説明

現像剤担持体、その製造方法及び現像装置

【課題】長期の使用によっても優れた帯電付与性を維持することのできる現像剤担持体の提供。
【解決手段】基体及び樹脂層を有し、該樹脂層が特定構造の3つのユニットを有するアクリル樹脂及び導電性粒子を含有している現像剤担持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いる現像剤担持体、その製造方法及び現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像の形成に用いる現像剤(トナー)に適正な摩擦帯電量を付与することを目的として、特許文献1には、荷電制御剤として第4級アンモニウム塩基含有共重合体を樹脂層中に含有する現像剤担持体が提案されている。樹脂層中に第4級アンモニウム塩基含有共重合体を含有させた現像剤担持体を用いることで、トナーの摩擦帯電量を高める現像装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−312136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、特許文献1に係る現像剤担持体は、樹脂層の結着樹脂と第4級アンモニウム塩基含有共重合体との相溶性が必ずしも良好でなく、荷電制御剤及び導電性粒子の分散均一性が悪くなることがあった。この場合、特に一成分の現像剤に対しては、局所的なトナーのチャージアップの如き摩擦帯電不良を生じさせることがあった。また、上記の第4級アンモニウム塩基含有共重合体だけで樹脂層を形成した場合、樹脂層の耐久性に課題を生じる。
【0005】
そこで本発明の目的は、トナーへの均一な摩擦帯電付与性に優れ、且つ、その帯電付与性能が長期の使用によっても低下しにくい現像剤担持体およびその製造方法の提供にある。また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成可能な現像装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る現像剤担持体は、基体及び樹脂層を有し、該樹脂層は、下記式(1)で示されるユニット、下記式(2)で示されるユニットおよび下記式(3)で示されるユニットを有するアクリル樹脂と導電性粒子とを含有していることを特徴とする:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。*は、式(3)中の**との結合部を示す。]、
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R5、R6およびR7は各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、A-は、アニオンを示す。]、
【0011】
【化3】

【0012】
[式中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。**は、式(1)中の*との結合部を示す。]。
【0013】
また、本発明に係る現像剤担持体の製造方法は、基体及び樹脂層を有する現像剤担持体の製造方法において、該樹脂層は、アクリル樹脂、及び導電性粒子を少なくとも含有しており、該アクリル樹脂は、下記重合反応〔A〕及び〔B〕により得られることを特徴とする現像剤担持体の製造方法である:
重合反応〔A〕;下記式(5)で示されるモノマー及び下記式(6)で示されるモノマーのラジカル重合反応、
重合反応〔B〕;下記式(5)で示されるモノマーの水酸基同士の脱水重縮合反応、
【0014】
【化4】

【0015】
[式中、R12は水素原子又はメチル基を示し、R13は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。]、
【0016】
【化5】

【0017】
[式中、R14は水素原子又はメチル基を示し、R15は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R16、R17およびR18は各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、A-は、アニオンを示す。]。
【0018】
また本発明に係る現像装置は、トナー粒子を有する負帯電性の現像剤と、該現像剤を収容している容器と、該容器に貯蔵された該現像剤を担持搬送するための現像剤担持体と、現像剤層厚規制部材とを有する現像装置であって、該現像剤担持体が上記の現像剤担持体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、トナーに対する均一な摩擦帯電付与能が高く、且つ長期の使用によっても当該能力が変化しにくい現像剤担持体および現像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る現像装置の一態様を示す断面図である。
【図2】本発明に係る現像装置の他の態様を示す断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置の更に他の態様を示す断面図である。
【図4】本発明に係る現像装置の画質評価に用いた漢字の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る現像剤担持体は図1に示したように、基体102及び基体102の周面に形成された樹脂層101を有している。樹脂層101は特定の構造を有する3つのユニットを有するアクリル樹脂と導電性粒子とを含有している。
【0022】
〔アクリル樹脂〕
本発明に係るアクリル樹脂は、負摩擦帯電性のトナーの摩擦帯電量を高める役割を有する。更に、該アクリル樹脂が架橋構造を有することにより、結着樹脂として強度を高めることができるため、耐摩耗性を向上させることができる。その結果、長期の使用によっても、高い画像濃度を維持でき、トナーの飛び散りの発生を抑制できる。かかる効果をもたらすアクリル樹脂は、下記式(1)で示されるユニット(以降「ユニット(1)」ともいう)、式(2)で示されるユニット(以降「ユニット(2)」ともいう)、及び式(3)で示されるユニット(以降「ユニット(3)」ともいう)を有する。
【0023】
【化6】

【0024】
[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。*は、式(3)中の**との結合部を示す。]、
【0025】
【化7】

【0026】
[式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R5、R6およびR7は各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、A-は、アニオンを示す。]、
【0027】
【化8】

【0028】
[式中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。**は、式(1)中の*との結合部を示す。]。
【0029】
ユニット(1)とユニット(3)とは化学結合しており、3次元的に架橋されているため、本発明に係るアクリル樹脂は高い強度を有する。これにより、本発明に係る現像剤担持体の樹脂層が高い耐摩耗性を示す。式(1)中のR1と式(3)中のR8、式(1)中のR2と式(3)中のR9は、それぞれ同じであることが好ましい。それぞれを同じとすることで、同一のモノマーから製造することが可能となる。
【0030】
ユニット(2)は、現像剤担持体の、負摩擦帯電性のトナーの摩擦帯電量の向上に寄与する。式(2)中のR5、R6およびR7のいずれかがオクタデシル基を超える長鎖アルキル基(炭素数19以上)のユニットを有する場合は、結晶性が高くなって溶媒との相溶性が相対的に低下する傾向にある。そこで、均一な樹脂層を得るために、R5〜R7は炭素数1〜18のアルキル基とする。式(2)中のR5、R6およびR7から選ばれる1つ以上のアルキル基を炭素数8乃至18の長鎖アルキル基とすることは、現像剤担持体の負摩擦帯電性トナーの摩擦帯電性能をより高めることができ、好ましい。式(2)中のA-は、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸類、カルボン酸、スルホン酸の如き有機酸類におけるアニオンである。A-は、摩擦帯電性のトナーの摩擦帯電量をさらに向上させるため、メチルスルホン酸イオン又はパラトルエンスルホン酸イオンであることがより好ましい。
【0031】
尚、上記のアクリル樹脂の帯電付与能をより良く制御するために、上記ユニット(1)乃至ユニット(3)以外に、下記式(7)で示される他のユニット(以降「ユニット(7)」ともいう)を含有しても良い。
【0032】
【化9】

【0033】
[式中、R19は、水素原子又はメチル基を示し、R20は、炭素数1乃至18のアルキル基を示す。]。
【0034】
本発明で使用可能なアクリル樹脂は、ヒドロキシル基変性アクリル系モノマーと第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーのラジカル重合反応〔A〕及び水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕により製造することが出来る。ヒドロキシル基変性アクリル系モノマーとしては、下記式(5)で示されるモノマー(以降「モノマー(5)」ともいう)が挙げられる。
【0035】
【化10】

【0036】
式(5)中、R12は水素原子又はメチル基を示し、R13は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。式(5)の中でも、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミドが反応を制御する点で好ましい。第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーとしては、下記式(6)で示されるモノマー(以降「モノマー(6)」ともいう)が挙げられる。
【0037】
【化11】

【0038】
式(6)中、R14は、水素原子又はメチル基を示し、R16、R17およびR18は、各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R15は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、A-は、アニオンを示す。式(6)中のR16、R17およびR18の何れかがオクタデシル基の炭素数を超える長鎖アルキル基(炭素数19以上)のモノマーは、結晶性が高くなり、溶媒との相溶性が相対的に低下する。そのため、アクリル樹脂の製造の容易性から、R16〜R18は炭素数1〜18のアルキル基とする。式(6)中のR16、R17およびR18のうちの少なくとも一つのアルキル基が炭素数8乃至18の長鎖アルキル基を有するモノマーである場合は、樹脂層が負摩擦帯電性のトナーの摩擦帯電量をより高めることができるため、より好ましい。モノマー(5)及びモノマー(6)を用いて製造することで、本発明のアクリル樹脂を容易に得ることができる。
【0039】
〔重合反応〕
ラジカル重合反応〔A〕及び水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕は、同時に行っても構わないが、ラジカル重合反応〔A〕の後に、水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕をおこなうことが、残留モノマーの量を低減できるため好ましい。
【0040】
ラジカル重合反応〔A〕としては、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることできるが、中でも反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましい。溶液重合法で使用する溶媒としては、アクリル樹脂が均一に溶解するものであれば構わないが、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコールの如き低級アルコールが好ましい。低級アルコールとすることで、塗料とした時に低粘度となり、樹脂層の成膜性が良好となりやすい。また、必要に応じて他の溶媒を混合して使用しても構わない。溶液重合法で使用する溶媒とモノマー成分の比は、モノマー成分100質量部に対して、溶媒25質量部以上400質量部以下で行うことが適切な粘度を制御する点で好ましい。モノマー混合物の重合は、例えば、モノマー混合物を重合開始剤の存在下で不活性ガス雰囲気下、温度50℃以上100℃以下に加熱することにより行うことができる。重合開始剤としては以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)。重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は重合開始剤をモノマー溶液に添加して重合を開始するが、未反応モノマーを低減するために重合開始剤の一部を重合の途中に添加しても良い。また、紫外線や電子線の照射によって重合を促進させる方法も使用することが可能であり、これらの手法を組み合わせても構わない。重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対し0.05質量部以上30質量部以下、特には、0.1質量部以上15質量部以下である。重合開始剤の使用量をこの範囲にすることで、残留モノマーの量が低減でき、アクリル樹脂の分子量を制御することが容易である。重合反応の温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、モノマー成分の組成に応じて設定することができるが、温度40℃以上150℃以下で行うことが安定して重合反応を進める点で好ましい。また、モノマー(6)は、下記式(8)で示されるモノマー(以降「モノマー(8)」ともいう)を4級化剤により4級化させて生成したものを用いることができる。
【0041】
【化12】

【0042】
式(8)中、R14は、水素原子またはメチル基を示し、R16およびR17は炭素数1乃至18のアルキル基を示し、R15は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。4級化剤の具体例を以下に挙げる。ブチルブロマイド、2−エチルヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、ラウリルブロマイド、ステアリルブロマイド、ブチルクロライド、2−エチルヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ラウリルクロライド等。4級化剤の使用量は、モノマー(8)1モルに対して、0.8モル以上1.0モル以下が好ましい。かかるモノマーの4級化は、例えば、モノマーと4級化剤とを、溶媒中で温度60℃以上90℃以下に加熱することにより行うことができる。
【0043】
また、上記モノマー(5)とモノマー(8)を共重合させた後に、さらに前記の4級化剤で4級化させることによって、所望の4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体を得ることも可能である。その他に、例えば、モノマー(8)をメチルクロライドの如きアルキルハライドで4級化を行った後、モノマー(5)と共重合させる。得られた第4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体を、p−トルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸の如き酸で処理して対イオン交換を行い、目的のアニオン種とした第4級アンモニウム塩基含有アクリル共重合体とすることも可能である。
【0044】
水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕としては、前記溶液重合法でラジカル重合反応させたアクリル樹脂溶液を温度100℃以上160℃以下で加熱することで、溶媒の揮発と同時に反応を行うことができる。尚、水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕が進みすぎるとアクリル樹脂が架橋し、成形加工することが困難になるため、基体上に形成した後、加熱させることが好ましい。また、アクリル樹脂の帯電付与能を制御するために、もしくは、溶媒との溶解性を制御するために、上記以外のその他のモノマーをラジカル重合時に使用しても良い。その他のモノマーとしては、下記式(9)で示されるモノマーが挙げられる。
【0045】
【化13】

【0046】
式(9)中、R21は、水素原子又はメチル基を示し、R22は、炭素数1乃至18のアルキル基を示す。式(9)中のR22の炭素数は、溶媒との溶解性を制御するために適宜設定することが可能である。上記アクリル樹脂中の各ユニットの組成比率は、アクリル樹脂中のユニット(1)とユニット(3)の合計モル数をa、ユニット(2)のモル数をb、その他のユニット(7)のモル数をcとする時、a/(a+b+c)が0.3以上0.8以下、b/(a+b+c)が0.2以上0.7以下、且つ、c/(a+b+c)が0.0以上0.5以下であることが好ましい。a/(a+b+c)が0.3以上であると、アクリル樹脂の架橋点が増加し、耐摩耗性を向上させやすくなる。また、b/(a+b+c)が0.2以上であると、アクリル樹脂のトナーに対する帯電付与能が増加し、負摩擦帯電性のトナーの摩擦帯電量を高めやすい。更に、c/(a+b+c)が0.5以下であると、ユニット(1)乃至ユニット(3)の導入による前記の効果を得やすい。なお、前記組成比率において、ユニット(1)及びユニット(3)がアクリル樹脂中に複数種含有される場合は、ユニット(1)及びユニット(3)の構造を満たす複数種のユニット組成比の合計モル数をaとする。また、ユニット(2)がアクリル樹脂中に複数種含有される場合は、ユニット(2)の構造を満たす複数種のユニット組成比の合計モル数をbとする。更に、ユニット(7)がアクリル樹脂中に複数種含有される場合は、ユニット(7)の構造を満たす複数種のユニット組成比の合計モル数をcとする。
【0047】
〔フェノール樹脂、メラミン樹脂〕
樹脂層の耐摩耗性を向上させるために、樹脂層は、フェノール樹脂又はメラミン樹脂を含有し、且つ、前記アクリル樹脂は、下記式(4)で示されるユニット(以降「ユニット(4)」ともいう)を有し、***の位置で該フェノール樹脂又は該メラミン樹脂と結合していることが好ましい。
【0048】
【化14】

【0049】
式(4)中、R10は、水素原子又はメチル基を示し、R11は、炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。フェノール樹脂又はメラミン樹脂を有することで、フェノール樹脂又はメラミン樹脂中に含まれているメチロール基とヒドロキシル基変性アクリルモノマーが脱水重縮合反応を起こす。その結果、アクリル樹脂中にユニット(4)を有し、アクリル樹脂の架橋構造がより強靭となる。アクリル樹脂の架橋構造がより強靭となることで、樹脂層の耐摩耗性がより向上しやすくなるため、耐久使用中において現像剤担持体の現像特性の変化を抑制しやすくなる。また、本発明のアクリル樹脂は、フェノール樹脂もしくはメラミン樹脂と反応するため、架橋構造が緻密になり、樹脂層中で均一に存在しやすくなるため、トナーへの摩擦帯電付与が安定しやすくなる。本発明のアクリル樹脂とフェノール樹脂又はメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を併用する場合は、まず、ヒドロキシル基変性アクリル系モノマーと第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系モノマーのラジカル重合反応〔A〕を行う。その後、水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕及び〔C〕を行うことにより製造することが出来る。尚、水酸基同士の脱水重縮合反応〔B〕は、ヒドロキシル基変性アクリル系モノマー(5)の水酸基同士の反応を示す。また、水酸基同士の脱水重縮合反応〔C〕は、レゾール型フェノール樹脂又はメラミン樹脂のメチロール基とヒドロキシル基変性アクリル系モノマー(5)の水酸基との反応を示す。
【0050】
〔導電性粒子〕
本発明では樹脂層の電気抵抗値を調整するために、導電性粒子が樹脂層中に含有されている。導電性粒子の材質としては、金属、金属酸化物、カーボンブラックやグラファイトの如き炭化物が挙げられる。中でもカーボンブラック、特に、導電性のアモルファスカーボンが好適に用いられる。樹脂層の体積抵抗値の目安としては、104Ω・cm以下、特には10-3Ω・cm以上103Ω・cm以下である。
【0051】
〔樹脂層の表面の粗さ〕
樹脂層の表面粗さの目安としては、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)で0.3μm〜2.5μmである。樹脂層の粗さを所望の値にする方法としては、樹脂層を形成する基体にサンドブラストにより粗さを付与し、その上に樹脂層を形成する方法や、樹脂層に凹凸付与粒子を含有させる方法がある。
【0052】
〔樹脂層の製造方法〕
次に樹脂層の製造方法について説明する。樹脂層は、例えば以下の工程により形成することが可能である。
〔1〕各モノマーをラジカル重合させてアクリル樹脂溶液を製造する工程、
〔2〕前記アクリル樹脂溶液と導電性粒子を分散混合し塗料化させる工程、
〔3〕前記分散混合した塗料を基体上に塗工する工程、
〔4〕前記基体上に塗工された塗料を乾燥固化あるいは硬化させる工程。
【0053】
工程〔1〕のラジカル重合(重合反応〔A〕)方法としては、上記溶液重合法が好ましい。工程〔2〕の分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルの如きビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また、本発明のアクリル樹脂以外に熱硬化性樹脂を併用する場合や凹凸付与粒子の如き他の材料を使用する場合は、工程〔2〕の途中で各成分を分散混合することが好ましい。
【0054】
工程〔3〕の塗料の基体上への塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法の如き公知の方法が適用可能であるが、樹脂層中の各成分を均一にする為には、スプレー法が好ましい。
【0055】
工程〔4〕の乾燥固化あるいは硬化には、熱風乾燥炉、赤外線ヒーターの如き公知の加熱装置が好適に利用可能である。この工程により、架橋型アクリル系モノマーの水酸基同士の脱水重縮合反応(重合反応〔B〕)が起こる。
【0056】
また、アクリル樹脂以外にレゾール型フェノール樹脂又はメラミン樹脂も使用する場合は、レゾール型フェノール樹脂のメチロール基又はメラミン樹脂のメチロール基とヒドロキシル基変性アクリル系モノマーの水酸基の脱水重縮合反応(重合反応〔C〕)が起こる。
【0057】
また、樹脂層の膜厚は、均一な膜厚に成形することが容易であることから、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは40μm以下であり、更に好ましくは4μm〜30μmである。
【0058】
工程〔4〕の乾燥固化あるいは硬化させる方法としては、熱風乾燥機や赤外線ヒーターの如き公知の装置を用い、温度100℃以上160℃以下で処理することが好ましい。
【0059】
〔基体〕
基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状の部材が挙げられる。基体の材質としてはアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の非磁性の金属又は合金が挙げられる。
【0060】
〔現像装置〕
本発明に係る現像装置は、トナー粒子を有する負帯電性の現像剤と、該現像剤を収容している容器と、該容器に貯蔵された該現像剤を担持搬送するための現像剤担持体と、現像剤層厚規制部材とを有する。そして、該現像剤層厚規制部材により該現像剤担持体上に現像剤層を形成しながら該現像剤担持体上の該現像剤を静電潜像担持体と対向する現像領域へ搬送し、該静電潜像担持体の静電潜像を該現像剤により現像し、トナー画像を形成するものである。そして、該現像剤担持体が、上記した本発明に係る現像剤担持体である。
【0061】
本発明に係る現像装置は、磁性一成分現像剤や非磁性一成分現像剤を用いた非接触型現像装置及び接触型現像装置や、二成分現像剤を用いた現像装置のいずれにも適用することができる。特に、本発明の現像装置としては、現像剤担持体上の現像剤の摩擦帯電量にばらつきが生じやすい傾向を有する磁性一成分非接触型現像装置や、非磁性一成分非接触型現像装置等の非接触型現像装置に好適に適用することができる。
【0062】
図1は本発明に係る磁性一成分非接触型現像装置の断面図である。現像剤を収容するための容器(現像容器109)と、この容器に貯蔵された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤(磁性トナー、不図示)を担持搬送するための現像剤担持体105を有している。現像剤担持体105には、基体102である金属円筒管上に樹脂層101が被覆形成された現像スリーブ103が設けられている。また、現像スリーブの内部には磁石(マグネットローラ)104が配置され、磁性トナーを表面上に磁気的に保持するようになっている。一方、静電潜像を担持する静電潜像担持体(例えば、感光体ドラム)106は、矢印B方向に回転する。そして、現像剤担持体105と感光体ドラム106とが対向する現像領域Dにおいて、現像剤担持体105上の磁性トナーを静電潜像に付着させ、磁性トナー像を形成する。かかる現像装置を用いた現像方法を以下に説明する。現像容器109内へ、現像剤補給容器(不図示)から現像剤供給部材(スクリューなど)115を経由して磁性トナーが送り込まれてくる。現像容器109は、第一室112と第二室111に分割されており、第一室112に送り込まれた磁性トナーは攪拌搬送部材110により現像容器109及び仕切り部材113により形成される隙間を通過して第二室111に送られる。第二室111中には攪拌部材114が設けられ、磁性トナーの滞留を抑制する。現像容器には、現像剤担持体105に約50μm以上500μm以下の間隙を有して対向するように、現像剤層厚規制部材である磁性ブレード107が装着される。マグネットローラ104の磁極N1からの磁力線を磁性ブレード間に集中させ、現像剤担持体が矢印A方向に回転し、現像剤担持体105上に磁性トナーの薄層を形成する。尚、磁性ブレード107に代えて非磁性の現像剤層厚規制部材を使用してもよい。磁性トナーは相互間及び現像剤担持体105表面の樹脂層101間の摩擦により、感光体ドラム106上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。現像剤担持体105上に形成される磁性トナー層の厚みは、現像領域Dにおける現像剤担持体105と感光体ドラム106との間の最小間隙よりも更に薄いことが好ましい。また、現像剤担持体105に担持された磁性トナーを感光体ドラム上の静電潜像へ飛翔させ、これを現像するため、現像剤担持体105に現像バイアス電源108から現像バイアス電圧を印加することが好ましい。現像剤担持体105に印加する現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の電位と背景部の電位との中間値に相当する電圧が好ましい。現像された画像の濃度を高め、かつ階調性を向上させるために、現像剤担持体105に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合にも、現像剤担持体105に印加する電圧として、静電潜像の電位と背景部の電位との中間の値に相当する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧が好ましい。このとき、高電位の静電潜像に磁性トナーを付着させる正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に摩擦帯電する磁性一成分現像剤を使用する。低電位の静電潜像に磁性トナーを付着させる反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に摩擦帯電する磁性トナーを使用する。ここで、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。
【0063】
図2は本発明に係る、磁性一成分非接触型現像装置の他の例の断面図である。現像剤を収容するための容器(現像容器209)と、この容器に貯蔵された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤(磁性トナー、不図示)を担持搬送するための現像剤担持体205を有している。現像剤担持体205には、基体202である金属円筒管上に樹脂層201が被覆形成された現像スリーブ203が設けられている。また、現像スリーブの内部には磁石(マグネットローラ)204が配置され、磁性トナーを表面上に磁気的に保持するようになっている。一方、静電潜像を担持する感光体ドラム206は、矢印B方向に回転する。そして、現像剤担持体205と感光体ドラム206とが対向する現像領域Dにおいて、現像剤担持体205上の磁性トナーを静電潜像に付着させ、磁性トナー像を形成する。かかる現像装置を用いた現像方法を以下に説明する。現像容器209は、第一室212と第二室211に分割されており、第一室212に充填された磁性トナーは攪拌搬送部材210により現像容器209及び仕切り部材213により形成される隙間を通過して第二室211に送られる。第二室211中には攪拌部材214が設けられ、磁性トナーが滞留するのを防止する。現像容器には、ウレタンゴム、シリコーンゴムの如きゴム製、あるいはリン青銅、ステンレス鋼の如き金属製の弾性板を有する弾性ブレード207が備えられている。この弾性ブレード207は、現像剤担持体205に、トナーを介して接触又は押し当てられ、トナーは図1に示す非接触型現像装置と比較してより強い規制を受けて現像剤担持体205上に薄い層に形成される。この種の現像装置においては、トナーは現像剤担持体表面の導電性の不均一さの影響を受けやすく、現像剤担持体上のトナー層は摩擦帯電量がばらつきやすく、摩擦帯電量の分布がブロードになりやすい。しかしながら、このような現像装置においても、本発明の現像剤担持体を用いることで、上記現像剤担持体表面の導電性が均一なため、トナーの摩擦帯電量分布をシャープにすることができる。ここで、現像剤担持体205に対する弾性ブレード207の当接圧力は、線圧4.9N/m以上49N/m以下であることが、トナーの規制を安定化させ、トナー層の厚みを好適に規制できる点で好ましい。弾性ブレード207の当接圧力を線圧4.9N/m以上とすると、現像剤担持体上に形成するトナー層の厚さを高精度に制御することができ、得られる画像においてカブリやトナーもれの発生を抑制することができる。また、線圧49N/m以下とすると、トナーの摺擦力が適度な大きさとなり、トナーの劣化や現像剤担持体205及び弾性ブレード207へのトナーの融着を防止することができる。また、現像剤担持体205に担持された磁性トナーを感光体ドラム上の静電潜像へ飛翔させ、これを現像するため、現像剤担持体205に現像バイアス電源208から現像バイアス電圧を印加することが好ましい。上記例は磁性一成分非接触型であるが、本発明の現像装置は、現像剤担持体上のトナーの層厚が、現像領域Dにおける現像剤担持体と感光ドラムとの間の間隙距離以上の厚さに形成される、磁性一成分接触型現像装置にも適用することができる。
【0064】
図3は本発明に係る、非磁性トナーを用いる非磁性一成分非接触型現像装置の断面図である。静電潜像を担持する感光体ドラム306は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体305は、基体(金属製円筒管)302とその表面に形成される樹脂層301から構成されている。基体として金属製円筒管の替わりに円柱状部材を用いることもでき、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)が用いられるため、基体302の内部には磁石は内設されていない。このような現像装置における現像方法を以下に説明する。現像容器309内には非磁性一成分現像剤312(非磁性トナー)を撹拌搬送するための撹拌搬送部材310が設けられている。更に、現像容器内には、現像剤担持体305に非磁性トナー312を供給し、かつ現像後の現像剤担持体305の表面に残存する非磁性トナー312を剥ぎ取るための、現像剤供給剥ぎ取り部材(RSローラ)311が現像剤担持体305に当接して設けられている。RSローラ311が現像剤担持体305と同方向又は反対方向に回転することにより、現像容器309内で現像剤担持体305に残留する非磁性トナー312を剥ぎ取り、新たな非磁性トナー312が供給される。現像剤担持体305は、供給された非磁性トナー312を担持して、矢印A方向に回転することにより、現像剤担持体305と感光体ドラム306とが対向した現像領域Dに非磁性トナー312を搬送する。現像剤担持体305に担持されている非磁性トナーは、現像剤層厚規制部材307により現像剤担持体305の表面に押し当てられ、その厚みが一定に形成される。非磁性トナーは相互間、現像剤担持体305との間、現像剤層厚規制部材307との間の摩擦により、感光体ドラム306上の静電潜像を現像するのに十分な摩擦帯電が付与される。現像剤担持体305上に形成される非磁性トナー層の厚みは、現像部における現像剤担持体305と感光体ドラム306との間の最小の間隙よりも薄くてもよい。現像剤担持体305に担持された非磁性トナー312を感光体ドラム306の静電潜像へ飛翔させ、これを現像するため、現像剤担持体305に現像バイアス電源308から現像バイアス電圧を印加することも可能である。現像バイアス電圧308としては、直流電圧、交番バイアス電圧いずれであってもよく、その電圧も上記と同様の電圧とすることが好ましい。上記現像装置の現像容器内のRSローラ311は、例えば、樹脂、ゴム、スポンジの如き弾性ローラが好ましい。RSローラ311の代わりに、場合により、ベルト、ブラシ部材を用いてもよい。弾性ブレード307も図2に示す磁性一成分非接触型現像装置の弾性ブレード207と同様の材質、同様の湾曲形状を有し、現像剤担持体305に押し当てられるように設置されたものが好ましい。現像剤担持体305に対する弾性ブレード307の当接は、図2に示す磁性一成分非接触型における現像剤担持体205に対する弾性ブレード207の場合と同じ当接力によることが同様の理由から好ましい。上記例は非磁性一成分非接触型であるが、現像剤担持体上の非磁性一成分現像剤の層厚が、現像領域Dにおける現像剤担持体と感光体ドラムとの間の間隙距離以上の厚さに形成される、非磁性一成分接触型現像装置にも好適に適用できる。
【0065】
〔現像剤〕
本発明に係る現像剤(トナー)は、結着樹脂に着色剤、荷電制御剤、離型剤、無機微粒子等を含む。磁性材料を必須成分とする磁性トナーであっても、磁性材料を含まない非磁性トナーであってもよい。質量平均粒径は、4μm以上10μm以下の範囲にあることが好ましい。トナーの摩擦帯電量あるいは画質及び画像濃度がバランスのとれたものとなるからである。トナーの質量平均粒径が10μm以下であれば、微小ドット画像の再現性が低下するのを抑制することができる。一方、トナーの質量平均粒径が4μm以上であれば、摩擦帯電不良によるカブリの発生や、濃度薄の発生を抑制することができる。トナーの結着樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂を使用することができる。中でもビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。上記トナーには摩擦帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に包含させる(内添する)、又はトナー粒子と混合して用いる(外添する)ことができる。荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが容易となる。
【0066】
一成分現像装置に適用する場合は、上記の帯電量をコントロールしたトナーを負帯電性の現像剤として用いることで、本発明の現像剤担持体の帯電付与能向上効果が得やすい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例における「部」及び「%」は、特に断らない限り、各々「質量部」及び「質量%」である。
【0068】
〔物性の測定方法〕
まず、本発明に関わる物性の測定方法について説明する。
【0069】
(1)アクリル樹脂の分析方法
アクリル樹脂のポリマーの構造は、現像剤担持体の樹脂層を削り取った試料を熱分解GC/MS装置:「Voyager」(商品名、サーモエレクトロン社製)で分析して求めた。なお、熱分解温度:600℃、カラム:HP−1(15m×0.25mm×0.25μm)、Inlet:温度300℃、Split:20.0、注入量:1.2ml/min、昇温:50℃(4min)−300℃(20℃/min)の条件で行った。
【0070】
(2)樹脂層の体積抵抗値
100μmの厚さのPETシート上に、7μm乃至20μmの樹脂層を形成し、抵抗率計:「ロレスタAP」(商品名、三菱化学社製)にて4端子プローブを用いて樹脂層の体積抵抗値を測定した。測定環境は温度20℃、湿度50%RHとした。
【0071】
(3)現像剤担持体表面の算術平均粗さRa
現像剤担持体表面の算術平均粗さRaはJIS B0601(2001)に基づき、表面粗さ計:「サーフコーダーSE−3500」(商品名、株式会社小坂研究所社製)を用いて測定した。測定条件としては、カットオフ0.8mm、評価長さ4mm、送り速度0.5mm/sとし、軸方向3点×周方向3点=9点について測定し、その平均値を当該試料の現像剤担持体表面の算術平均粗さRaとした。
【0072】
(4)凹凸付与粒子の体積平均粒径
凹凸付与粒子の体積平均粒径の測定装置として、レーザー回折型粒度分布計:「コールターLS−230型粒度分布計」(商品名、ベックマン・コールター株式会社製)を用いた。測定には、少量モジュールを用い、測定溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)を使用した。まず、IPAにて測定装置の測定系内を約5分間洗浄し、洗浄後バックグラウンドファンクションを実行した。次にIPA50ml中に、測定試料約10mgを加える。試料を懸濁した溶液を超音波分散機で約2分間分散処理し、試料液を得た後、測定装置の測定系内に試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)濃度が45%乃至55%になるように測定系内の試料濃度を調整した。その後に測定を行い、体積分布から算術した体積平均粒径を求めた。
【0073】
(5)樹脂層の膜厚
樹脂層の膜厚の測定には、レーザー光にて円筒の外径を測定するレーザー寸法測定器(コントローラ:「LS−5500」(商品名、株式会社キーエンス社製)及びセンサーヘッド:「LS−5040T」(商品名、株式会社キーエンス社製))を用いた。現像剤担持体固定治具及び現像剤担持体送り機構を取り付けた装置にセンサー部を別途固定し、現像剤担持体の外径寸法を測定した。測定は、現像剤担持体長手方向に対し30分割して30箇所測定し、更に現像剤担持体を周方向に90°回転させた後更に30箇所、計60箇所について行った。得られた測定値の平均値を当該試料の外径寸法とした。樹脂層形成前に基体の外径を測定しておき、樹脂層形成後に再び外径を測定し、その差分を樹脂層の膜厚とした。
【0074】
(6)現像剤(磁性トナー)の質量平均粒径D4
粒径測定装置:「コールターマルチサイザーIII」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて調製した約1%NaCl水溶液を使用した。電解液約100ml中に、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩約0.5mlを加え、さらに測定試料約5mgを加え試料を懸濁する。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記測定装置により、100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。この結果より、体積分布から求めた質量基準の質量平均粒径(D4)を求めた。
【0075】
<アクリル樹脂>
<<アクリル樹脂溶液A−1の製造例>>
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを付した4つ口セパラブルフラスコ内で、以下の材料を混合し、系が均一になるまで攪拌した。
・ジメチルアミノエチルメタクリレート(3級アミノ基含有モノマー):31.0質量部、
・ラウリルブロマイド(4級化剤):49.1質量部、
・イソプロピルアルコール:50質量部。
【0076】
上記材料を撹拌しながら、温度70℃まで昇温した後5時間攪拌して3級アミノ基含有モノマーの4級化を行い、4級アンモニウム塩基含有アクリル系モノマーである、(2−メタクリロイロキシエチル)ラウリルジメチルアンモニウムブロマイドを得た。得られた反応溶液を冷却した後、共重合成分として、N−メチロールアクリルアミド19.9質量部を反応系内に仕込み、系が均一になるまで撹拌した。次いで、撹拌を続けながら、反応系内の温度が70℃になるまで昇温した。そこに、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0質量部をイソプロピルアルコール50質量部に溶解した重合開始剤溶液を滴下ロートから1時間かけて添加した。滴下終了後、窒素導入下還流状態で更に5時間反応させ、さらにAIBNを0.2質量部添加した後1時間反応させて、重合反応を終了させた。この溶液に、p―トルエンスルホン酸を0.1質量部添加し、更にイソプロピルアルコールで希釈して固形分40%のアクリル樹脂溶液A−1を得た。得られたアクリル樹脂溶液を温度150℃で30分間加熱乾燥後のアクリル樹脂の分析を行った結果、アクリル樹脂は、式(10)のユニット、式(11)のユニット及び式(12)のユニットの共重合体であった。尚、アクリル樹脂の分析において、m/z=184のMSスペクトルのピークより、式(10)中の*と式(12)中の**とが結合していることを確認した。
【0077】
【化15】

【0078】
【化16】

【0079】
【化17】

【0080】
<<アクリル樹脂溶液A−2〜A−29及びa−30〜a−33の製造例>>
使用する共重合成分を表1に示した成分としたこと以外は、製造例A−1と同様にして、アクリル樹脂溶液A−2〜A−29及びa−30〜a−33を得た。なお、A−4、A−15、A−17、A−25及びA−29は重合反応終了後、イオン交換樹脂によりアニオンを臭素イオンからp−トルエンスルホン酸イオン、またはメタンスルホン酸イオンに交換した。製造例A−1と同様に分析した加熱乾燥後のアクリル樹脂の構造を表2に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
<その他樹脂、導電性粒子、及び凹凸付与粒子>
現像剤担持体に用いるアクリル樹脂以外のその他樹脂、導電性粒子及び凹凸付与粒子として以下の表A、表B及び表Cに示すものを使用した。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
〔実施例1〕
<現像剤担持体E−1の製造>
現像剤担持体E−1を以下の方法により製造した。先ず、下記の各材料を、混合し、サンドミル:「横型レディーミルNVM−03」(商品名、アイメックス社製)(直径1.0mmのガラスビーズを充填率85%)にて分散処理し、塗工液を得た。
・アクリル樹脂溶液A−1:固形分100質量部(溶液として250質量部)、
・導電性粒子C−1:6.7質量部、
・導電性粒子C−2:60質量部、
・凹凸付与粒子D−2:10質量部、
・イソプロピルアルコール:200質量部。
【0088】
「LASER JET4350」(商品名、ヒューレットパッカード社製)の純正カートリッジに組み込まれている現像剤担持体のアルミニウム製円筒管と同形状の物を基体として用意した。当該基体の両端部各6mmをマスキングした後、当該基体を、その軸が鉛直と平行となるように配置した。そして、当該基体を1500rpmで回転させ、エアスプレーガンを40mm/秒で下降させながら塗工液を塗布して硬化後の厚さが8μmとなるように塗膜を形成した。続いて温度150℃の熱風乾燥炉中で30分間加熱して塗膜を硬化させて現像剤担持体E−1を得た。
【0089】
<電子写真画像形成装置の形成、及びそれを用いた画像評価>
得られた現像剤担持体E−1にマグネットローラを組み付け、これをプリンター:「LASER JET4350」(商品名、ヒューレットパッカード社製)の純正カートリッジに組み込み、現像装置とした。これを上記プリンターに搭載し、下記の画像評価を行った。画像評価は、高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH;H/H)で実施した。尚、画像評価には、レターサイズの用紙「Business4200」(商品名、XEROX社製;75g/m2)を使用し、印字比率3%の文字画像をA4サイズの普通紙を縦送りで5万枚まで連続複写の画出し試験を行った。その結果を表4に示す。尚、(1)乃至(3)の画像評価は、それぞれ初期と5万枚画出し後に行った。
【0090】
(1)画像濃度
反射濃度計:「RD918」(商品名、マクベス社製)を使用し、ベタ画像を印字した際のベタ黒部の濃度を5点測定し、算術平均値を画像濃度とした。また、初期と5万枚画出し後の画像濃度の低下率を算出した。
【0091】
(2)濃度ムラ
ハーフトーン及びベタ黒画像を出力し、画像進行方向に走る、線状、帯状の濃度差について、下記基準にて評価した。濃度ムラは下記基準に基づいてランク付けを行い評価した。
A:画像にもスリーブ上にも濃度差が全く確認できない。
B:ハーフトーン画像上では軽微な濃度差が確認でき、ベタ黒画像上では確認できない。C:ベタ黒画像上で軽微な濃度差が確認でき、ハーフトーン画像上に目視で濃度差のわかる帯が確認される。
D:ハーフトーン画像上に反射濃度計で明確に測定できる濃度差が帯状に現れ、ベタ黒画像上でも目視で濃度差が確認できる。
【0092】
(3)画質評価
フォントサイズが4Pの図4に示す漢字の画像を出力し、当該画像の周囲へのトナーの飛び散りや当該画像のカスレを目視で観察し、下記基準にて画質を評価した。
A:倍率が10倍のルーペで見ても飛び散りのない鮮明な画像である。
B:目視で見る限り鮮明な画像である。
C:若干飛び散りが見られるものの実用上問題ない。
D:飛び散り目立ち、文字のカスレが確認できる。
【0093】
〔実施例2〜31及び比較例1〜4〕
<現像剤担持体E−2〜E−31及びF−32〜F−35の製造>
塗工液としてそれぞれ表3に示したものを用いた他は、実施例1と同様に現像剤担持体E−2〜E−31及びF−32〜F−35を作製した。
【0094】
<電子写真画像形成装置の形成、及びそれを用いた画像評価>
得られた現像剤担持体E−2〜E−31及びF−32〜F−35を実施例1と同様にカートリッジに組み込み、現像装置を得た。これらの現像装置を実施例1と同様にプリンターに搭載し、実施例1と同様に画像評価を行った。結果を表4に示す。
【0095】
【表6】

【0096】
【表7】

【0097】
表4の結果から見ても、実施例1乃至31の評価結果は良好であった。比較例1の現像剤担持体F−32は、アクリル樹脂中にユニット(1)及びユニット(3)を含有しておらず、耐摩耗性が不十分の為、初期と5万枚時の画像濃度差が悪く、また5万枚時の濃度ムラ、画質評価が悪かった。比較例2及び3の現像剤担持体F−33及びF−34は、アクリル樹脂中にユニット(2)を含有しておらず、帯電付与能が低い為、初期及び5万枚時の画像濃度が低く、また濃度ムラ、画質評価が悪かった。比較例4の現像剤担持体F−35は、アクリル樹脂の構造のR7のアルキル基の炭素数が22と大きく、導電性粒子との分散性が不十分の為、濃度ムラ、画質評価が悪くなった。
【0098】
〔実施例32〕
<現像剤担持体G−36の製造>
塗工液の組成を以下に示す割合とし、その他は実施例1と同様にして塗工液を得た。
・アクリル樹脂溶液A−1:固形分50質量部(溶液として125質量部)、
・フェノール樹脂:固形分50質量部(溶液として83.3質量部)、
・導電性粒子C−1:4質量部、
・導電性粒子C−2:36質量部、
・凹凸付与粒子D−1:12質量部、
・イソプロピルアルコール:175質量部。
【0099】
次いで、基体の回転数を1000rpm、エアスプレーガンの下降速度を30mm/秒、硬化後の厚さを12μmとなるようし、その他の条件は実施例1と同様にして塗膜を形成し、硬化させて現像剤担持体G−36を得た。
【0100】
<電子写真画像形成装置の形成、及びそれを用いた画像評価>
得られた現像剤担持体G−36にマグネットローラを挿入し、両端にフランジを取り付けて、電子写真画像形成装置:「iR2545」(商品名、キヤノン株式会社製)の現像器の現像ローラとして装着した。なお、磁性ドクターブレードと現像剤担持体G−36との間隙は220μmとした。これを、上記の電子写真画像形成装置に搭載し、下記の画像評価を行った。画像評価は、高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH;H/H)で実施した。尚、画像評価には、A4サイズの普通紙:「CSー680」(商品名、キヤノン社製;68g/m2)を使用し、印字比率3%の文字画像をA4サイズの普通紙を横送りで50万枚まで連続複写の画出し試験を行った。その結果を表6に示す。
【0101】
(1)画像濃度、(2)濃度ムラ及び(3)画質評価の画像評価は、それぞれ初期と50万枚画出し後とした他は、実施例1と同様にして実施した。
【0102】
〔実施例33〜42、比較例5〜8〕
<現像剤担持体G−37〜G−46及びH−47〜H−50の製造>
塗工液をそれぞれ表5に示したものを用いた他は、実施例32と同様に現像剤担持体G−37〜G−46及びH−47〜H−50を作製した。
【0103】
<電子写真画像形成装置の形成、及びそれを用いた画像評価>
得られた現像剤担持体G−37〜G−46及びH−47〜H−50を実施例32と同様に現像器に組み込み、現像装置を得た。これらの現像装置を実施例32と同様に電子写真画像形成装置に搭載し、実施例32と同様に画像評価を行った。結果を表6に示す。
【0104】
【表8】

【0105】
【表9】

【0106】
表6から実施例32〜42の評価結果は良好であることがわかる。比較例5の現像剤担持体H−47は、アクリル樹脂中にユニット(1)及びユニット(3)を含有しておらず、耐摩耗性が不十分の為、初期と50万枚時の画像濃度差が悪く、また50万枚時の濃度ムラ、画質評価が悪かった。比較例6及び7の現像剤担持体H−48、H−49は、アクリル樹脂中にユニット(2)を含有しておらず、帯電付与能が低い為、初期及び50万枚時の画像濃度が低く、また濃度ムラ、画質評価が悪かった。比較例8の現像剤担持体H−50は、アクリル樹脂の構造のR7のアルキル基の炭素数が22と大きく、フェノール樹脂との相溶性が悪くなり、且つ導電性粒子との分散性が不十分の為、濃度ムラ、画質評価が悪くなった。
【0107】
〔実施例43〕
<現像剤担持体I−51の製造>
塗工液の組成を以下に示す割合とし、その他は実施例1と同様にして塗工液を得た。
・アクリル樹脂溶液A−1:固形分100質量部(溶液として250質量部)、
・導電性粒子C−1:3.3質量部、
・導電性粒子C−2:30質量部、
・凹凸付与粒子D−1:10質量部、
・イソプロピルアルコール:100質量部。
【0108】
次いで、基体の回転数を1500rpm、エアスプレーガンの下降速度を35mm/秒、硬化後の厚さを10μmとなるようし、その他の条件は実施例1と同様にして塗膜を形成し、硬化させて現像剤担持体I−51を得た。
【0109】
<電子写真画像形成装置の形成、及びそれを用いた画像評価>
得られた現像剤担持体l−51をプリンター:「LBP2160」(商品名、キヤノン株式会社製)のマゼンタカートリッジ:「EP82」(商品名、キヤノン株式会社製)に組み込み、現像装置とした。これを上記プリンターに搭載し、下記の画像評価を行った。なお、トナーへの規制を強めるため、現像剤担持体長手方向にトナー規制ブレードの接触圧を線圧で30g/cmとした。画像評価は、高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH;H/H)で実施した。尚、画像評価には、レターサイズの用紙:「Business4200」(商品名、XEROX社製;75g/m2)を使用し、印字比率3%の文字画像をA4サイズの普通紙を縦送りで3万枚まで連続複写の画出し試験を行った。その結果を表8に示す。
【0110】
(1)画像濃度、(2)濃度ムラ及び(3)画質評価の画像評価は、それぞれ初期と3万枚画出し後とした他は、実施例1と同様にして実施した。
【0111】
〔比較例9〜10〕
<現像剤担持体J−52〜J−53の製造>
塗工液の組成を表7に示す割合とした他は、実施例43と同様にして現像剤担持体J−52〜J−53を作製した。
【0112】
<電子写真画像形成装置の形成、及びそれを用いた画像評価>
得られた現像剤担持体J−52〜J−53を実施例43と同様にカートリッジに組み込み、現像装置を得た。これらの現像装置を実施例43と同様にプリンタに搭載し、実施例43と同様に画像評価を行った。結果を表8に示す。
【0113】
【表10】

【0114】
【表11】

【0115】
表8から、実施例43の評価結果は良好であることが分かる。一方、比較例9及び10の現像剤担持体J−52及びJ−53は、アクリル樹脂中にユニット(2)を含有しておらず、帯電付与能が低い為、初期及び3万枚時の画像濃度が低く、また濃度ムラ、画質評価が悪かった。
【符号の説明】
【0116】
101 樹脂層
102 基体
103 現像スリーブ
104 マグネットローラ
105 現像剤担持体
106 静電潜像担持体(感光体ドラム)
107 現像剤層厚規制部材(磁性ブレード)
108 現像バイアス電源
109 現像容器
110 攪拌搬送部材
111 第二室
112 第一室
113 仕切り部材
114 攪拌部材
115 現像剤供給部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体及び樹脂層を有し、該樹脂層は、下記式(1)で示されるユニット、下記式(2)で示されるユニットおよび下記式(3)で示されるユニットを有するアクリル樹脂と導電性粒子とを含有していることを特徴とする現像剤担持体:
【化1】

[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。*は、式(3)中の**との結合部を示す。]、
【化2】

[式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R5、R6およびR7は各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、A-は、アニオンを示す。]、
【化3】

[式中、R8は水素原子又はメチル基を示し、R9は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。**は、式(1)中の*との結合部を示す。]。
【請求項2】
前記式(2)で示されるユニットのR5、R6およびR7の少なくとも一つが、炭素数8乃至18のアルキル基である請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
前記樹脂層は、フェノール樹脂又はメラミン樹脂を含有しており、且つ、前記アクリル樹脂は、下記式(4)に示されるユニットを有し、該アクリル樹脂は、下記式(4)中の***の位置で該フェノール樹脂又は該メラミン樹脂と結合している請求項1または2に記載の現像剤担持体:
【化4】

[式中、R10は水素原子又はメチル基を示し、R11は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。]。
【請求項4】
基体及び樹脂層を有する現像剤担持体の製造方法において、該樹脂層は、アクリル樹脂、及び導電性粒子を少なくとも含有しており、該アクリル樹脂は、下記重合反応〔A〕及び〔B〕により得られることを特徴とする現像剤担持体の製造方法:
重合反応〔A〕;下記式(5)で示されるモノマー及び下記式(6)で示されるモノマーのラジカル重合反応、
重合反応〔B〕;下記式(5)で示されるモノマーの水酸基同士の脱水重縮合反応、
【化5】

[式中、R12は水素原子又はメチル基を示し、R13は炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。]、
【化6】

[式中、R14は水素原子又はメチル基を示し、R15は炭素数1乃至4のアルキレン基を示し、R16、R17およびR18は各々独立して炭素数1乃至18のアルキル基を示し、A-は、アニオンを示す。]。
【請求項5】
トナー粒子を有する負帯電性の現像剤と、該現像剤を収容している容器と、該容器に貯蔵された該現像剤を担持搬送するための現像剤担持体と、現像剤層厚規制部材とを有する現像装置であって、該現像剤担持体が、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の現像剤担持体であることを特徴とする現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−232744(P2011−232744A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84484(P2011−84484)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】