説明

燃料用成形木炭の製造方法

【課題】針葉樹やオガ屑、樹皮、稲藁、籾殻、農産廃棄物、果樹剪定枝、古紙、食品残査物、畜産糞、廃プラスチック等の有機物を使用して、調理用に重宝される備長炭と,発熱量と火持ちで同等、もしくは、それ以上の性能を有する燃料用成形木炭を提供する。
【解決手段】炭素質が80%以上の炭化物粉末を原料として、澱粉2%、しょ糖砂糖よりなる精糖蜜糖液糖、もしくは廃糖蜜廃糖液糖を15%〜50%を添加した糖質水溶液をバインダーとして配合し、ミキサーにて混練して押出し成形、もしくは圧縮成形後、約200〜500℃の乾燥熱処理室に入れ、熱風及び高周波により澱粉、及び糖質類を炭化し木炭粉末間で炭化したバインダー成分が架橋する構造を具現化して創製してなる燃料用成形木炭の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本来燃料用木炭として利用されていない針葉樹等からなる建築系廃木材や間伐材を原料に高品質な燃料用木炭を作ることで産業廃棄物となっている未利用の廃木材等木質バイオマスの有効利用を達成し、同時に安価で安心な燃料用木炭の製造方法に関するものである。
【0002】
廃木材として回収される木材は、建築解体廃木材や製材残材など一般に針葉樹由来のものが多い。針葉樹の断面を拡大観察すると、蜂の巣状の隙間の大きい構造が確認できる。このような木材から製造した木炭は、比表面積が大きいため吸着剤などの用途には都合が良い。しかし燃料用として用いる場合、これらの木炭は密度が低く大きな表面積のため、燃焼速度が速く瞬間的に強い火力が得られる反面、火力の調節が困難で調理などの用途には不向きである。
本発明は、燃料用に利用する成形木炭の製造方法に関するものであり、廃木材等を原料に炭化して得られる木炭を原料に押出し成形、或いは圧縮成形を行い高密度の木炭成形体を成形し、約200〜500℃の乾燥熱処理室に入れ熱風、及び高周波によってバインダーとなる有機物を乾燥・炭化し木炭化する方法と、また、約500〜900℃の酸化雰囲気化焼成炉でバインダーとなる有機物を炭化し木炭化する方法と、更に約500〜900℃の非酸化雰囲気化焼成炉でバインダーとなる有機物を炭化し木炭化する方法であり、これら3通りの乾燥熱処理、あるいは焼成工程を施すことで木炭粉末間を炭化したバインダー成分が架橋することで任意の硬度を創製し、燃料用成形木炭としての品質向上を目指したものである。
【背景及び従来技術】
【0003】
1996年の廃棄物統計によると、わが国の廃木材の発生は年間約4700万mであり、約70%が再利用されずに、焼却ないしは埋め立てにより処分されている。発生原因の多くは、家屋の解体や建設時に発生する廃棄木材で、廃棄物全体の約74%を占めている。この中で家屋の解体に伴う廃木材は、有用な木質バイオマス資源でありながらリサイクル率が38%と低くリサイクル利用がなされていない。発生量に見合った適切な需要先がないため大半が産業廃棄物として焼却減量化されているのが現状である。しかも、その処理費が高いため廃木材の取扱いがスムーズに行われない状況となっている。
【0004】
国内の燃料用木炭の消費総量は16万トンで、中国からの木炭輸入量は、国内消費量の約3分の1にあたる6万トン弱であり、そのうち焼鳥、焼肉、ウナギの蒲焼等に使用される中国備長炭(白炭)は国内消費量の実に9割を占める約4万トンである。シェア9割を占める中国備長炭、さらには中国オガライト炭(オガ炭)の輸入が中国政府の木炭禁輸により完全ストップすることとなる。
中国産木炭の代替措置として、国内の木炭販売業界は、国産オガ炭やマレーシア、インドネシア産のオガ炭の代用炭で不足分を賄おうとしている。しかし、これらオガ炭では中国備長炭の代用は性能的に難しい。つまり、オガ炭はオガクズを固める技術で性能に差が出るため備長炭に準じる火力域に達しているものは国内の1、2社の製品のみで生産量が極めて少ない。したがって、業務用木炭の主要な部分を担っていた中国備長炭の代用品は今後補填されないことになる。
【0005】
木炭は、煙、炎、臭いなどの発生がなく火持ちの良い固形燃料として古くから利用されており、魚などを直火で調理する場合、炭火で焼くとおいしくなると言われる。燃焼時に発する輻射熱、赤外線の効果が求められ赤外線(近赤外線と遠赤外線)は、熱として食品に吸収されやすく、近赤外線は食品表面に焦げ目をつくって旨味成分を密閉するとともに、遠赤外線の高い加熱効果により内部から食品を暖め、タンパク質を分解して旨味成分のグルタミン酸などを生成する効果がある。焼き物調理では、ガスの炎が水分を含むのに対し、木炭は水分を含まないため、カラッとしたパリパリ感のある焼き上がりとなるなどの優れた特長を持っている。
【0006】
本発明は、国内の燃料用木炭の生産が人件費や従来の炭焼き作業の困難性から一部の趣味的炭焼きに限定され国内調達が不可能になっていること、さらに、中国からの木炭禁輸と東南アジアにおける木炭原料への様々な重金属系防腐剤等の有害物混入による原材料の安全性が不安であることに鑑みてなされたものである。
廃木材等の代表樹種である杉や桧・松などの針葉樹を原料に炭化プロセスにより粗木炭を作り、それら原料を成形して工業的手法により燃料用成形木炭を生産する方法は、未利用木質廃棄物利用による燃料木炭製造の一方法として行き場のない廃木材の有力なリサイクル方法でもある。
【0007】
廃木材は、現在、大半が焼却減量化されており,その処理費が高く不法投棄の原因となっている。廃木材がリサイクル原料として木炭原料への利用が可能となれば、原料も豊富で,安価に、場合によっては逆有償で調達でき、原料となる木炭生産に利点が生まれる。
【0008】
しかし、原料となる解体廃木材には、有害なCCA処理木材(クロム、ヒ素、銅を配合した防腐木材)等が含まれるため、有害物を分離・分別し安全な再生原料として利用する必要がある。最近、CCA処理木材等の分離・分別技術を前処理技術とした原料適正化技術が開発され、このために安価で安全な原料木材の調達が可能となった。
【0009】
以上によって、木炭原料に解体廃木材が応用でき,高品質な木炭が作れれば、安全で安価な木炭の生産が可能となり海外に依存する燃料木炭市場に新たなインパクト与え、尚且つ国内生産によるリスクヘッジを図ることが可能となる。
【0010】
現在は、製材工場や木材加工場の廃木材から出るオガ屑を利用した木質成形燃料(オガライト)を炭化窯で木炭化してつくるオガライト炭(オガ炭)、さらには廃木材等を内燃式炭化炉で焼成して得られた木炭や,家庭ゴミや汚泥を炭化して得られる粗木炭を、澱粉糊等で固めてつくられた成形木炭などがある。
【0011】
しかし、これらオガ炭や成形炭は、製品状態での強度の低さ、燃焼時の煙の発生、火力の弱さ、火持ちの悪さなどの欠点がある。また、これらオガ炭や成形炭に火力をアップする目的で石炭粉やコークス粉、タールピッチ、さらにはカーボンブラック、アルミナやジルコニアなどの鉱物粉を配合して火力や遠赤外線の輻射効果を意図した成形木炭などが試みられている。こうしたものは,石油や石炭に由来するタール分が残留して有害成分や臭気が強く、また、家庭ゴミや汚泥を原料とするとナトリウムや塩素、アルミ、鉄などの鉱物類が含まれ灰分が増えるのでいずれも調理用木炭としては適さない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本発明の目的は、針葉樹やオガ屑、樹皮、稲藁、籾殻、農産廃棄物、果樹剪定枝、古紙、食品残査物、畜産糞、廃プラスチック等の有機物を使用して、樫や楢などの自然木を原料とする木炭、とりわけ高級木炭と言われ,調理用に重宝される備長炭や中国産備長炭と,発熱量と火持ちで同等、もしくは、それ以上の性能を有する燃料用成形木炭を提供しようとするものであり、尚且つ調理用にコントロールされた発熱量、火持ち、着火性能さらには輻射熱量を持った燃料用成形木炭を提供しようとするところにある。燃料用成形木炭をつくるにあたっては、安全で安心な調理用木炭とするために石油や石炭に由来するタールピッチやクレオソートなど有害物を含んだ原料を使わないように配慮したものである。勿論樫や楢などの自然木を原料とする従来の木炭を原料としてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、炭素質が80%以上の炭化物の粉末に、バインダーとして澱粉2%、ショ糖(砂糖)よりなる精糖蜜、もしくは廃糖蜜を15%〜50%を添加した糖質水溶液を配合し、ミキサーにて混練して,押出し成形、もしくは圧縮成形後、約200〜500℃の乾燥熱処理室に入れ水分と澱粉、及び糖質類等バインダーとなる有機物を炭化してなる燃料用成形木炭の製造方法と、この成形木炭を硬質に仕上げるために約500〜900℃の酸化雰囲気化焼成炉でバインダーとなる有機物を炭化した後、消し砂、もしくは窒素ガス缶に投入して消火して成る燃料用成形木炭の製造方法と、硬質に仕上げるために約500〜900℃の非酸化雰囲気化焼成炉でバインダーとなる有機物を焼成炭化して成る燃料用成形木炭の製造方法である。又前述した製造方法において、原料となる炭化物粉末が、針葉樹やオガ屑、樹皮、稲藁、籾殻、農産廃棄物、果樹剪定枝、古紙、食品残査物、畜産糞、廃プラスチックを約400〜900℃前後で炭化した炭素質が80%以上であることを特長とした燃料用成形木炭の製造方法である。
【0014】
元々、木炭の原料となる木材は、セルロース、ヘミセルロース、リグリン、タンパク、ペクチン、アミノ酸、有機酸、還元糖、灰分などからなっている。
本発明者等は、本発明に係るバインダーとして粗木炭の粉末にショ糖(砂糖)よりなる糖蜜類を添加し、プレス成形もしくは押出し成形後、熱処理することによって,木炭粉末間を炭化したバインダー成分が架橋することで成形木炭を所定の硬度に創製することに糖蜜類が寄与することを発見した。
本発明の燃料用成形木炭の成形用バインダーとしては,糖分濃度の高い廃糖蜜(廃糖液糖)を利用することがコスト面で適している。
【0015】
植物や食品に含まれる糖類は、穀類、イモ類、果物、蜂蜜などがあり、ブドウ糖や果糖、ガラクトースなどの単糖類、しょ糖(砂糖)、麦芽糖、異性化糖、乳糖などの二糖類、澱粉、グリコーゲンなどの多糖類などがあるが、本発明に係る成形木炭の硬度を確保するバインダーとしては、ブドウ糖と果糖の結合物である二糖類に属するしょ糖(砂糖)、麦芽糖、乳糖類からなる精糖蜜(糖液糖)、もしくは廃糖蜜(廃糖液糖)が適している。また、澱粉、グリコーゲンは成形時の形状保持バインダーとして適している。
本発明のバインダーとなる糖類、澱粉、グリコーゲンは炭化水素化合物であり、C-C、C-O、C-Hいずれも共有結合の強い化学結合であるが、これら有機物を熱すると水素や酸素がとれ炭素だけの物質に変化しC-C結合だけが残る。これが炭化現象で、しょ糖(砂糖)の炭化は摂氏180℃ぐらいから起き200℃以上でカルメラ状となり炭化し、木炭粉末間で炭化したバインダー成分が架橋する構造となる。
【0016】
本発明を構成する原料となる炭化物粉末が、針葉樹廃木材の他にオガ屑、樹皮、稲藁、籾殻、農産廃棄物、果樹剪定枝、古紙、食品残査物、畜産糞、廃プラスチック等の有機物を約400〜900℃前後で炭化した炭素質が80%、針葉樹廃木材の他に、オガ屑、樹皮、稲藁、籾殻、農産廃棄物、果樹剪定枝、古紙、食品残査物、畜産糞、廃プラスチック、など有機廃棄物を400〜900℃前後で炭化した炭素質が80%以上の炭化物である。また、成形に使用するバインダーは、澱粉2%、精糖蜜(糖液糖)、もしくは廃糖蜜(廃糖液糖)を15%〜50%を添加した糖質水溶液を配合して用いる。
【0017】
発明者らは、成形木炭のかさ密度向上のため、バインダー・木炭粉の粒子径による影響の検討、バインダー再含浸処理を試みた。成形木炭のバインダーとして砂糖水、および廃シロップを用いた。そして木炭粉とバインダーの混合物に圧縮成型処理、焼成処理を行い燃料用成形木炭とした。また試作した燃料用成形木炭、および従来から使用されている燃料用木炭との燃焼特性を示差熱天秤により測定し比較、検討を行った。
【0018】
原料木炭として内燃式炭化炉500℃焼成木炭を使用した。小型粉砕機(アズワン株式会社 SM-1)にて木炭を粗粉砕し、得られた木炭粉にバインダーを加え混練を行った。混練し粘土状になった混合物を、筒状の成形用金型に充填し圧縮成形を行い。得られた成形物を電気炉にて窒素雰囲気中で焼成し、燃料用成形木炭とした。電気炉の昇温パターンをグラフ1に示した。成形木炭から水やタールが蒸発する際に、急激な蒸発による成形木炭のヒビ割れを抑えるために、それらが蒸発する温度域を緩やかに昇温した。
【グラフ1】
【0019】

【0020】
作製した燃料用成形木炭、および市販されている燃料用木炭の燃焼特性をTG-DTA熱天秤(Rigaku TG-8120)を用いて評価した。熱天秤の分析条件として昇温パターンを室温→1000℃、昇温速度10℃/min.とし、さらに空気を200ml/min.で通気した。サンプルは約20mgの立方体とした。
試料として試作した成形木炭、その原料である500℃焼成木炭、また比較サンプルとして市販備長炭を用いた。燃焼特性評価の結果を表1、グラフ2、3、4に示した。
【0021】
【表1】

【グラフ2】
【0022】

グラフ2に原料木炭と本発明の成形木炭のDTA線図を示し、成形加工の効果を検討した。また参考に市販備長炭のDTA線図もあわせて示した。このグラフより原料木炭は発火温度が低く、燃焼時間も短く調理用としては不向きなことが明らかとなった。それに比べ、成形木炭は発火温度が高く、燃焼時間も原料木炭の約2倍と長くなっている。原料は同じであるが粉砕圧縮成形を施すことによって、これほど大きな違いが生じた。この結果は成形木炭が粉砕圧縮成形によって原料木炭に比べ,かさ密度が大きく、また比表面積が小さくなるためと推測される。
【グラフ3】
【0023】

グラフ3は各試料の燃焼による重量変化を示したものである。燃焼による重量減少の傾きが大きいほど燃焼速度が大きいことを示している。この結果より原料木炭は他に比べて燃焼速度が大きいことがわかる。反対に本発明に係る成形木炭は備長炭とほぼ同じ燃焼特性を示した。
【グラフ4】
【0024】

グラフ4に本発明成形木炭の原料木炭粉の粒子径の違いによる燃焼特性の違いを示した。これより粒子径が小さく成形木炭のかさ密度が大きいほど発火温度が高く、またDTA曲線の立ち上がりの傾きは緩やかなため、燃焼時間が長くなる。
【0025】
以上から、本発明成形木炭のかさ密度が大きいほど発火点が高く、燃焼時間も長いため燃料用木炭として適していると言える。また成形木炭のかさ密度を変えることによって様々な燃焼特性を持った成形木炭を作ることができることが知見された。
【0026】
本発明者等は、木炭粉の粒子径を変えることで、かさ密度を変化させることによって、燃焼特性をコントロールできることを知見した。しかし、かさ密度を上げるためにこれ以上粒子径を小さくすると、圧縮成形による方法では、試料が型の隙間から流出して成形が不可能となる。また、押出し成形ではスクリューが空転して成形が不可能となる。このため粒子径を小さくする方法以外でかさ密度を高める必要がある。
そこで、成形木炭のかさ密度を上げるための検討として、バインダーの再含浸によるかさ密度の向上を検討した。バインダーとして使用している砂糖水を窒素雰囲気中で焼成すると炭素残存率は25%であった。
成形木炭の焼成では、バインダーの熱分解によりタールが発生し、成形木炭の木炭粉間に隙間が生じる。そこで成形木炭を焼成後もう一度バインダーに浸し、成形木炭の粉体間にバインダーを染み渡らせ、さらに乾燥・焼成を行うことによるリバインダー由来炭化物によるかさ密度の向上を試みた。
表2にバインダーの浸漬・乾燥・焼成サイクル回数とかさ密度の関係を示した。表2より、このサイクル回数を増やすことによってかさ密度の増加が確認された。さらに効果を挙げるためには浸漬時間を増やす、圧力をかけてバインダーを木炭中心へ浸透させる、などの改善策が考えられる。
【0027】
【表2】

【0028】
画像1に成形木炭(100 mesh under)のSEM画像を示す。これを見ると、成形木炭は多数の隙間が存在する。これは木炭粉が板状や棒状の粉末であり、向きがばらばらに配列してしまっているためである。この木炭粉の配列を一定方向に並べ、充填密度を向上させるためタッピングを行うなど成形方法の改善が必要である、本発明者等は、押出し成形による木炭粉の粒度配合比、及びバインダー配合比と成形圧力によりかさ密度の増加を高める方法を知見した。
【画像1】
【0029】

画像1 成形木炭のSEM画像
【0030】
バインダーとして使用している砂糖水の濃度は20〜50wt%の範囲が良く,高濃度となる程硬質の成形木炭が得られる。よって使用する木炭粉(炭化物粉末)に対する糖蜜の割合が多くなるため、大量生産をする場合生産コストを考えると現実的であるとは言い難い。改善策としてバインダーにも木酢タールや廃蜜糖(廃糖液糖)など食品廃棄物の利用が望ましい。そこで今回は缶詰の廃棄シロップを使用し、バインダーとしての可能性を検討した。使用した木炭粉の粒子径は100 mesh underでバインダーの糖分濃度はどちらも56wt%である。成形木炭のかさ密度については砂糖水を使用したものが0.763g/cm3、シロップを使用したものが0.758g/cm3と、非常に近い結果となり本件発明のバインダーとしての有効性を知見した(グラフ5)。
【グラフ5】
【0031】

グラフ5にバインダーとしてシロップを使用した成形木炭と砂糖水を用いた成型炭のDTA線図を示した。廃棄シロップを使用した成形木炭は、本格的に燃焼する前に発熱の山ができている。これは、シロップに含まれる果糖や微少な果肉由来の炭化物の影響と見られる。
【0032】
グラフ6にバインダーの違いによる燃焼時の重量変化を示した。グラフ5,6より、バインダーとしてシロップを用いた成形木炭は、発火点は低いものの、燃焼特性はDTA曲線の形や重量の減少具合など、備長炭や砂糖水を用いた成型炭と類似している。つまり着火が容易で燃焼のコントロールが可能な成形木炭が得られた。よって廃シロップを使用した成形木炭は、燃料用木炭として適し、廃シロップから不溶性固形物や非糖分を除去濃縮した濃度の高い廃糖蜜(廃糖液糖)を利用することで、食品廃棄物である廃シロップの利活用が図られ、さらに生産の際のコストダウンが期待できる。
【グラフ6】
【0033】

【作用、効果】
【0034】
本発明による燃料用成形木炭は、自在な燃焼コントロールを具現化するために、炭素と酸素との接触面積をコントロールする。かさ密度を向上させれば成型木炭と酸素との接触面積がコントロールできる。かさ密度は,木炭の粒子径とバインダーによりコントロールでき,その結果,燃焼時間や火力のコントロールも可能になり,自然木木炭の「備長炭」と同等の性能を実現した物である。
【0035】
発明者等はバインダーに砂糖水、及び廃シロップを使うことにより発火温度が高く、燃焼時間の長い、調理用として適した成形木炭を製造することができた。また、生産コストの削減を検討するために、バインダーに缶詰の廃棄シロップを用い成形木炭を試作した。その結果、着火性が良好で、燃焼コントロールが可能な成形木炭が得られた。また、バインダーとしてのしょ糖(砂糖)類の種類や濃度、成形木炭の密度をコントロールすることによって、様々な用途に適する燃焼性質を持った成形木炭の製造が可能になることを知見した。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を説明する。
本発明は、原料となる炭化物を採る炭化プロセスは、内燃式の炭化炉、及び外燃式の乾留炭化炉いずれによる木炭でも良いが、重金属や有害物の混入のない原料が適している。
400〜700℃の低温で焼いた原料木炭を使う場合はバインダーと混錬して成形後に500〜900℃の焼成炉に入れバインダーとなる有機物を炭化して、また、800℃前後で焼いた原料木炭を使う場合はバインダーと混錬して成形後に約200〜500℃の乾燥熱処理室に入れ熱風、及び高周波によってバインダーとなる有機物を炭化して製品とする。つまり,成形後の熱処理方法に応じて原料木炭の焼成温度を区別することが適している。
【0037】
原料木炭の創製において乾留炭化炉を使った炭化プロセスでは、木材等の木質バイオマスを空気の供給を遮断して炭化・熱分解して得られる炭素質が80%以上の粗木炭を製造する。その際、粗木炭、及び木酢タール、木ガスは、ほぼ1/3の割合いで採取する。
木酢タールは、発生した木ガスを80℃〜150℃の間で冷却する事で木ガスと木酢タール液に分離、貯留タンクで水と木酢タールに沈降分離することで得られ、本発明では、成形後の熱処理方法による成形木炭のバインダーとして糖蜜と配合して利用することも良い。
木酢タール等の液分を分離した残留ガスは揮発性ガスとして、木炭の乾燥や乾留炭化を行う際の熱源、及び再焼成処理の際の熱源に利用する。
【0038】
内燃式の炭化炉を使った原料木炭の炭化プロセスでは、木材等の木質バイオマスを僅かな空気を供給しながら部分的に燃焼させて,800℃前後で炭化・熱分解して得られる炭素質が80%以上の粗木炭を製造する。その際、粗木炭、及び木酢タール、木ガスは、燃焼するので採れないが排気ガスから廃熱を回収して本発明では、成形後の乾燥熱処理室の熱源として利用する。
【0039】
成型木炭の燃焼特性を左右するかさ密度には原料木炭の粒径が大きく影響する。そのために,粒度調整されることが必要であり、粉砕機により100ミクロンから数mmまで調製、配合して使用するのが良い。その上で、澱粉2%、精糖蜜(糖液糖)、もしくは廃糖蜜(廃糖液糖)を15%〜50%、木酢タール等を添加した糖質水溶液と粗木炭を混合して、定量供給機によりプレス機もしくは押出し機に供給して圧力・圧縮成形して燃料用成形木炭を成形する。
【0040】
本発明の成形木炭の成形後の乾燥・熱処理に3通りがある。図1に本発明の製造工程その1を示す。硬質な木炭を作るために,原料となる木炭を篩分けし、バインダーとして澱粉、糖蜜(糖液)、水分等を配合混合し、成形機に送り圧縮成形後、約200〜500℃の乾燥熱処理室に入れ水分と澱粉、及び糖質類を炭化して木炭粉間の架橋材とする方法。さらに木炭を硬質に仕上げるために約500〜900℃の酸化雰囲気化焼成炉でバインダーとなる有機物を炭化して木炭粉間の架橋材とし、消し砂、もしくは窒素ガス缶に投入して消火して成る燃料用成形木炭の製造方法。また、さらに硬質に仕上げるために約500〜600℃の窒素雰囲気焼成炉でバインダーとなる有機物を焼成炭化、木炭粉間の架橋材として成る燃料用成形木炭の製造方法である。熱処理によるバインダーの炭化方法は、木炭が320℃〜400℃、砂糖が350℃、澱粉が380℃で発火するため低温で炭化処理する場合は300℃前後が適しており、直火・熱風・スチーム・電熱などの熱源による外部加熱、また、高周波加熱やマイクロ波加熱による内部と外部の温度差が少なく均一に加熱する内部加熱方法。さらに、高周波加熱やマイクロ波は、使用電力コストも影響するので熱風・スチームによる外部加熱と併用する方法等を適宜使用するのが適している。本考案の成形木炭は木炭粉末間で炭化したバインダー成分が架橋することで適当な硬度を具現化し、熱処理温度と処理時間によって低温着火性のある成形木炭や火持ちの良い成形木炭の製造が可能になる。
原料木炭は,800℃以上で焼成された木炭が,製品となった際に残留揮発性分が少なく破裂や飛び火が少ないため適している。
【0041】
図2に本発明の製造工程その2を示す。その2の方法として、前記その1の製造方法により成形・製造した木炭をさらに硬質に仕上げる目的で、約500〜900℃の酸化雰囲気化で焼成炉に入れ着火、火入れ後、消し砂、もしくは窒素ガス缶に投入して消火してつくる燃料用成形木炭の製造方法であり,伝統的な白炭製法の「精錬」を取入れた方法である。この場合は、良く焼締り木炭表面に燃焼灰が付着残留し着火性が改善された製品の製造が可能になる。
【0042】
図3に本発明の製造工程その3を示す。1次炭化は、外熱式の乾留炭化炉で木材を熱分解して,原料の粗木炭、木タール液、木ガスを製造する。その後に硬質な木炭を作るためにバインダーとして澱粉、糖蜜、木タール、水分等を配合混合し、成形機に送り圧縮成形後、約500〜900℃の窒素雰囲気焼成炉に入れ熱処理し,水分を除去し,澱粉、及び糖質類を炭化する方法で、高い温度で焼いた方が硬質の炭ができる。その際、乾留炭化炉により精製する木ガスを2次燃焼炉に利用するのがコスト的に有利になる。
【0043】
以上、本発明によってこれまで不可能とされていた杉や桧等の針葉樹を原料として高級炭とされる備長炭と匹敵する成形木炭が得られ、又木炭の粒度、バインダーの種類と配合、乾燥・熱処理、或いは再燃焼処理を自在にコントロールすることによって、自然木から炭化してなる黒炭や備長炭(白炭)と同等、或いは超えた燃焼特性を持つ燃料用成形木炭の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】成形木炭の製造フロー例を示した説明図。
【図2】他実施例に係る成形木炭の製造フロー例を示した説明図。
【図3】他実施例に係る成形木炭の製造フロー例を示した説明図。
【符号の説明】
【0045】
なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質が80%以上の炭化物粉末を原料として、澱粉2%、しょ糖(砂糖)よりなる精糖蜜(糖液糖)、もしくは廃糖蜜(廃糖液糖)を15%〜50%を添加した糖質水溶液をバインダーとして配合し、ミキサーにて混練して押出し成形、もしくは圧縮成形後、約200〜500℃の乾燥熱処理室に入れ熱風、及び高周波により澱粉、及び糖質類を炭化して木炭粉末間を炭化したバインダー成分が架橋することで所定の硬度に創製する燃料用成形木炭の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載による配合、成形方法により製造した木炭をさらに硬質に仕上げるために焼成炉に入れ約500〜900℃の焼成炉に入れ酸化雰囲気化で焼成した後、消し砂、もしくは窒素ガス缶に投入して冷却し、バインダーとなる澱粉、及び糖質類を炭化して木炭粉末間を炭化したバインダー成分が架橋することで所定の硬度に創製する燃料用成形木炭の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載による配合、成形方法により製造した木炭をさらに硬質に仕上げるために約500〜900℃の焼成炉に入れ非酸化雰囲気化で焼成処理をしてバインダーとなる澱粉、及び糖質類を炭化させ木炭粉末間を炭化したバインダー成分が架橋することで所定の硬度に創製する燃料用成形木炭の製造方法。
【請求項4】
原料となる炭化物粉末が、針葉樹やオガ屑、樹皮、稲藁、籾殻、農産廃棄物、果樹剪定枝、古紙、食品残査物、畜産糞、廃プラスチックを約400〜900℃前後で炭化した炭素質が80%以上であることを特長とする請求項1記載の燃料用成形木炭の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−332274(P2007−332274A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165814(P2006−165814)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(391014941)ハイウッド株式会社 (2)
【出願人】(599118920)常裕パルプ工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】