
【0039】
図3(A)及び図4(A)に示すように、上層メッシュ部材21は、複数の第1のワイヤ16と、複数の第2のワイヤ17とが、それぞれ直交する方向で、相互に編み込まれて形成される。
【0040】
図3(B)及び図4(B)に示すように、下層メッシュ部材22も、複数の第3のワイヤと、複数の第4のワイヤとが、それぞれ直交する方向で、相互に編み込まれて形成される。
【0041】
上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22の織り方としては、例えば、平織、綾織などが挙げられる。しかし、これらに限られず、ロッククリンプ織、フラットトップ織などであってもよく、その他の織り方であってもよい。
【0042】
第1のワイヤ16と第2のワイヤ17とで挟み込まれた空間により、複数の孔14が形成される。同様に、第3のワイヤ18と第4のワイヤ19とで挟み込まれた空間により、複数の孔15が形成される。本明細書中では、孔14、15のように、ワイヤにより形成された孔をメッシュの目と呼ぶ場合がある。
【0043】
上層メッシュ部材21の第1のワイヤ16は、y軸方向に対して所定の角度θ傾いた方向に向けて配置される。この場合、第2のワイヤ17は、第1のワイヤ16に直交する方向で編み込まれているので、x軸に対して所定の角度θ傾いた方向に向けて配置される。
【0044】
一方、下層メッシュ部材の第3のワイヤ18は、y軸方向に向けて配置される。この場合、第4のワイヤ19は、x軸方向に向けて配置される。
【0045】
以降の説明では、第1のワイヤ16及び第2のワイヤ17が向かう方向、つまり、第1のワイヤ及び第2のワイヤが編み込まれる方向を上層メッシュ部材21の編み方向と呼ぶ。同様に、第3のワイヤ18及び第4のワイヤ19が編み込まれる方向を下層メッシュ部材22の編み方向と呼ぶ。
【0046】
すなわち、上層メッシュ部材21の編み方向は、y軸及びx軸方向に対して所定の角度θ傾いた方向とされ、下層メッシュ部材22の編み方向は、y軸及びx軸方向に沿った方向とされている。このように、本実施形態に係る熱輸送デバイス10では、上層メッシュ部材21の編み方向と、下層メッシュ部材22の編み方向とが相対的に異なっている。
【0047】
上述のように、上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22は、典型的には、面積の大きいメッシュ部材が任意の大きさに切り取られて形成される。したがって、図3(A)及び図4(A)に示すような、y軸及びx軸方向に対して所定の角度θ傾いた方向に、編み方向を有するメッシュ部材21を形成することは、比較的容易である。
【0048】
図3では、一例として、上層メッシュ部材21のメッシュの編み方向がy軸及びx軸方向に対して所定の角度θ傾いた方向であり、下層メッシュ部材22のメッシュの編み方向がy軸及びx軸方向である場合を挙げた。しかし、上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22の編み方向は、これに限られない。
【0049】
典型的には、上層メッシュ部材21の編み方向と、下層メッシュ部材22の編み方向とが相対的に異なっていればよい。例えば、上層メッシュ部材21の編み方向がy軸及びx軸方向であり、下層メッシュ部材22の編み方向がy軸及びx軸に対して所定の角度θ傾いた方向であっても構わない。
【0050】
なお、上層メッシュ部材21の編み方向と、下層メッシュ部材22の編み方向との相対的な角度についての詳細は、後述する。
【0051】
図5は、積層体の断面拡大図である。図5(A)は、積層体20の断面拡大図であり、図5(B)は、比較例に係る積層体20’の断面拡大図である。
【0052】
まず、図5(B)を参照して比較例に係る積層体20’について説明する。比較例に係る積層体20’は、第1のワイヤ16’及び第2のワイヤ17’を有する上層メッシュ部材21’と、第3のワイヤ18’及び第4のワイヤ19’を有する下層メッシュ部材22’とを含む。
【0053】
上層メッシュ部材21’と、下層メッシュ部材22’とは、ともにy軸及びx軸方向に編み方向を有している。すなわち、積層体20’は、それぞれ同じ方向に編み方向を有する、上層メッシュ部材21’及び下層メッシュ部材22’が積層されて形成された。
【0054】
図5(B)に示すように、同じ方向に編み方向を有するメッシュ部材21’、22’が積層されて積層体20’が形成されると、各メッシュ部材21’、22’が相互に重なり合ってしまう。
【0055】
これにより、積層体20’では、液相の作動流体を閉じ込めておく空間が狭くなりすぎてしまい、液相の作動流体の流路抵抗が大きくなってしまう。さらに、積層体20’は、毛細管力を十分に発揮することができない。
【0056】
一方で、図5(A)に示すように、上層メッシュ部材21の編み方向と、下層メッシュ部材22の編み方向とを相対的に異ならせることで、各メッシュ部材21、22が相互に重なり合ってしまうことを防止することができる。これにより、液相の作動流体を流通させる十分な流路を確保することができるので、液相の作動流体の流路抵抗を低減することができ、高い毛細管力を発生させることができる。その結果、熱輸送デバイス10の熱輸送性能を向上させることができる。
【0057】
[動作説明]
次に熱輸送デバイス10の動作について説明する。図6は、熱輸送デバイスの動作を説明するための模式図である。
【0058】
図6に示すように、熱輸送デバイス10は、例えば、下部1c側の一方の端部にCPUなどの発熱源9が接している。熱輸送デバイス10は、発熱源9が接する側の端部に蒸発領域Eを有し、他方の端部に凝縮領域Cを有している。液相作動流体は、蒸発領域Eにおいて、例えば、CPUなどの発熱源9からの熱Wを吸熱して、液相作動流体から気相作動流体へと相変化し、液相流路12から気相流路11へと移る。気相作動流体は、気相流路11内を、蒸発領域Eから凝縮領域Cへ向かう方向へ移動し、凝縮領域Cにおいて、熱Wを放出する。気相作動流体は、凝縮領域Cで熱Wを放出すると、気相作動流体から液相作動流体へと相変化し、積層体20の毛細管力により、凝縮領域Cから蒸発領域Eへと向かう。積層体20の毛細管力により蒸発領域Eへと到達した液相作動流体は、再び、CPU等の発熱源9からの熱Wを吸熱し、液相流路12から気相流路11へと移動する。このような、作動流体の相変化により、熱輸送デバイス10は、CPU等の発熱源9の熱Wを輸送することができる。なお、凝縮領域C側にヒートシンクなどの放熱部材が設けられていてもよい。
【0059】
ここで、液相流路を形成する積層体20は、上述のように、編み方向が相対的に異なる上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22が積層されて形成されているので、積層体20は、低い流路抵抗及び高い毛細管力を有している。したがって、積層体20は、液相の作動流体を強力なポンプ力で循環させることができる。これにより、本実施形態に係る熱輸送デバイス10では、熱輸送性能の向上が実現されている。
【0060】
図6の説明では、CPUなどの発熱源9に接する位置が熱輸送デバイス10の下部1c側、つまり、液相流路12側であるとして説明した。しかし、発熱源9が接する位置は、気相流路11側であってもよい。この場合、発熱源9は、熱輸送デバイス10の上部1a側の一方の端部に接するように配置される。あるいは、発熱源9は、液相流路12側及び気相流路11側の両側に接するように配置されていてもよい。すなわち、本実施形態に係る熱輸送デバイス10は、薄板形状を有しているので、発熱源9の接する位置に拘らず、高い熱輸送性能を発揮することができる。なお、参考として、気相流路11側に発熱源9が配置された熱輸送デバイス10を図31に示す。
【0061】
[編み方向の相対的な角度と、熱輸送性能との関係]
次に、相互に近接する上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22の、編み方向の相対的な角度と、熱輸送デバイスの熱輸送性能との関係について説明する。
【0062】
図7は、上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材の編み方向の相対的な角度と、熱輸送デバイスの熱輸送性能との関係を示す図である。
【0063】
上記関係を調べるため、y軸及びx軸に対する編み方向の角度θが異なるメッシュ部材が複数個、用意された(0度、2度、5度、45度)。このメッシュ部材が上層メッシュ部材21として、下層メッシュ部材22上に積層され、上記関係が評価された。下層メッシュ部材22は、y軸及びx軸方向に編み方向を有するように、容器1内に配置された。
【0064】
また、上層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22として、メッシュナンバーが100であるメッシュ部材と、メッシュナンバーが200であるメッシュ部材が用意された。ここで、メッシュナンバーとは、メッシュ部材の1インチ(25.4mm)当たりのメッシュの目14、15の数のことである。
【0065】
以降の説明では、メッシュ部材のメッシュナンバーがabcである場合、♯abcと表示する場合がある。例えば、メッシュナンバーが100である場合、♯100と表示する。
【0066】
図7中、横軸は、編み方向の相対的な角度、及びメッシュナンバーを示し、縦軸は、熱輸送デバイス10の最大熱輸送量Qmaxを示している。
【0067】
図7に示すように、編み方向の相対的な角度が0度の場合よりも、編み方向の相対的な角度が2度〜45度の場合の方が最大熱輸送量Qmaxが上昇している。このことから、相対的に編み方向が異なるメッシュ部材を積層して液相流路12を形成することで、熱輸送デバイス10の最大熱輸送量Qmaxが上昇、つまり、熱輸送性能が向上することが分かる。最大熱輸送量Qmaxは、メッシュナンバーが♯100のメッシュ部材21、22が用いられた場合も、メッシュナンバーが♯200のメッシュ部材21、22が用いられた場合も上昇している。
【0068】
また、図7から、編み方向の相対的な角度が2度の場合よりも、5度の場合の方が最大熱輸送量Qmaxが大きいことが分かる。さらに、編み方向の相対的な角度が5度の場合と、45度の場合とでは、最大熱輸送量Qmaxが略等しいことが分かる。上層メッシュ部材21の編み方向及び下層メッシュ部材22の編み方向の角度が5度〜45度の場合と、編み方向の角度が85度〜45度の場合とでは、編み方向の角度についての相対的な関係は同じである。したがって、最大熱輸送量Qmaxを最も大きくすることができる範囲は、編み方向の相対的な角度が5度〜85度の範囲であるといえる。
【0069】
(第2実施系形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0070】
上述の第1実施形態では、液相流路12が2つのメッシュ部材21、22が積層されて形成されるとして説明した。一方、第2実施形態では、液相流路12が3つのメッシュ部材が積層されて形成される。したがってその点を中心に説明する。なお、以降の説明では、上述の第1実施形態と同様の構成及び機能を有する部材については同一符号を付し、説明を省略又は簡略化する。
【0071】
図8は、第2実施形態に係る熱輸送デバイスの断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【0072】
図8に示すように、第2実施形態に係る熱輸送デバイス50は、3つのメッシュ部材31、32、33を有する積層体30を備えている。以降では、3つのメッシュ部材のうち、上層に位置するメッシュ部材31を上層メッシュ部材31、中層に位置するメッシュ部材を中層メッシュ部材32、下層に位置するメッシュ部材33を下層メッシュ部材33と呼ぶ。
【0073】
図9は、メッシュ部材の平面図である。図9(A)は、上層メッシュ部材31の平面図であり、図9(B)は、中層メッシュ部材32の平面図である。図9(C)は、下層メッシュ部材33の平面図である。
【0074】
図9に示すように、上層メッシュ部材31及び下層メッシュ部材33は、y軸及びx軸方向に編み方向を有している。一方、中層メッシュ部材は32は、y軸及びx軸に対して、所定の角度傾いた方向に編み方向を有している。すなわち、中層メッシュ部材32は、上層メッシュ部材31及び下層メッシュ部材33の編み方向と異なる方向に編み方向を有している。
【0075】
図8及び図9に示すように、3つのメッシュ部材31〜33が積層されて積層体30が形成場合も、上述の第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、各メッシュ部材31〜33が相互に重なり合ってしまうことを防止することができるため、液相の作動流体を流通させる十分な流路を確保することができる。これにより、液相の作動流体の流路抵抗を低減することができ、高い毛細管力を発生させることができる。その結果、熱輸送デバイス50の熱輸送性能を向上させることができる。
【0076】
図8では、一例として、上層メッシュ部材31及び下層メッシュ部材33が同じ方向に編み方向を有し、中層メッシュ部材32の編み方向が、上層メッシュ部材31及び下層メッシュ部材33の編み方向と異なっている場合を挙げた。しかし、各メッシュ部材31〜33のメッシュの編み方向についての組み合わせは、これに限られない。例えば、各メッシュ部材31〜33のメッシュの編み方向が、それぞれ異なっていてもよい。メッシュの部材の編み方向については、相互に近接するメッシュ部材の編み方向が異なっていればよく、各メッシュ部材31〜33の編み方向についての組み合わせは、適宜変更可能である。
【0077】
第2実施形態では、3つのメッシュ部材31〜33が積層されて液相流路12が形成される場合について説明した。しかし、これに限られず、4つ以上のメッシュ部材が積層されて液相流路が形成されてもよい。
【0078】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0079】
上述の各実施形態では、気相流路11が空洞である場合について説明した。一方、第3実施形態に係る熱輸送デバイスでは、気相流路に柱部5が設けられる。したがって、その点を中心に説明する。なお、第3実施形態以降の説明では、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0080】
図10は、第3実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図11は、図10に示すA−A間の断面図である。
【0081】
これらの図に示すように、熱輸送デバイス60は、液相流路12が3つのメッシュ部材31〜33により形成され、気相流路11に複数の柱部5が設けられる。柱部5は、x軸方向、y軸方向に所定の間隔を開けて複数個、配置される。
【0082】
柱部5は、例えば、円柱状に形成されるが、これに限られない。柱部5は、例えば、四角柱形状であってもよいし、四角柱以上の多角形柱形状であっても構わない。柱部5の形状は、特に限定されない。
【0083】
柱部5は、例えば、上板部材2の一部がエッチングされて形成される。柱部5の形成方法は、エッチングに限られない。柱部5の形成方向としては、金属メッキ法、プレス加工、切削加工などが挙げられる。
【0084】
図10及び図11に示すように、気相流路11に柱部5が形成されることで、熱輸送デバイスの耐久性を向上させることができる。例えば、熱輸送デバイス60内部の温度が上昇したとき、あるいは、熱輸送デバイス60に作動流体が減圧状態で注入されるときに、圧力により容器1が変形してしまうことを防止することができる。さらに、熱輸送デバイス60が曲げ加工がされる場合に、熱輸送デバイス60の耐久性を向上させることができる。
【0085】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について説明する。
【0086】
上述の第3実施形態では、気相流路11に柱部5が形成される場合ついて説明した。一方、第4実施形態では、気相流路11にメッシュ部材34が配置される。したがって、その点を中心に説明する。
【0087】
図12は、第4実施形態に係る熱輸送デバイスの断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【0088】
図12に示すように、熱輸送デバイス70は、容器1内部に積層体71を備えている。積層体71は、液相流路12を形成する上層メッシュ部材31、中層メッシュ部材32及び下層メッシュ部材33と、気相流路11を形成するメッシュ部材34とを有する。以降では、気相流路を形成するメッシュ部材34を気相メッシュ部材34と呼ぶ。
【0089】
気相メッシュ部材34は、上層メッシュ部材31の上方に積層され、4層の積層体71が形成される。
【0090】
気相メッシュ部材34は、上層メッシュ部材31、中層メッシュ部材32及び下層メッシュ部材33のメッシュナンバーよりも小さいメッシュナンバーとされる。つまり、気相メッシュ部材34は、液相流路を形成する各メッシュ部材31〜33よりもメッシュの目の粗いメッシュ部材が使用される。例えば、気相メッシュ部材34は、液相流路を形成する各メッシュ部材31〜33のメッシュナンバーの1/3倍〜1/20倍程度のメッシュナンバーとされるが、これに限られない。
【0091】
気相メッシュ部材34は、上層メッシュ部材31のメッシュの編み方向とは異なる方向に、メッシュの編み方向を有していてもよい。
【0092】
本実施形態のように、気相流路11が気相メッシュ部材34で形成されても、上述の第3実施形態と同様に、熱輸送デバイス70の耐久性を向上させることができる。さらに、第4実施形態では、気相流路11及び液相流路12がともにメッシュ部材により形成されるので、構造が極めて単純である。したがって、高い熱輸送性能及び高い耐久性を有する熱輸送デバイス70を容易に製造することができる。また、コストも削減することができる。
【0093】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0094】
上述の各実施形態では、相互に近接するメッシュ部材の編み方向が異なる場合について説明した。一方、本実施形態では、メッシュ部材の開き目がy軸及びx軸方向で異なっている点が上述の各実施形態と異なっている。従って、その点を中心に説明する。
【0095】
図13は、第5実施形態に係る熱輸送デバイスを示す断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。図14は、メッシュ部材の平面拡大図である。
【0096】
図13に示すように、熱輸送デバイス80は、上部1a側に空洞の気相流路11を有しており、下部1c側に液相流路12を有している。本実施形態では、液相流路12は、1つのメッシュ部材25により形成される。
【0097】
図14に示すように、メッシュ部材25は、y軸方向(流路方向)に向けて、それぞれ並ぶように配置される複数の第1のワイヤ27と、x軸方向(流路方向に直交する方向)に向けてそれぞれ並ぶように配置される複数の第2のワイヤ28とを有する。また、メッシュ部材25は、第1のワイヤ27及び第2のワイヤ28により形成された複数の孔26を有している。
【0098】
メッシュ部材25は、第1のワイヤ27と第2のワイヤ28とが、相互に直交する方向で、織り込まれて形成される。メッシュ部材25は、綾織り、平織りで形成されてもよく、その他の織り方で形成されてもよい。
【0099】
メッシュ部材25は、第1のワイヤ27の相互間の間隔W1と、第2のワイヤ28の相互間の間隔W2とが異なるように形成されている。本明細書中では、ワイヤの相互間の間隔を開き目と呼ぶ場合がある。また、以降では、第1のワイヤの相互間の間隔W1を、第1の開き目W1とし、第2のワイヤ28の相互間の間隔W2を、第2の開き目として説明する。
【0100】
第2の開き目W2は、第1の開き目W1よりも広く形成されている。すなわち、液相流路12に沿う方向(y軸方向)の開き目である第2の開き目W2が、液相流路12に直交する方向(x軸方向)の開き目である第1の開き目W1よりも広く形成されている。
【0101】
このように、液相流路12に沿う方向の開き目W2が、液相流路12に直交する方向の開き目W1よりも広く形成されることで、液相の作動流体の流路抵抗を低減することができる。これにより、熱輸送デバイス80の熱輸送性能を向上させることができる。
【0102】
次に、熱輸送デバイス80の熱輸送性能について説明する。
【0103】
図15は、熱輸送デバイス80の熱輸送性能を説明するための図であり、y軸及びx軸方向での開き目と、最大熱輸送量Qmaxとの関係を示す図である。
【0104】
本発明者等は、熱輸送デバイス80の熱輸送性能を評価するため、第1の開き目W1と、第2の開き目W2が同一のメッシュ部材と、第1の開き目W1と第2の開き目W2とが異なるメッシュ部材25を用意した。具体的には、第1の開き目W1及び第2の開き目W2が、85μm×85μmのメッシュ部材と、85μm×120μmのメッシュ部材25とが用意された。熱輸送性能は、これらのメッシュ部材を有する熱輸送デバイスの最大熱輸送量Qmaxを比較することで評価される。
【0105】
図15に示すように、第1の開き目W1と第2の開き目W2が同じである場合(85μm×85μm)に比べ、第1の開き目W1と第2の開き目W2が異なる場合(85μm×120μm)の熱輸送デバイスの最大熱輸送量Qmaxは、上昇している。つまり、図15から、液相流路12に沿う方向の第2の開き目W2が、液相流路12に直交する方向の第1の開き目W1よりも広く形成されることで、熱輸送性能が向上することが分かる。
【0106】
[変形例]
本実施形態の説明では、1つのメッシュ部材25により、液相流路12が形成されるとして説明した。しかしこれに限られず、液相流路12は、2つ、あるいは3つ以上のメッシュ部材25が積層されて形成されてもよい。この場合、典型的には、積層されたメッシュ部材25全てにおいて、第2の開き目W2が第1の開き目よりも広く形成される。これにより、さらに熱輸送デバイス80の熱輸送性能をさらに向上させることができる。
【0107】
しかしながら、必ずしも、積層されたメッシュ部材25全てにおいて、第2の開き目W2が第1の開き目よりも広く形成されていなくてもよい。例えば、複数のメッシュ部材25のうち、1つのメッシュ部材25の、第2の開き目W2が、第1の開き目W1よりも広く形成されていてもよい。このような場合にも、単純に通常のメッシュ部材が積層された場合に比べ、熱輸送性能を向上させることができる。
【0108】
また、液相流路12が複数のメッシュ部材25が積層されて形成される場合、互いに近接するメッシュ部材の編み方向を異ならせてもよい。これにより、メッシュ部材が相互に重なり合ってしまうことを防止することができるので、流路抵抗をさらに低減することができる。その結果、熱輸送デバイス80の熱輸送性能をさらに向上させることができる。
【0109】
図13の説明では、気相流路11は、空洞であるとして説明した。しかし、これに限られず、気相流路11に柱部5が設けられていてもよい(図10、図11参照)。あるいは、気相流路11が気相メッシュ部材34により形成されてもよい(図12参照)。これにより、熱輸送デバイス80の耐久性を向上させることができる。特に、気相流路11が気相メッシュ部材34により形成される場合、構造が極めて単純であるため、熱輸送デバイス80を容易に製造することができる。また、コストも削減することができる。
【0110】
気相流路11が気相メッシュ部材34により形成される場合、気相メッシュ部材34の第2の開き目W2が、第1の開き目W1よりも広く形成されてもよい。つまり、気相メッシュ部材34は、気相流路11に沿う方向の第2の開き目W2が、気相流路11に直交する方向の第1の開き目W1よりも広く形成されてもよい。これにより、気相の作動流体の流路抵抗を低減することができる。その結果、熱輸送デバイス80の熱輸送性能を向上させることができる。
【0111】
図16は、気相メッシュ部材のy軸及びx軸方向の開き目と、最大熱輸送量Qmaxとの関係を示す図である。
【0112】
本発明者等は、第1の開き目W1及び第2の開き目W2が、460μm×460μmの気相メッシュ部材34と、460μm×720μmの気相メッシュ部材34とを用意し、熱輸送性能を評価した。
【0113】
図16から、y軸及びx軸方向での開き目が同じである場合(460μm×460μm)に比べ、y軸及びx軸方向での開き目が異なる場合(460μm×720μm)の熱輸送デバイスの最大熱輸送量Qmaxは、上昇していることが分かる。つまり、図16から、気相流路に沿う方向のメッシュの開き目W2が、気相流路に直交する方向のメッシュの開き目W1よりも広く形成されることで、熱輸送性能が向上することが分かる。
【0114】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
【0115】
第6実施形態では、液相流路を形成するメッシュ部材であって、互いに近接するメッシュ部材のメッシュナンバーが異なる点が、上述の各実施形態と異なる。従って、その点を中心に説明する。
【0116】
図17は、第6実施形態に係る熱輸送デバイスの断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【0117】
図17に示すように、熱輸送デバイス90は、上部1a側に気相流路11を有しており、下部1c側に液相流路12を有している。気相流路11は、空洞とされており、液相流路12は、積層体40により形成される。積層体40は、上層に配置された上層メッシュ部材41と、中層に配置された中層メッシュ部材42と、下層に配置された下層メッシュ部材43とを含む。
【0118】
積層体40は、メッシュナンバーの異なるメッシュ部材41〜43が積層されて形成される。つまり、積層体40は、メッシュの目の粗さの異なるメッシュ部材41〜43が積層されて形成される。なお、メッシュナンバーは、互いに近接するメッシュ部材のメッシュナンバーが異なっていればよい。
【0119】
例えば、上層メッシュ部材41のメッシュナンバーが♯100とされ、中層メッシュ部材42のメッシュナンバーが♯150とされ、下層メッシュ部材43のメッシュナンバーが♯100とされる。
【0120】
しかし、メッシュナンバーの組み合わせは、これに限られない。例えば、メッシュ部材41〜43のメッシュナンバーが、上層から順に、♯200、♯150、♯200とされてもよい。あるいは、上層から順に、♯200、♯150、♯100とされてもよい。メッシュナンバーの組み合わせについては、互いに近接するメッシュ部材のメッシュナンバーが異なっていればよく、メッシュナンバーの組み合わせは、適宜変更可能である。
【0121】
図18は、積層体40の断面拡大図である。図18(A)は、積層体40の断面拡大図であり、図18(B)は、比較例に係る積層体40’の断面拡大図である。
【0122】
まず、図18(B)を参照して、比較例に係る積層体40’について説明する。比較例に係る積層体40’は、同一のメッシュナンバーのメッシュ部材41’、42’、43’が積層されて形成された。
【0123】
図18(B)に示すように、同一のメッシュナンバーのメッシュ部材41’〜43’が積層されて形成された積層体40’では、各メッシュ部材41’〜43’が相互に重なり合ってしまう。この場合、液相の作動流体を流通させるための空間を十分に確保することができないので、液相の作動流体の流路抵抗が大きくなってしまう。また、毛細管力を十分に発揮することができない。
【0124】
一方で、図18(A)に示すように、相互に近接するメッシュ部材41〜43のメッシュナンバーを異ならせて積層体40を形成することで、各メッシュ部材41〜43が相互に重なり合ってしまうことを防止することができる。これにより、液相の作動流体を流通させる十分な流路を確保することができる。これにより、液相の作動流体の流路抵抗を低減することができ、高い毛細管力を発生させることができる。その結果、熱輸送デバイス90の熱輸送性能を向上させることができる。
【0125】
次に、相互に近接するメッシュ部材のメッシュナンバーと、熱輸送デバイスの熱輸送性能との関係について説明する。
【0126】
図19は、相互に近接するメッシュ部材のメッシュナンバーと、熱輸送デバイスの熱輸送性能との関係を示す図である。上記関係を調べるため、メッシュナンバーが上層から順に、♯150、♯100、♯100とされた積層体40と、メッシュナンバーが上層から順に、♯100、♯150、♯100とされた積層体40とが用意された。
【0127】
図19に示すように、メッシュナンバーが上層から順に、♯150、♯100、♯100とされた場合に比べ、メッシュナンバーが上層から順に、♯100、♯150、♯100とされた場合の熱輸送デバイス90の方が最大熱輸送量Qmaxが向上している。つまり、図19から、互いに近接するメッシュ部材41〜43のメッシュナンバーを異ならせることで、熱輸送デバイス90の熱輸送性能を向上させることができることが分かる。
【0128】
なお、メッシュナンバーが上層から順に、♯150、♯100、♯100とされた場合、中層メッシュ部材42のメッシュナンバーと、下層メッシュ部材43のメッシュナンバーとは同じである。しかし、上層メッシュ部材41のメッシュナンバーと、中層メッシュ部材42のメッシュナンバーとは、異なっている。従って、この場合、各メッシュ部材41〜43が同一のメッシュナンバーである場合(例えば、上層から順に♯100、♯100、♯100)に比べ、熱輸送性能は向上する。
【0129】
次に、メッシュ部材の周期性によるメッシュ部材の重なり合いについて説明する。
【0130】
図20は、メッシュ部材の周期性によるメッシュ部材の重なり合いを説明するための図であり、積層体40の断面拡大図である。図20(A)は、メッシュナンバーが、上層から順に、♯100、♯200、♯100とされた場合の、積層体40の断面図である。また、図20(B)は、メッシュナンバーが、上層から順に、♯100、♯150、♯100とされた場合の、積層体40の断面図である。
【0131】
図20(A)に示すように、中層メッシュ部材42のメッシュナンバー(♯200)が、上層メッシュ部材41及び下層メッシュ部材43のメッシュナンバー(♯100)の2倍とされた場合、メッシュ部材41〜43の周期性が同調してしまう。これにより、相互に近接するメッシュ部材41〜43が重なり合ってしまう場合がある。
【0132】
一方、図20(B)に示すように、中層メッシュ部材42のメッシュナンバーが、♯150とされ、上層メッシュ部材41及び下層メッシュ部材43のメッシュナンバーが、♯100とされた場合、メッシュ部材41〜43の周期性が同調してしまうことを抑制することができる。これにより、相互に近接するメッシュ部材41〜43が重なり合ってしまうことを防止することができる。これにより、さらに、熱輸送性能を向上させることができる。
【0133】
図21は、図20に示す積層体を有する熱輸送デバイスの熱輸送性能を比較した図である。
【0134】
図20に示すように、メッシュナンバーが、上層から順に、♯100、♯200、♯100とされた場合に比べ、メッシュナンバーが上層から順に、♯100、♯150、♯100とされた場合の方が、熱輸送デバイス90の最大熱輸送量Qmaxが高い。つまり、互いに近接するメッシュ部材のメッシュナンバーが2倍の場合に比べ、メッシュナンバーが2倍以外の方が、熱輸送デバイス90の熱輸送性能が向上する。
【0135】
なお、図20及び図21の説明では、メッシュナンバーが2倍である場合について説明したが、メッシュナンバーが3倍である場合にも、メッシュ部材41〜43の周期性が同調してしまい、メッシュ部材41〜43が重なり合ってしまう可能性がある。
【0136】
従って、典型的には、互いに近接するメッシュ部材41〜43のメッシュナンバーは、2倍、3倍(1/2倍、1/3倍)以外とされる。例えば、互いに近接するメッシュ部材41〜43のメッシュナンバーは、2/3倍、1/4倍、3/4倍、1/5倍、2/5倍、3/5倍、4/5倍、4倍、5倍などとされる。
【0137】
[変形例]
第6実施形態の説明では、液相流路12が3つのメッシュ部材41〜43により形成される場合について説明した。しかし、これに限られず、液相流路12は、2つのメッシュ部材により形成されてもよいし、4つ以上のメッシュ部材により形成されてもよい。この場合、典型的には、積層体40は、積層されたメッシュ部材全てにおいて、相互に近接するメッシュ部材のメッシュナンバーが異なるように形成される。しかしながら、積層体40は、必ずしも、積層されたメッシュ部材全てにおいて、相互に近接するメッシュ部材のメッシュナンバーが異なるように形成されていなくてもよい。例えば、複数のメッシュ部材のうち、1つのメッシュ部材のメッシュナンバーが他のメッシュ部材のメッシュナンバーと異なっていてもよい。このような場合にも、単純に通常のメッシュ部材が積層された場合に比べ、熱輸送性能を向上させることができる。
【0138】
上記各メッシュ部材41〜43のうち、少なくとも1つのメッシュ部材の編み方向が、他のメッシュ部材の編み方向と異なっていてもよい。つまり、相互に近接するメッシュ部材41〜43のメッシュナンバー、及びの編み方向が異なっていてもよい。これにより、メッシュ部材41〜43重なり合ってしまうことを防止する効果がさらに大きくなり、さらに熱輸送デバイス90の熱輸送性能を向上させることができる。
【0139】
あるいは、上記各メッシュ部材41〜43のうち、少なくとも1つの、y軸及びx軸方向でのメッシュ部材の開き目が異なっていてもよい。つまり、相互に近接するメッシュ部材41〜43のメッシュナンバー、及びy軸及びx軸方向でのメッシュ部材の開き目が異なっていてもよい。これにより、熱輸送デバイス90の熱輸送性能をさらに向上させることができる。
【0140】
あるいは、相互に近接するメッシュ部材の、編み方向、y軸及びx軸方向での開き目及びメッシュナンバーが全て異なっていてもよい。
【0141】
図17の説明では、気相流路11は、空洞であるとして説明した。しかし、これに限られず、気相流路11に柱部5が設けられていてもよい(図10、図11参照)。あるいは、気相流路11が気相メッシュ部材34により形成されてもよい(図12参照)。気相流路が気相メッシュ部材34により形成される場合、気相メッシュ部材34の編み方向、及び/または、y軸及びx軸方向での開き目が異なっていてもよい。
【0142】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
【0143】
上記各実施形態では、容器1が、2つの板部材2、3により形成されるとして説明した。一方、第7実施形態では、容器が、1つの板部材が折り曲げられることで形成される。従って、その点を中心に説明する。
【0144】
図22は、第7実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図23は、図22に示すA−A間の断面図である。図24は、熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【0145】
図22に示すように、熱輸送デバイス110は、一方向(y軸方向)に長い矩形の薄板形状を有する容器51を備えている。この容器51は、1つの板部材52が折り曲げられることで形成される。
【0146】
板部材52は、典型的には、無酸素銅、タフピッチ銅、あるいは銅合金で構成される。しかしこれに限られず、板部材52は、銅以外の金属で構成されてもよく、その他、熱伝導率の高い材料が用いられてもよい。
【0147】
図22及び図23に示すように、容器51は、長手方向(y軸方向)に沿う方向での側部51cが、湾曲した形状とされている。すなわち、容器1は、図24に示す板部材52が、板部材52の略中央で折り曲げられて形成されることから、側部51cが湾曲した形状とされている。以降では、側部51cを湾曲部51cと呼ぶ場合がある。
【0148】
容器51は、側部51c(湾曲部51c)とは反対側の側部51dと、短手方向に沿う方向での側部51e、51fとに接合部53を有している。接合部53は、それぞれの側部51d、51e、51fから突出するように設けられている。この接合部53において、折り曲げられた板部材52が接合される。接合部53は、図24に示す板部材52の、接合領域52a(図24中、斜線で表された領域)に相当する。接合領域52aは、板部材52の縁部52bから所定の距離d、の範囲内の領域とされる。
【0149】
接合部53(接合領域52a)の接合方法としては、例えば、拡散接合、超音波接合、ロウ付け、溶接などの方法が挙げられるが、接合方法は、特に限定されない。
【0150】
容器51の内部は、上部51a側が空洞とされており、この空洞により気相流路11が形成される。また、容器51の内部において、下部51b側に配置された積層体20により液相流路12が形成される。
【0151】
積層体20は、上層メッシュ部材21と、下層メッシュ部材22とを含む。下層メッシュ部材21及び下層メッシュ部材22は、上述のように、相互にメッシュの編み方向が異なるように積層されている。
【0152】
なお、気相流路11の構成及び液相流路12の構成は、図23に示した形態に限られない。例えば、気相流路11に柱部5が設けられていてもよいし(図10、図11参照)、気相流路が気相メッシュ部材34により形成されてもよい(図12参照)。また、開き目がy軸及びx軸方向で異なるメッシュ部材25により、液相流路12を形成してもよいし、メッシュナンバーの異なるメッシュ部材41〜43を積層して液相流路12を形成しても構わない。上記各実施形態で説明した気相流路11の構成及び液相流路12の構成は、全て、第7実施形態に適用することができる。後述の各実施形態においても同様である。
【0153】
[熱輸送デバイスの製造方法]
次に、熱輸送デバイス110の製造方法について説明する。
【0154】
図25は、熱輸送デバイスの製造方法を示す図である。
【0155】
図25(A)に示すように、まず、板部材52が用意される。そして、板部材52の略中央において、板部材52が折り曲げられる。
【0156】
板部材52が所定の角度まで折り曲げられると、図25(B)に示すように、折り曲げられた板部材52の間に、積層体20が入れられる。なお、積層体20は、板部材52の折り曲げが開始される前に、板部材52上の所定の位置に配置されていてもよい。
【0157】
板部材52の間に、積層体20が入れられると、図25(C)に示すように、積層体20を挟み込むように、板部材52がさらに折り曲げられる。そして、折り曲げられた板部材52の接合部53(接合領域52a)が接合される。接合部53の接合方法には、上述のように、拡散接合、超音波接合、ロウ付け、溶接などの方法が用いられる。
【0158】
第7実施形態に係る熱輸送デバイス110では、容器51が1つの板部材52により形成されるので、コストを削減することができる。また、2つ以上の部材で容器1が形成される場合、これらの部材の位置を合わせる必要があるが、第7実施形態に係る熱輸送デバイス110では、部材の位置を合わせる必要がない。従って、熱輸送デバイス110を容易に製造することができる。なお、板部材52は長手方向で(Y方向を軸として)折り曲げる構造を示したが、短辺(短手方向)で(X方向を軸として)折り曲げるようにしてもよい。
【0159】
[変形例]
次に、第7実施形態に係る熱輸送デバイスの変形例について説明する。
【0160】
図26は、その変形例を説明するための図であり、板部材の展開図である。
【0161】
図26に示すように、板部材52は、板部材52の中央において、長手方向(y軸方向)に沿うように、溝54を有している。溝54は、例えば、プレス加工や、エッチング加工により形成されるが、溝54の形成方法は、特に限定されない。
【0162】
板部材52に溝54が設けられることで、板部材52を折り曲げ易くすることができる。これにより、さらに容易に、熱輸送デバイス110を製造することができる。
【0163】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。なお、第8実施形態では、上述の第7実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0164】
図27は、第8実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。図28は、図27に示すA−A間の断面図である。図29は、熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【0165】
図27及び図28に示すように、熱輸送デバイス120は、一方向(y軸方向)に長い矩形の薄板形状を有する容器61を備えている。
【0166】
この容器61は、図29に示す板部材62が中央から折り返されて形成される。板部材62は、板部材62の中央近傍において、板部材62の長手方向に沿うように、2つの開口65が設けられている。
【0167】
容器61は、長手方向(y軸方向)に沿う方向での側部61c、61dと、短手方向(x軸方向)に沿う方向での側部61e、61fとに接合部63を有している。この接合部63が接合されて、容器61が形成される。接合部63は、図29に示す板部材62の、接合領域62a、62b(図29中、斜線で表された領域)に相当する。接合領域62a、62bは、それぞれ、板部材62の左側及び右側で、線対称な位置に配置される。接合領域62a、62bは、板部材の縁部62c、または、開口65から所定の距離dの、範囲内の領域とされる。
【0168】
容器61の側部61cに設けられた接合部63は、3つの突出部64を有する。3つの突出部64は、折れ曲がった形状を有している。この3つの突出部64は、図29に示す板部材62の、開口65及び縁部62cの間の領域66と、2つの開口65の間の領域66とに相当する。
【0169】
容器61の内部は、上部61a側が空洞とされており、この空洞により気相流路11が形成される。また、容器61の内部において、下部61b側に配置された積層体20により液相流路12が形成される。
【0170】
第8実施形態に係る熱輸送デバイス120では、板部材62に開口65が設けられるため、板部材62を容易に折り曲げることができる。これにより、さらに容易に熱輸送デバイス120を製造することができる。
【0171】
板部材62の、開口65及び縁部62cとの間の領域66と、2つの開口65の間の領域66とに、例えば、プレス加工により形成された溝が設けられていてもよい。これによりさらに容易に、板部材62を折り曲げることができる。なお、板部材62は長手方向で(Y方向を軸として)折り曲げる構造を示したが、短辺(短手方向)で(X方向を軸として)折り曲げるようにしてもよい。
【0172】
(電子機器)
次に、上述の各実施形態で説明した熱輸送デバイス10(または、50〜130、以下、同様)を有する電子機器について説明する。本実施形態では、電子機器の一例として、ノート型のPCを上げて説明する。
【0173】
図30は、ノート型のPC100を示す斜視図である。図30に示すように、ノートPC100は、第1の筐体111と、第2の筐体112と、第1の筐体111及び第2の筐体112を回動可能に支持するヒンジ部113とを備えている。
【0174】
第1の筐体111は、表示部101と、表示部101に光を照射するエッジライト型のバックライト102とを有する。バックライト102は、第1の筐体111内部において、第1の筐体111の上下方向にそれぞれ配置される。バックライト102は、例えば、銅板上に複数の白色LED(Light Emitting Diode)が配置されて形成される。
【0175】
第2の筐体112は、複数の入力キー103と、タッチパッド104とを有する。また、第2の筐体112は、内部にCPU105などの電子回路部品が搭載された制御回路基板(図示せず)を有している。
【0176】
熱輸送デバイス10は、第2の筐体112の内部において、CPU105に接するように配置される。図30では、熱輸送デバイス10は、第2の筐体112の平面外形よりも小さく表されているが、熱輸送デバイス10は、第2の筐体112の平面外形と同等の大きさとされてもよい。
【0177】
あるいは、熱輸送デバイス10は、第1の筐体111内部において、バックライト102を形成する銅板と接するように配置されていてもよい。この場合、熱輸送デバイス10は、第1の筐体111内に複数個配置される。
【0178】
上述のように、熱輸送デバイス10は、高い熱輸送性能を有しているため、CPU105あるいは、バックライト102で発生した熱を速やかに輸送することができる。これにより、熱を速やかにノートPC100の外部へ放出することができる。また、熱輸送デバイス10により、第1の筐体111、あるいは、第2の筐体112の内部の温度を均一にすることができるため、低温火傷を防止することができる。
【0179】
さらに、熱輸送デバイス10は、高い熱輸送性能が、薄型で実現されているため、ノートPC100の薄型化も実現される。
【0180】
図30では、電子機器の一例として、ノート型のPCを挙げて説明したが、電子機器は、これに限られない。電子機器の他の例として、オーディオ/ビジュアル機器、ディスプレイ装置、プロジェクタ、ゲーム機器、カーナビゲーション機器、ロボット機器、PDA(Personal Digital Assistance)、電子辞書、カメラ、携帯電話その他の電化製品等が挙げられる。
【0181】
以上説明した熱輸送デバイス及び電子機器は、上記各実施形態に限られず、種々の変形が可能である。
【0182】
上述の各実施形態では、液相流路12がメッシュ部材により形成される場合について説明した。しかし、これに限られず、液相流路12の一部が、メッシュ部材以外の材料により形成されていてもよい。メッシュ部材以外の材料としては、例えば、フェルト、メタルフォーム、細線、焼結体、微細な溝を有するマイクロチャネルなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図2】図1に示すA−A間の断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【図3】上層メッシュ部材及び下層メッシュ部材を示す平面図である。
【図4】上層メッシュ部材及び下層メッシュ部材の平面拡大図である。
【図5】積層体の断面拡大図である。
【図6】熱輸送デバイスの動作を説明するための模式図である。
【図7】上層メッシュ部材及び下層メッシュ部材の編み方向の相対的な角度と、熱輸送デバイスの熱輸送性能との関係を示す図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る熱輸送デバイスの断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【図9】メッシュ部材の平面図である。
【図10】さらに別の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図11】図10に示すA−A間の断面図である。
【図12】さらに別の実施形態に係る熱輸送デバイスの断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【図13】さらに別の実施形態に係る熱輸送デバイスを示す断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【図14】メッシュ部材の平面拡大図である。
【図15】熱輸送デバイスの熱輸送性能を説明するための図であり、y軸及びx軸方向の開き目と、最大熱輸送量Qmaxとの関係を示す図である。
【図16】気相メッシュ部材のy軸及びx軸方向の開き目と、最大熱輸送量Qmaxとの関係を示す図である。
【図17】さらに別の実施形態に係る熱輸送デバイスの断面図であり、熱輸送デバイスを側方から見た図である。
【図18】積層体の断面拡大図である。
【図19】相互に近接するメッシュ部材のメッシュナンバーと、熱輸送デバイスの熱輸送性能との関係を示す図である。
【図20】メッシュ部材の周期性によるメッシュ部材の重なり合いを説明するための図であり、積層体の断面拡大図である。
【図21】図20に示す積層体を有する熱輸送デバイスの熱輸送性能を比較した図である。
【図22】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図23】図22に示すA−A間の断面図である。
【図24】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【図25】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスの製造方法を示す図である。
【図26】変形例に係る熱輸送デバイスを説明するための図であり、板部材の展開図である。
【図27】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスを示す斜視図である。
【図28】図27に示すA−A間の断面図である。
【図29】さらに別の実施の形態に係る熱輸送デバイスの容器を構成する板部材の展開図である。
【図30】ノート型のPCを示す斜視図である。
【図31】気相流路側に発熱源が配置された熱輸送デバイスを示す図である。
【符号の説明】
【0184】
1、51、61…容器
9…発熱源
10、50、60、70、80、90、110、120…熱輸送デバイス
11…気相流路
12…液相流路
21、22、25、31、32、33、34、41、42、43…メッシュ部材
16、17、18、19、27、28…ワイヤ
52、62…板部材
100…ノートPC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化により熱を輸送する作動流体と、
前記作動流体を封入する容器と、
気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる気相流路と、
第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材とを有し、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の編み方向が相対的に異なるように積層されて形成された積層体を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる液相流路と
を具備する熱輸送デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の熱輸送デバイスであって、
前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュのうち少なくとも一方は、第1の間隔で並ぶように配置された複数の第1のワイヤと、前記各第1のワイヤに編み込まれ、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔で並ぶように配置された複数の第2のワイヤとを有する
熱輸送デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の熱輸送デバイスであって、
前記第1のメッシュ部材は、第1のメッシュナンバーを有し、
前記第2のメッシュ部材は、前記第1のメッシュナンバーとは異なる第2のメッシュナンバーを有する
熱輸送デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の熱輸送デバイスであって、
前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の、編み方向の相対的な角度が5度から85度である
熱輸送デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の熱輸送デバイスであって、
前記気相流路は、第3のメッシュ部材を含む
熱輸送デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の熱輸送デバイスであって、
前記容器は、板形状である
熱輸送デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の熱輸送デバイスであって、
前記容器は、板部材が前記積層体を挟み込むように折り曲げられて形成される
熱輸送デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の熱輸送デバイスであって、
前記板部材は、前記板部材が折り曲げられる領域に開口を有する
熱輸送デバイス。
【請求項9】
相変化により熱を輸送する作動流体と、
前記作動流体を封入する容器と、
気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる気相流路と、
第1の間隔で並ぶように配置された複数の第1のワイヤと、前記各第1のワイヤに編み込まれ、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔で並ぶように配置された複数の第2のワイヤとを有する第1のメッシュ部材を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる液相流路と
を具備する熱輸送デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の熱輸送デバイスであって、
前記気相流路は、第3の間隔で並ぶように配置された複数の第3のワイヤと、前記各第3のワイヤに編み込まれ、前記第3の間隔とは異なる第4の間隔で並ぶように配置された複数の第4のワイヤとを有する第2のメッシュ部材を含む
熱輸送デバイス。
【請求項11】
請求項9に記載の熱輸送デバイスであって、
前記各第1のワイヤは、それぞれ前記液相流路に沿う方向に向けて配置され、
前記各第2のワイヤは、それぞれ前記液相流路に沿う方向と直交する方向に向けて配置され、
前記第2の間隔は、前記第1の間隔よりも広い
熱輸送デバイス。
【請求項12】
請求項10に記載の熱輸送デバイスであって、
前記各第3のワイヤは、それぞれ前記気相流路に沿う方向に向けて配置され、
前記各第4のワイヤは、それぞれ前記気相流路に沿う方向と直交する方向に向けて配置され、
前記第4の間隔は、前記第3の間隔よりも広い
熱輸送デバイス。
【請求項13】
相変化により熱を輸送する作動流体と、
前記作動流体を封入する容器と、
気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる気相流路と、
第1のメッシュナンバーの第1のメッシュ部材と、前記第1のメッシュ部材に積層され、前記第1のメッシュナンバーとは異なる第2のメッシュナンバーの第2のメッシュ部材とを有し、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる液相流路と
を具備する熱輸送デバイス。
【請求項14】
請求項13に記載の熱輸送デバイスであって、
前記第1のメッシュナンバー及び前記第2のメッシュナンバーは、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の周期性が一致しないように、設定されている
熱輸送デバイス。
【請求項15】
請求項13に記載の熱輸送デバイスであって、
前記気相流路は、第3のメッシュ部材を有する
熱輸送装置。
【請求項16】
発熱源と、
相変化により前記発熱源の熱を輸送する作動流体と、前記作動流体を封入する容器と、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる気相流路と、第1のメッシュ部材と、第2のメッシュ部材とを有し、前記第1のメッシュ部材及び前記第2のメッシュ部材の編み方向が相対的に異なるように積層されて形成された積層体を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる液相流路とを有する熱輸送デバイスと
を具備する電子機器。
【請求項17】
発熱源と、
相変化により前記発熱源の熱を輸送する作動流体と、前記作動流体を封入する容器と、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる気相流路と、第1の間隔で並ぶように配置された複数の第1のワイヤと、前記各第1のワイヤに編み込まれ、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔で並ぶように配置された複数の第2のワイヤとを有するメッシュ部材を含み、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる液相流路とを有する熱輸送デバイスと
を具備する電子機器。
【請求項18】
発熱源と、
相変化により前記発熱源の熱を輸送する作動流体と、前記作動流体を封入する容器と、気相の前記作動流体を前記容器内で流通させる気相流路と、第1のメッシュナンバーの第1のメッシュ部材と、前記第1のメッシュ部材に積層され、前記第1のメッシュナンバーとは異なる第2のメッシュナンバーの第2のメッシュ部材とを有し、液相の前記作動流体を前記容器内で流通させる液相流路とを有する熱輸送デバイスと
を具備する電子機器。
【請求項19】
相変化により熱を輸送する作動流体に毛細管力を作用させる毛細管部材を挟み込むように、板部材を折り曲げ、
前記折り曲げられた板部材を接合する
熱輸送デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図7】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−151353(P2010−151353A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328870(P2008−328870)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】