説明

燃料電池自動車

【課題】燃料電池自動車において、側面衝突時における燃料電池の損傷を抑制する。
【解決手段】燃料電池自動車10は、一対のサイドメンバ54と、このサイドメンバ54を連結する一対のクロスメンバ56と、各サイドメンバ54の車幅方向の外側に配置され、車両前後方向に延在する一対のロッカメンバ58と、一対のサイドメンバ54と一対のクロスメンバ56との間に配置され、一対のサイドメンバ54に支持される燃料電池ユニット52と、サイドメンバ54とロッカメンバ58の間に配置され、これらを連結するエネルギ伝達抑制部材64とを有する。この部材64が、側面衝突時のエネルギが燃料電池ユニット52に伝達されることを抑制するので、燃料電池ユニット52の損傷を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池自動車に関し、特に燃料電池を含む燃料電池ユニットを搭載する車体構造の改造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、反応ガスである燃料ガス(水素)と酸化ガス(酸素)を電気化学反応させて発電を行う装置である。近年、2つの電極の間の電解質に固体高分子を用いた固体高分子型の燃料電池が開発され、その優れた車載性から、自動車等の車両用の電力供給源として期待されている。
【0003】
燃料電池を搭載する従来の車体構造の一例について、図5を用いて説明する。自動車110は、この自動車110の左右両側に配置され、車両前後方向(紙面の上下方向)に延在する一対のサイドメンバ112と、車両前後方向に間隔を空けて配置され、車幅方向(紙面の左右方向)に延在して一対のサイドメンバ112を連結する一対のクロスメンバ114とを有する。
【0004】
また、自動車110は、各サイドメンバ112の車幅方向の外側に配置され、車両前後方向に延在する一対のロッカメンバ116と、車両の左右両側のサイドメンバ112とロッカメンバ116の間に、クロスメンバ114を車幅方向に延ばした位置にそれぞれ配置され、サイドメンバ112とロッカメンバ116を連結するサブクロスメンバ118とを有する。
【0005】
このように構成される自動車110の車体構造において、燃料電池を含む燃料電池ユニット120は、一対のサイドメンバ112と一対のクロスメンバ116との間に配置される。そして、燃料電池ユニット120は、支持部材122を介して一対のサイドメンバ112に支持されて自動車110に搭載される。
【0006】
下記特許文献1には、車室のフロントシートの間に、上方に膨出して形成されたセンターコンソール内に燃料電池スタックが配置された燃料電池自動車が記載されている。この燃料電池自動車は、センターコンソールの側壁同士を接続するクロス部材を有する。このクロス部材により、側面衝突時に、一方のフロントシートに作用する衝撃力が、そのクロス部材を介して他方のフロントシートに伝達されるので、センターコンソール内に配置される燃料電池スタックを衝撃から保護することができる。
【0007】
下記特許文献2には、一対のサイドメンバの間に配置された燃料電池スタックが、フォースリミッタ付きマウントによりサイドメンバに取り付けられる燃料電池スタック車両搭載構造が記載されている。この構成によれば、車両衝突時に、加速度が所定値に達するとフォースリミッタが作動して、燃料電池スタックが衝突時の慣性によりスライドするので、燃料電池スタックと、車内に侵入してくる侵入物との激突を防止することができる。
【0008】
下記特許文献3には、車幅方向に延在するクロスメンバを挟んで車両前後方向に、燃料電池とその補機とが配置された燃料電池の車載構造が記載されている。この車載構造によれば、燃料電池とその補機とは、クロスメンバに対して所定の間隔を空けて配置されている。このように間隔が形成されていることにより、側面衝突時の衝撃によりクロスメンバが車幅方向内側へ侵入してきた場合であっても、クロスメンバと、燃料電池及びその補機との干渉を回避することができ、燃料電池及びその補機の破損を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−15588号公報
【特許文献2】特開2003−123779号公報
【特許文献3】特開2007−106361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の車体構造においては、側面衝突時に、図5に示される矢印Aの方向からロッカメンバ116にエネルギが入力されると、ロッカメンバ116がサイドメンバ112側に向かって変形してサイドメンバ112にぶつかり、そのサイドメンバ112が燃料電池ユニット120側に向かって変形し燃料電池ユニット120の側面にぶつかるので、燃料電池ユニット120が損傷してしまう可能性があった。
【0011】
側面衝突時における燃料電池ユニット120の損傷を抑制する対策として、各メンバ112,116の強度及び剛性を高めることが考えられる。しかし、強度及び剛性を高めると、車両重量及びコストが大幅に増加してしまうという問題がある。また、別の対策として、ロッカメンバ116とサイドメンバ112との間隔、またはサイドメンバ112と燃料電池ユニット120との間隔を大きくすることが考えられる。しかし、それらの間隔を増大させると、車幅が大きくなってしまい、その結果、車両重量及びコストの大幅な増加が避けられない。
【0012】
本発明の目的は、簡易な構造、省スペースかつ低コストで、車両衝突時における燃料電池ユニットの損傷を抑制することができる燃料電池自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、車両の左右両側に配置され、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバと、車両前後方向に間隔を空けて配置され、車幅方向に延在して一対のサイドメンバを連結する一対のクロスメンバと、一対のサイドメンバと一対のクロスメンバとの間に配置され、支持部材を介して一対のサイドメンバに支持される燃料電池ユニットと、を有する燃料電池自動車において、各サイドメンバの車幅方向の外側に配置され、車両前後方向に延在する一対のロッカメンバと、車両の左右両側のサイドメンバとロッカメンバの間にそれぞれ配置され、これらを連結し、側面衝突時のエネルギが燃料電池ユニットに伝達されることを抑制するエネルギ伝達抑制部材と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、エネルギ伝達抑制部材は、一つのサイドメンバに対して一対のクロスメンバがそれぞれ連結する連結部と、燃料電池ユニットの側面に対応するロッカメンバの領域の一部とを連結し、側面衝突時にロッカメンバに入力されるエネルギをサイドメンバとクロスメンバに分散させて、衝突により生じる、燃料電池ユニットの側面に対応するサイドメンバの変形量を低減させることができる。
【0015】
また、前記ロッカメンバの領域の一部は、車両前後方向における燃料電池ユニットの中心位置を車幅方向に延ばし、これとロッカメンバとが交差する部分であることが好適である。
【0016】
また、エネルギ伝達抑制部材は、前記ロッカメンバの領域の一部と前記各連結部とを直線的にそれぞれ結ぶ平面略V字形状であることが好適である。
【0017】
また、エネルギ伝達抑制部材は、一方の前記連結部から前記ロッカメンバの領域の一部を介して他方の前記連結部を曲線状に結ぶ平面略U字形状であることが好適である。
【0018】
また、エネルギ伝達抑制部材は、燃料電池ユニットの側面に対応するサイドメンバの領域の一部とロッカメンバの領域の一部とを連結し、側面衝突時にロッカメンバに入力されるエネルギを吸収して、衝突により生じる、燃料電池ユニットの側面に対応するサイドメンバの変形量を低減させることができる。
【0019】
また、前記サイドメンバの領域の一部は、車両前後方向における燃料電池ユニットの中心位置を車幅方向に延ばし、これとサイドメンバとが交差する部分であり、前記ロッカメンバの領域の一部は、車両前後方向における燃料電池ユニットの中心位置を車幅方向に延ばし、これとロッカメンバとが交差する部分であることが好適である。
【0020】
さらに、エネルギ伝達抑制部材は、側面衝突時にロッカメンバに入力されるエネルギを、このエネルギ伝達抑制部材の内部で発生する摩擦により吸収し、ロッカメンバの移動を抑制するブレーキ部材であることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の燃料電池自動車によれば、簡易な構造、省スペースかつ低コストで、車両衝突時における燃料電池ユニットの損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の燃料電池自動車の構成を示す図である。
【図2】本実施形態の燃料電池自動車の車体構造の構成を示す図である。
【図3】別の実施形態の燃料電池自動車の車体構造の構成を示す図である。
【図4】さらに別の実施形態の燃料電池自動車の車体構造の構成を示す図である。
【図5】従来の燃料電池自動車の車体構造の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る燃料電池自動車の実施形態について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態の燃料電池自動車10の構成を示す図である。
【0024】
燃料電池自動車10は、燃料ガスと酸化ガスとを電気化学反応させて発電を行う燃料電池12を有する。なお、この燃料電池12に用いられる燃料ガスは水素であり、酸化ガスは空気である。
【0025】
燃料電池12には、これのアノード(図示せず)に燃料ガスを供給する燃料ガス管路14と、燃料電池12のカソード(図示せず)に酸化剤ガスを供給する酸化ガス管路16とが接続されている。
【0026】
また、燃料電池12には、アノードから排出される排出燃料ガスを燃料ガス管路14に戻し、その排出燃料ガスを燃料電池12に循環させる循環管路18と、カソードから排出される排出酸化ガスを外部へ放出する放出管路20が接続されている。
【0027】
燃料電池12は、例えばフッ素樹脂などの高分子材料により形成されたプロトン導電性の膜体である電解質膜を有する固体高分子型の燃料電池である。この電池の単位セル(図示せず)は、電解質膜をアノードとカソードとで挟んで構成される膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、二枚のセパレータでさらに挟んで構成される。この単位セルを複数積層することにより、燃料電池12が構成される。
【0028】
燃料電池自動車10は、燃料ガスを燃料電池12に供給する供給源として、タンク22を有する。タンク22は、燃料ガスを高圧状態にして貯蔵する。タンク22と燃料電池12とは、燃料ガス管路14で接続される。
【0029】
燃料ガス管路14には、タンク22から燃料電池12に向けて主止弁24と減圧弁26が順に取り付けられている。
【0030】
主止弁24は、電気信号により電磁石を駆動して弁を開閉する電磁弁である。主止弁24は、燃料電池自動車10の停止時、具体的にはイグニッションスイッチがオフである場合、閉状態となり、燃料電池自動車10の運転時、具体的にはイグニッションスイッチがオンである場合、開状態となるように制御される。
【0031】
減圧弁26は、タンク22から燃料電池12に供給される燃料ガスの圧力を減圧する減圧弁の機能とともに、燃料電池12に供給される燃料ガスの圧力が異常に上昇した場合、燃料ガスを外部へ放出する安全弁の機能とを備えた弁装置である。
【0032】
また、燃料ガス管路14には、減圧弁26の下流側に循環管路18が接続されている。循環管路18には、燃料電池12から燃料ガス管路14に接続する部分までの間に、気液分離装置30とポンプ32とが順に設けられている。燃料電池12から排出される排出燃料ガスには、未反応の燃料ガスと、電気化学反応により生成される水(水蒸気も含む)とが含まれる。気液分離装置30は、排出燃料ガスに含まれる水を分離する。気液分離装置30には排水弁34が接続されており、この排出弁34の動作により、気液分離装置30で分離された水を外部に排水する。ポンプ20は、燃料電池12から排出される排出燃料ガスを燃料ガス管路14に送り出す。
【0033】
燃料電池12のカソードに接続される酸化ガス管路16は、その端部を外部に開放している。酸化ガス管路16には、その端部から燃料電池12に向けフィルタ36と空気ポンプ38が順に設けられ、この空気ポンプ38の動作により、外部の空気がフィルタ36で清浄されて燃料電池12に供給される。
【0034】
また、燃料電池12には、ケーブル40を介して、DC/DCコンバータ42とインバータ44が接続される。
【0035】
DC/DCコンバータ42は、直流電力を昇圧および降圧する電圧変換器である。DC/DCコンバータ42には、バッテリ46が接続される。DC/DCコンバータ42は、バッテリ46から入力される直流電圧を調整してインバータ44に出力する機能と、燃料電池12またはインバータ44から入力される直流電圧を調整してバッテリ46に出力する機能とを有する。これらの機能により、バッテリ46の充放電が実現される。また、DC/DCコンバータ42により、燃料電池12の出力電圧が制御される。
【0036】
バッテリ46は、充放電可能な二次電池、例えばニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池などで構成される。バッテリ46は、複数のセルを直列に接続して構成されるモジュールを複数有し、これらのモジュールをさらに直列接続している。すなわち、バッテリ46は、直列接続されたモジュールに含まれるセルをすべて直列接続している。これにより、バッテリ46は、燃料電池自動車10を駆動するのに必要な高電圧を確保する。なお、バッテリ46は、大容量コンデンサとすることもできる。
【0037】
インバータ44は、直流電力から交流電力に、または交流電力から直流電力に変換する装置である。インバータ44には、モータ48が接続される。燃料電池12で発電された電力またはバッテリ46から放電された電力は、インバータ44により直流電力から交流電力に変換された後に、モータ48に供給されて、モータ48を駆動する。モータ48には、駆動輪50が接続されており、モータ48の出力が駆動輪50に伝達されて、燃料電池自動車10は走行する。一方、燃料電池自動車10の制動時には、モータ48で発電された電力は、インバータ44により交流電力から直流電力に変換された後に、バッテリ46に送られて蓄えられる。
【0038】
次に、燃料電池12を含む燃料電池ユニット52を搭載する燃料電池自動車10の車体構造について、図2を用いて説明する。燃料電池ユニット52は、さらに、DC/DCコンバータ42とインバータ44を含むこともできる。
【0039】
燃料電池自動車10は、この自動車10の左右両側に配置され、車両前後方向(紙面の上下方向)に延在する一対のサイドメンバ54と、車両前後方向に間隔を空けて配置され、車幅方向(紙面の左右方向)に延在して一対のサイドメンバ54を連結する一対のクロスメンバ56とを有する。
【0040】
また、燃料電池自動車10は、各サイドメンバ54の車幅方向の外側に配置され、車両前後方向に延在する一対のロッカメンバ58と、車両の左右両側のサイドメンバ54とロッカメンバ58の間に、クロスメンバ56を車幅方向に延ばした位置にそれぞれ配置され、サイドメンバ54とロッカメンバ58を連結するサブクロスメンバ60とを有する。
【0041】
このように構成される燃料電池自動車10の車体構造において、燃料電池ユニット52は、一対のサイドメンバ54と一対のクロスメンバ56との間に配置される。そして、燃料電池ユニット52は、支持部材62を介して、例えば一対のサイドメンバ54に支持されて燃料電池自動車10に搭載される。なお、本実施形態においては、燃料電池ユニット52がサイドメンバ54に支持される場合について説明したが、この構成に限定されず、支持部材62を介して一対のクロスメンバ56に支持されてもよい。
【0042】
本実施形態における燃料電池自動車10は、車両の左右両側のサイドメンバ54とロッカメンバ58の間にそれぞれ配置され、これら54,58を連結し、側面衝突時のエネルギが燃料電池ユニット52に伝達されることを抑制するエネルギ伝達抑制部材64を有する。この構成により、側面衝突時に、図2に示される矢印Aの方向からロッカメンバ58にエネルギが入力された場合であっても、エネルギ伝達抑制部材64が、そのエネルギが燃料電池ユニット52に伝達されることを抑制するので、燃料電池ユニット52の損傷を抑制することができる。以下、エネルギ伝達抑制部材64の構造について具体的に説明する。
【0043】
エネルギ伝達抑制部材64は、車両前後方向における燃料電池ユニット52の中心位置を車幅方向に延ばし、これに対してロッカメンバ58が交差する部分58aと、一つのサイドメンバ54に対して一対のクロスメンバ56がそれぞれ連結する2箇所の連結部66とを直線的にそれぞれ結ぶ平面略V字形状である。
【0044】
このような簡易な構成により、エネルギ伝達抑制部材64は、側面衝突時に、矢印Aの方向からロッカメンバ58にエネルギが入力されると、そのエネルギをサイドメンバ54とクロスメンバ56へ、具体的には図2に示される矢印Bの方向へ分散させることができる。したがって、側面衝突時に、衝突により生じる、燃料電池ユニット52の側面52aに対応するサイドメンバ54の変形量が低減されるので、サイドメンバ54が燃料電池ユニット52の側面52に接触しにくくなり、燃料電池ユニット52の損傷を抑制することができる。また、この構成により、側面衝突時のサイドメンバ54の変形量が低減されるので、サイドメンバ54が燃料電池ユニット52の側面52に接触するのを抑制するために、ロッカメンバ58とサイドメンバ54との間隔、またはサイドメンバ54と燃料電池ユニット52との間隔を大きくして、車幅を大きくする必要がない。よって、車両重量及びコストの大幅な増加を避けることができる。また、エネルギ伝達抑制部材64は、各メンバと同じ材質、例えば鉄製である。このため、車体構造にエネルギ伝達抑制部材64が追加されたとしても、車両重量及びコストが大幅に増加することはない。
【0045】
次に、別の態様のエネルギ伝達抑制部材68について、図3を用いて説明する。図3は、別の実施形態の燃料電池自動車10の車体構造を示す図である。なお、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0046】
エネルギ伝達抑制部材68は、一方の連結部66からロッカメンバ58の部分58aを介して他方の前記連結部66を曲線状に結ぶ平面略U字形状である。
【0047】
このような構成により、上記実施形態と同様、エネルギ伝達抑制部材68は、側面衝突時に、図3に示される矢印Aの方向からロッカメンバ58にエネルギが入力されると、そのエネルギをサイドメンバ54とクロスメンバ56へ、具体的には図3に示される矢印Bの方向へ分散させることができる。したがって、側面衝突時に、衝突により生じる、燃料電池ユニット52の側面52aに対応するサイドメンバ54の変形量が低減されるので、サイドメンバ54が燃料電池ユニット52の側面52に接触しにくくなり、燃料電池ユニット52の損傷を抑制することができる。また、上記実施形態のエネルギ伝達抑制部材64は平面略V字形状であるため、側面衝突時に、V字の折れ曲がり部分、すなわちロッカメンバ58の部分58aに連結する部分に応力が集中してしまいエネルギ伝達抑制部材64が損傷してしまう可能性がある。これに対して、本実施形態のエネルギ伝達抑制部材68は平面略U字形状であるため、応力が集中する部分がないので、側面衝突時におけるエネルギ伝達抑制部材64の損傷を抑制することができる。
【0048】
次に、さらに別の態様のエネルギ伝達抑制部材70について、図4を用いて説明する。図4は、さらに別の実施形態の燃料電池自動車10の車体構造を示す図である。なお、上記各実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0049】
エネルギ伝達抑制部材70は、車両前後方向における燃料電池ユニット52の中心位置を車幅方向に延ばし、これに対してサイドメンバ54が交差する部分54aと、ロッカメンバ58の部分58aとを連結するブレーキ部材である。このブレーキ部材は、ロッカメンバ58の部分58aに連結する第一ブレーキ部材72と、第一ブレーキ部材72を車幅方向にスライド可能に挟持して、サイドメンバ54の部分54aに連結する第二ブレーキ部材74とを有する。この構成により、側面衝突時に、図4に示される矢印Aの方向からロッカメンバ58にエネルギが入力されると、第一ブレーキ部材72が矢印Aの方向に向かい移動する。このとき、第一及び第二ブレーキ部材72,74の接触面で発生する摩擦により、衝突時のエネルギを吸収することができる。その結果、ロッカメンバ58の移動が抑制され、衝突による、燃料電池ユニット52の側面52aに対応するサイドメンバ54の変形量が低減されるので、サイドメンバ54が燃料電池ユニット52の側面52に接触しにくくなり、燃料電池ユニット52の損傷を抑制することができる。
【0050】
この実施形態においては、エネルギ伝達抑制部材70が第一及び第二ブレーキ部材72,74から構成されるブレーキ部材である場合について説明したが、この構成に限定されない。衝突時のエネルギを熱エネルギに変換できる構成であれば、周知のブレーキ部材を用いることができる。
【0051】
上記各実施形態においては、エネルギ伝達抑制部材64,68の一端が、ロッカメンバ58の部分58aに、エネルギ伝達抑制部材70の両端がサイドメンバ54の部分54aとロッカメンバ58の部分58aに、それぞれ連結する場合について説明したが、この構成に限定されない。衝突による、燃料電池ユニット52の側面52aに対応するサイドメンバ54の変形量を低減することができるのであれば、他の部分に連結することができる。他の部分とは、燃料電池ユニット52の側面52aに対応する領域、例えば図2から3に示されるロッカメンバ58の領域58aの一部のことである。
【符号の説明】
【0052】
10,110 燃料電池自動車、12 燃料電池、42 DC/DCコンバータ、44 インバータ、52,120 燃料電池ユニット、54,112 サイドメンバ、56,114 クロスメンバ、58,116 ロッカメンバ、60,118 サブクロスメンバ、62,118 支持部材、64,68,70 エネルギ伝達抑制部材 66 連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右両側に配置され、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバと、
車両前後方向に間隔を空けて配置され、車幅方向に延在して一対のサイドメンバを連結する一対のクロスメンバと、
一対のサイドメンバと一対のクロスメンバとの間に配置され、支持部材を介して一対のサイドメンバに支持される燃料電池ユニットと、
を有する燃料電池自動車において、
各サイドメンバの車幅方向の外側に配置され、車両前後方向に延在する一対のロッカメンバと、
車両の左右両側のサイドメンバとロッカメンバの間にそれぞれ配置され、これらを連結し、側面衝突時のエネルギが燃料電池ユニットに伝達されることを抑制するエネルギ伝達抑制部材と、
を有することを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池自動車において、
エネルギ伝達抑制部材は、一つのサイドメンバに対して一対のクロスメンバがそれぞれ連結する連結部と、燃料電池ユニットの側面に対応するロッカメンバの領域の一部とを連結し、側面衝突時にロッカメンバに入力されるエネルギをサイドメンバとクロスメンバに分散させて、衝突により生じる、燃料電池ユニットの側面に対応するサイドメンバの変形量を低減させる、
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池自動車において、
前記ロッカメンバの領域の一部は、車両前後方向における燃料電池ユニットの中心位置を車幅方向に延ばし、これとロッカメンバとが交差する部分である、
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項4】
請求項2または3に記載の燃料電池自動車において、
エネルギ伝達抑制部材は、前記ロッカメンバの領域の一部と前記各連結部とを直線的にそれぞれ結ぶ平面略V字形状である、
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項5】
請求項2または3に記載の燃料電池自動車において、
エネルギ伝達抑制部材は、一方の前記連結部から前記ロッカメンバの領域の一部を介して他方の前記連結部を曲線状に結ぶ平面略U字形状である、
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池自動車において、
エネルギ伝達抑制部材は、燃料電池ユニットの側面に対応するサイドメンバの領域の一部とロッカメンバの領域の一部とを連結し、側面衝突時にロッカメンバに入力されるエネルギを吸収して、衝突により生じる、燃料電池ユニットの側面に対応するサイドメンバの変形量を低減させる、
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池自動車において、
前記サイドメンバの領域の一部は、車両前後方向における燃料電池ユニットの中心位置を車幅方向に延ばし、これとサイドメンバとが交差する部分であり、
前記ロッカメンバの領域の一部は、車両前後方向における燃料電池ユニットの中心位置を車幅方向に延ばし、これとロッカメンバとが交差する部分である、
ことを特徴とする燃料電池自動車。
【請求項8】
請求項6または7に記載の燃料電池自動車において、
エネルギ伝達抑制部材は、側面衝突時にロッカメンバに入力されるエネルギを、このエネルギ伝達抑制部材の内部で発生する摩擦により吸収し、ロッカメンバの移動を抑制するブレーキ部材である、
ことを特徴とする燃料電池自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−5997(P2011−5997A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152634(P2009−152634)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】