説明

燃料電池用セパレータの成形装置と成形方法

【課題】薄く均一な肉厚のセパレータを成形する装置と方法を提供する。
【解決手段】型合わせ面19からの深さが可変なキャビティ20を有する金型のキャビティ20をセパレータの厚さに応じた所定深さにし、導電性フィラーを含む樹脂材料6を前記キャビティ20の開口端部23に係合して設けた枠部材13の内縁14まで供給し、前記内縁14から膨出した前記樹脂材料6を均し手段7により平坦にした後、前記キャビティ20の深さを増加させるとともに前記枠部材13を前記開口端部23から除去し、前記キャビティ20へコア9を嵌入させて圧縮成形する燃料電池用セパレータの成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータを成形する成形装置とその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄板状成形品である燃料電池用セパレータは、表面にガス流路用の溝が形成された導電性の薄板である。燃料電池はこのセパレータ等を数百枚積み重ねて構成され、10年以上の耐用年数が要求される。このため、セパレータに必要な特性として、高い導電性、80〜150℃の耐熱性、耐薬品性、気密性、面精度、板厚寸法の精度と薄肉化(0.01mmの誤差は700枚積み重ねると7mmとなる。)、耐久性、強度及び金型凹部に刻設された溝を正確に転写する転写性などが挙げられる。このような薄板状成形品は、特許文献1に開示されるような圧縮成形法で成形されることが多い。
【0003】
圧縮成形法では、成形する前に金型凹部へ材料を供給する必要があるが、セパレータの薄肉化の要求により凹部面には1mm以下の厚さに均一に材料を敷き詰めなければならない。このため、特許文献2に示されるように、雌型擦り切り面に密着させた粉末状原料投入装置をスライドさせながら粉末状原料を雌型内に擦り切り投入する方法等が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記の方法では雌型縁周辺の粉末状原料が雌型縁に付着しセパレータ外周に縦バリを生じさせたり、肉厚の不均一を招いた。
【特許文献1】特開2001−143722号公報
【特許文献2】特開2003−223901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、薄く均一な肉厚のセパレータを成形する装置と方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、導電性フィラーを含む樹脂材料と、型合わせ面からの深さが可変なキャビティを有する金型と、前記キャビティに供給した前記樹脂材料を前記キャビティの開口端部の面に均す均し手段とを備えたことを特徴とする燃料電池用セパレータの成形装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、薄く均一な肉厚のセパレータを成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は成形装置のニュートラル状態を示す縦断面図であり、図2は成形装置の樹脂材料供給時を示す縦断面図であり、図3は成形装置の樹脂材料の均し状態を示す縦断面図であり、図4は成形装置の樹脂材料の均し終了時を示す縦断面図であり、図5は成形装置の樹脂材料移動後を示す縦断面図であり、図6は成形装置の樹脂材料の圧縮成形開始時を示す縦断面図であり、図7は成形装置の樹脂材料の圧縮成形中を示す縦断面図であり、図8は成形装置の樹脂材料の圧縮成形後を示す縦断面図である。図9は下型に供給された樹脂材料を均し手段により均す状況を示す斜視図である。図10は枠部材の斜視図である。図11は枠部材を下型に装着して樹脂材料を均す状況を示す断面図である。
【0009】
成形装置18は、プラスチック材料の圧縮成形を行うプレス装置であり、下型1と上型8とが相互に接近・圧締かつ離隔するように構成されている。下型1の上型8との対向面である型合わせ面19には、凹部2が型合わせ面19に開口するように形成されている。凹部2には、キャビティ盤3が凹部2の側面を摺動して移動可能に嵌挿されている。キャビティ盤3は、その下面に固着されたロッド4を介して駆動装置5により、下面が凹部2の底面に当接する後退位置から、その上面が型合わせ面19から突出する前進位置まで往復移動する。キャビティ盤3の上面、凹部2の側面および型合わせ面19の面で形成される空間をキャビティ20とする。上型8と下型1とが接近したときに、キャビティ20には上型8の下面に突設したコア9が嵌入して、前記キャビティ20の底面すなわちキャビティ盤3の上面に供給された樹脂材料が加熱・圧縮されて成形品が成形される。
【0010】
図1ないし図8により、本発明の圧縮成形方法を詳細に説明する。図1は、キャビティ盤3が後退位置にあり、キャビティ盤3の下面が凹部2の底面に当接したときのニュートラル状態である。図2は、駆動装置5を前進駆動してキャビティ盤3を所定位置まで上昇させ、キャビティ20に樹脂材料6を供給した状態を示す。
【0011】
ここで、樹脂材料6とは、カーボンや黒鉛等の導電性フィラーを熱可塑性または熱硬化性のプラスチック材料に混合した粉末状のものである。また、前記粉末状の樹脂材料6を溶融させて押出機やローラでシート状に形成したものをキャビティ20に供給して粉末状のものと同様にして成形することもあるので、樹脂材料6は粉末状のものに限定するものではない。
【0012】
図3は、キャビティ20の開口端部23から膨出した樹脂材料6を均し手段7によって均している状況を示す。均し手段7は、図9に示すように、キャビティ20の開口端部23または開口端部23が環状凸部状となっている部分(図示せず)に接触して回動するローラ10と、ローラ10の中心軸を回転自在に保持するコ字状のアーム11と、アーム11の上部面に取付けられローラ10が前記開口端部23を押圧しつつローラ10の中心軸に直交する方向へ移動するように駆動するシリンダとピストン等からなる駆動手段12とからなる。均し手段7は、単なる棒材や板材からなるいわゆる擦り切り部材であってもよいが、本実施例のようにローラ10を用いることにより、樹脂材料6を押え込みながら表面を平坦にするので、樹脂材料6の密度が増し材料間の空気が脱気されて、良質なセパレータが成形できる。いずれにしても、型合わせ面19は平面であり前記環状凸部の上面は型合わせ面19に平行な面に形成するので、樹脂材料6は平面に均される。
【0013】
図4は、上記均し手段7による樹脂材料6の均しが終了した状態を示す。キャビティ盤3は、図4における樹脂材料6が圧縮成形されたときに所望のセパレータの厚さとなるような前記所定位置に駆動装置5により位置決めされている。駆動装置5は、ローラ10の押圧力に対抗できるだけの出力を有する必要があり、油圧シリンダやサーボモータ等を用いた位置決め機構が好適に採用される。なお、キャビティ盤3の位置決め位置を任意の多数個所とする必要がなければ、キャビティ盤3の位置決め機構として、キャビティ盤3の下面でその両側に進退移動する段板を備え、その段部にキャビティ盤3の下面を当接させるようにしてもよい。
【0014】
次に、図5に示すように、駆動装置5を駆動してキャビティ盤3をその後退位置に下げて、キャビティ盤3の下面と凹部2の底面とを当接させる。このようにすることにより、樹脂材料6の平坦化された上面は、型合わせ面19よりも凹部2内に沈下する。そのため、図6および図7に示すように、凹部2の側面上方には成形品の縦バリや板厚の偏肉の原因となる樹脂材料6の付着や堆積がなく、コア9のキャビティ20への嵌入が容易となり圧縮成形が良好に実行できる。
【0015】
図8は、樹脂材料6が圧縮成形され固化して成形品(セパレータ)となったものをキャビティ20から取出すため、駆動装置5によりキャビティ盤3を前進させた状態を示す。
【0016】
次に、他の実施例として枠部材13を用いた成形方法について説明する。枠部材13は、図10および図11に示すように、キャビティ20の開口端部23に係合する内縁部21と、内縁部21の高さ方向の中間位置から外側に突出する断面L字状の外縁部22とからなる。内縁部21の上半部と外縁部22の上部により形成される断面U字状部分は、環状溝15となっている。
【0017】
枠部材13を用いた成形方法を、枠部材13を用いない前記図1ないし図8に基づいて説明する。まず、図1において、キャビティ20の開口端部23に枠部材13を係合して設置する。そして図2ないし図4に代えた図11に示すように、枠部材13の内縁14まで供給した樹脂材料6を、ローラ10が内縁部21の上端部である頂部17に接触して移動するようにして均す。このとき、頂部17は、樹脂材料6のきれをよくするため、尖頭となっていることが好ましい。その結果、内縁14から溢流した樹脂材料6は、環状溝15に余剰材料16として収容される。そして図5のようにキャビティ盤3を後退させた後、開口端部23に係合していた枠部材13を取り外して除去し、図6ないし図8と同様にして圧縮成形する。このように、枠部材13を用いた成形方法によれば、凹部2の側面上方に枠部材13が装着されるため樹脂材料6の付着や堆積がなく、成形品の縦バリや板厚の偏肉がより一層防止され得て、良質な成形品が容易に圧縮成形される。
【0018】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】成形装置のニュートラル状態を示す縦断面図である。
【図2】成形装置の樹脂材料供給時を示す縦断面図である。
【図3】成形装置の樹脂材料の均し状態を示す縦断面図である。
【図4】成形装置の樹脂材料の均し終了時を示す縦断面図である。
【図5】成形装置の樹脂材料移動後を示す縦断面図である。
【図6】成形装置の樹脂材料の圧縮成形開始時を示す縦断面図である。
【図7】成形装置の樹脂材料の圧縮成形中を示す縦断面図である。
【図8】成形装置の樹脂材料の圧縮成形後を示す縦断面図である。
【図9】下型に供給された樹脂材料を均し手段により均す状況を示す斜視図である。
【図10】枠部材の斜視図である。
【図11】枠部材を下型に装着して樹脂材料を均す状況を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 下型
2 凹部
3 キャビティ盤
4 ロッド
5 駆動装置
6 樹脂材料
7 均し手段
8 上型
9 コア
10 ローラ
11 アーム
12 駆動手段
13 枠部材
14 内縁
15 環状溝
16 余剰材料
17 頂部
18 成形装置
19 型合わせ面
20 キャビティ
21 内縁部
22 外縁部
23 開口端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性フィラーを含む樹脂材料と、型合わせ面からの深さが可変なキャビティを有する金型と、前記キャビティに供給した前記樹脂材料を前記キャビティの開口端部の面に均す均し手段とを備えたことを特徴とする燃料電池用セパレータの成形装置。
【請求項2】
前記キャビティの開口端部に係合する枠部材を備え、前記樹脂材料を該枠部材の内縁まで供給して内縁の面に均す請求項1に記載の燃料電池用セパレータの成形装置。
【請求項3】
前記均し手段はローラを備えた請求項1または2に記載の燃料電池用セパレータの成形装置。
【請求項4】
型合わせ面からの深さが可変なキャビティを有する金型のキャビティをセパレータの厚さに応じた所定深さにし、導電性フィラーを含む樹脂材料を前記キャビティへ供給し、前記キャビティの開口端部から膨出した前記樹脂材料を均し手段により平坦にした後、前記キャビティの深さを増加させ、前記キャビティへコアを嵌入させて圧縮成形することを特徴とする燃料電池用セパレータの成形方法。
【請求項5】
型合わせ面からの深さが可変なキャビティを有する金型のキャビティをセパレータの厚さに応じた所定深さにし、導電性フィラーを含む樹脂材料を前記キャビティの開口端部に係合して設けた枠部材の内縁まで供給し、前記内縁から膨出した前記樹脂材料を均し手段により平坦にした後、前記キャビティの深さを増加させるとともに前記枠部材を前記開口端部から除去し、前記キャビティへコアを嵌入させて圧縮成形することを特徴とする燃料電池用セパレータの成形方法。
【請求項6】
前記枠部材は、その内縁の外周に環状溝を有し、前記内縁から膨出した前記樹脂材料を均し手段により平坦にする際、前記内縁から溢流した前記樹脂材料を前記環状溝に余剰材料として収容する請求項5に記載の燃料電池用セパレータの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−51756(P2006−51756A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236455(P2004−236455)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】