説明

現像装置

【課題】現像室からトナー収納室へのトナーの戻りを低減するとともに、トナー収納室から現像室に充分な速度でトナー補給するということを両立できる現像装置を提供する。
【解決手段】一成分現像剤を収納する第一室と、第一室の上方に配置された第一開口部と、第一室から第一開口部へ一成分現像剤を汲み上げて供給するための第一室搬送部材と、第一開口部を介して第一室と繋がる第二室と、第二室に接して配置された第二開口部と、第二開口部を介して第二室と繋がっている第三室と、を備え、第一開口部の下端は、第一室搬送部材の回転中心より高く、第一開口部の下端は、第二開口部の上端より高く、第二開口部の下端から連続する第三室の底面があり、ガラス転移点(Tg)が、45℃以上60℃以下であり、0.10≦X(25)/D≦0.35を満たす一成分現像剤を有していることを特徴とする現像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット法の如き画像形成方法に用いられる現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンター装置の如き電子写真装置は、(1)高精細、高画質(2)省エネルギー化、をこれまで以上に達成しつつ、(3)高速化(4)低ランニングコストの装置開発が強く望まれている。
【0003】
近年では、装置の小型化やコスト低減等において有利であることから、キャリアを使用しない一成分現像方式の現像装置が多く提案されている。
ところで、現像装置を長期間に渡って使用すると、トナー母体粒子表面から外添剤が遊離したり、トナー母体粒子の中に外添剤が埋め込まれたりする。本発明では、これをトナー劣化と呼ぶ。トナー劣化が起こると、一成分トナー表面の外添剤効果が小さくなり、トナーの付着力が上がり、現像装置内の部材へのトナー融着が発生しやすくなる。
現像装置内に劣化したトナーが多くなると、現像装置内の部材へのトナー融着が発生しやすくなるが、反対に、現像装置内に新しいトナーが多くなると、現像装置内の部材へのトナー融着が発生しにくくなる。
【0004】
そこで、現像装置を、劣化トナーを含む現像室と、新しいトナーのみを含むトナー収納室に分離するという提案がなされている。このことにより、現像室にトナー収納室から常に新しいトナーを補給することができ、現像装置内の部材へのトナー融着を抑制できる。
例えば、特許文献1では、トナーの消費量やランニングコストが増大することなく、トナーの劣化を抑制することを目的として、以下の画像形成装置が提案されている。
該画像形成装置では、現像槽にトナー収容量の下限レベルセンサと上限レベルセンサを配置し、下限レベルセンサによってトナーエンプティが検出されたときに、新たなトナーをトナーホッパから現像槽内に補給する第1の補給制御が実行される。また、所定のプリント枚数ごとに現像槽内に新たなトナーを収容量の上限又は上限近傍まで補給する第2の補給制御が実行される。
しかし、この方法では、補給制御及び補給手段が複雑である。従って、実施するには高いコストが必要である。
【0005】
補給制御が無く、補給手段を簡易にすることで低コストを実現可能にする構成として、特許文献2では、現像ユニットとトナーカートリッジの間に制御弁を有するとともに、制御弁の下方に回転攪拌部材を設ける現像装置が提案されている。このことにより、トナーカートリッジから補給されたトナーが逆流することがなくなる。また、ホッパーにもともとあったトナーとトナーカートリッジから供給されたトナーを十分攪拌できるため、トナーの帯電安定化につながる。
【0006】
特許文献3では、装置内に2つの仕切り部材を設ける現像装置が提案されている。このことにより、現像されにくい粒径の大きなトナーが、現像装置内に蓄積してゆくことを抑制している。
現像室にトナー収納室から新しいトナーを補給するために必要な機能は二つ有る。
一つ目は、現像室からトナー収納室へのトナーの戻りがわずかであることである。これにより、現像室内の劣化トナーがトナー収納室内に混入しないので、トナー収納室内のトナーは常に新しい状態を保つことができる。
【0007】
二つ目は、トナー収納室から現像室に充分な速度でトナー補給が可能であることである。現像室内のトナー量が減り過ぎるとベタ画像を出力した時に、ベタ画像がトナー不足で白く抜ける。特に、ベタ画像を連続して出力した場合に、現像装置内からトナーが速く消費され、トナー不足が発生しやすい。
特許文献2、3のいずれの現像装置も、現像室にトナー収納室から新しいトナーを補給するために必要な二つの機能を同時に満たすことはできない。
【0008】
特許文献4では、現像室とトナー収納室が分かれた現像装置に用いるトナーに着目した例が記載されている。すなわち、微小圧縮試験におけるトナーの変位量、外添剤であるシリカのメッシュパス前後のSi強度、補給トナーと現像器内のトナーの帯電量を規定している。このことにより、補給トナーと現像に関わらなかったトナーとの物性差を少なくでき、補給時濃度ムラ、補給時カブリ等を抑制させている。
しかし、この現像装置は、交換自在な補給トナーカートリッジが必須構成となっているとともに補給制御及び補給手段が簡易な構成とは言い難いという観点で課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−240847号公報
【特許文献2】特開2008−107442号公報
【特許文献3】特開2002−049239号公報
【特許文献4】特開2006−184698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、現像室からトナー収納室へのトナーの戻りを低減するとともに、トナー収納室から現像室に充分な速度でトナー補給するということを両立できる現像装置を提供することである。また、上記課題に対して、現像室にトナー収納室から新しいトナーを補給する際の制御が無く、かつ、簡易な補給手段で可能となる現像装置を提供することである。さらには、上記のような簡易な補給手段であっても、補給時カブリといった帯電不良による画像弊害が抑制できる現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
現像装置内に少なくとも一成分現像剤を収納している現像装置において、前記現像装置は、一成分現像剤を収納する第一室と、前記第一室の上方に配置された第一開口部と、前記第一室から前記第一開口部へ一成分現像剤を汲み上げて供給するための第一室搬送部材と、前記第一開口部を介して前記第一室と繋がっている第二室と、前記第二室に接して配置された第二開口部と、前記第二開口部を介して前記第二室と繋がっている第三室と、を備え、前記第一開口部の下端は、前記第一室搬送部材の回転中心より高く、前記第一開口部の下端は、前記第二開口部の上端より高く、前記第二開口部の下端から連続している、前記第三室の底面があり、前記一成分現像剤は、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであって、前記トナーは、示差走査熱量計により測定されるガラス転移点(Tg)が45℃以上60℃以下であり、前記トナーに対する微小圧縮試験において、測定されたトナーの粒径をD(μm)、測定温度25℃で、前記トナー1粒子に負荷速度9.8×10-6N/secで荷重を加え、4.90×10-4Nの最大荷重に達したときに得られる変位量を変位量X(25)(μm)とした時、0.10≦X(25)/D≦0.35であることを特徴とする現像装置に関する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、現像室からトナー収納室へのトナーの戻りを低減するとともに、トナー収納室から現像室に充分な速度でトナー補給するということを両立できる現像装置を提供することができる。また、上記課題に対して、現像室にトナー収納室から新しいトナーを補給する際の制御が無く、かつ、簡易な補給手段で可能となる現像装置を提供することができる。さらには、上記のような簡易な補給手段であっても、カブリやトナー飛散などといった帯電不良による画像弊害が抑制できる現像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図
【図2】本発明に係るプロセスカートリッジの概略構成を示す断面図
【図3】図2のバッファ室及び現像室を説明する為の断面図
【図4】本発明に係るトナー収納室搬送部材の長手方向の構成図
【図5】現像室底面とバッファ室底面の傾斜角に関する、その他の実施例を示す断面図
【図6】トナー収納室とバッファ室間の開口と、バッファ室と現像室間の開口の長手位置関係を示す構成図
【図7】トナーの微小圧縮試験における荷重−変位曲線
【図8】フロー式粒子像測定装置における画像データの2値化画像
【図9】トナーの安息角を測定するための装置の概略的説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
本発明の現像装置は、現像装置内に少なくとも一成分現像剤を収納している現像装置において、前記現像装置は、一成分現像剤を収納する第一室と、前記第一室の上方に配置された第一開口部と、前記第一室から前記第一開口部へ一成分現像剤を汲み上げて供給するための第一室搬送部材と、前記第一開口部を介して前記第一室と繋がっている第二室と、前記第二室に接して配置された第二開口部と、前記第二開口部を介して前記第二室と繋がっている第三室と、を備え、前記第一開口部の下端は、前記第一室搬送部材の回転中心より高く、前記第一開口部の下端は、前記第二開口部の上端より高く、前記第二開口部の下端から連続している、前記第三室の底面があり、前記一成分現像剤は、少なくとも結着樹脂、着色剤、離型剤を少なくとも含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであって、前記トナーは、示差走査熱量計により測定されるガラス転移点(Tg)が45℃以上60℃以下であり、前記トナーに対する微小圧縮試験において、測定されたトナーの粒径をD(μm)、測定温度25℃で、前記トナー1粒子に負荷速度9.8×10-6N/secで荷重を加え、4.90×10-4Nの最大荷重に達したときに得られる変位量を変位量X(25)(μm)とした時、0.10≦X(25)/D≦0.35であるという特徴を有している。
まず、本発明の現像装置における装置構成例に関して図面に即して説明する。
【0015】
[電子写真画像形成装置]
先ず、本発明に係る電子写真画像形成装置(画像形成装置)の一例の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置100の断面図である。本発明に係る画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザービームプリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体に接続された画像読み取り装置、或いは画像形成装置本体に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置本体に入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ
(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本発明では、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
尚、本発明では、第1〜第4の画像形成部の構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
【0016】
本発明では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、図示矢印A方向(時計方向)に図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には帯電ローラ2及びスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。ここで、帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する帯電手段である。そして、スキャナユニット(露光装置)3は、画像情報に基づきレーザーを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段である。又、感光体ドラム1の周囲には、現像ユニット(現像装置)4及びクリーニング部材6が配置されている。ここで、現像ユニット4は、静電像をトナー像として現像する現像手段である。又、クリーニング部材6は、転写後の感光体ドラム1の表面に残ったトナー(転写残トナー)を除去するクリーニング手段である。更に、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。感光体ドラム1の回転方向において、帯電ローラ2による帯電位置、スキャナユニット3による露光位置、現像ユニット4による現像位置、中間転写ベルト5へのトナー像の転写位置、クリーニング部材6によるクリーニング位置は、この順番で設けられている。
【0017】
尚、本発明では、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーを用いる。又、本発明では、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラ(後述)を感光体ドラム1に対して接触させて反転現像を行うものである。即ち、本発明では、現像ユニット4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本発明では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上で露光されることにより電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させる。これにより、感光体ドラム1上の静電像が現像される。
本発明では、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング部材6とは、一体的にカートリッジ化されて、プロセスカートリッジ7を形成している。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。本発明では、各色用のプロセスカートリッジ7は全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。本発明では、プロセスカートリッジについて説明するが、現像装置4が単独で画像形成装置本体に着脱可能な構成としても良い。
【0018】
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト5は、全ての感光体ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材(駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、従動ローラ53)に掛け渡されている。
【0019】
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ8が並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが接触する一次転写部N1にニップ(一次転写ニップ)を形成する。そして、一次転写ローラ8に
、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
【0020】
又、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが接触する二次転写部N2にニップ(二次転写ニップ)を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。一次転写ローラ8と二次転写ローラ9とは同様の構成を有する。
【0021】
画像形成時には、先ず、感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザー光によって、帯電した感光体ドラム1の表面が走査露光され、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。次いで、感光体ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
【0022】
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。
その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部N2へと搬送される。そして、記録材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、中間転写ベルト5上の4色トナー像は、一括して記録材12上に二次転写される。
【0023】
トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において記録材12に熱及び圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。
又、一次転写工程後に感光体ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去され、除去トナー室(後述)に回収される。又、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。
尚、画像形成装置100は、所望の単独又はいくつか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
【0024】
[プロセスカートリッジ]
次に、本発明の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た本発明のプロセスカートリッジ7の断面(主断面)図である。尚、本発明では、収容している現像剤の種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
【0025】
プロセスカートリッジ7は、感光体ドラム1等を備えた感光体ユニット13と、現像ローラ17等を備えた現像ユニット4とを有する。
感光体ユニット13は、感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。クリーニング枠体14には、図示しない軸受を介して感光体ドラム1が回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆
動源)としての駆動モータの駆動力を受けることによって、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。
【0026】
又、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、帯電ローラ2、クリーニング部材6が配置されている。又、クリーニング部材6によって感光体ドラム1の表面から除去された転写残トナーを収容する除去トナー室14aが、クリーニング枠体14内に形成されている。クリーニング部材6によって感光体ドラム1の表面から除去された転写残トナーは、除去トナー室14a内に落下するように構成されている。
又、クリーニング枠体14には、帯電ローラ軸受(不図示)が取り付けられている。ここで、帯電ローラ軸受(不図示)は、帯電ローラ2の回転中心と感光体ドラム1の回転中心とを通る線に沿って、移動可能に取り付けられている。帯電ローラ2は、帯電ローラ軸受(不図示)に回転可能に取り付けられている。そして、帯電ローラ軸受(不図示)は、付勢手段としての帯電ローラ加圧バネ(不図示)により感光体ドラム1に向かって付勢される。
【0027】
一方、現像ユニット4は、現像ユニット4内の各種要素を支持する枠体としての現像枠体18を有する。現像ユニット4には、感光体ドラム1と接触して図示矢印D方向(反時計方向)に回転する現像剤担持体としての現像ローラ17が設けられている。本発明では、現像ローラ17と感光体ドラム1とは、対向部(接触部)において互いの表面が同方向(本発明では下から上に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転する。現像ローラ17は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部において、現像側板(不図示)を介して、回転可能に現像枠体18に支持されている。ここで、現像側板(不図示)は、現像枠体18の両側部にそれぞれ取り付けられている。尚、本発明では、現像ローラ17は感光体ドラム1に接触して配置されているが、現像ローラ17は、感光体ドラム1に対して所定間隔を開けて近接配置される構成であってもよい。
【0028】
又、現像ユニット4には、図示矢印E方向(反時計方向)に回転する現像剤供給部材としての現像剤供給ローラ(以下、単に「供給ローラ」という。)20が配置されている。ここで、供給ローラ20は、現像ローラ17の周面上に接触する。本発明では、供給ローラ20と現像ローラ17とは、対向部(接触部)において互いの表面が逆方向に移動するようにそれぞれ回転する。供給ローラ20は、現像ローラ17上にトナーを供給すると共に、現像に供されずに現像ローラ17上に残留したトナーを現像ローラ17上から剥ぎ取る作用をなす。又、現像ユニット4には、供給ローラ20によって現像ローラ17上に供給されたトナーの層厚を規制する現像剤規制部材としての現像ブレード21が配置されている。ここで、現像ブレード21は現像ローラ17の周面上に接触する。
現像枠体18は、トナー収納室(第一室)18a、現像室(第三室)18b、バッファ室(第二室)18cからなる。
【0029】
現像枠体18内に形成された現像剤収納室としてのトナー収納室18aには、現像剤として非磁性一成分現像剤、即ち、トナーが収納されている。又、トナー収納室18a内には、現像枠体18に回転自在に支持されたトナー収納室搬送部材22が設けられている。トナー収納室搬送部材22は、詳しくは後述するように、トナー収納室18a内に収納されたトナーを撹拌すると共に、バッファ室18cへとトナーを搬送する。
尚、本発明は、トナー収納室18a及びトナー収納室搬送部材22だけを有し、装置本体に着脱可能な現像剤容器(トナーカートリッジ)として構成したものにも適用できる。
そして、現像ユニット4は、現像側板(不図示)に設けられた、穴部(不図示)に嵌合する結合軸(不図示)を中心にして、感光体ユニット13に揺動可能に結合されている。画像形成時には、現像ユニット4は、付勢手段としての現像ユニット加圧バネ24により付勢されて、結合軸(不図示)を中心に時計方向に回動する。これによって、現像ローラ17が感光体ドラム1に当接する。
【0030】
[トナー収納室からバッファ室へのトナー搬送構成]
次に、本発明におけるプロセスカートリッジ7の現像ユニット4における、トナー収納室からバッファ室へのトナー搬送構成について詳しく説明する。
尚、本明細書において、現像ユニット(現像装置)或いはプロセスカートリッジの構成や動作について、上、下、垂直、水平といった方向を表す用語は、特に断りのない場合は、それらの通常の使用状態において見た時の方向を表す。つまり、現像ユニット(現像装置)或いはプロセスカートリッジの通常の使用状態は、適正に配置された画像形成装置本体に対して適正に装着され、画像形成動作に供し得る状態である。
【0031】
現像ユニット4は、現像室18b、トナー収納室18a、バッファ室18cとを有する。現像室18bには、現像ローラ17、供給ローラ20及び現像ブレード21などが収容されている。トナー収納室18aには、バッファ室18cに供給されるトナーが収納されると共に、バッファ室18cにトナーを供給するトナー収納室搬送部材(シート部材)22が設けられている。そして、トナー収納室18aは、バッファ室18cよりも鉛直方向下方に配置されている。バッファ室18cとトナー収納室18aとの間には、トナーが通過するための、トナー収納室とバッファ室間の開口44を有する隔壁26が設けられている。ここで、トナー収納室とバッファ室間の開口44は、トナー収納室18aの上方に設けられている。従って、トナー収納室18aからバッファ室18cへと重力に反してトナーを搬送する必要がある。
【0032】
そこで、トナー収納室18a内には、バッファ室18cにトナーを供給するための弾性を有するトナー収納室搬送部材22が回転可能に設けられている。トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aは、トナー収納室搬送部材22の回転中心よりも高く配置されている。
【0033】
バッファ室18cから現像室18bへのトナー供給については後述する。
トナー収納室18aには、トナー収納室とバッファ室間の開口44の下方に、トナー収納室搬送部材22と当接する変形部としてのガイド部18a2が設けられている。トナー収納室搬送部材22は、その回転に伴って、ガイド部18a2に当接する。これによって、トナー収納室搬送部材22がガイド部18a2から力を受ける。その結果、トナー収納室搬送部材22の有する弾性力に抗してトナー収納室搬送部材22が変形する。又、トナー収納室搬送部材22は、ガイド部18a2に接触した状態で回転することで、その回転方向下流側の表面上にトナーを担持した状態で搬送する。
【0034】
本発明では、ガイド部18a2は、図2に示すように、トナー収納室18aの内壁の直線部分であって、トナー収納室搬送部材22が離れる点pまでの箇所を指す。
又、トナー収納室18aには、トナー収納室搬送部材22の回転方向においてガイド部18a2よりも下流側、且つ、トナー収納室とバッファ室間の開口44よりも上流側において、復元部18a4が設けられている。ここで、復元部18a4は、トナー収納室搬送部材22とトナー収納室18aの内壁との接触を開放するための部分である。
本発明では、復元部18a4は、トナー収納室18aの内壁のうち点pからトナー収納室とバッファ室間の開口44までの箇所を指す。又、復元部18a4は、トナー収納室搬送部材22の回転軸を含む水平面よりも上方に配置されている。言い換えると、境界部18a3が、トナー収納室搬送部材22の回転中心を通る水平面と同じ高さか、前記水平面よりも上方に設けられている。
【0035】
従って、トナー収納室搬送部材22の回転に伴ってトナー収納室搬送部材22の自由端側(トナー収納室18aの内壁側)の先端がガイド部18a2を通過した後に、トナー収納室搬送部材22のトナー収納室18aの内壁との当接が開放される。
すると、トナー収納室搬送部材22は、ガイド部18a2によって変形していた状態から開放されて、それ自体の弾性復元力によって自然状態(元の形状)へと復元する。
このトナー収納室搬送部材22の復元方向への形状変化によって、トナー収納室搬送部材22上に担持されて搬送されていたトナーは、トナー収納室とバッファ室間の開口44へ向けて重力に反して飛翔する。
【0036】
このトナー収納室とバッファ室間の開口44は、復元部18a4よりもトナー搬送部材22の回転方向下流側に位置する。
ここで、点pは、ガイド部18a2と復元部18a4との間の境界部18a3である。そして、この境界部18a3は、トナー収納室とバッファ室間の開口44の下端44a(即ち、トナー収納室とバッファ室間の開口44の最下点)よりも下方に設けられている。そして、トナー収納室搬送部材22は、境界部18a3から離れる際には、その弾性による復元によって、トナー収納室とバッファ室間の開口44の周辺と接触可能な位置まで回転している。従って、トナー収納室搬送部材22が境界部18a3から離れた瞬間に、トナー搬送部材22はその弾性力でもって、トナー収納室とバッファ室間の開口44の周辺に突き当たる。これにより、トナーを確実に、トナー収納室とバッファ室間の開口44へ飛翔させることができる。
【0037】
トナー収納室搬送部材22は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部において、トナー収納室18aを形成する現像枠体18に回転可能に支持されている。そして、トナー収納室搬送部材22は、図示しない駆動手段(駆動源)により図示矢印G方向(時計方向)に回転駆動される。
【0038】
トナー収納室搬送部材22は、トナーを搬送するための搬送部としての可撓性を有するシート部22aと、シート部22aが取り付けられると共に回転駆動力を受けるための搬送支持軸(回転軸)22bとを有している。搬送支持軸22bは、感光体ドラム1、現像スリーブ17及び供給ローラ20の長手方向(回転軸線方向)と略平行に、トナー収納室18aの長手方向の全域にわたって配置されている。シート部22aは、搬送支持軸22bの長手方向(回転軸線方向)の略全域にわたって延在する連続したシート(板状部材)である。そして、シート部22aは、搬送支持軸22bの長手方向と略直交する方向(回転半径方向,短手方向)の一端部において搬送支持軸22bに取り付けられている。
シート部22aは、例えば、ポリエステルフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの可撓性の樹脂製シートを用いて好適に作製することができる。シート部22aの厚みは、50μm〜250μmが好適である。
【0039】
トナー収納室搬送部材22の回転中心からシート部22aの自由端までの長さL1は、前記回転中心からトナー収納室とバッファ室間の開口の下端44a(即ち、トナー収納室とバッファ室間の開口44の最下点)までの直線距離L3よりも大きく設定されている。ここで、上記長さL1は、シート部22aが変形されていない自然状態におけるトナー収納室搬送部材22の回転半径の最大値に相当する。これにより、トナーをより確実に、トナー収納室とバッファ室間の開口44へ送ることができる。
図4は、図3に示す矢印V方向から見たトナー収納室搬送部材22の長手方向の構成図である。好ましくは、シート部22aの長手方向の長さMは、トナー収納室とバッファ室間の開口44の長手方向の長さNよりも長い。
【0040】
[バッファ室から現像室へのトナー供給構成]
次に、本発明におけるプロセスカートリッジ7の現像ユニット4における、バッファ室18cから現像室18bへのトナー供給構成について詳しく説明する。
現像枠体18は、トナー収納室18a、バッファ室18c、現像室18bを有するが、トナー収納室18aとバッファ室18cは、トナー収納室とバッファ室間の開口44を介し
て繋がっている。また、バッファ室18cと現像室18bは、バッファ室と現像室間の開口45を介して繋がっている。
【0041】
現像枠体18は、現像室18bとトナー収納室18aまたは、バッファ室18cとトナー収納室18aとを隔てる隔壁26を有する。本発明では、隔壁26は、上に凹となり、供給ローラ20の下方に位置する、供給ローラ下方の現像室底面26cと、現像ブレード21の下方に位置する、現像ブレード下方の現像室底面26fと、バッファ室18cの下方に位置する、バッファ室底面26dと、トナー収納室18aとバッファ室18cとを仕切る、トナー収納室とバッファ室間の仕切り壁26eとを有する。
図3は、図2のバッファ室18c及び現像室18bを説明する為の断面(主断面)図である。
【0042】
ここで、バッファ室と現像室間の仕切り壁43の最下部は、バッファ室と現像室間の開口の上端45aである。バッファ室と現像室間の開口の上端45aを通る鉛直線と、供給ローラ下方の現像室底面26cとの交点を、バッファ室と現像室間の開口の下端45bとする。従って、本発明では、バッファ室と現像室間の開口の下端45bが、供給ローラ下方の現像室底面26cと、バッファ室底面26dの境界となる。
供給ローラ20を挟んで、供給ローラ20と現像ローラ17との当接部の反対側にバッファ室と現像室間の開口45が設けられている。このバッファ室と現像室間の開口45を介して、バッファ室18c内のトナーが、現像室18bに供給される。
【0043】
ここで、本発明では、供給ローラ20は、バッファ室と現像室間の開口45との対向部において表面が上方から下方へ移動する方向に回転する。即ち、供給ローラ20は、バッファ室と現像室間の開口45から現像室18bに供給されたトナーを、供給ローラ下方の現像室底面26cに沿って下方に向けて取り込むように回転する。又、バッファ室と現像室間の開口45の下端45bは、供給ローラ20の下端よりも上方に配置される。
【0044】
バッファ室と現像室間の開口45付近の現像室18b内に充分にトナーがある場合は、バッファ室18cから現像室18bへトナーが移動しない。しかし、バッファ室と現像室間の開口45付近の現像室18b内にトナーが無い場合は、バッファ室と現像室間の開口の下端45b付近に存在するバッファ室18c内トナーが、現像室18bへと崩落する。そして、バッファ室18cから現像室18bへトナーが移動する。
従って、現像室18b内のトナー剤面(集合としてのトナーの表面)の高さは、常に、バッファ室と現像室間の開口の下端45b以上に保つことができる。また、トナー剤面が供給ローラ20の下端よりも上方にできる。そのため、供給ローラ20の表面とトナーとの接触面積が増加し、供給ローラ20へのトナー供給を向上する効果が得られる。
【0045】
[現像室からトナー収納室へのトナー戻り防止方法]
現像ユニット4の使用初期時には、トナー収納室18aは所定量のトナーが充填され、バッファ室18c、現像室18bはトナーが無い。その状態から、現像ユニット4を使用開始すると、トナー収納室18aからバッファ室18c、更に現像室18bにトナーが送られる。そして、現像室18b及びバッファ室18cのトナー剤面高さは、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aの高さと同程度になるまで溜められる。
バッファ室18cのトナー剤面には常にトナー収納室18aからトナーが搬送されてくる。しかし、バッファ室18cのトナー剤面高さは、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aの高さと同程度までしか溜められず、バッファ室18cに溜めきれないトナーは、トナー収納室18aの下部へ落下する。
【0046】
ここで、本発明では、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aは、トナー収納室搬送部材22の回転中心より高く、トナー収納室18aからのトナー搬送は、トナーを
飛翔させて行っている為、バッファ室18c内のトナーに大きな粉圧がかからない。
すなわち、トナー収納室18aのトナーと、バッファ室18cのトナーは、バッファ室18cのトナー剤面付近でのみ混じり、トナー収納室18aからのトナー搬送によって、バッファ室18cの内部のトナーがトナー収納室18aに戻らない。
また、バッファ室18c内のトナーは、自重で上方から下方へしか移動できない。このように、バッファ室18c内では上下にトナー循環していない為、バッファ室18cの内部では上下にトナーが混じらない。
【0047】
ここで、本発明では、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aは、バッファ室と現像室間の開口の上端45aより高い。このように設定すると、供給ローラ20付近から、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aまでトナー剤面がつながらない。すなわち、現像室18b内のトナーは、トナー剤面下のバッファ室と現像室間の開口45を通らなければ、トナー収納室18aに戻らない。しかし、上述の通り、バッファ室18cの内部では上下にトナーが混じらない。従って、本発明を実施することにより、現像室18b内のトナーは、トナー収納室18aに戻らない。
【0048】
なお、バッファ室18c内のトナーは、供給ローラ20の回転による影響を受けて、微小振動しており、不動層を形成していない。従って、バッファ室と現像室間の開口45付近の現像室18b内にトナーが無い場合は、バッファ室と現像室間の開口下端の45b付近に存在するバッファ室18c内トナーは、現像室18bへと容易に崩落する。そのため、バッファ室18cから現像室18bへトナーが移動する。また、バッファ室18c内のトナーは、供給ローラ20の回転による影響を受けて、微小振動している。そのため、バッファ室18c内のトナーが詰まることが無く、バッファ室18c内のトナーが、トナー収納室18aから現像室18bへのトナー供給を阻害することは無い。
【0049】
バッファ室と現像室間の開口の下端45bにおける、供給ローラ下方の現像室底面26cの接線aと、水平線aとのなす角βは、非磁性一成分トナーの安息角より大きいことが、バッファ室から現像室へのトナーの移動を容易にする観点で好ましい。なお、本発明において、トナーの安息角は、後述するトナー粒子への無機微粉体の添加時間を調整したり、無機微粉体の添加量や粒径を調整したりすることで調整できる。さらには、トナーの粒径や形状を調整したりすることでも調整できる。トナー粒子の硬度を調整することで、添加する無機微粉体の付着状態が変化させて調整することもできる。
本発明では、現像室18bは撹拌部材を備えない例を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、現像室内に攪拌回転部材を追加しても良い。
【0050】
[現像室底面とバッファ室底面の傾斜角の連続性]
図2、図3では、バッファ室と現像室間の開口の下端45bが、供給ローラ下方の現像室底面26cと、バッファ室底面26dの境界となる。バッファ室と現像室間の開口の下端45b付近において、供給ローラ下方の現像室底面26cの傾斜角と、バッファ室底面26dの傾斜角は一致しない。しかし、これに限定されるものではない。
例えば、図5に、バッファ室と現像室間の開口の下端45b付近において、供給ローラ下方の現像室底面26cの傾斜角と、バッファ室底面26dの傾斜角が一致する例を示す。
このような場合でも、現像室18bからトナー収納室18aへのトナーの戻りを低減すること、及び、トナー収納室18aから現像室18bに充分な速度でトナー補給が可能であることを同時に実現することができる。
このような構成ならば、図2、3の実施形態に限定されるものではない。
【0051】
[トナー収納室搬送部材とバッファ室との関係]
図2、図3では、トナー収納室搬送部材22はバッファ室18cに侵入しない。
また、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aは、トナー収納室搬送部材22の回転中心より高い。従って、トナー収納室18aからのトナー搬送は、トナーを飛翔させて行っている為、バッファ室18c内のトナーに大きな粉圧がかからない。すなわち、トナー収納室18aのトナーと、バッファ室18cのトナーは、バッファ室18cのトナー剤面付近でのみ混じり、トナー収納室18aからのトナー搬送によって、バッファ室18cの内部のトナーがトナー収納室18aに戻らない。
このように、トナー収納室搬送部材22がバッファ室18cに侵入しないで、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aが、トナー収納室搬送部材22の回転中心より高く設定している。その結果、現像室18bからトナー収納室18aへのトナーの戻りを低減することを実現できる。このような構成ならば、図2、図3の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
[現像室からトナー収納室へのトナーの戻りを防止する方法の補足]
現像室18bからトナー収納室18aへのトナーの戻りを防止する方法を補足する。
例えば、図6aに、長手位置の一部のみ、トナー収納室とバッファ室間の開口44がある例を示す。なお、図6aは、図3に示す矢印V方向から見た、トナー収納室搬送部材22とトナー収納室とバッファ室間の開口44の長手位置関係を示す構成図である。このようにすると、一度現像室18bに溜まったトナーは、長手位置の一部の、トナー収納室とバッファ室間の開口44からしかトナー収納室に戻れない。従って、現像室18bからトナー収納室18aへトナーが戻りにくいことを実現できる。
【0053】
また、図6bに、長手位置の一部のみ、バッファ室と現像室間の開口45がある例を示す。なお、図6bは、図3に示す矢印V方向から見た、トナー収納室とバッファ室間の開口44と、バッファ室と現像室間の開口45の長手位置関係を示す構成図である。
このようにすると、一度現像室18bに溜まったトナーは、長手位置の一部の、バッファ室と現像室間の開口45からしかトナー収納室に戻れない。従って、現像室18bからトナー収納室18aへトナーが戻りにくいことを実現できる。
【0054】
また、図6cに、トナー収納室搬送部材22の回転中心から最外部までの長さが、長手位置で異なる例を示す。なお、図6cは、図3に示す矢印V方向から見た、トナー収納室とバッファ室間の開口44及びトナー収納室搬送部材22の長手位置関係を示す構成図である。このようにすると、一度現像室18bに溜まったトナーは、長手位置の一部の、トナー収納室とバッファ室間の開口44からしかトナー収納室に戻れない。
【0055】
また、トナー収納室搬送部材22の形状を、トナー収納室とバッファ室間の開口44の長手位置にあわせて、図6cのようにすることで、トナー収納室18aからバッファ室18cにトナーを搬送しやすくできる。従って、トナー収納室18aから現像室18bに充分な速度でトナー補給が可能であることと、現像室18bからトナー収納室18aへトナーが戻りにくいことを同時に実現できる。
また、図6dに、トナー収納室とバッファ室間の開口44または、バッファ室と現像室間の開口45の形状が長手位置で異なる例を示す。なお、図6dは、図3に示す矢印V方向から見た、トナー収納室とバッファ室間の開口44と、バッファ室と現像室間の開口45の長手位置関係を示す構成図である。
【0056】
トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aと、バッファ室と現像室間の開口の上端45aの高さの差は、長手中央の方が、長手両端より大きい。ここで、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aと、バッファ室と現像室間の開口の上端45aの高さの差が大きいほど、現像室18bからトナー収納室18aへトナーが戻りにくい。従って、長手中央の方が、長手両端より、現像室18bからトナー収納室18aへトナーが戻りにくい。一度現像室18bに溜まったトナーは、長手位置の一部からしかトナー収納室に戻
れない。このように、トナー収納室とバッファ室間の開口の下端44aと、バッファ室と現像室間の開口の上端45aの高さの差を長手位置で異なるようにすることで、現像室18bからトナー収納室18aへトナーが戻りにくいことを実現できる。
このような構成ならば、図2、3の実施形態に限定されるものではない。
【0057】
[プロセスカートリッジ形態]
上記例では、現像ユニット4及び感光体ユニット13を一体的にカートリッジ化して、画像形成装置100に対して着脱自在なプロセスカートリッジ7とした。しかし、これに限定されるものではない。
例えば、感光体ドラム1を画像形成装置100に固定配置して、現像ユニット4のみを画像形成装置100に着脱自在なカートリッジ(現像カートリッジ)として交換する構成の画像形成装置においても、同様に本発明を適用することができる。
或いは、現像ユニット4を画像形成装置100に固定配置して、この現像ユニット4にトナーを補給する構成の画像形成装置においても、同様に本発明を適用することができる。
【0058】
[補給制御]
上記例では、補給制御を行わなかったが、補給制御を行っても良い。
例えば、現像装置にトナー劣化を検知する手段を備えて、トナー劣化を検知した場合、現像室18bからトナーを強制的に排出し、本発明を用いて、トナー収納室18aから現像室18bにトナーを補給しても良い。
これにより、現像室18b内に、著しく劣化したトナーが溜まらないので、現像装置内の部材へのトナー融着を防止することができ、長期間に渡って安定して現像装置を使用することができる。
【0059】
[一成分現像剤]
続いて、本現像装置に一成分現像剤として用いられるトナーについて説明する。
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、離形剤を少なくとも含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであって、前記トナーは、示差走査熱量計により測定されるガラス転移点(Tg)が45℃以上60℃以下であり、前記トナーに対する微小圧縮試験において、測定されたトナーの粒径をD(μm)、測定温度25℃で、前記トナー1粒子に負荷速度9.8×10-6N/secで荷重を加え、4.90×10-4Nの最大荷重に達したときに得られる変位量(μm)を変位量X(25)とした時、0.10≦X(25)/D≦0.35の範囲内であるという特徴を有している。
なお、本発明で用いるトナーの粒径Dは、重量平均粒径(D4)を意味する。
【0060】
本発明のトナーに対する微小圧縮試験において、X(25)/Dを本発明の範囲内に制御することにより、本発明の現像装置内におけるトナー収納室から現像室へのトナーの移動がスムースになり、濃度均一性が高くなる。特に、画像印字比率が0.5%以下の低印字の画像を連続してプリントされた直後に、画像比率が15%以上の高印字の画像を出力された場合においても、濃度均一性を高く維持できる。例えば、モノクロ(ブラック)単色の連続画像出力が続いた後、画像比率の高いフルカラー画像を出力された場合のカラートナーカートリッジなどがそれにあたる。
【0061】
先に述べたように、バッファ室18c内のトナーは、供給ローラ20の回転による影響を受けて、微小振動している。通常画像の出力時であれば、微小振動により、トナーの詰まりを抑制する効果があるが、低印字の場合は、トナーの入れ替わりが少なくなり、極端な場合、トナーが消費されず、バッファ室18cから現像室18bへのトナーの移動がなくなる。その場合、バッファ室18c内のトナーは、出口がなくなり、供給ローラ20の回転による微小振動によりパッキングしてしまう場合がある。これは特に、カートリッジ
寿命後半において顕著である。
【0062】
本発明の現像装置においては、トナーをトナー収納室18aからバッファ室18cに送ることは、トナー収納室搬送部材22の弾性力を利用して、トナーを飛翔させることによって行なっている。低印字の画像を連続してプリントする場合、バッファ室18c内のトナーは、現像室18bへのトナーの移動が少なくなるため、新たに搬送されてきたトナーの全量を受け入れることができなくなる。そのため、バッファ室18c内に受け入れられなかったトナーは、再びトナー収納室18aに戻され、搬送が繰り返されることになる。このような状態になった場合、本発明の現像装置特有のトナー劣化が起きやすいものと考えている。そのため、カートリッジ寿命後半において、バッファ室18c内におけるトナーのパッキングが起こりやすくなるものと考えている。
【0063】
微小圧縮試験においてX(25)が、0.10≦X(25)/D≦0.35であるということは、この測定条件におけるトナー粒径の変形率が10%以上35%以下であるということを意味している。
そして、X(25)/Dを上記範囲内に制御することで、上記のようなパッキングを抑制でき、現像室18bへのトナーの移動がスムースになるため、濃度変動を抑制できているものと考えている。そのメカニズムは明確ではないが、下記の理由により、トナーの形状が適度に変形可能だからではないかと予想している。
【0064】
低印字の画像を連続してプリントした場合の繰り返しの搬送動作により、トナー収納室搬送部材22とトナー搬送部材と当接する内壁18a1、ガイド部(変形部)18a2との間において、トナーが摺擦を繰り返し受けることになる。このとき、本発明のトナーは、適度な柔軟性を持っているため、形状が適度に変形可能なのであろうと考えている。
また、X(25)/Dを上記範囲内に制御することで、トナー粒子の適度な変形により、感光体上に転写されずに残った、転写残トナーのクリーニングも良好に行なうことができる。さらに、外添剤が付着しやすくなるとともに、高速での多数枚のプリントアウトでも外添剤が遊離しにくく、現像性や転写性が向上する傾向がある。さらには、低温定着性に優れ、適度な画像光沢性を持った画像が得られるといった効果も見られる。
X(25)/Dは、0.10以上0.30以下が好ましく、より好ましくは、0.10以上0.25以下である。
【0065】
本発明のトナーは、示差走査熱量計により測定されるガラス転移点(Tg)を45℃以上60℃以下にすることにより、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立によるバッファ室18c内でのトナーのパッキング抑制につながる。また、保存安定性と低温定着性の両立したトナーを得ることができる。
本発明のトナーは、トナー粒子の表面近傍が、比較的硬いが、最表層は、加熱時にシャープメルト性を持っており、かつトナー粒子の内部が軟らかいトナー構造であることが好ましい。このことにより、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立によるバッファ室18c内でのトナーのパッキング抑制につながる。
【0066】
例えば、トナー粒子の内層を形成するバインダー樹脂のガラス転移点(Tg)を下げたり、重量平均分子量(Mw)を下げたりする。その上で、トナー粒子の外層として、TgやMwの高い極性樹脂とTgやMwの低い樹脂を少なくとも2種類以上併用して充分な量を存在せしめることが挙げられる。
また、この様なトナーを得るためには、コア/シェル構造を有するトナー粒子とすることが好適である。このような方法を用いることで、上記X(25)の値を調整できる。
【0067】
コア/シェル構造を有するトナーを得るためには、例えば、下記手法を用いることで可能となるが、これらに限定されるものではない。
(1)トナー粒子を水系媒体中で製造し、トナー粒子に後述する極性樹脂を含有させ、樹脂によるシェル層を形成させる。更に、該極性樹脂は、コア部を形成する結着樹脂との相溶性を考慮して選定する。
(2)水系媒体中でコア粒子を製造した後、樹脂を構成するモノマーを添加してシード重合することによりシェル層を形成する。
(3)コア粒子よりも体積平均粒子径が小さい極性樹脂微粒子をコア粒子に機械的に付着させる。或いは水系媒体中で体積平均粒子径が小さい極性樹脂微粒子をコア粒子に凝集により付着させ加熱により固着させる。
【0068】
内層(コア)と外層(シェル)との密着性が弱いと、連続出力でトナーがストレスを受け続けた場合、外層の剥離や削れが生じ、トナー粒子の表面組成がある時点で急激に変化する可能性がある。その結果、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立によるバッファ室18c内でのトナーのパッキング抑制を充分に行なえない場合がある。
【0069】
本発明においては、極性を持ちつつコアである結着樹脂(コアバインダー樹脂)との相溶性を同時にもつ極性樹脂をシェルの一部として使用することで、コアとの密着性を十分確保しながらシェル形成することが重要であると考えている。さらに、物性の異なる少なくとも2種類以上の極性樹脂(シェルバインダー)を併用してシェルとすることで、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立を図っている。そのため、少なくとも1種類は、極性を持ちつつ、結着樹脂との相溶性を同時にもつ樹脂を用い(極性樹脂A)、もう1種類は、前述した極性樹脂Aよりも極性の高い樹脂(極性樹脂B)を用いることが好適である。
極性樹脂Aの例としては、コアを形成する結着樹脂(コアバインダー樹脂)と同組成のものを含んでいる極性樹脂が挙げられる。極性樹脂Bの例としては、極性樹脂Aと同組成のものを含んでいる極性樹脂やポリエステル樹脂が挙げられる。特に酸価と水酸基価の関係を制御することで、極性樹脂Bを最表層に持ちつつ表層近傍に極性樹脂Aがいるという、好ましいシェルの形態をとることが可能となる。
【0070】
また、このような好ましいコア/シェル構造をとるためには、懸濁重合法によりトナーを製造することが好ましい。
本発明に用いられるトナー粒子を懸濁重合法により製造する場合は、分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂A、Bを添加することが好ましい。その場合、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、極性樹脂の存在状態を制御することができる。即ち、トナー粒子の表面に極性樹脂の薄層のシェルを形成させたり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって極性樹脂を存在させたりすることが可能である。また、極性樹脂の添加により、コアシェル構造のシェル部分の強度を自由に制御することができる。そのため、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立によるバッファ室18c内でのトナーのパッキング抑制に対して最適化を図ることができる。
【0071】
上述したようなトナー設計とすることで、コアバインダー樹脂中に極性樹脂Aが相溶しつつ、相分離が起こるため、内層と外層との界面において、それぞれの成分が相溶した密着性の高いコア/シェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。また、極性樹脂AとBの間の密着性も充分なものとなる。その理由は明確ではないが、極性樹脂の持つ極性基部分での相互作用によるものでないかと考えている。そして、トナー粒子の内層から外層にかけて連続的に極性が高くなる密着性の高いコア/シェル構造を持ったトナーを得ることが可能となる。
【0072】
極性樹脂Aとしては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如き含窒素単量体の重合体もしくは含窒素単量体とスチレン−不飽和カルボン
酸エステルとの共重合体;アクリロニトリルの如きニトリル系単量体;塩化ビニルの如き含ハロゲン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸の如き不飽和カルボン酸;不飽和二塩基酸;不飽和二塩基酸無水物;ニトロ系単量体の重合体もしくはそれとスチレン系単量体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体といったスチレン系共重合体との共重合体;ポリエステル;エポキシ樹脂;が挙げられる。
【0073】
特に、スチレン−メタクリル酸共重合体、又はスチレン−アクリル共重合体を用い、ビニル系の重合性単量体を用いて懸濁重合にてトナーを製造した場合、トナーの結着樹脂との相溶性がさらに良好になるため好ましい。
また、スチレン系の共重合体を用いる場合には、残留スチレンが0ppm以上300ppm以下の範囲であることが、極性樹脂と結着樹脂との馴染みを良好にするために好ましい。
【0074】
極性樹脂Aは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定された重量平均分子量Mw(A)が8,000以上50,000以下、数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)が1.05以上5.00以下であるものが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量Mw(A)が10,000以上30,000以下である。なお、本発明において極性樹脂Aの重量平均分子量Mw(A)は極性樹脂を製造する際に用いる重合開始剤の量を調整したり、反応温度を調整したりすることによって調整することができる。大きくする場合には例えば重合開始剤の量を減らすことで可能であり、逆に小さくする場合には、重合開始剤の量を増やすことで可能である。また、ガラス転移点Tg(A)は、80℃以上100℃以下であるものが好ましい。本発明において極性樹脂Aのガラス転移点Tg(A)は極性樹脂を製造する際に用いる、モノマー種の組み合わせを変更したり、モノマーの量比を調整したりすることによって調整することができる。大きくする場合には例えば、極性樹脂Aが本発明で好ましく用いられる、スチレン−アクリル共重合体の場合、モノマー単独で重合後のTgが、比較的高くなるモノマー(例えばスチレン)量を多く添加することで可能であり、逆に小さくする場合には、モノマー単独で重合後のTgが比較的低くなるモノマー(例えばブチルアクリレート)量を多く添加することで可能である。更に、酸価Av(A)は5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であるものが好ましく、水酸基価OHv(A)は、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるものが好ましい。その際、酸価と水酸基価は、同時に持つことが好ましい。
【0075】
極性樹脂Aの含有量は、結着樹脂の100質量部に対して5質量部以上40質量部以下であることが好ましい。より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。極性樹脂Aを上述のように設計することで、X(25)を本発明の範囲内に制御することが容易となる。なお、ここでいう結着樹脂の質量部は、トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、重合性単量体の質量部とする。
【0076】
本発明に用いられる極性樹脂Bとしては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如き含窒素単量体の重合体もしくは含窒素単量体とスチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;アクリロニトリルの如きニトリル系単量体;塩化ビニルの如き含ハロゲン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸の如き不飽和カルボン酸;不飽和二塩基酸;不飽和二塩基酸無水物;ニトロ系単量体の重合体もしくはそれとスチレン系単量体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体といったスチレン系共重合体との共重合体;ポリエステル;エポキシ樹脂;が挙げられる。
【0077】
特に、ビニル系の重合性単量体を用いて懸濁重合にてトナーを製造する場合、極性樹脂Aとして、スチレン−メタクリル酸共重合体、又はスチレン−アクリル共重合体を、極性樹脂Bとしては、同様の樹脂あるいはポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂を使うとより好ましい。
【0078】
また、スチレン系の共重合体を用いる場合には、残留スチレンが0ppm以上300ppm以下の範囲であることが、極性樹脂と結着樹脂との馴染みを良好にするために好ましい。
極性樹脂Bは、GPCで測定された重量平均分子量Mw(B)が5,000以上25,000以下、数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)が1.05以上5.00以下であるものが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量Mw(B)が、5,000以上20,000以下である。なお、本発明において極性樹脂Bの重量平均分子量Mw(B)は、極性樹脂を製造する際の反応時間を調整したり、開始剤量を調整したりすることによって調整することができる。大きくする場合には例えば反応時間を長くすることで可能であり、逆に小さくする場合には、反応時間を短くすることで可能である。また、ガラス転移点Tg(B)は、60℃以上80℃以下であるものが好ましい。本発明において極性樹脂Bのガラス転移点Tg(B)は、極性樹脂を製造する際に用いる、モノマー種の組み合わせを変更することによって調整することができる。大きくする場合には例えば、極性樹脂Bが、本発明で好ましく用いられる、ポリエステル樹脂の場合、カルボン酸として、非芳香族系のアジピン酸などのモノマーを選択することで可能であり、逆に小さくする場合には、芳香族系のテレフタル酸などのモノマーを選択することで可能である。
極性樹脂Bの含有量は、結着樹脂の100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは3質量部以上10質量部以下である。極性樹脂Bを上述のように設計することで、X(25)を本発明の範囲内に制御することが容易となる。
なお、ここでいう結着樹脂の質量部は、トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、重合性単量体の質量部とする。
極性樹脂A、BのGPCで測定された重量平均分子量Mw(A)、Mw(B)は、Mw(B)<Mw(A)であることが好ましく、ガラス転移点Tg(A)、Tg(B)は、Tg(B)<Tg(A)であることが好ましい。
【0079】
また、極性樹脂A、Bの添加量の総量は、結着樹脂100質量部に対して6質量部以上30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。なお、ここでいう結着樹脂の質量部は、トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、重合性単量体の質量部とする。
さらに、極性樹脂Aと極性樹脂Bの含有量の質量比率が、極性樹脂A:極性樹脂B=95:5以上50:50以下であることが好ましい。
上述のような設計にすることで、現像装置内でのワックスの染み出しが適度に抑制され、流動性を高く維持することが可能となる。その結果、バッファ室18c内のトナーが、パッキングすることなく、現像室18bへ容易に移動することができる。
また、X(25)を本発明の範囲内に制御することが容易となる。
【0080】
懸濁重合法にてトナー粒子を製造する際には、添加する極性樹脂(シェルバインダー樹脂)が相溶することによりTgが上昇することを考慮することが好ましい。つまり、コアバインダー樹脂を生成するためのモノマーの理論Tgを低く設定し、製造されるトナーのTgが所定の範囲内となるようにすることが好ましい。低い理論Tgで設計した場合には耐熱性(耐ブロッキング性)が低下してしまいやすいが、このように設計することで、耐熱性の低下を抑制できる。
【0081】
本発明においては、コアバインダー樹脂のガラス転移点は、10℃以上55℃以下であ
ることが好ましく、より好ましくは、15℃以上50℃以下である。
本発明に用いられるコアバインダー樹脂としては、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。
上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が挙げられる。該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0082】
上記ビニル系重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドの如きエン系単量体。
【0083】
これらは、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139乃至192(John Wiley&Sons製)に記載の理論ガラス転移点(Tg)を参考にして単量体を適宜混合して用いられる。
本発明のトナーは、ジビニルベンゼンを0.005質量%以上0.250質量%含んでいることが好ましい。ジビニルベンゼンを含有すると、コア部が架橋されることで適度にワックス成分が染み出すようになるため、耐オフセット性の高いトナーが得られる。
より好ましくは、ジビニルベンゼンを0.010質量%以上0.200質量%以下含有させることが効果的である。ジビニルベンゼンの含有量が上記範囲の程度であれば、低いコア部のTgを維持したまま、コア部の弾性を高めることができ、現像装置内でのワックスの染み出しが適度に抑制され、流動性を高く維持することが可能となる。その結果、バッファ室18c内のトナーが、パッキングすることなく、現像室18bへ容易に移動することができる。
【0084】
尚、本発明におけるジビニルベンゼンの含有量はジビニルベンゼンに由来するユニットの量として算出している。
また本発明のトナーを製造する場合においては、本発明のトナーを好ましい分子量分布にするために、低分子量ポリマーを添加することができる。低分子量ポリマーは、粉砕法でトナーを製造する場合には、結着樹脂等と溶融混練する際に添加することができ、また懸濁重合法によってトナーを製造する場合には、重合性単量体組成物中に添加することができる。該低分子量ポリマーとしては、GPCにより測定される重量平均分子量(Mw)が2,000以上5,000以下の範囲で、且つ、Mw/Mnが4.5未満、好ましくは3.0未満のものが好ましい。
低分子量ポリマーの例としては、低分子量ポリスチレン、低分子量スチレン−アクリル酸エステル共重合体、低分子量スチレン−アクリル共重合体が挙げられる。
【0085】
次に、図7を参照しながら微小圧縮試験の測定方法について説明する。
図7は微小圧縮試験で本発明のトナーを測定した際のプロファイル(荷重−変位曲線)であり、横軸はトナーが変形した変位量、縦軸はトナーにかけている荷重量を表している。
本発明における微小圧縮試験は、(株)エリオニクス製 超微小硬度計ENT1100を用いた。使用圧子は先端面が20μm×20μmの平圧子を用いて測定した。図中の1−1は試験を始める前の最初の状態(原点)であり、最大荷重4.90×10-4Nに対し、9.8×10-6N/secの負荷速度で荷重を掛ける。最大荷重に到達直後は1−2の状態であり、測定温度を25℃としたとき、この状態の変位量がX(25)μmである。1−2の状態で0.1秒間、その荷重で放置する。さらに9.8×10-6N/secの除荷速度で荷重を減らし、荷重が0Nになったときが1−3の状態である。
【0086】
実際の測定は、セラミックセル上にトナーを塗布し、トナーがセラミックセル上に分散するようにエアーを吹き付けた後に、そのセラミックセルを超微小硬度計にセットして測定する。
また、測定の際にはセラミックセルを温度制御が可能な状態にし、このセラミックセルの温度を測定温度とした。X(25)は、セルの温度を25℃として測定した。
測定は、超微小硬度計に付帯する顕微鏡を覗きながら測定用画面(横幅:160μm、縦幅:120μm)にトナーが1粒子で存在しているもの選択した。変位量の誤差を極力無くすため、トナーの重量平均粒径(D4)の±0.2μmのものを選択して測定した。なお、測定用画面から任意のトナーを選択する。その際、測定画面上でのトナーの粒子径の測定手段は超微小硬度計ENT1100付帯のソフトを用いて行なった。すなはち、トナー粒子の長径と短径を測定し、それらから求められるアスペクト比[(長径+短径)/2]の値がD4の±0.2μmとなるトナーを選択して測定した。
【0087】
測定データに関しては、任意の粒子100個を選んで測定し、測定結果として得られたX(25)について、最大値、最小値からそれぞれ20個を除いた残り60個をデータとして使用し、その60個の相加平均値としてX(25)を求めた。
【0088】
また、トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法は以下の通りである。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中
に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0089】
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)は、3.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。
トナーの重量平均粒径(D4)は、トナー製造時に風力分級、篩い分けといった粒度調整工程において粒度調整することで満たすことが可能である。また、本発明の好ましい形態である、重合トナーの場合には、分散安定剤の仕込み量で調整することが可能である。
本発明のトナーの平均円形度は、0.960以上1.000以下であることが好ましい。本範囲内である場合には、トナーの流動性が向上し、通常の連続画出し時において、バッファ室18c内のトナーは、現像室18bへ容易に移動することができる。
【0090】
また、トナーと感光体との接触面積が小さく、鏡像力やファンデルワールス力等に起因するトナーの感光体への付着力が低下するために高い転写性を得ることができる。トナー担持体の長手方向におけるトナーのコート量が均一となり感光体の静電潜像をトナーにより忠実に現像することができる。
トナーの平均円形度0.960未満の粒子数が、2個数%以上30個数%以下であることが好ましい。本範囲内に制御することにより、バッファ室18c内のトナーが、パッキングしてしまうことを抑制する。また、トナー劣化を抑制する効果も見られる。
トナーの2μm未満の粒子数が2乃至20個数%であることが好ましい。本範囲内に制御することにより、バッファ室18c内のトナーが、パッキングしてしまうことを抑制する。また、トナー劣化を抑制する効果も見られる。
【0091】
さらに、現像剤担持体や静電潜像担持体といった各部材へのトナー融着を抑制することにつながり、かぶりやポチといった非画像部にトナーが付着してしまうといった画像欠陥を防止することが可能となる。
【0092】
上記平均円形度は、例えば、下記のような条件でトナー製造することで上記範囲を満たすことが可能である。(1)トナーを懸濁重合法により製造する場合には造粒時の水系媒体中のpHをコントロールする、(2)トナーを水系媒体中で熱により球形化処理する、(3)トナーを機械的手法により球形化処理する。
平均円形度0.960未満の粒子数や2μm未満の粒子数は、極性樹脂の酸価、水酸基価を制御することにより上記範囲を満たすことが可能である。
【0093】
本発明におけるトナーの平均円形度、平均円形度0.960未満の粒子数、2μm未満の粒子数は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス製)を用い、該装置の操作マニュアルに従い測定した。
【0094】
上記装置の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37μm×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
【0095】
画像処理部で画像信号は、A/D変換され、画像データとして取り込まれ、記憶した画像データに対して、粒子の有無を判別するための画像処理が行われる。次に、粒子像の輪郭を的確に抽出するための前処理として輪郭強調処理が行われる。次に、画像データをある適当なスレッシュホールドレベルで2値化する。
【0096】
画像データをある適当なスレッシュホールドレベルで2値化すると各粒子画像は図8に示すような2値化画像となる。次に、2値化された各粒子画像に対してエッジ点(輪郭を表す輪郭画素)かどうかを判定するとともに、着目しているエッジ点に対して隣合うエッジ点がどの方向にあるかの情報、すなわちチェインコードを生成する。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記投影面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
(式)円形度C=2×(πS)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。
【0097】
各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、その分割点の中心値と測定粒子数を用いて相加平均により平均円形度の算出を行う。
具体的な測定方法としては、予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを容器中に用意し、その中に分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料0.02gを加え、均一に分散させた。分散手段としては、超音波分散機UH−50型(エスエムテー製)に振動子として直径5mmのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。
【0098】
その際、該分散液の温度が40℃以上にならないように適宜冷却した。測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。上記手順に従い調製した分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測した。粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm乃至200.00μmに限定し、トナーの平均円形度を求めた。
【0099】
また、平均円形度0.960未満の粒子数に関しては、解析粒子径を円相当径2.00μm乃至200.00μmに限定した上で、平均円形度を0.960乃至1.000に限定して算出した。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行った。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm乃至200.00μmに限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0100】
本発明のトナーは、定荷重押し出し方式の細管式レオメータによって測定される100℃における溶融粘度が、5.00×103以上3.50×104Pa・s以下であることが好ましい。トナーの溶融粘度が、上記範囲内である場合、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立によるバッファ室18c内でのトナーのパッキング抑制につながる。
また、定着時においてワックスの染み出しが適当となり、より良好な耐高温オフセット性が得られる。また、適度な強靭性が維持されるため、現像性や転写性がより良好となる。
本発明におけるトナーの溶融粘度は以下の方法で測定される。
【0101】
トナーの100℃における粘度の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。尚、本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際の温度とピストンの降下量との関係を計測する。
【0102】
本発明においては、50℃から200℃までの測定を行い、100℃において算出された見かけの粘度を、トナーの100℃における粘度(Pa・s)とする。
100℃における見かけの粘度η(Pa・s)は次のようにして算出する。まず、下式(1)よりフローレートQ(cm3/s)を計算する。式中、ピストンの断面積をA(c
2)、100℃時点におけるピストンの位置に対して上下0.10mm(間隔としては
0.20mm)の間をピストンが降下するのに要した時間をΔt(秒)とする。
Q=(0.20×A)/(10×Δt) ・・・ (1)
そして、得られたフローレートQを用いて、下式(2)より100℃における見かけの粘度ηを算出する。式中、ピストン荷重をP(Pa)、ダイの穴の直径をB(mm)、ダイの長さをL(mm)とする。
η=(π×B4×P)/(128000×L×Q) ・・・ (2)
測定試料は、約1.0gのトナーを、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。 CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0103】
尚、上記溶融粘度は、結着樹脂の分子量やガラス転移点を調整したり、ワックス成分の種類および含有量を調整したりすることで条件を満たすことができる。また、本発明の好ましい形態である重合トナーの場合には、重合条件(温度、開始剤種、開始剤量)で調節することが可能である。
【0104】
本発明のトナーは、良好な定着画像を得るために、結着樹脂100質量部に対して0.5乃至50質量部、好ましくは、3乃至30質量部のワックス成分を含有することが好ましい。更に好ましくは5質量部乃至20質量部である。ワックス成分の含有量が上記の範囲内であれば、長期間の保存性を維持しつつ、低温オフセットを良好に抑制することができる。また、他のトナー材料の分散を妨げることがなく、良好な流動性や画像特性を維持できる。
【0105】
本発明のトナーに使用可能なワックス成分としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムの如き石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックスおよびその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体。これらの誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。さらには、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、あるいはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスが挙げられる。この中で特に、離型性に優れるという観点からエステルワックス及び炭化水素ワックスが好ましい。
【0106】
特に、エステルワックスと炭化水素ワックスの2種類のワックスを併用して含有していることが好ましく、エステルワックスと炭化水素ワックスの総含有量が重合性単量体又は結着樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。なお、ここでいう結着樹脂の質量部は、トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、重合性単量体の質量部とする。
また、エステルワックスと炭化水素ワックスの含有量の質量比率が、エステルワックス:炭化水素ワックス=95:5以上60:40以下であることが好ましい。
エステルワックスと炭化水素ワックスの2種類のワックスを併用して用いた場合、高温下での画出しにおいても、現像装置内でのワックスの染み出しが適度に抑制され、流動性を高く維持することが可能となる。その結果、バッファ室18c内のトナーが、パッキングすることなく、現像室18bへ容易に移動することができる。また、感光体や帯電部材への汚染の発生を抑制することができる。
【0107】
更に好ましくは、トータルの炭素数が同一である化合物が、50乃至95質量%でワックス成分に含有されていることが、ワックス純度が高く現像性の観点で、本発明の効果を発現し易い。
これらのワックスの中では、示差走査熱量測定装置により測定されるDSC曲線の最大吸熱ピークが40乃至110℃の範囲にあるものが好ましく、更には45乃至90℃の範囲にあるものがより好ましい。また、最大吸熱ピークの半値幅は、2乃至15℃であることが好ましく、2乃至10℃であることがより好ましい。最大吸熱ピークの半値幅とは、吸熱ピークにおけるベースラインからピーク高さの2分の1の値を示す部分の、吸熱チャートの温度幅のことである。半値幅が上記の範囲内である場合、ワックスの結晶性が適度であり、適度な硬度を有するため、高温下での画出しにおいても、現像装置内でのワックスの染み出しが適度に抑制され、流動性を高く維持することが可能となる。感光体や帯電
部材への汚染の発生を抑制することができる。
【0108】
また、本発明のトナーは、示差走査熱量測定装置により測定されるDSC曲線の70乃至120℃の範囲に上記ワックスの融点に起因する最大吸熱ピークを持つことが好ましい。
DSC曲線は、示差走査熱量測定装置(DSC測定装置)DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。具体的には、以下のようにして測定を行う。
【0109】
測定試料は5乃至20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下において測定を行う。この昇温過程で、上記ワックスの吸熱ピーク及び上記トナーの最大吸熱ピークが得られる。
本発明におけるトナーのTgの測定方法は、基本的にワックスの吸熱ピークを得る方法と同じ装置を用いる。但し、加熱時にワックスのDSC融点ピークとトナーのTgが重複するケースがあるため、本発明のトナーにおいてはモジュレーティッドモードを用い、以下の条件にて測定し、昇温1回目のDSC曲線のピーク位置から求める。尚、コアバインダー樹脂のガラス転移点、シェルバインダー樹脂(極性樹脂A、B)のガラス転移点も同様にして測定する。コアバインダー樹脂のガラス転移点については、コアバインダー樹脂のみをトナー粒子から単離することが困難であるため、その処方から計算される理論Tgをコアバインダー樹脂のTgとみなしてもよい。
(測定条件)
・20℃で5分間平衡を保つ。
・1.0℃/minのモジュレーションをかけ、140℃まで1℃/minで昇温する。・140℃で5分間平衡を保つ。
・20℃まで降温する。
【0110】
ここでいうガラス転移点(Tg)は中点法で求める。また、トナーの最大吸熱ピークのピーク温度(P1)とは、吸熱ピークの中で極大の値を示す温度のことである。複数個の吸熱ピークが存在する場合には、吸熱ピーク以上の領域におけるベースラインからの高さが一番高いものを最大吸熱ピークとする。
【0111】
本発明におけるトナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のGPCでのメインピーク分子量Mpは10,000乃至40,000が好ましく、より好ましくは、15,000乃至35,000である。メインピーク分子量が上記範囲内である場合、ワックスの染み出しが適度となり、良好な耐高温オフセット性が得られる。また、適度な強度を有するため、良好な現像性や転写性を得ることができる。更に、低温定着性に関しても優れた特性が得られる。
【0112】
尚、上記トナーのメインピーク分子量Mpに関する上記の条件は、トナー製造時の温度を調整することで満たすことが可能である。特に本発明の好ましい製造法である重合法でトナーを製造する場合においては、重合条件(温度、開始剤種、開始剤量)を調整することで満たすことが可能である。
本発明におけるトナーのTHF可溶分のメインピーク分子量及び極性樹脂A、Bの重量平均分子量(MwA、MwB)及び数平均分子量(Mn)は以下の測定方法で測定される。
測定試料は以下のようにして作成する。
【0113】
試料とTHFとを約0.5乃至5mg/ml(例えば約5mg/ml)の濃度で混合し、室温にて数時間(例えば5乃至6時間)放置する。その後、充分に振とうし、THFと
試料を良く混ぜ(試料の合一体がなくなるまで)、更に室温にて12時間以上(例えば24時間)静置する。このとき試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45乃至0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2 東ソー社製、エキクロデ
ィスク25CR ゲルマン サイエンスジャパン社製が好ましく利用できる)を通過させたものをGPCの試料とする。試料濃度は、樹脂成分が0.5乃至5mg/mlとなるように調整する。
【0114】
<測定条件>
装置:高速GPC「HLC8120 GPC」(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、80
7の7連(昭和電工社製)
溶離液 :THF
流速 :1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量 :0.10ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK ス
タンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量較正曲線を使用する。
【0115】
図9は、安息角測定の方法の一例を説明するための概略的説明図である。
本発明におけるトナーの安息角θは、例えば、以下の方法により求めることができる。
測定装置:パウダーテスターPT−N型(ホソカワミクロン株式会社)
測定方法:パウダーテスターPT−N型に付属する取り扱い説明書における安息角の測定に準拠する(ふるい61の目開き710μm、振動時間180s、振幅2mm以下)。トナーをロート62から円盤63上に落下させ、この円盤63上に円錐状に堆積したトナー64の母線と円盤63表面とのなす角を安息角として求める。
但し、試料を23℃、相対湿度50%(以下、これを50%RHと表記する)で一晩放置した後、23℃、50%RH環境下にある測定装置で安息角を測定し、5回測定を繰り返して算術平均をとった値をθとする。
【0116】
本発明におけるトナーは、スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を測鎖に持つ重合体を含有することが好ましい。その中でも、特にスルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体を用いることが好ましい。
このような重合体を含有させることによって、保存安定性が良化する。また帯電制御性が向上し、トナー担持体の長手方向のトナーコート量が均一となり、感光体上への現像をより忠実に行うことができるようになる。また、高いページ内均一性を得ることができる。この他に平滑性の低い転写材であっても平滑性の高い転写材同様の転写均一性を得ることができる。また、懸濁重合法によってトナー粒子を製造する場合には、水系媒体中の造粒安定性を高めることができる。
【0117】
本発明のトナーを懸濁重合法にて製造する場合、上記スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体を添加することによって、造粒安定化はもとより重合段階でのトナー粒子のコアシェル構造が促進される。そのため、トナー劣化抑制とトナーの適度な変形との両立によるバッファ室18c内でのトナーのパッキング抑制に対して最適化を図ることができる。
【0118】
上記重合体又は共重合体を製造するための、スルホン酸基、スルホン酸基塩又はスルホン酸エステル基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2
−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸が例示できる。そして、これらの単量体が有するスルホン酸基を塩にしたもの、メチル基やエチル基によってエステル化した化合物も用いることができる。
【0119】
本発明に用いられるスルホン酸基、スルホン酸基塩又はスルホン酸エステル基を含有する重合体又は共重合体は、上記単量体の単重合体であっても構わないが、上記単量体と他の単量体との共重合体であっても構わない。上記単量体と共重合体をなす単量体としては、ビニル系重合性単量体があり、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することが出来る。
【0120】
上記スルホン酸基等を含有する重合体は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下含有されることが好ましい。より好ましくは、0.1質量部以上3.0質量部以下である。なお、ここでいう結着樹脂の質量部は、トナー粒子を水系媒体中で製造する場合には、重合性単量体の質量部とする。該スルホン酸基等を含有する重合体の含有量が上記範囲内であれば、トナーに良好な摩擦帯電性を付与することができる。保存安定性も良好になる。また、懸濁重合時の造粒安定性を良好に高めることができ、得られる粒子の粒度分布がシャープになる。
【0121】
本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナーの結着樹脂の分子量を制御するために、結着樹脂を合成する時に架橋剤を用いてもよい。
前述したように、本発明に用いられる架橋剤としてはジビニルベンゼンが好ましいが、以下のような架橋剤を用いることも可能である。
【0122】
2官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
【0123】
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。
【0124】
これらの架橋剤の添加量は、前記重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上0.50質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上0.25質量部以下である。
【0125】
本発明に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル
の如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
【0126】
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、上記重合性単量体100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に選定され、単独又は混合して使用される。
【0127】
本発明に好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料または染料、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が利用できる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66。
【0128】
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
【0129】
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメン
トイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
【0130】
黒色着色剤としては、カーボンブラック、及び、上記イエロー系/マゼンタ系/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加して用いられる。
【0131】
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に摩擦帯電スピードが速く、かつ、一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナーを直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0132】
上記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、有機金属化合物、キレート化合物が挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類が挙げられる。さらに、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
【0133】
一方、荷電制御剤として、トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
【0134】
これら荷電制御剤の中でも金属を含むサリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムが好ましい。最も好ましい荷電制御剤としては、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上20.00質量部以下、より好ましくは0.50質量部以上10.00質量部以下である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナーの層厚規制部材やトナー担持体との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
【0135】
本発明のトナーは、流動性の向上を目的として無機微粉体が外添されている。
本発明のトナー粒子に外添する無機微粉体は、少なくともシリカ微粉体を含むことが好ましい。該シリカ微粉体の個数平均一次粒径は、4nm以上80nm以下であることが好ましい。本発明において個数平均一次粒径が上記範囲にあることで、トナーの流動性が向上すると共に、トナーの保存安定性も良好になる。
【0136】
上記無機微粉体の個数平均一次粒径は、次のようにして測定される。
個数平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡で観察し、視野中の100個の無機微粉体の粒子径を測定して平均粒子径を求める。
また無機微粉体として、シリカ微粉体と酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物の微粉体を併用することができる。併用される無機微粉体としては、酸化チタンが好ましい。
上記シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカの両者の微粉体が含まれる。該シリカとしては、表面及びシリカの内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO32-の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。シリカはそれらも包含する。
【0137】
無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の摩擦帯電均一化のために添加される。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上等の機能を付与することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナー粒子に外添された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子からの外添剤遊離という観点で、トナー劣化を引き起こしやすい。
また、トナーとしての摩擦帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
【0138】
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、以下のものが挙げられる。
未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物。これらの如き処理剤は単独で或いは併用して用いても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時、或いはカップリング剤で疎水化処理した後に、シリコーンオイルにより処理した疎水化処理無機微粉体が好ましい。
【0139】
本発明において、重合法を用いてトナーを得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。従って、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料系やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
染料系着色剤の重合阻害性を抑制する方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。
【0140】
また、カーボンブラックについては、上記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質、例えば、ポリオルガノシロキサンで処理を行っても良い。
本発明に用いられるトナー粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、懸濁重合法、乳化重合法、懸濁造粒法の如き、水系媒体中で造粒する製造法によって製造されたものであることが好ましい。トナー粒子は、結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体、着色剤、及びワックス成分を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散し、造粒し、重合性単量体を重合することにより得られるトナー粒子であることが特に好ましい。
【0141】
以下、本発明に用いられるトナー粒子を得る上で好適な懸濁重合法を例示して、該トナー粒子の製造方法を説明する。
トナー粒子は、上記結着樹脂の製造に用いられる重合性単量体、着色剤、ワックス成分及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散させる。特に、公知の分散方法により重合性単量体に少なくとも着色剤を分散させ着色剤含有単量体を得るという分散工程を経た後に、該分散工程において得られた着色剤含有単量体と樹脂とを混合するという調整工程を行なうことが好ましい。これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。
次に、該重合性単量体組成物を分散剤含有の水系媒体中に懸濁して重合を行うことによってトナー粒子は製造される。上記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
【0142】
上記分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナが挙げられる。
【0143】
一方、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。
ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。また、分散剤として、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
【0144】
上記分散剤としては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3,000質量部以下の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
【0145】
本発明において、上記のような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、上記難水溶性無機分散剤を生成させて水系分散媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することが挙げられる。
【実施例】
【0146】
〔実施例1〕
以下に本発明を実施例にて説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。なお、実施例中で記載されている「部」は、すべて質量部を示す。
【0147】
(水系分散媒体の調製)
水・・・350.00部
リン酸三ナトリウム・・・15.00部
上記混合物を高速撹拌装置TK式−ホモミキサーで12,000rpmのスピードで撹拌しながら、60℃に保持した。次に塩化カルシウム9.00質量部を添加して、微細な難水溶性安定化剤Ca3(PO42を含む水系分散媒体を調製した。
【0148】
(重合性単量体組成物1の調製:分散工程)
スチレン・・・30.00部
C.I.ピグメントブルー15:3・・・5.00部
負荷電性制御剤(3,5−ジーターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)・・・1.00部
上記の混合物をアトライターで常温にて5時間分散させ、重合性単量体混合物1を得た。引き続き、上記単量体混合物1を温度調節が可能な撹拌槽に投入し、これを60℃まで昇温した。次いで、
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)・・・15.00部
フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)・・・5.00部
ジビニルベンゼン・・・0.3部
を上記撹拌槽に投入し、さらに撹拌を1時間継続して、重合性単量体組成物1を調製した。
【0149】
(重合性単量体組成物2の調製:溶解工程)
スチレン・・・35.0部
n−ブチルアクリレート・・・35.00部
極性樹脂A
(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシエチルメタクリレート
共重合体、Mw=13500、Tg=89℃、酸価Av=22mgKOH/g、水酸基価OHv=8mgKOH/g)・・・15.00部
極性樹脂B
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=9000、Tg=71℃、酸価Av=9mgKOH/g、水酸基価OHv=25mgKOH/g)・・・5.00部
極性樹脂C
(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を5%含有するスチレン−2−エチルへキシルアクリレート共重合体、Tg=81℃)・・・1.00部
上記の混合物を温度調節が可能な撹拌槽に投入し、上記処方を温度調節が可能な撹拌槽に投入し、60℃に昇温した。60℃に昇温後、5時間攪拌した。
【0150】
(調整工程)
重合性単量体組成物2に重合性単量体組成物1を投入後、10分間攪拌した。その後ゆっくりと65℃まで昇温した。
【0151】
(造粒/重合工程)
得られた重合性単量体組成物1及び2の混合物を上記水系分散媒体中に投入した。さらに、重合開始剤である2,2′−アゾビス−イソブチロバレロニトリル8.0質量部を該水系媒体分散に添加し、撹拌機の回転数を12000rpmに維持しつつ30分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に移して、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら5時間反応させた。次いで、容器内を温度80℃に昇温して5時間維持した。その後冷却して重合体微粒子分散液を得た。
(洗浄/固液分離/乾燥工程/外添工程)
得られた重合体微粒子分散液に希塩酸を添加してpHを1.4とし、安定化剤Ca3
PO42を溶解した。更に、ろ別、洗浄の後、温度40℃で真空乾燥させ、目開き150μmの篩を用いて粗粉を除去し、粒子径を調整してシアントナー粒子を得た。得られたシアントナー粒子100.00部に対して、BET法による比表面積が200m2/gであ
る疎水性シリカ(シリカ100.00部に対してシリコーンオイルで10.00部処理。平均一次粒子径13nm)2.00部の無機微粉体をヘンシェルミキサーにて10分間攪拌させることによって外添し、シアントナーNo.1(重量平均粒径(D4):6.5μm)を得た。トナー製造例及び物性を表1に示す。
得られたシアントナーNo.1に関して、後述する評価項目に関する評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0152】
なお、画像評価に対する画像形成装置としては図1に示すような市販のレーザプリンタであるLBP−9500C(キヤノン製)の改造機を用いた。この評価機の改造点は以下のとおりである。
(1)評価機本体のギアおよびソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが360mm/secとなるようにした。
(2)評価に用いるカートリッジは、市販のシアンカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、図2、3のように改造したものを用いた。改造したカートリッジに、シアントナーNo.1を280g充填して評価を行なった。尚、本実施例においては、バッファ室と現像室間の開口の下端45bにおける、供給ローラ下方の現像室底面26cの接線aと、水平線aとのなす角βは、40°とした。尚、イエロー、マゼンタ、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタ、およびブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
(3)定着器は、加熱温度を200℃±20℃に制御できるようにソフトウエアを変更した。
以上の条件で、高温高湿環境(30.0℃,80%RH)下、低温低湿環境(15.0℃、10%RH)下のそれぞれにシアントナーNo.1が詰められたプロセスカートリッジを24時間放置した。次に、A4のキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m2
)を用いて、印字率が0.5%の画像を各環境下にて出力することで、2,0000枚の画出し評価を行なった。
【0153】
高温高湿環境(30.0℃,80%RH)下においては20,000枚の画出し評価後
、以下の〔1〕〔2〕〔5〕〔6〕の評価項目を行ない、ベタ濃度均一性、かぶり、トナー飛散、現像スジに関して評価した。
【0154】
一方、低温低湿環境(15.0℃、10%RH)下においては、20,000枚の画出
し評価後、以下の〔1〕〔3〕〔4〕〔6〕の評価項目を行ない、ベタ濃度均一性、転写性、クリーニング、現像スジに関して評価した。
【0155】
〔1〕ベタ全域(ベタ黒)画像濃度均一性
A4のキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m2)を用いて、ベタ全域画
像を連続10枚出力した。得られた画像の1枚目と10枚目において、下記の手順に従って平均濃度(マクベス反射濃度計で測定)を測定した。1枚目の平均濃度に対する10枚目の平均濃度の変化率(%)を算出し、ベタ画像濃度の安定性を評価した。
平均濃度は、得られたベタ全域画像を9つのエリアに分割し、各エリアの略中心の画像濃度の相加平均によって求めた。画像濃度は、「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
以下に判定基準を示す。
A:3%未満
B:3%以上5%未満
C:5%以上10%未満
D:10%以上
【0156】
〔2〕画像カブリ
グロス紙モード(1/2速)で、LetterサイズのHP Color Laser
Photo Paper, glossy(220g/m2)に1%の印字比率の画像
をプリントアウトした。「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用い、測定した印字プリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを評価した。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1.0%未満
C:1.0%以上1.5%未満
D:1.5%以上
【0157】
〔3〕ハーフトーンページ内濃度均一性(転写性)
ハーフトーン全域画像をFox River Bond紙(90g/m2)に1枚出力した。得られたハーフトーン全域画像を9つのエリアに分割し、各エリアの略中心の画像濃度を測定した。9点の測定値のうち、9点の相加平均値に対するバラツキを算出することで、ハーフトーンページ内濃度均一性を評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計
RD918」(マクベス社製)を用いて付属の取扱説明書に沿って、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
以下に判定基準を示す。
A:平均値に対して9点全てが±5%以下の濃度である。
B:平均値に対して9点全てが±10%以下の濃度である。
C:平均値に対して9点全てが±15%以下の濃度である。
D:平均値に対して±15%を超える濃度の点が存在する。
【0158】
〔4〕クリーニング性
A4のキヤノンカラーレーザーコピア用紙(81.4g/m2)を用いて、転写電流を
流さずに、ベタ黒画像を1枚出力した。さらに0%印字(ベタ白)画像を連続して10枚出力した。得られた画像を目視で確認し、クリーニング性を評価した。以下に判定基準を示す。
A:10枚とも良好なクリーニング性を示している。
B:8枚目に、クリーニング性の若干劣るものが認められる。
C:5枚目に、クリーニング性の若干劣るものが認められる。
D:1枚目に、クリーニング性の大きく劣るものが認められる。
【0159】
〔5〕トナー飛散による本体・カートリッジ内の汚染
トナーの帯電性・流動性のバランスを評価するために、カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れ具合を観察した。以下に判定基準を示す。
A:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れが全く観察されない。
B:カートリッジに微量のトナーによる汚れが観察される。
C:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺のトナーによる汚れが観察されるが、画像・カートリッジの着脱には影響しない。
D:カートリッジ、本体内カートリッジ周辺がトナーによって著しく汚れ、画像・カートリッジの着脱にも悪影響が見られる。
【0160】
〔6〕周方向のスジ(現像スジ)
現像容器を分解しトナー担持体の表面及び端部を目視して行った。以下に判定基準を示す。
A:トナー担持体の表面や端部にはトナー破壊や融着によるトナー規制部材とトナー担持体間への異物挟み込みによる周方向のスジが全く無い。
B:トナー担持体とトナー端部シール間への異物挟み込みが若干見受けられる。
C:周方向のスジが端部で1〜4本見受けられる。
D:周方向のスジが全域で5本以上見受けられる。
【0161】
〔実施例2〕
得られたシアントナー粒子100.00部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカ(シリカ100.00部に対してシリコーンオイルで10.
00部処理。平均一次粒子径13nm)2.00部の無機微粉体をヘンシェルミキサーにて30分間攪拌させることによって外添することを除いては、実施例1と同様にしてシアントナーNo.2(重量平均粒径(D4):6.5μm)を得た。トナー製造例及び物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0162】
〔実施例3〕
極性樹脂Aの物性と添加量を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒ
ドロキシエチルメタクリレート共重合体、Mw=29000、Tg=100℃、酸価Av=8mgKOH/g、水酸基価OHv=51mgKOH/g)5.40部に変更し、極性樹脂Bの添加量を0.60部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.3(重量平均粒径(D4):5.5μm)を得た。トナー物性を表1に、評
価結果を表2に示す。
【0163】
〔実施例4〕
極性樹脂Aの物性と添加量を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒ
ドロキシエチルメタクリレート共重合体、Mw=9500、Tg=80℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=4mgKOH/g)18.00部に変更し、極性樹脂Bの添加量を12.00部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.4(重量平均粒径(D4):6.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0164】
〔実施例5〕
極性樹脂Aの添加量を15.00部に変更し、極性樹脂Bを(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸及びアジピン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=9000、Tg=60℃、酸価Av=9mgKOH/g、水酸基価OHv=17mgKOH/g)5.00部に変更することを除いては、実施例4と同様にして、シアントナーNo.5(重量平均粒径(D4):6.4μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0165】
〔実施例6〕
極性樹脂Aの添加量を15.00部に変更し、極性樹脂Bの物性と添加量を(ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=10000、Tg=80℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=21mgKOH/g)5.00部に変更することを除いては、実施例3と同様にして、シアントナーNo.6(重量平均粒径(D4):5.4μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0166】
〔実施例7〕
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)の添加量を19.00部に変更し、フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)の添加量を1.00部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.7(重量平均粒径(D4):6.2μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0167】
〔実施例8〕
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)の添加量を13.00部に変更し、フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)の添加量を7.00部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.8(重量平均粒径(D4):6.6μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0168】
〔実施例9〕
極性樹脂Aの添加量を5.82部に変更し、極性樹脂Bの添加量を0.18部に変更することを除いては、実施例3と同様にして、シアントナーNo.9(重量平均粒径(D4):5.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0169】
〔実施例10〕
極性樹脂Aの添加量を14.40部に変更し、極性樹脂Bの添加量を15.60部に変更することを除いては、実施例4と同様にして、シアントナーNo.10(重量平均粒径(D4):6.5μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0170】
〔実施例11〕
極性樹脂Aの添加量を4.85部に変更し、極性樹脂Bの添加量を0.15部に変更することを除いては、実施例3と同様にして、シアントナーNo.11(重量平均粒径(D4):5.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0171】
〔実施例12〕
極性樹脂Aの添加量を14.88部に変更し、極性樹脂Bの添加量を16.12部に変更することを除いては、実施例4と同様にして、シアントナーNo.12(重量平均粒径(D4):6.9μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0172】
〔実施例13〕
極性樹脂Aの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、Mw=15000、Tg=90℃、酸価Av=10mgKOH/g)に変更し、極性樹脂Bの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシエチルメタクリレ
ート共重合体、Mw=9500、Tg=80℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=4mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.13(重量平均粒径(D4):6.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0173】
〔実施例14〕
極性樹脂Aの物性を(ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=10000、Tg=80℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=21mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.14(重量平均粒径(D4):5.3μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0174】
〔実施例15〕
極性樹脂Aの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシ
エチルメタクリレート共重合体、Mw=11000、Tg=80℃、酸価Av=25mg
KOH/g、水酸基価OHv=5mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例6と同様にして、シアントナーNo.15(重量平均粒径(D4):6.4μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0175】
〔実施例16〕
極性樹脂Aの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシ
エチルメタクリレート共重合体、Mw=8100、Tg=78℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=3mgKOH/g)に変更し、極性樹脂Bの物性を(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸及びアジピン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=5500、Tg=59℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=35mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.16(重量平均粒径(D4):5.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0176】
〔実施例17〕
極性樹脂Aの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、Mw=35500、Tg=101℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=10mgKOH/g)に変更し、極性樹脂Bの物性を(ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=25000、Tg=81℃、酸価Av=15mgKOH/g、水酸基価OHv=4mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.17(重量平均粒径(D4):6.1μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0177】
〔実施例18〕
極性樹脂Bの物性を(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸及びアジピン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=9000、Tg=60℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=40mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例16と同様にして、シアントナーNo.18(重量平均粒径(D4):5.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0178】
〔実施例19〕
極性樹脂Aの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシ
エチルメタクリレート共重合体、Mw=7900、Tg=77℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=2mgKOH/g)に変更し、極性樹脂Bの物性を(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸及びアジピン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=4850、Tg=58℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=40mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.19(重量平均粒径(D4):5.5μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0179】
〔実施例20〕
極性樹脂Aの物性を(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシ
エチルメタクリレート共重合体、Mw=50500、Tg=104℃、酸価Av=25mgKOH/g、水酸基価OHv=10mgKOH/g)に変更し、極性樹脂Bの物性を(ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=26000、Tg=82℃、酸価Av=15mgKOH/g、水酸基価OHv=3mgKOH/g)に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.20(重量平均粒径(D4):6.0μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0180】
〔実施例21〕
(樹脂粒子分散液1の調製)
スチレン・・・65.00部
n−ブチルアクリレート・・・35.00部
ドデカンチオール・・・6.00部
四臭化炭素・・・1.00部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.50部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.50部をイオン交換水140.00部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム1.00部を溶解したイオン交換水10.00部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が0.17μmである樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液1を調製した。
【0181】
(樹脂粒子分散液2の調製)
スチレン・・・65.00部
n−ブチルアクリレート・・・35.00部
極性樹脂A
(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシエチルメタクリレート
共重合体、Mw=13500、Tg=89℃、酸価Av=22mgKOH/g、水酸基価OHv=8mgKOH/g)・・・30.00部
極性樹脂B
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=9000、Tg=71℃、酸価Av=9mgKOH/g、水酸基価OHv=25mgKOH/g)・・・10.00部
以上を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.50部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3部をイオン交換水140.00部に溶解した。引き続き、フラスコ中で分散し、乳化し、10分間ゆっくりと混合しながら、これに過硫酸アンモニウム0.80部を溶解したイオン交換水10.00部を投入し、窒素置換を行った。フラスコ内を撹拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、平均粒径が0.1μmである樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液2を調製した。
【0182】
(離型剤粒子分散液の調製)
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)・・・15.00部
フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)・・・5.00部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)・・・5.00部
イオン交換水・・・200.00部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が0.5μmである離型剤を分散させてなる離型剤粒子分散液を調製した。
【0183】
(着色剤粒子分散液の調製)
C.I.ピグメントブルー15:3・・・20.00部
アニオン性界面活性剤 (第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)・・・2.00部
イオン交換水・・・78.00部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液1における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0184】
(帯電制御粒子分散液の調製)
負荷電性制御剤(3,5−ジーターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)・・・20部
アニオン性界面活性剤 (第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)・・・2.00部
イオン交換水・・・78.00部
以上を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この帯電制御粒子分散液における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA−700)を用いて測定したところ、含まれる帯電制御粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0185】
(混合液調製)
・樹脂粒子分散液1・・・250.00部
・樹脂粒子分散液2・・・280.00部
・着色剤粒子分散液・・・50.00部
・離型剤粒子分散液・・・220.00部
以上を、撹拌装置,冷却管,温度計を装着した1リットルのセパラブルフラスコに投入し撹拌した。この混合液を1N−水酸化カリウムを用いてpH=5.2に調整した。
【0186】
(凝集粒子形成)
この混合液に凝集剤として、10%塩化ナトリウム水溶液240部を滴下し、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら57℃まで加熱した。この温度の時、樹脂粒子分散液2の10.00部と帯電制御粒子分散液の10.00部を加えた。50℃で1時間保持し、凝集粒子を形成した。
【0187】
(融着工程)
その後、ここにアニオン製界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)4.80部を追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら105℃まで加熱し、1時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、シアントナー粒子を得た。得られたシアントナー粒子100.00部に対して、BET法による比表面積が200m2/g
である疎水性シリカ(シリカ100部に対してシリコーンオイルで10部処理。平均一次粒子径13nm)2.00部の無機微粉体をヘンシェルミキサーにて10分間攪拌させることによって外添し、シアントナーNo.1(重量平均粒径(D4):6.5μm)を得た。トナー製造例及び物性を表1に示す。
【0188】
〔実施例22〕
(結着樹脂1の製造方法)
懸濁重合法で重合開始剤として2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンを用いたスチレン−ブチルアクリレート共重合体A(St/BA=80/20、Tg=67℃、Mw=820,000)を作製した。ついで、溶液重合法で重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイドを用いたスチレン−ブチルアクリレート共重合体B(St/BA=85/15、Tg=61℃、Mw=15,800)を作製した。共重合体Bを70.00質量部に対し共重合体Aを30.00質量部を溶液中で混合したものを結着樹脂1とした。
結着樹脂1・・・100質量部
極性樹脂A
(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル−2-ヒドロキシエチルメタクリレート
共重合体、Mw=13500、Tg=89℃、酸価Av=22mgKOH/g、水酸基価OHv=8mgKOH/g)・・・15.00部
極性樹脂B
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=9000、Tg=71℃、酸価Av=9mgKOH/g、水酸基価OHv=25mgKOH/g)・・・5.00部
C.I.Pigment Blue15:3・・・6.0質量部
負荷電性制御剤(3,5−ジーターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物)・・・1.00部
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)・・・15.00部
フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)・・・5.00部
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、110℃に設定した二軸混練押出機にて混練した。得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径6.5μmのトナー粒子を得た。得られたシアントナー粒子100.00部に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカ(シリカ100.
00部に対してシリコーンオイルで10.00部処理。平均一次粒子径13nm)2.00部の無機微粉体をヘンシェルミキサーにて10分間攪拌させることによって外添し、シアントナーNo.22(重量平均粒径(D4):6.5μm)を得た。トナー製造例及び物性を表1に示す。
【0189】
〔実施例23〕
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)の添加量を19.20部に変更し、フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)の添加量を0.80部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.23重量平均粒径(D4):6.2μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0190】
〔実施例24〕
ステアリン酸ベヘニル(最大吸熱ピーク=70℃)の添加量を10.00部に変更し、フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク=75℃)の添加量を10.00部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.24(重量平均粒径(D4):6.5μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0191】
〔実施例25〕
ワックスの物性と添加量をカルナバワックス(最大吸熱ピーク=80℃)の添加量を15.50部に変更し、パラフィンワックス(最大吸熱ピーク=75℃)の添加量を15.50部に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.25(重量平均粒径(D4):6.3μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0192】
〔実施例26〕
ワックスの物性と添加量をカルナバワックス(最大吸熱ピーク=80℃)20.00部に変更に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.26(重量平均粒径(D4):6.0μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0193】
〔実施例27〕
ワックスの物性と添加量をパラフィンワックス(最大吸熱ピーク=75℃)20.00部に変更に変更することを除いては、実施例1と同様にして、シアントナーNo.27(重量平均粒径(D4):6.0μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0194】
〔比較例1〕
重合性単量体組成物2の調製(溶解工程)におけるスチレンの添加量を50.00部に変更し、n−ブチルアクリレートの添加量を20.00部に変更した。
また、極性樹脂を添加せず、極性樹脂Bの物性と添加量を(ビスフェノールAとテレフタル酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=26000、Tg=82℃、酸価Av=15mgKOH/g、水酸基価OHv=3mgKOH/g)10.00部に変更することを除いては、実施例27と同様にして、シアントナーNo.28(重量平均粒径(D4):5.9μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0195】
〔比較例2〕
極性樹脂Aを添加せず、極性樹脂Bの物性と添加量を(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸及びアジピン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂、Mw=4850、Tg=58℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=40mgKOH/g)30.00部に変更することを除いては、実施例26と同様にして、シアントナーNo.29(重量平均粒径(D4):5.8μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0196】
〔比較例3〕
重合性単量体組成物2の調製(溶解工程)におけるスチレンの添加量を48.00部に変更し、n−ブチルアクリレートの添加量を22.00部に変更することを除いては、比較例1と同様にして、シアントナーNo.30(重量平均粒径(D4):6.0μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0197】
〔比較例4〕
極性樹脂Bをプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとテレフタル酸及びアジピン酸との重縮合物であるポリエステル樹脂(Mw=5500、Tg=59℃、酸価Av=10mgKOH/g、水酸基価OHv=35mgKOH/g)30.00部に変更することを除いては、比較例2と同様にして、シアントナーNo.31(重量平均粒径(D4):5.7μm)を得た。トナー物性を表1に、評価結果を表2に示す。
【0198】
【表1−1】

【0199】
【表1−2】

【0200】
【表2】

【符号の説明】
【0201】
1 感光体ドラム(電子写真感光体)、2 帯電ローラ、3 スキャナユニット(露光装置)、4 現像ユニット(現像装置)、5 中間転写ベルト、6 クリーニング部材、7
プロセスカートリッジ、8 一次転写ローラ、9 二次転写ローラ、10 定着装置、11 中間転写ベルトクリーニング装置、12 記録材、13 感光体ユニット、14 クリーニング枠体、17 現像ローラ(現像剤担持体)、18 現像枠体、18a トナー収納室(第一室)、18a1 トナー搬送部材と当接する内壁、18a2 ガイド部(変形部)、18a3 境界部、18a4 復元部、18b 現像室(第三室)、18c バッファ室(第二室)、20 供給ローラ(現像剤供給ローラ)、21 現像ブレード(現像剤規制部材)、22 トナー収納室搬送部材(搬送部材)、22a シート部、22b 搬送支持軸、24 現像ユニット加圧バネ、26 隔壁、26c 供給ローラ下方の現像室底面、26d バッファ室底面、26e トナー収納室とバッファ室間の仕切り壁、26f 現像ブレード下方の現像室底面、43 バッファ室と現像室間の仕切り壁、44 トナー収納室とバッファ室間の開口、44a トナー収納室とバッファ室間の開口の下端、45 バッファ室と現像室間の開口、45a バッファ室と現像室間の開口の上端、45b バッファ室と現像室間の開口の下端、51 駆動ローラ、52 二次転写対向ローラ、53 従動ローラ、61 ふるい、62 ロート、63 円盤、64 トナー、100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像装置内に少なくとも一成分現像剤を収納している現像装置において、前記現像装置は、一成分現像剤を収納する第一室と、前記第一室の上方に配置された第一開口部と、前記第一室から前記第一開口部へ一成分現像剤を汲み上げて供給するための第一室搬送部材と、前記第一開口部を介して前記第一室と繋がっている第二室と、前記第二室に接して配置された第二開口部と、前記第二開口部を介して前記第二室と繋がっている第三室と、を備え、前記第一開口部の下端は、前記第一室搬送部材の回転中心より高く、前記第一開口部の下端は、前記第二開口部の上端より高く、前記第二開口部の下端から連続している、前記第三室の底面があり、
前記一成分現像剤は、少なくとも結着樹脂、着色剤、離形剤を少なくとも含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであって、
前記トナーは、示差走査熱量計により測定されるガラス転移点(Tg)が45℃以上60℃以下であり、
前記トナーに対する微小圧縮試験において、測定されたトナーの粒径をD(μm)、測定温度25℃で、前記トナー1粒子に負荷速度9.8×10-6N/secで荷重を加え、4.90×10-4Nの最大荷重に達したときに得られる変位量(μm)を変位量X(25)とした時、
0.10≦X(25)/D≦0.35
であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記離形剤は、少なくともエステルワックスと炭化水素ワックスの2種類のワックスを含有し、エステルワックスと炭化水素ワックスの総含有量が結着樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下であり、エステルワックスと炭化水素ワックスの含有量の質量比率が、エステルワックス:炭化水素ワックス=95:5以上60:40以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナー粒子は、重合性単量体、着色剤及び極性樹脂を少なくとも含有する重合性単量体組成物を、水系媒体中で重合することによって製造されたトナー粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記トナーは、少なくとも極性樹脂Aと極性樹脂Bの2種類の極性樹脂を含有しており、前記極性樹脂Aは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(MwA)が8,000以上50,000以下であり、前記極性樹脂Bは、重量平均分子量(MwB)が、5,000以上25,000以下であり、MwB<MwAであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記極性樹脂Aは、ガラス転移点Tg(A)が、80℃以上100℃以下であり、前記極性樹脂Bは、ガラス転移点Tg(B)が、60℃以上80℃以下であり、Tg(B)<Tg(A)であることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記極性樹脂Aは、少なくともスチレン及びメタクリル酸を共重合して得られた共重合体であり、前記極性樹脂Bは、ポリエステル樹脂であり、極性樹脂Aと極性樹脂Bの総含有量が結着樹脂100質量部に対して6質量部以上30質量部以下であり、極性樹脂Aと極性樹脂Bの含有量の質量比率が、極性樹脂A:極性樹脂B=95:5以上50:50以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像装置は、前記第二開口部の下端における、前記第三室の底面の水平線となす角が、前記一成分現像剤の安息角より大きいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の現像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−159630(P2012−159630A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18371(P2011−18371)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】