説明

物品検出装置および静止人物検出装置

【課題】持ち込み物品を効果的に検出する。
【解決手段】物品検出装置は、監視領域を撮影した監視画像を順次取得する撮像部20と、監視領域の背景が撮影された背景画像と人物の外形を模した人物モデルを記憶する記憶部21と、静止している物品を検出する制御部22と、を具備する。制御部22は、監視画像と背景画像から変化領域を抽出する変化領域抽出手段220と、変化領域に前記人物モデルを重ね当該変化領域の内側でかつ当該人物モデルの外側である物品領域の特徴を記憶部21に記憶する物品領域抽出手段222と、順次取得された画像にて変化領域を時間的に追跡し変化領域が静止しているかを判定し静止物体領域を検出する静止物体領域検出手段223と、静止物体領域が検出されると、静止物体領域が前記物品領域の特徴を有するかを判定し物品領域の特徴を有する場合に当該静止物体領域が物品であると判定する異常判定手段224とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像した監視画像を画像解析することにより、監視空間内に存在する物体を検出する装置に関して、特に監視空間内で静止した物品および静止した人物の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種犯罪について監視カメラ映像から検出したいという要求がある。例えば、強盗犯が有人店舗などに押し入り、金庫に保管されている金品の強奪を試みる際に、店舗の従業員等による外部への通報や抵抗をおそれるあまり、従業員に対して攻撃を与えたり、手足をロープや粘着テープで拘束したりすることで身体の自由を奪うことがある。
【0003】
このように身体の自由を奪われた従業員等の被害者は、犯行後、店舗内に放置されることになるため、通報が遅れることによる強盗事件発生の発覚遅れや、怪我をした被害者の救護遅れなどが危惧される。
【0004】
このため、被害者が上記のような通報操作できない状態であることを自動的に検知し、通報を行う異常検知装置の提案が望まれている。
【0005】
上記のような被害者の存在を画像処理による行動解析によって検出する場合、被害者の行動特徴はその場で静止して動かなくなるというものになる。しかしながら、人物によって持ち込まれた物品が監視領域内に放置された場合も同様の行動特徴を示してしまうため、人物と持ち込まれた物品とを区別することが難しい。
【0006】
ここで、特許文献1には、「人物によって持ち込まれた物品が静止したこと」と「移動していた人物が静止したこと」を区別する手法として、人物は立ち止まっても完全に静止状態にはならないことを利用した検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4218368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術により、「物品の静止」と「人物の静止」を区別することが困難な場合もある。例えば、押し込み強盗からの攻撃によって被害者が気絶してしまった場合は、人物であっても完全な静止状態になってしまうため、物品との区別は難しい。
【0009】
本発明は、持ち込まれた物品を精度よく判定すること、および放置された人物との識別を実現し、放置された人物を精度よく検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、監視領域を撮影した監視画像を順次取得する画像取得部と、監視領域の背景が撮影された背景画像と、人物の外形を模した人物モデルを記憶する記憶部と、前記監視画像を処理して静止している物品を検出する制御部と、を具備する物品検出装置であって、前記制御部は、前記監視画像と前記背景画像から変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、前記変化領域に前記人物モデルを重ね、当該変化領域の内側でかつ当該人物モデルの外側である物品領域の特徴を前記記憶部に記憶する物品特徴記憶手段と、前記順次取得された画像にて前記変化領域を時間的に追跡し、当該変化領域が静止しているかを判定し静止物体領域を検出する静止物体領域検出手段と、前記静止物体領域が検出されると、当該静止物体領域が前記物品領域の特徴を有するかを判定し、前記物品領域の特徴を有する場合に当該静止物体領域が物品であると判定する物品判定手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記物品領域の特徴は、物品領域における色別の出現頻度を示す色ヒストグラムであることが好適である。
【0012】
また、本発明に係る静止人物検出装置は、上述の物品検出装置を有するとともに、前記制御部は、前記検出した静止物体領域が前記物品領域の特徴を有さない場合に当該静止物体領域が静止人物領域であると判定する静止人物領域判定手段をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、監視領域内に持ち込まれた物品を効果的に検出することができ、当該持ち込まれた物品と識別することで静止人物の検出も行える。従って、被害者が押し込み強盗などによって動けない状態にされたという異常状態と、持ち込まれた物品が静止した正常状態を区別して誤通報を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】監視空間のイメージと物品検出装置(静止人物検出装置)の構成を示した模式図である。
【図2】物品検出装置(静止人物検出装置)の構成を示すブロック図である。
【図3】異常検知の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
「全体構成」
本実施形態に係る物品検出装置(静止人物検出装置)を含み、この装置にて静止した持ち込み物品ではなく静止人物が存在する異常シーンを検知して、警備センタ等へ通報する通報システム1について説明する。
【0017】
図1は、通報システム1の構成と配置のイメージを示した模式図である。
【0018】
通報システム1は、物品検出装置(静止人物検出装置)2と、コントローラー3と、センタ装置5を含んで構成される。
【0019】
物品検出装置(静止人物検出装置)2は、金庫6などの重要物が設置された部屋を監視空間とし、当該部屋の天井に設置される。物品検出装置(静止人物検出装置)2は、監視空間にて発生した異常シーンを検知すると異常信号を出力する。
【0020】
物品検出装置(静止人物検出装置)2は、通信線を介してコントローラー3に接続され、コントローラー3は電話回線またはインターネット回線等の広域通信網4を介して遠隔地に設置された警備センタ等のセンタ装置5と接続される。物品検出装置(静止人物検出装置)2が出力した異常信号はコントローラー3を介してセンタ装置5に送信される。
【0021】
「物品検出装置(静止人物検出装置)の構成」
図2は、物品検出装置(静止人物検出装置)2の構成を示したブロック図である。物品検出装置(静止人物検出装置)2は、撮像部20、記憶部21、出力部23および制御部22を含んで構成されている。
【0022】
なお、図1においては、物品検出装置(静止人物検出装置)2を監視領域の天井に設けたが、撮像部20のみを天井に設け、その他の装置は別の場所に設けてもよい。
【0023】
(撮像部20)
撮像部20は、例えばCCD撮像素子などを利用した監視カメラである。この撮像部20は、通常は監視空間(監視領域)の天井に取り付けられている。また、その撮影は、ビデオ撮影のような連続撮影でもよいが、所定の時間間隔で監視領域を順次撮影することが好ましい。撮影された監視空間の監視画像は順次、制御部22へ出力される。監視画像が撮像される時間間隔は例えば1/5秒である。以下、この撮像の時間間隔で刻まれる時間の単位を時刻と称する。本実施形態において、撮像部20は魚眼レンズを備え、その光軸を鉛直下方に向けて設置されており、監視空間である部屋の全体を撮像する。
【0024】
(記憶部21)
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。フラッシュメモリや,ハードディスクなどを利用してもよい。記憶部21は、各種プログラムや各種データを記憶し、制御部22との間でこれらの情報を入出力する。記憶部21において記憶する各種データには、背景差分処理に必要な背景画像210、物品領域の抽出に必要な人物モデル211が含まれる。さらに、記憶部21には、物体領域の追跡に必要な物体領域の特徴を記憶する追跡特徴記憶部212、抽出した物品領域の特徴を記憶する物品特徴記憶部213も含まれる。
【0025】
(制御部22)
制御部22は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MCU(Micro Control Unit)等の演算装置を用いて構成され、記憶部21からプログラムを読み出して実行することで
物体領域抽出手段220、物体追跡手段221、物品領域抽出手段222、静止物体領域検出手段223、異常判定手段224として機能する。
【0026】
(出力部)
出力部23は、異常信号を物品検出装置(静止人物検出装置)2の外部へ出力する通信手段である。出力部23は、制御部22の異常判定手段224から異常信号が入力されると、当該異常信号をコントローラー3へ出力する。
【0027】
「物品検出装置(静止人物検出装置)2における処理フロー」
図3は、物品検出装置(静止人物検出装置)2における異常検出処理を示したフローチャートである。各種のデータ処理は基本的に制御部22において実施される。
【0028】
(S1:初期化)
電源が投入されると、各部が初期化され動作を開始する。初期化には起動直後の監視画像を記憶部21に背景画像210として記憶させる処理を含む。ここで、背景画像については、人が立ち入らない状態において、毎回取得し直すことが好適であるが、ある程度固定的な画面を記憶しておくなど各種の手段を採用することができる。
【0029】
(S2:監視画像取得)
初期化が終了した場合には、監視画像を取得する。すなわち、撮像部20は、監視空間を撮像する度に監視画像を出力し、制御部22はこれを取得する。S2において、現時刻の監視画像が取得され、これが制御部に送られる。
【0030】
(S3:背景差分・ラベリング)
制御部22では、撮像部から送られてきた現時刻における監視画像について背景を除去して、物体領域を抽出し、得られた物体領域をラベリングする。物体領域抽出手段220は、撮像部20から得られた監視画像と、記憶部21に記憶されている背景画像210を比較し、背景画像210との差分が閾値以上である画素を変化画素として抽出する。なお、差分特徴量として、輝度、色、エッジ強度・方向などを用いることができる。閾値は、事前に決められた規定値を用いてもよいし、動的に変更してもよい。
【0031】
また、差分演算後に正規化相関等による光・影領域の除去、膨張収縮処理によるゴマ塩状ノイズの除去を行うことが望ましい。
【0032】
物体領域抽出手段220は、変化画素の抽出後、ラベリングを行う。ラベリングは、空間的に接続する画素に同一の番号を振る処理である。この処理により、変化画素の塊(集合)ごとに個別の番号が振られることになる。以下、この塊を物体領域と称する。なお、抽出された物体領域には、人物領域と、物品などを含む持ち込み物体領域が含まれる。
【0033】
(S4:物体追跡)
物体領域抽出手段220により抽出された物体領域についてのデータは物体追跡手段221に供給される。物体追跡手段221は、前時刻までに物体領域抽出手段220により抽出され、記憶部21の追跡特徴記憶部212に記憶されている各物体領域に関する追跡特徴と、現時刻にて物体領域抽出手段220により抽出された各物体領域の追跡特徴を比較して、物体領域を関連付けることで、物体領域の追跡を実現する。
【0034】
そのために、物体追跡手段221は、監視領域への物体領域の出現が確認される度に、その物体領域の画像特徴を追跡特徴として抽出し、記憶部21の追跡特徴記憶部212に記憶する。そして、記憶部21の追跡特徴記憶部212に記憶されている前時刻で抽出された物体領域の追跡特徴と、現時刻で抽出された物体領域の追跡特徴を比較し、類似度が所定以上のものの中で最も類似していると判断される物体領域と関連付ける。追跡特徴とは、色やエッジのヒストグラム、物体領域の重心位置、外接矩形などが利用される。
【0035】
現時刻で抽出された物体領域が、記憶部に記憶されている追跡特徴のいずれにも関連付けられなかった場合には、その人物像は現時刻において新たに出現した物体領域である、と判断し、この追跡特徴を追跡特徴記憶部212に記憶する。
【0036】
追跡特徴記憶部212に記憶されている追跡特徴のうちで、現時刻で抽出された物体領域に関連付けられなかったものがある場合には、その追跡情報は、入力画像の視野外に移動した、つまりは事務室から外に出た人物のものであると判断し、追跡特徴記憶部212から消去する。あるいは、一定時間は保持しておき、その間は上記の関連付け処理を試みるものとしてもよい。
【0037】
上述した物体追跡手段221における処理は、画像処理技術の分野における追跡処理として一般的なものであるので、詳細は省略する。
【0038】
(S5:人物モデル当て嵌め)
物品領域抽出手段222は、記憶部21より人物モデルを読み出し物体領域に対して当て嵌める。
【0039】
本実施例では、人物モデルを楕円とする。楕円の大きさや傾きは標準的人物サイズとカメラの設置条件に応じて画像座標ごとに決まる。例えば、天井面に鉛直下向きに設置された魚眼カメラでは、人物モデルは画像中心と楕円中心を結ぶ放射状に伸びる直線と重なる長軸を有する楕円である。その長軸長さL=L’+α、短軸長さS=S’+βは、L’、S’は標準的人物サイズから決定される値、α、βは個体差を吸収するための変動幅である。αとβの最大変動幅(αmax、βmax)は事前に規定する。また、人物は必ずしも直立とは限らないため、長軸の偏位角(長軸の放射方向とのずれ角)θも考慮する。同偏位角に対しても最大変動幅(φmax)を定義する。
【0040】
以上より、人物モデルのパラメータは中心座標(x、y)、長軸長さ(L)、短軸長さ(S)、長軸偏位角(θ)の6個である。
【0041】
これらを確率的に変動させながら、物体領域と最も合致する楕円を探索する。本実施形態では物体領域への人物モデルの当て嵌まりのよさを以下の評価関数で表現する。
【0042】
(評価関数:E)=−{(物体領域であって人物モデル領域でない画素)
+γ×(人物モデル領域であって物体領域でない画素)}
【0043】
第1項は物体領域にも関わらず人物モデルで覆われなかった画素の数、第2項は物体領域でないにも関わらず人物モデルで覆われた画素の数であり、物体領域と人物モデルの合致度をはみ出し画素の数により評価している。評価関数は負の値をとり、その値が大きい方(0に近い方)が物体領域と人物モデルの合致度が高い。
【0044】
γは、第1項と第2項のバランスをとるためのパラメータである。例えば変化画素が抽出されやすいような差分処理の閾値を設定した場合、γの値を大きくすればよい。
【0045】
人物モデルパラメータの初期値として、例えば、
・中心座標(x、y)を物体領域の重心座標
・長軸長さ(L)を、L’に対して[−αmax,αmax]を値域とする乱数を生成しその値を加算したもの
・短軸長さ(S)を、S’に対して[−βmax,βmax]を値域とする乱数を生成しその値を加算したもの
・偏位角(θ)を、[−φmax,φmax]を値域とする乱数の値
と選択する。
【0046】
この状態から、例えば確率的探索手法を使って、以下のように楕円のパラメータを更新していく。
【0047】
(i)初期パラメータで楕円を描画、評価関数の値Ecurを計算する。そして、初期パラメータについての評価関数の値を評価関数の最大値に設定する。すなわち、Emax=Ecurとする。
【0048】
(ii)乱数を利用して、新しいパラメータ群を生成する。
中心座標:Xnew=X+rand[−δXmax,δXmax]
Ynew=Y +rand[−δYmax,δYmax]
長軸長さ:Lnew=L+rand[−αmax,αmax]
短軸長さ:Snew=S+rand[−βmax,βmax]
偏位角 :θnew=θ+rand[−φmax,φmax]
ここで、δXmax、δYmaxは事前に規定された中心座標の変動幅である。また、rand[ ]は[ ]内の値を値域とする乱数生成を表す。
【0049】
(iii)新たなパラメータ群(Xnew、Ynew、Lnew、Snew、θnew)で表される楕円を描画し、評価関数の値Enewを計算する。
【0050】
(iv)評価関数の値Enewが以前の評価関数の値Ecur以上であれば(新たなパラメータ群の方が当て嵌まりがよければ)、パラメータを入れ替える。すなわち、評価関数の値をEcur = Enew、とするとともに、各パラメータX、Y、L、S、θの値を(Xnew、Ynew、Lnew、Snew、θnew)に入れ替える。
【0051】
(v)そうでなければ、[0,1)の乱数を生成する。すなわち、0以上1未満の乱数を生成する。
【0052】
(vi)(iii)で求められたEnewについて、Ecur/Enew が乱数の値よりも大きければ、パラメータを入れ替える。Ecur = Enewとする。
(vii)EcurとEmaxを比較する。ここで、Ecur<EmaxならばEcur=Emaxとする。
【0053】
(viii)規定回数だけ上記(ii)〜(vii)を繰り返し、Emaxを与えるパラメータを最終解とする。
【0054】
以上の操作により、基本的に評価値が大きくなる方向にパラメータは更新されていくが、(v)〜(vi)の操作により、確率的に評価値が小さくなる方へ移動する。これは評価関数が単調ではなく複雑な形をしているゆえ、評価関数上の局所解を飛び越えてより良い解を探索するための手立てである。
【0055】
また、物体領域と人物モデルの当て嵌まりのよさを表す評価関数に、時間方向の連続性を導入することもできる。例えば、前時刻の人物モデル内の色ヒストグラムを計算しておき、現時刻の人物モデル内の色ヒストグラムとの合致度を評価関数に付加することで、色がフレーム間で大きく異ならないように楕円を当て嵌めることができる。
【0056】
(S6:物品領域抽出)
このようにして、S5で物体領域に対し、最も適合した人物モデルを当て嵌めた後、物品領域抽出手段222は、物体領域から人物モデルが当て嵌まった部分を除いた残りの領域を物品領域として抽出する。これは、人物モデルからはみ出した物体領域は、持ち込み物品である可能性が高いためであり、この人物モデルからはみ出した物体領域を物品領域として抽出する。なお、物体領域中に複数のはみ出した領域が存在する場合は、最大面積を有するものを選択して物品領域として抽出する。
【0057】
(S7:物品領域の有無判定)
物品領域抽出手段222は、S6にて抽出された物品領域が閾値以上の大きさを有するか否かによって、物品領域が存在するか否かを判定する。閾値(面積閾値)は、例えば当て嵌められた楕円モデルの面積の30%程度とする。すなわち、S6で抽出された物品領域のうち、面積が小さいものは物品領域から削除する。
【0058】
(S8:物品領域の特徴量登録)
S7において、物品領域が存在する場合には、物品領域抽出手段222は、監視画像中で物品領域に相当する部分の特徴量を計算し、物品領域の特徴量として記憶部21の物品特徴記憶部213に登録する。特徴量は例えば色ヒストグラム、エッジヒストグラムなどである。なお、このようにして、監視領域に生じた物品領域については、その物品特徴量が順次登録される。また、監視領域に一定期間存在しない物品特徴量については、随時削除してもよい。
このように、物品領域抽出手段222は、物品特徴記憶手段として機能し、抽出した物品特徴量を記憶部21に記憶する。
【0059】
(S9:静止物体判定)
S8における特徴量の登録が終了した場合、およびS7において物品領域が存在しないと判定された場合には、静止物体領域検出手段223は、物体追跡手段221にて追跡している物体領域の中で、静止している物体領域が存在するか否か判定する。静止状態の判断は、例えば以下の(i)〜(iii)の条件による。
【0060】
(i)物体領域内にフレーム間差分がない。例えば、フレーム間差分が物体領域の面積の5%以下の場合にフレーム間差分がないと判定する。
【0061】
(ii)物体領域の重心座標が移動していない。例えば、移動距離が3ピクセル以下の場合に重心座標が移動していないと判定する。
【0062】
(iii)物体領域の外接矩形を形成しこの外接矩形の大きさが変化していない。例えば矩形変化率が5%以下の場合に外接矩形の大きさに変化がないと判定する。
【0063】
そして、この(i)〜(iii)の条件の全ての条件を、所定時間以上、例えば10フレーム以上に渡って満たしている物体領域を静止物体と判定する。もちろん、(i)〜(iii)のうちの2つの条件を所定時間以上満足することや、1つのみの条件を満足しない期間が所定時間以下で3つの条件を満足する時間が所定時間以上であるなど、各種の条件を設定可能である。
【0064】
(S10:物品領域と静止物体の特徴量比較)
異常判定手段224は、S9にて判定された静止物体の特徴とS8で記憶部21に記憶されている物品特徴量の比較を行う。特徴として色ヒストグラムを使用した場合、両特徴量の類似度は以下で表される。類似度をSim、完全静止物体の色ヒストグラムをl(i)、物品特徴量をh(i)として(iはヒストグラムのビンのインデックスを表す)、次式のように表せる。
【0065】
Sim = Σ MIN(l(i),h(i))
【0066】
l(i),h(i)はそれぞれ既に記憶されている物品特徴量と、今回認識した静止物体についての色iについての出現頻度であり、各iについてl(i),h(i)の少ない方を選択し、それを積算することで、各色についての両者が共通する画素数の積算値が得られる。なお、ヒストグラムl(i),h(i)のビンの総和は1に正規化されているゆえ、この類似度Simは、両ヒストグラムがどれくらい重なっているかを指し示す指標であり、完全に重なった時に1(類似度最大)、全く重ならなかった場合に0(類似度最小)を返す。
なお、異常判定手段224は、S9で静止物体が判定されたときに、記憶部21に物品特徴量が記憶されていないと当該静止物体を静止人物であると判定しS14に移る。
【0067】
(S11〜S15:物品と静止人物の識別)
異常判定手段224は、S10にて判定された静止物体の特徴量と記憶部21に記憶されている物品特徴量の類似度を所定の閾値と比較した結果、類似度が閾値以上であった場合には、静止物体が既に記憶されている物品特徴量を有していると判定し、持ち込まれた静止物品(持ち込み物品)であると判定する(S12)。一方、類似度が閾値以上でない場合は、静止人物である(S14)と判定する。なお、異常判定手段224における物品であるとの判定を行う部分を物品判定手段224a、静止人物であるとの判定を行う部分を静止人物領域判定手段224bとする。ここで、特徴の類似度に関する閾値は、例えば色ヒストグラムを特徴とした場合に0.75(分布の75%が重なる)とすることができる。また、S14において、静止人物と認定されたものについて、監視領域において、人物と判定されていたか、人物の特徴を有しているかなど、他の各種条件を満足するかをさらに判定するようにしてもよい。
【0068】
静止物品と判定された場合は、その物品は以降の背景差分処理にて抽出されないことが望ましいので、該当する静止物体領域を背景画像へと取込む(S13)。
【0069】
この判定を時間方向に蓄積することも可能である。すなわち、S11にて類似度が閾値以上である状態が所定時間以上継続したら静止物品と判定する。時間蓄積することで、例えば入力画像のノイズが原因で特徴量のマッチングが安定しない場合にも精度よく判定を下すことができる。
【0070】
(S15:異常出力)
異常判定手段224は、S14で静止人物と判定された場合、異常信号を出力部23へ出力する。
【0071】
「本実施形態の効果」
本実施形態によれば、監視画像から抽出された物体領域に対して楕円で表される人物モデルを当て嵌め、人物モデルからはみ出した領域を「物品領域」と仮定してその特徴量を登録する。そして、静止が継続する物体領域が出現した際、既に登録されている「物品領域」の特徴量と静止する物体領域(静止物体領域)の特徴量とを比較し、一定以上の類似が得られれば「持ち込まれた物品の静止」であり「人物の静止」ではないと判定する。これによって、持ち込み物品を効果的に検出することができ、持ち込み物品を静止人物と誤判定する可能性を減少することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 通報システム、2 物品検出装置(静止人物検出装置)、3 コントローラー、4 広域通信網、5 センタ装置、6 金庫、20 撮像部、21 記憶部、22 制御部、23 出力部、210 背景画像、211 人物モデル、212 追跡特徴記憶部、213 物品特徴記憶部、220 物体領域抽出手段、221 物体追跡手段、222 物品領域抽出手段、223 静止物体領域検出手段、224 異常判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域を撮影した監視画像を順次取得する画像取得部と、監視領域の背景が撮影された背景画像と、人物の外形を模した人物モデルを記憶する記憶部と、前記監視画像を処理して静止している物品を検出する制御部と、を具備する物品検出装置であって、
前記制御部は、
前記監視画像と前記背景画像から変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、
前記変化領域に前記人物モデルを重ね、当該変化領域の内側でかつ当該人物モデルの外側である物品領域の特徴を前記記憶部に記憶する物品特徴記憶手段と、
前記順次取得された画像にて前記変化領域を時間的に追跡し、当該変化領域が静止しているかを判定し静止物体領域を検出する静止物体領域検出手段と、
前記静止物体領域が検出されると、当該静止物体領域が前記物品領域の特徴を有するかを判定し、前記物品領域の特徴を有する場合に当該静止物体領域が物品であると判定する物品判定手段と、
を有することを特徴とする物品検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物品検出装置において、
前記物品領域の特徴は、物品領域における色別の出現頻度を示す色ヒストグラムであることを特徴とする物品検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物品検出装置を有するとともに、
前記制御部は、
前記検出した静止物体領域が前記物品領域の特徴を有さない場合に当該静止物体領域が静止人物領域であると判定する静止人物領域判定手段をさらに有することを特徴とする静止人物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−212238(P2012−212238A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76495(P2011−76495)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】