説明

現像ローラ、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置

【課題】高温度かつ高湿度の使用環境においても、使用初期から高い画像濃度を得ることができる現像ローラを提供する。
【解決手段】導電性軸体と、該導電性軸体の外周面に形成された弾性層を有する現像ローラであって、前記弾性層が、芳香環を有するウレタン樹脂と、下記式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物を含有する樹脂組成物から構成される現像ローラ。 (CH33SiO・(A)p・(B)q・(C)r・Si(CH33 (1)(式中、A、B及びCは各々繰り返し単位を表し、該繰り返し単位A、B及びCの並び順は任意であり、例えばCは、下記式(4)で表される繰り返し単位を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、これを用いた電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機や光プリンタ等の電子写真装置の画像形成方法として、非磁性一成分現像剤を用いた接触現像法が知られている。接触現像法を具体的に説明すると、まず回転可能な感光ドラム等の感光体を、帯電ローラ等を備えた帯電手段により一様に帯電し、一様に帯電した感光体表面に、レーザー光等を露光して静電潜像を形成する。次に、静電潜像を担持した感光体に、表面に現像剤の薄膜を形成した現像ローラを対向させ、感光体と現像ローラを相互に回転させる。このとき、現像ローラに現像バイアスを印加すると、現像剤は現像ローラ上から感光体上の静電潜像へ移動し、静電潜像が可視化される。その後、感光体上の現像剤像は転写部において記録材に転写され、定着部において加熱、加圧等により記録材に定着されることにより、記録材上への画像形成が終了し、画像形成装置外へ排出される。
【0003】
このような画像形成方法において感光体が担持する静電潜像に現像剤を供給する現像装置としては、以下のような構成を有するものを挙げることができる。
【0004】
現像剤を収納する現像剤容器の開口を閉塞し、且つ、一部を容器外に露出させ、この露出部分において感光体に対向するように現像ローラを設ける。現像剤容器内には、現像ローラに現像剤を供給する現像剤塗布用ローラ、現像ローラ上の現像剤を薄膜に形成し現像ローラ上の現像剤量を一定とする現像ブレードが設けられる。現像ブレードは、その先端近傍、例えば、先端から0.1mm以上5.0mm以下の位置において、現像ローラに当接するように設置され、現像剤塗布用ローラによって現像ローラ上に供給された現像剤を、均一な厚さの薄膜状に形成する。
【0005】
このような非磁性一成分現像剤を用いた接触現像法においては、現像ローラの表面は、現像ブレードと摺擦するため、現像ローラの表面を構成する材料には、靭性が高い材料が求められる。現像ローラの表面を構成する材料が靭性に乏しいと、現像ローラを長期間使用した場合に、現像ローラの表面が削れてしまい、画像不良が発生するからである。また、現像ローラの表面を構成する材料には、柔軟性も求められる。これは、現像ローラの表面を構成する材料が硬いと、現像ローラを長期間使用した場合に、現像ローラの表面に現像剤の融着が生じ、これに起因する画像不良、いわゆる耐久融着が発生する傾向が高いからである。つまり、現像ローラと現像剤塗布用ローラとの当接部、及び現像ローラと現像ブレードとの当接部、及び現像ローラと感光体との当接部において、現像剤が受ける当接圧力を緩和できないと、現像剤の劣化が促進されてしまう。現像剤の劣化が進むと、現像ローラの表面に現像剤の融着を生じやすくなるためである。
【0006】
以上の理由から、現像ローラの表面には、靭性が高く、かつ柔軟な特徴を有する樹脂であるポリウレタン樹脂が多用されている。
【0007】
しかし、ポリウレタン樹脂を用いた現像ローラにおいては、高温かつ高湿度の環境で使用した場合に、耐久初期に充分な画像濃度が得られ難いという課題がある。これは、ポリウレタン樹脂がわずかに吸湿性を有するために、高温度かつ高湿度の環境において現像剤への帯電付与能力が低下しやすくなるためと考えられる。
【0008】
したがって、高温かつ高湿度の環境で使用した場合において、耐久初期から充分な画像濃度を得るためには、高温かつ高湿度の環境におけるポリウレタン樹脂の吸湿を低減させれば良いと考えられる。高温かつ高湿度の環境におけるポリウレタン樹脂の吸湿を低減させる具体的な方法として、ポリウレタン樹脂に疎水性のシリコーンオイル(シリコーン化合物)を添加することが考えられる。
【0009】
実際、樹脂やゴムにシリコーンオイルを添加した現像ローラの発明は、種々開示されている。例えば、ポリウレタン樹脂にポリシロキサン成分を添加して、ポリウレタン樹脂の電気特性を損なうことなく、離型性を付与し、現像ローラと感光体との密着性を低減させ、現像剤の融着を軽減させた現像ローラが開示されている(特許文献1参照。)。また、フッ素ゴムにシリコーンオイルを加えて、離型性を付与し、現像剤の離型性を向上させて、現像剤の融着を軽減させた現像ローラが開示されている(特許文献2参照。)。また、シリコーングラフトアクリルポリマーにシリコーンオイルを加え、現像ローラの摩擦係数を低下させて、現像剤の融着を軽減させた現像ローラが開示されている(特許文献3参照。)。
【0010】
しかしながら、上記の発明は、いずれも現像ローラの吸湿を低下させる目的ではなく、シリコーンオイルが有する離型性を利用して、現像ローラへの現像剤の融着を低減することを目的としている。上記特許文献には、高温度かつ高湿度の環境においても使用初期から高い画像濃度を得ることができる現像ローラについては、開示されていない。
【0011】
【特許文献1】特開2003−167398号公報
【特許文献2】特開平09−230689号公報
【特許文献3】特開平11−167273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、高温度かつ高湿度の環境においても、使用初期から高い画像濃度を得ることができる現像ローラ、これを具備する電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、シリコーンオイルが、耐熱性、対候性、撥水性を有することから、これを現像ローラの弾性層に添加して、高温かつ高湿度の環境で使用した場合に、耐久初期から充分な画像濃度を得ることができるという効果も得られるのではないかと考え研究を行った。この研究において、非反応性のシリコーン化合物と、様々な分子構造を有するポリウレタン樹脂と組み合わせて現像ローラを試作し、得られた現像ローラを評価した。その結果、メチルスチリル基で変性されたアラルキル変性シリコーン化合物と、芳香環を有するポリウレタン樹脂とを組み合わせると、高温かつ高湿度の環境における使用初期の画像濃度が、従来の現像ローラよりも高くなることを見出し本発明を完成するに到った。
すなわち、上記課題を解決した本発明は、導電性軸体と、該導電性軸体の外周面上に形成された弾性層を有する現像ローラであって、前記弾性層が、芳香環を有するポリウレタン樹脂と、下記化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物を含有する樹脂組成物から構成されていることを特徴とする現像ローラである。
(CH33SiO・(A)p・(B)q・(C)r・Si(CH33 (1)
(式中、A、B及びCは各々繰り返し単位を表し、該繰り返し単位A、B及びCの並び順は任意であり、Aは、下記化学式(2)で表される繰り返し単位を示し、
【化1】

Bは、下記化学式(3)で表される繰り返し単位を示し、
【化2】

(式中、R1は、炭素数が2以上18以下のアルキル基を示す。)
Cは、下記化学式(4)で表される繰り返し単位を示し、
【化3】

(式中、R2は、炭素数が2または3のアルキレン基を示し、R3乃至R7は、各々独立に、炭素数が1以上4以下のアルキル基または水素原子を示す。)
p及びrは、各々独立に1以上の整数を示し、qは、0または1以上の整数を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の現像ローラを用いると、高温度かつ高湿度環境で使用した場合でも、使用初期から高い画像濃度を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この特定の組み合わせにおいて特異的に、高温度かつ高湿度環境下で、使用初期の画像濃度が従来の現像ローラよりも高くなった理由は、以下のように考えられる。
【0016】
すなわち、メチルスチリル基で変性されたシリコーン化合物(1)は、メチルスチリル基に由来する芳香環を有しているため、芳香環を有するポリウレタン樹脂との相溶性が非常に高くなると考えられる。このため、現像ローラの弾性層の表面全体がシリコーン化合物で覆われるようになり、高温度かつ高湿度環境における現像ローラの吸湿を防止して、現像剤への帯電付与能力の低下を防ぎ、使用初期から高い画像濃度が得られると考えられる。
【0017】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
[現像ローラ]
本発明に係る現像ローラの実施形態の一例の断面構造を図1に示す。図1に示した現像ローラ100は、導電性軸体1と、導電性軸体1の外周面上に形成された弾性層2を有している。弾性層2は、芳香環を有するポリウレタン樹脂と、下記化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物を含有する樹脂組成物から構成されている。
(CH33SiO・(A)p・(B)q・(C)r・Si(CH33 (1)
上記式中、A、B及びCは各々繰り返し単位を表し、該繰り返し単位A、B及びCの並び順は任意である。
【0018】
上記Aは、下記化学式(2)で表される繰り返し単位を示す。
【0019】
【化4】

【0020】
上記Bは、下記化学式(3)で表される繰り返し単位を示す。
【0021】
【化5】

【0022】
上記式中、R1は、炭素数が2以上18以下のアルキル基を示す。
R1を長鎖のアルキル基とすると、シリコーン化合物の疎水性を高める作用を有する点において好ましいが、ポリウレタン樹脂との相溶性が低い点において好ましくない。このためR1の炭素数が19以上であると、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物とポリウレタン樹脂との相溶性が低下して、高温度かつ高湿度環境における使用初期の画像濃度を高くする効果が得られ難くなる。
【0023】
また、R1の炭素数が1の場合は、R1はメチル基を示すことになる。つまり、この場合、繰り返し単位Aと繰り返し単位Bとが同一になる。また、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物においては、繰り返し単位Bの存在は必須でなく、q=0であってもよい。即ち、繰り返し単位Aと繰り返し単位Cからなる化合物であっても良い。
【0024】
上記Cは、下記化学式(4)で表される繰り返し単位を示す。
【0025】
【化6】

【0026】
上記式中、R2は、炭素数が2または3のアルキレン基を示し、R3乃至R7は、各々独立に、炭素数が1以上4以下のアルキル基または水素原子を示す。
【0027】
繰り返し単位Cは、炭素数が2または3のアルキレン基R2を有しており、R3乃至R7は炭素数が1以上4以下のアルキル基または水素原子である。周知のように、アラルキル変性シリコーン化合物(1)は、らせん構造を取っており、珪素−酸素結合が、らせんの内側を向き、珪素原子に結合した官能基が、らせんの外側を向いた構造になっている。従って、アルキレン基R2及びその先に繋がる芳香環は、らせんの外周に配置された立体構造を取ることになる。このとき、アルキレン基R2の炭素数が1であると、芳香環は、らせん構造のごく近傍に存在することになる。このようなアラルキル変性シリコーン化合物をポリウレタン樹脂に相溶させるためには、ポリウレタン樹脂の分子が、アラルキル変性シリコーン化合物のらせん構造のごく近傍まで接近する必要がある。しかし、該アラルキル変性シリコーン化合物のらせんの外周には、ポリウレタン樹脂との相溶性が低いメチル基が多数存在している。このため、アルキレン基R2の炭素数が1であると、ポリウレタン樹脂がアラルキル変性シリコーン化合物に近づくことができず、両者の相溶性が低下して、高温度かつ高湿度環境における使用初期の画像濃度を高くする効果が得られ難くなる。
【0028】
アルキレン基R2の炭素数が5以上の場合、直接効果を確認できた訳ではないが、シロキサン結合のらせん構造と芳香環との距離が遠くなるため、やはりポリウレタン樹脂がアラルキル変性シリコーン化合物に近づくことが困難になると予想される。その結果、ポリウレタン樹脂とアラルキル変性シリコーン化合物を含有する樹脂組成物の密度が低下し、使用環境中の水蒸気が侵入しやすくなって、高温度かつ高湿度環境における使用初期の画像濃度を高くする効果が得られ難くなると予想される。
【0029】
つまり、アラルキル変性シリコーン化合物(1)とポリウレタン樹脂とが適度な距離で近接したときに、両者の相溶性が最も向上する。そして、高温度かつ高湿度で使用した場合でも、使用初期から高い画像濃度が得られるという効果が、特異的に発揮されるものと考えられる。それ故、アルキレン基R2としては、炭素数が2または3のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0030】
R3乃至R7は、すべて水素原子であることが好ましいが、R3乃至R7の一部若しくは全てが、炭素数1以上4以下のアルキルであっても良い。R3の炭素数が5以上の場合、直接効果を確認できた訳ではないが、芳香環に嵩高いアルキル基が存在することになるので、ポリウレタン樹脂との相溶性が低下して、高温度かつ高湿度環境における使用初期の画像濃度を高くする効果が得られ難くなると思われる。
【0031】
また、化学式(1)中、p及びrは、各々独立に1以上の整数を示し、qは0または1以上の整数を示す。
【0032】
上述したように、化学式(1)において、繰り返し単位A、B、Cの並び順は任意であり、p、rは各々独立に1以上の整数を示し、qは0または1以上の整数を示す。先に述べたように、qが0の場合は、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物に含まれる繰り返し単位は、AとCの2種類となる。化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物において、繰り返し単位Bは本発明の効果を得るために必ずしも必須な成分ではない。しかしながら、繰り返し単位Bが化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物に存在するとシリコーン化合物の疎水性を高め、高温度かつ高湿度環境における現像ローラーの吸湿を防止できるため好ましい。
【0033】
なお、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物のように複数の繰り返し単位を含む高分子において、各繰り返し単位のp、q、rを正確に同定することは困難である。そこで、本発明においては、後述の方法で測定した重量平均分子量Mwをもって、化学式(1)の重合度を示すものとする。
【0034】
化学式(1)〜(4)から明らかなように、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物はイソシアネート基に対して非反応性である。すなわち化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素(水酸基の水素やアミノ基の水素)を有していないことはもちろん、ビニル基のような反応性2重結合、エポキシ基、カルボキシル基も有していない。従って、得られるポリウレタン樹脂の靭性が低下して、ポリウレタン樹脂の特徴を発揮できなくなる虞もない。
【0035】
化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物の好ましい分子量は、重量平均分子量が2,000以上20,000以下である。重量平均分子量を2,000以上とすると、該アラルキル変性シリコーン化合物が現像ローラの表面に浮き出しにくくなる。このため、現像ローラがべたつき、現像ローラから感光体への現像剤の現像が良好に行われなくなってしまうこともなく、使用初期から高い画像濃度を得ることができる。また該アラルキル変性シリコーン化合物の重量平均分子量を20,000以下とすると、高温度かつ高湿度の環境における使用初期の画像濃度を高くする効果が得られやすくなる。これは、該アラルキル変性シリコーン化合物の分子鎖が適度の長さとなると、該化合物の分子鎖の絡み合いがほぐれやすくなって、該シリコーン化合物によって現像ローラの表面全体を覆うことが容易になるためではないかと推察される。なお、該アラルキル変性シリコーン化合物の分子量の測定方法については後述する。
【0036】
弾性層2に含まれる、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物の好ましい含有量は、弾性層の質量に対して0.1質量%以上10質量%以下である。より好ましくは、0.2質量%以上5質量%以下である。化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物の添加量を0.1質量%以上とすると、高温度かつ高湿度の環境における現像ローラの吸湿を防止する効果が容易に得られ、従来の現像ローラと比較して、使用初期の画像濃度を高くすることができる。また、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物の添加量を10質量%以下とすると、現像ローラの表面がべたついてしまう虞もなく、現像ローラから感光体への現像剤の現像が良好に行われ、使用初期から高い画像濃度を得ることができる。
【0037】
アラルキル変性シリコーン化合物の含有量は、弾性層2を冷凍状態で粉砕した後、適切な有機溶媒に浸漬して該アラルキル変性シリコーン化合物を抽出し、質量を測定することで、容易に知ることができる。
【0038】
化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物と組み合わせるポリウレタン樹脂は、芳香環を有するポリウレタン樹脂である。このようなポリウレタン樹脂を得るためには、ポリウレタン樹脂の原料として、ポリオールとイソシアネートが必要である。これに鎖延長剤を加えることも可能である。ポリウレタン樹脂の原料たるポリオールとしては以下のもの挙げられる。
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、及びこれらの混合物。
【0039】
前記ポリオールは、以下に挙げる芳香環を有するイソシアネートと反応させてプレポリマー化しておいても良い。芳香環を有するイソシアネートでプレポリマー化させたポリオールを除いて、一般に用いられるポリオールは、芳香環を有していないので、本発明のポリウレタン樹脂に芳香環を導入するためには、イソシアネートに芳香環を有するものを用いる必要がある。
【0040】
本発明で用いることのできるイソシアネートは、芳香環を有するイソシアネートである。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)を挙げることができる。及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
ポリウレタン樹脂の原料たる鎖延長剤としては、以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオールの如き2官能低分子ジオール;トリメチロールプロパンの如き3官能低分子トリオール、及びこれらの混合物。
【0042】
特に、ポリウレタン樹脂の中でもポリエーテルポリオールを用いたポリエーテルポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールを用いたポリエステルポリウレタン樹脂と比較して、吸湿量が小さい。それ故、高温度かつ高湿度環境における使用初期の画像濃度を高くするために好ましい。
【0043】
なお、弾性層2は上記のポリウレタン樹脂を主たる材料とするが、その他の樹脂成分を含有していても良い。その他の樹脂成分として以下のものを挙げることができる。
・ポリアミド樹脂。
・尿素樹脂。
・イミド樹脂。
・メラミン樹脂。
・フッ素樹脂。
・フェノール樹脂。
・ポリエステル樹脂。
・ポリエーテル樹脂。
・アクリル樹脂。
・天然ゴム。
・ブチルゴム。
・アクリロニトリル−ブタジエンゴム。
・ポリイソプレンゴム。
・ポリブタジエンゴム。
・シリコーンゴム。
・スチレン−ブタジエンゴム。
・エチレン−プロピレンゴム。
・エチレン−プロピレン−ジエンゴム。
・クロロプレンゴム。
・上記から選ばれる少なくとも2つの混合物。
【0044】
本発明の現像ローラに用いるポリウレタン樹脂、及び化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物の分子構造は、次のようにして同定できる。即ち、適切な手段により現像ローラの弾性層2からアラルキル変性シリコーン化合物とポリウレタン樹脂をそれぞれ単離する。その後、熱分解GC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析)や、NMR(核磁気共鳴分光法)、IR(赤外線吸収スペクトル分析)の如き分析手法を用いて同定する。
【0045】
また、弾性層2は、電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合して、体積抵抗率を1×104 Ωcm以上1×1013 Ωcm以下、より好ましくは1×105 Ωcm以上1×1012 Ωcm以下に調整してもよい。
【0046】
なお、弾性層2の体積抵抗率は、以下の方法で求めた値を採用することができる。
抵抗計として、超高抵抗計R8340A(商品名、アドバンテスト社製)を用い、以下の条件で測定を行う。
・測定モード:プログラムモード5(チャージ及びメジャー30秒、ディスチャージ10秒)
・印加電圧:100(V)
・試料箱:超高抵抗計測定用試料箱TR42(商品名、アドバンテスト社製)、主電極は口径10mm厚さ10mmの金属、ガードリング電極は内径20mm、外径26mm厚さ10mmの金属とする。
・試験片:はじめに、該弾性層2の材料を、弾性層2の成形時と同じ条件で、弾性層2と同じ厚さに硬化させた平板状のテストピースを作製する。次に、該テストピースから直径30mmの試験片を切り出す。切り出した試験片の片面には、その全面にPt−Pd蒸着を行うことで蒸着膜電極(裏面電極)を設け、もう一方の面には同じくPt−Pd蒸着膜により、直径15mmの主電極膜と、内径18mm、外径28mmのガードリング電極膜を同心状に設ける。なお、Pt−Pd蒸着膜は、マイルドスパッタE1030(商品名、日立製作所製)を用い、電流値15mAにて蒸着操作を2分間行って得る。蒸着操作を終了したものを測定サンプルとする。
【0047】
測定時には、口径10mmの主電極を口径15mmの主電極膜からはみ出さないように置く。また、内径20mmのガードリング電極を、内径18mmのガードリング電極膜からはみ出さないように、電極膜の上に置いて測定する。測定は、気温23℃、相対湿度50%の環境で行うが、測定に先立って、測定サンプルを、該環境に12時間以上放置しておく。
【0048】
以上の状態で、試験片の体積抵抗(Ω)を測定する。次に、測定した体積抵抗値をRM(Ω)、試験片の厚さをt(cm)とするとき、試験片の体積抵抗率RR(Ωcm)を、以下の式によって求める。
RR(Ωcm)=π×0.75×0.75×RM(Ω)÷(4×t(cm))
【0049】
弾性層2に導電性を付与するために用いられる電子導電性物質としては以下のものが挙げられる。
ケッチェンブラックEC、アセチレンブラックの如き導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTの如きゴム用カーボン;酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン;銅、銀、ゲルマニウムの如き金属及び金属酸化物。この中でも、少量で導電性を制御しやすいことからカーボンブラック〔導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラー(インク)用カーボン〕が好ましい。
【0050】
また、弾性層2に導電性を付与するために用いられるイオン導電性物質としては以下のものが挙がられる。
過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウムの如き無機イオン導電性物質;変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテートの如き有機イオン導電性物質。
【0051】
これら導電性付与剤は、弾性層2を前記の体積抵抗率に調節するのに必要な量が用いられるが、通常は弾性層2における該導電性付与剤の量が3質量%以上30質量%以下の範囲で用いられる。体積抵抗率は、上述した方法により測定することができる。
【0052】
現像ローラ100において、弾性層2が発泡体であると、発泡形状が画像に現れやすく、弾性層2の強度が低下しやすいため、非発泡(ソリッド)層であることが好ましい。また、弾性層2の層厚は、通常、0.5mm以上5.0mm以下の範囲とすることができる。より好ましくは1.0mm〜4.0mmの範囲とすることができる。
【0053】
図1に示した現像ローラ100は、前記のポリウレタン樹脂の原料と、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物と、導電性付与剤との混合物を、軸体を予め配した成型金型のキャビティ内に注入した後、加熱硬化させて作製することができる。
【0054】
図2は、本発明に係る現像ローラの他の実施形態の一例を示す概略断面図である。図2に示した現像ローラ200は、導電性軸体1と、導電性軸体1の外周面上に形成された樹脂層201と、さらに該樹脂層201の外周面上に形成された弾性層202を有する。図2に示した実施形態の現像ローラ200の弾性層202は、現像ローラ100の弾性層と同様である。よって、弾性層202の材質、体積抵抗率に関する詳細については、前記の現像ローラ100の弾性層2についての記載を援用する。
【0055】
樹脂層201は、感光ドラム21(図4を参照。)とのニップ幅を確保し、画像の均一性や長時間安定な画像を出力し続けるために、弾性に富む樹脂またはゴムで構成することが好ましい。具体的には、以下に挙げるものが好適である。
天然ゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、及びこれらの混合物。
これらの中でもシリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムが特に好ましい。
【0056】
樹脂層201も、弾性層2や弾性層201と同様に、電子導電性物質やイオン導電性物質のような導電性付与剤を配合して、体積抵抗率を1×104Ωcm以上1×1013 Ωcm以下してもよい。体積抵抗率のより好ましい範囲は、1×105 Ωcm以上1×1012 Ωcm以下である。なお、樹脂層201の体積抵抗率は、弾性層2と同様の測定方法によって求めた値を採用することができる。
【0057】
樹脂層201の硬度は、ASKER−C硬度で25〜70度とすることが好ましい。
樹脂層201の層厚は0.5mm以上5mm以下、特には1.0mm以上4.0mm以下の範囲とすることが好ましい。弾性層202の層厚は、樹脂層201の柔軟性を損なわないようにするために、3μm以上30μm以下とすることが好ましい。
【0058】
なお、樹脂層201及び弾性層202の層厚は、現像ローラの断面を、ビデオマイクロスコープで拡大観察し、観察視野を変えて5回測定した時の相加平均値を算出して求める。なお、拡大倍率は、測定対象物の層厚に応じて5〜2000倍の間で適宜選択する。
【0059】
現像ローラ200は、まず軸体1の外周面上に樹脂層201を形成した後、樹脂層201の外周面上に弾性層202を形成することにより得ることができる。
【0060】
樹脂層201は、下記1)又は2)の方法により形成することができる。
1)軸体1を予め配した成型金型のキャビティ内に樹脂層201を形成するための原料組成物を注入して加熱硬化する工程を含む方法;
2)樹脂層201を形成するための原料組成物を用いてコンパウンドを形成する工程と、該コンパウンドをチューブ状に押し出した後、該チューブに軸体1を圧入する工程とを含む方法。
【0061】
尚、上記1)及び2)の方法のいずれの場合も、軸体1の周囲に樹脂層201を形成した後、必要に応じて切削や研磨処理を行って、所定の外径に調節してもよい。
【0062】
次に、弾性層202は、前記弾性層2を形成するための塗料と同様の原料により調製した塗料を、樹脂層201の外周面上にスプレー塗工または浸漬塗工した後、加熱硬化して作製することができる。
【0063】
弾性層202を形成するための塗料は、前記の原料及び必要に応じて現像ローラの表面の粗さを調整するための粗し粒子を混合して、ボールミルの如き分散装置を用いて分散することにより調製することができる。
【0064】
前記の粗し粒子としては、以下の材料からなるものを好適に用いることができる。これらの粒子は単独または組み合わせて用いることができる。
・EPDM、NBR、SBR、CR、シリコーンゴムの如きゴム粒子。
・ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー(TPE)の如きエラストマーの粒子。
・PMMA、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂の如き樹脂粒子。
【0065】
現像ローラの表面粗さは、JIS B0601:2001による十点平均粗さRzjisが2μm以上25μm以下になるように調整することが好適である。
【0066】
なお、現像ローラの表面粗さは、現像ローラ1本あたり任意の9ヶ所で十点平均粗さRzjisを測定し、得られた測定値の相加平均値で示すことができる。
【0067】
<分子量の測定方法>
本発明において、化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0068】
以下に、GPCの測定条件を述べる。
温度40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整したアラルキル変性シリコーン化合物のTHF試料溶液を約50〜200μl注入して測定する。アラルキル変性シリコーン化合物の分子量測定にあたっては、予め単分散ポリスチレン標準試料を用いて作成した検量線の対数値とカウント数(リテンションタイム)との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば以下のものを用いる。
東ソー社製或いはPressure Chemical Co.製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のもの。
また、少なくとも10点の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いることができる。
【0069】
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良い。
昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807(いずれも商品名)の組み合わせを用いることができる。また、Waters社製のμ−styragel500、103、104、105(いずれも商品名)の組み合わせも用いることができる。
【0070】
[軸体]
軸体1は、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼又はクロムモリブテン鋼の如き材料で形成された直径4mm以上10mm以下の中実の金属棒が用いられる。または、樹脂にカーボンブラックの如き導電剤を練り込んだ導電性樹脂を棒状に成形したものを用いても良い。軸体1に金属棒を用いる場合、防錆対策として、軸体1にめっき処理や、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきのいずれも使用することができる。めっき厚の均一性に優れる無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきが挙げられる。ニッケルめっきの種類としては、Ni−P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきを用いることができる。めっき厚みは、通常、0.05μm以上とすることが好ましい。防錆効果、作業効率、価格を考慮した、より好ましいめっき厚みは、通常、0.1μm以上30μm以下である。
【0071】
[電子写真用画像形成装置]
本発明の電子写真用画像形成装置は、以下の構成要素を含む。
・静電潜像を担持するための像担持体。
・該像担持体を一次帯電するための帯電装置。
・一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置。
・該静電潜像を現像剤により現像して現像剤像を形成するための現像装置。
・該現像剤像を転写材に転写するための転写装置。
そして、該現像装置として、以下に説明するような本発明の電子写真プロセスカートリッジを有することを特徴とする。
【0072】
図3は、本発明の電子写真用画像形成装置の実施形態の一例の概略構成を示す断面図である。図4は、図3に示した電子写真用画像形成装置に装着される電子写真プロセスカートリッジの一例の拡大断面図である。
図4に示した電子写真プロセスカートリッジは、現像ローラ24と現像ブレード26とを備えている。現像ローラ24は、静電潜像を担持する像担持体としての感光ドラム21に対向した状態で現像剤を担持する。また現像ブレード26は、該現像ローラに担持された現像剤を摩擦帯電しながら該現像剤の層厚を規制する。そして、現像ローラ24の表面に現像剤の薄膜を形成し、現像ローラ24を、像担持体としての感光ドラム21に接触させて該像担持体の表面に現像剤を付与することにより静電潜像を現像剤像として可視化する。現像ローラ24として、上記本発明の現像ローラを備えている。
【0073】
前記静電潜像を担持するための像担持体としての感光ドラム21は、該像担持体を一次帯電するための帯電装置としての不図示のバイアス電源に接続された帯電部材22によって一様に帯電される。この時の帯電電位は、通常、−400Vから−800V程度である。
【0074】
また、一次帯電された感光ドラム21には、静電潜像を形成するための露光装置により、その表面に静電潜像が形成される。露光手段としては、LED光やレーザー光23のいずれも使用することができる。露光された部分の感光ドラム21の表面電位は、通常、−100Vから−200V程度である。
【0075】
次に、感光ドラム21上の静電潜像は、画像形成装置本体に対し着脱可能な、図3に示した電子写真プロセスカートリッジにより現像される。このとき、電子写真プロセスカートリッジに内蔵された現像ローラ24によって、負極性に帯電した現像剤が静電潜像に付与(現像)され、現像剤像が形成され、静電潜像が現像剤像に変換される。このとき、現像ローラ24には、通常、不図示のバイアス電源によって−300Vから−500V程度の電圧が印加される。
【0076】
次に、感光ドラム21上に形成された現像剤像は、該現像剤像を転写材に転写するための転写装置としての中間転写ベルト27に1次転写される。中間ベルト27の裏面には1次転写部材28が当接しており、1次転写部材28に+100Vから+1500V程度の電圧を印加することで、負極性の現像剤像を感光ドラム21から中間転写ベルト27に1次転写する。1次転写部材28はローラ形状であってもブレード形状であっても良い。
【0077】
電子写真用画像形成装置が、図3に示したような、フルカラー電子写真用画像形成装置である場合、上記の帯電、露光、現像、1次転写工程を、イエロー色、シアン色、マゼンタ色、ブラック色の各色に対して行う必要がある。そのために、図3に示した画像形成装置では、前記各色の現像剤を内蔵した電子写真プロセスカートリッジが各1個、合計4個、電子写真用画像形成装置本体に対し着脱可能な状態で装着されている。
【0078】
尚、現像ローラ24は、静電潜像を担持する像担持体としての感光ドラム21に対向しており、通常、0.5mm以上3mm以下のニップ幅をもって感光ドラム21と接触している。現像剤供給ローラ25は、現像剤容器34内で、現像剤を摩擦帯電しながら現像剤の層厚を規制する現像ブレード26の現像ローラ25表面との当接部に対し、現像ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。
【0079】
上記の帯電、露光、現像、1次転写工程は、所定の時間差をもって順次実行され、中間転写ベルト27上に、フルカラー画像を表現するための4色の現像剤像を重ね合わせた状態が作り出される。
【0080】
中間転写ベルト27上の現像剤像は、該中間転写ベルトの回転に伴って、2次転写部材29と対向する位置に搬送される。このとき、中間転写ベルト27と2次転写部材29との間には、所定のタイミングで記録用紙32が搬送されてきており、2次転写部材29に2次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト27上の現像剤像を記録用紙32に転写する。このとき、2次転写部材29に印加されるバイアス電圧は、通常、+1000Vから+4000V程度である。
【0081】
2次転写部材29によって現像剤像が転写された記録用紙32は、定着装置31に搬送され、記録用紙32上の現像剤像を溶融させて記録用紙32上に定着させた後、記録用紙32を電子写真用画像形成装置の外に排出することで、プリント動作が終了する。
【0082】
なお、感光ドラム21から中間転写ベルト27に転写されることなく、感光ドラム21上に残存した現像剤は、感光ドラム21表面をクリーニングするためのクリーニング部材30により掻き取られ、感光ドラム21の表面がクリーニングされる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0084】
(アラルキル変性シリコーン化合物の合成)
本実施例にて用いたシリコーン化合物1〜12を下記のようにして合成した。得られたシリコーン化合物1〜12の繰り返し単位の構造を、表1〜3に示す。
【0085】
(シリコーン化合物1の合成例)
下記の化合物を混合した。
・触媒のヘキサクロロ白金(VI)酸(6水和物)(キシダ化学社製)のIPA溶液(ヘキサクロロ白金(VI)酸(6水和物)の濃度:2wt%):0.5g;
・α−メチルスチレン(Aldrich社製)400g;
・トルエン2000g。
上記の混合物に、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:KF9901、信越化学工業製)71.2gを、滴下ロートを用いて約5分間で滴下が終了するよう、徐々に滴下した。滴下終了後、混合物を温度80℃に加温して、8時間攪拌した。
【0086】
その後、反応液を室温まで空冷した後、活性炭(5g)を加え、室温で更に2時間攪拌した。次に、活性炭を濾別した後、反応液が入った容器を5mmHgに減圧し、150℃で2時間加熱して、溶媒及び未反応のメチルハイドロジェンポリシロキサンを除去し、目的物であるシリコーン化合物1を得た。シリコーン化合物1の重量平均分子量は10,000であった。シリコーン化合物1の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表1に示す。
【0087】
(シリコーン化合物2の合成例)
α−メチルスチレン400gを、スチレン(Aldrich社製)358gに変更した以外は、シリコーン化合物1の合成例と同様にして、シリコーン化合物2を得た。シリコーン化合物2の重量平均分子量は10,000であった。シリコーン化合物2の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表1に示す。
【0088】
(シリコーン化合物3の合成例)
α−メチルスチレン400gを、α、2−ジメチルスチレン(Aldrich社製)448gに変更した以外は、シリコーン化合物1の合成例と同様にして、シリコーン化合物3を得た。シリコーン化合物3の重量平均分子量は11,000であった。シリコーン化合物3の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表1に示す。
【0089】
(シリコーン化合物4の合成例)
α−メチルスチレン400gを、3−メチルスチレン(Aldrich社製)406gに変更した以外は、シリコーン化合物1の合成例と同様にして、シリコーン化合物4を得た。シリコーン化合物4の重量平均分子量は10,000であった。シリコーン化合物4の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表1に示す。
【0090】
(シリコーン化合物5の合成例)
α−メチルスチレン400gを、4−tertブチルスチレン(Aldrich社製)552gに変更した以外は、シリコーン化合物1の合成例と同様にして、シリコーン化合物5を得た。シリコーン化合物5の重量平均分子量は12,000であった。シリコーン化合物5の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表1に示す。
【0091】
(シリコーン化合物6の合成例)
触媒のヘキサクロロ白金(VI)酸(6水和物)(キシダ化学社製)のIPA溶液(ヘキサクロロ白金(VI)酸(6水和物)の濃度:2wt%)0.5gに、1−オクタデセン(
Aldrich社製)434gと、α−メチルスチレン(Aldrich社製)200gと、トルエン2000gとを混合した。次に、該混合物に、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:KF9901、信越化学工業製)71.2gを、滴下ロートを用いて約5分間で滴下が終了するよう、徐々に滴下した。滴下終了後、混合物を温度80℃に加温して、8時間攪拌した。
【0092】
その後、反応液を室温まで空冷した後、活性炭(5g)を加え、室温で更に2時間攪拌した。次に、活性炭を濾別した後、反応液が入った容器を5mmHgに減圧し、150℃で2時間加熱して、溶媒及び未反応のメチルハイドロジェンポリシロキサンを除去し、目的物であるシリコーン化合物6を得た。シリコーン化合物6の重量平均分子量は16,000であった。シリコーン化合物6の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表2に示す。
【0093】
(シリコーン化合物7の合成例)
1−オクタデセン434gを、1−ドデセン(Aldrich社製)290gに変更した以外は、シリコーン化合物6の合成例と同様にして、シリコーン化合物7を得た。シリコーン化合物7の重量平均分子量は11,000であった。シリコーン化合物7の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表2に示す。
【0094】
(シリコーン化合物8の合成例)
1−オクタデセン434gを、1−ヘキセン(Aldrich社製)144gに変更した以外は、シリコーン化合物6の合成例と同様にして、目的物であるシリコーン化合物8を得た。シリコーン化合物8の重量平均分子量は10,000であった。シリコーン化合物8の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表2に示す。
【0095】
(シリコーン化合物9の合成例)
1−オクタデセン434gを、エチレン(Aldrich社製)48gに変更した以外は、シリコーン化合物6の合成例と同様にして、シリコーン化合物9を得た。シリコーン化合物1の重量平均分子量は6,000であった。シリコーン化合物9の、化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表2に示す。
【0096】
(シリコーン化合物10の合成例)
1−オクタデセン434gを、1−エイコセン(Aldrich社製)482gに変更した以外は、シリコーン化合物6の合成例と同様にして、シリコーン化合物10を得た。シリコーン化合物10の重量平均分子量は14,000であった。シリコーン化合物10の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表2に示す。
【0097】
(シリコーン化合物11の作製)
α−メチルスチレン200gを、スチレン(Aldrich社製)358gに変更した以外は、シリコーン化合物6の合成例と同様にして、シリコーン化合物11を得た。シリコーン化合物11の重量平均分子量は12,000であった。シリコーン化合物11の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表3に示す。
【0098】
(シリコーン化合物12の作製)
α−メチルスチレン200gを、スチレン(Aldrich社製)358gに変更した以外は、シリコーン化合物9の合成例と同様にして、シリコーン化合物12を得た。シリコーン化合物12の重量平均分子量は8,000であった。シリコーン化合物12の化学式(1)における繰り返し単位A、B及びCの構造を表3に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
(ポリエーテルポリオールプレポリマー(1)の合成例)
・化学式(5)で示されるポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1000SN、保土谷化学株式会社製)100質量部;
・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(略称:MDI、商品名:コスモネートMDI、三井武田ケミカル株式会社製)18.7質量部。
上記の化合物をメチルエチルケトン溶媒中で段階的に混合した。
窒素雰囲気下、温度80℃にて3時間反応させて、ポリエーテルポリオールプレポリマー(1)を得た。ポリエーテルポリオールプレポリマー(1)の重量平均分子量(Mw)は、10,000、水酸基価は、18.2mgKOH/gであった。
【0103】
【化7】

【0104】
(弾性層用塗料の調製)
<弾性層用塗料1の調製例>
下記原材料を準備した。
・ポリエーテルポリオールプレポリマー(1) 100質量部
・トリレンジイソシアネート(略称:TDI) 68質量部
(商品名:コスモネートT−100 三井武田ケミカル株式会社製)
・シリコーン化合物1 2質量部
・メチルエチルケトン(溶媒) 300質量部
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製) 17質量部
・ウレタン樹脂粒子(商品名:アートパールC600、根上工業製)13質量部
上記原材料を混合し、ボールミルで攪拌分散して弾性層用塗料1を調製した。
【0105】
上記トリレンジイソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物である。
【0106】
<弾性層用塗料2〜12の調製例>
シリコーン化合物1をシリコーン化合物2〜12の各々に変更した以外は弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料2〜12の各々を得た。
【0107】
<弾性層用塗料13の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、60質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、10質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料13を得た。
【0108】
<弾性層用塗料14の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、50質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、20質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料14を得た。
【0109】
<弾性層用塗料14の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、46質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、24質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料15を得た。
【0110】
<弾性層用塗料16の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、69.6質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、0.4質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料16を得た。
【0111】
<弾性層用塗料17の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、69.8質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、0.2質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料17を得た。
【0112】
<弾性層用塗料18の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、69.9質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、0.1質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料18を得た。
【0113】
<弾性層用塗料19の調製例>
下記原材料を準備した。
・ポリエーテルポリオールプレポリマー(1) 100質量部
・1,5−ナフタレンジイソシアネート(略称:NDI) 68質量部
(商品名:コスモネートND、三井化学ポリウレタン株式会社製)
・シリコーン化合物1 2質量部
・メチルエチルケトン(溶媒) 200質量部
・トルエン(溶媒) 100質量部
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製) 17質量部
・ウレタン樹脂粒子(商品名:アートパールC600、根上工業製)13質量部
上記原材料を混合し、ボールミルで攪拌分散して弾性層用塗料19を調製した。
【0114】
<弾性層用塗料20の調製例>
1,5−ナフタレンジイソシアネートを、m−キシリレンジイソシアネート(略称:XDI、商品名:タケネート500、三井化学ポリウレタン株式会社製)に変更した以外は、弾性層用塗料18の調製例と同様にして弾性層用塗料20を得た。
【0115】
<弾性層用塗料21の調製例>
トリレンジイソシアネート(略称:TDI)68質量部を、70質量部に変更し、シリコーン化合物1 2質量部を、0質量部に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料21を得た。
【0116】
<弾性層用塗料22の調製例>
シリコーン化合物1をメチルフェニルシリコーンオイル(商品名:KF50−300cs、信越化学工業製)に変更した以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料22を得た。
【0117】
なお、上記のメチルフェニルシリコーンオイルは、下記化学式(6)で示される化合物である。
【0118】
【化8】

【0119】
<弾性層用塗料23の調製例>
ポリエーテルポリオールプレポリマー(1)を、ポリプロピレングリコール(商品名:アクトコールDiol−3000、三井武田ケミカル株式会社製)に変更した。1,5−ナフタレンジイソシアネートを、ヘキサメチレンジイソシアネート(略称:HDI)(商品名:HDI、日本ポリウレタン工業株式会社製)に変更した。それ以外は、弾性層用塗料1の調製例と同様にして弾性層用塗料22を得た。
【0120】
(実施例1)
内径12mmの円筒状のキャビティを有する金型に該キャビティと同心になるように、外径6mmの軸体(材質:SUS304)を該キャビティ内に設置した。金型のキャビティ内周面と軸体外周面の間の空間に、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニングシリコーン社製、ASKER−C硬度40度、体積抵抗率1×105Ω・cm品)を注入した。この金型を、温度130℃のオーブンに入れ、20分間加熱した後、軸体と一体となったシリコーンゴムを金型から脱型し、温度200℃で4時間オーブン中で加熱して2次加硫を行い、層厚3mmのシリコーンゴム層を樹脂層とするローラを形成した。
【0121】
前記ローラを弾性層用塗料1に浸漬し、シリコーンゴム層の上に弾性層用塗料1を塗工した。温度80℃のオーブン中で15分間乾燥し、更に、温度140℃のオーブン中で4時間加熱し、硬化して、シリコーンゴム層の上に弾性層を形成し現像ローラを得た。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、得られた現像ローラのJIS B0601:2001に基き求めた弾性層の十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、前記弾性層におけるのシリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
【0122】
本実施例の現像ローラの弾性層を構成するポリウレタン樹脂は、MDI及びTDI由来の芳香環を有している。また、該弾性層は、アラルキル変性シリコーン化合物として、シリコーン化合物1を含有している。
【0123】
<画像濃度の評価>
上記現像ローラを、カラーレーザープリンタ(商品名:Color LaserJet 4700、ヒューレットパッカード社製)を用いて評価した。具体的には、上記カラーレーザープリンタ用のマゼンタプリントカートリッジを改造して上記現像ローラを該マゼンタプリントカートリッジに装着した。画像出力に先立ち、上記改造したプリントカートリッジを上記カラーレーザープリンタに装着して、温度23℃/相対湿度50%の試験環境に24時間放置した。現像剤は上記マゼンタプリントカートリッジに搭載されている非磁性一成分のマゼンタ現像剤をそのまま使用した。また、記録用紙は、キヤノン社製のCLC(カラーレーザーコピア)用紙(A4サイズ、坪量=81.4g/m2)を用いた。
【0124】
次に、記録用紙の縁10mmを残して記録用紙の全面に、上記各々の試験環境下でベタ画像を1枚出力した。出力されたベタ画像の濃度を、反射濃度計RD918(商品名、マクベス社製)にて測定した。画像濃度は、記録用紙を横方向に4等分する3本の線と、記録用紙を縦方向に4等分する3本の線の交点(合計9ヶ所)で測定した。9ヶ所の画像濃度の相加平均値を、各々の試験環境下における画像濃度とした。通常、ベタ部の画像濃度は、1.00以上あれば通常の使用に耐えるレベルであり、1.10以上が好ましく、1.20以上であるとより好ましい。
【0125】
また、温度32℃/相対湿度85%及び温度35℃/相対湿度85%の2種類の試験環境において、上記と同様にして画像濃度を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0126】
(実施例2)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料2に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物2の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0127】
(実施例3)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料3に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物3の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0128】
(実施例4)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料4に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを試作し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物4の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0129】
(実施例5)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料5に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物5の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0130】
(実施例6)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料6に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物6の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0131】
(実施例7)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料7に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物7の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0132】
(実施例8)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料8に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物8の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0133】
(実施例9)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料9に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物9の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0134】
(実施例10)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料11に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを試作し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物10の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0135】
(実施例11)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料12に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率が1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物11の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0136】
(実施例12)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料13に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は12μm、体積抵抗率は1×1011Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは20μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し5質量%[10÷(100+60+10+17+13)×100=5]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0137】
(実施例13)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料14に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は10μm、体積抵抗率は1×109Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは23μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し10質量%[10÷(100+50+20+17+13)×100=10]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0138】
(実施例14)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料15に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は7μm、体積抵抗率は5×109Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは25μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し12質量%[24÷(100+46+24+17+13)×100=12]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0139】
(実施例15)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料16に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は3μm、体積抵抗率は1×1011Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは13μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し0.2質量%[0.4÷(100+69.6+0.4+17+13)×100=0.2]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0140】
(実施例16)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料17に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は30μm、体積抵抗率は1×108Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは2μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し0.1質量%[0.2÷(100+69.8+0.2+17+13)×100=0.1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0141】
(実施例17)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料18に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は10μm、体積抵抗率は1×1010Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは20μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し0.05質量%[0.1÷(100+69.9+0.1+17+13)×100=0.05]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0142】
(実施例18)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料19に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は20μm、体積抵抗率は1×108Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは12μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0143】
(実施例19)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料20に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1011Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0144】
(実施例20)
下記原材料を準備した。
・下記化学式(7)で示されるポリプロピレングリコール 70質量部
(商品名:アクトコールDiol−3000、三井武田ケミカル株式会社製)
・カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学社製) 19質量部
・トリレンジイソシアネート 10質量部
(略称:TDI、商品名:コスモネートT−100、三井武田ケミカル株式会社製)
・シリコーン化合物1 1質量部
【0145】
【化9】

【0146】
ボールミルで上記ポリプロピレングリコールとカーボンブラックとを攪拌し分散液Aを作製した。次に、該分散液Aに、上記トリレンジイソシアネートと、シリコーン化合物1を加え、2分間攪拌し分散液Bを得た。一方、実施例1と同様にして軸体を該金型のキャビティ内に設置し、予め温度115℃に加熱しておいた金型内に上記分散液Bを流し込んで、2時間硬化させた。
硬化後に軸体と一体となったポリウレタン樹脂を金型から取り出し、温度110℃で24時間2次架橋を行いローラを得た。次に、得られたローラの表面を、粒度80番の砥石(商品名:PTといし、テイケン社製)を用いて研磨して、軸体の外周面上に弾性層を有する現像ローラを得た。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は6mm、体積抵抗率は1×109Ωcmであり、該弾性層表面の十点平均粗さRzjisは20μmであった。
またシリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[1÷(70+19+10+1)×100(%)]であった。
得られた現像ローラの、画像濃度は実施例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0147】
(比較例1)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料21に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物の含有量は、該弾性層の質量に対し0質量%[0÷(100+70+0+17+13)×100=0]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
本比較例では、弾性層用塗料の配合から明らかなように、弾性層は、シリコーン化合物を含有していない。
【0148】
(比較例2)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料22に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを試作し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーンゴム化合物13の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0149】
(比較例3)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料23に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1011Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物1の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。
【0150】
(比較例4)
弾性層用塗料1を弾性層用塗料10に変更した以外は、実施例1と同様にして現像ローラを作製し、評価した。
得られた現像ローラの弾性層の層厚は15μm、体積抵抗率は1×1012Ωcmであり、十点平均粗さRzjisは18μmであった。また、シリコーン化合物10の含有量は、該弾性層の質量に対し1質量%[2÷(100+68+2+17+13)×100=1]であった。
得られた現像ローラの画像濃度の評価結果は表4に示す。

【0151】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の現像ローラの実施形態の一例の構成を示す軸方向の断面図である。
【図2】本発明の現像ローラの実施形態の他の一例の構成を示す軸方向の断面図である。
【図3】本発明の電子写真用画像形成装置の一例を示す断面概略図である。
【図4】本発明の電子写真プロセスカートリッジの一例を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0153】
1 軸体
2 弾性層
21 感光ドラム
22 帯電部材
23 LED光またはレーザー光
24 現像ローラ
25 現像剤供給ローラ
26 現像ブレード
27 中間転写ベルト
28 一次転写部材
29 二次転写部材
30 クリーニング部材
31 定着装置
32 記録用紙
34 現像剤容器
100 現像ローラ
200 現像ローラ
201 樹脂層
202 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体と、該導電性軸体の外周面上に形成された弾性層とを有する現像ローラであって、前記弾性層が、芳香環を有するポリウレタン樹脂と、下記化学式(1)で示されるアラルキル変性シリコーン化合物を含有する樹脂組成物から構成されていることを特徴とする現像ローラ。
(CH33SiO・(A)p・(B)q・(C)r・Si(CH33 (1)
(式中、A、B及びCは各々繰り返し単位を表し、該繰り返し単位A、B及びCの並び順は任意であり、Aは、下記化学式(2)で表される繰り返し単位を示し、
【化1】

Bは、下記化学式(3)で表される繰り返し単位を示し、
【化2】

(式中、R1は、炭素数が2以上18以下のアルキル基を示す。)
Cは、下記化学式(4)で表される繰り返し単位を示し、
【化3】

(式中、R2は、炭素数が2または3のアルキレン基を示し、R3乃至R7は、各々独立に、炭素数が1以上4以下のアルキル基または水素原子を示す。)
p及びrは、各々独立に1以上の整数を示し、qは、0または1以上の整数を示す。)
【請求項2】
前記導電性軸体と前記弾性層との間に、更に、樹脂層を有することを特徴とする請求項1記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記弾性層が含有するアラルキル変性シリコーン化合物が、前記弾性層の質量に対し0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記化学式(4)における、R3乃至R7が全て水素原子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記化学式(4)における、R2がプロピレン基であることを特徴とする、請求項4記載の現像ローラ。
【請求項6】
静電潜像を担持する像担持体に対向した状態で現像剤を担持する現像ローラと、該現像ローラに担持された現像剤を摩擦帯電しながら該現像剤の層厚を規制する現像ブレードとを備え、該現像ローラの表面に現像剤の薄膜を形成し、該現像ローラを、前記像担持体に接触させて該像担持体の表面に現像剤を付与することにより静電潜像を現像剤像として可視化する電子写真プロセスカートリッジにおいて、前記現像ローラが、請求項1乃至5のいずれかに記載の現像ローラであることを特徴とする、電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項7】
静電潜像を担持するための像担持体と、該像担持体を一次帯電するための帯電装置と、一次帯電された像担持体に静電潜像を形成するための露光装置と、該静電潜像を現像剤により現像して現像剤像を形成するための現像装置と、該現像剤像を転写材に転写するための転写装置とを有する電子写真用画像形成装置であって、前記現像装置として、請求項6記載の電子写真プロセスカートリッジを有することを特徴とする電子写真用画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−299246(P2008−299246A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147920(P2007−147920)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】