特定装置、特定プログラム及び特定方法
【課題】災害等の現象が発生した領域を特定することを目的とする。
【解決手段】測定データ入力部110は、観測エリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する。散乱波差計算部140は、観測エリアにおける所定の領域毎に、散乱成分Aと散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する。領域特定部150は、観測エリアのうち、散乱成分差が閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する。
【解決手段】測定データ入力部110は、観測エリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する。散乱波差計算部140は、観測エリアにおける所定の領域毎に、散乱成分Aと散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する。領域特定部150は、観測エリアのうち、散乱成分差が閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、合成開口レーダ(SAR:Synthetic・Aperture・Radar)の多偏波観測(ポラリメトリ観測)データにおける所定の散乱成分を用いて、災害等が発生した領域等を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダの単偏波観測により河川や湖の氾濫等の水害(水没)を検出する試みが実施されている。しかし、単偏波観測により得られたグレースケール画像では、誤検出や検出漏れの可能性が非常に高い。
【0003】
また、合成開口レーダの多偏波観測により得られたデータを用いて、土地の被覆分類を行う研究が進められている。この研究では、多偏波観測により得られたデータに対して、散乱成分や偏波エントロピーの解析を行い、土地の被覆分類を行っている。
特許文献1には、偏波解析により算出した表面散乱と2回散乱と、トルースデータから算出した値とを用いて湿地林における樹木と地面との分類を行うことについての記載がある。
特許文献2には、偏波解析により散乱分解を行い、都市部における土地の被覆分類を行うことについての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−265465号公報
【特許文献2】特開2005−140607号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山口芳雄著、「レーダポーラリメトリの基礎と応用−偏波を用いたレーダリモートセンシング−」、電子情報通信学会、2007年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、観測を行った時における土地の被覆状態をある程度解析することはできる。しかし、従来の技術では、ある1時点における測定データに基づき、土地の被覆状態を解析するため、土地の被覆に発生した変化を捉えることはできない。そのため、災害等の現象が発生した場合に、その現象が発生した領域を特定することはできない。
この発明は、例えば、災害等の現象が発生した領域を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る特定装置は、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力部が入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を処理装置により計算する散乱成分差計算部と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として処理装置により特定する領域特定部と
を備えることを特徴とする。
【0008】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記領域特定部が特定した領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
前記散乱成分差計算部は、前記測定データ入力部が前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数1により計算する
ことを特徴とする。
【数1】
【0010】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の領域毎の地形を判別可能な地形データを予め記憶装置に記憶する地形データ記憶部を備え、
前記領域特定部は、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、前記地形データ記憶部が記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする。
【0011】
この発明に係る特定装置は、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を処理装置により検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る特定プログラムは、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力処理で入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算処理と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
前記特定プログラムは、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶した記憶装置から、
前記領域特定処理で特定した領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0014】
前記散乱成分差計算処理では、前記測定データ入力処理で前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数2により計算する
ことを特徴とする。
【数2】
【0015】
前記特定プログラムは、さらに、
前記領域特定処理では、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、予め記憶装置に記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする。
【0016】
この発明に係る特定プログラムは、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶した記憶装置から、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする特定プログラム。
【0017】
この発明に係る特定方法は、例えば、
入力装置が、所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力ステップで入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算ステップで計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定ステップと
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る特定装置は、2つの異なる時点における測定データを用いて、2つの異なる時点における散乱成分の差を計算することにより、所定の現象が発生した領域を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】特定装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図2】データベース整備フェーズにおける特定装置100の動作を示すフローチャート。
【図3】発生前散乱成分11の一例を示す図。
【図4】発生後散乱成分12の一例を示す図。
【図5】災害特定フェーズにおける特定装置100の動作を示すフローチャート。
【図6】散乱成分差の計算処理の説明図。
【図7】散乱成分A21の一例を示す図。
【図8】散乱成分B22の一例を示す図。
【図9】地形データを示す図。
【図10】ある災害が発生した領域を示す図。
【図11】第1の登録方法により災害データベース130に登録されたデータを示す図。
【図12】第2の登録方法により災害データベース130に登録されたデータを示す図。
【図13】2段階で被災対象領域を特定する方法の処理の流れを示すフローチャート。
【図14】特定装置100のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に基づき、この発明の実施の形態について説明する。
なお、以下の説明において、処理装置とは、後述するCPU911等である。また、記憶装置とは、後述するROM913、RAM914、磁気ディスク装置920等である。また、入力装置とは、後述するキーボード902、通信ボード915等である。
【0021】
実施の形態1.
図1は、特定装置100の機能を示す機能ブロック図である。
特定装置100は、所定のエリアにおいて、所定の現象が発生した領域を特定する。また、特定した領域毎に、その領域で発生した現象の種別を特定する。ここでは、一例として、災害が発生した領域を特定するものとする。そして、特定した領域毎に、発生した災害の種別(例えば、土砂崩れや水害等)を特定するものとする。
特定装置100は、測定データ入力部110、測定データ登録部120、災害データベース130(測定データ記憶部)、散乱成分差計算部140、領域特定部150、地形データ記憶部160、種別特定部170を備える。
【0022】
特定装置100の動作は、2つのフェーズに分けられる。
第1フェーズは、災害の発生前と発生後との測定データを、実際に発生した災害との関係を対応付けて災害データベース130に記憶するデータベース整備フェーズである。
第2フェーズは、災害データベース130と、2つの異なる時点における測定データとに基づき、2つの異なる時点の間に災害が発生した領域を特定するとともに、発生した災害の種別を特定する災害特定フェーズである。
【0023】
なお、測定データとは、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果を、測定位置毎に示すデータである。ここでは、測定データは、合成開口レーダを用いたポラリメトリ(4偏波)観測の結果を示すデータである。
合成開口レーダは、上空を飛行する飛行体(人工衛星、航空機等)に搭載されており、水平偏波の電波と垂直偏波の電波との2つの電波を上空から観測エリアに向けて発射する。つまり、測定データは、合成開口レーダによって発射された水平偏波の電波が観測エリアの地表や人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(HH成分)と垂直偏波成分(HV成分)との2種類の偏波成分を測定した結果、及び、同じく合成開口レーダによって発射された垂直偏波の電波が地表や人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(VH成分)と垂直偏波成分(VV成分)との2種類の偏波成分を測定した結果(4種類の偏波成分を測定しているがHV成分とVH成分は同じになるので、実際には3種類の偏波成分を測定した結果)を示すデータである。
【0024】
また、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分、ヘリックス(Helix)散乱成分との4つの散乱成分が測定データから抽出できることが知られている(非特許文献1参照)。
それぞれの散乱成分について簡単に説明する。
(1)表面散乱成分は、地面、水面等の表面で引き起こされる1回(奇数回)反射の散乱成分である。つまり、人工物のない平地や、海、湖等においては、表面散乱成分が多く抽出される。
(2)2回散乱成分は、道路と建物の壁等の直角構造で引き起こされる2回(偶数回)反射の散乱成分である。つまり、人工物がある市街地や村落においては、2回散乱成分が多く抽出される。
(3)体積散乱成分は、絡み合った枝等、ランダムに向いた線状物体の集合から引き起こされる散乱成分である。つまり、森等においては、体積散乱成分が比較的多く抽出される。
(4)ヘリックス散乱成分は、人工物の表面から発生する、直線偏波を円偏波に変える散乱成分である。
なお、ここでは、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3種類の散乱成分を用いるものとする。しかし、これに限らず、4種類の散乱成分のうちから選択した1つ以上の散乱成分を用いればよい。
【0025】
図2は、第1フェーズ(データベース整備フェーズ)における特定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0026】
(S101:測定データ取得処理)
測定データ入力部110は、外部のSARポラリメトリ測定データ格納装置から、観測エリアについての測定データをネットワークを介して取得する。
ここでは、測定データ入力部110は、災害が発生する前の測定データ(発生前測定データ)と、災害が発生した後の測定データ(発生後測定データ)とを取得する。
ここでは、測定データ入力部110は、例えば、過去(例えば、数ヶ月前や数年前等)に発生した災害であって、既に分析が終わっている災害の発生前と発生後との測定データを取得する。
【0027】
(S102:散乱成分入力処理(測定データ入力処理))
測定データ入力部110は、取得した発生前測定データと発生後測定データとを散乱成分分解して、発生前測定データから発生前散乱成分11を処理装置により抽出するとともに、発生後測定データから発生後散乱成分12を処理装置により抽出する。そして、測定データ入力部110は、抽出した発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを入力装置により入力する。
上述したように、散乱成分としては、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3種類の散乱成分を用いる。したがって、測定データ入力部110は、発生前散乱成分11として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。同様に、測定データ入力部110は、発生後散乱成分12として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。
【0028】
(S103:測定データ登録処理)
測定データ登録部120は、測定データ入力部110が入力した発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを、発生した災害の種別毎、被災対象毎に分類して災害データベース130に登録する。
災害の種別とは、例えば、土砂崩れ、水害(浸水、冠水)等である。また、被災対象とは、家屋、道路、畑等である。
測定データ登録部120は、例えば、どの領域でどの種別の災害が発生し、被災対象は何かを示す地図データ(数値地図等)をネットワークを介して取得する。測定データ登録部120は、取得した地図データに基づき、観測エリアのどの領域でどの種別の災害が発生し、被災対象が何かを処理装置により特定する。そして、特定した災害の種別及び被災対象と、その領域の発生前散乱成分11及び発生後散乱成分12とを対応付けて災害データベース130に登録する。
【0029】
なお、一般に、災害が発生した領域にはある程度の広さがあり、災害が発生した領域からは複数の測定位置から散乱波の偏波成分が測定される。
そこで、測定データ登録部120は、発生前散乱成分11として、その領域の発生前散乱成分11の平均値を用いる。同様に、測定データ登録部120は、発生後散乱成分12として、その領域の発生後散乱成分12の平均値を用いる。つまり、測定データ登録部120は、特定した災害の種別及び被災対象と、その領域の発生前散乱成分11の平均値及びその領域の発生後散乱成分12の平均値とを対応付けて災害データベース130に登録する。
なお、発生前散乱成分11の平均値とは、表面散乱成分毎の強度の平均値と、2回散乱成分毎の強度の平均値と、体積散乱成分毎の強度の平均値との3つの値である。同様に、発生後散乱成分12の平均値とは、表面散乱成分毎の強度の平均値と、2回散乱成分毎の強度の平均値と、体積散乱成分毎の強度の平均値との3つの値である。
例えば、発生前散乱成分11aと発生前散乱成分11bとの平均値とは、発生前散乱成分11aの表面散乱成分の強度と発生前散乱成分11bの表面散乱成分の強度との平均値、発生前散乱成分11aの2回散乱成分の強度と発生前散乱成分11bの2回散乱成分の強度との平均値、発生前散乱成分11aの体積散乱成分の強度と発生前散乱成分11bの体積散乱成分の強度との平均値との3つの値である。
【0030】
つまり、第1フェーズでは、既に分析の終わっている災害の発生前と発生後との測定データに基づき、災害データベース130を整備する。
特定装置100は、数多くの事例に対して、図2に示す処理(第1フェーズ)を実行して、災害データベース130に登録されたデータを充実化する。
【0031】
図3は、発生前散乱成分11の一例を示す図である。図4は、発生後散乱成分12の一例を示す図である。
なお、図3,4では、散乱成分の強度を画素の輝度(濃淡)によって表す。また、図3と図4とは、同一のエリアを観測した測定データから抽出された散乱成分を示す。
つまり、図3,4は、(S101)で入力された発生前測定データと発生後測定データとから、(S102)で抽出された発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを示す。すると、(S103)では、次のように処理が実行される。
【0032】
例えば、図4に示す領域35は、土砂崩れが発生し、家屋が被災した領域であるとする。つまり、領域35では、土砂崩れが発生し、家屋が被災したと地図データ等から特定されたとする。
この場合、測定データ登録部120は、領域35における発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値とを、災害の種別「土砂崩れ」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
つまり、測定データ登録部120は、領域35における災害発生前の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値と、領域35における災害発生後の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値とを、災害の種別「土砂崩れ」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
【0033】
ここで、図4における領域35は、図3において2回散乱成分の強度が高かった領域33の一部の領域である。図4では、領域35は、2回散乱成分の強度が低くなり、表面散乱成分の強度が高くなっている。つまり、領域35では、災害発生前は2回散乱成分の強度が高かったが、災害発生後は表面散乱成分の強度が高くなっている。この場合、2回散乱成分の強度が高く発生する家屋等の人工物が、土砂崩れにより土砂に覆われ表面散乱成分の強度が高くなったと考えられる。
【0034】
また、例えば、図4に示す領域36,37,38は、水害が発生した領域であるとする。つまり、図4に示す領域36,37,38では、水害が発生したと地図データ等から特定されたとする。特に、図4に示す領域36,37では、水害が発生し、畑等が被災したとする。一方、図4に示す領域38では、水害が発生し、家屋が被災したとする。
この場合、測定データ登録部120は、領域36,37における発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「畑等」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
つまり、測定データ登録部120は、領域36,37における災害発生前の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値と、領域36,37における災害発生後の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「畑等」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
また、測定データ登録部120は、領域38における発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
つまり、測定データ登録部120は、領域38における災害発生前の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの平均値と、領域38における災害発生後の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
【0035】
ここで、図4における領域36,37は、図3において表面散乱成分の強度がやや高く、体積散乱成分の強度もやや高い領域31の一部の領域である。図4では、領域36,37は、体積散乱成分の強度が低くなり、表面散乱成分の強度がより高くなっている。つまり、領域35では、災害発生前は表面散乱成分のやや強度が高く、体積散乱成分の強度もやや高いが、災害発生後は体積散乱成分の強度が低くなり表面散乱成分の強度がより高くなっている。この場合、災害発生前は表面散乱成分の強度がやや高く、体積散乱成分の強度もやや高い畑等が、水害により水没して体積散乱成分の強度が低くなり表面散乱成分の強度がより高くなったと考えられる。
また、図4における領域38は、図3において2回散乱成分の強度が高い領域33の一部の領域である。図4では、領域38は、2回散乱成分の強度が低くなり、表面散乱成分の強度が高くなっている。つまり、領域35では、災害発生前は2回散乱成分の強度が高かったが、災害発生後は表面散乱成分の強度が高くなっている。この場合、2回散乱成分の強度が高い家屋等の人工物が、水害により水没して表面散乱成分の強度が高くなったと考えられる。
【0036】
図5は、第2フェーズ(災害特定フェーズ)における特定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0037】
(S201:測定データ取得処理)
測定データ入力部110は、外部のSARポラリメトリ測定データ格納装置から、観測エリアについての測定データをネットワークを介して取得する。
ここでは、測定データ入力部110は、A時点の測定データ(測定データA)と、A時点よりも後の時点のB時点の測定データ(測定データB)とを取得する。
なお、A時点とは、災害を引き起こす何らかの現象(例えば、台風の通過)等が起こる前の時点であり、B時点とは、その現象が起こった後の時点である。
ここでは、測定データ入力部110は、例えば、最近(例えば、数日前等)に発生した災害であって、分析が終わっていない災害の発生前と発生後との測定データを取得する。
【0038】
(S202:散乱成分分解処理(測定データ入力処理))
測定データ入力部110は、取得した測定データAと測定データBとを散乱成分分解して、測定データAから散乱成分A21を処理装置により抽出するとともに、測定データBから散乱成分B22を処理装置により抽出する。そして、測定データ入力部110は、抽出した散乱成分A21と散乱成分B22とを入力装置により入力する。
上述したように、散乱成分としては、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3種類の散乱成分を用いる。したがって、測定データ入力部110は、散乱成分A21として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。同様に、測定データ入力部110は、散乱成分B22として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。
【0039】
(S203:第1領域特定処理)
ここでは、観測エリアにおいて被災した可能性のある領域(被災対象領域)を特定する。
【0040】
まず、散乱成分差計算部140は、観測エリアの所定の領域毎に、散乱成分A21と散乱成分B22との差を示す散乱成分差を処理装置により計算する。
なお、所定の領域に存在する散乱成分A21と散乱成分B22とが1つ(1画素)であれば、以下に説明する方法により単純に散乱成分差を計算する。一方、所定の領域に存在する散乱成分A21と散乱成分B22とが複数(複数画素)であれば、その領域に存在する散乱成分A21の平均値と、散乱成分B22の平均値との差を散乱成分差として計算する。散乱成分A21の平均値と散乱成分B22の平均値との計算方法は、発生前散乱成分11の平均値や発生後散乱成分12の平均値の計算方法と同様である。
【0041】
図6は、散乱成分差の計算処理の説明図である。
図6に示すように、散乱成分A21と散乱成分B22とは、それぞれ表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3次元ベクトル値を持つとみなすことができる。つまり、散乱成分A21と散乱成分B22とは、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分をそれぞれ方向成分として持ち、表面散乱強度,2回散乱強度,体積散乱強度を各方向成分の大きさとして持つベクトルとして表すことができる。
すなわち、散乱成分A21と散乱成分B22とは、ベクトルV(表面散乱強度,2回散乱強度,体積散乱強度)と表すことができる。例えば、ある散乱成分A21が、表面散乱強度がα、2回散乱強度がβ、体積散乱強度がγであれば、その散乱成分A21をベクトルV(α,β,γ)で表すことができる。
ここで、災害による散乱成分の変化が大きいほど、散乱成分A21を表すベクトルVaと散乱成分B22を表すベクトルVbとの差の絶対値|ΔV|(=|Vb−Va|は、大きくなる。つまり、|ΔV|が大きいほど、被災した可能性が高いということができる。
そこで、散乱成分差計算部140は、散乱成分差として、|ΔV|を計算する。
なお、図6に示すように、ベクトルVの各方向成分が直交するとした場合、|ΔV|は、数3により計算できる。
【数3】
【0042】
次に、領域特定部150は、散乱成分差計算部140が計算した散乱成分差が、予め設定した閾値(第1閾値)よりも大きいか否かを処理装置により判定する。そして、領域特定部150は、散乱成分差が閾値よりも大きい領域を被災対象領域として特定する。
【0043】
なお、領域特定部150は、隣接する複数の領域が被災対象領域として特定された場合には、それらを1つの被災対象領域として処理を進める。
【0044】
(S204:第2領域特定処理)
ここでは、(S203)で特定した被災対象領域のうち、被災した可能性が低い領域を特定する。そして、特定した領域を、被災対象領域から除外することにより、被災対象領域を絞り込む。
【0045】
地形データ記憶部160は、観測エリア内の領域毎の地形データ(数値地図等)を予め記憶装置に記憶する。
領域特定部150は、地形データ記憶部160が記憶した地形データに基づき、被災する可能性が低い地形の領域を処理装置により特定する。被災する可能性が低い地形とは、例えば、地震が発生した場合における海や湖等である。つまり、地震が発生した場合において、海や湖では、建物の倒壊や土砂崩れ等が発生する可能性はなく、被災する可能性は低い。
そして、領域特定部150は、(S203)で特定した被災対象領域に、被災し得ない地形の領域を除外する。
【0046】
なお、被災する可能性が低い地形は、災害を引き起こす現象の種類に応じて決定してもよい。
また、(S204)で1つの被災対象領域の一部が除外された場合に、1つの被災対象領域が2つ以上の被災対象領域に分割される場合もある。
【0047】
以上の(S203)と(S204)とにより、被災対象領域が特定される。
【0048】
(S205:種別特定処理)
ここでは、特定した被災対象領域で発生した災害の種別を特定する。
【0049】
種別特定部170は、被災対象領域の「散乱成分A21」と、被災対象領域の「散乱成分B22」と、「被災対象」とを検索キーとして、災害データベース130からレコードを処理装置により検索することにより、被災対象領域の災害の種別を特定する。
種別特定部170は、検索キーにおける「被災対象」が災害データベース130の「被災対象」と一致し、検索キーにおける「散乱成分A21」が災害データベース130の「発生前散乱成分11」に近く、検索キーにおける「散乱成分B22」が災害データベース130の「発生後散乱成分12」に近いレコードを、災害データベース130から抽出する。そして、抽出したレコードの災害の種別を、その被災対象領域の災害種別として特定する。
なお、被災対象領域に存在する散乱成分A21と散乱成分B22とが複数(複数画素)であれば、その領域に存在する散乱成分A21の平均値と、散乱成分B22の平均値とを用いて、災害データベース130からレコードを検索する。
また、散乱成分A21の平均値とは、表面散乱成分毎の平均値と、2回散乱成分毎の平均値と、体積散乱成分毎の平均値との3つの値である。同様に、散乱成分B22の平均値とは、表面散乱成分毎の平均値と、2回散乱成分毎の平均値と、体積散乱成分毎の平均値との3つの値である。
【0050】
また、検索キーにおける「散乱成分A21」が災害データベース130の「発生前散乱成分11」に近く、検索キーにおける「散乱成分B22」が災害データベース130の「発生後散乱成分12」に近いとは、例えば、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差と、散乱成分B22と発生後散乱成分12との差の合計が最も小さいという意味である。
また、例えば、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差と、散乱成分B22と発生後散乱成分12との差のうち、大きい方が最も小さいとしてもよい。
また、例えば、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差と、散乱成分B22と発生後散乱成分12との差のうち、小さい方が最も小さいとしてもよい。
なお、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差とは、(S203)で散乱成分差を計算した方法と同様の方法で計算できる。
【0051】
また、種別特定部170は、被災対象領域が複数存在する場合には、被災対象領域毎に災害データベース130からレコードを検索して、被災対象領域毎に災害の種別を特定する。
【0052】
つまり、第2フェーズでは、分析の終わっていない災害の発生前と発生後との測定データに基づき、被災した領域を特定するとともに、被災した領域における災害の種別を特定する。
【0053】
図7は、散乱成分A21の一例を示す図である。図8は、散乱成分B22の一例を示す図である。
なお、図7,8では、散乱成分の強度を画素の輝度(濃淡)によって表す。また、図7と図8とは、同一のエリアを観測した測定データから抽出された散乱成分を示す。
つまり、図7,8は、(S201)で入力された測定データAと測定データBとから、(S202)で抽出された散乱成分A21と散乱成分B22とを示す。
【0054】
図9は、地形データ記憶部160が記憶した地形データを示す図である。
図9では、領域41は「平地」、領域42は「海」、領域43a,43b,43cは「市街地」、領域44は「山地」であることを示す。
【0055】
すると、(S203)から(S205)では、次のように処理が実行される。
【0056】
(S203:第1領域特定処理)
散乱成分差計算部140は、図7に示す散乱成分A21と、図8に示す散乱成分B22との、散乱成分差を計算する。ここでは、散乱成分差計算部140は、所定の面積の小領域に観測エリアを分割して、矩形領域毎に、散乱成分差を処理装置により計算する。
そして、領域特定部150は、散乱成分差が閾値より大きい小領域を被災対象領域として特定する。なお、隣接する小領域が被災対象領域として特定された場合には、1つの被災対象領域として扱う。
ここでは、図8に示す領域45(図7に示す領域43aの一部の領域)と、図8に示す領域46(図7における領域43cの一部の領域)と、図8に示す領域47(図7に示す領域42の一部の領域)とに含まれる全ての画素が被災対象領域として特定されたとする。
【0057】
(S204:第2領域特定処理)
領域特定部150は、図9に示す地形データに基づき、被災対象領域を絞り込む。ここでは、海は被災対象領域から除外するものとする。すると、(S203)で被災対象領域として特定された領域のうち、領域47の地形は海である。したがって、領域47は被災対象領域から除外される。
その結果、領域45と領域46とが、最終的に被災対象領域として特定される。
【0058】
(S205:種別特定処理)
種別特定部170は、(S204)で最終的に特定された各被災対象領域(領域45と領域46)について、発生した災害の種別を特定する。
まず、種別特定部170は、領域45について発生した災害の種別を特定する。種別特定部170は、図7に示す領域45の散乱成分A21と、図8に示す領域45の散乱成分B22と、領域45の被災対象とを検索キーとして、災害データベース130からレコードを検索する。
ここで、領域45の被災対象は、領域45の地形から特定することができる。領域45の地形は市街地であるから、被災対象は家屋であると特定できる。
また、領域45には、複数の散乱成分A21が存在する。そのため、領域45に存在する散乱成分A21の平均値と、領域45に存在する散乱成分B22の平均値とを用いて、災害データベース130からレコードを検索する。
同様に、領域46についても災害データベース130からレコードを検索する。
【0059】
その結果、種別特定部170は、領域45は「水害」であり、領域46は「土砂崩れ」であると特定する。
【0060】
以上のように、実施の形態1に係る特定装置100は、2つの異なる時点における測定データを用いて、2つの異なる時点における散乱成分の差を計算することにより、災害が発生した領域を特定することができる。また、発生した災害の種別を特定することができる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態2では、災害データベース130の登録方法について説明する。
【0062】
図10は、ある災害(ここでは、災害の種別「土砂崩れ」、被災対象「家屋」とする)が発生した領域を示す図である。
図10に示す領域では、災害が発生した領域に1から16で示す16個の散乱成分が含まれていることを示す。つまり、災害が発生した領域では、1から16で示す16箇所の測定位置から散乱波の偏波成分が測定されたことを示す。
【0063】
(第1の登録方法)
第1の登録方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、測定データ登録部120は、災害の種別と被災対象と、その領域の発生前散乱成分11の平均値と、その領域の発生後散乱成分12の平均値とを対応付けて災害データベース130に登録すると説明した。
つまり、発生前散乱成分11として、その領域に含まれる発生前散乱成分11の平均値を登録するとした。同様に、発生後散乱成分12として、その領域に含まれる発生後散乱成分12の平均値を登録するとした。
したがって、図10に示す例では、実施の形態1で説明した方法により災害データベース130に登録される発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とは、1から16の16個の発生前散乱成分11の平均値X1−16と、1から16の16個の発生後散乱成分12の平均値Y1−16である。
つまり、図11に示すように、災害の種別「土砂崩れ」、被災対象「家屋」に対して、1件の発生前散乱成分11と1件の発生後散乱成分12とが登録される。
【0064】
(第2の登録方法)
第2の登録方法は、災害が発生した領域を所定の面積の小領域に分割して、小領域毎に1件の発生前散乱成分11と1件の発生後散乱成分12とを登録する方法である。
つまり、測定データ登録部120は、災害が発生した領域を所定の面積の小領域に分割して、小領域毎に、その小領域の発生前散乱成分11の平均値と、その小領域の発生後散乱成分12の平均値とを計算する。そして、測定データ登録部120は、各小領域の発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを、災害の種別と被災対象と対応付けて登録する。
図10に示す例では、測定データ登録部120は、例えば、1から4までの散乱成分が含まれる小領域R1−4と、5から8までの散乱成分が含まれる小領域R5−8と、9から12までの散乱成分が含まれる小領域R9−12と、13から16までの散乱成分が含まれる小領域R13−16との4つの小領域に分割する。
測定データ登録部120は、4つの小領域それぞれについて、その小領域の発生前散乱成分11の平均値(X1−4,X5−8,X9−12,X13−16)と、その小領域の発生後散乱成分12の平均値(Y1−4,Y5−8,Y9−12,Y13−16)とを計算する。そして、測定データ登録部120は、各小領域について計算した発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値との組と、災害の種別と被災対象と対応付けて登録する。
つまり、図12に示すように、災害の種別「土砂崩れ」、被災対象「家屋」に対して、4件の発生前散乱成分11と4件の発生後散乱成分12とが登録される。
小領域の面積は、発生した災害の種別に応じて変更してもよい。
【0065】
(第3の登録方法)
第1の登録方法と第2の登録方法とでは、1つの発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組から得られるデータの登録方法について説明した。第3の登録方法では、複数の発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組から得られるデータの登録方法について説明する。
【0066】
実施の形態1で説明したように、数多くの事例に対して、第1フェーズを実行して、災害データベース130に登録されたデータを充実化する。
同一の災害かつ同一の被災対象について、複数の発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組が登録されることもある。この場合、各発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組をそのまま登録しておいてもよいし、発生前散乱成分11の平均値と、発生後散乱成分12の平均値とを登録するとしてもよい。
つまり、災害の種別「水害」、被災対象「市街地」について、発生前散乱成分11aと発生後散乱成分12aとの組Aが既に登録されている場合に、発生前散乱成分11bと発生後散乱成分12bとの組Bが新たに登録される場合がある。この場合、次の(1)(2)のいずれの方法により災害データベース130に登録する。
(1)災害の種別「水害」、被災対象「市街地」について、組Aと組Bとの両方を別々に登録する。
(2)災害の種別「水害」、被災対象「市街地」について、発生前散乱成分11aと発生前散乱成分11bとの平均値と、発生後散乱成分12aと発生後散乱成分12bとの平均値とを登録する。
【0067】
以上のように、災害データベース130への発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との登録方法を変更することにより、災害の発生種別を特定する精度が変わる。状況に合わせて、災害データベース130への登録方法を変更することで、災害の発生種別を特定する精度を高くすることもできる。
例えば、発生した災害の種別毎に、災害データベース130への発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との登録方法を変更するとしてもよい。
【0068】
実施の形態3.
実施の形態3では、散乱成分差の計算方法について説明する。
【0069】
(第1の計算方法)
第1の計算方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、散乱成分差計算部140は、散乱成分A21と散乱成分B22とをベクトルV(表面散乱強度,2回散乱強度,体積散乱強度)と表し、|ΔV|を散乱成分差として計算した。
【0070】
(第2の計算方法)
第2の計算方法は、散乱成分毎に差を計算して、計算した差の和を散乱成分差とする方法である。
つまり、散乱成分差計算部140は、散乱成分A21の表面散乱成分と散乱成分B22の表面散乱成分との差と、散乱成分A21の2回散乱成分と散乱成分B22の2回散乱成分との差と、散乱成分A21の体積散乱成分と散乱成分B22の体積散乱成分との差とを計算し、各差の和を散乱成分差とする。
【0071】
また、各差の和ではなく、各差の積を散乱成分差としてもよい。
【0072】
(第3の計算方法)
第3の計算方法は、重み付けした各平均値の和又は積を散乱成分差とする方法である。
つまり、散乱成分差計算部140は、表面散乱成分と2回散乱成分と体積散乱成分とに異なる重みを持たせ、それぞれの散乱成分の平均値を計算し、計算した平均値の和又は積を散乱成分差とする。
【0073】
以上のように、災散乱成分差の計算方法を変更することにより、被災対象領域を特定する精度が変わる。状況に合わせて、散乱成分差の計算方法を変更することで、被災対象領域を特定する精度を高くすることもできる。
例えば、発生した災害を引き起こす現象(例えば、台風の通過や地震の発生)に応じて、上記第1の計算方法から第3の計算方法を使い分けしてもよい。
また、第3の計算方法を使用する場合には、発生した災害を引き起こす現象に応じて、各散乱成分に持たせる重みを変更してもよい。例えば、その現象によって発生する災害を識別し易い散乱成分に重い重みを持たせることが望ましい。
【0074】
実施の形態4.
実施の形態4では、被災対象領域の特定方法について説明する。特に、ここでは、図5の(S203:第1領域特定処理)での被災対象領域の特定方法について説明する。
【0075】
(第1の特定方法)
第1の特定方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、所定の領域毎に、散乱成分差を計算して、計算した散乱成分差が閾値よりも大きいか否かにより被災対象領域を特定した。
【0076】
(第2の特定方法)
第2の特定方法は、2段階で被災対象領域を特定する方法である。
1段目では、計算速度を優先して、粗く被災対象領域を特定する。2段目では、1段目で被災対象領域として特定された領域について、精度を優先して、細かく被災対象領域を特定する。
【0077】
実施の形態1で説明したように、散乱成分差計算部140は、観測エリアの所定の領域毎に散乱成分差を計算する。そこで、散乱成分差を計算する領域の面積を変更することで、被災対象領域の特定精度を変更する。
つまり、1段目では、散乱成分差を計算する領域の面積を広く設定して、被災対象領域を特定する。2段目では、1段目よりも散乱成分差を計算する領域の面積を狭く設定して、1段目で特定された被災対象領域を絞り込む。
【0078】
図13は、2段階で被災対象領域を特定する方法の処理の流れを示すフローチャートである。
(S301:散乱成分差計算処理(1段目))
散乱成分差計算部140は、散乱成分差を計算する領域の面積を第1の面積に設定して、散乱成分差を計算する。第1の面積は、比較的広い面積とする。
(S302:被災対象領域特定処理(1段目))
領域特定部150は、(S301)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値A)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。
1段目では、第1の面積を比較的広くしたため、計算時間をかけずに観測エリア全体から被災対象領域を特定することができる。しかし、被災対象領域の特定精度は低くなる。つまり、被災していない領域も被災対象領域となる虞がある。なお、被災した領域が被災対象領域とならないことがないように、ここでは閾値(第1の閾値A)を低くすることが望ましい。
(S303:散乱成分差計算処理(2段目))
散乱成分差計算部140は、散乱成分差を計算する領域の面積を第2の面積に設定して、(S302)で特定された被災対象領域についてのみ、散乱成分差を計算する。第2の面積は、第1の面積よりも狭い面積とする。
(S304:被災対象領域特定処理(2段目))
領域特定部150は、(S303)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値B)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。つまり、(S302)で特定した被災対象領域を絞り込む。1段目よりも精度を高くするため、第1の閾値Bは第1の閾値Aと同じか、より高くすることが望ましい。
2段目では、第2の面積を第1の面積よりも狭くしたため、高精度に被災対象領域を特定することができる。しかし、第2の面積を第1の面積よりも狭くしたため、面積当たりの計算時間はかかる。但し、1段目で特定された被災対象領域のみを対象として処理を行っているため、観測エリア全体を同じ精度で処理するよりも効率的である。
【0079】
(第3の特定方法)
第3の特定方法は、第2の特定方法と同様に、2段階で特定する方法である。
第3の特定方法では、1段目と2段目とで散乱成分差の計算方法を変更する。例えば、1段目では、第2の計算方法で散乱成分差を計算して、被災対象領域を特定する。2段目では、第1の計算方法で散乱成分差を計算して、1段目で特定された被災対象領域を絞り込む。
【0080】
図13に従い、第3の特定方法について説明する。
(S301:散乱成分差計算処理(1段目))
散乱成分差計算部140は、第2の計算方法で散乱成分差を計算する。
(S302:被災対象領域特定処理(1段目))
領域特定部150は、(S301)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値A)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。
(S303:散乱成分差計算処理(2段目))
散乱成分差計算部140は、第2の計算方法で、(S302)で特定された被災対象領域についてのみ、散乱成分差を計算する。
(S304:被災対象領域特定処理(2段目))
領域特定部150は、(S303)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値B)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。つまり、(S302)で特定した被災対象領域を絞り込む。
【0081】
なお、1段目と2段目とでの計算方法の組合せは、どのような組合せであってもよい。また、第2の特定方法と組合せ、1段目と2段目とでの計算方法を変えるとともに、散乱成分差を計算する領域の面積を変えてもよい。
【0082】
(第4の特定方法)
第4の特定方法は、エッジ検出処理を用いて、散乱成分差を計算する領域を決定する方法である。
被災した領域は災害により表面の状態が変化しているため、被災した領域の散乱成分は、その周囲の領域の散乱成分と一定以上の差があると考えられる。そこで、散乱成分差計算部140は、測定データBに対してエッジ検出を行い、検出されたエッジ線により、観測エリアを複数の小領域に分割する。そして、散乱成分差計算部140は、小領域毎に、散乱成分差を計算する。
領域特定部150は、散乱成分差計算部140が計算した散乱成分差が閾値よりも大きい領域を被災対象エリアとして特定する。
【0083】
以上のように、被災対象領域の特定方法を変更することにより、被災対象領域を特定する精度が変わる。状況に合わせて、被災対象領域の特定方法を変更することで、被災対象領域を特定する精度を高くすることもできる。
【0084】
実施の形態5.
実施の形態5では、被災対象領域の災害の種別を特定する方法について説明する。
【0085】
(第1の特定方法)
第1の特定方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、被災対象領域毎に災害の種別を特定するとした。
【0086】
(第2の特定方法)
被災対象領域を複数の小領域に分割して、小領域毎に災害の種別を特定する方法である。
【0087】
例えば、種別特定部170は、所定の面積毎に被災対象領域を分割する。そして、種別特定部170は、分割され生成された小領域毎に災害の種別を特定する。
【0088】
また、種別特定部170は、エッジ検出処理を用いて、被災対象領域を分割してもよい。
1つの被災対象領域であっても、異なる種別の災害が発生した領域では、散乱成分に一定以上の差があると考えられる。そこで、特に、種別特定部170は、測定データBに対してエッジ検出を行い、検出されたエッジ線により、被災対象領域を複数の小領域に分割する。そして、種別特定部170は、小領域毎に災害の種別を特定する。
【0089】
以上のように、被災対象領域を分割して、災害の種別を特定することにより、災害の種別を特定する精度を高くすることができる。
【0090】
実施の形態6.
以上の実施の形態では、特定装置100は、災害が発生した領域を特定するとともに、特定した領域毎に、発生した災害の種別を特定するとした。しかし、特定装置100が特定するものは、これに限らない。
実施の形態6では、特定装置100が特定する他の例について説明する。
【0091】
例えば、特定装置100は、人工物が作成された領域を特定するとしてもよい。
特定装置100は、人工物の種別(例えば、家屋、道路等)毎に、作成前と作成後との散乱成分をデータベースに登録しておく。そして、特定装置100は、A時点に測定した観測エリアの測定データと、B時点に測定した観測エリアの測定データとからA時点からB時点までに人工物が作成された領域と、その領域に作成された人工物の種別とを特定する。
【0092】
また、特定装置100は、植生の分布や農作物の栽培分布等を特定するとしてもよい。
植生の分布を特定する場合であれば、特定装置100は、植物毎に、季節毎の変化をデータベースに登録しておく。例えば、特定装置100は、植物毎に、冬の散乱成分を発生前散乱成分11とし、春の散乱成分を発生後散乱成分12としてデータベースに登録しておく。他にも、夏の散乱成分を発生前散乱成分11とし、秋の散乱成分を発生後散乱成分12としてデータベースに登録しておいてもよい。そして、特定装置100は、冬に測定した観測エリアの測定データと、春に測定した観測エリアの測定データとから、その観測エリアの植生の分布を特定する。
【0093】
以上の実施の形態における特定装置100のハードウェア構成について説明する。
図14は、特定装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図14に示すように、特定装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902(K/B)、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920(固定ディスク装置)の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。磁気ディスク装置920は、所定の固定ディスクインタフェースを介して接続される。
【0094】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0095】
プログラム群923には、上記の説明において「測定データ入力部110」、「測定データ登録部120」、「災害データベース130」、「散乱成分差計算部140」、「領域特定部150」、「地形データ記憶部160」、「種別特定部170」等として説明した機能を実行するソフトウェアやプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、上記の説明において「災害の種別」、「被災対象」、「発生前散乱成分11」、「発生後散乱成分12」、「散乱成分A21」、「散乱成分B22」等の情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「ファイル」や「データベース」の各項目として記憶される。「ファイル」や「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0096】
また、上記の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体やICチップに記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体や電波によりオンライン伝送される。
また、上記の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜装置」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。さらに、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、上記で述べた「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、上記で述べた「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【符号の説明】
【0097】
11 発生前散乱成分、12 発生後散乱成分、21 散乱成分A、22 散乱成分B、100 特定装置、110 測定データ入力部、120 測定データ登録部、130 災害データベース、140 散乱成分差計算部、150 領域特定部、160 地形データ記憶部、170 種別特定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、合成開口レーダ(SAR:Synthetic・Aperture・Radar)の多偏波観測(ポラリメトリ観測)データにおける所定の散乱成分を用いて、災害等が発生した領域等を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダの単偏波観測により河川や湖の氾濫等の水害(水没)を検出する試みが実施されている。しかし、単偏波観測により得られたグレースケール画像では、誤検出や検出漏れの可能性が非常に高い。
【0003】
また、合成開口レーダの多偏波観測により得られたデータを用いて、土地の被覆分類を行う研究が進められている。この研究では、多偏波観測により得られたデータに対して、散乱成分や偏波エントロピーの解析を行い、土地の被覆分類を行っている。
特許文献1には、偏波解析により算出した表面散乱と2回散乱と、トルースデータから算出した値とを用いて湿地林における樹木と地面との分類を行うことについての記載がある。
特許文献2には、偏波解析により散乱分解を行い、都市部における土地の被覆分類を行うことについての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−265465号公報
【特許文献2】特開2005−140607号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山口芳雄著、「レーダポーラリメトリの基礎と応用−偏波を用いたレーダリモートセンシング−」、電子情報通信学会、2007年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、観測を行った時における土地の被覆状態をある程度解析することはできる。しかし、従来の技術では、ある1時点における測定データに基づき、土地の被覆状態を解析するため、土地の被覆に発生した変化を捉えることはできない。そのため、災害等の現象が発生した場合に、その現象が発生した領域を特定することはできない。
この発明は、例えば、災害等の現象が発生した領域を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る特定装置は、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力部が入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を処理装置により計算する散乱成分差計算部と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として処理装置により特定する領域特定部と
を備えることを特徴とする。
【0008】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記領域特定部が特定した領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする。
【0009】
前記散乱成分差計算部は、前記測定データ入力部が前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数1により計算する
ことを特徴とする。
【数1】
【0010】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の領域毎の地形を判別可能な地形データを予め記憶装置に記憶する地形データ記憶部を備え、
前記領域特定部は、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、前記地形データ記憶部が記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする。
【0011】
この発明に係る特定装置は、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を処理装置により検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る特定プログラムは、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力処理で入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算処理と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
前記特定プログラムは、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶した記憶装置から、
前記領域特定処理で特定した領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0014】
前記散乱成分差計算処理では、前記測定データ入力処理で前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数2により計算する
ことを特徴とする。
【数2】
【0015】
前記特定プログラムは、さらに、
前記領域特定処理では、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、予め記憶装置に記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする。
【0016】
この発明に係る特定プログラムは、例えば、
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶した記憶装置から、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする特定プログラム。
【0017】
この発明に係る特定方法は、例えば、
入力装置が、所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力ステップで入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算ステップで計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定ステップと
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る特定装置は、2つの異なる時点における測定データを用いて、2つの異なる時点における散乱成分の差を計算することにより、所定の現象が発生した領域を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】特定装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図2】データベース整備フェーズにおける特定装置100の動作を示すフローチャート。
【図3】発生前散乱成分11の一例を示す図。
【図4】発生後散乱成分12の一例を示す図。
【図5】災害特定フェーズにおける特定装置100の動作を示すフローチャート。
【図6】散乱成分差の計算処理の説明図。
【図7】散乱成分A21の一例を示す図。
【図8】散乱成分B22の一例を示す図。
【図9】地形データを示す図。
【図10】ある災害が発生した領域を示す図。
【図11】第1の登録方法により災害データベース130に登録されたデータを示す図。
【図12】第2の登録方法により災害データベース130に登録されたデータを示す図。
【図13】2段階で被災対象領域を特定する方法の処理の流れを示すフローチャート。
【図14】特定装置100のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に基づき、この発明の実施の形態について説明する。
なお、以下の説明において、処理装置とは、後述するCPU911等である。また、記憶装置とは、後述するROM913、RAM914、磁気ディスク装置920等である。また、入力装置とは、後述するキーボード902、通信ボード915等である。
【0021】
実施の形態1.
図1は、特定装置100の機能を示す機能ブロック図である。
特定装置100は、所定のエリアにおいて、所定の現象が発生した領域を特定する。また、特定した領域毎に、その領域で発生した現象の種別を特定する。ここでは、一例として、災害が発生した領域を特定するものとする。そして、特定した領域毎に、発生した災害の種別(例えば、土砂崩れや水害等)を特定するものとする。
特定装置100は、測定データ入力部110、測定データ登録部120、災害データベース130(測定データ記憶部)、散乱成分差計算部140、領域特定部150、地形データ記憶部160、種別特定部170を備える。
【0022】
特定装置100の動作は、2つのフェーズに分けられる。
第1フェーズは、災害の発生前と発生後との測定データを、実際に発生した災害との関係を対応付けて災害データベース130に記憶するデータベース整備フェーズである。
第2フェーズは、災害データベース130と、2つの異なる時点における測定データとに基づき、2つの異なる時点の間に災害が発生した領域を特定するとともに、発生した災害の種別を特定する災害特定フェーズである。
【0023】
なお、測定データとは、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果を、測定位置毎に示すデータである。ここでは、測定データは、合成開口レーダを用いたポラリメトリ(4偏波)観測の結果を示すデータである。
合成開口レーダは、上空を飛行する飛行体(人工衛星、航空機等)に搭載されており、水平偏波の電波と垂直偏波の電波との2つの電波を上空から観測エリアに向けて発射する。つまり、測定データは、合成開口レーダによって発射された水平偏波の電波が観測エリアの地表や人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(HH成分)と垂直偏波成分(HV成分)との2種類の偏波成分を測定した結果、及び、同じく合成開口レーダによって発射された垂直偏波の電波が地表や人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(VH成分)と垂直偏波成分(VV成分)との2種類の偏波成分を測定した結果(4種類の偏波成分を測定しているがHV成分とVH成分は同じになるので、実際には3種類の偏波成分を測定した結果)を示すデータである。
【0024】
また、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分、ヘリックス(Helix)散乱成分との4つの散乱成分が測定データから抽出できることが知られている(非特許文献1参照)。
それぞれの散乱成分について簡単に説明する。
(1)表面散乱成分は、地面、水面等の表面で引き起こされる1回(奇数回)反射の散乱成分である。つまり、人工物のない平地や、海、湖等においては、表面散乱成分が多く抽出される。
(2)2回散乱成分は、道路と建物の壁等の直角構造で引き起こされる2回(偶数回)反射の散乱成分である。つまり、人工物がある市街地や村落においては、2回散乱成分が多く抽出される。
(3)体積散乱成分は、絡み合った枝等、ランダムに向いた線状物体の集合から引き起こされる散乱成分である。つまり、森等においては、体積散乱成分が比較的多く抽出される。
(4)ヘリックス散乱成分は、人工物の表面から発生する、直線偏波を円偏波に変える散乱成分である。
なお、ここでは、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3種類の散乱成分を用いるものとする。しかし、これに限らず、4種類の散乱成分のうちから選択した1つ以上の散乱成分を用いればよい。
【0025】
図2は、第1フェーズ(データベース整備フェーズ)における特定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0026】
(S101:測定データ取得処理)
測定データ入力部110は、外部のSARポラリメトリ測定データ格納装置から、観測エリアについての測定データをネットワークを介して取得する。
ここでは、測定データ入力部110は、災害が発生する前の測定データ(発生前測定データ)と、災害が発生した後の測定データ(発生後測定データ)とを取得する。
ここでは、測定データ入力部110は、例えば、過去(例えば、数ヶ月前や数年前等)に発生した災害であって、既に分析が終わっている災害の発生前と発生後との測定データを取得する。
【0027】
(S102:散乱成分入力処理(測定データ入力処理))
測定データ入力部110は、取得した発生前測定データと発生後測定データとを散乱成分分解して、発生前測定データから発生前散乱成分11を処理装置により抽出するとともに、発生後測定データから発生後散乱成分12を処理装置により抽出する。そして、測定データ入力部110は、抽出した発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを入力装置により入力する。
上述したように、散乱成分としては、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3種類の散乱成分を用いる。したがって、測定データ入力部110は、発生前散乱成分11として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。同様に、測定データ入力部110は、発生後散乱成分12として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。
【0028】
(S103:測定データ登録処理)
測定データ登録部120は、測定データ入力部110が入力した発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを、発生した災害の種別毎、被災対象毎に分類して災害データベース130に登録する。
災害の種別とは、例えば、土砂崩れ、水害(浸水、冠水)等である。また、被災対象とは、家屋、道路、畑等である。
測定データ登録部120は、例えば、どの領域でどの種別の災害が発生し、被災対象は何かを示す地図データ(数値地図等)をネットワークを介して取得する。測定データ登録部120は、取得した地図データに基づき、観測エリアのどの領域でどの種別の災害が発生し、被災対象が何かを処理装置により特定する。そして、特定した災害の種別及び被災対象と、その領域の発生前散乱成分11及び発生後散乱成分12とを対応付けて災害データベース130に登録する。
【0029】
なお、一般に、災害が発生した領域にはある程度の広さがあり、災害が発生した領域からは複数の測定位置から散乱波の偏波成分が測定される。
そこで、測定データ登録部120は、発生前散乱成分11として、その領域の発生前散乱成分11の平均値を用いる。同様に、測定データ登録部120は、発生後散乱成分12として、その領域の発生後散乱成分12の平均値を用いる。つまり、測定データ登録部120は、特定した災害の種別及び被災対象と、その領域の発生前散乱成分11の平均値及びその領域の発生後散乱成分12の平均値とを対応付けて災害データベース130に登録する。
なお、発生前散乱成分11の平均値とは、表面散乱成分毎の強度の平均値と、2回散乱成分毎の強度の平均値と、体積散乱成分毎の強度の平均値との3つの値である。同様に、発生後散乱成分12の平均値とは、表面散乱成分毎の強度の平均値と、2回散乱成分毎の強度の平均値と、体積散乱成分毎の強度の平均値との3つの値である。
例えば、発生前散乱成分11aと発生前散乱成分11bとの平均値とは、発生前散乱成分11aの表面散乱成分の強度と発生前散乱成分11bの表面散乱成分の強度との平均値、発生前散乱成分11aの2回散乱成分の強度と発生前散乱成分11bの2回散乱成分の強度との平均値、発生前散乱成分11aの体積散乱成分の強度と発生前散乱成分11bの体積散乱成分の強度との平均値との3つの値である。
【0030】
つまり、第1フェーズでは、既に分析の終わっている災害の発生前と発生後との測定データに基づき、災害データベース130を整備する。
特定装置100は、数多くの事例に対して、図2に示す処理(第1フェーズ)を実行して、災害データベース130に登録されたデータを充実化する。
【0031】
図3は、発生前散乱成分11の一例を示す図である。図4は、発生後散乱成分12の一例を示す図である。
なお、図3,4では、散乱成分の強度を画素の輝度(濃淡)によって表す。また、図3と図4とは、同一のエリアを観測した測定データから抽出された散乱成分を示す。
つまり、図3,4は、(S101)で入力された発生前測定データと発生後測定データとから、(S102)で抽出された発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを示す。すると、(S103)では、次のように処理が実行される。
【0032】
例えば、図4に示す領域35は、土砂崩れが発生し、家屋が被災した領域であるとする。つまり、領域35では、土砂崩れが発生し、家屋が被災したと地図データ等から特定されたとする。
この場合、測定データ登録部120は、領域35における発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値とを、災害の種別「土砂崩れ」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
つまり、測定データ登録部120は、領域35における災害発生前の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値と、領域35における災害発生後の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値とを、災害の種別「土砂崩れ」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
【0033】
ここで、図4における領域35は、図3において2回散乱成分の強度が高かった領域33の一部の領域である。図4では、領域35は、2回散乱成分の強度が低くなり、表面散乱成分の強度が高くなっている。つまり、領域35では、災害発生前は2回散乱成分の強度が高かったが、災害発生後は表面散乱成分の強度が高くなっている。この場合、2回散乱成分の強度が高く発生する家屋等の人工物が、土砂崩れにより土砂に覆われ表面散乱成分の強度が高くなったと考えられる。
【0034】
また、例えば、図4に示す領域36,37,38は、水害が発生した領域であるとする。つまり、図4に示す領域36,37,38では、水害が発生したと地図データ等から特定されたとする。特に、図4に示す領域36,37では、水害が発生し、畑等が被災したとする。一方、図4に示す領域38では、水害が発生し、家屋が被災したとする。
この場合、測定データ登録部120は、領域36,37における発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「畑等」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
つまり、測定データ登録部120は、領域36,37における災害発生前の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値と、領域36,37における災害発生後の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの強度の平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「畑等」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
また、測定データ登録部120は、領域38における発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
つまり、測定データ登録部120は、領域38における災害発生前の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの平均値と、領域38における災害発生後の表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分それぞれの平均値とを、災害の種別「水害」と被災対象「家屋」とに対応付けて、災害データベース130に登録する。
【0035】
ここで、図4における領域36,37は、図3において表面散乱成分の強度がやや高く、体積散乱成分の強度もやや高い領域31の一部の領域である。図4では、領域36,37は、体積散乱成分の強度が低くなり、表面散乱成分の強度がより高くなっている。つまり、領域35では、災害発生前は表面散乱成分のやや強度が高く、体積散乱成分の強度もやや高いが、災害発生後は体積散乱成分の強度が低くなり表面散乱成分の強度がより高くなっている。この場合、災害発生前は表面散乱成分の強度がやや高く、体積散乱成分の強度もやや高い畑等が、水害により水没して体積散乱成分の強度が低くなり表面散乱成分の強度がより高くなったと考えられる。
また、図4における領域38は、図3において2回散乱成分の強度が高い領域33の一部の領域である。図4では、領域38は、2回散乱成分の強度が低くなり、表面散乱成分の強度が高くなっている。つまり、領域35では、災害発生前は2回散乱成分の強度が高かったが、災害発生後は表面散乱成分の強度が高くなっている。この場合、2回散乱成分の強度が高い家屋等の人工物が、水害により水没して表面散乱成分の強度が高くなったと考えられる。
【0036】
図5は、第2フェーズ(災害特定フェーズ)における特定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0037】
(S201:測定データ取得処理)
測定データ入力部110は、外部のSARポラリメトリ測定データ格納装置から、観測エリアについての測定データをネットワークを介して取得する。
ここでは、測定データ入力部110は、A時点の測定データ(測定データA)と、A時点よりも後の時点のB時点の測定データ(測定データB)とを取得する。
なお、A時点とは、災害を引き起こす何らかの現象(例えば、台風の通過)等が起こる前の時点であり、B時点とは、その現象が起こった後の時点である。
ここでは、測定データ入力部110は、例えば、最近(例えば、数日前等)に発生した災害であって、分析が終わっていない災害の発生前と発生後との測定データを取得する。
【0038】
(S202:散乱成分分解処理(測定データ入力処理))
測定データ入力部110は、取得した測定データAと測定データBとを散乱成分分解して、測定データAから散乱成分A21を処理装置により抽出するとともに、測定データBから散乱成分B22を処理装置により抽出する。そして、測定データ入力部110は、抽出した散乱成分A21と散乱成分B22とを入力装置により入力する。
上述したように、散乱成分としては、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3種類の散乱成分を用いる。したがって、測定データ入力部110は、散乱成分A21として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。同様に、測定データ入力部110は、散乱成分B22として、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分を抽出する。
【0039】
(S203:第1領域特定処理)
ここでは、観測エリアにおいて被災した可能性のある領域(被災対象領域)を特定する。
【0040】
まず、散乱成分差計算部140は、観測エリアの所定の領域毎に、散乱成分A21と散乱成分B22との差を示す散乱成分差を処理装置により計算する。
なお、所定の領域に存在する散乱成分A21と散乱成分B22とが1つ(1画素)であれば、以下に説明する方法により単純に散乱成分差を計算する。一方、所定の領域に存在する散乱成分A21と散乱成分B22とが複数(複数画素)であれば、その領域に存在する散乱成分A21の平均値と、散乱成分B22の平均値との差を散乱成分差として計算する。散乱成分A21の平均値と散乱成分B22の平均値との計算方法は、発生前散乱成分11の平均値や発生後散乱成分12の平均値の計算方法と同様である。
【0041】
図6は、散乱成分差の計算処理の説明図である。
図6に示すように、散乱成分A21と散乱成分B22とは、それぞれ表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分の3次元ベクトル値を持つとみなすことができる。つまり、散乱成分A21と散乱成分B22とは、表面散乱成分、2回散乱成分、体積散乱成分をそれぞれ方向成分として持ち、表面散乱強度,2回散乱強度,体積散乱強度を各方向成分の大きさとして持つベクトルとして表すことができる。
すなわち、散乱成分A21と散乱成分B22とは、ベクトルV(表面散乱強度,2回散乱強度,体積散乱強度)と表すことができる。例えば、ある散乱成分A21が、表面散乱強度がα、2回散乱強度がβ、体積散乱強度がγであれば、その散乱成分A21をベクトルV(α,β,γ)で表すことができる。
ここで、災害による散乱成分の変化が大きいほど、散乱成分A21を表すベクトルVaと散乱成分B22を表すベクトルVbとの差の絶対値|ΔV|(=|Vb−Va|は、大きくなる。つまり、|ΔV|が大きいほど、被災した可能性が高いということができる。
そこで、散乱成分差計算部140は、散乱成分差として、|ΔV|を計算する。
なお、図6に示すように、ベクトルVの各方向成分が直交するとした場合、|ΔV|は、数3により計算できる。
【数3】
【0042】
次に、領域特定部150は、散乱成分差計算部140が計算した散乱成分差が、予め設定した閾値(第1閾値)よりも大きいか否かを処理装置により判定する。そして、領域特定部150は、散乱成分差が閾値よりも大きい領域を被災対象領域として特定する。
【0043】
なお、領域特定部150は、隣接する複数の領域が被災対象領域として特定された場合には、それらを1つの被災対象領域として処理を進める。
【0044】
(S204:第2領域特定処理)
ここでは、(S203)で特定した被災対象領域のうち、被災した可能性が低い領域を特定する。そして、特定した領域を、被災対象領域から除外することにより、被災対象領域を絞り込む。
【0045】
地形データ記憶部160は、観測エリア内の領域毎の地形データ(数値地図等)を予め記憶装置に記憶する。
領域特定部150は、地形データ記憶部160が記憶した地形データに基づき、被災する可能性が低い地形の領域を処理装置により特定する。被災する可能性が低い地形とは、例えば、地震が発生した場合における海や湖等である。つまり、地震が発生した場合において、海や湖では、建物の倒壊や土砂崩れ等が発生する可能性はなく、被災する可能性は低い。
そして、領域特定部150は、(S203)で特定した被災対象領域に、被災し得ない地形の領域を除外する。
【0046】
なお、被災する可能性が低い地形は、災害を引き起こす現象の種類に応じて決定してもよい。
また、(S204)で1つの被災対象領域の一部が除外された場合に、1つの被災対象領域が2つ以上の被災対象領域に分割される場合もある。
【0047】
以上の(S203)と(S204)とにより、被災対象領域が特定される。
【0048】
(S205:種別特定処理)
ここでは、特定した被災対象領域で発生した災害の種別を特定する。
【0049】
種別特定部170は、被災対象領域の「散乱成分A21」と、被災対象領域の「散乱成分B22」と、「被災対象」とを検索キーとして、災害データベース130からレコードを処理装置により検索することにより、被災対象領域の災害の種別を特定する。
種別特定部170は、検索キーにおける「被災対象」が災害データベース130の「被災対象」と一致し、検索キーにおける「散乱成分A21」が災害データベース130の「発生前散乱成分11」に近く、検索キーにおける「散乱成分B22」が災害データベース130の「発生後散乱成分12」に近いレコードを、災害データベース130から抽出する。そして、抽出したレコードの災害の種別を、その被災対象領域の災害種別として特定する。
なお、被災対象領域に存在する散乱成分A21と散乱成分B22とが複数(複数画素)であれば、その領域に存在する散乱成分A21の平均値と、散乱成分B22の平均値とを用いて、災害データベース130からレコードを検索する。
また、散乱成分A21の平均値とは、表面散乱成分毎の平均値と、2回散乱成分毎の平均値と、体積散乱成分毎の平均値との3つの値である。同様に、散乱成分B22の平均値とは、表面散乱成分毎の平均値と、2回散乱成分毎の平均値と、体積散乱成分毎の平均値との3つの値である。
【0050】
また、検索キーにおける「散乱成分A21」が災害データベース130の「発生前散乱成分11」に近く、検索キーにおける「散乱成分B22」が災害データベース130の「発生後散乱成分12」に近いとは、例えば、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差と、散乱成分B22と発生後散乱成分12との差の合計が最も小さいという意味である。
また、例えば、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差と、散乱成分B22と発生後散乱成分12との差のうち、大きい方が最も小さいとしてもよい。
また、例えば、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差と、散乱成分B22と発生後散乱成分12との差のうち、小さい方が最も小さいとしてもよい。
なお、散乱成分A21と発生前散乱成分11との差とは、(S203)で散乱成分差を計算した方法と同様の方法で計算できる。
【0051】
また、種別特定部170は、被災対象領域が複数存在する場合には、被災対象領域毎に災害データベース130からレコードを検索して、被災対象領域毎に災害の種別を特定する。
【0052】
つまり、第2フェーズでは、分析の終わっていない災害の発生前と発生後との測定データに基づき、被災した領域を特定するとともに、被災した領域における災害の種別を特定する。
【0053】
図7は、散乱成分A21の一例を示す図である。図8は、散乱成分B22の一例を示す図である。
なお、図7,8では、散乱成分の強度を画素の輝度(濃淡)によって表す。また、図7と図8とは、同一のエリアを観測した測定データから抽出された散乱成分を示す。
つまり、図7,8は、(S201)で入力された測定データAと測定データBとから、(S202)で抽出された散乱成分A21と散乱成分B22とを示す。
【0054】
図9は、地形データ記憶部160が記憶した地形データを示す図である。
図9では、領域41は「平地」、領域42は「海」、領域43a,43b,43cは「市街地」、領域44は「山地」であることを示す。
【0055】
すると、(S203)から(S205)では、次のように処理が実行される。
【0056】
(S203:第1領域特定処理)
散乱成分差計算部140は、図7に示す散乱成分A21と、図8に示す散乱成分B22との、散乱成分差を計算する。ここでは、散乱成分差計算部140は、所定の面積の小領域に観測エリアを分割して、矩形領域毎に、散乱成分差を処理装置により計算する。
そして、領域特定部150は、散乱成分差が閾値より大きい小領域を被災対象領域として特定する。なお、隣接する小領域が被災対象領域として特定された場合には、1つの被災対象領域として扱う。
ここでは、図8に示す領域45(図7に示す領域43aの一部の領域)と、図8に示す領域46(図7における領域43cの一部の領域)と、図8に示す領域47(図7に示す領域42の一部の領域)とに含まれる全ての画素が被災対象領域として特定されたとする。
【0057】
(S204:第2領域特定処理)
領域特定部150は、図9に示す地形データに基づき、被災対象領域を絞り込む。ここでは、海は被災対象領域から除外するものとする。すると、(S203)で被災対象領域として特定された領域のうち、領域47の地形は海である。したがって、領域47は被災対象領域から除外される。
その結果、領域45と領域46とが、最終的に被災対象領域として特定される。
【0058】
(S205:種別特定処理)
種別特定部170は、(S204)で最終的に特定された各被災対象領域(領域45と領域46)について、発生した災害の種別を特定する。
まず、種別特定部170は、領域45について発生した災害の種別を特定する。種別特定部170は、図7に示す領域45の散乱成分A21と、図8に示す領域45の散乱成分B22と、領域45の被災対象とを検索キーとして、災害データベース130からレコードを検索する。
ここで、領域45の被災対象は、領域45の地形から特定することができる。領域45の地形は市街地であるから、被災対象は家屋であると特定できる。
また、領域45には、複数の散乱成分A21が存在する。そのため、領域45に存在する散乱成分A21の平均値と、領域45に存在する散乱成分B22の平均値とを用いて、災害データベース130からレコードを検索する。
同様に、領域46についても災害データベース130からレコードを検索する。
【0059】
その結果、種別特定部170は、領域45は「水害」であり、領域46は「土砂崩れ」であると特定する。
【0060】
以上のように、実施の形態1に係る特定装置100は、2つの異なる時点における測定データを用いて、2つの異なる時点における散乱成分の差を計算することにより、災害が発生した領域を特定することができる。また、発生した災害の種別を特定することができる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態2では、災害データベース130の登録方法について説明する。
【0062】
図10は、ある災害(ここでは、災害の種別「土砂崩れ」、被災対象「家屋」とする)が発生した領域を示す図である。
図10に示す領域では、災害が発生した領域に1から16で示す16個の散乱成分が含まれていることを示す。つまり、災害が発生した領域では、1から16で示す16箇所の測定位置から散乱波の偏波成分が測定されたことを示す。
【0063】
(第1の登録方法)
第1の登録方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、測定データ登録部120は、災害の種別と被災対象と、その領域の発生前散乱成分11の平均値と、その領域の発生後散乱成分12の平均値とを対応付けて災害データベース130に登録すると説明した。
つまり、発生前散乱成分11として、その領域に含まれる発生前散乱成分11の平均値を登録するとした。同様に、発生後散乱成分12として、その領域に含まれる発生後散乱成分12の平均値を登録するとした。
したがって、図10に示す例では、実施の形態1で説明した方法により災害データベース130に登録される発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とは、1から16の16個の発生前散乱成分11の平均値X1−16と、1から16の16個の発生後散乱成分12の平均値Y1−16である。
つまり、図11に示すように、災害の種別「土砂崩れ」、被災対象「家屋」に対して、1件の発生前散乱成分11と1件の発生後散乱成分12とが登録される。
【0064】
(第2の登録方法)
第2の登録方法は、災害が発生した領域を所定の面積の小領域に分割して、小領域毎に1件の発生前散乱成分11と1件の発生後散乱成分12とを登録する方法である。
つまり、測定データ登録部120は、災害が発生した領域を所定の面積の小領域に分割して、小領域毎に、その小領域の発生前散乱成分11の平均値と、その小領域の発生後散乱成分12の平均値とを計算する。そして、測定データ登録部120は、各小領域の発生前散乱成分11と発生後散乱成分12とを、災害の種別と被災対象と対応付けて登録する。
図10に示す例では、測定データ登録部120は、例えば、1から4までの散乱成分が含まれる小領域R1−4と、5から8までの散乱成分が含まれる小領域R5−8と、9から12までの散乱成分が含まれる小領域R9−12と、13から16までの散乱成分が含まれる小領域R13−16との4つの小領域に分割する。
測定データ登録部120は、4つの小領域それぞれについて、その小領域の発生前散乱成分11の平均値(X1−4,X5−8,X9−12,X13−16)と、その小領域の発生後散乱成分12の平均値(Y1−4,Y5−8,Y9−12,Y13−16)とを計算する。そして、測定データ登録部120は、各小領域について計算した発生前散乱成分11の平均値と発生後散乱成分12の平均値との組と、災害の種別と被災対象と対応付けて登録する。
つまり、図12に示すように、災害の種別「土砂崩れ」、被災対象「家屋」に対して、4件の発生前散乱成分11と4件の発生後散乱成分12とが登録される。
小領域の面積は、発生した災害の種別に応じて変更してもよい。
【0065】
(第3の登録方法)
第1の登録方法と第2の登録方法とでは、1つの発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組から得られるデータの登録方法について説明した。第3の登録方法では、複数の発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組から得られるデータの登録方法について説明する。
【0066】
実施の形態1で説明したように、数多くの事例に対して、第1フェーズを実行して、災害データベース130に登録されたデータを充実化する。
同一の災害かつ同一の被災対象について、複数の発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組が登録されることもある。この場合、各発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との組をそのまま登録しておいてもよいし、発生前散乱成分11の平均値と、発生後散乱成分12の平均値とを登録するとしてもよい。
つまり、災害の種別「水害」、被災対象「市街地」について、発生前散乱成分11aと発生後散乱成分12aとの組Aが既に登録されている場合に、発生前散乱成分11bと発生後散乱成分12bとの組Bが新たに登録される場合がある。この場合、次の(1)(2)のいずれの方法により災害データベース130に登録する。
(1)災害の種別「水害」、被災対象「市街地」について、組Aと組Bとの両方を別々に登録する。
(2)災害の種別「水害」、被災対象「市街地」について、発生前散乱成分11aと発生前散乱成分11bとの平均値と、発生後散乱成分12aと発生後散乱成分12bとの平均値とを登録する。
【0067】
以上のように、災害データベース130への発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との登録方法を変更することにより、災害の発生種別を特定する精度が変わる。状況に合わせて、災害データベース130への登録方法を変更することで、災害の発生種別を特定する精度を高くすることもできる。
例えば、発生した災害の種別毎に、災害データベース130への発生前散乱成分11と発生後散乱成分12との登録方法を変更するとしてもよい。
【0068】
実施の形態3.
実施の形態3では、散乱成分差の計算方法について説明する。
【0069】
(第1の計算方法)
第1の計算方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、散乱成分差計算部140は、散乱成分A21と散乱成分B22とをベクトルV(表面散乱強度,2回散乱強度,体積散乱強度)と表し、|ΔV|を散乱成分差として計算した。
【0070】
(第2の計算方法)
第2の計算方法は、散乱成分毎に差を計算して、計算した差の和を散乱成分差とする方法である。
つまり、散乱成分差計算部140は、散乱成分A21の表面散乱成分と散乱成分B22の表面散乱成分との差と、散乱成分A21の2回散乱成分と散乱成分B22の2回散乱成分との差と、散乱成分A21の体積散乱成分と散乱成分B22の体積散乱成分との差とを計算し、各差の和を散乱成分差とする。
【0071】
また、各差の和ではなく、各差の積を散乱成分差としてもよい。
【0072】
(第3の計算方法)
第3の計算方法は、重み付けした各平均値の和又は積を散乱成分差とする方法である。
つまり、散乱成分差計算部140は、表面散乱成分と2回散乱成分と体積散乱成分とに異なる重みを持たせ、それぞれの散乱成分の平均値を計算し、計算した平均値の和又は積を散乱成分差とする。
【0073】
以上のように、災散乱成分差の計算方法を変更することにより、被災対象領域を特定する精度が変わる。状況に合わせて、散乱成分差の計算方法を変更することで、被災対象領域を特定する精度を高くすることもできる。
例えば、発生した災害を引き起こす現象(例えば、台風の通過や地震の発生)に応じて、上記第1の計算方法から第3の計算方法を使い分けしてもよい。
また、第3の計算方法を使用する場合には、発生した災害を引き起こす現象に応じて、各散乱成分に持たせる重みを変更してもよい。例えば、その現象によって発生する災害を識別し易い散乱成分に重い重みを持たせることが望ましい。
【0074】
実施の形態4.
実施の形態4では、被災対象領域の特定方法について説明する。特に、ここでは、図5の(S203:第1領域特定処理)での被災対象領域の特定方法について説明する。
【0075】
(第1の特定方法)
第1の特定方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、所定の領域毎に、散乱成分差を計算して、計算した散乱成分差が閾値よりも大きいか否かにより被災対象領域を特定した。
【0076】
(第2の特定方法)
第2の特定方法は、2段階で被災対象領域を特定する方法である。
1段目では、計算速度を優先して、粗く被災対象領域を特定する。2段目では、1段目で被災対象領域として特定された領域について、精度を優先して、細かく被災対象領域を特定する。
【0077】
実施の形態1で説明したように、散乱成分差計算部140は、観測エリアの所定の領域毎に散乱成分差を計算する。そこで、散乱成分差を計算する領域の面積を変更することで、被災対象領域の特定精度を変更する。
つまり、1段目では、散乱成分差を計算する領域の面積を広く設定して、被災対象領域を特定する。2段目では、1段目よりも散乱成分差を計算する領域の面積を狭く設定して、1段目で特定された被災対象領域を絞り込む。
【0078】
図13は、2段階で被災対象領域を特定する方法の処理の流れを示すフローチャートである。
(S301:散乱成分差計算処理(1段目))
散乱成分差計算部140は、散乱成分差を計算する領域の面積を第1の面積に設定して、散乱成分差を計算する。第1の面積は、比較的広い面積とする。
(S302:被災対象領域特定処理(1段目))
領域特定部150は、(S301)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値A)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。
1段目では、第1の面積を比較的広くしたため、計算時間をかけずに観測エリア全体から被災対象領域を特定することができる。しかし、被災対象領域の特定精度は低くなる。つまり、被災していない領域も被災対象領域となる虞がある。なお、被災した領域が被災対象領域とならないことがないように、ここでは閾値(第1の閾値A)を低くすることが望ましい。
(S303:散乱成分差計算処理(2段目))
散乱成分差計算部140は、散乱成分差を計算する領域の面積を第2の面積に設定して、(S302)で特定された被災対象領域についてのみ、散乱成分差を計算する。第2の面積は、第1の面積よりも狭い面積とする。
(S304:被災対象領域特定処理(2段目))
領域特定部150は、(S303)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値B)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。つまり、(S302)で特定した被災対象領域を絞り込む。1段目よりも精度を高くするため、第1の閾値Bは第1の閾値Aと同じか、より高くすることが望ましい。
2段目では、第2の面積を第1の面積よりも狭くしたため、高精度に被災対象領域を特定することができる。しかし、第2の面積を第1の面積よりも狭くしたため、面積当たりの計算時間はかかる。但し、1段目で特定された被災対象領域のみを対象として処理を行っているため、観測エリア全体を同じ精度で処理するよりも効率的である。
【0079】
(第3の特定方法)
第3の特定方法は、第2の特定方法と同様に、2段階で特定する方法である。
第3の特定方法では、1段目と2段目とで散乱成分差の計算方法を変更する。例えば、1段目では、第2の計算方法で散乱成分差を計算して、被災対象領域を特定する。2段目では、第1の計算方法で散乱成分差を計算して、1段目で特定された被災対象領域を絞り込む。
【0080】
図13に従い、第3の特定方法について説明する。
(S301:散乱成分差計算処理(1段目))
散乱成分差計算部140は、第2の計算方法で散乱成分差を計算する。
(S302:被災対象領域特定処理(1段目))
領域特定部150は、(S301)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値A)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。
(S303:散乱成分差計算処理(2段目))
散乱成分差計算部140は、第2の計算方法で、(S302)で特定された被災対象領域についてのみ、散乱成分差を計算する。
(S304:被災対象領域特定処理(2段目))
領域特定部150は、(S303)で計算された散乱成分差が閾値(第1の閾値B)よりも大きい領域を、被災対象領域として特定する。つまり、(S302)で特定した被災対象領域を絞り込む。
【0081】
なお、1段目と2段目とでの計算方法の組合せは、どのような組合せであってもよい。また、第2の特定方法と組合せ、1段目と2段目とでの計算方法を変えるとともに、散乱成分差を計算する領域の面積を変えてもよい。
【0082】
(第4の特定方法)
第4の特定方法は、エッジ検出処理を用いて、散乱成分差を計算する領域を決定する方法である。
被災した領域は災害により表面の状態が変化しているため、被災した領域の散乱成分は、その周囲の領域の散乱成分と一定以上の差があると考えられる。そこで、散乱成分差計算部140は、測定データBに対してエッジ検出を行い、検出されたエッジ線により、観測エリアを複数の小領域に分割する。そして、散乱成分差計算部140は、小領域毎に、散乱成分差を計算する。
領域特定部150は、散乱成分差計算部140が計算した散乱成分差が閾値よりも大きい領域を被災対象エリアとして特定する。
【0083】
以上のように、被災対象領域の特定方法を変更することにより、被災対象領域を特定する精度が変わる。状況に合わせて、被災対象領域の特定方法を変更することで、被災対象領域を特定する精度を高くすることもできる。
【0084】
実施の形態5.
実施の形態5では、被災対象領域の災害の種別を特定する方法について説明する。
【0085】
(第1の特定方法)
第1の特定方法は、実施の形態1で説明した方法である。
実施の形態1では、被災対象領域毎に災害の種別を特定するとした。
【0086】
(第2の特定方法)
被災対象領域を複数の小領域に分割して、小領域毎に災害の種別を特定する方法である。
【0087】
例えば、種別特定部170は、所定の面積毎に被災対象領域を分割する。そして、種別特定部170は、分割され生成された小領域毎に災害の種別を特定する。
【0088】
また、種別特定部170は、エッジ検出処理を用いて、被災対象領域を分割してもよい。
1つの被災対象領域であっても、異なる種別の災害が発生した領域では、散乱成分に一定以上の差があると考えられる。そこで、特に、種別特定部170は、測定データBに対してエッジ検出を行い、検出されたエッジ線により、被災対象領域を複数の小領域に分割する。そして、種別特定部170は、小領域毎に災害の種別を特定する。
【0089】
以上のように、被災対象領域を分割して、災害の種別を特定することにより、災害の種別を特定する精度を高くすることができる。
【0090】
実施の形態6.
以上の実施の形態では、特定装置100は、災害が発生した領域を特定するとともに、特定した領域毎に、発生した災害の種別を特定するとした。しかし、特定装置100が特定するものは、これに限らない。
実施の形態6では、特定装置100が特定する他の例について説明する。
【0091】
例えば、特定装置100は、人工物が作成された領域を特定するとしてもよい。
特定装置100は、人工物の種別(例えば、家屋、道路等)毎に、作成前と作成後との散乱成分をデータベースに登録しておく。そして、特定装置100は、A時点に測定した観測エリアの測定データと、B時点に測定した観測エリアの測定データとからA時点からB時点までに人工物が作成された領域と、その領域に作成された人工物の種別とを特定する。
【0092】
また、特定装置100は、植生の分布や農作物の栽培分布等を特定するとしてもよい。
植生の分布を特定する場合であれば、特定装置100は、植物毎に、季節毎の変化をデータベースに登録しておく。例えば、特定装置100は、植物毎に、冬の散乱成分を発生前散乱成分11とし、春の散乱成分を発生後散乱成分12としてデータベースに登録しておく。他にも、夏の散乱成分を発生前散乱成分11とし、秋の散乱成分を発生後散乱成分12としてデータベースに登録しておいてもよい。そして、特定装置100は、冬に測定した観測エリアの測定データと、春に測定した観測エリアの測定データとから、その観測エリアの植生の分布を特定する。
【0093】
以上の実施の形態における特定装置100のハードウェア構成について説明する。
図14は、特定装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図14に示すように、特定装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902(K/B)、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920(固定ディスク装置)の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。磁気ディスク装置920は、所定の固定ディスクインタフェースを介して接続される。
【0094】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0095】
プログラム群923には、上記の説明において「測定データ入力部110」、「測定データ登録部120」、「災害データベース130」、「散乱成分差計算部140」、「領域特定部150」、「地形データ記憶部160」、「種別特定部170」等として説明した機能を実行するソフトウェアやプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、上記の説明において「災害の種別」、「被災対象」、「発生前散乱成分11」、「発生後散乱成分12」、「散乱成分A21」、「散乱成分B22」等の情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「ファイル」や「データベース」の各項目として記憶される。「ファイル」や「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0096】
また、上記の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体やICチップに記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体や電波によりオンライン伝送される。
また、上記の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜装置」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。さらに、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、上記で述べた「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、上記で述べた「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【符号の説明】
【0097】
11 発生前散乱成分、12 発生後散乱成分、21 散乱成分A、22 散乱成分B、100 特定装置、110 測定データ入力部、120 測定データ登録部、130 災害データベース、140 散乱成分差計算部、150 領域特定部、160 地形データ記憶部、170 種別特定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力部が入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を処理装置により計算する散乱成分差計算部と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として処理装置により特定する領域特定部と
を備えることを特徴とする特定装置。
【請求項2】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記領域特定部が特定した領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の特定装置。
【請求項3】
前記散乱成分差計算部は、前記測定データ入力部が前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数1により計算する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の特定装置。
【数1】
【請求項4】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の領域毎の地形を判別可能な地形データを予め記憶装置に記憶する地形データ記憶部を備え、
前記領域特定部は、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、前記地形データ記憶部が記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の特定装置。
【請求項5】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を処理装置により検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする特定装置。
【請求項6】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力処理で入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算処理と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする特定プログラム。
【請求項7】
前記特定プログラムは、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶した記憶装置から、
前記領域特定処理で特定した領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6に記載の特定プログラム。
【請求項8】
前記散乱成分差計算処理では、前記測定データ入力処理で前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数2により計算する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の特定プログラム。
【数2】
【請求項9】
前記特定プログラムは、さらに、
前記領域特定処理では、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、予め記憶装置に記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする請求項6から8までのいずれかに記載の特定プログラム。
【請求項10】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶した記憶装置から、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする特定プログラム。
【請求項11】
入力装置が、所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力ステップで入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算ステップで計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定ステップと
を備えることを特徴とする特定方法。
【請求項1】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力部が入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を処理装置により計算する散乱成分差計算部と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として処理装置により特定する領域特定部と
を備えることを特徴とする特定装置。
【請求項2】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記領域特定部が特定した領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の特定装置。
【請求項3】
前記散乱成分差計算部は、前記測定データ入力部が前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数1により計算する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の特定装置。
【数1】
【請求項4】
前記特定装置は、さらに、
前記所定の領域毎の地形を判別可能な地形データを予め記憶装置に記憶する地形データ記憶部を備え、
前記領域特定部は、前記散乱成分差計算部が計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、前記地形データ記憶部が記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の特定装置。
【請求項5】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力装置により入力する測定データ入力部と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶装置に記憶する測定データ記憶部と、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記測定データ記憶部が記憶した前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を処理装置により検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定部と
を備えることを特徴とする特定装置。
【請求項6】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力処理で入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算処理と、
前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする特定プログラム。
【請求項7】
前記特定プログラムは、さらに、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データから抽出された発生前散乱成分と、発生後に測定した結果である発生後測定データから抽出された発生後散乱成分とを予め記憶した記憶装置から、
前記領域特定処理で特定した領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6に記載の特定プログラム。
【請求項8】
前記散乱成分差計算処理では、前記測定データ入力処理で前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとして、複数の種類の散乱成分を入力した場合に、前記散乱成分差を数2により計算する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の特定プログラム。
【数2】
【請求項9】
前記特定プログラムは、さらに、
前記領域特定処理では、前記散乱成分差計算処理で計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域であって、予め記憶装置に記憶した地形データから判別される地形が所定の地形でない領域を、前記所定の現象が発生した領域として特定する
ことを特徴とする請求項6から8までのいずれかに記載の特定プログラム。
【請求項10】
所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力処理と、
前記所定の現象を分類した種別毎に、その種別の現象が発生した領域に対して、前記偏波成分を測定した結果であって、その種別の現象の発生前に測定した結果である発生前測定データと、発生後に測定した結果である発生後測定データとから抽出された散乱成分の差を示す散乱成分差を予め記憶した記憶装置から、
前記所定のエリアの所定の領域について、前記発生前散乱成分に前記散乱成分Aが近く、前記発生後散乱成分に前記散乱成分Bが近い種別を検索して、その領域で発生した現象の種別を特定する種別特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする特定プログラム。
【請求項11】
入力装置が、所定のエリアに対して、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果であって、A時点において測定した結果である測定データAと、前記A時点と異なるB時点において測定した結果である測定データBとから抽出された散乱成分を、それぞれ散乱成分Aと散乱成分Bとして入力する測定データ入力ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアにおける所定の領域毎に、前記測定データ入力ステップで入力した前記散乱成分Aと前記散乱成分Bとの差を示す散乱成分差を計算する散乱成分差計算ステップと、
処理装置が、前記所定のエリアのうち、前記散乱成分差計算ステップで計算した散乱成分差が第1閾値よりも大きい領域を、所定の現象が発生した領域として特定する領域特定ステップと
を備えることを特徴とする特定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−223731(P2010−223731A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70925(P2009−70925)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】
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