説明

物理量センサー素子及び電子機器

【課題】ベース基板と可動部との貼り付きを防止するとともに、落下等の衝撃時におけるベース基板の可動部に対する緩衝効果を向上させることが可能な物理量センサー素子、及び物理量センサー素子を備えた電子機器の提供。
【解決手段】センサー素子1は、ベース基板2と、ベース基板2上に設けられ、加えられた物理量に応じて可動する可動部33と、を備え、ベース基板2の空洞部21の底面には、平面視で可動部33と重複する位置に突起(25a,25b,25c等)が設けられ、突起(25a,25b,25c等)は、ベース基板2と一体で設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー素子及び物理量センサー素子を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
固定配置された固定電極と、固定電極に対して間隔を隔てて対向するとともに変位可能に設けられた可動電極とを有し、固定電極と可動電極との間の静電容量に基づいて、加速度、角速度等の物理量を検出する物理量センサー素子が知られている。
例えば、特許文献1に記載の物理量センサー素子は、基板の上面において所定間隔を隔てた位置に配置され、力学量により変位する作用力を受ける梁構造体と、基板の上面に固定され、梁構造体の少なくともその一部に対向して配置された固定電極とを備えた半導体力学量センサーであって、前記基板の上面部であって、前記構造体の下部に相当する部分に、前記構造体と電気的に接続された下部電極を配置し、前記下部電極における前記梁構造体側表面に突起を形成したことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−148278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物理量センサー素子において、例えば、基板をガラス材料とし、梁構造体を半導体材料とし、両者を陽極接合により接合した後に半導体材料をエッチングして梁構造体を形成するような場合に、基板表面と梁構造体表面とに発生する電荷により、両者が貼り付く問題がある。また、例えば、物理量センサー素子を落下させた際の衝撃により、梁構造体が基板に接触し、梁構造体が破損する可能性がある。
このような問題に対し、例えば、特許文献1の物理量センサー素子のように、梁構造体の下部に突起を形成することにより、梁構造体と基板との付着面積が小さくなり、梁構造体の形成時における両者間の貼り付きを防止できるとともに、落下衝撃の際の緩衝効果を得ることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の物理量センサー素子では、突起が下部電極から形成されていることから、突起形成のための電極加工工程が別途必要になり、製造プロセスの効率が悪いという問題がある。また、上記物理量センサー素子は、突起となる電極厚みの制御が困難であり、突起の高さにバラツキが生じる虞がある。
この結果、上記物理量センサー素子は、梁構造体の基板への貼り付きの防止や、落下衝撃の際の緩衝効果が不十分となる虞がある。
本発明の目的は、製造過程等における可動部(梁構造体)等の基板への貼り付きの防止や、落下等の衝撃に対する緩衝効果の向上を可能とした物理量センサー素子、及びこの物理量センサー素子を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる物理量センサー素子は、ベース基板と、前記ベース基板上に設けられ、物理量に応じて可動する可動部と、を備え、前記ベース基板には、平面視で前記可動部と重複する位置に突起が設けられ、前記突起は、前記ベース基板と一体で設けられていることを特徴とする。
【0008】
物理量センサー素子における従来の課題として、例えば、ガラス材料からなるベース基板(特許文献1の基板に相当)と、半導体材料からなる板状部材とを陽極接合により接合した後に、板状部材をエッチングして可動部(特許文献1の梁構造体に相当)を形成するような場合に、ベース基板表面と可動部表面とに発生する電荷により、両者が貼り付く問題がある。
この課題に対し、本適用例の物理量センサー素子は、ベース基板に平面視で可動部と重複するように突起を設けることにより、ベース基板における可動部との接触範囲が突起部分のみとなり、両者の接触面積を格段に小さくすることができる。これにより、物理量センサー素子は、ベース基板と可動部との貼り付きを防止することができる。
【0009】
また、物理量センサー素子は、突起をベース基板と一体で設けることにより、ベース基板における可動部の可動領域(例えば、凹部)と突起とを、例えば、エッチングで一括して形成することができる。
これにより、物理量センサー素子は、製造効率を改善できるとともに、従来(例えば、特許文献1)のように、電極で突起を形成する場合よりも突起の厚みのばらつきを低減することができる。これにより、物理量センサー素子は、落下等の衝撃時におけるベース基板の可動部に対する緩衝効果を向上させることができる。
これらの結果、物理量センサー素子は、従来よりも信頼性を向上させることができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかる物理量センサー素子において、前記可動部は、バネ部と、該バネ部を介して前記ベース基板に接続されたマス部と、該マス部に設けられた可動電極部と、を備え、前記ベース基板上には、前記可動電極部に対向して固定電極部が設けられていることが好ましい。
【0011】
これによれば、物理量センサー素子は、可動部がバネ部と、バネ部を介してベース基板に接続されたマス部と、マス部に設けられた可動電極部と、を備え、ベース基板上に可動電極部に対向して固定電極部が設けられていることから、固定電極部と可動電極部との間の静電容量に基づいて、加速度、角速度等の物理量を感度及び精度よく検出することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかる物理量センサー素子において、前記突起は、前記マス部と平面視で重複する位置に設けられていることが好ましい。
【0013】
これによれば、物理量センサー素子は、突起がマス部と平面視で重複する位置に設けられていることから、可動部において質量が大きいマス部とベース基板との貼り付きを効果的に防止することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかる物理量センサー素子において、前記突起は、前記マス部の中心に対し対称となるように複数設けられていることが好ましい。
【0015】
これによれば、物理量センサー素子は、突起がマス部の中心に対し対称となるように複数設けられていることから、可動部において質量が大きいマス部とベース基板との貼り付きを、より効果的にバランスよく防止することができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかる物理量センサー素子において、前記突起は、前記可動電極部及び前記バネ部の少なくとも一方と平面視で重複する位置に設けられていることが好ましい。
【0017】
これによれば、物理量センサー素子は、突起が可動電極部及びバネ部の少なくとも一方と平面視で重複する位置に設けられていることから、可動部の可動電極部及びバネ部の少なくとも一方とベース基板との貼り付きを、効果的に防止することができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例にかかる物理量センサー素子において、前記ベース基板は絶縁材料が用いられ、前記可動部は半導体材料が用いられていることが好ましい。
【0019】
これによれば、物理量センサー素子は、ベース基板に絶縁材料が用いられ、可動部に半導体材料が用いられていることから、ベース基板と可動部との絶縁分離を確実に行うことができる。
【0020】
[適用例7]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の物理量センサー素子を備えたことを特徴とする。
【0021】
これによれば、本構成の電子機器は、上記適用例のいずれかに記載の物理量センサー素子を備えたことから、上記適用例のいずれかに記載の効果が反映された信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態にかかるセンサー素子を示す斜視図。
【図2】図1に示すセンサー素子の平面図。
【図3】図2の部分拡大図(部分拡大平面図)。
【図4】図2のA−A線断面図。
【図5】図4の部分拡大図(部分拡大断面図)。
【図6】図2のB−B線断面図。
【図7】図6の部分断面図(部分拡大断面図)。
【図8】(a)〜(e)は、図1に示すセンサー素子の製造方法を説明するための図。
【図9】(a)〜(c)は、図1に示すセンサー素子の製造方法を説明するための図。
【図10】(a)〜(d)は、図8(c)に示す工程を説明するための図。
【図11】センサー素子を備えた電子機器としてのモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図。
【図12】センサー素子を備えた電子機器としての携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図。
【図13】センサー素子を備えた電子機器としてのデジタルスチルカメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0024】
<実施形態>
図1は、本実施形態にかかるセンサー素子を示す斜視図、図2は、図1に示すセンサー素子の平面図、図3は、図2の部分拡大図(部分拡大平面図)、図4は、図2のA−A線断面図、図5は、図4の部分拡大図(部分拡大断面図)、図6は、図2のB−B線断面図、図7は、図6の部分断面図(部分拡大断面図)である。
なお、以下では、説明の便宜上、図2中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」という。また、図1〜図4、図6では互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸及びZ軸が図示されている。また、以下では、X軸に平行な方向(左右方向)を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向(上下方向)を「Z軸方向」という。また、図1〜図4、図6、図8、図9では、説明の便宜上、後述する絶縁膜6及びそれに対応するもの(絶縁膜106,106A)の図示を省略している。また、図2では、煩雑さを避けるため符号の一部を省略している。なお、本実施形態では、センサー素子を加速度、角速度等の物理量を測定するための物理量センサー素子として用いる場合の例について説明する。
【0025】
(センサー素子)
図1に示すセンサー素子1は、ベース基板としての絶縁基板2と、この絶縁基板2に接合・支持された素子片3と、素子片3に電気的に接続された導体パターン4と、素子片3を覆うように設けられた蓋部材5とを有する。
【0026】
以下、センサー素子1を構成する各部を順次説明する。
(絶縁基板)
絶縁基板2は、素子片3を支持する機能を有する。
この絶縁基板2は、平板状をなし、その上面(一方の面)には、空洞部(凹部)21が設けられている。この空洞部21は絶縁基板2を平面視したときに、後述する素子片3の可動部33が絶縁基板2に接触するのを防止する逃げ場(回避領域)を構成する。これにより、絶縁基板2は、素子片3の可動部33の変位を許容することができる。
なお、この逃げ場は、空洞部21に代えて、絶縁基板2をその厚さ方向(Z軸方向)に貫通する開口部であってもよい。また、本実施形態では、空洞部21の平面視形状は、四角形(具体的には長方形)をなしているが、これに限定されるものではない。
【0027】
図3に示すように、空洞部21の底面には、平面視で可動部33と重複する位置に、角柱状の突起25a,25b,25c,25d,25e,25f,25g,25h,25i,25j,25k,25l,25mが、絶縁基板2と一体で設けられている。
これにより、センサー素子1は、後述する素子片3の可動部33が絶縁基板2と接触した場合において、可動部33と、絶縁基板2との接触面積が、空洞部21の底面が平坦な平面の場合と比較して小さくなるため、可動部33と、絶縁基板2との恒久的な貼り付きを防止することができる。以下、個々の突起を区別する必要がない場合には、便宜上、突起25と表記する。
なお、突起25の位置の詳細については、後述する素子片3のところで説明する。
【0028】
絶縁基板2の上面には、前述した空洞部21の外側に、その外周に沿って、凹部22,23,24が設けられている。この凹部22,23,24は、平面視で導体パターン4に対応した形状をなしている。具体的には、凹部22は、後述する導体パターン4の配線41及び電極44に対応した形状をなし、凹部23は、後述する導体パターン4の配線42及び電極45に対応した形状をなし、凹部24は、後述する導体パターン4の配線43及び電極46に対応した形状をなす。
【0029】
また、凹部22の電極44が設けられた部位の深さは、凹部22の配線41が設けられた部位よりも深くなっている。同様に凹部23の電極45が設けられた部位の深さは、凹部23の配線42が設けられた部位よりも深くなっている。また、凹部24の電極46が設けられた部位の深さは、凹部24の配線43が設けられた部位よりも深くなっている。
【0030】
このように凹部22,23,24の一部の深さを深くすることにより、後述するセンサー素子1の製造時において、素子片3を形成する前の基板103を基板102Aに接合したとき(図8参照)、その基板103が電極44,45,46と接合されてしまうのを防止することができる。
このような絶縁基板2の構成材料としては、例えば、高抵抗なシリコン材料、ガラス材料等の絶縁材料を用いるのが好ましく、特に、素子片3がシリコン材料を主材料として構成されている場合、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)ガラスのような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。これにより、センサー素子1は、素子片3がシリコンを主材料として構成されている場合、絶縁基板2と素子片3とを陽極接合することができる。
【0031】
また、絶縁基板2の構成材料は、素子片3の構成材料との熱膨張係数差ができるだけ小さいのが好ましく、具体的には、絶縁基板2の構成材料と素子片3の構成材料との熱膨張係数差が3ppm/℃以下であるのが好ましい。これにより、センサー素子1は、絶縁基板2と素子片3との接合時等に高温にさらされても、絶縁基板2と素子片3との間の残留応力を低減することができる。
【0032】
(素子片)
素子片3は、固定部31,32と、可動部33と、固定電極部38,39と、を備えている。可動部33は、バネ部としての連結部34,35と、連結部34,35、固定部31,32を介して絶縁基板2に接続されたマス部(質量部)33aと、マス部33aに設けられた可動電極部36,37と、を備えている。
このような素子片3は、例えば、加速度、角速度等の物理量の変化に応じて、マス部33a及び可動電極部36,37が、連結部34,35を弾性変形させながら、X軸方向(+X方向または−X方向)に変位する。このような変位に伴って、素子片3は、可動電極部36と固定電極部38との間の隙間、及び、可動電極部37と固定電極部39との間の隙間の大きさがそれぞれ変化する。すなわち、このような変位に伴って、素子片3は、可動電極部36と固定電極部38との間の静電容量、及び、可動電極部37と固定電極部39との間の静電容量の大きさがそれぞれ変化する。したがって、センサー素子1は、これらの静電容量に基づいて、加速度、角速度等の物理量を検出することができる。
【0033】
この固定部31,32、可動部33(連結部34,35、マス部33a、可動電極部36,37)は、一体で形成されている。
固定部31,32は、それぞれ、前述した絶縁基板2の上面に接合されている。具体的には、固定部31は、絶縁基板2の上面の、空洞部21に対して−X方向側(図中左側)の部分に接合され、固定部32は、絶縁基板2の上面の、空洞部21に対して+X方向側(図中右側)の部分に接合されている。また、固定部31,32は、平面視したときに、それぞれ、空洞部21の外周縁を跨ぐように設けられている。
【0034】
なお、固定部31,32の位置及び形状等は、連結部34,35や導体パターン4等の位置及び形状等に応じて決められるものであり、上述したものに限定されない。
このような2つの固定部31,32の間には、可動部33のマス部33aが設けられている。本実施形態では、マス部33aは、X軸方向に伸びる角柱形状をなしている。なお、マス部33aの形状は、素子片3を構成する各部の形状、大きさ等に応じて決められるものであり、上述したものに限定されない。
【0035】
このようなマス部33aは、固定部31に対して連結部34を介して連結されるとともに、固定部32に対して連結部35を介して連結されている。より具体的には、マス部33aの左側の端部が連結部34を介して固定部31に連結されるとともに、マス部33aの右側の端部が連結部35を介して固定部32に連結されている。
この連結部34,35は、マス部33aを固定部31,32に対して変位方向に連結している。本実施形態では、連結部34,35は、図2にて矢印aで示すように、X軸方向(+X方向または−X方向)にマス部33aを変位し得るように構成されている。
【0036】
具体的に説明すると、連結部34は、2つの梁341,342で構成されている。そして、梁341,342は、それぞれ、Y軸方向に蛇行しながらX軸方向に延びる形状をなしている。言い換えると、梁341,342は、それぞれ、Y軸方向に複数回(本実施形態では3回)折り返された形状をなしている。なお、各梁341,342の折り返し回数は、1回または2回であってもよいし、4回以上であってもよい。
【0037】
同様に、連結部35は、Y軸方向に蛇行しながらX軸方向に延びる形状をなす2つの梁351,352で構成されている。
なお、連結部34,35は、マス部33aを絶縁基板2に対して変位可能に支持するものであれば、上述したものに限定されず、例えば、マス部33aの両端部から+Y方向及び−Y方向にそれぞれ延出する1対の梁で構成されていてもよい。
【0038】
このように絶縁基板2に対してX軸方向に変位可能に支持されたマス部33aの幅方向(Y軸方向)での一方側(+Y方向側)には、可動電極部36が設けられ、他方側(−Y方向側)には、可動電極部37が設けられている。
可動電極部36は、マス部33aから+Y方向に突出し、櫛歯状をなすように並ぶ複数の可動電極指361〜365を備えている。この可動電極指361,362,363,364,365は、−X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。
同様に、可動電極部37は、マス部33aから−Y方向に突出し、櫛歯状をなすように並ぶ複数の可動電極指371〜375を備える。この可動電極指371,372,373,374,375は、−X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。
【0039】
このように複数の可動電極指361〜365及び複数の可動電極指371〜375は、それぞれ、マス部33aの変位する方向(すなわちX軸方向)に並んで設けられている。
これにより、センサー素子1は、後述する固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量、及び、固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量を、マス部33aの変位に応じて効率的に変化させることができる。
同様に、センサー素子1は、後述する固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量、及び、固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を、マス部33aの変位に応じて効率的に変化させることができる。これにより、センサー素子1は、物理量センサー素子として用いた場合に検出感度、検出精度を優れたものとすることができる。
【0040】
ここで、絶縁基板2の突起25と、素子片3の可動部33との位置関係について詳述する。
図3に示すように、突起25a,25b,25cは、平面視でマス部33aと重複する位置に設けられている。具体的には、突起25aは、マス部33aの中心Oと重複する位置に設けられ、突起25bと25cとは、マス部33aのY軸に平行な中心線Bに対して互いに対称となる位置に設けられていることが好ましい。また、突起25bと25cとは、マス部33aのX軸に平行な中心線Cと重複する位置に設けられていることが好ましい。
突起25dは可動電極指361と、突起25eは可動電極指362と、突起25fは可動電極指363と、突起25gは可動電極指364と、突起25hは可動電極指365と、突起25iは可動電極指371と、突起25jは可動電極指372と、突起25kは可動電極指373と、突起25lは可動電極指374と、突起25mは可動電極指375と、平面視で、それぞれ重複する位置に設けられている。
【0041】
なお、突起25d,25e,25f,25g,25hと、突起25i,25j,25k,25l,25mとは、マス部33aの中心線Cに対して互いに対称となる位置に設けられていることが好ましい。
また、突起25は、平面視で、連結部34,35と重複する位置に設けられていてもよい。この場合、突起25は、梁341,342,351,352の撓みやすい折り返し部分と重複する位置に設けられていることが好ましい。詳述すると、突起25は、梁341,351については、+Y側の折り返し部分と重複する位置に設けられていることが好ましく、梁342,352については、−Y側の折り返し部分と重複する位置に設けられていることが好ましい。
【0042】
なお、突起25の高さは、可動部33との間隔、可動部33のサイズ、可動部の変位(撓み)の度合い等に応じて、加速度、角速度等の物理量の検出に支障がないように適宜設定される。また、突起25の平面形状は、矩形に限定されるものではなく、円形、三角形、五角形以上の多角形、楕円形等任意の形状であってもよい。
また、突起25の先端の可動部33に対向する面は、可動部33との接触面積を更に少なくするために、微細な凹凸が設けられていてもよく、多数の孔(窪み)を有する多孔質材料からなる被膜に覆われていてもよい。
【0043】
固定電極部38は、可動電極部36に対して間隔を隔てて対向するように絶縁基板2上に設けられている。また、固定電極部39は、可動電極部37に対して間隔を隔てて対向するように絶縁基板2上に設けられている。
【0044】
固定電極部38は、前述した可動電極部36の複数の可動電極指361〜365に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなすように並ぶ複数の固定電極指381〜388を備えている。このような複数の固定電極指381〜388のマス部33a側とは反対側の端部は、それぞれ、絶縁基板2の上面の、空洞部21に対して+Y方向側の部分に接合されている。そして、各固定電極指381〜388は、その固定された側の端を固定端とし、自由端が−Y方向へ延びている。
【0045】
この固定電極指381〜388は、−X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。そして、固定電極指381,382は、対をなし、前述した可動電極指361,362の間に、固定電極指383,384は、対をなし、可動電極指362,363の間に、固定電極指385,386は、対をなし、可動電極指363,364の間に、固定電極指387,388は、対をなし、可動電極指364,365の間に挟まれるように設けられている。
【0046】
ここで、固定電極指382,384,386,388は、それぞれ、第1固定電極指であり、固定電極指381,383,385,387は、それぞれ、絶縁基板2上で第1固定電極指に対して空隙(間隙)を介して設けられた第2固定電極指である。このように、複数の固定電極指381〜388は、交互に並ぶ複数の第1固定電極指及び複数の第2固定電極指で構成されている。言い換えれば、可動電極指の一方の側に第1固定電極指が配置され、他方の側に第2固定電極指が配置されている。
【0047】
このような第1固定電極指382,384,386,388と第2固定電極指381,383,385,387とは、絶縁基板2上で互いに分離している。言い換えると、第1固定電極指382,384,386,388、第2固定電極指381,383,385,387は、絶縁基板2上において、互いに連結されておらず、島状に孤立している。
これにより、センサー素子1は、第1固定電極指382,384,386,388と第2固定電極指381,383,385,387とを電気的に絶縁することができる。
この結果、センサー素子1は、第1固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量、及び、第2固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量を別々に測定し、それらの測定結果に基づいて、高精度に物理量を検出することができる。
【0048】
同様に、固定電極部39は、前述した可動電極部37の複数の可動電極指371〜375に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなすように並ぶ複数の固定電極指391〜398を備えている。このような複数の固定電極指391〜398の可動部33とは反対側の端部は、それぞれ、絶縁基板2の上面の、空洞部21に対して−Y方向側の部分に接合されている。そして、各固定電極指391〜398は、その固定された側の端を固定端とし、自由端が+Y方向へ延びている。
【0049】
この固定電極指391,392,393,394,395,396,397,398は、−X方向側から+X方向側へ、この順に並んでいる。そして、固定電極指391,392は、対をなし、前述した可動電極指371,372の間に、固定電極指393,394は、対をなし、可動電極指372,373の間に、固定電極指395,396は、対をなし、可動電極指373,374の間に、固定電極指397,398は、対をなし、可動電極指374,375の間に挟まれるように設けられている。
【0050】
ここで、固定電極指392,394,396,398は、それぞれ、第1固定電極指であり、固定電極指391,393,395,397は、それぞれ、絶縁基板2上で第1固定電極指に対して空隙(間隙)を介して設けられた第2固定電極指である。このように、複数の固定電極指391〜398は、交互に並ぶ複数の第1固定電極指及び複数の第2固定電極指で構成されている。言い換えれば、可動電極指の一方の側に第1固定電極指が配置され、他方の側に第2固定電極指が配置されている。
【0051】
このような第1固定電極指392,394,396,398と第2固定電極指391,393,395,397とは、前述した固定電極部38と同様、絶縁基板2上で互いに分離している。これにより、センサー素子1は、第1固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量、及び、第2固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を別々に測定し、それらの測定結果に基づいて、高精度に物理量を検出することができる。
【0052】
このような素子片3は、後述する1つの基板103をエッチングすることにより形成されたものである。
これにより、センサー素子1は、固定部31,32、マス部33a、連結部34,35、複数の固定電極指381〜388,391〜398及び複数の可動電極指361〜365,371〜375の厚さを厚くすることができる。また、センサー素子1は、これらの厚さを簡単かつ高精度に揃えることができる。この結果、センサー素子1は、高感度化を図ることができるとともに、耐衝撃性を向上させることができる。
【0053】
素子片3の構成材料としては、前述したような静電容量の変化に基づく物理量の検出が可能であれば、特に限定されないが、半導体材料が好ましく、具体的には、例えば、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料を用いることが好ましい。
すなわち、固定部31,32、マス部33a、連結部34,35、複数の固定電極指381〜388,391〜398及び複数の可動電極指361〜365,371〜375は、それぞれ、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
【0054】
シリコンはエッチングにより高精度に加工することができる。そのため、素子片3をシリコンを主材料として構成することにより、素子片3の寸法精度を優れたものとし、その結果、物理量センサー素子であるセンサー素子1の高感度化を図ることができる。また、シリコンは劣化し難いため、センサー素子1の耐久性を向上させることもできる。
また、素子片3を構成するシリコン材料には、リン、ボロン等の不純物がドープされていることが好ましい。これにより、センサー素子1は、素子片3の導電性を優れたものとすることができる。
【0055】
素子片3は、前述したように、絶縁基板2の上面に固定部31,32及び固定電極部38,39が接合されることにより、絶縁基板2に支持されている。本実施形態では、後述する絶縁膜6を介して絶縁基板2と素子片3とが接合されている。
このような素子片3(具体的には、前述した固定部31,32及び各固定電極指381〜388,391〜398)と絶縁基板2との接合方法は、特に限定されないが、陽極接合法を用いることが好ましい。これにより、センサー素子1は、固定部31,32及び固定電極部38,39(各固定電極指381〜388,391〜398)を絶縁基板2に強固に接合することができる。
この結果、センサー素子1は、耐衝撃性を向上させることができるとともに、固定部31,32及び固定電極部38,39(各固定電極指381〜388,391〜398)を絶縁基板2の所望の位置に高精度に接合することができる。これにより、センサー素子1は、高感度化を図ることができる。
【0056】
(導体パターン)
導体パターン4は、前述した絶縁基板2の上面(固定電極部38,39側の面)上に設けられている。
この導体パターン4は、配線41,42,43と、電極44,45,46とで構成されている。
配線41は、前述した絶縁基板2の空洞部21の外側に設けられ、空洞部21の外周に沿うように形成されている。そして、配線41の一端部は、絶縁基板2の上面の外周部(絶縁基板2上の蓋部材5の外側の部分)上において、電極44に接続されている。
【0057】
このような配線41は、前述した素子片3の第1固定電極指である各固定電極指382,384,386,388及び各固定電極指392,394,396,398に電気的に接続されている。
また、配線42は、前述した配線41の内側、かつ、前述した絶縁基板2の空洞部21の外側でその外周縁に沿って設けられている。そして、配線42の一端部は、前述した電極44に対して間隔を隔てて並ぶように絶縁基板2の上面の外周部(絶縁基板2上の蓋部材5の外側の部分)上において、電極45に接続されている。
【0058】
配線43は、絶縁基板2上の固定部31との接合部から、絶縁基板2の上面の外周部(絶縁基板2上の蓋部材5の外側の部分)上に延びるように設けられている。そして、配線43の固定部31とは反対側の端部は、前述した電極44,45に対して間隔を隔てて並ぶように絶縁基板2の上面の外周部(絶縁基板2上の蓋部材5の外側の部分)上において、電極46に接続されている。
【0059】
このような配線41〜43の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In33、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物(透明電極材料)、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
中でも、配線41〜43の構成材料としては、透明電極材料(特にITO)を用いることが好ましい。センサー素子1は、配線41,42がそれぞれ透明電極材料で構成されていると、絶縁基板2が透明基板である場合、絶縁基板2の固定電極部38,39側の面上に存在する異物等を絶縁基板2の固定電極部38,39とは反対の面側から容易に視認することができる。これにより、センサー素子1は、不良品の検出が容易となり、信頼性を向上させることができる。
【0061】
また、電極44〜46の構成材料としては、それぞれ、前述した配線41〜43と同様、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができる。本実施形態では、電極44〜46の構成材料として、後述する接合突部471,472,481,482の構成材料と同じものが用いられている。
センサー素子1は、配線41を介して第1固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量、及び第1固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量を測定することができる。そして、センサー素子1は、配線42を介して第2固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量、及び第2固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を測定することができる。
【0062】
本実施形態では、電極44及び電極46を用いることにより、第1固定電極指382,384,386,388と可動電極部36との間の静電容量、及び第1固定電極指392,394,396,398と可動電極部37との間の静電容量を測定することができる。また、電極45及び電極46を用いることにより、第2固定電極指381,383,385,387と可動電極部36との間の静電容量、及び第2固定電極指391,393,395,397と可動電極部37との間の静電容量を測定することができる。
また、配線41,42は、絶縁基板2の上面上、すなわち固定電極部38,39側の面上に設けられているので、固定電極部38,39に対する電気的接続及び位置決めが容易である。この結果、センサー素子1は、信頼性(特に、耐衝撃性及び検出精度)を向上させることができる。
【0063】
また、配線41及び電極44は、前述した絶縁基板2の凹部22内に設けられ、配線42及び電極45は、前述した絶縁基板2の凹部23内に設けられ、配線43及び電極46は、前述した絶縁基板2の凹部24内に設けられている。これにより、配線41〜43が絶縁基板2の上面から突出するのを防止することができる。そのため、各固定電極指381〜388,391〜398と絶縁基板2との接合(固定)を確実なものとしつつ、固定電極指382,384,386,388,392,394,396,398と配線41との電気的接続及び固定電極指381,383,385,387,391,393,395,397と配線42との電気的接続を行うことができる。
同様に、固定部31と絶縁基板2との接合(固定)を確実なものとしつつ、固定部31と配線43との電気的接続を行うことができる。ここで、配線41〜43の厚さをそれぞれtとし、前述した凹部22〜24の配線41が設けられた部分の深さをそれぞれdとしたとき、t<dなる関係を満たす。
【0064】
特に、配線41上には、導電性を有する複数の接合突部481,482が設けられている。複数の接合突部481は、固定電極指382,384,386,388に対応して設けられ複数の接合突部482は、固定電極指392,394,396,398に対応して設けられている。
【0065】
そして、複数の接合突部481を介して固定電極指382,384,386,388と配線41とが電気的に接続されるとともに、複数の接合突部482を介して固定電極指392,394,396,398と配線41とが電気的に接続されている。
これにより、配線41と他の部位との無要な電気的接続(短絡)を防止しつつ、各固定電極指382,384,386,388,392,394,396,398と配線41との電気的接続を行うことができる。
【0066】
同様に、配線42上には、導電性を有する複数の接合突部471,472が設けられている。複数の接合突部471は、固定電極指381,383,385,387に対応して設けられ、複数の接合突部472は、固定電極指391,393,395,397に対応して設けられている。
【0067】
そして、複数の接合突部471を介して固定電極指381,383,385,387と配線42とが電気的に接続されるとともに、複数の接合突部472を介して固定電極指391,393,395,397と配線42とが電気的に接続されている。
これにより、配線42と他の部位との無要な電気的接続(短絡)を防止しつつ、各固定電極指381,383,385,387,391,393,395,397と配線42との電気的接続を行うことができる。
【0068】
このような接合突部471,472,481,482の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Al等の金属単体またはこれらを含む合金等の金属が好適に用いられる。このような金属を用いて接合突部471,472,481,482を構成することにより、センサー素子1は、配線41,42と固定電極部38,39との間の接点抵抗を小さくすることができる。
【0069】
また、配線41〜43の厚さをそれぞれtとし、前述した凹部22〜24の配線41〜43が設けられた部分の深さをそれぞれdとし、接合突部471,472,481,482の高さをそれぞれhとしたとき、d≒t+hなる関係を満たす。
また、図5、図7に示すように、配線41〜43上には、絶縁膜6が設けられている。そして、前述した接合突部471,472,481,482,50上には、絶縁膜6は形成されず、接合突部471,472,481,482,50の表面が露出している。この絶縁膜6は、導体パターン4と素子片3との無要な電気的接続(短絡)を防止する機能を有する。
【0070】
これにより、センサー素子1は、配線41,42と他の部位との無用な電気的接続(短絡)をより確実に防止しつつ、固定電極指382,384,386,388,392,394,396,398と配線41との電気的接続及び固定電極指381,383,385,385,387,391,393,395,397と配線42との電気的接続を行うことができる。
また、センサー素子1は、配線43と他の部位との無用な電気的接続(短絡)をより確実に防止しつつ、固定部31と配線43との電気的接続を行うことができる。
【0071】
本実施形態では、絶縁膜6は、後述する接合突部471,472,481,482,50及び電極44〜46の形成領域を除いて、絶縁基板2の上面の略全域に亘って形成されている。なお、絶縁膜6の形成領域は、配線41〜43を覆うことができれば、これに限定されず、例えば、絶縁基板2の上面の素子片3との接合部位や蓋部材5との接合部位を除くような形状をなしていてもよい。
【0072】
また、配線41〜43の厚さをそれぞれtとし、前述した凹部22〜24の配線41〜43が設けられた部分の深さをそれぞれdとしたとき、d>tなる関係を満たす。これにより、例えば、図5に示すように、固定電極指391と配線41上の絶縁膜6との間には、隙間221が形成されている。図示しないが、この隙間221と同様の隙間が他の各固定電極指と配線41,42上の絶縁膜6との間にも形成されている。このような隙間は、後述するセンサー素子1の製造において、基板102と基板103との間にも同様に形成され、陽極接合時に生じるガスを排出することができる。
【0073】
また、図7に示すように、蓋部材5と配線43上の絶縁膜6との間には、隙間222が形成されている。図示しないが、この隙間222と同様の隙間が蓋部材5と配線41,42上の絶縁膜6との間にも形成されている。これらの隙間(222等)は、蓋部材5内の減圧や、不活性ガスの充填の際に用いることができる。なお、これらの隙間(222等)は、蓋部材5と絶縁基板2とを接着剤により接合する際に、接着剤により塞いでもよい。
【0074】
このような絶縁膜6の構成材料としては、特に限定されず、絶縁性を有する各種材料を用いることができるが、絶縁基板2がガラス材料(特に、アルカリ金属イオンが添加されたガラス材料)で構成されている場合、二酸化珪素(SiO2)を用いるのが好ましい。これにより、前述したような無用な電気的接続を防止するとともに、絶縁基板2の上面の素子片3との接合部位に絶縁膜6が存在していても、絶縁基板2と素子片3とを陽極接合することができる。
【0075】
また、絶縁膜6の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、10〜1000nm程度であるのが好ましく、10〜200nm程度であるのがより好ましい。センサー素子1は、このような厚さの範囲で絶縁膜6を形成すると、前述したような無用な電気的接続を防止することができる。また、センサー素子1は、絶縁基板2がアルカリ金属イオンを含むガラス材料で構成され、かつ、素子片3がシリコンを主材料として構成されている場合、絶縁基板2の上面の素子片3との接合部位に絶縁膜6が存在していても、絶縁膜6を介して絶縁基板2と素子片3とを陽極接合することができる。
【0076】
(蓋部材)
蓋部材5は、前述した素子片3を保護する機能を有する。
この蓋部材5は、平板状をなし、その一方の面(下面)に凹部51が設けられている。この凹部51は、素子片3の可動部33(マス部33a、連結部34,35、可動電極部36,37)の変位を許容するように形成されている。
【0077】
そして、蓋部材5の下面の凹部51よりも外側の部分は、前述した絶縁基板2の上面に接合されている。本実施形態では、前述した絶縁膜6を介して絶縁基板2と蓋部材5とが接合されている。
蓋部材5と絶縁基板2との接合方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤を用いた接合方法、陽極接合法、直接接合法等を用いることができる。
また、蓋部材5の構成材料としては、前述したような機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、シリコン材料、ガラス材料等を好適に用いることができる。
【0078】
(センサー素子の製造方法)
次に、本実施形態のセンサー素子の製造方法を説明する。なお、以下では、前述したセンサー素子1を製造する場合の一例を説明する。
図8、図9は、それぞれ、図1に示すセンサー素子の製造方法を説明するための図、図10は、図8(c)に示す工程(配線、接点、絶縁膜を形成する工程)を説明するための図である。なお、図8、図9は、それぞれ、図2のY軸に沿った断面を示している。
なお、以下では、絶縁基板2がアルカリ金属イオンを含むガラス材料で構成され、かつ、素子片3がシリコン材料で構成されている場合を例に説明する。
【0079】
[1]
まず、図8(a)に示すように、基板102を用意する。
この基板102は、後述する工程を経て絶縁基板2となるものである。
また、基板102は、アルカリ金属イオンを含むガラス材料で構成されている。
[2]
次に、図8(b)に示すように、基板102の上面をエッチングすることにより、空洞部21、と凹部22,23、突起25を形成する。このとき、図8(b)では図示しないが、上記エッチングにより凹部24も同時に形成する。これにより、空洞部21と凹部22〜24、突起25が形成された基板102Aを得る。
【0080】
このような空洞部21と凹部22〜24、突起25の形成方法(エッチング方法)としては、特に限定されないが、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
【0081】
また、上述したようなエッチングに際しては、例えば、フォトリソグラフィー法により形成されたマスクを好適に用いることができる。また、マスク形成、エッチング、マスク除去を複数繰り返し、空洞部21、凹部22〜24、突起25とを順に形成することができる。そして、このマスクは、エッチング後に、除去される。このマスクの除去方法としては、例えば、マスクがレジスト材料で構成される場合には、レジスト剥離液、マスクが金属材料で構成される場合には、リン酸溶液のようなメタル剥離液等を用いることができる。
なお、マスクとして、例えば、グレースケールマスクを用いることにより、空洞部21、凹部22〜24(深さの異なる複数の凹部)、突起25とを一括形成してもよい。
【0082】
[3]
次に、図8(c)に示すように、基板102Aの上面上に、導体パターン4を形成する。その後、図8(c)では図示しないが、絶縁膜106Aを形成する。
ここで、絶縁膜106Aは、後述する個片化を経て絶縁膜6となるものである。
以下、図10に基づき、導体パターン4及び絶縁膜106Aの形成について詳述する。なお、図10では、基板102Aの固定電極指391との接合部近傍における導体パターン4及び絶縁膜106Aの形成を代表的に図示している。
【0083】
導体パターン4を形成するに際しては、まず、図10(a)に示すように、凹部22内に配線41を形成するとともに、凹部23内に配線42を形成する。このとき、図10では図示しないが、凹部24内に配線43を配線41,42と同時に形成する。
配線41,42,43の形成方法(成膜方法)としては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、薄膜の接合等が挙げられる。なお、以下の各工程における成膜においても、同様の方法を用いることができる。
そして、図10(b)に示すように、配線42上に複数の接合突部472を形成(成膜)する。このとき、図10(b)では図示しないが、配線42上に複数の接合突部471及び電極45を接合突部472と同時に形成する。
また、配線41上に複数の接合突部481、複数の接合突部482及び電極44を接合突部472と同時に形成する。また、配線43上に接合突部50及び電極46を接合突部472と同時に形成する。
【0084】
次に、図10(c)に示すように、配線41,42等を覆うように、基板102Aの上面に絶縁膜106を形成(成膜)する。
次に、図10(d)に示すように、絶縁膜106の各接合突部472に対応する部分を除去する。また、図10(d)では図示しないが、絶縁膜106の各接合突部471,481,482、接合突部50及び電極44〜46に対応する部分も除去する。これにより、電極44〜46を露出させるとともに、各接合突部471,472,481,482,50が貫通する絶縁膜106Aが得られる。
以上のようにして、導体パターン4及び絶縁膜106Aが得られる。
【0085】
[4]
次に、図8に戻って、図8(d)に示すように、基板102Aの上面に、基板103を陽極接合法により接合する。これにより、基板103と各接合突部471,472,481,482,50とが接続される。
この基板103は、後述する薄肉化、パターンニング及び個片化を経て素子片3となるものである。
また、基板103は、シリコン基板である。
また、基板103の厚さは、素子片3の厚さよりも厚くなっている。これにより、基板103の取り扱い性を向上させることができる。なお、基板103の厚さは、素子片3の厚さと同じであってもよい。この場合は、後述する薄肉化工程[5]を省略すればよい。
【0086】
[5]
次に、基板103を薄肉化して、図8(e)に示すように、基板103Aを得る。
この薄肉化は、基板103Aの厚さが素子片3の厚さと同じになるように行われる。
また、基板103の薄肉化方法は、特に限定されないが、例えば、CMP法、ドライポリッシュ法を好適に用いることができる。
【0087】
[6]
次に、基板103Aをエッチングすることにより、図9(a)に示すように、素子片3を得る。
[7]
次に、図9(b)に示すように、基板102Aの上面に、凹部51を有する蓋部材105を接合する。これにより、基板102Aと蓋部材105とが素子片3を収納するようにして接合された接合体101が得られる。
この蓋部材105は、後述する個片化を経て蓋部材5となるものである。
[8]
次に、接合体101を個片化(ダイシング)することにより、図9(c)に示すように、センサー素子1が得られる。
【0088】
上述したように、第1実施形態にかかるセンサー素子1は、絶縁基板2の空洞部21の底面の、平面視で可動部33と重複する位置に突起25が設けられている。これにより、センサー素子1は、可動部33が変位して空洞部21の底面(突起25を含む)に接触した場合に、空洞部21の底面における可動部33との接触範囲が突起25の先端部のみとなる。これにより、センサー素子1は、可動部33と空洞部21の底面との接触面積が小さくなり、可動部33と空洞部21の底面との恒久的な貼り付きを防止することができる。
【0089】
また、センサー素子1は、突起25を絶縁基板2と一体で設けることにより、絶縁基板2の空洞部21と突起25とを、例えば、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングで一括して形成することができる。
これにより、センサー素子1は、製造効率を改善できるとともに、従来(例えば、特許文献1)のように、電極で突起25を形成するよりも突起25の厚みのばらつきを低減することができる。これにより、センサー素子1は、落下等の衝撃時における絶縁基板2の空洞部21の可動部33に対する緩衝効果を向上させることができる。
これらの結果、センサー素子1は、信頼性を向上させることができる。
【0090】
また、センサー素子1は、可動部33が連結部34,35と、連結部34,35を介して絶縁基板2に接続されたマス部33aと、マス部33aに設けられた可動電極部36,37と、を備え、絶縁基板2上に可動電極部36,37に対向して固定電極部38,39が設けられていることから、固定電極部38,39と可動電極部36,37との間の静電容量に基づいて、加速度、角速度等の物理量を感度及び精度よく検出することができる。
【0091】
また、センサー素子1は、突起25a,25b,25cが、マス部33aと平面視で重複する位置に設けられていることから、可動部33において質量が大きいマス部33aと絶縁基板2の空洞部21の底面との貼り付きを効果的に防止することができる。
【0092】
また、センサー素子1は、突起25aがマス部33aの中心Oと平面視で重複する位置に設けられ、突起25bと、突起25cとが、マス部33aのY軸に沿った中心線Bに対し互いに対称となるように設けられていることから、可動部33において質量が大きいマス部33aと絶縁基板2の空洞部21の底面との貼り付きを、より効果的にバランスよく防止することができる。
【0093】
また、センサー素子1は、突起25d,25e,25f,25g,25h,25i,25j,25k,25l,25mが、可動電極指361,362,363,364,365,371,372,373,374,375と平面視で重複する位置に設けられていることから、可動部33の可動電極指361〜365,371〜375と絶縁基板2の空洞部21の底面との貼り付きを、効果的に防止することができる。
【0094】
また、センサー素子1は、突起25d,25e,25f,25g,25hと、突起25i,25j,25k,25l,25mとが、可動部33のX軸に沿った中心線Cに対し互いに対称となるように設けられていることから、可動部33の可動電極指361〜365,371〜375と絶縁基板2の空洞部21の底面との貼り付きを、よりバランスよく防止することができる。
【0095】
また、センサー素子1は、突起25が可動部33の連結部34,35と平面視で重複する位置に設けられていることにより、可動部33の連結部34,35(梁341,342,351,352)と絶縁基板2の空洞部21の底面との貼り付きを、効果的に防止することができる。
【0096】
また、センサー素子1は、絶縁基板2に絶縁材料であるアルカリ金属イオンを含むガラスが用いられ、可動部33(素子片3)に半導体材料であるシリコンが用いられていることから、絶縁基板2と可動部33(素子片3)との絶縁分離を確実に行うことができる。
これにより、センサー素子1は、信頼性を向上させることができる。
【0097】
(電子機器)
次に、上述したセンサー素子を備えた電子機器について説明する。
図11は、センサー素子を備えた電子機器としてのモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
図11に示すように、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1101を有する表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このようなパーソナルコンピューター1100には、センサー素子1が内蔵されている。
【0098】
図12は、センサー素子を備えた電子機器としての携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
図12に示すように、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204及び送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部1201が配置されている。
このような携帯電話機1200には、センサー素子1が内蔵されている。
【0099】
図13は、センサー素子を備えた電子機器としてのデジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図13には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、デジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
デジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面(図中手前側)には、表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。
また、ケース1302の正面側(図中奥側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCD等を含む受光ユニット1304が設けられている。
【0100】
撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。
また、このデジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、ビデオ信号出力端子1312には、テレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314には、パーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。更に、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。
このようなデジタルスチルカメラ1300には、センサー素子1が内蔵されている。
【0101】
このような電子機器は、信頼性に優れたセンサー素子1を備えたことから、優れた性能を発揮することができる。
なお、上記センサー素子1を備えた電子機器は、図11のパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、図12の携帯電話機、図13のデジタルスチルカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、各種ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば、電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター等に適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1…センサー素子、2…ベース基板としての絶縁基板、3…素子片、4…導体パターン、5…蓋部材、6…絶縁膜、21…空洞部、22,23,24…凹部、25,25a,25b,25c,25d,25e,25f,25g,25h,25i,25j,25k,25l,25m…突起、31,32…固定部、33…可動部、33a…マス部、34,35…バネ部としての連結部、36,37…可動電極部、38,39…固定電極部、41,42,43…配線、44,45,46…電極、50…接合突部、51…凹部、101…接合体、102,102A,103,103A…基板、105…蓋部材、106,106A…絶縁膜、221,222…隙間、341,342,351,352…梁、361,362,363,364,365,371,372,373,374,375…可動電極指、382,384,386,388,392,394,396,398…固定電極指(第1固定電極指)、381,383,385,385,387,391,393,395,397…固定電極指(第2固定電極指)、471,472,481,482…接合突部、1100…電子機器としてのパーソナルコンピューター、1101…表示部、1102…キーボード、1104…本体部、1106…表示ユニット、1200…電子機器としての携帯電話機、1201…表示部、1202…操作ボタン、1204…受話口、1206…送話口、1300…電子機器としてのデジタルスチルカメラ、1302…ケース、1304…受光ユニット、1306…シャッターボタン、1308…メモリー、1310…表示部、1312…ビデオ信号出力端子、1314…入出力端子、1430…テレビモニター、1440…パーソナルコンピューター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
前記ベース基板上に設けられ、物理量に応じて可動する可動部と、を備え、
前記ベース基板には、平面視で前記可動部と重複する位置に突起が設けられ、
前記突起は、前記ベース基板と一体で設けられていることを特徴とする物理量センサー素子。
【請求項2】
前記可動部は、バネ部と、該バネ部を介して前記ベース基板に接続されたマス部と、該マス部に設けられた可動電極部と、を備え、
前記ベース基板上には、前記可動電極部に対向して固定電極部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の物理量センサー素子。
【請求項3】
前記突起は、前記マス部と平面視で重複する位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の物理量センサー素子。
【請求項4】
前記突起は、前記マス部の中心に対し対称となるように複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の物理量センサー素子。
【請求項5】
前記突起は、前記可動電極部及び前記バネ部の少なくとも一方と平面視で重複する位置に設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の物理量センサー素子。
【請求項6】
前記ベース基板は絶縁材料が用いられ、前記可動部は半導体材料が用いられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の物理量センサー素子。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の物理量センサー素子を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−104868(P2013−104868A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251339(P2011−251339)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】