説明

燃料供給装置

【課題】電磁式の燃料ポンプを備えた燃料供給装置について、プランジャがストッパに固着した場合でも燃料ポンプが作動不能に陥るのを回避できるようにする。
【解決手段】電磁コイル33への通電によりプランジャ32が停止位置から吸引動作をして上流側から燃料を導入し通電の停止によりリターンスプリング34の付勢力でプランジャ32がストッパ方向に動作をして下流側に燃料を圧送する電磁式の燃料ポンプ3と、この燃料ポンプ3への通電状態を操作することで駆動制御を行う電子制御ユニット10とを備えた燃料供給装置1において、その電子制御ユニット10が、駆動開始の際に、プランジャ32がストッパに固着していた場合に少なくとも固着を解除させるのに必要な時間だけ、連続的に燃料ポンプ3に通電させてから通常の駆動制御に移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料供給装置に関し、殊に、電子制御手段で駆動制御される電磁式の燃料ポンプで燃料を圧送して燃焼手段に供給する燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油ヒータやエンジン等の燃焼装置の燃料供給手段として電磁式の燃料ポンプが汎用されており、例えば特開2002−39067号公報や特開2008−45508号公報に記載され、図3に示すガソリンエンジン用の燃料ポンプ3のように、リターンスプリング34で付勢されたプランジャ32にかかる磁力を変動させることにより、これをシリンダ31内で往復摺動させながら燃料をエンジンに供給するものが周知である。
【0003】
そして、この電磁式の燃料ポンプ3と、これに対する駆動電流のON/OFFを操作しながら駆動を制御して燃料の圧力及び流量を調整する電子制御ユニットと、燃料ポンプ3からエンジン等の燃焼手段に至る燃料供給配管と、この燃料供給配管の先端側に設けたインジェクタ等の燃焼吐出手段とで、1つの燃料供給装置を構成しており、正確且つ安定的な燃料供給を可能なものとしている。
【0004】
ところが、このようなプランジャ往復式の燃料ポンプ3では、プランジャ32のストッパに衝撃吸収及び騒音防止の目的でゴム材が使用されているのが通常であり、長期間放置した後の駆動の際に、プランジャ32とストッパが固着して作動不能の状態に陥ってしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−39067号公報
【特許文献2】特開2008−45508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、電磁式の燃料ポンプを備えた燃料供給装置について、プランジャがストッパに固着した場合でも燃料ポンプが作動不能に陥るのを回避できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、電磁コイルへの通電によりプランジャが停止位置から吸引動作をして上流側から燃料を導入し通電の停止によりリターンスプリングの付勢力でプランジャがストッパ方向に動作をして下流側に燃料を圧送する電磁式の燃料ポンプと、この燃料ポンプへの通電状態を操作することで駆動制御を行う電子制御ユニットとを備えた燃料供給装置において、その電子制御ユニットは、駆動開始の際に、プランジャがストッパに固着していた場合に少なくとも固着を解除させるのに必要な時間だけ、連続的に燃料ポンプに通電させてから通常の駆動制御に移行することを特徴とするものとした。
【0008】
このように、電磁式でプランジャ吸引式の燃料ポンプを備えた燃料供給装置において、電子制御ユニットが駆動開始の際に燃料ポンプに所定時間連続通電させることにより、仮にプランジャが固着していた場合でも駆動開始際に一時的に吸引力がアップして固着を解除することができるようになる。
【0009】
また、この燃料供給装置は、エンジンに燃料を供給するためのものであって、その連続的な通電がキーON時から開始される場合には、燃料ポンプのプランジャが固着していても、スタータ始動の時点で固着が解除されておりスムースなエンジンの始動が確保されやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
燃料ポンプ駆動開始の際に所定時間連続通電するものとした本発明によると、プランジャがストッパに固着した場合でも燃料ポンプが作動不能に陥るのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の燃料供給装置の配置図である。
【図2】図1の電子制御ユニットの制御による燃料ポンプ駆動電圧の波形図である。
【図3】図1の実施の形態及び従来例に共通して用いられる電磁式の燃料ポンプの構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態の燃料供給装置1の配置図を示しているが、この燃料供給装置1は、図示しない燃料タンクから燃料(ガソリン)を導入して図示しないエンジンに供給するためのものであり、そのハード構成は基本的に従来例と共通している。
【0014】
即ち、燃料供給装置1は、燃料タンクから燃料を導入してエンジンに向かって圧送するための電磁式の燃料ポンプ3と、この燃料ポンプ3の駆動を制御するための電子制御ユニット10と、燃料ポンプ3から延設された燃料供給配管2と、この燃料供給配管の2先端側に設けられた燃料吐出手段としての電磁式のインジェクタ5からなるものである。
【0015】
また、その電子制御ユニット10は、燃料供給配管2に配設した圧力センサ11による燃料圧力のデータ信号を検知し、これを所定圧力に維持しながら所望の燃料流量を実現するために、燃料ポンプ3及びインジェクタ5の駆動を制御するようになっている。以上の構成は、従来例にも見られる周知のものであるが、本発明では、燃料ポンプ3の制御方法が異なる。
【0016】
その燃料ポンプ3は、図3に示す従来例で使用されているものと共通しているが、本発明において、そのプランジャ32を吸引動作させるための電磁コイル33への通電方法、即ち、電子制御ユニット10による燃料ポンプ3の駆動制御方法を工夫することにより、長期間の放置等によりプランジャ32がストッパに固着した場合であっても、これを解除するようにした。
【0017】
従来例においては、キーON動作により、燃料ポンプ3の駆動用電源を所定の周波数でON/OFF操作して駆動制御していたが、プランジャが固着している場合、この短い波長からなるONの電圧を連続的に繰り返すだけでは充分な吸引力が得られないため、固着を解除できない場合が多く燃料供給のトラブルを生じやすかった。
【0018】
このような従来の制御に対し、図2は本実施の形態における電子制御ユニット10の制御による、燃料ポンプ3に対する駆動電圧の波形図を示している。このように、キーONの時点から所定の時間、連続的に通電することで電磁コイル33によるプランジャ32の吸引力を増加させてから、通常の周波数による駆動制御に移行している。そのため、プランジャ32が固着していた場合でもこれを確実に解除できるようになっており、燃料ポン
プ3の良好な駆動・正確な燃料供給を確保可能にしている。
【0019】
この連続的な通電時間については、予め連続的な通電により実際に固着を解除させる実験を実施して、電磁コイルに損傷を来さない安全な範囲で充分な固着の解除が期待できる時間を求めておき、これを電子制御ユニット10の制御内容として設定しておけばよい。
【0020】
尚、電子制御ユニット10は、燃料ポンプ3の駆動制御及びインジェクタ5の駆動制御を行う燃料供給装置1の制御用であることのほか、図示しないエンジン自体の制御手段を兼ねるものであっても良いことは言うまでもない。また、本発明は、上述したエンジン等の内燃機関用の燃料供給装置のほか、石油ヒータ等の外燃機関用の燃料供給装置においても同様の作用・効果を発揮することができるものである。
【0021】
以上、述べたように、電磁式の燃料ポンプを備えた燃料供給装置について、本発明により、プランジャがストッパに固着した場合でも燃料ポンプが作動不能に陥るのを有効に回避することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 燃料供給装置、2 燃料供給配管、3 燃料ポンプ、5 インジェクタ、10 電子制御ユニット、31 シリンダ、32 プランジャ、33 電磁コイル、34 リターンスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルへの通電によりプランジャが停止位置から吸引動作をして上流側から燃料を導入し前記通電の停止によりリターンスプリングの付勢力で前記プランジャがストッパ方向に動作をして下流側に燃料を圧送する電磁式の燃料ポンプと、前記燃料ポンプへの通電状態を操作することで駆動制御を行う電子制御ユニットを備えた燃料供給装置において、前記電子制御ユニットは、駆動開始の際に、前記プランジャが前記ストッパに固着していた場合に少なくとも前記固着を解除させるのに必要な時間だけ連続的に前記燃料ポンプに通電させてから通常の駆動制御に移行することを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料がエンジンに供給されるためのものであって前記連続的な通電がキーON時から開始されることを特徴とする請求項1に記載した燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−26293(P2012−26293A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163117(P2010−163117)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)
【Fターム(参考)】