説明

燃料電池車両

【課題】静粛性を向上でき、しかも車両に対する燃料電池システムの載せ降ろし作業を容易に行うことができる燃料電池車両を提供する。
【解決手段】燃料電池スタック11および燃料電池補機12を備えた燃料電池システムF1とハーネスH1によって接続される電気部品の接続を脱着可能なコネクタC1,C2を備えている。ハーネスH1は、燃料電池システム用サブフレーム10にクリップ60A,60Bを介して固定されている。コネクタC1,C2は、燃料電池システム用サブフレーム10を挟んだ前後で、かつ、燃料電池システム用サブフレーム10寄りに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車では、車両の床下においてハーネスを配策して各種の電気部品を接続することが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照)。また、燃料電池自動車では、燃料電池スタックやその補機をサブフレームに搭載し、サブフレームを車両のフロアパネルに取り付ける技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−125956号公報(図3)
【特許文献2】特開2007−15612号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の燃料電池自動車におけるハーネスの配策構造では、燃料電池スタックに空気を供給するためのエアポンプに接続されたエア供給配管に、ブラケットを溶接してハーネスを取り付けていたので、エア供給配管から発生するノイズがハーネスを介して車室内に伝播するという問題があった。ちなみに、燃料電池自動車は、エンジンを搭載しないことから静かであり、その分このような音が気になり易くなる。
【0004】
また、サブフレームの車両前方または後方に設けられるユニットと接続されるハーネスコネクタが車両上方のフロアパネル寄りに位置していたため、燃料電池スタックを降ろすために別のユニットを先に降ろさなければならず、燃料電池システムの載せ降ろし作業が煩雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、ノイズを低減でき、しかも車両に対する燃料電池システムの載せ降ろし作業を容易に行うことができる燃料電池車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、燃料電池スタックおよび燃料電池補機を備えた燃料電池システムが、燃料電池システム用サブフレームを介して車両のフロアパネルの下方に取り付けられる燃料電池車両において、前記燃料電池システムとハーネスによって接続される電気部品の接続を脱着可能なコネクタを備え、前記ハーネスは、前記燃料電池システム用サブフレームにクリップを介して固定され、前記コネクタは、前記燃料電池システム用サブフレームを挟んだ前後で、かつ、前記燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、コネクタが燃料電池システム用サブフレームを挟んだ前方または後方で、かつ、上方のフロアパネル寄りではなく下方の燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されているので、コネクタに容易にアクセスできるようになり、燃料電池システムの搭載性、メンテナンス時の載せ降ろしの作業性を向上できる。しかも、ハーネスをエア供給配管から離間した燃料電池システム用サブフレームに固定しているので、ハーネスを介しての音や振動が抑制され、静粛性を向上できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記電気部品は、前記燃料電池システム用サブフレームの前方に設けられたモータユニット用サブフレームに搭載され、前記コネクタは、前記燃料電池システム用サブフレームと前記モータユニット用サブフレームとの間に位置し、かつ、前記燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、モータユニット用サブフレームについても、メンテナンス時などのモータユニット用サブフレームの載せ降ろし作業性を向上できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記電気部品は、前記燃料電池システム用サブフレームの後方に設けられたバッテリ用サブフレームに搭載され、前記コネクタは、前記燃料電池システム用サブフレームと前記バッテリ用サブフレームとの間に位置し、かつ、前記燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、バッテリ用サブフレームについても、メンテナンス時などのバッテリ用サブフレームの載せ降ろし作業性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノイズを低減でき、しかも車両に対する燃料電池システムの載せ降ろし作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本実施形態の燃料電池車両の床下の構造を上方から見たときの平面図、図2は本実施形態の燃料電池車両の床下の構造を示す側面図、図3は燃料電池システムを車両前方から見たときの正面図、図4は本実施形態の燃料電池車両のシステム構成図、図5はハーネスをサブフレームに固定するクリップを示す斜視図、図6はハーネスをサブフレームに固定する他のクリップを示す斜視図であり、(a)はサブフレームに固定する前の状態、(b)はサブフレームに固定した後の状態、図7はハーネスを加湿器に固定する他のクリップを示す斜視図であり、(a)は加湿器に固定する前の状態、(b)は加湿器に固定した後の状態である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池自動車1は、燃料電池スタック11、燃料電池補機12などを備えた燃料電池システムF1が搭載された燃料電池システム用サブフレーム(以下、FCSYSサブフレームと表記する)10と、駆動モータ21、エアポンプ22などが搭載されたモータユニット用サブフレーム(以下、MOTサブフレームと表記する)20と、高圧の蓄電装置31などが搭載されたバッテリ用サブフレーム(以下、BATTサブフレームと表記する)30と、高圧水素タンク41などが搭載されたタンク用サブフレーム40(以下、TANKサブフレームと表記する)などで構成されている。
【0015】
なお、FCSYSサブフレーム10は、車両の前後方向に延びる一対のフレーム10a,10aと、車幅方向に延びるフレーム10b,10c,10dが前後方向に互いに間隔を開けて配置され、梯子状に組まれて構成されている。MOTサブフレーム20は、車両の前後方向に延びる一対のフレーム20a,20aと、車幅方向に延びる一対のフレーム20b,20bによって井桁状に組まれて構成されている。BATTサブフレーム30は、車両の前後方向に延びる一対のフレーム30a,30aと、車幅方向に延びる一対のフレーム30b,30bによって井桁状に組まれて構成されている。TANKサブフレーム40は、車両の前後方向に延びる一対のフレーム40a,40aと、車幅方向に延びる一対のフレーム40b,40bによって井桁状に組まれて構成されている。
【0016】
燃料電池スタック11は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード(水素極)とカソード(空気極)とで挟み、さらに一対の導電性のセパレータで挟んで構成した単セルを複数枚、車両前後方向に沿って積層した構造を有している。また、各単セルは、電気的に直列に接続されて構成されている。また、アノードに対向するセパレータには、水素が流通するアノード流路が形成され、カソードに対向するセパレータには、空気が流通するカソード流路が形成されている。
【0017】
なお、図示していないが、燃料電池スタック11の車両前後方向の後面には、水素導入口および水素導出口が形成されており、各単セルに形成された貫通孔と連通している。水素導入口から導入された水素は、貫通孔から各アノード流路、別の貫通孔を通って水素導出口から排出される。また、燃料電池スタック11の後面にも同様に、空気導入口および空気導出口が形成されており、各単セルに形成された貫通孔と連通している。空気導入口から導入された空気は貫通孔から各カソード流路、別の貫通孔を通って空気導出口から排出される。
【0018】
燃料電池補機12は、加湿器13、コンタクタ14、背圧弁15、パージ弁16などを含み、加湿器13、背圧弁15およびパージ弁16が燃料電池スタック11の後方に、コンタクタ14が燃料電池スタック11の前方に配置されるように、FCSYSサブフレーム10上に燃料電池スタック11とともにブラケットなどを介して固定されている。
【0019】
加湿器13は、燃料電池スタック11のカソードに加湿した空気を供給する機能を有し、例えば、複数の中空糸膜が束ねられた中空糸膜モジュールが鋳物からなるハウジング内に収容されて構成されている。また、中空糸膜の内側と外側のうちの一側には、加湿前の乾燥空気が流通し、他側には燃料電池スタック11の空気導出口から排出されたカソードオフガス(生成水や湿潤な空気など)が流通して、カソードオフガスによって乾燥空気が加湿されるようになっている。
【0020】
コンタクタ14は、燃料電池スタック11と後記する外部負荷(駆動モータ21など)とを電気的に接続(ON)および遮断(OFF)するスイッチ機能を有している。例えば、車両のイグニッションスイッチがオンにされて、燃料電池スタック11のOCV(Open Circuit Voltage;開回路電圧)が所定電圧となったときに接続され、イグニッションスイッチがオフにされたときに遮断される。なお、OCVとは、燃料電池スタック11から外部負荷へ電流を取り出していないときの燃料電池スタック11の電池電圧(総電圧)である。
【0021】
背圧弁15は、燃料電池スタック11に供給される空気圧(カソード圧力)を制御する機能を有し、燃料電池スタック11のカソードの出口側(図4参照)に設けられている。パージ弁16は、開弁することにより、燃料電池スタック11から排出された未反応の水素を循環させる循環流路17(図4参照)に蓄積した不純物を排出する機能を有している。なお、循環流路17にはエゼクタ17a(図4参照)が設けられて水素が循環するようになっている。また、コンタクタ14のスイッチ部分、背圧弁15、パージ弁16は、燃料電池補機であると同時に電気部品でもある。
【0022】
また、FCSYSサブフレーム10上に設けられる電気部品として、燃料電池ECU18(以下、FCECUと表記する)が設けられ、FCECU18が燃料電池スタック11の上部に固定されている。また、図示していないが、FCSYSサブフレーム10上に設けられる電気部品として、燃料電池システムF1などからの水素漏れを検知する水素センサ、燃料電池スタック11のセル電圧を測定するセル電圧検出装置などを備えている。
【0023】
MOTサブフレーム20に設けられる駆動モータ21は、駆動輪(前輪)W1,W1を駆動させる電動機であり、ギアボックス(変速機)とともに構成され、MOTサブフレーム上に、図示しないマウント部材を介して取り付けられている。
【0024】
エアポンプ22は、モータによって駆動される機械式の過給器であり、燃料電池スタック11のカソードに酸化剤ガスとしての空気を圧縮して供給する機能を有し、駆動モータ21の上部に設けられている。また、エアポンプ22には、エア供給配管23の前方の一端が接続されており、後方の他端が前記加湿器13に接続されている。なお、駆動モータ21の上部には、燃料電池スタック11に供給される冷媒を循環させるウォータポンプ(図示せず)がエアポンプ22とともに設けられている。燃料電池スタック11のセパレータに形成された冷媒流路に冷媒が流れることにより燃料電池スタック11が冷却され、MOTサブフレーム20の前方に設けられたラジエータにより放熱される。
【0025】
なお、図示していないが、MOTサブフレーム20には、電気部品として、エアポンプ22やウォータポンプを制御するポンプモータECU、冷媒の流量を制御する冷媒流量制御弁、駆動モータ21の回転速度を制御するインバータなどが設けられている。
【0026】
BATTサブフレームに設けられる蓄電装置31は、電力を補助する高電圧のものであり、箱型のケース内に、ニッケル水素やリチウムイオンなどのバッテリなどが収容されて構成されている。例えば、加速時など燃料電池スタック11からの電力では不足している場合にその不足分の電力が補われ、車両起動時(IG−ON時)に必要な電力が供給され、また車両停止時(IG−OFF)に必要な電力が供給される。なお、起動時の電力とは、例えば燃料電池スタック11と外部負荷とが接続されて発電が開始されるまでに必要な電力であり、停止時の電力とは、例えば低温環境下での使用において生成水が凍結するおそれがある場合にエアポンプ22によってシステム内に残留している生成水などを排出する掃気処理に必要な電力をいう。
【0027】
なお、図示していないが、BATTサブフレーム30には、電気部品として、蓄電装置31を冷却するためのバッテリファン、蓄電装置31の電圧を昇降圧させるためのバッテリECUなどが設けられている。
【0028】
TANKサブフレーム40に設けられる高圧水素タンク41は、高純度の水素を高圧で充填した容器であり、電磁作動式の遮断弁42を備えている。この遮断弁42は、燃料電池スタック11のアノード側の水素導入口(図示せず)と水素供給配管43(図4参照)を介して接続されている。
【0029】
図2に示すように、FCSYSサブフレーム10には、ハーネスH1が車両前後方向に延びて配策されている。なお、ハーネスH1は低圧電気ケーブルで、高圧電気ケーブルとは別ものであり、図2では、高圧電気ケーブルの図示は省略されている(図1および図3も同様)。このハーネスH1は、その前端がFCSYSサブフレーム10とMOTサブフレーム20との間に設けられたコネクタC1を介してMOTサブフレーム20から延びるハーネスH2と接続されている。また、ハーネスH1は、その後端がFCSYSサブフレーム10とBATTサブフレーム30との間に設けられたコネクタC2を介してBATTサブフレーム30から延びるハーネスH3と接続されている。なお、コネクタC1,C2は、いずれもカプラを抜き挿しすることにより脱着可能に構成されたものである。後記するコネクタC3〜C5,C11〜C14についても同様である。
【0030】
ハーネスH1は、前後方向に延びるフレーム10aに沿って直線状に配策され、加湿器13の前寄りにおいて上方に向けて配策され、そして加湿器13の上部を後方に向けて配策され、加湿器13の後部から下方に向けて配策されてコネクタC2と接続されている。また、ハーネスH1は、ハーネスH11が分岐して配策され、ハーネスH11がコネクタC11を介してコンタクタ14と接続されている。また、ハーネスH1は、ハーネスH12が分岐して配策され、ハーネスH12がコネクタC12を介してFCECU18と接続されている。また、ハーネスH1は、ハーネスH13が分岐して配策され、ハーネスH13がコネクタC13を介して背圧弁15と接続されている。また、ハーネスH1は、ハーネスH14が分岐して配策され、ハーネスH14がコネクタC14を介してパージ弁16と接続されている。
【0031】
ハーネスH2は、コネクタC1から前方のMOTサブフレーム20に延びて配策され、コネクタC3を介して図示しないポンプモータECU、冷媒流量制御弁、後記するPDU(Power Drive Unit)51などと接続されている。
【0032】
ハーネスH3は、コネクタC2から後方のBATTサブフレーム30に延びて配策され、コネクタC4を介して図示しないバッテリファン、バッテリ制御部などと接続されている。また、ハーネスH3は、後方のTANKサブフレーム40に延びて配策され、コネクタC5を介して高圧水素タンク41に設けられた遮断弁42と接続されている。
【0033】
なお、図示していないが、燃料電池システムF1の上部、および高圧水素タンク41の上部には、それぞれ水素漏れを検知するための水素センサが設けられている。燃料電池システムF1側の水素センサは、ハーネスH1から分岐したハーネスに接続され、高圧水素タンク41側の水素センサは、ハーネスH3から分岐したハーネスに接続されている。
【0034】
図3に示すように、FCSYSサブフレーム10は、燃料電池スタック11および燃料電池補機12を備えた燃料電池システムF1が搭載された状態において、燃料電池スタック11および燃料電池補機12が車両のフロアパネル2のセンタコンソール2S内に収容される。なお、このときFCSYSサブフレーム10は、フロアパネル2のサイドフレームなど複数箇所にマウント部材(図示せず)を介して取り付けられている。
【0035】
また、車両前方に設けられたエアポンプ22(図2参照)と、車両後方に設けられた加湿器13(図2参照)とを接続するエア供給配管23は、コンタクタ14の側方および燃料電池スタック11の側方を通り、燃料電池スタック11などと共にセンタコンソール2S内に収容されるように構成されている。
【0036】
図4に示すように、FCECU18などの電気部品には、ハーネスH1〜H3などを介して低電圧(例えば、12V)のバッテリ50から電力が供給されるようになっている。なお、図4では、低電圧のバッテリ50がFCECU18だけではなく、他の電気部品とも接続されて、電力が供給されている。
【0037】
また、燃料電池スタック11と蓄電装置31とは高圧電気ケーブル32により接続されており、図示しない電圧制御装置によって、燃料電池スタック11から取り出される電圧(電力)が制御されるようになっている。また、高圧電気ケーブル32は、エアポンプ22、コンタクタ14、PDU51などと接続されている。なお、PDU51は、例えば、直流電力を交流電力に変換して駆動モータ21に供給し、回生電力を直流電力に変換し、蓄電装置31に充電する機能を有する。また、高圧電気ケーブル32は、DC/DCコンバータ52を介して12Vのバッテリ50と接続され、DC/DCコンバータ52によって降圧されてバッテリ50に充電される。
【0038】
図5および図6に示すように、例えば、FCSYSサブフレーム10上に配策されるハーネスH1は、複数のクリップ60A,60Bを介してFCSYSサブフレーム10に固定され、図7に示すように、クリップ60Bを介して加湿器13に固定されている。
【0039】
図5に示すように、クリップ60Aは、前後方向に延びるフレーム10a(サブフレーム10)に複数個所において取り付けられている。このクリップ60Aは、合成樹脂などで形成され、ハーネスH1が挿通されるリング形状の挿通部61と、FCSYSサブフレーム10に形成された貫通孔10a2に嵌入して固定される錨状の嵌合部62とを備えている。嵌合部62の爪部62a,62aは弾性変形可能であり、爪部62aが弾性変形しながら貫通孔10a2に圧入され、爪部62aが貫通孔10a2を通過したときに弾性復帰して、クリップ60Aが貫通孔10a2から抜け出ることなく固定される。なお、ハーネスH1は、クリップ60Aの挿通部61に挿通された状態において、サブフレーム10に取り付けられる。
【0040】
なお、前記貫通孔10a2は、フレーム10aに対して1段低い位置において燃料電池スタック11側に突出する板部10a1が前後方向に沿ってフレーム10aと一体に形成されており、その板部10a1に貫通孔10a2が形成されている。したがって、この領域のハーネスH1は、フレーム10aの板部10a1上を前後方向に沿って配策されている。
【0041】
図6(a)に示すように、クリップ60Bは、FCSYSサブフレーム10の車幅方向に延びるフレーム10bに取り付けられている。このクリップ60Bは、弾性変形可能で内面に鋸歯状の係合部が形成されたバンド部63と、このバンド部63を所望の位置で係合部と係止させてロックするロック部64と、FCSYSサブフレーム10に固定するねじ部65とを備えている。
【0042】
なお、クリップ60Bは、先に所定の位置においてハーネスH1をバンド部63で締めて、ロック部64で固定した状態において、FCSYSサブフレーム10のフレーム10bに形成されたねじ穴10b1に、押圧しながら差し込むことによって取り付けられる(図6(b)参照)。
【0043】
なお、クリップ60A,60Bによる個数や互いの間隔は、適宜設定されるものであるが、例えば、車両の振動によりハーネスH1が変動する範囲が、エア供給配管23とハーネスH1との距離L(図2参照)より小さく、かつ、最少のクリップ数で固定できるように設定されることが好ましい。
【0044】
図7(a)に示すように、クリップ60Bは、加湿器13に形成された固定部13aに固定される。この固定部13aは、例えば、加湿器13のハウジングとともに鋳造時に一体に形成されたものであり、ねじ部65と螺着されるねじ穴13a1を備えている。そして、先にクリップ60Bのねじ部65をねじ穴13a1に螺着して固定した後、ハーネスH1をバンド部63で締めて、バンド部63をロック部64で固定する(図7(b)参照)。なお、図6で説明したように、先にハーネスH1をクリップ60Bに固定した後に、加湿器13の固定部13aにねじ部65を差し込んで取り付けるようにしてもよい。
【0045】
なお、前記したクリップ60A,60Bは、一例であり、種類や形状などは、取付位置や取付形状に応じて適宜変更することができる。また、加湿器13にハーネスH1を取り付ける場所は、適宜変更することができる。
【0046】
このように、FCSYSサブフレーム10に、クリップ60A,60BをFCSYSサブフレーム10に直接に留めるための貫通孔10a2,10b1を予め形成し、加湿器13のハウジングに固定部13aを予め形成しておくことにより、従来では多数のブラケットを溶接したり、ボルト締結などが必要であったのに対して、本実施形態では、最少のクリップ数でハーネスH1を固定できる。これにより、コストや重量を削減でき、しかも組み付け性やメンテナンス性を向上できる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、FCSYSサブフレーム10とMOTサブフレーム20との間で、かつ、FCSYSサブフレーム10寄りにコネクタC1を配置し、FCSYSサブフレーム10とBATTサブフレーム30との間で、かつ、FCSYSサブフレーム10寄りにコネクタC2を配置したので、FCSYSサブフレーム10に搭載される燃料電池システムF1と接続される電気部品を降ろすことなく、FCSYSサブフレーム10ごと燃料電池システムF1を降ろしてメンテナンスを行うことが可能になり、作業性が向上する。
【0048】
ちなみに、車両の床下においてコネクタC2を上方のフロアパネル2に近い側に配置した場合にはフロアパネル2にメンテナンス用の穴を設ける必要が生じるが、この場合にはその穴を介して車室内に水素浸入のおそれが生じる。さらにこのような配置の場合、後方のBATTサブフレーム30を先に降ろす必要が生じるが、燃料電池システムF1の載せ降ろしのために、MOTサブフレーム20を含む別のユニットを降ろす作業が発生することはメンテナンス性を著しく悪化させるものである。そこで、本実施形態では、コネクタC1,C2をサブフレーム間、かつ、下方のメンテナンスなどの作業容易な位置に配置することで、アンダーカバー(図示せず)の脱着のみで、コネクタC1,C2のカプラを抜き挿しできるため、水素漏れに対する信頼性を確保したまま、燃料電池システムF1の搭載および降ろし作業が簡単になる。なお、アンダーカバーとは、走行時のチッピングなどを防止するためのものであり、床下に搭載されている燃料電池システムF1を備えたユニット、駆動モータ21を備えたユニット、蓄電装置31を備えたユニット、および高圧水素タンク41を備えたユニットを覆う板状の部材である。
【0049】
また、本実施形態によれば、ハーネスH1がFCSYSサブフレーム10や加湿器13に固定されているので、FCSYSサブフレーム10ごと燃料電池システムF1を載せ降ろしする際に、ハーネスH1を損傷させてしまのを防止できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、クリップ60A,60Bを用いているので、ハーネスH1を簡単に取り付けることが可能になる。
【0051】
また、本実施形態によれば、音や振動を発生するエアポンプ22からのエア供給配管23から離間させたことで、ハーネスH1を介しての音や振動を抑制でき、静粛性を向上することができる。つまり、エア供給配管23は、内部を空気が脈動しながら通過するためエア供給配管23自らが音や振動を発生する部品であるのに対し、FCSYSサブフレーム10は、自ら音や振動を発生することはなく、音や振動の伝播経路となり得る部品であり、このように、音や振動の発生源となる部品と音や振動の伝播経路となる部分を切り分けて、ハーネスH1をFCSYSサブフレーム10に取り付けることにより、車室内への音や振動の伝播を抑制でき、静粛性を向上することができる。
【0052】
また、前記したように、コネクタC1は、MOTサブフレーム20とFCSYSサブフレーム10との間で、かつ、下方に位置しているので、MOTサブフレーム20の載せ降ろし作業を向上できる。さらに、コネクタC2は、FCSYSサブフレーム10とBATTサブフレーム30との間で、かつ、下方に位置しているので、BATTサブフレーム30の載せ降ろし作業を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態の燃料電池車両の床下の構造を上方から見たときの平面図である。
【図2】本実施形態の燃料電池車両の床下の構造を示す側面図である。
【図3】燃料電池システムを車両前方からときの正面図である。
【図4】本実施形態の燃料電池車両のシステム構成図である。
【図5】ハーネスをサブフレームに固定するクリップを示す斜視図である。
【図6】ハーネスをサブフレームに固定する他のクリップを示す斜視図であり、(a)はサブフレームに固定する前の状態、(b)はサブフレームに固定した後の状態である。
【図7】ハーネスを加湿器に固定する他のクリップを示す斜視図であり、(a)は加湿器に固定する前の状態、(b)は加湿器に固定した後の状態である。
【符号の説明】
【0054】
1 燃料電池自動車(燃料電池車両)
10 燃料電池システム用サブフレーム
11 燃料電池スタック
13 加湿器(燃料電池補機)
14 コンタクタ(燃料電池補機、電気部品)
15 背圧弁(燃料電池補機、電気部品)
16 パージ弁(燃料電池補機、電気部品)
18 FCECU(電気部品)
20 モータユニット用サブフレーム
30 バッテリ用サブフレーム
C1,C2 コネクタ
F1 燃料電池システム
H1〜H3,H11〜H14 ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックおよび燃料電池補機を備えた燃料電池システムが、燃料電池システム用サブフレームを介して車両のフロアパネルの下方に取り付けられる燃料電池車両において、
前記燃料電池システムとハーネスによって接続される電気部品の接続を脱着可能なコネクタを備え、
前記ハーネスは、前記燃料電池システム用サブフレームにクリップを介して固定され、
前記コネクタは、前記燃料電池システム用サブフレームを挟んだ前後で、かつ、前記燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されていることを特徴とする燃料電池車両。
【請求項2】
前記電気部品は、前記燃料電池システム用サブフレームの前方に設けられたモータユニット用サブフレームに搭載され、
前記コネクタは、前記燃料電池システム用サブフレームと前記モータユニット用サブフレームとの間に位置し、かつ、前記燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。
【請求項3】
前記電気部品は、前記燃料電池システム用サブフレームの後方に設けられたバッテリ用サブフレームに搭載され、
前記コネクタは、前記燃料電池システム用サブフレームと前記バッテリ用サブフレームとの間に位置し、かつ、前記燃料電池システム用サブフレーム寄りに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−292324(P2009−292324A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148133(P2008−148133)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】