説明

現像装置

【課題】現像剤担持体の表面に担持されている現像剤量が変化しても、高品質な画像を安定して得ることが可能な現像装置を提供する。
【解決手段】現像剤を担持する現像スリーブ43、現像剤の量を規制する規制ブレード45、現像スリーブ43と規制ブレード45との間にある現像剤の量に関する情報を検知するトナーコート量検知回路55、及びトナーコート量検知回路55の検知結果に基づいて画像形成時に規制ブレード45に印加する電圧の値を変更可能な制御部59を有し、現像スリーブ43と規制ブレード45との間にある現像剤の量が少なくなると、規制ブレード45に印加する電圧の値を、より現像剤の正規帯電極性側の値となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式によって被転写体に画像を形成する画像形成装置に用いられる現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式を採用する画像形成装置が広く実用化されている。このような画像形成装置に対して、近年は耐久安定性も含めた高画質化が要求されている。ここでいう「耐久安定性」とは、画像形成装置の使用初期から寿命までの画像品質の変化の少なさと言い換えることができる。「耐久安定性」を適切なレベルに維持するためには、現像剤担持体の表面に担持されている現像剤量(以下、トナーコート量とする)を適正な値に保つことが重要である。
【0003】
図11に、従来の画像形成装置において現像剤担持体143上のトナーコート量を規制するための構成を示す。図示するように、画像形成装置には、現像剤担持体143(内部にマグネットローラ146を含む)の表面に当接して該表面に担持されている現像剤147のトナーコート量を所定の値に規制するための規制部材145が設けられている。規制部材145を、現像剤担持体143の回転方向(図中Z方向)に対してカウンター方向となるように現像剤担持体143の表面に当接させることにより、現像剤147の薄層を形成することが可能になる。なお、特許文献1には、このような規制部材を用いてトナーコート量を制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−66716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の画像形成装置には、以下の課題がある。
【0006】
画像形成装置の使用時間、使用回数が多くなると、それに伴って磨耗により現像剤担持体の表面粗さが小さくなり、現像剤担持体の表面において現像剤を担持しにくくなる。その結果、現像剤担持体の表面に担持されるトナーコート量が減少する。また、規制部材の当接圧や取り付け位置は、部品の寸法公差や取り付け公差によって変動するので、それによりトナーコート量が変動してしまう。これに対して従来より、規制部材に電圧を印加し、その電圧を制御することにより、トナーコート量を調整する技術が知られている。しかしながら、従来の画像形成装置はトナーコート量の増減を調整できるものの、調整前のトナーコート量を考慮していないので、トナーコート量を必ずしも適正な量に補正できるとは限らない。従って、画像濃度等が変動し、安定して高品質の画像を得ることができないという課題を招く。
【0007】
そこで本発明は、現像剤担持体の表面に担持されている現像剤量が変化しても、高品質な画像を安定して得ることが可能な現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
現像剤を担持して静電像を現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制部材と、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の
量に関する情報を検知する検知装置と、前記検知装置の検知結果に基づいて、画像形成時に前記規制部材に印加する電圧の値を変更可能な制御部と、を有し、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量が第1の量の時に前記規制部材に印加する電圧を第1電圧値、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量が前記第1の量よりも少ない第2の量の時に前記規制部材に印加する電圧値を第2電圧値とした時に、前記第2電圧値は、前記第1電圧値よりも現像剤の正規帯電極性側の値となるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像剤担持体の表面に担持されている現像剤量が変化しても、高品質な画像を安定して得ることが可能な現像装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態における現像剤担持体及び規制部材の概略構成図。
【図2】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図3】第1の実施形態におけるトナーコート量検知回路の概略構成図。
【図4】検出値(V)とトナーコート量(g/m)の関係を示す図。
【図5】規制部材によるトナーコート量の規制の様子を示す図。
【図6】トナーコート量と規制部材に印加する電圧との関係を示す図。
【図7】第1の実施形態におけるプリント動作のフローチャート図。
【図8】第2の実施形態におけるプリント動作のフローチャート図。
【図9】現像電圧と供給されるトナー量との関係を示す図。
【図10】第3の実施形態におけるプリント動作のフローチャート図。
【図11】従来例における現像剤担持体と規制部材の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
(画像形成装置の概略構成)
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成について説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式を採用するレーザービームプリンタである。画像形成装置には、像担持体としての回転可能な感光体ドラム2、感光体ドラム2の表面を一様に帯電する帯電ローラ3、及び感光体ドラム2の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード5が設けられている。さらに感光体ドラム2に対向する位置には、感光体ドラム2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像装置4が設けられている。なお、現像装置4の数は1つに限られるものではなく、トナーの種類(Y、M、C、K)ごとに現像装置4を設ける構成であってもよい。
【0012】
現像装置4は、感光体ドラム2に供給するトナー40を表面で担持する回転可能なアルミニウム製の現像スリーブ43(現像剤担持体)を有しており、現像スリーブ43の内側には、マグネットローラ46が設けられている。本実施形態では現像剤として磁性トナーを用いており、現像スリーブ43の内側にマグネットローラ46を設けることで、現像スリーブ43の表面にトナーをより確実に担持させることが可能になる。さらに現像装置4には、一端が現像装置4の枠体に取り付けられ、他端が現像スリーブ43の表面に当接することで現像スリーブ43の表面におけるトナーコート量を規制する導電性の規制ブレード45(規制部材)が設けられている。規制ブレード45は導電性ウレタンゴムによって構成されている。
【0013】
シート材に画像を形成する際は、まず、不図示の入力部に「プリント開始」の信号が入力され、それによってメインモータが駆動を開始する。このメインモータは、感光体ドラム2や現像装置4等の駆動源となるものである。そして「画像形成開始」の信号が入力さ
れると、露光装置9からレーザー光が射出され、帯電ローラ3によって一様に帯電されている感光体ドラム2の表面がレーザー光によって走査露光され、感光体ドラム2に静電潜像が形成される。
【0014】
感光体ドラム2に静電潜像が形成されると、現像スリーブ43に現像電圧が印加されることにより、現像スリーブ43の表面に担持されているトナーが静電潜像に静電気的に供給され、これにより、静電潜像がトナー像として現像される。感光体ドラム2の表面に現像されたトナー像は、感光体ドラム2と転写ローラ7のニップ部において、給送部から給送されるシート材上に転写される。なお、トナー像の転写は、転写ローラ7に転写電圧が印加されることにより行われる。シート材上に転写されたトナー像は、定着装置8において加熱・加圧されることでシート材上に定着される。
【0015】
本実施形態では、このようなプロセスを経てシート材上に画像が形成される。なお、本実施形態では感光体ドラム2の表面からシート材上に直接トナー像を転写しているが、例えば中間転写ベルト等にトナー像を一旦転写する中間転写方式も採用し得る。中間転写方式の場合は、中間転写ベルトが、本発明における「被転写体」となる。
【0016】
(現像スリーブ、規制ブレードの概略構成)
図1を参照して、本実施形態における現像スリーブ43、及び規制ブレード45の概略構成について説明する。図1は、現像スリーブ43と、その表面に当接する規制ブレード45の当接箇所を拡大した図である。
【0017】
マグネットローラ46の磁力によって現像スリーブ43上に担持されているトナーは、矢印z方向に回転する現像スリーブ43の回転によって、規制ブレード45と現像スリーブ43とで形成される空隙に押し込まれ、これによりトナーの薄層が形成される。ここで、現像スリーブ43の表面に担持されているトナー量(現像剤量)、即ち「トナーコート量」は、現像スリーブ43表面の単位面積あたりに担持されているトナー量のことを指し、単位は(g/m)である。
【0018】
現像スリーブ43には、切り替えスイッチ61を介して交流電源51が接続されている。かかる構成によると、切り替えスイッチ61をA側にすると交流電源51からの交流電圧が、切り替えスイッチ61をB側にすると交流電源51及び直流電源52からそれぞれ出力される交流電圧と直流電圧とを重畳した重畳電圧が印加される。この重畳電圧が、本実施形態における「現像電圧」に相当する。このように現像スリーブ43には、交流電圧、又は重畳電圧が印加され、つまり電極としての機能を有しているといえるので、本実施形態では、現像スリーブ43を「第1電極」とする。
【0019】
一方、規制ブレード45には、切り替えスイッチ62を介して交流電源53とトナーコート量検知回路55のいずれかが接続されている。かかる構成によると、切り替えスイッチ62をA’側にすると、規制ブレード45とトナーコート量検知回路55が接続され、この場合は規制ブレード45がトナーコート量検知回路55に電気信号を出力する出力電極部材(第2電極)として機能する。また、切り替えスイッチ62をB’側にすると、規制ブレード45には交流電源53及び直流電源54からそれぞれ出力される交流電圧と直流電圧とを重畳したブレード電圧が印加されるので、規制ブレード45が入力電極部材(第2電極)として機能する。
【0020】
(規制ブレードに印加するブレード電圧とトナーコート量の関係)
本実施形態では、規制ブレード45にブレード電圧を印加していない状態(以下、素の状態とする)のトナーコート量を検知し、検知されたトナーコート量に基づいてブレード電圧を目標値に制御し、所望のトナーコート量を得るようにしている。これにより、使用
初期から寿命まで高品質の画像を安定して得ることが可能になる。
【0021】
図5(a)、図5(b)を参照して、規制ブレード45に印加するブレード電圧とトナーコート量の関係について説明する。なお、以下では負極性に帯電したトナーを用いた場合について説明するが、本実施形態に用いられるトナーの帯電極性はこれに限られない。
【0022】
ブレード電圧の正負は、現像電圧の直流成分との比較によって決められる。上述したように規制ブレード45には交流電圧と直流電圧とが重畳されたブレード電圧が印加されるが、この直流成分と、現像電圧の直流成分とが同じ場合、ブレード電圧と現像電圧の電圧差は「ゼロ」とする。同様にブレード電圧の直流成分の方が現像バイアスの直流成分よりもプラス側にある場合は、両者の電圧差は「プラス」、逆の場合は「マイナス」とする。
【0023】
まず図5(a)のように、直流電源54(図1参照)によってブレード電圧の直流成分を負(マイナス)側にすると、負帯電のトナー40には規制ブレード45から斥力が働く。すると規制ブレード45表面にあるトナー40は斥力によって規制ブレード45から離れようとするため、トナー40と規制ブレード45との間の摩擦力は小さくなる。その結果、現像スリーブ43が回転してトナー40を搬送しようとすると、多くのトナーが規制ブレード45表面を滑るようにして現像スリーブ43の移動速度と略同じ速度で移動するのでトナーコート量が増加する。
【0024】
一方、図5(b)に示すように、直流電源54(図1参照)によってブレード電圧の直流成分を正(プラス)側にすると、負帯電のトナー40には規制ブレード45から引力が働く。すると規制ブレード45表面にあるトナー40は引力によって規制ブレード45に押しつけられるため、トナー40と規制ブレード45との間の摩擦力が大きくなる。その結果、現像スリーブ43が回転してトナー40を搬送しようとしても、規制ブレード45表面のトナー40は、その高摩擦力のために規制ブレード45の表面を回転しながら移動していく。このときの規制ブレード45表面におけるトナー40の移動速度は、当然のことながら、トナー40が規制ブレード45表面を滑っていく場合に比べて小さくなる。つまり、単位時間に通過するトナー粒子の数が減ることになるため、現像スリーブ43上のトナーコート量が減少する。
【0025】
図6に、トナーコート量と規制ブレード45に印加するブレード電圧との関係を示す。なお、図中の「ブレード電圧直流成分差」とは、現像電圧の直流成分とブレード電圧の直流成分との差のことを指す。図示するように、現像電圧の直流成分に対してブレード電圧の直流成分をマイナスにするほど、現像スリーブ43に担持されるトナーコート量が多くなる。逆に、現像電圧の直流成分に対してブレード電圧の直流成分をプラスにするほど、現像スリーブ43に担持されるトナーコート量が少なくなることがわかる。なお、正極性に帯電したトナーを用いる場合は、この逆の関係になる。
【0026】
このように、規制ブレード45に印加するブレード電圧を制御すれば、トナーコート量の増減を調整することができる。しかしながら、調整前のトナーコート量を把握していないと、必ずしもトナーコート量を目標値に調整できるとは限らない。
【0027】
そこで本実施形態では、素の状態、つまり、規制ブレード45にブレード電圧が印加されていない状態のトナーコート量を検知し、その検知結果に基づいて、トナーコート量が目標値となるようにブレード電圧を制御している。以下、素の状態のトナーコート量を検知する方法について説明する。
【0028】
(トナーコート量を検知する方法)
図3を参照して、素の状態のトナーコート量を検知する方法について説明する。図3は
、図1におけるトナーコート量検知回路(検知装置)55の回路構成を示すものである。図示するように、トナーコート量検知回路55は、検出回路57とリファレンス用コンデンサ56とを有している。本実施形態では、規制ブレード45が「第2電極」として機能する点を利用して、規制ブレード45によってトナーコート量を検知している点が特徴である。
【0029】
現像スリーブ43上のトナーコート量を検知する際は、まず、交流電源51が現像スリーブ43に交流電圧(検知用の振動電圧)を印加する。この際、図1に示す切り替えスイッチ61はA側に接続されている。
【0030】
現像スリーブ43に交流電圧が印加されると、規制ブレード45には電圧が誘起される。そして、その際に規制ブレード45に誘起される電流値を測定し、検出回路57において現像スリーブ43と規制ブレード45間の静電容量C2を測定する。つまりここでは、現像スリーブ43は、検知用の振動電圧が入力される入力電極部材として機能している。また、規制ブレード45は、現像スリーブ43と規制ブレード45との間に存在するトナーコート量に応じた静電容量C2を検知回路55に出力する出力電極部材として機能している。
【0031】
ここでトナーコート量と静電容量C2の関係について補足的に説明する。現像スリーブ43と規制ブレード45との間の静電容量C2は、規制ブレード45の面積A、両者間の距離d、現像スリーブ43と規制ブレード45間の比誘電率Kεを用いると、C=Kε×A/dの関係にある。
【0032】
ここで、現像スリーブ43と規制ブレード45間にはトナーの薄層が均一に存在していると考えられるので、比誘電率Kεは略一定とみなすことができる。また、規制ブレード45の面積Aも変化しないので、一定値とみなすことができる。一方、距離dは現像スリーブ43上に担持されているトナーコート量によって変化する値である。例えば、現像スリーブ43上のトナーコート量が少ないと距離dは小さくなり、現像スリーブ43と規制ブレード45間の静電容量C2は大きな値をとる。つまり、静電容量C2を測定すれば、その測定結果からトナーコート量を求めることが可能になる。
【0033】
上述の回路構成により、現像スリーブ43に交流電圧(検知用電圧)を印加し、規制ブレード45に誘起された電圧は、規制ブレード45に接続された検出回路57に電圧V2として入力される。一方で交流電源51から出力される交流電圧(検知用電圧)は、リファレンス用コンデンサ56(静電容量C1:固定値)に印加され、リファレンス用コンデンサ56の両端には電圧V1が発生する。そして、ここで発生したV1がV2と同様に検出回路57に入力される。
【0034】
検出回路57は、この電圧V1、V2との電圧差から測定値である電圧V3を生成し、V3を演算部58に出力し、演算部58はアナログ電圧であるV3をデジタル変換し、変換後の電圧を制御部59に出力する。制御部59は、演算部58でデジタル値に変換された電圧値V(以下、この値を「検出値(V)」(単位はボルト)と称する)から、現像スリーブ43上のトナーコート量を検知する。そして、検知されたトナーコート量に基づいて、規制ブレード45に印加する電圧を変更する。
【0035】
この方法により、素の状態のトナーコート量を検知し、その検知結果に基づいて規制ブレード45に印加する電圧を変更可能である。このように、本実施形態では、「第1電極」として機能する現像スリーブ43と、「第2電極」として機能する規制ブレード45との間の静電容量C2を検知することで、トナーコート量(現像剤の量)に関する情報を検知することができる。
【0036】
図4に、検出値(V)とトナーコート量(g/m)の関係を示す。図示するように、トナーコート量が少なくなるほど(静電容量値C2が大きくなるほど)、検出値(V)は小さくなっている。なお、制御部59では、予め得られている両者の関係に基づいて「検出値(V)」から「トナーコート量(g/m)」への変換を行っている。
【0037】
例えば、トナーコート量が「第1の量」よりも少ない「第2の量」となった場合のブレード電圧の目標値である第2電圧値は、「第1の量」の時のブレード電圧の目標値である第1電圧値よりも、マイナス側(トナーの正規帯電極性側)の電圧値とする。すなわち、トナーコートが減少した場合には、ブレード電圧の目標値として、トナーコート量を増加させるような電圧が導出される。一方で、トナーコート量が多い場合は、この逆の制御を行う。従って、素の状態のトナーコート量を考慮した上で、トナーコート量を適切な値に維持することが可能になる。
【0038】
(トナーコート量を検知するタイミング)
図3に示す回路構成によると、規制ブレード45を入力電極部材として使用している期間は、規制ブレード45を出力電極部材として利用できないという制約がある。逆に、規制ブレード45を出力電極部材として使用している期間は、入力電極部材としては利用できない。その理由は、ブレード電圧を印加している状態の規制ブレード45にトナーコート量検知回路55を接続すると、印加しているブレード電圧の影響を受けて静電容量C2の値を正しく測定できないからである。
【0039】
この課題を解決するためには、少なくともブレード電圧を印加しない期間に現像スリーブ43の表面上のトナーコート量を検知し、その検知結果を用いて画像形成中に印加すべきブレード電圧の直流電圧値(直流成分)を目標値として導出する必要がある。ここで図7を参照して、プリント開始の信号が入力されてからプリント終了となるまでのプロセスについて説明する。
【0040】
まず、ホストコンピュータから「プリント開始」の信号が入力され、画像形成装置のメインモータが起動する(S101)。その後、切り替えスイッチ61をA側に、切り替えスイッチ62をA’側にそれぞれ切り替え、トナーコート量検知に必要な交流電源及び検知回路と接続する(S102)。
【0041】
次に、交流電源51から、現像スリーブ43及びレファレンス用コンデンサ56に交流電圧を印加する(S103)。このとき、リファレンス用コンデンサ56の両端には電圧V1が発生し、規制ブレード45には電圧V2が発生する(S104)。
【0042】
検出回路57は、この電圧V1、V2との電圧差から測定値である電圧V3を生成し、AD変換部58に出力し(S105)、AD変換部58はアナログ電圧V3をデジタル変換した結果を制御部59に出力する(S106)。制御部59に入力されたデジタル値から、現像スリーブ43上のトナーコート量の絶対値が検知できるので、その値に応じてトナーコート量制御に用いるブレード電圧の直流電圧値(目標値)を導出する(S107)。
【0043】
ブレード電圧の直流電圧値が導出されると、一旦交流電源51により印加されていた交流電圧を止め(S108)、切り替えスイッチ61をB側に、切り替えスイッチ62をB’側にそれぞれ切り替える。そして、画像形成動作に必要な現像電圧、ブレード電圧を印加できる状態にする(S109)。その後、「画像形成開始」の信号が入力されると、次のステップへ移行する(S110)。なお、「画像形成開始」の信号が入力されると、静電潜像の形成が開始する。
【0044】
画像形成動作が始まると、交流電源51、直流電源52、交流電源53、直流電源54をそれぞれ所定のタイミングで動作させ、現像電圧、ブレード電圧を現像スリーブ43及び規制ブレード45に印加して画像形成動作を行う(S111)。画像形成動作が終わると(S112)、交流電源51、直流電源52、交流電源53、直流電源54をそれぞれ所定のタイミングで停止させる(S113)。なお、交流電源51及び交流電源53から印加される交流電圧の周波数に差があると、干渉を起こして画像に周期的な濃淡ムラが生じることもあるので、これらは同一周波数であることが好ましい。
【0045】
このように本実施形態では、「画像形成開始」の信号が入力される前の非画像形成時において、素のトナーコート量を検知し、その検知結果に基づいて画像形成時のブレード電圧の目標値を導出している。なお、本実施形態における「非画像形成時」とは、装置本体を設置した状態において、シート材に画像が形成されていない期間を指す。より具体的には、感光体ドラム2と転写ローラ7とで形成されるニップ部にシート材が搬送されていない間、すなわち、規制ブレード45にブレードバイアスを印加していない期間を指す。
【0046】
例えば図7の場合は、S101〜S109の期間(つまり「画像形成開始」の信号が入力される前の期間)を、「非画像形成時」とする。また、「画像形成時」とは、S110〜S112の期間(つまり「画像形成開始」の信号が入力されてから「画像形成終了」の信号が入力されるまでの期間)であって、即ちブレード電圧が印加されている期間に相当する。
【0047】
なお、本実施形態では、現像電圧、ブレード電圧として直流電圧と交流電圧を重畳させた電圧を印加する場合について説明したが、現像電圧、ブレード電圧共に直流電圧だけでも画像形成を行うことは可能であり、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上記に記載した「交流電圧(交流成分)」を「振動電圧」と読み替えることも可能である(極性+、−の反転が必要な交流電圧に対し、振動電圧は極性の反転は必要なく、振動サイクルの中で電圧値が変動していればよい)。
【0048】
また、上述した「非画像形成時」とは、複数の画像形成ジョブを実行する際は、画像形成ジョブと次の画像形成ジョブとの間の期間のことであってもよく、さらに連続して画像形成を行う際の紙間のタイミングであってもよい。また、これらのタイミングを組み合わせ、画像形成開始前にトナーコート量検知を行い、連続印字枚数が多い場合、途中の紙間でもトナーコート量検知を行い、以後の画像形成時のトナーコート量制御に反映させる方式でも良い。
【0049】
以上より、本実施形態によれば、現像スリーブ43の表面におけるトナーコート量を検知し、その検知結果に基づいてブレード電圧を制御することにより、トナーコート量の変動が画像品質に及ぼす影響を抑制している。これにより、使用初期から寿命まで安定した画像品質を得ることが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【0050】
[第2の実施形態]
図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、画像形成装置の構成、トナーコート量検知回路の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一の構成については説明を省略する。
【0051】
第1の実施形態で説明したように、素の状態のトナーコート量を検知し、その検知結果に基づいてブレード電圧を導出するプロセスは、画像形成装置の「非画像形成時」に行っている。そこで本実施形態では、「非画像形成時」として、「プリント開始」の信号が入力される前、つまり画像形成装置のメインモータが駆動する前の期間に、トナーコート量
の検知動作、及びブレード電圧の目標値の導出を行っていることが特徴である。
【0052】
図8に示すように、まずトナーコート量検知開始の信号が入力され(S201)、トナーコート量の検知、ブレード電圧の決定が行われる(S202〜S209)。なお、このプロセスは第1の実施形態で説明したものと同一であるので説明は省略する。次に「プリント開始」の信号が入力され(S210)、その後「画像形成開始」の信号が入力される(S211)。そして「画像形成終了(S213)」、「プリント終了(S215)」の順に動作が終了し、一連のプロセスが終了される(S216)。
【0053】
かかる構成によると、「プリント開始」の信号を入力してからすぐに「画像形成開始」の信号を入力することができるので、メインモータを駆動してからシート材に画像が形成されるまでのプリントタイムを短縮することが可能になる。よって、ユーザビリティの向上を達成することができる。
【0054】
[第3の実施形態]
図9、図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、画像形成装置の構成、トナーコート量検知回路の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一の構成については説明を省略する。
【0055】
第1、第2の実施形態では、非画像形成時に、トナーコート量を検知した後に検知結果に基づいて規制ブレード45に印加する目標値としてのブレード電圧を導出しているが、本実施形態では、現像スリーブ43に印加する現像電圧を制御することを特徴とする。つまり、トナーコート量の変動に応じて、現像電圧の目標値を導出し、その目標値に基づいて現像電圧を制御している。
【0056】
本実施形態では、規制ブレード45は電気的には出力電極部材としてのみ機能するため、規制ブレード45には、少なくともトナーコート量検知回路55が接続されていればよく、切り替えスイッチ62、交流電源53、直流電源54を省略することが可能である。
【0057】
図9を参照して、現像電圧とそれに応じて供給されるトナー量との関係について説明する。図9(a)は、感光体ドラム2の電位(V、V)と、現像電圧の時間平均電圧(VDC)の関係を表している。感光体ドラム2は帯電工程においてその表面が一様に電位Vに帯電され、露光装置9による走査露光により、レーザー光が照射される部分の電位がVからVに変化し、静電潜像が形成される。なお、ここでVとは、レーザを全点灯することで形成される、いわゆる、べた画像形成時の感光体ドラムの電位となる。
【0058】
この状態において、V<VDC<Vの関係にある現像電圧VDCを現像スリーブ43に印加すると、負極性に帯電しているトナーは感光体ドラム2の電位Vの箇所にだけ付着する。ここで図9(a)に示すように、VDCとVの電位差、すなわち、現像電圧VDCの、静電像の電位(VL)に対する電位差を現像コントラスト(VCONT)と呼
ぶ。図9(b)に現像コントラスト(VCONT)と、感光体ドラム2に供給されるトナー量との関係を示すが、図示するように、現像コントラストが大きければ大きいほど、供給されるトナー量も多くなる。
【0059】
次に図10を参照して、「プリント開始」の信号が入力されてから、目標とする現像コントラスト(VCONT)の値を決定し、画像形成を行う際のプロセスについて説明する。
【0060】
まず、ホストコンピュータから「プリント開始」の信号が入力され、画像形成装置のメインモータが起動する(S301)。その後、切り替えスイッチ61をA側に切り替え、
トナーコート量検知に必要な交流電源及びトナーコート量検知回路と接続する(S302)。
【0061】
次に、交流電源51により、現像スリーブ43及びレファレンス用コンデンサ56に交流電圧(検知用電圧)を印加する(S303)。このとき、リファレンス用コンデンサ56の両端には電圧V1が発生し、規制ブレード45には電圧V2が発生する(S304)。
【0062】
検出回路57は、この電圧V1、V2との電圧差から測定値である電圧V3を生成し、AD変換部58に出力し(S305)、AD変換部58はアナログ電圧V3をデジタル変換した結果を制御部59に出力する(S306)。制御部59に入力されたデジタル値から、現像スリーブ43上のトナーコート量の絶対値が検知できるので、その値に応じて画像形成動作に必要な現像コントラストVCONTを導出し、該現像コントラストが得られる現像電圧を決定する(S307)。
【0063】
現像電圧の決定方法としては、検知されたトナーコート量が少なくなる程、現像コン
トラストVCONTの値が大きくなるような現像電圧とすればよい。すなわち、トナーコート量が「第1の量」の時の現像電圧を第1電圧値、トナーコート量が「第1の量」よりも少ない「第2の量」の時の現像電圧を第2電圧値とした時、第2電圧値は、第1電圧値よりも、静電像の電位に対する電位差が大きくなるような値とする。これにより、トナーコート量が減少したとしても、現像コントラストを大きくできる現像電圧が現像スリーブに印加されるため、画像濃度の低下を抑制する事が可能となる。
【0064】
現像電圧が決定されると、一旦交流電源51により印加されていた交流電圧を止め(S308)、切り替えスイッチ61をB側に切り替え、画像形成動作に必要な現像電圧が印加できる状態にする(S309)。その後、「画像形成開始」の信号が入力されると、次のステップへ移行する(S310)。なお、「画像形成開始」の信号が入力されると、静電潜像の形成が開始する。
【0065】
画像形成動作が始まると、交流電源51、直流電源52をそれぞれ所定のタイミングで動作させ、決定した現像電圧を現像スリーブ43に印加して画像形成動作を行う(S311)。画像形成動作が終わると(S312)、交流電源51、直流電源52をそれぞれ所定のタイミングで停止させる(S313)。
【0066】
以上より、本実施形態によれば、現像スリーブ43の表面におけるトナーコート量を検知し、その検知結果に基づいて現像電圧を制御することにより、トナーコート量の変動が画像品質に及ぼす影響を抑制している。これにより、使用初期から寿命まで安定した画像品質を得ることが可能な画像形成装置を提供することが可能になる。
【0067】
なお、現像スリーブ43の表面におけるトナーコート量を検知し、現像コントラストを決定するタイミングは、「非画像形成時」であればよく、例えば先の第1、第2の実施形態で説明した、紙間や「プリント開始」の信号が入力される前であってもよい。さらに、第1、第2の実施形態で説明したブレードバイアスの制御と、本実施形態における現像電圧の制御を組み合わせてもよい。
【0068】
(他の実施形態)
上記第1〜第3の実施形態では、トナーコート量を検知する際に、現像スリーブ43及びレファレンス用コンデンサ56に交流電圧(検知用電圧)を印加しているが、検知用電圧を規制ブレード45に印加する構成であってもよい。この場合は、現像スリーブ43に誘起される電流値を測定することで、上記と同様にトナーコート量を検知することができ
る。つまり、現像スリーブ43、または規制ブレード45のいずれか一方に検知用電圧を印加し、他方において誘起される電流値を測定すればよい。
【符号の説明】
【0069】
2…感光体ドラム(像担持体) 43…現像スリーブ(現像剤担持体) 45…規制ブレード(規制部材) 55…トナーコート量検知回路(検知装置) 59…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持して静電像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制部材と、
前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量に関する情報を検知する検知装置と、
前記検知装置の検知結果に基づいて、画像形成時に前記規制部材に印加する電圧の値を変更可能な制御部と、
を有し、
前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量が第1の量の時に前記規制部材に印加する電圧を第1電圧値、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量が前記第1の量よりも少ない第2の量の時に前記規制部材に印加する電圧値を第2電圧値とした時に、前記第2電圧値が、前記第1電圧値よりも現像剤の正規帯電極性側の値となるように制御することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記検知装置は、非画像形成時において、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量に関する情報を検知することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像装置を駆動するモータを更に有し、
前記検知装置は、前記モータが駆動を開始する前に、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量に関する情報を検知することを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記検知装置は、前記現像剤担持体または前記規制部材のいずれか一方に振動電圧を印加することで、第1電極として機能する前記現像剤担持体と、第2電極として機能する前記規制部材との間の静電容量を検知するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
現像剤を担持して静電像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に担持される現像剤の量を規制する規制部材と、
前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量に関する情報を検知する検知装置と、
前記検知装置の検知結果に基づいて、画像形成時に前記現像剤担持体に印加する電圧の値を変更可能な制御部と、
を有し、
前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量が第1の量の時に前記現像剤担持体に印加する電圧を第1電圧値、前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量が前記第1の量よりも少ない第2の量の時に前記現像剤担持体に印加する電圧値を第2電圧値とした時、前記第2電圧値が、前記第1電圧値よりも、前記静電像の電位に対する電位差が大きくなるように制御することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
前記検知装置は、非画像形成時において前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量に関する情報を検知することを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像装置を駆動するモータを更に有し、
前記検知装置は、前記モータが駆動を開始する前に前記現像剤担持体と前記規制部材との間にある現像剤の量に関する情報を検知することを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記検知装置は、前記現像剤担持体または前記規制部材のいずれか一方に振動電圧を印
加することで、第1電極として機能する前記現像剤担持体と、第2電極として機能する前記規制部材との間の静電容量を検知するよう構成されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−18021(P2011−18021A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77906(P2010−77906)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】