説明

燃料電池システム用ガス漏れ検知システム

【課題】原料ガス供給源である原料ガス配管に接続された他装置の機器動作によるガス圧脈動の影響を受けない燃料電池システム用ガス漏れ検知システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池装置を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知システムであって、原料ガス経路15に配置された、原料ガス計測機構23と、その上流側の第1開閉器10と、下流側の第2開閉器13と、制御器14と、を有する。第1開閉器10を開放するとともに第2開閉器13を閉止して原料ガス計測機構23の計測値からガス漏れを検知する第1の工程S100と、第1開閉器10および第2開閉器13を閉止した状態で原料ガス計測機構23の計測値から原料ガス経路15のガス漏れを検知する第2の工程S101とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を含む燃料ガスを利用して発電する燃料電池装置を含む燃料電池システムにおいて、発電開始前に安全性のため実施する、燃料電池システム用のガス漏れ検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境に対する保全意識が高まっており、高効率な発電が可能である燃料電池装置を備えた燃料電池システムがエコロジーな製品として注目されている。燃料電池システムには、燃料電池装置として燃料電池スタックと改質器を備えた固体高分子形燃料電池システム、燃料電池装置の改質器と燃料電池スタックとが一体化して構成された間接内部改質型固体酸化物形燃料電池システム、燃料電池装置の燃料電池スタックが改質の機能も備えた直接内部改質型固体酸化物形燃料電池システム等がある。
【0003】
こうした燃料電池システムでは、燃料電池スタックへ水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスを供給して発電する。家庭用の燃料電池システムの場合、燃料ガスとして可燃性である都市ガスを用いることが多く、燃料ガスが原料ガス経路から漏れないよう、発電させる前等に安全対策としてガス漏れがないか調べる必要がある。
【0004】
燃料電池システムのガス漏れ検知方法には、一つにガス検知センサを用いて燃料電池システム内で漏れた燃料ガスを検知する手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、原料ガス流量計測器、あるいはガス圧計を用いて原料ガス経路の原料ガス流量および原料ガス圧を測定する手法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
原料ガス流量計測器と原料ガス圧力検知器を用いる手法では、計測過程においてどこの原料ガス経路から漏れているのかを推測しやすくなるため、特許文献1に示されたガス検知センサ等と併用することにより、より安全性を高めることができる。従来、原料ガス流量計測器を用いる手法では、原料ガス経路にガス圧を張るためにガス供給源が開放された状態でガス漏れ検知を実施し、設定された燃料ガス上限流量値を測定流量値が超えた場合にガス漏れ異常と判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−229148号公報
【特許文献2】特開2009−217951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、上記燃料電池システムのガス漏れ検知時においてガス供給源が開放されているため、同一のガス配管から分岐して他の燃料電池システムあるいはガスヒートポンプ等の他装置と同時に使用する場合、装置動作によるガス圧の脈動の影響を受けることがある。燃料電池システムに供給される原料ガスの原料ガス経路の下流に設置された原料ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を検出する原料ガス計測機構に前記ガス圧の脈動が伝わると、ガスが流れていない場合においても、一定以上のガス流量を計測するためガス漏れと誤検知してしまい、燃料電池システムが発電不可状態になるという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ガス漏れ誤検知を解消し、燃料電池システムの不必要な発電不可状態を回避することができる燃料電池システム用ガス漏れ検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムでは、少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知システムであって、
前記燃料電池装置に供給される原料ガスの原料ガス経路に配置され、前記原料ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を検出する原料ガス計測機構と、
前記原料ガス計測機構より上流の前記原料ガス経路に配置され、前記原料ガス経路の開閉を行う第1開閉器と、
前記原料ガス計測機構より下流の前記原料ガス経路に配置され、前記原料ガス形orの開閉を行う第2開閉器と、
前記原料ガス計測機構と、前記第1開閉器と、前記第2開閉器と、を制御する制御器と、
を有している。さらに、前記制御器は、
前記第1開閉器を開放するとともに前記第2開閉器を閉止して前記原料ガス計測機構の計測値からガス漏れを検知する第1の工程と、
前記第1及び第2開閉器の両方を閉止状態にして前記原料ガス計測機構の計測値からガス漏れを検知する第2の工程と、
を制御する。
【0010】
また、燃料電池システム用ガス漏れ検知方法は、少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池装置を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知方法であって、
前記燃料電池装置に供給される原料ガスの原料ガス経路の上流側を開放すると共に、下流側を閉止して、前記開放した上流側と前記閉止した下流側との間の前記原料ガスの流量もしくは圧力の計測値からガス漏れを検知する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記原料ガス経路の上流側を閉止すると共に、下流側を閉止して、前記閉止した上流側と前記閉止した下流側との間の前記原料ガスの流量もしくは圧力の計測値からガス漏れを検知する第2の工程と、
を含む。
【0011】
第1の工程で「ガス漏れ検知」した場合に、第2の工程において、第1開閉器及び第2開閉器を共に閉止してガス流体が原料ガス経路を流れない状態とし、原料ガス計測機構の計測値の変動を検出することで、他装置動作によるガス圧の脈動の影響を排除してガス漏れの有無を検知することができる。このことにより、実際にはガスが流れていない場合においても、他装置のガス圧の脈動の影響により一定以上のガス流量を計測して「ガス漏れ」と誤検知することを回避できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池システム内のガス原料ガス流量計測時において、ガス脈動によるガス漏れの誤検知を防ぐことができるため、誤検知によるエラーで燃料電池システムが発電できないという状態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法のフローチャートである。
【図3】実施の形態2に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池装置を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知システムであって、
前記燃料電池装置に供給される原料ガスの原料ガス経路に配置され、前記原料ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を検出する原料ガス計測機構と、
前記原料ガス計測機構より上流の前記原料ガス経路に配置され、前記原料ガス経路の開閉を行う第1開閉器と、
前記原料ガス計測機構より下流の前記原料ガス経路に配置され、前記原料ガス経路の開閉を行う第2開閉器と、
前記原料ガス計測機構と、前記第1開閉器と、前記第2開閉器と、を制御する制御器と、
から構成され、
前記制御器は、
前記第1開閉器を開放するとともに前記第2開閉器を閉止して前記原料ガス計測機構の計測値からガス漏れを検知する第1の工程と、
前記第1及び第2開閉器の両方を閉止状態にして前記原料ガス計測機構の計測値からガス漏れを検知する第2の工程と、
を制御する。
なお、前記制御器は一つでも複数でもよい。
【0015】
上記構成によると、第1の工程においては第2開閉器が閉止されておりガス流体が第2開閉器を通ってガス漏れ検知対象の経路から下流へ流出することができない。そのため、原料ガス経路にガス圧を張った状態で原料ガス計測機構として、例えば、原料ガス流量計測器が一定以上の流量を検知した場合、原料ガス流量計測器より下流の原料ガス経路においてガスが漏れていることを検出できる。その一方、原料ガス経路内のガス圧を張る目的で第1開閉器が開放されているため、例えば同一ガス配管から分岐して接続されたガスヒートポンプ等他装置の動作によるガス圧の脈動が上記燃料電池システムに影響する場合では、第1開閉器を通ってガス流体が流れる。そのため、ガスが流れていない状態においても原料ガス経路内で脈動の影響を受けるので、一定以上の流量を検知する可能性がある。したがって、第1の工程でガス漏れを検知した場合、その原因は実際のガス漏れ以外にも、脈動によるもの、または原料ガス流量計測器の故障が考えられる。
【0016】
第2の工程においては第1開閉器および第2開閉器が共に閉止されているため、ガス流体が第1開閉器を通って流れることができず、第1開閉器より上流からの脈動の影響は第1開閉器により遮断される。そのため、原料ガス経路においてガスヒートポンプ等によるガス脈動の影響を受けずにガス漏れを検出することができる。そこで、原料ガス経路にガス圧を張った状態で第2の工程を実施し、一定以上のガス圧変動によりガス漏れを検知した場合、その原因は実際のガス漏れ、または、例えば、原料ガス計測機構としての原料ガス圧検知器の故障であり共に異常と判断できる。
【0017】
第2の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、第1の態様において、さらに、前記原料ガス計測機構は、原料ガスの流量を計測する流量計測器および原料ガスの圧力を計測する圧力計測器を備えていてもよい。
さらに、前記制御器は、
前記第1の工程において、前記流量計測器の流量値からガス漏れを検知し、
前記第1の工程の後に実行される前記第2の工程において、前記圧力計測器の圧力値からガス漏れを検知し、
前記第2の工程の後に実行される第3の工程として、前記第1開閉器及び前記第2開閉器の両方を閉止状態にして前記流量計測器の流量値からガス漏れを検知するように制御する。
【0018】
第3の工程においては第2の工程と同様に第1開閉器および第2開閉器が共に閉止されているため、原料ガス経路においてガス脈動の影響を受けずにガス漏れを検出することができる。そのため、原料ガス経路にガス圧を張った状態で第3の工程を実施し、一定以上のガス流量によりガス漏れを検知した場合、その原因は実際のガス漏れ、または原料ガス流量計測器の故障と判断できる。しかし、第3の工程では、ガス漏れを検知する原料ガス経路の容積が小さい場合、原料ガス経路から漏れるガス流量がガス漏れと検知する閾値流量よりも小さくなる可能性があるため、第3の工程のガス漏れ検知だけでは不十分である。
【0019】
したがって、第1、第2、第3の工程を組み合わせることで、同一のガス配管から分岐して上記燃料電池システムとガスヒートポンプ等の他装置が接続された場合においても、脈動の影響によりガス漏れと誤検知することを回避することができる。
【0020】
第3の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、第2の態様において、第1の工程で原料ガス経路にガス圧を張った状態において原料ガス流量計測器が一定以上の流量を検知し、かつ、第2の工程において原料ガス圧検知器の圧力値が一定以上変動しない場合は第3の工程を実施する事を特徴とする。
【0021】
上記構成によると、第1の工程でガス漏れを検知し、かつ、第2の工程でガス漏れを検知しなかった場合、実際のガス漏れはしておらず、第1の工程でガス漏れを検知した原因が、脈動によるもの、または原料ガス流量計測器の故障であると判断できる。そのため、その条件で、第3の工程を実施することにより、第1の工程で検知したガス漏れの原因が、脈動によるものか、あるいは原料ガス流量計測器の故障かを判断することができる。
【0022】
第4の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、第3の態様において、第3の工程でガス漏れを検知しなかった場合は、ガス漏れは発生していないと判断することを特徴とする。
【0023】
上記構成によると、第1の工程でガス漏れを検知し、かつ、第2の工程でガス漏れを検知しなかった場合、実際のガス漏れはしておらず、第1の工程でガス漏れを検知した原因が、脈動によるもの、または原料ガス流量計測器の故障であると判断できる。そのため、その条件で、脈動の影響を受けない第3の工程でガス漏れを検知しなかった場合は、第1の工程で検知したガス漏れの原因が、脈動によるものと判断することができる。したがって、上記燃料電池システムは、ガスヒートポンプ等の他装置動作によるガス圧脈動の影響によりガス漏れを誤検知することが無く、不必要な発電不可状態を回避することができる。
【0024】
第5の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、第3の態様において、第3の工程でガス漏れを検知した場合は、原料ガス流量計測器が故障していると判断することを特徴とする。
【0025】
上記構成によると、第1の工程でガス漏れを検知し、かつ、第2の工程でガス漏れを検知しなかった場合、実際のガス漏れはしておらず、第1の工程でガス漏れを検知した原因が、脈動によるもの、または原料ガス流量計測器の故障であると判断できる。そのため、その条件で、脈動の影響を受けない第3の工程でガス漏れが検知された場合は、第1の工程で検知したガス漏れの原因が、原料ガス流量計測器の故障によるものと判断することができ、異常な発電状態を回避することができる。
【0026】
第6の態様に係る燃料電池システムは、第1から第5の態様のいずれかの燃料電池システム用ガス漏れ検知システムを備えている。
【0027】
第7の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法は、
少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池装置を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知方法であって、
前記燃料電池装置に供給される原料ガスの原料ガス経路の上流側を開放すると共に、下流側を閉止して、前記開放した上流側と前記閉止した下流側との間の前記原料ガスの流量もしくは圧力の計測値からガス漏れを検知する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記原料ガス経路の上流側を閉止すると共に、下流側を閉止して、前記閉止した上流側と前記閉止した下流側との間の前記原料ガスの流量もしくは圧力の計測値からガス漏れを検知する第2の工程と、
を含む。
【0028】
第8の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知プログラムは、第7の態様の前記燃料電池システム用ガス漏れ検知方法の各工程をコンピュータにおいて実行させる各命令によって構成されている。
【0029】
第9の態様に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、第8の態様に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知プログラムを格納している。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態によって本発明が制限されるものでは無い。
【0031】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム1の構成について図1を基に説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る燃料電池システム1の構成を模式的に示したブロック図である。また、図1では本発明を説明するために必要となる構成要素のみを図示しており、燃料電池システム1内で複雑に分岐した原料ガス経路は一つに簡素化し、その他の構成要素は省略している。この燃料電池システム1は、燃料電池装置に原料ガスを供給する原料ガス経路15と、水素生成器20と、燃料電池スタック21と、燃料電池システム用ガス漏れ検知システムと、を備える。
【0032】
この燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、原料ガス経路15に配置され、原料ガスの圧力もしくは流量を計測する原料ガス計測機構23と、原料ガス計測機構23より上流の原料ガス経路15に配置され、原料ガス経路15の開閉を行って、原料ガス経路15へのガス流入を制御する第1開閉器10と、原料ガス計測機構23より下流の原料ガス経路15に配置され、原料ガス経路15の開閉を行って、原料ガス経路15からのガス流出を制御する第2開閉器13と、原料ガス計測機構23、第1開閉器10及び第2開閉器13と電気的に接続され、それぞれの機器を制御する制御器14と、を有している。なお、原料ガス計測機構23は、原料ガスの流量を計測する流量計測器11と、原料ガスの圧力を測定する圧力計測器12と、を備えている。また、制御器14は、第1開閉器10および第2開閉器13の開閉を行い、原料ガス経路15のガス漏れを検知する際に必要な開放および閉止状態を制御する機能を備えている。また、制御器14には、流量計測器11および圧力計測器12で測定された値も入力される。第1開閉器10および第2開閉器13は、例えば電子式の開閉弁などであり、原料ガス経路15を少なくとも開閉できる機器であればよい。
なお、図1では、原料ガス経路15中の上流側の第1開閉器10と、下流側の第2開閉器13との間に、水素生成器20及び燃料電池スタック21を記載しているが、これは一例であって、これらに限定するものではない。上記の例に限られず、ガス漏れを検知したい機器等を、上流側の第1開閉器10と下流側の第2開閉器13との間に適宜挟むようにすればよい。
【0033】
図1において、原料ガスの供給源である原料ガス配管3からは、上記燃料電池システム1の他に、例えば、ガスヒートポンプ2などのガス機器が分岐して接続されている。図1に示すガスヒートポンプ2が運転されるとき、ガスヒートポンプ2の機器動作により原料ガス配管3のガス圧脈動が発生し燃料電池システム1の原料ガス経路15に影響を与える。そのため、同一の原料ガス配管3から燃料電池システム1および他装置を同時に使用する場合、制御器14の制御手段において、これまで考慮されてこなかったガス圧脈動の影響を排除したガス漏れ検知システムが必要である。
【0034】
実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムでは、原料ガス経路15の中で、ガス漏れを検知したい箇所(図1では、水素生成器20及びスタック21)の上流側に第1開閉器10、下流側に第2開閉器13を設けておき、第1開閉器10とガス漏れを検知したい箇所との間に原料ガスの流量又は圧力の少なくとも一方を計測する原料ガス計測機構23を設けている。さらに、上記第1開閉器10及び第2開閉器13の開閉を制御して、第1の工程S100及び第2の工程S101を行って、原料ガス計測機構23による計測値に基づいてガス漏れを検知している。
【0035】
次に、本実施の形態1における燃料電池システム用ガス漏れ検知システムの特徴的なガス漏れ検知方法について、図2を参照しながら説明する。
【0036】
図2は、本発明の実施の形態1に係るガス漏れ検知方法の流れを示すフローチャート図である。
(a)制御器14は、第1の工程S100において、第1開閉器10を開放し、第2開閉器13を閉止して原料ガス経路15内へガスを流し込んだ状態でガス漏れの有無を確認する。第1の工程S100では、原料ガス経路15にガス圧がかかった状態であるため、ガス漏れがあった場合には流量計測器11が予め記憶している第1流量値以上の流量値を検知することになる。一方、流量計測器11が予め記憶している第1流量値以上の流量値を検知しなかった場合は、ガス漏れは無いと判断できるため、燃料電池システム1の状態を発電可能状態S107へ移行する。なお、第1流量値は、原料ガス経路15でガス漏れが起こった場合に流れる流量であり、原料ガス経路15の構造や燃料電池システムの構成などにより、実験やシミュレーションなどで任意に定めることができる。
【0037】
ただし、第1の工程S100においてガス漏れが発生したと判断した場合、ガスヒートポンプ2の機器動作によるガス圧脈動の影響による流量変動をガス漏れと誤検知していることもあるため、一旦、燃料電池システム1の状態を一時発電不可状態S103へ移行し、ガス漏れ異常をより詳細に調べる必要がある。
【0038】
(b)第2の工程S101は、第1の工程S100において、ガス漏れと判断された場合に制御器14が行うガス漏れ検知方法におけるもう一つの工程である。第2の工程S101では、第1の工程の後に行われるため、原料ガス経路15内へガス圧を張った状態で第1開閉器10および第2開閉器13を閉止し、一定時間その状態を保っても圧力計測器12の計測値が予め記憶している第1圧力値以上の低下をしないかを確認することによりガス漏れの有無を確認する。なお、第1圧力値は、原料ガス経路15でガス漏れが起こった場合に低下する原料ガスの圧力値であり、原料ガス経路15の構造や燃料電池システム1の構成などにより、実験やシミュレーションなどで任意に定めることができる。
【0039】
第2の工程S101では、第1開閉器10および第2開閉器13が閉止されているため、ガスヒートポンプ2の機器動作によるガス圧脈動の影響を受けない。したがって、第2の工程S101においても、ガス漏れを検知した場合は、ガス漏れもしくは圧力計測器12の故障の疑いがある。そのため、ガス漏れ確定S104し、燃料電池システムの状態を一時発電不可状態S103から異常状態である発電不可状態S106へ移行させる。
【0040】
また、圧力計測器12が第1圧力値以上に低下しなかった場合は、ガス漏れは無いと判断できる。ガス漏れはないと判断された場合、発電可能状態S107に移行して終了する。
実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法によれば、第1の工程S100で「ガス漏れ」を検知した場合に、さらに第2の工程S101を実行して、再度「ガス漏れ」を検知した場合に「ガス漏れ確定S104」としている。そこで、ガス漏れであるとの誤検知を防ぐことができ、不必要な発電不可状態S106を回避することができ、燃料電池システム1の稼働効率向上及び品質向上に有用である。
【0041】
なお、実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法は、その各工程をコンピュータにおいて実行させる各命令によって構成された燃料電池システム用ガス漏れ検知プログラムとしてもよい。さらに、燃料電池システム用ガス漏れ検知プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。
【0042】
なお、図1では、第2開閉弁13は、スタック21より下流側の原料ガス経路15に配置したがこれに限られない。ガス漏れを検知したい経路によっては、例えば、水素生成器20とスタック21との間の原料ガス経路15、並びに、流量計測器11および圧力計測器12より下流でかつ水素生成器20より上流の原料ガス経路15の少なくとも一方に配置しても良い。また、第2開閉弁13を複数配置してもよい。
【0043】
また、圧力計測器12を流量計測器11より下流に配置する構成について説明したが、圧力計測器12を流量計測器11より上流に配置しても良い。
さらに、第1の工程S100、第2の工程S101は、連続して順次実行してもよく、あるいは各工程の間に他の動作、例えば、第1開閉器10および第2開閉器13を開放するような制御を行ってもよい。また、第2の工程および第3の工程において第1開閉器10と第2開閉器13の間の原料ガス経路15内の原料ガス圧力は、ガス漏れが起こりえる圧力値以上であればよい。
また、第1の工程S100において流量計測器11を用い、第2の工程S101において圧力計測器12を用いたが、第1の工程S100において圧力計測器12を用いて、第2の工程S101において流量計測器11を用いてもよい。
【0044】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムは、実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知システムと対比すると、制御器14における動作について、第1の工程S100及び第2の工程S101に加えて、さらに第3の工程S102を行う点で相違する。なお、第3の工程S102については、以下の燃料電池システム用ガス漏れ検知方法のフローチャートにおいて説明する。
【0045】
図3は、実施の形態2に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法のフローチャートである。このフローチャートでは、実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法と対比すると、第1の工程S100及び第2の工程S101を行う点までは同様であるので第1の工程S100及び第2の工程S101についての説明を省略する。
実施の形態2に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法は、実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法と対比すると、第1の工程S100及び第2の工程S101に続いて、さらに第3の工程S102を実行する点で相違する。実施の形態2では、第2の工程S101で、「ガス漏れなし」と判断された場合にも、さらに第3の工程S102を実行することによって、第1の工程S100で「ガス漏れがある」と判断された理由を確認することができ、第2の工程S101で「ガス漏れなし」とされた場合に含まれる「ガス漏れ」の見落としを防ぐことができる。
【0046】
実施の形態1に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法では、第2の工程S101において、ガス漏れはないと判断された場合、発電可能状態S107に移行して終了する。
しかし、第1の工程S100の後、第2の工程S101が実行される原因となった第1の工程S100においてガス漏れが検知された原因がガスヒートポンプ2の機器動作による脈動の影響か、流量計測器の故障S106であるか否かを調べる必要がある。この時、燃料電池システム1の状態は、一時発電不可状態S103を継続する。
【0047】
実施の形態2に係る燃料電池システム用ガス漏れ検知方法では、第2の工程S101でガス漏れはないと判断された場合に、その後、第3の工程S102を行う。
(c)第3の工程S102は、第2の工程S101において、ガス漏れと判断されなかった場合に制御器14が行うガス漏れを検知する方法のもう一つの工程である。具体的には、原料ガス経路15内へガス圧を張った状態で第1開閉器10および第2開閉器13を閉止し、一定時間その状態を保っても流量計測器11が予め記憶している第2流量値以上のガス流量を測定しないかを確認することによりガス漏れの有無を確認する。なお、第2流量値は、流量計測器11が故障した場合に計測される流量であり、流量計測器の種類などにより、実験やシミュレーションなどで任意に定めることができる。
【0048】
第3の工程S102では、第1開閉器10および第2開閉器13が閉止されているため、ガスヒートポンプ2の機器動作によるガス圧脈動の影響を受けない。したがって、第3の工程S102において、ガス漏れを検知した場合は、流量計測器11の故障の疑いがあるため、流量計測器11の故障S105と判断して、燃料電池システム1の状態を異常状態として一時発電不可状態S103から発電不可状態S106へ移行させる。この場合は、制御器14は、リモコンなどにエラー表示を行うと共に、燃料電池システム1自体を再起動させるか、あるいは燃料電池システム1の停止処理に移行させてもよい。
【0049】
また、流量計測器11が一定以上のガス流量を検知しなかった場合は、ガス漏れは無いと判断できる。そのため、第1の工程S100においてガス漏れが検知された原因がガスヒートポンプ2の機器動作による脈動の影響と判断できるので、燃料電池システム1の状態を一時発電不可状態S103から発電可能状態S107へと移行させる。
【0050】
したがって、第1の工程S100において、ガス漏れ異常が検知された場合においても、第2の工程S101および第3の工程S102を実施することにより、ガス漏れ異常が検知された原因が、ガス漏れによるものなのか、ヒートポンプ2等の機器動作によるガス圧脈動の影響によるものなのか、あるいは流量計測器11の故障によるものなのかを特定することができる。そのため、不必要な発電不可状態S106を回避することができ、燃料電池システムの稼働効率向上及び品質向上に有用である。
【0051】
なお、図1では、第2開閉弁13は、スタック21より下流側の原料ガス経路15に配置したがこれに限られない。ガス漏れを検知したい経路によっては、例えば、水素生成器20とスタック21との間の原料ガス経路15、並びに、流量計測器11および圧力計測器12より下流でかつ水素生成器20より上流の原料ガス経路15の少なくとも一方に配置しても良い。また、第2開閉弁13を複数配置してもよい。
【0052】
また、圧力計測器12を流量計測器11より下流に配置する構成について説明したが、圧力計測器12を流量計測器11より上流に配置しても良い。
さらに、第1の工程、第2の工程、第3の工程は、連続して順次実行してもよく、あるいは各工程の間に他の動作、例えば、第1開閉器10および第2開閉器13を開放するような制御を行ってもよい。また、第2の工程および第3の工程において第1開閉器10と第2開閉器13の間の原料ガス経路15内の原料ガス圧力は、ガス漏れが起こりえる圧力値以上であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る燃料電池システムは、同一の原料ガス供給源にガスヒートポンプ等の装置が接続されている場合に、他装置の機器動作によるガス圧脈動の影響を排除することができるため、家庭用燃料電池システム等として、有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 燃料電池システム
2 ガスヒートポンプ
3 原料ガス配管
10 第1開閉器
11 流量計測器(原料ガス計測機構)
12 圧力計測器(原料ガス計測機構)
13 第2開閉器
14 制御器
15 原料ガス経路
20 水素生成器
21 スタック
22 筐体
23 原料ガス計測機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池装置を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知システムであって、
前記燃料電池装置に供給される原料ガスの原料ガス経路に配置され、前記原料ガスの流量及び圧力の少なくとも一方を検出する原料ガス計測機構と、
前記原料ガス計測機構より上流の前記原料ガス経路に配置され、前記原料ガス経路の開閉を行う第1開閉器と、
前記原料ガス計測機構より下流の前記原料ガス経路に配置され、前記原料ガス経路の開閉を行う第2開閉器と、
前記原料ガス計測機構と、前記第1開閉器と、前記第2開閉器と、を制御する制御器と、
を有し、
前記制御器は、
前記第1開閉器を開放するとともに前記第2開閉器を閉止して前記原料ガス計測機構の計測値からガス漏れを検知する第1の工程と、
前記第1及び第2開閉器の両方を閉止状態にして前記原料ガス計測機構の計測値からガス漏れを検知する第2の工程と、
を制御する、燃料電池システム用ガス漏れ検知システム。
【請求項2】
前記原料ガス計測機構は、原料ガスの流量を計測する流量計測器および原料ガスの圧力を計測する圧力計測器を備えており、
前記制御器は、
前記第1の工程において、前記流量計測器の流量値からガス漏れを検知し、
前記第1の工程の後に実行される前記第2の工程において、前記圧力計測器の圧力値からガス漏れを検知し、
前記第2の工程の後に実行される第3の工程として、前記第1開閉器及び前記第2開閉器の両方を閉止状態にして前記流量計測器の流量値からガス漏れを検知するように制御する、
請求項1に記載の燃料電池システム用ガス漏れ検知システム。
【請求項3】
前記制御器は、
前記第1の工程において前記流量計測器の測定流量が予め記憶している第1流量値以上の流量値を測定し、かつ、前記第2の工程において前記圧力計測器の測定圧力が予め記憶している第1圧力値以上低下しなかった場合に、前記第3の工程を行う、請求項2に記載の燃料電池システム用ガス漏れ検知システム。
【請求項4】
前記制御器は、
前記第3の工程において前記流量計測器の測定流量が予め記憶している第2流量値以上の流量値を計測しなかった場合は、ガス漏れは発生していないと判断する、請求項3に記載の燃料電池システム用ガス漏れ検知システム。
【請求項5】
前記制御器は、
前記第3の工程において前記流量計測器の測定流量が予め記憶している第2流量値以上の流量値を計測した場合にガス漏れが発生していると判断する、請求項3に記載の燃料電池システム用ガス漏れ検知システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の前記燃料電池システム用ガス漏れ検知システムを備えた、燃料電池システム。
【請求項7】
少なくとも炭化水素を含む原料ガスが供給される燃料電池装置を有する燃料電池システム用のガス漏れ検知方法であって、
前記燃料電池装置に供給される原料ガスの原料ガス経路の上流側を開放すると共に、下流側を閉止して、前記開放した上流側と前記閉止した下流側との間の前記原料ガスの流量もしくは圧力の計測値からガス漏れを検知する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記原料ガス経路の上流側を閉止すると共に、下流側を閉止して、前記閉止した上流側と前記閉止した下流側との間の前記原料ガスの流量もしくは圧力の計測値からガス漏れを検知する第2の工程と、
を含む、燃料電池システム用ガス漏れ検知方法。
【請求項8】
請求項7に記載の前記燃料電池システム用ガス漏れ検知方法の各工程をコンピュータにおいて実行させる各命令によって構成された燃料電池システム用ガス漏れ検知プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の前記燃料電池システム用ガス漏れ検知プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−185109(P2012−185109A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49848(P2011−49848)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】