燃料電池用セパレータの製造方法
【課題】金型内のキャビティに導電性樹脂を射出して固化することで燃料電池用セパレータを製造する方法であって、キャビティ全体に樹脂を均一に充填することができ、良好な品質の燃料電池用セパレータを製造する。
【解決手段】本発明の燃料電池用セパレータの製造方法では、キャビティの容積を拡張させながらキャビティ内に導電性樹脂を充填する(ステップ40)。次いで、キャビティ内への導電性樹脂の充填完了前または充填完了後の所定のタイミングで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一となるようにして、キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧する(ステップS42)。
【解決手段】本発明の燃料電池用セパレータの製造方法では、キャビティの容積を拡張させながらキャビティ内に導電性樹脂を充填する(ステップ40)。次いで、キャビティ内への導電性樹脂の充填完了前または充填完了後の所定のタイミングで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一となるようにして、キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧する(ステップS42)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータを製造する方法に関し、詳しくは、燃料電池用セパレータを射出成形によって製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用セパレータは、表面にガス流路(溝)が形成された導電性の薄板である。従来の燃料電池用セパレータの製造方法としては、焼成カーボンの表面に機械加工によって溝を形成する方法、あるいは、熱硬化性樹脂に導電材(例えば、黒鉛等)を添加したものを板状に成形する方法等が知られている。焼成カーボンを機械加工する方法では、機械加工が必要なため手間がかかり、コスト高になるという欠点があった。また、熱硬化性樹脂に導電材を添加したものを成形する方法では、熱硬化性樹脂が固化するまでに長時間(例えば、数分程度)を要するため、生産性が低く大量生産には不向きであった。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂に導電材を添加したものを射出成形することにより、燃料電池用セパレータを製造する方法が検討されている。熱可塑性樹脂を用いることで、固化時間を大幅に短縮でき生産性を向上することが可能となる。しかしながら、熱可塑性樹脂に導電材を多量(60重量%以上)に添加したものは粘性が高く、流動性が極めて悪いため、キャビティ内に樹脂を充填することが難しいという問題がある。かかる問題を解決するために、特許文献1の技術が提案されている。
特許文献1の技術では、固定金型と可動金型が型開した状態から、可動金型を固定金型に向かって移動させる。固定金型と可動金型によって形成されるキャビティの容積が燃料電池用セパレータの容積より所定の割合だけ大きくなる位置に可動金型が到達すると、可動金型の移動を停止する。次いで、射出装置からキャビティ内への導電性樹脂の射出を開始する。導電性樹脂がキャビティ内に所定割合まで充填されると、導電性樹脂の射出を継続しつつ可動金型を固定金型に向かって移動させて型閉する。
この技術では、導電性樹脂の充填開始時にはキャビティが大きくされているため、キャビティ内に導電性樹脂を容易に充填することができる。また、キャビティ内に導電性樹脂がある程度充填されると可動金型の型締めを再開し、キャビティ内に充填された導電性樹脂を圧締するため、キャビティの末端まで導電性樹脂を流動させることができるとされている。
【特許文献1】特開2004−160772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの研究によると、上述した従来の技術では、キャビティの外周部(ゲートから離れた位置)の樹脂密度がキャビティの中心付近(ゲート近傍)の樹脂密度より高くなり易く、キャビティ全体に樹脂を均一に充填することが困難であることが判明した。特に、導電材の含有率を増大すると(例えば、導電材の含有率を80重量%以上とすると)、上述した傾向が顕著となり、製造された燃料電池用セパレータの一部に欠陥(ショート)が生じる場合もあった。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、射出成形により燃料電池用セパレータを製造する製造方法において、キャビティ全体に樹脂を均一に充填することができ、これによって、良好な品質の燃料電池用セパレータを製造することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
キャビティの中心付近の樹脂密度よりキャビティの外周部の樹脂密度が高くなる原因について、本発明者らが検討したところ、以下の理由が推測された。
すなわち、導電材を多量に含んだ導電性樹脂は、極めて粘性が高く流動性が悪い。このため、このような導電性樹脂をキャビティ内に充填するためには、導電性樹脂を高速でキャビティ内に射出しなければならない。ゲートからキャビティ内に高速で射出された導電性樹脂は、粘性が高いためその流動挙動がいわゆるファウンテンフローとはならず、ゲートから棒状に押し出されてキャビティの内壁面(ゲートと対向する面)に衝突し、砕けて粉状になると考えらえる。
上述した従来の技術では、キャビティの容積を大きくした状態で、キャビティ内への導電性樹脂の充填を開始する。このため、キャビティの内壁面に高速で衝突して粉状となった導電性樹脂は、キャビティの外周部に飛散し外周部に集中的に充填される一方で、キャビティの中心であるゲート近傍には充填されない。これによって、キャビティの中心付近には少量の導電性樹脂しか充填されず、キャビティの外周部には多量の導電性樹脂が充填される。キャビティ内に充填された導電性樹脂の不均一性が大きくなると、その後に可動金型を型閉して圧力を加えても、導電性樹脂の粘性の高さから導電性樹脂の流動は少なく、導電性樹脂の充填量の不均一性が解消されず、キャビティ全体に樹脂が均一に充填されないものと推測される。
【0007】
そこで、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法では、キャビティの容積を拡張させながらキャビティ内に導電性樹脂を充填する充填工程と、キャビティ内への導電性樹脂の充填完了前または充填完了後の所定のタイミングで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一として、キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧する加圧工程と、を含んでいる。
この製造方法では、キャビティの容積を拡張させながら導電性樹脂を充填する。すなわち、導電性樹脂の充填開始時はキャビティの容積が小さく、キャビティへの導電性樹脂の充填量が増加するのにともなってキャビティの容積が大きくされる。これにより、キャビティ全体に導電性樹脂を均一(すなわち、従来技術と比較して均一)に充填することができる。そして、キャビティ内に充填された導電性樹脂は、その後の加圧工程によって押し固められ、良好な品質の燃料電池用セパレータとなる。
【0008】
キャビティの容積を拡張しながら導電性樹脂を充填することで、キャビティ全体に均一に導電性樹脂が充填できる推測理由を下記に示す。ただし、本発明の技術はその推測理由によって制約されるものではなく、あくまで特許請求の範囲に記載されている客観的要件に従う。
キャビティの容積が小さくされた状態でキャビティ内に導電性樹脂を射出すると、射出された導電性樹脂がキャビティ内壁面(ゲートと対向する面)に衝突して粉状となっても、その粉状となったものが周囲に飛散することが抑制される。このため、ゲートの近傍にも導電性樹脂が充填される。キャビティの容積を拡大しながら導電性樹脂を充填するので、ゲート近傍に導電性樹脂が充填されると、樹脂の充填とキャビティの拡大が継続し、その後にキャビティ内に射出される樹脂は、ゲート近傍に充填された導電性樹脂に衝突し、その樹脂をキャビティの外周部に押し出してゆく。これによって、キャビティの中心(ゲート近傍)からキャビティの外周部まで均一に樹脂を充填することができるものと考えられる。なお、導電性樹脂が充填されるのに応じてキャビティの容積が大きくなるため、射出圧力の急激な増加が抑制され、キャビティへ必要な量の導電性樹脂を充填することができる。
【0009】
上述した本発明の製造方法は、固定金型と、固定金型に対して進退動可能とされた可動金型を用いて実施することができる。この場合に、充填工程においては、固定金型に対して可動金型を離間する方向に移動させることでキャビティを拡張する。また、充填工程においてキャビティの容積がセパレータの容積より大きくされている場合は、加圧工程において、固定金型に対して可動金型を近接する方向に移動させることで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一とすることができる。
このような構成によると、固定金型に対して可動金型を進退動させることでキャビティの容積を変化させるため、金型の構造を簡易にすることができる。
【0010】
上述した本発明の製造方法では、充填工程の前または充填工程の間に、キャビティ内の空気を金型外に排気してキャビティ内を減圧することが好ましい。
導電性樹脂の充填前にキャビティ内を減圧することで、キャビティ内へ充填された樹脂中に気泡が混入することが防止される。また、導電性樹脂を充填する最中にキャビティからガスを排気することで、導電性樹脂を充填する際に発生するガスを金型外に排出でき、キャビティ内に充填された樹脂中に気泡が混入することが防止される。
【0011】
上述した本発明の製造方法は、導電性樹脂が、黒鉛を80重量%以上含んだ熱可塑性樹脂に有効である。このような樹脂は、流動性が極めて低いため、従来の射出成形方法では良好な品質の燃料電池用セパレータを製造することが困難であるが、本発明の製造方法を用いることで、良好な品質の燃料電池用セパレータを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
下記に詳細に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(形態1)射出成形装置は、型締装置と、射出装置を有する。型締装置には、金型が取付けられる。射出装置は、金型内のキャビティに導電性樹脂を射出する。
(形態2)充填工程においては、ゲートに対向するキャビティ面をゲートに対して離間する方向に移動させることで、キャビティの体積を拡張させる。加圧工程においては、ゲートに対向するキャビティ面をゲートに対して近接する方向に移動させることで、キャビティの体積を縮小させる。
(形態3)充填工程においては、キャビティ内の樹脂圧力が略一定となるように、ゲートに対向するキャビティ面を移動させる。
(形態4)充填工程においては、キャビティ内に充填される導電性樹脂の充填量に応じて、ゲートに対向するキャビティ面を移動させる。
(形態5)金型は、キャビティ内に配置された可動入れ子を有する。可動入れ子には、ゲートに対向するキャビティ面が形成されている。可動入れ子は、キャビティ内を移動可能とされており、ゲート近傍に設定された第1位置とゲートから所定の距離だけ隔てた位置に設定された第2位置との間を移動する。
(形態6)金型は、固定金型と、固定金型に対して進退動する可動金型を有している。可動金型には、ゲートに対向するキャビティ面が形成されている。充填工程においては、固定金型から離間する方向に可動金型を移動させることでキャビティの容積を拡張する。加圧工程においては、固定金型に近接する方向に可動金型を移動させることでキャビティの容積を縮小する。
(形態7)充填開始時のキャビティの容積は、燃料電池用セパレータの体積の0〜200%に設定されることが好ましく、より好ましくは150〜200%に設定される。150〜200%の範囲に設定することで、導電性樹脂の飛散を防止しつつ、充填開始時の射出圧力が大きくなり過ぎることを防止することができる。
(形態8)キャビティの拡張完了時の体積は、燃料電池用セパレータの体積の200〜500%に設定されることが好ましく、より好ましくは300〜400%に設定される。300〜400%に設定することで、充填時の射出圧力の急激な増加を抑制しつつ、キャビティ内に充填された導電性樹脂に適度な圧力を作用させて、キャビティの外周部に導電性樹脂を充填することができる。
(形態9)射出装置から射出される導電性樹脂の射出速度は300〜400mm/sである。
(形態10)導電性樹脂は、黒鉛を80重量%以上含んだ熱可塑性樹脂である。
【実施例】
【0013】
<第1実施例>
本発明の第1実施例に係る燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。まず、本実施例の製造方法によって製造される燃料電池用セパレータ(以下、単にセパレータという)について、簡単に説明しておく。
本実施例のセパレータは、自動車に搭載される燃料電池に用いられる。本実施例のセパレータは、薄肉(例えば、板厚2mm)の平板であり、その表面積は数100cm2以上(例えば、A4サイズ)とされている。セパレータの表裏両面には、酸素ガスと水素ガスを流通させる多数のガス流路(溝)が形成されている。燃料電池は、上記のセパレータの他、電解質膜、触媒層及びガス拡散層を積層したものを1単位とし、これら1単位を複数単位積み重ねて構成されている。このセパレータは、高い導電性(体積抵抗20mmΩ・cm以下)を有することが好ましく、黒鉛(カーボンフィラー)を多量(例えば、80重量%以上)に含んだ熱可塑性樹脂で成形されることが好ましい。
【0014】
次に、上述したセパレータを製造するための射出成形機10について説明する。図1は射出成形機10の概略構成を示す図面である。図1に示すように、射出成形機10は、型締装置11と、射出装置25を備えている。
【0015】
型締装置11は、固定金型16が取付けられる固定板14と、可動金型18が取付けられる可動板12と、可動板12を固定板14に対して進退動させる駆動機構13を備えている。固定板14には、射出装置25から射出される樹脂を固定金型16に導くための貫通孔14aが形成されている。駆動機構13は、可動板12を進退動させる他、固定金型16と可動金型18との間に型締め力を発生させる。駆動機構13には、油圧シリンダによって可動板12を駆動する油圧式、サーボモータとボールネジ及びボールナット等によって可動板12を駆動する機械式、油圧式と機械式を組み合わせたものを用いることができる。
【0016】
射出装置25は、ノズル30と、ノズル30内に配置されたスクリュウ28と、スクリュウ28を回転往復動させる駆動装置26を備えている。ノズル30は、ノズル30内の導電性樹脂を加熱するヒータ(図示省略)を有しており、ノズル30内の導電性樹脂が冷却・固化しないようになっている。駆動装置26がスクリュウ28を回転駆動すると、ノズル30内の導電性樹脂が可塑化・混練される。ノズル30内で混練された樹脂は、スクリュウ28が前進駆動されることで、ノズル30の先端から外部に押し出される。ノズル30から押し出された樹脂は、固定金型16のスプル16cを通ってゲート16dよりキャビティ22内に射出される。
【0017】
次に、上述した射出成形機10に取付けられる金型について説明する。金型は、固定板14に取付けられる固定金型16と、可動板12に取付けられる可動金型18によって構成されている。
可動金型18には、固定金型16と当接する型合わせ面18bに凹部18aが形成されている。凹部18a内には可動入れ子20が収容されている。可動入れ子20は、セパレータに対応した形状をしており、その表面20aには、セパレータの表面に形成される溝に対応する溝が設けられている。可動入れ子20は、凹部18a内を摺動可能となっており、(1)可動入れ子20の裏面20bが凹部18aの底面と当接する位置(図1に示す位置)と(2)可動入れ子の表面20aが固定金型16と当接する位置(図3に示す位置)との間を移動することができる。
【0018】
固定金型16には、可動金型18と当接する型合わせ面16fに凸部16eが形成されている。可動金型18が固定金型16に向かって移動すると、固定金型16の凸部16eが可動金型18の凹部18aに嵌まる。固定金型16の凸部16eが可動金型18の凹部18aに嵌まると、可動金型18と固定金型16の間にキャビティ22が形成されるようになっている。凸部16eの先端面16aは、セパレータに対応した形状に形成されており、セパレータの裏面に形成される溝に対応した溝が設けられている。
固定金型16には、凸部16eの先端面16aから固定板14側の面に向かって貫通するスプル16cと、先端面16aから固定金型16の側面とを連通する排気孔16bが形成されている。スプル16cの固定板14側の端部には、固定板14に設けられた貫通孔14aが接続されている。したがって、射出装置25から射出された樹脂は、貫通孔14a及びスプル16cを通って、ゲート16dよりキャビティ22内に充填される。排気孔16bには、図示しない真空減圧機構が接続されている。真空減圧機構が動作すると、キャビティ22内の空気がキャビティ外に排気され、キャビティ22内が減圧される。
【0019】
次に、上述した射出成形装置によってセパレータを製造する手順を図2〜7を参照して説明する。図7はセパレータを製造する手順を示すフローチャートであり、図2〜6はセパレータを製造する各工程における金型(16,18)の状態を模式的に示す図である。なお、図2〜6においては固定金型16に設けた排気孔16bの図示を省略している。
図7に示すように、まず、制御装置24は、固定金型16と可動金型18が開いた状態から、駆動機構13を駆動して可動金型18を固定金型16に向かって移動させる(ステップS10)。可動金型18が移動を開始すると、可動板12(すなわち、可動金型18)の位置は可動板位置センサ12aによって検出され、その検出信号が制御装置24に入力する。
制御装置24は、可動板位置センサ12aから入力する検出信号に基づいて、可動金型18の位置が予め設定された位置となるか否かを判断する(ステップS12)。可動金型18の位置が設定位置となっていない場合(ステップS12でNO)、制御装置24は可動金型18の移動を継続する。一方、可動金型18の位置が設定位置となると(ステップS12でYES)、制御装置24は可動金型の移動を停止する(ステップS14)。
【0020】
図2には、ステップS14により可動金型18が移動を停止したときの固定金型16と可動金型18の状態が示されている。この状態では、固定金型16の凸部16eが可動金型18の凹部18aに嵌っており、固定金型16と可動入れ子20との間にキャビティ22が形成されている。また、可動入れ子20の裏面20bと可動金型18の凹部18aの底面18cは当接している。
この状態におけるキャビティ22の容積S1は、製造するセパレータの容積Sよりも大きくされている。すなわち、キャビティ容積S1がセパレータの容積Sの100〜400%となるように設定されている。例えば、セパレータの板厚が2mmであれば、固定金型16の先端面16aから可動入れ子20の表面20aまでの距離が2〜8mmの範囲で設定される。
【0021】
次に、制御装置24は、真空減圧機構を作動させて、キャビティ22内の空気を排気孔16bより排気する(ステップS16)。このため、キャビティ22内が減圧され、これによって可動入れ子20が固定金型16側に移動する。キャビティ22内の真空度が設定された真空度となると、真空減圧機構によるキャビティ22内の空気の排気を停止する。真空減圧機構が停止した時点における可動入れ子20の位置は、可動金型18と可動入れ子20とのクリアランスやキャビティ22の真空度によって、予め設定された位置となるように調整されている。
図3には、真空減圧機構によるキャビティ22内の排気が完了したときの状態が示されている。この状態では、可動入れ子20の表面20aと固定金型16の先端面16aが当接しており、キャビティ22の容積が0とされている。なお、キャビティ22内の排気が完了した時点のキャビティ容積S2は、セパレータの容積Sの0〜100%の範囲で設定されている。例えば、セパレータの板厚が2mmであれば、固定金型16の先端面16aから可動入れ子20の表面20aまでの距離が0〜2mmの範囲で設定されている。
【0022】
次に、制御装置24は、射出装置25を駆動して、ノズル30から導電性樹脂50を高速で射出する(ステップS18)。ノズル30から射出された導電性樹脂50は、固定板14の貫通孔14a及び固定金型16のスプル16cを通って、ゲート16dよりキャビティ22内に射出される。キャビティ22内に導電性樹脂50が射出されると、射出された導電性樹脂50の圧力により可動入れ子20が後退する(可動板12側に移動する)。キャビティ22内に射出された導電性樹脂50から可動入れ子20に作用する圧力は、キャビティ22内に充填された導電性樹脂の量に応じて上昇し、これによって、可動入れ子20が徐々に後退する(図4に示す状態)。そして、可動入れ子20は、可動入れ子20の裏面20bが凹部18aの底面18cと当接するまで移動する。
なお、射出装置25は、射出された導電性樹脂50の射出量が所定量(セパレータを成形するだけの量)となると、導電性樹脂50の射出を停止する。これによって、キャビティ22内に所定量の導電性樹脂50が充填される(図5に示す状態)。
【0023】
上述したステップS18によってキャビティ22内に導電性樹脂50を充填するときの導電性樹脂の挙動は、以下のようであると推測される。
すなわち、キャビティ22に導電性樹脂50の充填を開始した時点では、可動入れ子20が固定金型16側に移動した状態となっており、キャビティ22の容積が小さくされている。このため、ゲート16dからキャビティ22内に射出された導電性樹脂50が可動入れ子20の表面20aに衝突しても、その導電性樹脂50が粉状となって周囲に飛散することが抑制され、導電性樹脂50はゲートの近傍にも充填されてゆく。導電性樹脂50の充填が開始された後に、ゲート16dからキャビティ22内に射出される導電性樹脂50は、ゲート近傍に充填された導電性樹脂50に衝突し、その導電性樹脂50をキャビティの外周側に押し出してゆく。これによって、導電性樹脂50がゲート近傍から外周部に向かって押し出され(流れ)、キャビティ22の外周部にまで導電性樹脂50が充填されてゆく。キャビティ22内に充填される導電性樹脂50はキャビティ22の内壁面等に衝突して粉状となるため、キャビティ22内にはポーラスな状態で導電性樹脂50が充填されてゆくものと思われる。
なお、キャビティ22に導電性樹脂50が充填されるのに伴って、キャビティ22内の導電性樹脂50の圧力が上昇してゆくが、その導電性樹脂50の圧力増加に応じて可動入れ子20が後退するため、導電性樹脂50の圧力が急激に上昇することが抑制される。このため、射出装置25からキャビティ22内に必要な量の導電性樹脂50を充填することができる。
【0024】
キャビティ22への導電性樹脂の充填が完了すると、制御装置24は、駆動機構13を駆動して可動金型18を固定金型16に向かって移動させる。これによって、可動金型18の型合わせ面18bと固定金型20の型合わせ面16fが当接し(すなわち、可動金型18が最終型締位置に移動し)、可動金型18と固定金型16の間に型締め力が作用する(ステップS20)。可動金型18が最終型締位置に移動した状態では、キャビティ22の容積S3はセパレータの容積Sと同一となっている。ステップS20によってキャビティ22内にポーラス状に充填された導電性樹脂50が押し固められ、セパレータが成形される。上述したように、ステップS18の終了時点では、キャビティ22の全体に均一に導電性樹脂50が充填されているため、ステップS20によって成形されたセパレータも樹脂密度が均一なものとなっている。
次に、キャビティ22内の導電性樹脂を冷却し固化する。そして、可動金型18を固定金型16から離れる方向に移動させて型を開き、金型(16,18)内からセパレータを取出す。
【0025】
上述した射出成形装置を用いてセパレータを実際に製造した一例について説明する。製造したセパレータは、板厚2mmのA4サイズのセパレータであった。セパレータの材料には、黒鉛(導電フィラー80重量%)に熱可塑性樹脂(液晶ポリマー20重量%)を混練したものを用いた。
計量条件はスクリュウ回転25rpmで背圧5MPaとし、導電性樹脂の射出速度は400mm/sとし、金型(16,18)の温度を200℃とした。射出開始時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面18bと固定金型16の型合わせ面16fとの間隔が4mmとなるように設定した(すなわち、図2に示すときのキャビティ22の容積S1をセパレータの容積Sの300%とした)。ステップS16の終了時のキャビティ22の真空度を5Torrとし、導電性樹脂充填後の型締め力を350tとした。
上述した条件で30ショットを連続して行った。製造されたセパレータは、製品の一部に大きな欠陥等もなく、略均一の板厚のものとなった。製造されたセパレータの板厚のバラツキは2±0.3mmであった。
【0026】
上述した説明から明らかなように、本実施例の製造方法によると、導電材を多量に含んだ熱可塑性樹脂であっても、キャビティ22の全体に均一に充填することができ、良好な品質のセパレータを製造することができる。
また、上述した実施例では、キャビティ22に導電性樹脂50を充填する前にキャビティ22から空気が排気されているため、キャビティ22内に充填された樹脂に空気が混入することが抑制される。なお、キャビティ22に導電性樹脂50を充填する際もキャビティ22から空気を排気するようにしてもよい。これによって、導電性樹脂50を充填する際に発生するガスをキャビティ22から外部に排気することができる。
【0027】
<第2実施例>
本発明の第2実施例に係る製造方法について説明する。第2実施例は、セパレータの製造に用いる金型が第1実施例と相違し、それに伴い射出成形装置による成形手順の一部が第1実施例と異なる。ただし、射出成形装置の各部(型締装置、射出装置)の構造は第1実施例と同一である。以下、第1実施例と異なるところを詳細に説明する。
図8に示すように、第2実施例の金型も、固定金型16と可動金型18を備えている。第2実施例の可動金型18は、第1実施例と異なり、可動入れ子34がアクチュエータ32によって駆動される点で異なる。アクチュエータ32が作動すると、可動入れ子34が可動金型18の凹部内を摺動する。アクチュエータ32によって可動入れ子34の動作が制御されるため、可動入れ子34の移動速度や、可動入れ子34の表面36aと固定金型16の先端面16aとの距離を任意に調整することができる。アクチュエータ32には、例えば、油圧シリンダを用いることができる。なお、固定金型16については第1実施例と同一である。
【0028】
次に、第2実施例の製造手順を図8〜13を参照して説明する。図13は第2実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャートであり、図8〜12はセパレータを製造する各工程における金型(16,18)の状態を模式的に示す図である。なお、図8〜12においても固定金型16に設けた排気孔16bの図示を省略している。
図13に示すように、まず、制御装置24は、固定金型16と可動金型18が開いた状態から、可動金型18を固定金型16に向かって移動させる(ステップS22)。そして、可動金型18の位置が予め設定された位置となると(ステップS24でYES)、可動金型18の移動を停止する(ステップS26)。図8は可動金型18が設定位置まで移動した状態を示している。図8から明らかなように、可動入れ子34は最も後退した位置に保持されている。この状態におけるキャビティ22の容積S1は、セパレータの容積Sの100〜400%となるように設定されている。
【0029】
次に、制御装置24は、アクチュエータ32を作動させ、可動入れ子34を固定金型16側に移動させる(図9の状態(ステップS26))。そして、可動入れ子34が設定された位置(第1位置)となるとアクチュエータ32の作動を停止する。このときのキャビティ容積S2は、セパレータの容積Sの0〜200%の範囲に設定されている。
なお、可動入れ子34を第1位置となるまで移動させるときに、第1実施例と同様にキャビティ22内の空気を排気し、キャビティ22内を減圧してもよい。さらに、キャビティ22内へ導電性樹脂を射出する際に、キャビティ22内から空気を排気してもよい。
【0030】
次に、射出装置25からキャビティ22内に導電性樹脂50を射出し、同時に、アクチュエータ32を作動して可動入れ子34を後退させる(ステップ30)。これによって、キャビティ22内へ導電性樹脂が充填されるのに伴って、キャビティ22の容積が拡張される(図10の状態)。可動入れ子34が可動金型18に当接する位置(第2位置)まで移動すると、可動入れ子34の移動が停止する。また、射出装置25から所定量の導電性樹脂50が射出されると、射出装置25からの導電性樹脂50の射出が完了する(図11の状態)。
【0031】
なお、アクチュエータ32は、キャビティ22への導電性樹脂50の充填量(すなわち、射出装置25からの導電性樹脂50の射出量)に基づいて、可動入れ子34を移動させることができる。例えば、導電性樹脂50の充填量に比例して可動入れ子34を後退させ、キャビティ22内への導電性樹脂50の充填完了時に可動入れ子34が可動金型18と当接するように後退速度を決定する。
また、導電性樹脂50の充填量に基づいて、所定のパターンで可動入れ子34を移動させることができる。例えば、導電性樹脂50の充填量が少ないときは可動入れ子34の後退速度を小さくし、導電性樹脂50の充填量が大きくなるにつれて可動入れ子34の後退速度を大きくする。これによって、キャビティ22内の導電性樹脂50に適切に圧力を作用させることができ、キャビティ22の全体に均一に導電性樹脂50を充填することができる。
あるいは、可動入れ子34に作用する圧力を検出し、その圧力変化のパターンが予め設定されたパターンとなるように可動入れ子34の位置を制御するようにしてもよい。このような方法によっても、キャビティ22内に充填される導電性樹脂50に適切に圧力を作用させることができ、キャビティ22の全体に均一に導電性樹脂50を充填することができる。
【0032】
キャビティ22への導電性樹脂50の充填が完了すると、可動金型18を固定金型16に向かって移動させ(図12に示す状態)、可動金型18と固定金型16の間に型締め力を作用させる(ステップS32)。これによって、キャビティ22内に充填された導電性樹脂50が押し固められ、セパレータが成形される。なお、図12に示す状態では、キャビティ22の容積S3はセパレータの容積Sと同一となっている。
【0033】
上述した第2実施例の製造方法によってセパレータを実際に製造した一例について説明する。製造したセパレータは、板厚2mmのA4サイズのセパレータであった。セパレータの材料には、黒鉛(導電フィラー80重量%)に熱可塑性樹脂(液晶ポリマー20重量%)を混練したものを用いた。
計量条件はスクリュウ回転25rpmで背圧5MPaとし、導電性樹脂の射出速度は400mm/sとし、金型(16,18)の温度を200℃とした。射出開始時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面と固定金型16の型合わせ面との間隔が4mmとなるように設定した。射出開始時の可動入れ子34の位置は、可動入れ子34の表面36aと固定金型16の先端面16aとの間隔が2mmとなるように設定した。また、可動入れ子34の後退速度は10mm/sとし、導電性樹脂充填後の型締め力を350tとした。
上述した条件で30ショットを連続して行った。製造されたセパレータは、略均一の板厚となった。製造されたセパレータの板厚のバラツキは2±0.2mmであった。
【0034】
上述した説明から明らかなように、第2実施例の製造方法では、可動入れ子34の位置及び移動速度を任意に制御することができる。このため、より品質が安定したセパレータを製造することができる。例えば、導電性樹脂の射出圧がばらついたりしても可動入れ子34を安定して移動させることができ、キャビティ22の全体へより均一に導電性樹脂を充填することができる。
【0035】
<第3実施例>
本発明の第3実施例に係る製造方法について説明する。図14に示すように、第3実施例では、可動金型18は可動入れ子を備えていない。このため、可動金型18を固定金型16に対して進退動させて、キャビティ22の容積を変更する。また、可動金型18の位置(可動板12の位置)を正確に制御するため、型締装置11の駆動機構13にサーボモータを用いている。これ以外の点は、第1,2実施例と同一の構成を有している。
【0036】
第3実施例の製造手順を図14〜18を参照して説明する。図18は第3実施例の製造手順を示すフローチャートであり、図14〜17はセパレータを製造する各工程における金型(16,18)の状態を模式的に示す図である。なお、図14〜17においても固定金型16に設けた排気孔16bの図示を省略している。
図18に示すように、まず、制御装置24は、固定金型16と可動金型18が開いた状態から、可動金型18を固定金型16に向かって移動させ(ステップS34)、可動金型18の位置が設定位置となると可動金型18の移動を停止させる(ステップS36,S38)。図14は可動金型18が設定位置まで移動した状態を示している。図14から明らかなように、可動金型18は固定金型16と当接する位置まで移動しており、このときのキャビティ22の容積S1はセパレータの容積Sと同一となっている。
【0037】
次に、射出装置25からキャビティ22内に導電性樹脂50を射出し、同時に、型締装置11によって可動金型18を後退させる(ステップ40)。これによって、キャビティ22内へ導電性樹脂50が充填されるのに伴って、キャビティ22の容積が拡張される(図15の状態)。キャビティ22への導電性樹脂50の充填が完了すると、可動金型18の後退も停止する(図16の状態)。
可動金型18の後退量は、後退完了時のキャビティ22の容積S2がセパレータの容積Sの200〜500%の範囲に設定することが好ましい。この範囲に設定することで、導電性樹脂50の射出圧力の上昇を抑えながら、キャビティ22内に充填された導電性樹脂50にキャビティ22の外周方向に向かう力を効率的に付与することができる。
可動金型18の制御方法としては、第2実施例と同様に行うことができる。例えば、射出装置25から射出された導電性樹脂50の量に応じて可動金型18を後退させることができる。また、型締装置11によって発生する型締力を一定に制御することで、キャビティ22に充填される導電性樹脂50の圧力に応じて可動金型18が後退するようにしてもよい。
【0038】
キャビティ22への導電性樹脂50の充填が完了すると、可動金型18を固定金型16に向かって移動させ(図17に示す状態)、可動金型18と固定金型16の間に型締め力を作用させる(ステップS42)。これによって、キャビティ22内に充填された導電性樹脂50が押し固められ、セパレータが成形される。
【0039】
上述した第3実施例の製造方法によってセパレータを実際に製造した一例について説明する。製造したセパレータは、板厚2mmのA4サイズのセパレータであった。セパレータの材料には、黒鉛(導電フィラー80重量%)と熱可塑性樹脂(液晶ポリマー20重量%)を混練したものを用いた。
計量条件はスクリュウ回転25rpmで背圧5MPaとし、導電性樹脂の射出速度は400mm/sとし、金型(16,18)の温度を200℃とした。また、射出開始時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面と固定金型16の型合わせ面とが当接する位置に設定した。導電性樹脂充填完了時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面と固定金型16の型合わせ面との間隔が4mmとなる位置に設定した。可動金型18の後退速度は10mm/sとし、導電性樹脂充填後の型締め力を350tとした。
上述した条件で30ショットを連続して行った。製造されたセパレータは、略均一の板厚となった。製造されたセパレータの板厚のバラツキは2±0.1mmであった。
【0040】
上述した説明から明らかなように、第3実施例の製造方法によると、キャビティ22の容積変化を可動金型18の移動によって実現するため、可動金型18に可動入れ子が用いられていない。このため、可動金型18の構造が簡易となり、金型(16,18)の製造コストを低く抑えることができる。
また、可動金型18を移動させる型締機構11にサーボモータが用いられているため、可動金型18の位置及び移動速度を精度良く制御することができる。これによって、キャビティ22の全体へより均一に導電性樹脂を充填することができ、品質が安定したセパレータを製造することができる。
【0041】
以上、本発明の好適ないくつかの実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
例えば、上述した各実施例においては、キャビティ内に導電性樹脂を充填完了した後に、可動金型を最終型締位置に移動させて、キャビティ内に充填した導電性樹脂を加圧した。しかしながら、本発明はこのような形態に限られず、キャビティへの導電性樹脂の充填完了前のタイミング(例えば、導電性樹脂の充填が90%完了した時点)で可動金型の型閉動作を開始させてもよい。
本実施例においては、可動板位置センサ12aの検出信号に基づいて可動板12の移動や型締力を制御する構成としたが、これに限らず、例えば、駆動機構13のサーボモータに回転検出センサを設けると共にボールナット部に位置センサを設け、回転検出センサと位置センサの検出信号を制御装置24に入力して、可動板12の移動(すなわち、可動型18の開閉・型閉動作)や固定金型16と可動金型18との間に型締力を発生させる構成としてもよい。
なお、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例の射出成形装置の概略構成を示す図。
【図2】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動金型が設定位置まで移動した状態)。
【図3】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動入れ子が固定金型側に移動した状態)。
【図4】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に導電性樹脂を充填している状態)。
【図5】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティへの導電性樹脂の充填が完了した状態)。
【図6】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧している状態)。
【図7】第1実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャート。
【図8】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動金型が設定位置まで移動した状態)。
【図9】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動入れ子が固定金型側に移動した状態)。
【図10】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に導電性樹脂を充填している状態)。
【図11】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティへの導電性樹脂の充填が完了した状態)。
【図12】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧している状態)。
【図13】第2実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャート。
【図14】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動金型が設定位置まで移動した状態)。
【図15】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に導電性樹脂を充填している状態)。
【図16】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティへの導電性樹脂の充填が完了した状態)。
【図17】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧している状態)。
【図18】第3実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0043】
10:射出成形機
11:型締装置
12:可動板
13:駆動機構
14:固定板
16:固定金型
18:可動金型
20:可動入れ子
24:制御装置
25:射出装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用セパレータを製造する方法に関し、詳しくは、燃料電池用セパレータを射出成形によって製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用セパレータは、表面にガス流路(溝)が形成された導電性の薄板である。従来の燃料電池用セパレータの製造方法としては、焼成カーボンの表面に機械加工によって溝を形成する方法、あるいは、熱硬化性樹脂に導電材(例えば、黒鉛等)を添加したものを板状に成形する方法等が知られている。焼成カーボンを機械加工する方法では、機械加工が必要なため手間がかかり、コスト高になるという欠点があった。また、熱硬化性樹脂に導電材を添加したものを成形する方法では、熱硬化性樹脂が固化するまでに長時間(例えば、数分程度)を要するため、生産性が低く大量生産には不向きであった。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂に導電材を添加したものを射出成形することにより、燃料電池用セパレータを製造する方法が検討されている。熱可塑性樹脂を用いることで、固化時間を大幅に短縮でき生産性を向上することが可能となる。しかしながら、熱可塑性樹脂に導電材を多量(60重量%以上)に添加したものは粘性が高く、流動性が極めて悪いため、キャビティ内に樹脂を充填することが難しいという問題がある。かかる問題を解決するために、特許文献1の技術が提案されている。
特許文献1の技術では、固定金型と可動金型が型開した状態から、可動金型を固定金型に向かって移動させる。固定金型と可動金型によって形成されるキャビティの容積が燃料電池用セパレータの容積より所定の割合だけ大きくなる位置に可動金型が到達すると、可動金型の移動を停止する。次いで、射出装置からキャビティ内への導電性樹脂の射出を開始する。導電性樹脂がキャビティ内に所定割合まで充填されると、導電性樹脂の射出を継続しつつ可動金型を固定金型に向かって移動させて型閉する。
この技術では、導電性樹脂の充填開始時にはキャビティが大きくされているため、キャビティ内に導電性樹脂を容易に充填することができる。また、キャビティ内に導電性樹脂がある程度充填されると可動金型の型締めを再開し、キャビティ内に充填された導電性樹脂を圧締するため、キャビティの末端まで導電性樹脂を流動させることができるとされている。
【特許文献1】特開2004−160772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの研究によると、上述した従来の技術では、キャビティの外周部(ゲートから離れた位置)の樹脂密度がキャビティの中心付近(ゲート近傍)の樹脂密度より高くなり易く、キャビティ全体に樹脂を均一に充填することが困難であることが判明した。特に、導電材の含有率を増大すると(例えば、導電材の含有率を80重量%以上とすると)、上述した傾向が顕著となり、製造された燃料電池用セパレータの一部に欠陥(ショート)が生じる場合もあった。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、射出成形により燃料電池用セパレータを製造する製造方法において、キャビティ全体に樹脂を均一に充填することができ、これによって、良好な品質の燃料電池用セパレータを製造することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
キャビティの中心付近の樹脂密度よりキャビティの外周部の樹脂密度が高くなる原因について、本発明者らが検討したところ、以下の理由が推測された。
すなわち、導電材を多量に含んだ導電性樹脂は、極めて粘性が高く流動性が悪い。このため、このような導電性樹脂をキャビティ内に充填するためには、導電性樹脂を高速でキャビティ内に射出しなければならない。ゲートからキャビティ内に高速で射出された導電性樹脂は、粘性が高いためその流動挙動がいわゆるファウンテンフローとはならず、ゲートから棒状に押し出されてキャビティの内壁面(ゲートと対向する面)に衝突し、砕けて粉状になると考えらえる。
上述した従来の技術では、キャビティの容積を大きくした状態で、キャビティ内への導電性樹脂の充填を開始する。このため、キャビティの内壁面に高速で衝突して粉状となった導電性樹脂は、キャビティの外周部に飛散し外周部に集中的に充填される一方で、キャビティの中心であるゲート近傍には充填されない。これによって、キャビティの中心付近には少量の導電性樹脂しか充填されず、キャビティの外周部には多量の導電性樹脂が充填される。キャビティ内に充填された導電性樹脂の不均一性が大きくなると、その後に可動金型を型閉して圧力を加えても、導電性樹脂の粘性の高さから導電性樹脂の流動は少なく、導電性樹脂の充填量の不均一性が解消されず、キャビティ全体に樹脂が均一に充填されないものと推測される。
【0007】
そこで、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法では、キャビティの容積を拡張させながらキャビティ内に導電性樹脂を充填する充填工程と、キャビティ内への導電性樹脂の充填完了前または充填完了後の所定のタイミングで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一として、キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧する加圧工程と、を含んでいる。
この製造方法では、キャビティの容積を拡張させながら導電性樹脂を充填する。すなわち、導電性樹脂の充填開始時はキャビティの容積が小さく、キャビティへの導電性樹脂の充填量が増加するのにともなってキャビティの容積が大きくされる。これにより、キャビティ全体に導電性樹脂を均一(すなわち、従来技術と比較して均一)に充填することができる。そして、キャビティ内に充填された導電性樹脂は、その後の加圧工程によって押し固められ、良好な品質の燃料電池用セパレータとなる。
【0008】
キャビティの容積を拡張しながら導電性樹脂を充填することで、キャビティ全体に均一に導電性樹脂が充填できる推測理由を下記に示す。ただし、本発明の技術はその推測理由によって制約されるものではなく、あくまで特許請求の範囲に記載されている客観的要件に従う。
キャビティの容積が小さくされた状態でキャビティ内に導電性樹脂を射出すると、射出された導電性樹脂がキャビティ内壁面(ゲートと対向する面)に衝突して粉状となっても、その粉状となったものが周囲に飛散することが抑制される。このため、ゲートの近傍にも導電性樹脂が充填される。キャビティの容積を拡大しながら導電性樹脂を充填するので、ゲート近傍に導電性樹脂が充填されると、樹脂の充填とキャビティの拡大が継続し、その後にキャビティ内に射出される樹脂は、ゲート近傍に充填された導電性樹脂に衝突し、その樹脂をキャビティの外周部に押し出してゆく。これによって、キャビティの中心(ゲート近傍)からキャビティの外周部まで均一に樹脂を充填することができるものと考えられる。なお、導電性樹脂が充填されるのに応じてキャビティの容積が大きくなるため、射出圧力の急激な増加が抑制され、キャビティへ必要な量の導電性樹脂を充填することができる。
【0009】
上述した本発明の製造方法は、固定金型と、固定金型に対して進退動可能とされた可動金型を用いて実施することができる。この場合に、充填工程においては、固定金型に対して可動金型を離間する方向に移動させることでキャビティを拡張する。また、充填工程においてキャビティの容積がセパレータの容積より大きくされている場合は、加圧工程において、固定金型に対して可動金型を近接する方向に移動させることで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一とすることができる。
このような構成によると、固定金型に対して可動金型を進退動させることでキャビティの容積を変化させるため、金型の構造を簡易にすることができる。
【0010】
上述した本発明の製造方法では、充填工程の前または充填工程の間に、キャビティ内の空気を金型外に排気してキャビティ内を減圧することが好ましい。
導電性樹脂の充填前にキャビティ内を減圧することで、キャビティ内へ充填された樹脂中に気泡が混入することが防止される。また、導電性樹脂を充填する最中にキャビティからガスを排気することで、導電性樹脂を充填する際に発生するガスを金型外に排出でき、キャビティ内に充填された樹脂中に気泡が混入することが防止される。
【0011】
上述した本発明の製造方法は、導電性樹脂が、黒鉛を80重量%以上含んだ熱可塑性樹脂に有効である。このような樹脂は、流動性が極めて低いため、従来の射出成形方法では良好な品質の燃料電池用セパレータを製造することが困難であるが、本発明の製造方法を用いることで、良好な品質の燃料電池用セパレータを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
下記に詳細に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(形態1)射出成形装置は、型締装置と、射出装置を有する。型締装置には、金型が取付けられる。射出装置は、金型内のキャビティに導電性樹脂を射出する。
(形態2)充填工程においては、ゲートに対向するキャビティ面をゲートに対して離間する方向に移動させることで、キャビティの体積を拡張させる。加圧工程においては、ゲートに対向するキャビティ面をゲートに対して近接する方向に移動させることで、キャビティの体積を縮小させる。
(形態3)充填工程においては、キャビティ内の樹脂圧力が略一定となるように、ゲートに対向するキャビティ面を移動させる。
(形態4)充填工程においては、キャビティ内に充填される導電性樹脂の充填量に応じて、ゲートに対向するキャビティ面を移動させる。
(形態5)金型は、キャビティ内に配置された可動入れ子を有する。可動入れ子には、ゲートに対向するキャビティ面が形成されている。可動入れ子は、キャビティ内を移動可能とされており、ゲート近傍に設定された第1位置とゲートから所定の距離だけ隔てた位置に設定された第2位置との間を移動する。
(形態6)金型は、固定金型と、固定金型に対して進退動する可動金型を有している。可動金型には、ゲートに対向するキャビティ面が形成されている。充填工程においては、固定金型から離間する方向に可動金型を移動させることでキャビティの容積を拡張する。加圧工程においては、固定金型に近接する方向に可動金型を移動させることでキャビティの容積を縮小する。
(形態7)充填開始時のキャビティの容積は、燃料電池用セパレータの体積の0〜200%に設定されることが好ましく、より好ましくは150〜200%に設定される。150〜200%の範囲に設定することで、導電性樹脂の飛散を防止しつつ、充填開始時の射出圧力が大きくなり過ぎることを防止することができる。
(形態8)キャビティの拡張完了時の体積は、燃料電池用セパレータの体積の200〜500%に設定されることが好ましく、より好ましくは300〜400%に設定される。300〜400%に設定することで、充填時の射出圧力の急激な増加を抑制しつつ、キャビティ内に充填された導電性樹脂に適度な圧力を作用させて、キャビティの外周部に導電性樹脂を充填することができる。
(形態9)射出装置から射出される導電性樹脂の射出速度は300〜400mm/sである。
(形態10)導電性樹脂は、黒鉛を80重量%以上含んだ熱可塑性樹脂である。
【実施例】
【0013】
<第1実施例>
本発明の第1実施例に係る燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。まず、本実施例の製造方法によって製造される燃料電池用セパレータ(以下、単にセパレータという)について、簡単に説明しておく。
本実施例のセパレータは、自動車に搭載される燃料電池に用いられる。本実施例のセパレータは、薄肉(例えば、板厚2mm)の平板であり、その表面積は数100cm2以上(例えば、A4サイズ)とされている。セパレータの表裏両面には、酸素ガスと水素ガスを流通させる多数のガス流路(溝)が形成されている。燃料電池は、上記のセパレータの他、電解質膜、触媒層及びガス拡散層を積層したものを1単位とし、これら1単位を複数単位積み重ねて構成されている。このセパレータは、高い導電性(体積抵抗20mmΩ・cm以下)を有することが好ましく、黒鉛(カーボンフィラー)を多量(例えば、80重量%以上)に含んだ熱可塑性樹脂で成形されることが好ましい。
【0014】
次に、上述したセパレータを製造するための射出成形機10について説明する。図1は射出成形機10の概略構成を示す図面である。図1に示すように、射出成形機10は、型締装置11と、射出装置25を備えている。
【0015】
型締装置11は、固定金型16が取付けられる固定板14と、可動金型18が取付けられる可動板12と、可動板12を固定板14に対して進退動させる駆動機構13を備えている。固定板14には、射出装置25から射出される樹脂を固定金型16に導くための貫通孔14aが形成されている。駆動機構13は、可動板12を進退動させる他、固定金型16と可動金型18との間に型締め力を発生させる。駆動機構13には、油圧シリンダによって可動板12を駆動する油圧式、サーボモータとボールネジ及びボールナット等によって可動板12を駆動する機械式、油圧式と機械式を組み合わせたものを用いることができる。
【0016】
射出装置25は、ノズル30と、ノズル30内に配置されたスクリュウ28と、スクリュウ28を回転往復動させる駆動装置26を備えている。ノズル30は、ノズル30内の導電性樹脂を加熱するヒータ(図示省略)を有しており、ノズル30内の導電性樹脂が冷却・固化しないようになっている。駆動装置26がスクリュウ28を回転駆動すると、ノズル30内の導電性樹脂が可塑化・混練される。ノズル30内で混練された樹脂は、スクリュウ28が前進駆動されることで、ノズル30の先端から外部に押し出される。ノズル30から押し出された樹脂は、固定金型16のスプル16cを通ってゲート16dよりキャビティ22内に射出される。
【0017】
次に、上述した射出成形機10に取付けられる金型について説明する。金型は、固定板14に取付けられる固定金型16と、可動板12に取付けられる可動金型18によって構成されている。
可動金型18には、固定金型16と当接する型合わせ面18bに凹部18aが形成されている。凹部18a内には可動入れ子20が収容されている。可動入れ子20は、セパレータに対応した形状をしており、その表面20aには、セパレータの表面に形成される溝に対応する溝が設けられている。可動入れ子20は、凹部18a内を摺動可能となっており、(1)可動入れ子20の裏面20bが凹部18aの底面と当接する位置(図1に示す位置)と(2)可動入れ子の表面20aが固定金型16と当接する位置(図3に示す位置)との間を移動することができる。
【0018】
固定金型16には、可動金型18と当接する型合わせ面16fに凸部16eが形成されている。可動金型18が固定金型16に向かって移動すると、固定金型16の凸部16eが可動金型18の凹部18aに嵌まる。固定金型16の凸部16eが可動金型18の凹部18aに嵌まると、可動金型18と固定金型16の間にキャビティ22が形成されるようになっている。凸部16eの先端面16aは、セパレータに対応した形状に形成されており、セパレータの裏面に形成される溝に対応した溝が設けられている。
固定金型16には、凸部16eの先端面16aから固定板14側の面に向かって貫通するスプル16cと、先端面16aから固定金型16の側面とを連通する排気孔16bが形成されている。スプル16cの固定板14側の端部には、固定板14に設けられた貫通孔14aが接続されている。したがって、射出装置25から射出された樹脂は、貫通孔14a及びスプル16cを通って、ゲート16dよりキャビティ22内に充填される。排気孔16bには、図示しない真空減圧機構が接続されている。真空減圧機構が動作すると、キャビティ22内の空気がキャビティ外に排気され、キャビティ22内が減圧される。
【0019】
次に、上述した射出成形装置によってセパレータを製造する手順を図2〜7を参照して説明する。図7はセパレータを製造する手順を示すフローチャートであり、図2〜6はセパレータを製造する各工程における金型(16,18)の状態を模式的に示す図である。なお、図2〜6においては固定金型16に設けた排気孔16bの図示を省略している。
図7に示すように、まず、制御装置24は、固定金型16と可動金型18が開いた状態から、駆動機構13を駆動して可動金型18を固定金型16に向かって移動させる(ステップS10)。可動金型18が移動を開始すると、可動板12(すなわち、可動金型18)の位置は可動板位置センサ12aによって検出され、その検出信号が制御装置24に入力する。
制御装置24は、可動板位置センサ12aから入力する検出信号に基づいて、可動金型18の位置が予め設定された位置となるか否かを判断する(ステップS12)。可動金型18の位置が設定位置となっていない場合(ステップS12でNO)、制御装置24は可動金型18の移動を継続する。一方、可動金型18の位置が設定位置となると(ステップS12でYES)、制御装置24は可動金型の移動を停止する(ステップS14)。
【0020】
図2には、ステップS14により可動金型18が移動を停止したときの固定金型16と可動金型18の状態が示されている。この状態では、固定金型16の凸部16eが可動金型18の凹部18aに嵌っており、固定金型16と可動入れ子20との間にキャビティ22が形成されている。また、可動入れ子20の裏面20bと可動金型18の凹部18aの底面18cは当接している。
この状態におけるキャビティ22の容積S1は、製造するセパレータの容積Sよりも大きくされている。すなわち、キャビティ容積S1がセパレータの容積Sの100〜400%となるように設定されている。例えば、セパレータの板厚が2mmであれば、固定金型16の先端面16aから可動入れ子20の表面20aまでの距離が2〜8mmの範囲で設定される。
【0021】
次に、制御装置24は、真空減圧機構を作動させて、キャビティ22内の空気を排気孔16bより排気する(ステップS16)。このため、キャビティ22内が減圧され、これによって可動入れ子20が固定金型16側に移動する。キャビティ22内の真空度が設定された真空度となると、真空減圧機構によるキャビティ22内の空気の排気を停止する。真空減圧機構が停止した時点における可動入れ子20の位置は、可動金型18と可動入れ子20とのクリアランスやキャビティ22の真空度によって、予め設定された位置となるように調整されている。
図3には、真空減圧機構によるキャビティ22内の排気が完了したときの状態が示されている。この状態では、可動入れ子20の表面20aと固定金型16の先端面16aが当接しており、キャビティ22の容積が0とされている。なお、キャビティ22内の排気が完了した時点のキャビティ容積S2は、セパレータの容積Sの0〜100%の範囲で設定されている。例えば、セパレータの板厚が2mmであれば、固定金型16の先端面16aから可動入れ子20の表面20aまでの距離が0〜2mmの範囲で設定されている。
【0022】
次に、制御装置24は、射出装置25を駆動して、ノズル30から導電性樹脂50を高速で射出する(ステップS18)。ノズル30から射出された導電性樹脂50は、固定板14の貫通孔14a及び固定金型16のスプル16cを通って、ゲート16dよりキャビティ22内に射出される。キャビティ22内に導電性樹脂50が射出されると、射出された導電性樹脂50の圧力により可動入れ子20が後退する(可動板12側に移動する)。キャビティ22内に射出された導電性樹脂50から可動入れ子20に作用する圧力は、キャビティ22内に充填された導電性樹脂の量に応じて上昇し、これによって、可動入れ子20が徐々に後退する(図4に示す状態)。そして、可動入れ子20は、可動入れ子20の裏面20bが凹部18aの底面18cと当接するまで移動する。
なお、射出装置25は、射出された導電性樹脂50の射出量が所定量(セパレータを成形するだけの量)となると、導電性樹脂50の射出を停止する。これによって、キャビティ22内に所定量の導電性樹脂50が充填される(図5に示す状態)。
【0023】
上述したステップS18によってキャビティ22内に導電性樹脂50を充填するときの導電性樹脂の挙動は、以下のようであると推測される。
すなわち、キャビティ22に導電性樹脂50の充填を開始した時点では、可動入れ子20が固定金型16側に移動した状態となっており、キャビティ22の容積が小さくされている。このため、ゲート16dからキャビティ22内に射出された導電性樹脂50が可動入れ子20の表面20aに衝突しても、その導電性樹脂50が粉状となって周囲に飛散することが抑制され、導電性樹脂50はゲートの近傍にも充填されてゆく。導電性樹脂50の充填が開始された後に、ゲート16dからキャビティ22内に射出される導電性樹脂50は、ゲート近傍に充填された導電性樹脂50に衝突し、その導電性樹脂50をキャビティの外周側に押し出してゆく。これによって、導電性樹脂50がゲート近傍から外周部に向かって押し出され(流れ)、キャビティ22の外周部にまで導電性樹脂50が充填されてゆく。キャビティ22内に充填される導電性樹脂50はキャビティ22の内壁面等に衝突して粉状となるため、キャビティ22内にはポーラスな状態で導電性樹脂50が充填されてゆくものと思われる。
なお、キャビティ22に導電性樹脂50が充填されるのに伴って、キャビティ22内の導電性樹脂50の圧力が上昇してゆくが、その導電性樹脂50の圧力増加に応じて可動入れ子20が後退するため、導電性樹脂50の圧力が急激に上昇することが抑制される。このため、射出装置25からキャビティ22内に必要な量の導電性樹脂50を充填することができる。
【0024】
キャビティ22への導電性樹脂の充填が完了すると、制御装置24は、駆動機構13を駆動して可動金型18を固定金型16に向かって移動させる。これによって、可動金型18の型合わせ面18bと固定金型20の型合わせ面16fが当接し(すなわち、可動金型18が最終型締位置に移動し)、可動金型18と固定金型16の間に型締め力が作用する(ステップS20)。可動金型18が最終型締位置に移動した状態では、キャビティ22の容積S3はセパレータの容積Sと同一となっている。ステップS20によってキャビティ22内にポーラス状に充填された導電性樹脂50が押し固められ、セパレータが成形される。上述したように、ステップS18の終了時点では、キャビティ22の全体に均一に導電性樹脂50が充填されているため、ステップS20によって成形されたセパレータも樹脂密度が均一なものとなっている。
次に、キャビティ22内の導電性樹脂を冷却し固化する。そして、可動金型18を固定金型16から離れる方向に移動させて型を開き、金型(16,18)内からセパレータを取出す。
【0025】
上述した射出成形装置を用いてセパレータを実際に製造した一例について説明する。製造したセパレータは、板厚2mmのA4サイズのセパレータであった。セパレータの材料には、黒鉛(導電フィラー80重量%)に熱可塑性樹脂(液晶ポリマー20重量%)を混練したものを用いた。
計量条件はスクリュウ回転25rpmで背圧5MPaとし、導電性樹脂の射出速度は400mm/sとし、金型(16,18)の温度を200℃とした。射出開始時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面18bと固定金型16の型合わせ面16fとの間隔が4mmとなるように設定した(すなわち、図2に示すときのキャビティ22の容積S1をセパレータの容積Sの300%とした)。ステップS16の終了時のキャビティ22の真空度を5Torrとし、導電性樹脂充填後の型締め力を350tとした。
上述した条件で30ショットを連続して行った。製造されたセパレータは、製品の一部に大きな欠陥等もなく、略均一の板厚のものとなった。製造されたセパレータの板厚のバラツキは2±0.3mmであった。
【0026】
上述した説明から明らかなように、本実施例の製造方法によると、導電材を多量に含んだ熱可塑性樹脂であっても、キャビティ22の全体に均一に充填することができ、良好な品質のセパレータを製造することができる。
また、上述した実施例では、キャビティ22に導電性樹脂50を充填する前にキャビティ22から空気が排気されているため、キャビティ22内に充填された樹脂に空気が混入することが抑制される。なお、キャビティ22に導電性樹脂50を充填する際もキャビティ22から空気を排気するようにしてもよい。これによって、導電性樹脂50を充填する際に発生するガスをキャビティ22から外部に排気することができる。
【0027】
<第2実施例>
本発明の第2実施例に係る製造方法について説明する。第2実施例は、セパレータの製造に用いる金型が第1実施例と相違し、それに伴い射出成形装置による成形手順の一部が第1実施例と異なる。ただし、射出成形装置の各部(型締装置、射出装置)の構造は第1実施例と同一である。以下、第1実施例と異なるところを詳細に説明する。
図8に示すように、第2実施例の金型も、固定金型16と可動金型18を備えている。第2実施例の可動金型18は、第1実施例と異なり、可動入れ子34がアクチュエータ32によって駆動される点で異なる。アクチュエータ32が作動すると、可動入れ子34が可動金型18の凹部内を摺動する。アクチュエータ32によって可動入れ子34の動作が制御されるため、可動入れ子34の移動速度や、可動入れ子34の表面36aと固定金型16の先端面16aとの距離を任意に調整することができる。アクチュエータ32には、例えば、油圧シリンダを用いることができる。なお、固定金型16については第1実施例と同一である。
【0028】
次に、第2実施例の製造手順を図8〜13を参照して説明する。図13は第2実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャートであり、図8〜12はセパレータを製造する各工程における金型(16,18)の状態を模式的に示す図である。なお、図8〜12においても固定金型16に設けた排気孔16bの図示を省略している。
図13に示すように、まず、制御装置24は、固定金型16と可動金型18が開いた状態から、可動金型18を固定金型16に向かって移動させる(ステップS22)。そして、可動金型18の位置が予め設定された位置となると(ステップS24でYES)、可動金型18の移動を停止する(ステップS26)。図8は可動金型18が設定位置まで移動した状態を示している。図8から明らかなように、可動入れ子34は最も後退した位置に保持されている。この状態におけるキャビティ22の容積S1は、セパレータの容積Sの100〜400%となるように設定されている。
【0029】
次に、制御装置24は、アクチュエータ32を作動させ、可動入れ子34を固定金型16側に移動させる(図9の状態(ステップS26))。そして、可動入れ子34が設定された位置(第1位置)となるとアクチュエータ32の作動を停止する。このときのキャビティ容積S2は、セパレータの容積Sの0〜200%の範囲に設定されている。
なお、可動入れ子34を第1位置となるまで移動させるときに、第1実施例と同様にキャビティ22内の空気を排気し、キャビティ22内を減圧してもよい。さらに、キャビティ22内へ導電性樹脂を射出する際に、キャビティ22内から空気を排気してもよい。
【0030】
次に、射出装置25からキャビティ22内に導電性樹脂50を射出し、同時に、アクチュエータ32を作動して可動入れ子34を後退させる(ステップ30)。これによって、キャビティ22内へ導電性樹脂が充填されるのに伴って、キャビティ22の容積が拡張される(図10の状態)。可動入れ子34が可動金型18に当接する位置(第2位置)まで移動すると、可動入れ子34の移動が停止する。また、射出装置25から所定量の導電性樹脂50が射出されると、射出装置25からの導電性樹脂50の射出が完了する(図11の状態)。
【0031】
なお、アクチュエータ32は、キャビティ22への導電性樹脂50の充填量(すなわち、射出装置25からの導電性樹脂50の射出量)に基づいて、可動入れ子34を移動させることができる。例えば、導電性樹脂50の充填量に比例して可動入れ子34を後退させ、キャビティ22内への導電性樹脂50の充填完了時に可動入れ子34が可動金型18と当接するように後退速度を決定する。
また、導電性樹脂50の充填量に基づいて、所定のパターンで可動入れ子34を移動させることができる。例えば、導電性樹脂50の充填量が少ないときは可動入れ子34の後退速度を小さくし、導電性樹脂50の充填量が大きくなるにつれて可動入れ子34の後退速度を大きくする。これによって、キャビティ22内の導電性樹脂50に適切に圧力を作用させることができ、キャビティ22の全体に均一に導電性樹脂50を充填することができる。
あるいは、可動入れ子34に作用する圧力を検出し、その圧力変化のパターンが予め設定されたパターンとなるように可動入れ子34の位置を制御するようにしてもよい。このような方法によっても、キャビティ22内に充填される導電性樹脂50に適切に圧力を作用させることができ、キャビティ22の全体に均一に導電性樹脂50を充填することができる。
【0032】
キャビティ22への導電性樹脂50の充填が完了すると、可動金型18を固定金型16に向かって移動させ(図12に示す状態)、可動金型18と固定金型16の間に型締め力を作用させる(ステップS32)。これによって、キャビティ22内に充填された導電性樹脂50が押し固められ、セパレータが成形される。なお、図12に示す状態では、キャビティ22の容積S3はセパレータの容積Sと同一となっている。
【0033】
上述した第2実施例の製造方法によってセパレータを実際に製造した一例について説明する。製造したセパレータは、板厚2mmのA4サイズのセパレータであった。セパレータの材料には、黒鉛(導電フィラー80重量%)に熱可塑性樹脂(液晶ポリマー20重量%)を混練したものを用いた。
計量条件はスクリュウ回転25rpmで背圧5MPaとし、導電性樹脂の射出速度は400mm/sとし、金型(16,18)の温度を200℃とした。射出開始時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面と固定金型16の型合わせ面との間隔が4mmとなるように設定した。射出開始時の可動入れ子34の位置は、可動入れ子34の表面36aと固定金型16の先端面16aとの間隔が2mmとなるように設定した。また、可動入れ子34の後退速度は10mm/sとし、導電性樹脂充填後の型締め力を350tとした。
上述した条件で30ショットを連続して行った。製造されたセパレータは、略均一の板厚となった。製造されたセパレータの板厚のバラツキは2±0.2mmであった。
【0034】
上述した説明から明らかなように、第2実施例の製造方法では、可動入れ子34の位置及び移動速度を任意に制御することができる。このため、より品質が安定したセパレータを製造することができる。例えば、導電性樹脂の射出圧がばらついたりしても可動入れ子34を安定して移動させることができ、キャビティ22の全体へより均一に導電性樹脂を充填することができる。
【0035】
<第3実施例>
本発明の第3実施例に係る製造方法について説明する。図14に示すように、第3実施例では、可動金型18は可動入れ子を備えていない。このため、可動金型18を固定金型16に対して進退動させて、キャビティ22の容積を変更する。また、可動金型18の位置(可動板12の位置)を正確に制御するため、型締装置11の駆動機構13にサーボモータを用いている。これ以外の点は、第1,2実施例と同一の構成を有している。
【0036】
第3実施例の製造手順を図14〜18を参照して説明する。図18は第3実施例の製造手順を示すフローチャートであり、図14〜17はセパレータを製造する各工程における金型(16,18)の状態を模式的に示す図である。なお、図14〜17においても固定金型16に設けた排気孔16bの図示を省略している。
図18に示すように、まず、制御装置24は、固定金型16と可動金型18が開いた状態から、可動金型18を固定金型16に向かって移動させ(ステップS34)、可動金型18の位置が設定位置となると可動金型18の移動を停止させる(ステップS36,S38)。図14は可動金型18が設定位置まで移動した状態を示している。図14から明らかなように、可動金型18は固定金型16と当接する位置まで移動しており、このときのキャビティ22の容積S1はセパレータの容積Sと同一となっている。
【0037】
次に、射出装置25からキャビティ22内に導電性樹脂50を射出し、同時に、型締装置11によって可動金型18を後退させる(ステップ40)。これによって、キャビティ22内へ導電性樹脂50が充填されるのに伴って、キャビティ22の容積が拡張される(図15の状態)。キャビティ22への導電性樹脂50の充填が完了すると、可動金型18の後退も停止する(図16の状態)。
可動金型18の後退量は、後退完了時のキャビティ22の容積S2がセパレータの容積Sの200〜500%の範囲に設定することが好ましい。この範囲に設定することで、導電性樹脂50の射出圧力の上昇を抑えながら、キャビティ22内に充填された導電性樹脂50にキャビティ22の外周方向に向かう力を効率的に付与することができる。
可動金型18の制御方法としては、第2実施例と同様に行うことができる。例えば、射出装置25から射出された導電性樹脂50の量に応じて可動金型18を後退させることができる。また、型締装置11によって発生する型締力を一定に制御することで、キャビティ22に充填される導電性樹脂50の圧力に応じて可動金型18が後退するようにしてもよい。
【0038】
キャビティ22への導電性樹脂50の充填が完了すると、可動金型18を固定金型16に向かって移動させ(図17に示す状態)、可動金型18と固定金型16の間に型締め力を作用させる(ステップS42)。これによって、キャビティ22内に充填された導電性樹脂50が押し固められ、セパレータが成形される。
【0039】
上述した第3実施例の製造方法によってセパレータを実際に製造した一例について説明する。製造したセパレータは、板厚2mmのA4サイズのセパレータであった。セパレータの材料には、黒鉛(導電フィラー80重量%)と熱可塑性樹脂(液晶ポリマー20重量%)を混練したものを用いた。
計量条件はスクリュウ回転25rpmで背圧5MPaとし、導電性樹脂の射出速度は400mm/sとし、金型(16,18)の温度を200℃とした。また、射出開始時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面と固定金型16の型合わせ面とが当接する位置に設定した。導電性樹脂充填完了時の可動金型18の位置は、可動金型18の型合わせ面と固定金型16の型合わせ面との間隔が4mmとなる位置に設定した。可動金型18の後退速度は10mm/sとし、導電性樹脂充填後の型締め力を350tとした。
上述した条件で30ショットを連続して行った。製造されたセパレータは、略均一の板厚となった。製造されたセパレータの板厚のバラツキは2±0.1mmであった。
【0040】
上述した説明から明らかなように、第3実施例の製造方法によると、キャビティ22の容積変化を可動金型18の移動によって実現するため、可動金型18に可動入れ子が用いられていない。このため、可動金型18の構造が簡易となり、金型(16,18)の製造コストを低く抑えることができる。
また、可動金型18を移動させる型締機構11にサーボモータが用いられているため、可動金型18の位置及び移動速度を精度良く制御することができる。これによって、キャビティ22の全体へより均一に導電性樹脂を充填することができ、品質が安定したセパレータを製造することができる。
【0041】
以上、本発明の好適ないくつかの実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
例えば、上述した各実施例においては、キャビティ内に導電性樹脂を充填完了した後に、可動金型を最終型締位置に移動させて、キャビティ内に充填した導電性樹脂を加圧した。しかしながら、本発明はこのような形態に限られず、キャビティへの導電性樹脂の充填完了前のタイミング(例えば、導電性樹脂の充填が90%完了した時点)で可動金型の型閉動作を開始させてもよい。
本実施例においては、可動板位置センサ12aの検出信号に基づいて可動板12の移動や型締力を制御する構成としたが、これに限らず、例えば、駆動機構13のサーボモータに回転検出センサを設けると共にボールナット部に位置センサを設け、回転検出センサと位置センサの検出信号を制御装置24に入力して、可動板12の移動(すなわち、可動型18の開閉・型閉動作)や固定金型16と可動金型18との間に型締力を発生させる構成としてもよい。
なお、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施例の射出成形装置の概略構成を示す図。
【図2】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動金型が設定位置まで移動した状態)。
【図3】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動入れ子が固定金型側に移動した状態)。
【図4】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に導電性樹脂を充填している状態)。
【図5】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティへの導電性樹脂の充填が完了した状態)。
【図6】セパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧している状態)。
【図7】第1実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャート。
【図8】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動金型が設定位置まで移動した状態)。
【図9】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動入れ子が固定金型側に移動した状態)。
【図10】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に導電性樹脂を充填している状態)。
【図11】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティへの導電性樹脂の充填が完了した状態)。
【図12】第2実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧している状態)。
【図13】第2実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャート。
【図14】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(可動金型が設定位置まで移動した状態)。
【図15】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に導電性樹脂を充填している状態)。
【図16】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティへの導電性樹脂の充填が完了した状態)。
【図17】第3実施例のセパレータを製造する各工程における金型の状態を模式的に示す図(キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧している状態)。
【図18】第3実施例のセパレータを製造する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0043】
10:射出成形機
11:型締装置
12:可動板
13:駆動機構
14:固定板
16:固定金型
18:可動金型
20:可動入れ子
24:制御装置
25:射出装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内のキャビティに導電性樹脂を射出して固化することで燃料電池用セパレータを製造する方法であって、
キャビティの容積を拡張させながらキャビティ内に導電性樹脂を充填する充填工程と、
キャビティ内への導電性樹脂の充填完了前または充填完了後の所定のタイミングで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一として、キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧する加圧工程と、を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
金型は、固定金型と、固定金型に対して進退動可能とされた可動金型とを有しており、充填工程においては、固定金型に対して可動金型を離間する方向に移動させることでキャビティを拡張することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
充填工程の前または充填工程の間に、キャビティ内の空気を金型外に排気してキャビティ内を減圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
導電性樹脂が、黒鉛を80重量%以上含んだ熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項1】
金型内のキャビティに導電性樹脂を射出して固化することで燃料電池用セパレータを製造する方法であって、
キャビティの容積を拡張させながらキャビティ内に導電性樹脂を充填する充填工程と、
キャビティ内への導電性樹脂の充填完了前または充填完了後の所定のタイミングで、キャビティの容積をセパレータの容積と同一として、キャビティ内に充填された導電性樹脂を加圧する加圧工程と、を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
金型は、固定金型と、固定金型に対して進退動可能とされた可動金型とを有しており、充填工程においては、固定金型に対して可動金型を離間する方向に移動させることでキャビティを拡張することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項3】
充填工程の前または充填工程の間に、キャビティ内の空気を金型外に排気してキャビティ内を減圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項4】
導電性樹脂が、黒鉛を80重量%以上含んだ熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−184198(P2007−184198A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2685(P2006−2685)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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