説明

爪および爪周辺への塗布のためのアモロルフィンおよび水溶性皮膜形成剤に基づく医薬組成物

本発明は、抗真菌剤であるモルフォリンのファミリーおよび水溶性皮膜形成剤を含むことを特徴とする、皮膚疾患、特に爪甲真菌症の治療を意図した、爪および爪周辺への塗布用の組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤であるモルフォリンのファミリーおよび水溶性皮膜形成剤を含むことを特徴とする、皮膚疾患、特に爪甲真菌症の治療を意図した、爪および爪周辺への塗布用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
爪は、多様な特性および起源の病気、欠損症または病状の対象を形成しうる(Baran R. et al., Diseases of the nails and their management. 3nd Edition. 2001)。例えば、皮膚疾患もしくは全身性疾患に由来する、または薬物治療に起因する、細菌、真菌類、寄生虫またはウイルスによって引き起こされる爪周囲炎を挙げることができる。
【0003】
真菌類の病状は、爪甲真菌症など、特異的に、爪に制限され、または、ヘルペスもしくは梅毒のように、体の他の部分に影響を及ぼしえる;これらは、また、爪の生理機能にも影響を及ぼしうる。爪への真菌類の感染は、しばしば、皮膚糸状菌によって引き起こされるが、カビ、真菌類および/または酵母によっても引き起こされうる。
【0004】
現在使用される治療は、局所的療法または全身療法のいずれかである;この2つは、しばしば、最適な効果のために組み合わされる。なぜならば、有効である治療は、爪の再成長の時間に適合させるためには、長期にわたる必要があるからである。更にその上、真菌症は、爪内部に、または、爪床部に位置し、そのため、活性剤は、全体として爪に浸透する必要がある。
【0005】
全身療法は、しばしば、害をもたらす副作用を有し、局所療法は、しばしば、爪を介した活性剤の浸透の困難性のみが原因となって、あまり有効性を有さない。
【0006】
皮膜形成溶液またはマニキュアは、現在、より具体的には、人または哺乳類において、爪甲真菌症および爪の類似の真菌類の感染の治療のために使用されている。
【0007】
抗真菌活性を有する活性剤を含む多くの組成物が、これらの症状の予防および治療に関する文献に開示されている。例えば、米国特許第6319509号明細書には、テルビナフィンおよび水不溶性の皮膜形成剤を含む、皮膚疾患の治療を意図した、マニキュア形態の医薬組成物が開示されている。米国特許6495124号明細書には、抗真菌活性剤、可塑剤および吸収促進剤を含む、爪の症状の治療を意図する医薬組成物であって、その全てが、揮発性溶媒および水不溶性ポリマーを含むマニキュアの形態である医薬組成物が開示されている。国際公開公報2004/084826号パンフレットには、その一部に、抗真菌剤であるアリルアミンおよびアゾールファミリー、吸収促進剤および水溶性ポリマーを含む、マニキュア形態の医薬組成物が開示されている。
【0008】
本出願人の会社は、また、仏国出願第2844197号明細書において、皮膚科学または美的使用のための爪および爪周辺への塗布用の溶液の製造のための相乗的に作用する前浸透剤(propenetrating agent)の組み合わせ、および、得られる溶液を開示した。
【0009】
活性剤の局所的塗布のための送達用ベヒクルとしてのマニキュアの有効性は、J. Eur. Acad. Dermatol. Venerol., 4 (supl.1), pp. 17-21 (19995)においてMartyによって開示されている。これは、抗真菌剤である塩酸アモルフィン(すなわち、アモルフィンHCl)の送達の研究に関する。マニキュアのベース組成物は、文献に記載されているように、溶媒、可塑剤および水不溶性皮膜形成剤から構成されるが、残念なことに、このベース組成物では、活性剤の爪への最適な浸透をもたらさない。なぜならば、このような組み合わせは、特に、活性剤の分散を制限する現象の原因となるからである。
【0010】
更にその上、従来の文献に記載されているマニキュアなどのように、一般的なマニキュア組成物における水不溶性の皮膜形成剤の使用は、非常に迅速な(1分間未満の)乾燥をもたらし、そして、幾人かの敏感な対象においては、爪の周囲の皮膚の炎症を引き起こす傾向がある。
【特許文献1】米国特許第6319509号明細書
【特許文献2】米国特許6495124号明細書
【特許文献3】国際公開公報2004/084826号パンフレット
【特許文献4】仏国出願第2844197号明細書
【非特許文献1】Baran R. et al., Diseases of the nails and their management. 3nd Edition. 2001
【非特許文献2】J. Eur. Acad. Dermatol. Venerol., 4 (supl.1), pp. 17-21 (19995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、爪を介した活性剤のより良い浸透を可能とする、爪および爪周辺への塗布用の皮膜形成溶液型の皮膚科学的または化粧品組成物を開発することは、必須である。その理由は、皮膚の炎症を引き起こすことなく、活性剤をより有効にすることができ、治療時間の短縮に貢献するからである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実際に、本出願人の会社は、予期せぬことに、皮膜形成溶液型の組成物中での水溶性ポリマーの使用が、皮膜から爪へと活性剤のより効率的な分散によって、爪内での活性剤のより良い生物学的利用性を得ることを可能とすることを見出した。加えて、マニキュア組成物中での水溶性皮膜形成剤の使用によって、一般的なマニキュア組成物(すなわち、水不溶性皮膜形成剤)により得られる皮膜よりも、より柔らかく、より脆くない皮膜の形成が可能である。
【0013】
それ故、本発明は、皮膚疾患の治療を意図した、特に爪および爪周辺への塗布用の医薬組成物であって、
- モルフォリンファミリーおよびその誘導体から選択される抗真菌活性剤;
- ヒドロキアルキルキトサンおよびカルボキシアルキルキトサンを除く、水溶性皮膜形成剤;
- 少なくとも1つの吸収促進剤;
- 有機溶媒、または有機溶媒/共溶媒の混合物
を含むことを特徴する、医薬組成物に関する。
【0014】
好ましくは、抗真菌活性剤は、モルフォリンファミリーおよびその誘導体、例えば、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)またはトリデモルフ(tridemorph)などから選択される。好ましくは、用いた抗真菌剤は、アモロルフィンまたはその医薬的に許容可能な塩の1つである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
用語「アモロルフィン」は、アモロルフィンベース(amorolfine base)を意味すると理解される。
【0016】
用語「医薬的に許容可能な塩」は、皮膚、粘膜および/または身体成長点と適合可能な塩、特に、生理学的に許容可能な有機または無機酸と形成される塩を意味すると理解される。これらとして、好ましくは、ハロゲン化水素酸、例えば臭化水素もしくは塩化水素など、またはリン酸もしくは硝酸、または一および二官能性カルボン酸およびヒドロキシカルボン酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、ソルビン酸および乳酸、ならびに、最後にスルホン酸、例えば1,5-ナフタレンスルホン酸を挙げることができる。
【0017】
好ましくは、塩酸アモロルフィンを形成する塩酸の使用を挙げることができる。なぜならば、塩酸アモロルフィンは、真菌類、例えば酵母、皮膚糸状菌、カビおよびDematiaceae(黒カビ)の細胞膜のステロールの合成を阻害することによって、静真菌性および殺菌活性を有するからである。
【0018】
好ましい実施態様においては、本発明は、また、皮膚疾患の治療を意図した、爪および爪周辺への塗布用の組成物であって、
- 抗真菌剤としての塩酸アモロルフィン;
- 水溶性皮膜形成剤;
- 少なくとも1つの吸収促進剤;
- 有機溶媒または有機溶媒/共溶媒の混合物;
- 任意に、可塑剤
を含むことを特徴とする、組成物に関する。
【0019】
好ましくは、抗真菌剤、具体的には塩酸アモロルフィンの濃度は、組成物の全重量に対して(w/w)、0.01から20重量%、より特には、組成物の全重量に対して、0.1から8重量%、好ましくは、2.5重量%、3.5重量%または5重量%に等しい。
【0020】
用語「爪および爪周辺への塗布用の医薬組成物」とは、具体的には、マニキュア、または爪およびその周辺に塗布用の皮膜形成溶液を定義する。
【0021】
本発明による組成物は、水溶性皮膜形成剤を含む。用語「皮膜形成剤」は、皮膜または層の形成を可能とする結合剤を定義する。用語「水溶性皮膜形成剤」は、20℃の温度で、1gの皮膜形成剤が100gの水に、好ましくは50g以下の水に、または30g以下の水に、より好ましくは10g以下の水に溶解し、水と完全に適合する皮膜形成剤を意味すると理解される。
【0022】
水溶性皮膜形成剤は、ポリビニルピロリドンおよび誘導体、ポリサッカリド、ガム、ポリビニルアルコール、セルロースおよび誘導体、シアノアクリルポリマー、または水に溶けるアクリルポリマーおよびコポリマーならびにポリアクリルアミドから選択される。本発明にしたがって使用する水溶性皮膜形成剤は、天然起源、例えばキトサンとすることができるが、ヒドロキシアルキルキトサンおよびカルボキシアルキルキトサンを除く。
【0023】
ポリビニルピロリドンおよび誘導体としては、ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーおよびビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを挙げることができる。
【0024】
ポリサッカリドの例としては、セルロースおよび誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースを挙げることができる。また、他のポリサッカリドとしては、ヒアルロン酸ナトリウムまたはペクチンを挙げることができる。
【0025】
ガムの例としては、グアーガム、カラギーナンガム、カラヤガムまたはキサンタンガムを挙げることができる。ポリサッカリドまたはアクリル酸/メタクリル酸、ポリメタクリレート/ブチルアクリレートまたはアクリル酸/アクリレートコポリマーを挙げることができる。
【0026】
好ましくは、本発明による水溶性皮膜形成剤は、ポリビニルピロリドンおよびその可溶性コポリマー、例えば、コポビドンなどから選択される;代替的には、本発明による水溶性皮膜形成剤は、セルロースおよび誘導体、ポリサッカリドおよびシアノアクリルポリマーから選択される。
【0027】
前記した皮膜形成剤は、0.01から50%(w/w)の範囲の好ましい濃度で、好ましくは、0.5から30%(w/w)の範囲の濃度で、使用される。
【0028】
加えて、本発明によれば、医薬組成物は、少なくとも1つの爪への吸収促進剤を含む。
【0029】
用語「爪への吸収促進剤」は、活性剤に対する爪の浸透性を増大し、その結果、爪を介したこれら活性剤の浸透カイネティクスを増大することができる、医薬的に許容可能な化学的化合物を意味すると理解される。
【0030】
一般的に、使用される吸収促進剤は、以下のリストから選択することができるが、このリストは本発明の範囲に関して制限するわけではない:スルホキシド、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオールエーテルおよびポリオール、アミド、界面活性剤、テルペン、アルカノン、ラクトン、メルカプタン、脂肪族有機化合物、アミノ酸および誘導体、ジオキソラン、アゾン、およびこれらの混合物。
【0031】
スルホキシドの例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシド、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0032】
脂肪酸の例として、吉草酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、カプリル酸、イソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸またはイソステアリン酸、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0033】
脂肪酸エステルの例としては、n-酪酸イソプロピル、n-ヘキサン酸イソプロピル、n-デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクタドデシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル、ラルリン酸エチル、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0034】
ポリオールエーテルの例としては、このリストに制限されるわけではないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチルグリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール-8グリセロールカプリレート、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0035】
ポリオールの例としては、このリストに制限されるわけではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、プロピレングリコールモノカプリレート、およびこられの混合物を挙げることができる。
【0036】
アミドの例としては、尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルオクタアミド、ジメチルデカアミド、1-アルキル-4-イミダゾリン-1-オン、環状アミド、ヘキサメチレンラウルアミドおよびその誘導体、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピロリドン誘導体、例えば1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1-ラウリル-2-ピロリドン、1-ラウリル-4-カルボキシ-2-ピロリドンまたは1-メチル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。
【0037】
本発明によって使用することができる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、胆汁塩およびレシチンを挙げることができる。
【0038】
アニオン性界面活性剤としては、ラルリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物を挙げることができる。
【0039】
カチオン性界面活性剤のタイプとしては、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンズアルカニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムまたは塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを挙げることができる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、このリストに制限されるわけではないが、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエステル、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
両性界面活性剤の例としては、このリストに制限されるわけではないが、ラウルアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ココベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、アミノプロピルラウリルグルタミド、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホプロピオン酸ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ココアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウルイミド二プロパン酸ナトリウム、ココアンホカルボキシメチルヒドロキシプロピルスルホン酸二ナトリウム、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0042】
本発明によって使用されるテルペンとしては、D-リモネン、α-ピネン、β-エンレン(β-enrene)、α-テルピネオール、テルピネン-4-オール、カルボール、カルボン、プレゴン、ピペリトン、メントン、メントール、ゲラニオール、シクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、α-ピネンオキシド、シクロペンテンオキシド、1,8-シネオール、イランイラン油、アニス油、ユーカリ油、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0043】
アルカノンとしては、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、およびこれらの混合物の使用を挙げることができる。
【0044】
本発明によって使用することができるラクトンの例としては、Bentleyによって名称CPE-125で販売されているクロペンタデカラクトンを挙げることができる。
【0045】
メルカプタンの例としては、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシンを挙げることができる。
【0046】
両性有機化合物としては、C1からC18の、好ましくはC1からC12の脂肪族有機モノまたはポリカルボン酸およびその誘導体、例えば、特に、ヒドロキシモノカルボン酸およびヒドロキシジカルボン酸を挙げることができる。
【0047】
C1からC12脂肪族カルボン酸としては、特には、ヒドロキシ酸、例えば、制限するわけではないが、メタン酸、2-メチルブタン酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、デカン酸、オクタン酸、ヘキサ-2-エン酸、ヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、3-エチルペンタン酸、3-クロロペンタン酸、2-ヒドロキシプロパン酸、2-クロロ-4-ヒドロキシヘキサン酸、ヘキサン二酸、オクタデカン酸、4-オキソペンタン酸、6-ヒドロキシ-4-オキソノナン酸、2-ケトプロパン酸、タルトロン酸、マレイン酸、酒石酸、グルカン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、イソクエン酸、トロパ酸、5-ヒドロキシラルリン酸、3-ヒドロキシ-4-メトキシマンデル酸、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0048】
アミノ酸および誘導体の例としては、硫黄原子を含むアミノ酸、例えば、制限するわけではないが、L-システイン、D-システイン、D,L-システイン、N-アセチル-L-システイン、D,L-ホモシステイン、L-システインメチルエステル、L-システインエチルエステル、N-カルバモイルシステイン、グルタチオンおよびシステアミンを挙げることができる。
【0049】
ジオキソランの例としては、Macrochemによって名称SEPAで販売されている2-(n-ノニル)-1,3-ジオキソランを挙げることができる。
【0050】
好ましくは、吸収促進剤は、尿素、乳酸、N-アセチル-L-システインおよびこれらの混合物から選択される。
【0051】
前記した吸収促進剤は、活性成分の最適な浸透を可能とする割合で使用される。好ましくは、吸収促進剤は、0.1から20%の範囲、より特には0.25から10%の範囲の濃度で、組成物中に存在する。
【0052】
前記したように、本発明による組成物は、溶媒、または1つもしくは複数の共溶媒と溶媒との混合物を含む。水溶性型の皮膜形成剤の存在によって、多くのタイプの溶媒の使用が可能となる。
【0053】
溶媒および/または共溶媒は、有機溶媒のファミリーから選択され、ICHスタンダード(Impurities: Guideline for Residual Solvents, International Conference of Harmonization)に従って、低毒性のClass 3の溶媒、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アルキルメチルスルホキシド、2-プロパノール、メチルイソブチルケトン、1-ブタノール、ジクロロメタン、N-メチル-2-ピロリドンまたはこれらの混合物である。
【0054】
好ましくは、前記の溶媒および/または共溶媒として、揮発性有機溶媒および/または共溶媒の使用を挙げることができる。エタノールが、特に好ましい溶媒である。
【0055】
好ましくは、溶媒および/または共溶媒は、組成物の全重量に対して、60重量%以上の濃度で、好ましくは、組成物の全重量に対して、70から90重量%の範囲の濃度で使用する。
【0056】
更にその上、共溶媒として、組成物の全重量に対して、0.01から30重量%の範囲の濃度で、精製水を使用することができる。
【0057】
加えて、精製水は、前記した溶媒および/または共溶媒の1つまたは複数と組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明による組成物は、任意に、可塑剤を含むことができる。可塑剤としては、このリストに制限されるわけではないが、フタル酸エステル、トリ酢酸エステル、クエン酸エステルまたはこれらの混合物などの化合物の使用を挙げることができる。
【0059】
可塑剤は、好ましくは、組成物の全重量に対して、0.01から10重量%の範囲の、より具体的には0.01から5重量%の範囲の濃度で存在する。
【0060】
更にその上、前記した組成物は、好ましくは、推進ガスが存在する、または推進ガスが存在しない噴霧可能な溶液の形態で、提供される。
【0061】
組成物が推進ガスを含む場合は、好ましくは、プロパン、ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、オクタフルオロシクロブタン、窒素、二酸化炭素、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物から選択される。
【0062】
本発明の好ましい形態によれば、推進ガスは、液体形態であり、その濃度は、組成物の全重量に対して、0.01から30重量%である。
【0063】
他の活性剤を、抗真菌剤以外に、例えば、抗生物質、抗細菌剤、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、核内受容体のモジュレーターである薬剤、またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0064】
本発明による爪および爪周辺への塗布用の溶液、特にマニキュアは、付加的に、化粧品または医薬業界で通常使用される任意の添加剤、例えば、封鎖剤、湿潤剤、結合剤、拡散剤、抗酸化剤、サンスクリーン、防腐剤、フィラー、電解質、保湿剤、顔料、色素、通常の無機もしくは有機塩もしくは酸、エッセンシャルオイル、化粧品活性成分、モイスチャー剤、ビタミン、必須脂肪酸またはスフィンゴリピドを含むことができる。
【0065】
当然のことながら、当業者は、このまたはこれらの最適な添加化合物および/またはその量を、本発明による組成物の有利な特性が悪影響を受けないように、または実質的に受けないように、注意して選択することができる。
【0066】
本発明による医薬組成物は、特に、以下の分野の皮膚疾患の治療に良く適合する:
爪甲真菌症、緑色の爪、急性細菌爪周囲炎および慢性爪周囲炎を含む爪周囲炎、類丹毒、爪裂症、淋菌感染、プール肉芽腫、幼虫移行症、ハンセン病、orf結節(orf nodule)、乳搾り人結節、疱疹性ひょう疽、スポロトリクム症、梅毒、疣状結核、ツラレミア、スナノミ症、爪周囲および爪下のいぼ、帯状疱疹、二十爪発育異常症(粗造爪)および爪に対して影響を及ぼす皮膚疾患、例えば乾癬、膿疱性乾癬、円形脱毛、膿疱性不全角化症、接触皮膚炎、ライター症候群、乾癬状末端皮膚炎、扁平苔癬、爪の特発性萎縮、光沢苔癬、線状苔癬、炎症性線状疣贅状表皮母斑(ILVEN)、円形脱毛症、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、後天性表皮水疱症、ダリエー病、毛孔性紅色粃糠疹、掌蹠角皮症、接触湿疹、多形性紅斑、疥癬、バゼックス症候群(Bazex’s syndrome)、全身性強皮症、全身性紅斑性狼瘡、慢性紅斑性狼瘡または皮膚筋炎。
【0067】
それ故、本発明は、また、前記した病気の治療および/または予防を意図した医薬の製造における、本発明による組成物の使用に関する。
【0068】
本発明の対象は、加えて、真菌類が関連する病気、好ましくは爪甲真菌症の治療および/または予防を意図した医薬の製造における、前記の爪および爪周辺への塗布用の組成物の使用に関する。
【0069】
以下の実施例により、本発明の範囲を制限することなく、本発明を例示することができる。調合例においては、成分の量は、特に指定しない限り、組成物の全重量に対して、パーセントで表される。
【実施例】
【0070】
(実施例1:組成物)
アモロルフィンHCl 6.4%
尿素 2.5%
乳酸 4.0%
ポリビニルピロリドン 3.0%
エタノール q.s.p. 100%まで
【0071】
(実施例2:組成物)
アモロルフィンHCl 6.4%
尿素 2.5%
N-アセチル-L-システイン 1.5%
ヒドロキシエチルセルロース 3.0%
エタノール q.s.p. 100%まで
【0072】
(実施例3:組成物)
アモロルフィンHCl 6.4%
N-アセチル-L-システイン 1.5%
ヒドロキシエチルセルロース 1.0%
水 10.0%
エタノール q.s.p. 100%まで
【0073】
(実施例4:組成物)
アモロルフィンHCl 6.4%
セテアリルアルコール 2.5%
ポリビニルピロリドン 3.0%
酢酸エチル 4.0%
エタノール q.s.p. 100%まで

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪および爪周辺への塗布用の医薬組成物であって、
- モルフォリンファミリーおよびその誘導体から選択される抗真菌活性剤;
-水溶性皮膜形成剤(ただし、ヒドロキアルキルキトサンおよびカルボキシアルキルキトサンを除く);
- 少なくとも1つの吸収促進剤;
- 有機溶媒、または有機溶媒/共溶媒の混合物
を含むことを特徴する、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗真菌剤が、フェンプロピモルフ、トリデモルフ、アモロルフィンおよびその医薬的に許容可能な塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬的に許容可能なアモロルフィン塩が、ハロゲン化水素酸、一および二官能性カルボン酸およびヒドロキシカルボン酸、ならびにスルホン酸から選択される酸と形成する塩であることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記塩が、塩酸アモロルフィンであることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
- 抗真菌剤としての塩酸アモロルフィン;
- 水溶性皮膜形成剤;
- 少なくとも1つの吸収促進剤;
- 有機溶媒または有機溶媒/共溶媒の混合物
を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗真菌剤の濃度が、組成物の全重量に対して、0.01から20重量%、より具体的には、0.1から8重量%であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗真菌剤の濃度が、組成物の全重量に対して、2.5重量%、3.5重量%または5重量%に等しいことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記水溶性皮膜形成剤が、ポリビニルピロリドンおよび誘導体、ポリサッカリド、ガム、ポリビニルアルコール、セルロースおよび誘導体、シアノアクリルポリマー、ならびに水に溶けるポリアクリルアミドおよびアクリルポリマーおよびコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記皮膜形成剤が、ポリビニルピロリドンおよびその可溶性コポリマーから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記皮膜形成剤が、セルロースおよび誘導体、ポリサッカリドならびにシアノアクリルポリマーから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記皮膜形成剤が、0.01から50%(w/w)の範囲の濃度で、好ましくは、0.5から30%(w/w)の範囲の濃度で使用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記吸収促進剤が、スルホキシド、脂肪酸、脂肪酸エステル、ポリオール、アミド、界面活性剤、テルペン、アルカノン、ラクトン、メルカプタン、脂肪族有機化合物、アミノ酸および誘導体、ジオキソラン、アゾン、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記吸収促進剤が、尿素、乳酸、N-アセチル-L-システインおよびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記吸収促進剤が、0.1から20%の範囲の濃度で、より好ましくは、0.25から10%の範囲の濃度で使用されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記有機溶媒および/または少なくとも1つの有機共溶媒が、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アルキルメチルスルホキシド、2-プロパノール、メチルイソブチルケトン、1-ブタノール、ジクロロメタン、N-メチル-2-ピロリドンおよびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記溶媒がエタノールである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒/共溶媒の濃度が、組成物の全重量に対して、70から90重量%であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
共溶媒として水を含むことを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記水が、組成物の全重量に対して、0.01から30重量%の範囲の濃度で使用されることを特徴とする、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
フタル酸エステル、トリ酢酸エステル、クエン酸エステルおよびこれらの混合物から選択される可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記可塑剤が、組成物の全重量に対して、0.01から10重量%の範囲の濃度で、好ましくは、0.01から5重量%の範囲の濃度で存在することを特徴とする、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
皮膜形成溶液またはマニキュアであることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
噴霧可能な溶液であることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
推進ガスを含むことを特徴とする、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記推進ガスが、プロパン、ブタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、オクタフルオロシクロブタン、窒素、二酸化炭素、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記推進ガスが、液体形態であることを特徴とする、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
前記推進ガスが、組成物の全重量に対して、0.01から30重量%の割合で存在することを特徴とする、請求項24から26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記抗真菌剤に加えて、抗生物質、抗細菌剤、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、核内受容体のモジュレーターである薬剤、抗カビ剤およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの他の活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
爪甲真菌症、緑色の爪、急性細菌爪周囲炎および慢性爪周囲炎を含む爪周囲炎、類丹毒、爪裂症、淋菌感染、プール肉芽腫、幼虫移行症、ハンセン病、orf結節、乳搾り人結節、疱疹性ひょう疽、スポロトリクム症、梅毒、疣状結核、ツラレミア、スナノミ症、爪周囲および爪下のいぼ、帯状疱疹、二十爪発育異常症および爪に対して影響を及ぼす皮膚疾患、例えば乾癬、膿疱性乾癬、円形脱毛、膿疱性不全角化症、接触皮膚炎、ライター症候群、乾癬状末端皮膚炎、扁平苔癬、爪の特発性萎縮、光沢苔癬、線状苔癬、炎症性線状疣贅状表皮母斑、円形脱毛症、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、後天性表皮水疱症、ダリエー病、毛孔性紅色粃糠疹、掌蹠角皮症、接触湿疹、多形性紅斑、疥癬、バゼックス症候群、全身性強皮症、全身性紅斑性狼瘡、慢性紅斑性狼瘡または皮膚筋炎から選択される皮膚疾患の治療および/または予防を意図した医薬の製造における、請求項1から28のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記医薬が、爪甲真菌症の治療および/または予防を意図することを特徴とする、請求項29に記載の使用。

【公表番号】特表2009−511553(P2009−511553A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535064(P2008−535064)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002307
【国際公開番号】WO2007/042682
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(500247183)ガルデルマ・ソシエテ・アノニム (29)
【Fターム(参考)】