説明

物体検出装置

【課題】移動体に搭載した場合に、受信信号のSN比の向上を実現しながらも、検出対象とする物体の相対速度の範囲を当該移動体の速度に応じて変更することを可能にする物体検出装置を提供する。
【解決手段】移動体に搭載され、複数のパルスからなる複数のパルス列で構成される送信信号を発生するパルス発生器1と、パルス発生器1の発生する送信信号について、所定の符号系列に従って送信信号のパルス列毎にデジタル変調を施した変調信号を出力する信号変換器2と、信号変換器2の出力する変調信号を送信波として送波するとともに、その送信波の反射波を受波するマイク6と、マイク6で受波した反射波から得られる受信信号と前記変調信号との符号の相関値を求め、その結果により反射波から得られる受信信号をパルス圧縮するパルス圧縮手段とを備え、移動体の速度に応じて、信号変換器2において用いる符号系列の長さを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の検出を行う物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス信号を送信し、物体によって反射された反射波を受信することによって、物体の存在を検出する物体検出装置が知られている。このような物体検出装置では、物体検出距離を向上させるためには、受信信号のSN比を改善する必要がある。
【0003】
これに対して、特許文献1には、パルス圧縮と呼ばれる手法を用いることで、受信信号のSN比を改善する物体検出装置が開示されている。特許文献1に開示の物体検出装置では、パルス信号の周波数や位相等を変調した変調信号を送信し、その反射波等を受信した後、受信した反射波を直交復調して受信信号を生成する。そして、生成した受信信号と変調信号との相関(自己相関)を求め、その結果により受信信号のパルス幅を圧縮することで、静止物体の反射波から生成される受信信号のSN比の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献1には、等速で運動する物体のドップラーシフトを補正するための補正信号を用いて受信信号のドップラーシフトを補正する物体検出装置も開示されている。この物体検出装置では、ドップラーシフトの補正後の受信信号と変調信号とから相関を求めるようにすることで、等速で運動する物体の反射波から生成される受信信号のSN比の向上を図っている。
【0005】
さらに、特許文献1には、物体検出装置を搭載した車両の車速から、静止物体の反射波から生成される受信信号のドップラーシフト分の周波数を算出し、算出した周波数に応じて補正信号を変更することで、静止物体の反射波から生成される受信信号のSN比の向上を図る物体検出装置も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4283170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
物体検出装置を車両等の移動体に搭載する場合、移動体の速度に応じて、当該移動体に対する相対速度の範囲が異なる物体を検出対象とするようにしたい要求が生じることが考えられる。例えば、移動体として自動車を想定した場合に、高速道路等の高速走行時には、自車両との速度比が小さい並走車両のみを検出対象とする例が考えられる。一方、駐車場での低速走行時には、車止め等の静止物や歩行者等の移動物といった自車両との速度比にばらつきがある物体を同時に検出対象とする例が考えられる。
【0008】
特許文献1には、物体検出装置を車両等の移動体に搭載する場合に、移動体に対して相対的に移動している物体の反射波から生成される受信信号のドップラーシフトを補正してパルス圧縮を行うことによって、受信信号のSN比の向上を図ることが記載されている。しかしながら、検出対象とする物体の相対速度の範囲を、物体検出装置を搭載した移動体の速度に応じて変更することについては記載されていない。よって、特許文献1に開示の物体検出装置は、車両等の移動体に搭載した場合に、検出対象とする物体の相対速度の範囲を、当該移動体の速度に応じて変更することができないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、移動体に搭載した場合に、受信信号のSN比の向上を実現しながらも、検出対象とする物体の相対速度の範囲を当該移動体の速度に応じて変更することを可能にする物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の物体検出装置においては、複数のパルスからなる複数のパルス列で構成される送信信号を発生する送信信号発生手段と、送信信号発生手段の発生する送信信号のパルス列ごとに所定の符号系列に従ってデジタル変調を施した変調信号を出力する変調手段と、変調手段の出力する変調信号から送信波を生成して送波するとともに、その送信波の反射波を受波する送受波手段と、送受波手段で受波した反射波から得られる受信信号と変調信号との符号の相関値を求め、その結果により反射波から得られる受信信号をパルス圧縮するパルス圧縮手段とを備え、パルス圧縮手段でパルス圧縮された受信信号に基づいて検出対象とする物体を検出する。また、移動体の速度を取得する移動速度取得手段を備え、移動速度取得手段で取得した速度に応じて、符号系列の長さを変更する。なお、符号系列の長さの変更は、符号系列の符号長の変更、および符号系列に含まれる符号自体の長さの変更のうちの少なくともいずれかによって行うものとする。
【0011】
請求項1の構成によれば、受信信号をパルス圧縮するので、受信信号のSN比の向上を図ることができ、その受信信号をもとにして物体を検出する場合の検出距離をのばすことが可能になる。
【0012】
パルス圧縮に利用する符号系列においては、符号系列の長さが長くなるほど、同じ相対速度に対しての位相回転量が増し、自己相関をとる場合に高い出力が得られる幅が狭くなる。これは、検出対象とする物体の相対速度の範囲が狭くなることを意味している。一方、符号系列の長さが短くなるほど、同じ相対速度に対しての位相回転量が減り、自己相関をとる場合に高い出力が得られる幅が広くなる。これは、検出対象とする物体の相対速度の範囲が広くなることを意味している。
【0013】
請求項1の構成によれば、物体検出装置を搭載した移動体の速度に応じて符号系列の長さを変更するので、上述した関係により、当該移動体の速度に応じて、検出対象とする物体の相対速度の範囲を変更することができる。その結果、受信信号のSN比の向上を実現しながらも、検出対象とする物体の相対速度の範囲を当該移動体の速度に応じて変更することが可能になる。
【0014】
請求項2の構成においては、移動速度取得手段で取得した速度が第1の所定速度以上の場合と、第1の所定速度よりも小さい第2の所定速度以下の場合とで符号系列の長さを変更することになる。これによれば、移動体の速度が第1の所定速度以上の場合および第2の所定速度以下の場合という2つの異なるシチュエーションごとに、検出対象とする物体の相対速度の範囲を変更することができる。例えば、低速走行時と高速走行時とで検出対象とする物体の相対速度の範囲を変更することが可能になる。
【0015】
請求項3の構成においては、移動速度取得手段で取得した速度が第1の所定速度以上の場合には、第2の所定速度以下の場合よりも符号系列の長さを長くすることになる。これによれば、移動体の速度が第2の所定速度以下の場合には、第1の所定速度以上の場合よりも、検出対象とする物体の相対速度の範囲を広くすることができる。よって、移動体の低速走行時には検出対象とする物体の相対速度の範囲を広くする一方、高速走行時には検出対象とする物体の相対速度の範囲を狭くするといった使い分けが可能になる。
【0016】
送信信号をデジタル変調して送信する場合であって、検出対象とする物体までの距離が近い場合には、符号系列の長さが長いほど、送信波と反射波とが重なる時間帯が発生する可能性が高くなり、物体の検出が困難となる。一方、符号系列の長さが短いほど(デジタル変調なしも含む)、送信波と反射波とが重なる時間帯が発生する可能性は低くなり、検出対象とする物体までの距離が近い場合であっても、物体の検出を行い易くなる。
【0017】
また、移動体の停止時には、移動体の走行時よりも、近距離の物体を検出対象とする必要性が高くなると考えられる。移動体として自動車を想定した場合を例に挙げると、停車からの発進時には、走行時とは異なり、自動車の陰に存在するような近距離の障害物を検出する必要性があると考えられるためである。
【0018】
これに対して、請求項4の構成においては、移動体が停止していると判定した場合に、符号系列の長さの長短を周期的に切り替えることになる。よって、長さのより長い符号系列を用いるときには受信信号のSN比の向上を可能にし、長さのより短い符号系列を用いるときには、より近距離の物体の検出を行うことを可能にする。従って、より近距離の物体を検出する必要性がある場合に、より近距離の物体の検出を行うことを可能にしながら、受信信号のSN比の向上も可能にすることができる。
【0019】
また、請求項4のようにする場合には、請求項5のように、停止判定手段で移動体が停止していると判定した場合において、符号系列の長さが第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合、当該検出対象とする物体の検出中は、符号系列の長さを第2の長さに維持し続ける態様とすればよい。これによれば、移動体の停止中に一旦物体を検出した場合は、長さのより短い符号系列を用いて、より近距離の物体の検出を行い易くし続けることが可能になる。
【0020】
また、請求項4や請求項5のようにする場合には、請求項6のように、停止判定手段で移動体が停止していないと判定した場合には、符号系列の長さを、第1の長さ以上とする態様としてもよい。これによれば、移動体が走行を開始し、より近距離の物体を検出する必要性がなくなった場合には、移動体の停止時に用いる長さ以上の符号系列を用いて、受信信号のSN比の向上をより確実に行うことを可能にすることができる。
【0021】
また、請求項4のようにする場合には、請求項7のように、停止判定手段で移動体が停止していると判定した場合において、符号系列の長さが第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合には、その後に停止判定手段で移動体が停止していないと判定した場合に、符号系列の長さを第2の長さとする一方、第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出しなかった場合には、その後に停止判定手段で移動体が停止していないと判定した場合に、符号系列の長さを、第1の長さ以上とする態様としてもよい。これによれば、移動体の停止中に長さのより短い符号系列を用いて物体を検出済みであった場合には、走行を開始した後も長さのより短い符号系列を用いて、より近距離の物体の検出を行い易くし続けることを可能にすることができる。一方、移動体の停止中に長さのより短い符号系列を用いて物体を検出済みでなく、走行を開始したときに近距離の物体を検出する必要性がない場合には、移動体の停止時に用いる長さ以上の符号系列を用いて、受信信号のSN比の向上をより確実に行うことを可能にすることができる。
【0022】
請求項8の構成においては、送受波手段で受波した反射波から得られる受信信号を符号系列の1符号長分ごとに積分する積分手段を備え、パルス圧縮手段は、積分手段で1符号長分ごとに積分された受信信号と変調信号との符号の相関値を求め、その結果により反射波から得られる受信信号をパルス圧縮することになる。パルス圧縮を行う場合、従来の方法では、1符号長の中で位相が整数倍だけ回転してしまう相対速度でも符号の自己相関が高くなるため、対象とする相対速度範囲外の物体(つまり、検出対象外の物体)も誤検出してしまうという問題点があった。
【0023】
これに対して、請求項8の構成によれば、符号系列の1符号長内の信号を積分するので、1符号長内での位相回転量が大きいほど、お互いが弱めあって出力が小さくなる。よって、位相回転量が大きいほど、求められる相関値が小さくなる。一方、位相回転量が小さいほど、お互いが弱め合わないため出力が小さくならず、求められる相関値が大きくなる。従って、積分を行うことによって、対象とする相対速度範囲内の物体と検出対象外の物体とを判別し易くすることができ、検出対象外の物体の誤検出を防ぐことが可能になる。
【0024】
請求項9の構成においては、パルス圧縮手段で求められた相関値の振幅と位相の変化量とのうちの少なくとも振幅をもとに、検出対象とする物体の有無を判定することになる。対象とする相対速度範囲内であって位相回転量が小さい場合には、相関値の位相の変化量は小さくなるが振幅は大きくなる。一方、対象とする相対速度範囲外であって位相回転量が大きい場合には、相関値の位相の変化量が大きくなるが振幅は小さくなる。よって、相関値の振幅や位相の変化量の大きさをもとにして、検出対象とする物体と検出対象外の物体とを判別することができる。
【0025】
請求項10の構成においては、パルス圧縮手段は、受信信号のドップラーシフトを補正するための補正係数を用いて、反射波から得られる受信信号のドップラーシフトを補正するドップラーシフト補正手段を備え、ドップラーシフト補正手段で補正した後の受信信号と変調信号との符号の相関値を求め、その結果により反射波から得られる受信信号をパルス圧縮する。また、このパルス圧縮手段として、ドップラーシフト補正手段における補正係数が各々異なるものを複数備え、複数のパルス圧縮手段で求められた各相関値の振幅レベルのうちの最大値について、予め設定した振幅レベルとの大小関係を判定する閾値判定を行い、その判定結果に基づいて、検出対象とする物体の有無を判定することになる。
【0026】
請求項10の構成においては、複数のパルス圧縮手段は、受信信号のドップラーシフトについての補正係数が各々異なっている。よって、それぞれ異なる相対速度範囲の物体からの反射波から得られる受信信号のSN比を向上できるようになっているとともに、対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっている。また、請求項10の構成においては、複数のパルス圧縮手段で求められた各相関値の振幅レベルのうちの最大値について、予め設定した振幅レベルとの大小関係を判定する閾値判定を行い、その判定結果に基づいて、検出対象とする物体の有無を判定することになる。上述したように、対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっているので、各パルス圧縮手段で求められる相関値の振幅レベルのうちの最大値について閾値判定を行うことで、検出対象とする物体の有無を精度良く判定することができる。
【0027】
また、請求項10のようにする場合には、請求項11のように、検出対象とする物体があると判定した場合に、振幅レベルが最大値となる相関値が求められたパルス圧縮手段を特定することによって、検出対象とする物体の相対速度を判定する態様とすればよい。上述したように、複数のパルス圧縮手段は、それぞれ対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっている。よって、検出対象とする物体があると判定した場合に、振幅レベルが最大値となる相関値が求められたパルス圧縮手段を特定すれば、その物体の相対速度を容易に判定することができる。
【0028】
請求項12の構成においては、複数のパルス圧縮手段は、受信信号のドップラーシフトについての補正係数が各々異なっている。よって、それぞれ異なる相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号のSN比を向上できるようになっているとともに、対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっている。また、請求項12の構成においては、複数のパルス圧縮手段で求められた各相関値の振幅レベルについて、予め設定した振幅レベルとの大小関係をそれぞれ判定する閾値判定を行い、その判定結果に基づいて、検出対象とする物体の有無を判定することになる。上述したように、対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっているので、各パルス圧縮手段で求められる相関値の振幅レベルのそれぞれについて閾値判定を行うことで、検出対象とする物体の有無を精度良く判定することができる。
【0029】
また、請求項12のようにする場合には、請求項13のように、検出対象とする物体があると判定した場合に、振幅レベルが予め設定した振幅レベル以上となる相関値が求められたパルス圧縮手段を特定することによって、検出対象とする物体の相対速度を判定する態様とすればよい。上述したように、複数のパルス圧縮手段は、それぞれ対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっている。よって、検出対象とする物体があると判定した場合に、振幅レベルが予め設定した振幅レベル以上となる相関値が求められたパルス圧縮手段を特定すれば、その物体の相対速度を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】物体検出装置100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、1符号長の中で位相が整数倍だけ回転してしまう場合のIQ平面上の受信信号のベクトルを示す図であり、(b)は、1符号長の中で位相が回転しない場合のIQ平面上の受信信号のベクトルを示す図である。
【図3】並走車両および静止物のそれぞれからの反射波についての相関値の振幅ならびに位相の変化を示したグラフである。
【図4】物体検出装置100の動作フローを示すフローチャートである。
【図5】物体検出装置200の概略的な構成を示すブロック図である。
【図6】各相関フィルタ14の各符号についての位相回転補正係数の一例を示す図である。
【図7】(a)および(b)は、位相回転補正係数の異なる各相関フィルタ14の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0032】
(実施形態1)
まず、実施形態1における物体検出装置100について説明を行う。図1は、物体検出装置100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す物体検出装置100は、例えば自動車に搭載されるものである。なお、物体検出装置100を搭載している自動車を以降では自車両と呼ぶ。
【0033】
図1に示すように、物体検出装置100は、パルス発生器1、信号変換器2、正弦波発生器3、AMP(増幅器)4、ADC(アナログ/デジタルコンバータ)5、マイク6、位相器7、乗算器8・9、LPF(ローパスフィルタ)10・11、および積分器12・13を備えている。また、物体検出装置100は、図示しないマイクロコンピュータを備えており、相関フィルタ14、判定部15、距離検出部16、報知部17、および制御部18等の演算処理機能を備えている。
【0034】
パルス発生器1は、複数のパルスからなる複数のパルス列によって構成される角周波数(ω)のバーストパルス信号(以下、パルス信号と呼ぶ)を発生し、このパルス信号を信号変換器2へ出力する。また、パルス発生器1は、制御部18によって、パルスを発生し続ける持続時間が制御される。パルス信号が請求項の送信信号、パルス発生器1が請求項の送信信号発生手段に相当する。
【0035】
信号変換器2は、パルス信号の位相をデジタル位相符号変調するもので、複数の符号の組み合わせで構成される符号系列に従ってパルス信号のパルス列毎に位相を変更する。よって、信号変換器2が請求項の変調手段に相当する。符号系列としては、自己相関の高い符号系列を用いる構成とすればよい。本実施形態では、一例として、Barker符号系列を用いるものとして以降の説明を続ける。また、信号変換器2は、制御部18によって、変調に用いる符号系列の長さが変更される。なお、符号系列の長さの変更は、符号系列の符号数(つまり、符号長)の変更、および符号自体の長さの変更のうちの少なくともいずれかによって行うものとする。
【0036】
正弦波発生器3は、任意の角周波数(ω1)の正弦波を発生するものである。なお、本実施形態の正弦波発生器3は、パルス発生器1から出力されるパルス信号の角周波数(ω)に同期した角周波数の正弦波を発生することもできる。正弦波発生器3の発生する正弦波の信号は、位相器7、および乗算器9に出力される。
【0037】
マイク6は、例えば超音波センサであり、圧電素子および圧電素子を囲むカバーによって構成される。マイク6は、圧電素子の駆動に伴ってカバーが共振する共振型マイクである。詳しくは、信号変換器2においてパルス信号の位相を変化させた変調信号が圧電素子に供給されることで圧電素子が駆動し、この駆動に伴ってカバーが共振することにより、超音波が送波されるものである。
【0038】
このように、圧電素子を駆動するためのパルス信号の位相を変化させることで、マイク6から送波される送信波の位相をデジタル変調することが可能となる。なお、本実施形態の符号系列の符号として、パルス信号のパルス列の位相を(π/2)だけ遅らせるパルス列に対して符号「−1」を割り当て、逆に、パルス列の位相を(π/2)だけ進めるパルス列に対して符号「1」を割り当てている。
【0039】
また、マイク6では、この送波した超音波の反射波を受波し、この反射波を受波することで圧電素子に電圧が発生する。この発生した電圧は、AMP4によって所定倍に増幅され、ADC5に出力される。ADC5は、所定のサンプリング周波数(例えば、パルス信号の周波数の数倍程度)でAMP4から出力される受信信号をサンプリングしてデジタル信号に変換し、この変換した受信信号を乗算器8・9に出力する。よって、マイク6が請求項の送受波手段に相当する。
【0040】
なお、本実施形態の物体検出装置100では、マイク6を1つのみ採用する構成を示したが、必ずしもこれに限らず、複数採用するようにしてもよい。その場合には、複数のマイクの切り替えを行うためのスイッチを設け、所定時間毎にこのスイッチを切り替えるように制御することで、物体検出の対象とするマイクを変更する。これにより、複数のマイクを用いて、車両の多様な方向に存在する物体を検知することができる。また、その場合、マイク6以外の構成が共有化できるため、物体検出装置100のコストが削減できる。
【0041】
位相器7、乗算器8・9、およびLPF10・11は、ADC5からの受信信号を直交復調するために用いられるものである。詳しくは、正弦波発生器3からの正弦波信号を二つに分け、一方は位相器7を介して位相を変更したのち乗算器8に入力し、他方はそのまま乗算器9に入力する。そして、ADC5から出力される受信信号に対して乗算器8・9において乗算を行い、乗算を行ったものについては、LPF10・11にて高周波成分をフィルタリングして、受信信号を復調する。
【0042】
位相器7は、正弦波発生器3からの正弦波信号の位相を所定の位相(例えば、−π/2)に変更する。乗算器9は、ADC5から出力される受信信号と正弦波発生器3から出力される正弦波信号とを乗算し、乗算器8は、ADC5から出力される受信信号と位相器7によって位相の変更された正弦波信号とを乗算する。これにより、受信信号を同相成分(I成分)と直交成分(Q成分)に分離する。
【0043】
LPF10・11は、乗算器8・9から出力される受信信号のI成分およびQ成分に含まれる高周波を除去するために用いられる。そして、LPF10で高周波成分を除去したQ成分の受信信号を積分器12へ出力し、LPF11で高周波成分を除去したI成分の受信信号を積分器13へ出力する。
【0044】
積分器12・13は、LPF10・11から出力される受信信号のI成分およびQ成分について、1符合長分ごとに積分を行う。よって、積分器12・13が請求項の積分手段に相当する。そして、積分器12は、積分を行ったQ成分の受信信号を相関フィルタ14へ出力し、積分器13は、積分を行ったI成分の受信信号を相関フィルタ14へ出力する。
【0045】
なお、本実施形態では、積分器12・13が、LPF10・11から出力される受信信号のI成分およびQ成分について、1符合長分ごとに積分を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、LPF10・11から出力される受信信号のI成分およびQ成分について、1符合長分のサンプル数で積分した後、平均化してもよい。つまり、1符合長分のサンプル数で加算平均を行う構成としてもよい。1符合長分とは、符号長が7ビットの場合には、1ビット分に当たる。
【0046】
相関フィルタ14は、受信信号のパルス幅を圧縮するパルス圧縮を行う。詳しくは、時間的に異なるタイミングで、変調信号の共役複素符号を受信信号の符号に乗じた後、この乗算結果を加算する。そして、この加算結果を平均化して、受信信号と変調信号との相関値を求め、求めた相関値(詳しくは、複素相関値信号)を判定部15へ出力する。よって、相関フィルタ14が請求項のパルス圧縮手段に相当する。
【0047】
以下、相関値の求め方についての詳細な説明を行う。まず、パルス発生器1において、角周波数(ω)のパルス信号(f[t])を送信信号として発生し、この送信信号の位相をデジタル変調したうえで送波する場合、この送信波の基本波成分は、次式によって示される。なお、以下の式1の(θ[t])は、位相変調された送信信号の変調成分を示す関数である。
【数1】

【0048】
続いて、この送信波と略同等の周波数成分となる反射波から得られる受信信号に対し、角周波数(ω1t+θ2)の正弦波信号を用いて直交復調して、復調信号のI成分とQ成分とに分離すると、以下の式2のように示される。なお、(θ2)は、送信波が検出物体に反射して受信するまでの経路を伝搬することによって生ずる位相差である。
【数2】

【0049】
ここで、パルス信号(f[t])の角周波数(ω)に同期した角周波数(ω1=ω)の正弦波信号で直交復調すると、復調信号は以下の式3のように示される。
【数3】

【0050】
式3の示す復調信号に対して、LPF10・11を用いて角周波数(ω)の2倍周波数成分を除去すると、LPF10・11からの出力は、以下の式4のように示される。なお、式4のAは定数である。
【数4】

【0051】
このように、パルス信号(f[t])の角周波数(ω)に同期した角周波数の正弦波信号で直交復調し、その復調信号に含まれる2倍周波数成分を除去することで、受信信号の振幅(A)成分、および位相成分(θ[t]−θ2)を抽出することができる。そして、その結果、SN比の改善された受信信号を相関フィルタ14にてパルス圧縮することができる。なお、本実施形態では、受信信号の振幅成分と位相成分とを抽出する方法として直交復調を採用しているが、直交復調に限定されるものではない。
【0052】
そして、相関フィルタ14では、LPF10・11からの出力信号である受信信号と変調信号との相関を求めるために、時間的に異なるタイミングで、変調信号の共役複素符号を受信信号の符号に乗じた後、この乗算結果を加算して、その加算結果を平均化する以下の式5の演算を行うことで相関値を求める。なお、式5の(N)は、符号系列の符号長(符号数)である。
【数5】

【0053】
式5の演算結果を同相成分(I)と直交成分(Q)からなる複素平面(IQ平面)上にて示すと、送信信号の送信区間で一定の方向(IQ平面上の1点)を示すベクトルとなり、また、その乗算結果を加算平均することで、加算回数と比例した大きさのベクトルとなる。一方、受信信号のノイズとして、例えば、送信波と略等しい周波数の波を受波する場合であっても、その受波したノイズの信号と変調信号との相関はないため、IQ平面上でランダム化され、そのベクトルは小さいものとなる。
【0054】
このように、相関フィルタ14において受信信号と変調信号との相関を求めるパルス圧縮を行うことで、相関の程度を示す相関値のピークとピーク以外(サイドローブ)との相関値の差を際立たせることができる。よって、物体から反射される反射波から得られる受信信号のSN比を向上することができる。
【0055】
パルス圧縮を行う場合、従来の方法では、1符号長の中で位相が整数倍だけ回転してしまう相対速度でも符号の自己相関が高くなるため、対象とする相対速度範囲外の物体(つまり、検出対象外の物体)も誤検出してしまうという問題点があった。これに対して、以上の構成によれば、積分器12・13で積分を行うので、1符号長の中で位相が整数倍だけ回転してしまう相対速度の場合には、お互いが弱めあって出力が小さくなり、相関値が小さくなる(図2(a)参照)。一方、1符号長の中で位相がほとんど回転しない場合には、お互いが弱め合わないため出力が小さくならず、相関値が大きくなる(図2(b)参照)。
【0056】
よって、対象とする相対速度範囲内の物体と検出対象外の物体とを判別し易くすることができ、検出対象外の物体の誤検出を防ぐことが可能になる。図2(a)は、1符号長の中で位相が整数倍だけ回転してしまう場合のIQ平面上の受信信号のベクトルを示す図である。また、図2(b)は、1符号長の中で位相が回転しない場合のIQ平面上の受信信号のベクトルを示す図である。
【0057】
判定部15では、相関フィルタ14において求められた相関値の振幅の振幅レベルが、予め設定した振幅レベル以上である場合に、検出対象とする物体を検出したものと判定する。また、振幅レベル以上でなかった場合には、検出対象とする物体を検出していないものと判定する。そして、その振幅レベル以上の振幅を示す時間から、マイク6が反射波を受信したタイミング(受信タイミング)を判定する。
【0058】
なお、相関フィルタ14において求められた相関値の振幅の振幅レベルが、予め設定した振幅レベル以上であって、且つ、当該相関値の1符合長内の位相の変化量が予め設定した量以下であった場合に、検出対象とする物体を検出したものと判定する構成とすることがより好ましい。これは、相関値の振幅と位相の変化量との両方を用いることにより、検出対象とする物体と検出対象外の物体とをより精度良く判別することが可能となるためである。
【0059】
詳しくは、対象とする相対速度範囲内であって位相回転量が小さい場合には、相関値の位相の変化量は小さくなるが振幅は大きくなる。一方、対象とする相対速度範囲外であって位相回転量が大きい場合には、相関値の位相の変化量は大きくなるが振幅は小さくなる。ここで、図3を用いて具体例を示す。
【0060】
図3に示す例では、自車両は走行中であり、並走車両を検出対象としているものとする。つまり、対象とする相対速度範囲は0km/h前後であるものとする。図3は、並走車両および静止物のそれぞれからの反射波についての相関値の振幅ならびに位相の変化を示したグラフである。図3の上部のグラフが振幅の変化を示しており、下部のグラフが位相の変化を示している。また、図3中の破線が並走車両についての値を示しており、実線が静止物についての値を示している。さらに、図3中のAで示す範囲が1符合長分を示している。
【0061】
図3のグラフに示すように、対象とする相対速度範囲内の並走車両からの反射波についての相関値は、位相の変化量は小さくなるが振幅は大きくなる。一方、対象とする相対速度範囲外の静止物についての相関値は、位相の変化量は大きくなるが振幅は小さくなる。従って、相関値の振幅と位相の変化量との大きさの両方を条件とすることにより、検出対象とする物体と検出対象外の物体とをより精度良く判別することが可能になる。
【0062】
距離検出部16は、パルス信号の発生タイミング(言い換えれば、マイク6から送波される超音波の送波タイミング)と判定部15で判定した反射波の受信タイミングとの時間差から、反射物体までの距離を検出する。報知部17では、距離検出部16の検出する距離が所定距離以内となった場合に、警報等を発生して、自車両の乗員に物体の接近を報知する。
【0063】
制御部18は、前述したように、パルス発生器1において発生するパルス信号を発生し続ける持続時間を制御する。制御部18は、例えばマイク6の振動に関する特性と信号変換器2において用いる符号系列を構成する符号の組み合わせとに基づいて上記持続時間を制御する構成とすればよい。
【0064】
また、制御部18は、車速センサ101で検出される自車両の速度(以下、車速)を取得し、取得した車速に応じて、信号変換器2において用いる符号系列の長さを変更させる。よって、制御部18が請求項の移動速度取得手段に相当する。制御部18は、例えば車載LANやECUを介して車速センサ101から自車両の車速を取得する構成とすればよい。
【0065】
例えば、制御部18は、車速が第1の所定速度以上の場合には、第1の所定速度よりも小さい第2の所定速度以下の場合よりも符号系列の長さを長く設定するものとすればよい。一例として本実施形態では、第1の所定速度は、高速道路等の高速走行時に相当する程度の速度(80km/hなど)とし、第2の所定速度は、駐車場の低速走行時に相当する程度の速度(10km/hなど)とする。また、第1の所定速度以上の場合には、符号長を例えば7ビットと設定し、第2の所定速度以下の場合には、符号長を例えば2ビットと設定する。また、制御部18は、設定した符号系列の長さを相関フィルタ14にも反映させる。
【0066】
ここで、図4を用いて、物体検出装置100の動作フローについての説明を行う。図4は、物体検出装置100の動作フローを示すフローチャートである。本フローは、例えば自車両のイグニッション電源がオンになったときに開始されるものとする。なお、自車両のアクセサリ電源がオンになったときに開始され、アクセサリ電源がオフになったときに終了される構成としてもよい。
【0067】
まず、ステップS1では、車速センサ101から自車両の車速を制御部18が取得し、ステップS2に移る。ステップS2では、ステップS1で取得した車速に応じて、信号変換器2において用いる符号系列の長さを制御部18が前述したようにして設定し、ステップS3に移る。ステップS3では、パルス発生器1で発生したパルス信号の位相を、ステップS2で設定された長さの符号系列に従って信号変換器2がデジタル位相符号変調して変調信号を生成し、ステップS4に移る。
【0068】
ステップS4では、送受波処理を行ってステップS5に移る。送受波処理では、信号変換器2で生成した変調信号が、駆動に必要な電圧まで昇圧された後、マイク6に供給されることで超音波が送波される。また、マイク6では、この送波した超音波の反射波を受波する。前述したように、反射波を受波することでマイク6の圧電素子に発生した電圧は、AMP4によって所定倍に増幅され、ADC5に出力される。そして、ADC5は、所定のサンプリング周波数でAMP4から出力される受信信号をサンプリングしてデジタル信号に変換し、この変換した受信信号を乗算器8・9に出力する。
【0069】
ステップS5では、復調関連処理を行ってステップS6に移る。復調関連処理では、正弦波発生器3からの正弦波信号を二つに分け、一方は位相器7を介して位相を変更したのち乗算器8に入力し、他方はそのまま乗算器9に入力する。そして、ADC5から出力される受信信号に対して乗算器8・9において乗算を行い、乗算を行ったものについては、LPF10・11にて高周波成分をフィルタリングして、受信信号を復調する。
【0070】
ステップS6では、積分処理を行ってステップS7に移る。積分処理では、積分器12・13が、LPF10・11から出力される受信信号のI成分およびQ成分について、1符合長分ごとに積分を行い、積分を行ったI成分の受信信号およびQ成分の受信信号を相関フィルタ14へ出力する。
【0071】
ステップS7では、相関検出処理を行ってステップS8に移る。相関検出処理では、前述したようにして、相関フィルタ14において受信信号と変調信号との相関を求める。ステップS8では、相関フィルタ14において求められた相関値の振幅の振幅レベルが、予め設定した振幅レベル(つまり、閾値)以上であるか否かを判定部15が判定する。そして、閾値以上と判定した場合(ステップS8でYES)には、ステップS9に移る。また、閾値以上と判定しなかった場合(ステップS8でNO)には、ステップS14に移る。
【0072】
ステップS9では、相関フィルタ14において求められた相関値の1符合長内の位相の変化量が予め設定した量(つまり、設定量)以下であるか否かを判定部15が判定する。そして、設定量以下と判定した場合(ステップS9でYES)には、ステップS10に移る。また、設定量以下と判定しなかった場合(ステップS9でNO)には、ステップS14に移る。
【0073】
ステップS10では、検出対象とする物体を検出したものと判定部15が判定するとともに、相関値の振幅の振幅レベルが閾値以上の振幅を示す時間から受信タイミングを判定し、ステップS11に移る。ステップS11では、マイク6から送波される超音波の送波タイミングと判定部15で判定した反射波の受信タイミングとの時間差から、反射物体までの距離を距離検出部16が検出し、ステップS12に移る。
【0074】
ステップS12では、距離検出部16の検出する距離が所定距離以内であった場合(ステップS12でYES)には、ステップS13に移る。また、距離検出部16の検出する距離が所定距離以内でなかった場合(ステップS12でNO)には、ステップS14に移る。ステップS13では、報知部17が警報等を発生して、自車両の乗員に物体の接近を報知し、ステップS14に移る。
【0075】
ステップS14では、自車両のイグニッション電源がオフ(つまり、イグニッションオフ)になった場合(ステップS14でYES)には、フローを終了する。また、自車両のイグニッションスイッチがオフになっていない場合(ステップS14でNO)には、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。
【0076】
以上の構成によれば、受信信号をパルス圧縮するので、受信信号のSN比の向上を図ることができ、その受信信号をもとにして物体を検出する場合の検出距離をのばすことができる。
【0077】
なお、パルス圧縮に利用する符号系列においては、符号系列の長さが長くなるほど、同じ相対速度に対しての位相回転量が増し、自己相関をとる場合に高い出力が得られる幅が狭くなる。これは、検出対象とする物体の相対速度の範囲(以下、相対速度域)が狭くなることを意味している。一方、符号系列の長さが短くなるほど、同じ相対速度に対しての位相回転量が減り、自己相関をとる場合に高い出力が得られる幅が広くなる。これは、検出対象とする物体の相対速度域が広くなることを意味している。
【0078】
以上の構成によれば、自車両の車速に応じて符号系列の長さを変更するので、上述した関係により、自車両の車速に応じて、検出対象とする物体の相対速度域を変更することができる。その結果、受信信号のSN比の向上を実現しながらも、検出対象とする物体の相対速度域を当該移動体の速度に応じて変更することが可能になる。
【0079】
本実施形態の例では、高速走行時には符号長を長く(例えば7ビット)設定する一方、低速走行時には符号長を短く(例えば2ビット)設定し、相関フィルタ14では受信信号のドップラーシフトの補正を行わない構成となっている。よって、高速走行時には、自車両に対する速度差が殆どない物体のみを検出対象とする一方、低速走行時には、自車両に対する速度差が少しある物体までを検出対象とすることが可能となる。従って、例えば高速道路等の高速走行時には自車両との速度差が殆どない並走車両のみを対象物体として検出する一方、駐車場等での低速走行時には、自車両との速度差が殆どない歩行者や他車両以外に加え、自車両との少しの速度差がある停車中の他車両や車止め等の静止物も検出対象とすることが可能になる。その結果、シチュエーションに応じた物体検出を行うことができ、利便性が向上する。
【0080】
なお、実施形態1では、第1の所定速度以上の場合と、第1の所定速度よりも小さい第2の所定速度以下の場合とで符号系列の長さを変更する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、所定速度以上であるか否かに応じて、符号系列の長さを変更する構成としてもよい。また、2種類の速度区分に限らず、3種類以上の速度区分ごとに符号系列の長さを変更する構成としてもよい。
【0081】
さらに、自車両が停止していると判定した場合に、符号系列の長さを周期的に切り替える構成としてもよい。以下では、この構成(以下、変形例1)について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0082】
変形例1においては、車速センサ101から自車両の車速を制御部18が取得し、取得した車速をもとに、自車両が停止しているか否かを制御部18が判定する。よって、制御部18が請求項の停止判定手段に相当する。詳しくは、取得した車速が所定値以下であった場合に、自車両が停止していると判定する。ここで言うところの所定値とは、車速センサ101の検出限界の車速の値であって、実質的に0km/hと言える値である。
【0083】
また、制御部18は、自車両が停止していると判定した場合には、信号変換器2において用いる符号系列の長さを第1の長さと、第1の長さよりも短い第2の長さとに、周期的に切り替えさせる。一例として本実施形態では、第1の長さは、7ビットの符号長とし、第2の長さは、2ビットの符号長とする。
【0084】
送信信号をデジタル変調して送信する場合であって、検出対象とする物体までの距離が近い場合には、符号系列の長さが長いほど、送信波と反射波とが重なる時間帯が発生する可能性が高くなり、物体の検出が困難となる。一方、符号系列の長さが短いほど、送信波と反射波とが重なる時間帯が発生する可能性は低くなり、検出対象とする物体までの距離が近い場合であっても、物体の検出を行い易くなる。停車中の自車両の発進時には、陰に存在するような近距離の障害物を検出する必要性が高いため、走行時よりも近距離の物体を検出対象とする必要性が高くなると考えられる。
【0085】
これに対して、変形例1の構成によれば、自車両が停止していると判定した場合に、符号系列の長さの長短を周期的に切り替えることになる。よって、長さのより長い符号系列を用いるときには受信信号のSN比の向上を可能にし、長さのより短い符号系列を用いるときには、より近距離の物体の検出を行うことを可能にする。従って、より近距離の物体を検出する必要性がある場合に、より近距離の物体の検出を行うことを可能にしながら、受信信号のSN比の向上も可能にすることができる。
【0086】
また、自車両が停止していると制御部18で判定した場合において、符号系列の長さが第2の長さ(例えば2ビット)に切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合、当該検出対象とする物体の検出中は、符号系列の長さを第2の長さに維持し続ける構成としてもよい。これによれば、自車両の停止中に一旦物体を検出した場合は、長さのより短い符号系列を用いて、より近距離の物体の検出を行い易くし続けることが可能になる。
【0087】
また、変形例1においては、自車両が停止していないと制御部18で判定した場合に、信号変換器2において用いる符号系列の長さを第1の長さ以上(例えば11ビットの符号長など)に制御部18が設定する構成とすればよい。これによれば、自車両が走行を開始し、より近距離の物体を検出する必要性がなくなった場合には、自車両の停車時に用いる長さ以上の符号系列を用いて、受信信号のSN比の向上をより確実に行うことを可能にすることができる。
【0088】
他にも、自車両が停止していると制御部18で判定した場合において、符号系列の長さが第2の長さ(例えば2ビット)に切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合には、その後に自車両が停止していないと判定した場合に、符号系列の長さを第2の長さとする一方、第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出しなかった場合には、その後に自車両が停止していないと判定した場合に、符号系列の長さを、第1の長さ以上(例えば11ビット)とする態様としてもよい。
【0089】
これによれば、自車両の停止中に、長さのより短い符号系列を用いて物体を検出済みであった場合には、走行を開始した後も長さのより短い符号系列を用いて、より近距離の物体の検出を行い易くし続けることを可能にすることができる。一方、自車両の停止中に、長さのより短い符号系列を用いて物体を検出済みでない場合、走行開始後には、走行している車両の近傍に突然物体が出現する可能性は低く、近距離の物体を検出する必要性がないと考えられるため、自車両の停止時に用いる長さ以上の符号系列を用いて、受信信号のSN比の向上をより確実に行うことを可能にすることができる。
【0090】
なお、実施形態1では、相関フィルタ14で受信信号のドップラーシフトの補正を行わない構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、相関フィルタ14で位相回転補正係数を用いてドップラーシフトの補正を行うことで、自車両との速度差が開いた物体も検出対象とすることを可能にする構成としてもよい。位相回転補正係数とは、受信信号を位相回転させるための係数である。位相回転補正係数として、ドップラーシフトによる位相回転分を打ち消すだけの位相回転を行わせる値を設定すれば、受信信号のドップラーシフトを補正することが可能となっている。また、自車両の車速に応じて位相回転補正係数を切り換えることによって、自車両の車速に応じた相対速度範囲の物体を検出対象とする構成(以下、変形例2)としてもよい。
【0091】
以下では、変形例2について説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0092】
変形例2においては、相関フィルタ14は、位相回転補正係数を用いて受信信号のドップラーシフトを補正し、その補正後の受信信号に対してパルス圧縮を行うことが可能なものであって、位相回転補正係数が可変となっている。
【0093】
制御部18は、例えば車速が第1の所定速度以上の場合と第2の所定速度以下の場合とで相関フィルタ14で用いる位相回転補正係数を切り換えさせる。一例として変形例2では、第1の所定速度は、高速道路等の高速走行時に相当する程度の速度(80km/hなど)とし、第2の所定速度は、駐車場の低速走行時に相当する程度の速度(10km/hなど)とする。また、信号変換器2において用いる符号系列の長さについては、第1の所定速度以上の場合には、例えば7ビットの符号長と設定し、第2の所定速度以下の場合には、例えば2ビットの符号長と設定する。
【0094】
制御部18は、車速が第1の所定速度以上の場合には、相関フィルタ14で位相回転補正係数を用いた受信信号の補正を行わせないものとする。なお、車速が第1の所定速度以上の場合に、位相回転補正係数を1とすることで、実質的に受信信号の補正を行わせない構成としてもよい。符号長が7ビットの場合には、1ビットごとに与える位相回転補正係数を全て1とすればよい。また、制御部18は、車速が第2の所定速度以下の場合には、相関フィルタ14で位相回転補正係数を所定の値に切り替えさせるものとする。ここで言うところの所定の値とは、検出対象とする相対速度の物体から反射される反射波から得られる受信信号のドップラーシフトを補正可能な位相回転補正係数の値である。所定の値は、検出対象とする相対速度に応じて予め算出されている構成とすればよい。例えば、相対速度が−5km/hの物体を検出対象とする場合には、相対速度が−5km/hの物体から反射される反射波から得られる受信信号のドップラーシフト分の位相変化分(Δθ)と変調速度とから予め位相回転補正係数を算出しておく構成とすればよい。そして、算出しておいた値を制御部18のメモリに記憶させておく構成とすればよい。
【0095】
以上の構成によれば、高速走行時には、相関フィルタ14で受信信号のドップラーシフトの補正を行わないため、自車両に対する速度差が殆どない物体のみが検出対象となる。一方、低速走行時には、検出対象とする相対速度についてのドップラーシフトの補正を相関フィルタ14で行うので、自車両に対する速度差が大きい物体でも検出対象とすることが可能となる。従って、シチュエーションに応じた物体検出をより容易に行うことが可能となり、利便性がさらに向上する。
【0096】
(実施形態2)
なお、実施形態1では、パルス圧縮を行うフィルタを1つだけ用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、パルス圧縮を行うフィルタとして、受信信号のドップラーシフトについての位相回転補正係数が各々異なるフィルタを複数備える構成としてもよい。
【0097】
まず、実施形態2における物体検出装置200について説明を行う。図5は、物体検出装置200の概略的な構成を示すブロック図である。図5に示す物体検出装置200は、例えば自動車に搭載されるものである。なお、物体検出装置200を搭載している自動車を以降では自車両と呼ぶ。
【0098】
図1に示すように、物体検出装置200は、パルス発生器1、信号変換器2、正弦波発生器3、AMP4、ADC5、マイク6、位相器7、乗算器8・9、LPF10・11、および積分器12・13を備えている。また、物体検出装置100は、図示しないマイクロコンピュータを備えており、相関フィルタ14a・14b・14c、判定部15、距離検出部16、報知部17、および制御部18等の演算処理機能を備えている。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0099】
積分器12・13は、LPF10・11から出力される受信信号のI成分およびQ成分について、1符合長分ごとに加算(積分)を行う。そして、積分器12は、積分を行ったQ成分の受信信号を相関フィルタ14a・14b・14cへ出力し、積分器13は、積分を行ったI成分の受信信号を相関フィルタ14a・14b・14cへ出力する。
【0100】
相関フィルタ14a・14b・14cは、受信信号を位相回転させるための位相回転補正係数を用いて受信信号を位相回転させる点を除けば、前述した相関フィルタ14と同様のものである。相関フィルタ14a・14b・14cでは、受信信号に対し、時間的に異なるタイミングで、変調信号の共役複素符号を受信信号の符号に乗じる前に、受信信号を位相回転させるための位相回転補正係数を用いて受信信号を位相回転させる。
【0101】
位相回転補正係数として、ドップラーシフトによる位相回転分を打ち消すだけの位相回転を行わせる値が設定されている相関フィルタ14が、相関フィルタ14a・14b・14cのうちに存在する場合には、当該位相回転補正係数を用いて受信信号のドップラーシフトを補正することが可能となっている。また、当該位相回転補正係数を用いて受信信号のドップラーシフトが補正された場合には、ドップラーシフトによる位相変化分が加算されることがなくなるため、IQ平面上において受信信号のベクトルが回転しなくなり、その相関フィルタ14からは高い相関値が出力されることになる。なお、位相回転補正係数が請求項の受信信号のドップラーシフトについての補正係数に相当する。
【0102】
物体検出装置200の用途が特定されている場合には、検出対象とする物体の相対速度域を予め想定することができるので、相関フィルタ14a・14b・14cの各位相回転補正係数は、この想定される相対速度域に応じたドップラーシフトの周波数帯をカバーするように、各々異なる値を設定する構成とすればよい。また、実施形態2では位相回転補正係数の異なる相関フィルタ14を3つ(つまり、相関フィルタ14a・14b・14c)用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らず、検出対象とする物体の相対速度域に応じて3つ以外の複数の相関フィルタ14を用いる構成としてもよい。
【0103】
例えば、位相回転補正係数Kは、以下の式6によって算出された値を各相関フィルタ14に設定する構成とすればよい。なお、式6中のmは相関フィルタ14の番号であって、1から順番に各相関フィルタ14に割り振られている整数値である。相関フィルタ14a・14b・14cの場合には、mは順番に1、2、3となる。また、nは符号系列の各符号の番号であって、1から順番に最後尾の符号から先頭の符号までに割り振られている整数値である。符号長が7ビットの場合には、nは先頭の符号から順番に7、6、5、4、3、2、1となる。Lは符号長であって、符号長が7ビットの場合には、7となる。
【数6】

【0104】
ここで、位相回転補正係数Kの具体例について図6〜図7(b)を用いて説明を行う。図6は、各相関フィルタ14の各符号についての位相回転補正係数の一例を示す図である。図7(a)および図7(b)は、位相回転補正係数の異なる各相関フィルタ14の機能構成を示す図である。図6〜図7(b)の例では、便宜上、相関フィルタ14は、相関フィルタ14aと相関フィルタ14bの2つであって、相関フィルタ14aが番号1、相関フィルタ14bが番号2であるものとして説明を行う。また、符号系列の符号長は7ビットであるものとして説明を行う。
【0105】
相関フィルタ14の数が2、符号系列の符号長が7の場合、式6によって、相関フィルタ14a・14bの各符号についての位相回転補正係数は、図6に示すようになる。詳しくは、相関フィルタ14aの先頭の符号から最後尾の符号までの位相回転補正係数K(1,7)〜K(1,1)は全て1となる。よって、相関フィルタ14aでは、受信信号の各符号について位相回転補正係数K(1,7)〜K(1,1)が乗算された場合であっても、この乗算による位相回転は生じない(図7(a)参照)。
【0106】
一方、相関フィルタ14bの先頭の符号から最後尾の符号までの位相回転補正係数K(2,7)〜K(2,1)は、cos(6/6×π)+jsin(6/6×π)、cos(5/6×π)+jsin(5/6×π)、cos(4/6×π)+jsin(4/6×π)、cos(3/6×π)+jsin(3/6×π)、cos(2/6×π)+jsin(2/6×π)、cos(1/6×π)+jsin(1/6×π)、1となる。よって、相関フィルタ14bでは、受信信号の各符号について位相回転補正係数K(2,7)〜K(2,1)が乗算された場合に、この乗算により+180°の位相回転が生じる(図7(b)参照)。
【0107】
つまり、相関フィルタ14aでは、自車両との速度差が殆どない物体(つまり、相対速度が0前後の物体)から反射される反射波から得られる受信信号のみが良好にパルス圧縮され、相関値の出力が高くなる。一方、相関フィルタ14bでは、−180°程度のドップラーシフトが生じる相対速度の物体から反射される反射波から得られる受信信号のみが良好にパルス圧縮され、相関値の出力が高くなる。このように、各相関フィルタ14で異なる位相回転補正係数を用いて受信信号を位相回転させることで、それぞれ異なる相対速度域をカバーするようにすることができる。なお、式6によって算出された位相回転補正係数を各相関フィルタ14に設定する場合には、1つの相関フィルタ14がそれぞれ数km/h程度の相対速度域をカバーすることになる。
【0108】
続いて、判定部15では、各相関フィルタ14a・14b・14cから入力される相関値のうち、振幅の振幅レベルが最大値のものについて、予め設定した振幅レベル以上である場合に、検出対象とする物体を検出したものと判定する構成とすればよい。これによれば、対応する相対速度域の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっているので、各相関フィルタ14a・14b・14cで求められる相関値の振幅レベルのうちの最大値について閾値判定を行うことで、検出対象とする物体の有無を精度良く判定することができる。
【0109】
また、検出対象とする物体を検出したものと判定した場合に、振幅レベルが最大値となる相関値が求められた相関フィルタ14を特定し、検出対象とする物体の相対速度を判定部15で判定する構成としてもよい。詳しくは、前述したように、相関フィルタ14ごとでカバーする相対速度域が異なるため、相関フィルタ14を特定することで、この相関フィルタ14に対応する相対速度域を検出対象とする物体の相対速度と判定する。なお、例えば当該相対速度域の中心値を検出対象とする物体の相対速度と判定するといったように、当該相対速度域の一点の値を、検出対象とする物体の相対速度と判定する構成としてもよい。
【0110】
判定した相対速度は、例えば自車両への接触の危険性の判断に用いるなどする構成とすればよい。また、判定した相対速度と車速センサ101から得られる自車両の車速とをもとに、検出対象とする物体の絶対速度を求める構成としてもよい。
【0111】
なお、判定部15では、各相関フィルタ14a・14b・14cから入力される各相関値の振幅レベルについて、予め設定した振幅レベル以上の振幅であるか否かをそれぞれ判定し、予め設定した振幅レベル以上のものが存在した場合に、検出対象とする物体を検出したものと判定する構成としてもよい。これによれば、対応する相対速度範囲の物体から反射される反射波から得られる受信信号については、相関値の振幅レベルが高くなるようになっているので、検出対象とする物体の有無を精度良く判定することができる。なお、この閾値判定に用いられる振幅レベルは、各相関フィルタ14a・14b・14cからの各相関値に対して各々設定されている構成としてもよい。
【0112】
また、検出対象とする物体を検出したものと判定した場合に、振幅レベルが予め設定した振幅レベル以上となる相関値が求められた相関フィルタ14を特定し、前述したのと同様にして、検出対象とする物体の相対速度を判定部15で判定する構成としてもよい。
【0113】
さらに、判定部15では、相関フィルタ14a・14b・14cの各相関値の振幅を加算し、その加算した振幅の振幅レベルが予め設定した振幅レベル以上であるか否かを判定し、予め設定した振幅レベル以上であった場合に、対象とする物体を検出したと判定する構成としてもよい。これによれば、各々の相関値に対して振幅に関する閾値判定を行うことなく物体を検出することができるため、処理の軽減を図ることが可能となる。
【0114】
実施形態2においても、前述の変形例1と同様にして、自車両が停止していると判定した場合に、符号系列の長さの長短を周期的に切り替える構成としてもよい。また、自車両が停止していると判定した場合において、符号系列の長さが第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合、当該検出対象とする物体の検出中は、符号系列の長さを第2の長さに維持し続ける構成としてもよい。
【0115】
さらに、自車両が停止していないと制御部18で判定した場合に、信号変換器2において用いる符号系列の長さを第1の長さ以上に制御部18が設定する構成としてもよい。他にも、自車両が停止していると判定した場合において、符号系列の長さが第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合には、その後に自車両が停止していないと判定した場合に、符号系列の長さを第2の長さとする一方、第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出しなかった場合には、その後に自車両が停止していないと判定した場合に、符号系列の長さを、第1の長さ以上とする態様としてもよい。
【0116】
前述の実施形態では、送信波として超音波を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。送信波としては周知の物体検出装置に利用される探査波であれば超音波以外を用いる構成としてもよく、例えばミリ波等を用いる構成としてもよい。
【0117】
符号系列の種類として、Barker符号を用いる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。Barker符号の符号系列の長さは最大13ビットのため、それ以上の符号系列の長さを選択したい場合は、例えば、M系列、Gold符号等を用いてもよい。また、
符号系列の長さを第2の長さとして極力短く設定したい場合、1ビットとしてもよい。
【0118】
また、送信波としてミリ波等の伝搬速度の速い探査波を用いる場合には、位相回転の生じる量がため、位相回転が生じやすい場合に起こりえる検出対象外の物体の誤検出を防ぐための積分器12・13を備えない構成としてもよい。一方、超音波のように伝搬速度の遅い探査波を用いる場合には、位相回転がよく生じるため、積分器12・13を備える構成とすることが好ましい。
【0119】
また、自車両の車速を車速センサ101から取得する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車両の車速を、制御部18がシフト位置をもとに推定することで取得する構成としてもよい。シフト位置は図示しないシフトポジションセンサから制御部18が取得する構成とすればよい。例えば、シフト位置が駐車位置(P)或いは中立位置(N)である場合や、シフト位置の切り替わり直後(特に走行位置(Dなど)から後退位置(R)に切り替わった場合)は車速が0km/hと推定する構成とすればよい。また、走行位置(Dなど)の場合には設定されたシフト値によっておおよその車速を推定することが可能であるので、このシフト値をもとに車速を推定すればよい。
【0120】
前述の実施形態では、自動車に物体検出装置100や物体検出装置200を搭載する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自動車以外の移動体に物体検出装置100や物体検出装置200を搭載する構成としてもよく、例えば二輪車や移動ロボット等に物体検出装置100や物体検出装置200を搭載する構成としてもよい。
【0121】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 パルス発生器(送信信号発生手段)、2 信号変換器、3 正弦波発生器、4 AMP、5 ADC、6 マイク(送受波手段)、7 位相器、8・9 乗算器、10・11 LPF、12・13 積分器(積分手段)、14・14a・14b・14c 相関フィルタ(パルス圧縮手段)、15 判定部、16 距離検出部、17 報知部、18 制御部(移動速度取得手段、停止判定手段)、100 物体検出装置、101 車速センサ、200 物体検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、
複数のパルスからなる複数のパルス列で構成される送信信号を発生する送信信号発生手段と、
前記送信信号発生手段の発生する送信信号のパルス列ごとに所定の符号系列に従ってデジタル変調を施した変調信号を出力する変調手段と、
前記変調手段の出力する変調信号から送信波を生成して送波するとともに、その送信波の反射波を受波する送受波手段と、
前記送受波手段で受波した反射波から得られる受信信号と前記変調信号との符号の相関値を求め、その結果により前記反射波から得られる受信信号をパルス圧縮するパルス圧縮手段とを備え、
前記パルス圧縮手段でパルス圧縮された受信信号に基づいて検出対象とする物体を検出する物体検出装置であって、
前記移動体の速度を取得する移動速度取得手段を備え、
前記移動速度取得手段で取得した速度に応じて、前記符号系列の長さを変更することを特徴とする物体検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記移動速度取得手段で取得した速度が第1の所定速度以上の場合と、前記第1の所定速度よりも小さい第2の所定速度以下の場合とで前記符号系列の長さを変更することを特徴とする物体検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記移動速度取得手段で取得した速度が前記第1の所定速度以上の場合には、前記第2の所定速度以下の場合よりも前記符号系列の長さを長くすることを特徴とする物体検出装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記移動体が停止しているか否かを判定する停止判定手段を備え、
前記停止判定手段で前記移動体が停止していると判定した場合には、前記符号系列の長さを、第1の長さと、前記第1の長さよりも短い第2の長さとに、周期的に切り替えることを特徴とする物体検出装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記停止判定手段で前記移動体が停止していると判定した場合において、前記符号系列の長さが前記第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合、当該検出対象とする物体の検出中は、前記符号系列の長さを前記第2の長さに維持し続けることを特徴とする物体検出装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記停止判定手段で前記移動体が停止していないと判定した場合には、前記符号系列の長さを、前記第1の長さ以上とすることを特徴とする物体検出装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記停止判定手段で前記移動体が停止していると判定した場合において、前記符号系列の長さが前記第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出した場合には、その後に前記停止判定手段で前記移動体が停止していないと判定した場合に、前記符号系列の長さを前記第2の長さとする一方、
前記停止判定手段で前記移動体が停止していると判定した場合において、前記符号系列の長さが前記第2の長さに切り換えられていたときに検出対象とする物体を検出しなかった場合には、その後に前記停止判定手段で前記移動体が停止していないと判定した場合に、前記符号系列の長さを、前記第1の長さ以上とすることを特徴とする物体検出装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記送受波手段で受波した反射波から得られた受信信号を前記符号系列の1符号長分ごとに積分する積分手段を備え、
前記パルス圧縮手段は、前記積分手段で1符号長分ごとに積分された受信信号と前記変調信号との符号の相関値を求め、その結果により前記反射波から得られる受信信号をパルス圧縮することを特徴とする物体検出装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記パルス圧縮手段で求められた相関値の振幅と位相の変化量とのうちの少なくとも振幅をもとに、検出対象とする物体の有無を判定することで検出対象とする物体を検出することを特徴とする物体検出装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記パルス圧縮手段として、前記受信信号のドップラーシフトについての補正係数が各々異なるものを複数備え、
前記パルス圧縮手段は、前記補正係数を用いて補正した後の受信信号と前記変調信号との符号の相関値を求め、その結果により前記反射波から得られる受信信号をパルス圧縮するものであって、
前記複数のパルス圧縮手段で求められた各相関値の振幅レベルのうちの最大値について、予め設定した振幅レベルとの大小関係を判定する閾値判定を行い、その判定結果に基づいて、検出対象とする物体の有無を判定することで検出対象とする物体を検出することを特徴とする物体検出装置。
【請求項11】
請求項10において、
検出対象とする物体があると判定した場合に、振幅レベルが最大値となる相関値が求められたパルス圧縮手段を特定することによって、検出対象とする物体の相対速度を判定することを特徴とする物体検出装置。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記パルス圧縮手段として、前記受信信号のドップラーシフトについての補正係数が各々異なるものを複数備え、
前記パルス圧縮手段は、前記補正係数を用いて補正した後の受信信号と前記変調信号との符号の相関値を求め、その結果により前記反射波から得られる受信信号をパルス圧縮するものであって、
前記複数のパルス圧縮手段で求められた各相関値の振幅レベルについて、予め設定した振幅レベルとの大小関係をそれぞれ判定する閾値判定を行い、その判定結果に基づいて、検出対象とする物体の有無を判定することで検出対象とする物体を検出することを特徴とする物体検出装置。
【請求項13】
請求項12において、
検出対象とする物体があると判定した場合に、振幅レベルが前記予め設定した振幅レベル以上となる相関値が求められたパルス圧縮手段を特定することによって、検出対象とする物体の相対速度を判定することを特徴とする物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−255667(P2012−255667A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127620(P2011−127620)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】