説明

球状アルミナ粉末、その製造方法及び用途。

【課題】 本発明は、急冷処理により表面形状をコントロールした高流動性の球状アルミナ粉末、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 X線回折において2θ=45.6°に検出されるδ相ピーク強度と2θ=44.8°に検出されるθ相ピーク強度の比、(δ相ピーク強度/θ相ピーク強度)が1.0以上である、平均球形度が0.90以上、平均粒子径100μm以下の球状アルミナ粉末。アルミナ原料を溶融後、ドライアイスで急冷処理することを特徴とする球状アルミナ粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は球状アルミナ粉末、その製造方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC等の発熱性電子部品の高機能化と高速化の進展に伴い、それが搭載された電子機器の発熱量が増大しており、半導体封止材に対しても高い放熱特性が求められている。半導体封止材の放熱特性を高めるには、熱伝導性の高いアルミナ粉末をゴム又は樹脂に含有させればよいが、一般的なバイヤー法アルミナ粉末では高充填時の著しい増粘現象により、アルミナの熱伝導特性を十分に活かすことが出来ていなかった。
【0003】
これを解決するため、水酸化アルミニウム粉末又は水酸化アルミニウム粉末のスラリーを強力な分散機能を有するフィード管から火炎中に噴霧し、球状アルミナ粉末を得ることが提案された(特許文献1)。この手法で得られた球状アルミナ粒子では、平均球形度0.90以上の粒子であっても水酸化アルミニウム原料由来の表面凹凸があり、改善の余地があった。また、バイヤー法アルミナ粉末を原料に用いた場合においても、表面に原料由来の凹凸が現れており、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−19425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、急冷処理により表面形状をコントロールした高流動性の球状アルミナ粉末、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
(1)X線回折において2θ=45.6°に検出されるδ相ピーク強度と2θ=44.8°に検出されるθ相ピーク強度の比、(δ相ピーク強度/θ相ピーク強度)が1.0以上である、平均球形度が0.90以上、平均粒子径100μm以下の球状アルミナ粉末。
(2)前記(1)に記載の球状アルミナ粉末を含有してなる樹脂組成物。
(3)樹脂がシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂である前記(2)に記載の樹脂組成物。
(4)前記(2)又は(3)に記載の樹脂組成物を用いた放熱部材。
(5)前記(2)又は(3)に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
(6)アルミナ原料を溶融後、ドライアイスで急冷処理することを特徴とする前記(1)に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
(7)アルミナ原料が電融アルミナであることを特徴とする前記(6)に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の球状アルミナ粉末は、樹脂に高充填した場合にも流動特性が高く、充填材に適している。特に、放熱部材と半導体封止材の充填材に適している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】球状アルミナ粉末の製造工程概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の球状アルミナ粉末は、アルミナ原料を溶融後ドライアイスで急冷処理することにより樹脂に高充填した場合においても、樹脂組成物に高い流動特性を付与することができる。本発明により発現される樹脂組成物の高い流動特性は、球状アルミナ粉末の粒子表面の結晶相(δ相とθ相の構成)をコントロールすることにより粒子表面の凹凸形状が改善されたものと推察される。また、本発明のアルミナ原料に電融アルミナ粉砕物を使用すると、粒子表面の割れを大きく低減することができ、更に樹脂組成物の流動特性を高めることができる。
【0010】
球状アルミナ粉末のδ相・θ相のピーク強度は、アルミナ原料の溶融後の急冷処理に使用するドライアイスの供給量を変化させることにより、コントロールすることができる。今回、急冷処理の調整は炉体中胴部から炉内に常時、ドライアイスを供給することにより行った。
【0011】
本発明の球状アルミナ粉末を用いた樹脂組成物に高い流動特性を付与させるためには、球状アルミナ粉末のδ相のピーク強度とθ相のピーク強度の比、即ち(δ相ピーク強度/θ相ピーク強度)を1.0以上する必要がある。δ相のピーク強度とθ相のピーク強度の比が1.0未満になると球状アルミナ粉末を用いた樹脂組成物に高い流動特性を付与させることができない。
【0012】
球状アルミナ粉末のδ相とθ相のピーク強度測定
X線回折装置には、封入管X線回折装置D8ADVANCE(ブルカー社製)、検出器にはLynxEyeを使用した。測定条件はθ・θスキャン(連続法、ステップ角度:0.017°、計数時間:0.1sec)、管電圧:40kV、管電流:40mA、ターゲット:Cu、測定範囲2θ=40〜50°で行った。
【0013】
球状アルミナ粉末の平均粒子径は、用途に応じて種々選択される。後記する本発明の製造方法によれば、平均粒子径が100μm以下、特に10〜95μmの球状アルミナ粉末を容易に製造することができる。平均粒子径は、原料の平均粒子径をコントロールすることによって増減できる。
【0014】
本発明における球状アルミナ粉末の平均粒子径を100μm以下としたのは、平均粒子径が100μmを越えると平均球形度を0.90以上にすることが困難となるためである。高い流動特性を実現するためには平均球形度を0.90以上にすることが必要であり、好ましくは平均球形度が0.95以上である。
【0015】
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル1064」を用いて測定した。平均粒子径25μm以下の粒子についてはサンプル1g、25〜45μmの粒子についてはサンプル2g、45〜120μmの粒子についてはサンプル4gを秤量し、直接シーラスグラニュロメーターのサンプル導入部に投入する。シーラスグラニュロメーター粒度分布測定は溶媒に水を使用し、ポンプ回転数は60rpmで行った。
【0016】
樹脂に球状アルミナ粉末を高充填するには、球状アルミナ粉末の平均球形度を0.90以上にすることが必要であり、特に0.95以上が好ましい。球状アルミナ粉末の平均球形度は火炎形成に用いる燃料ガス(例えばLPG)量や原料粉末のフィード量を変化させることによって増減させることができる。
【0017】
平均球形度測定
平均球形度は、Sysmex社製フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」を用いて測定する。平均球形度はFPIA−3000から得られる平均円形度の数値を2乗することで得られる。平均円形度は、フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」が、一個の粒子投影像の周囲長と粒子投影像の面積に相当する円の周囲長を解析し、式(円形度)=(粒子投影像の周囲長)/(粒子投影像の面積に相当する円の周囲長)、により求められる。今回の球形度測定に際しては36000個当たりの平均値を自動算出して求めた。本測定は高倍率撮像ユニットで行い、対物レンズにLUCPLFLN20×(倍率20倍)、NDフィルタにAND−40C−70(透過率70%)を使用した。
[平均粒子径20μm以上の粒子の平均球形度]
20mlのガラスビーカー容器に球状アルミナ粉末のサンプルを0.05g計量し、プロピレングリコール25質量%水溶液を10ml加えた後、超音波分散器で3分間分散させる。これをFPIA−3000に全量入れ、LPFモード/定量カウント(トータルカウント数36000個、繰返し測定回数1回)方式で測定する。
[平均粒子径20μm未満の粒子の平均球形度]
20mlのガラスビーカー容器に球状アルミナ粉末のサンプルを0.05g計量し、プロピレングリコール25質量%水溶液を10ml加えた後、超音波分散器で3分間分散させる。これをFPIA−3000に全量入れ、HPFモード/定量カウント(トータルカウント数36000個、繰返し測定回数1回)方式で測定する。
【0018】
本発明の球状アルミナ粉末の製造は、原料粉末として水酸化アルミニウム、仮焼アルミナ又は電融アルミナ粉砕物を、図1に示す設備を用いて処理した。概説すれば、炉頂部より水酸化アルミニウム、仮焼アルミナ又は電融アルミナ粉砕物を火炎中に噴射し溶融し、炉体中胴部より炉内に常時、ドライアイスを供給し急冷処理を行い、得られた球状化物を排ガスと共にブロワーによってバグフィルターに搬送し捕集する。ドライアイスの供給方法については後述する。火炎の形成は、水素、天然ガス、アセチレンガス、プロパンガス、ブタン等の燃料ガスと、空気、酸素等の助燃ガスを、炉体に設定された燃焼バーナーから噴射して行う。火炎温度は2050℃以上、2300℃以下に保持することが好ましい。火炎温度が2250℃より高いと急冷効果が得られにくくなり、2250℃と2300℃で流動特性に差はない。また、火炎温度が2050℃より低いと高い球形度を実現することができない。原料粉末供給用のキャリアガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素等を使用することができる。
【0019】
火炎温度測定
溶融時の火炎温度は炉外にバーナーを設置し、Impac社製放射温度計IS5/F型を使用して測定した。
【0020】
ドライアイスによる急冷処理は炉の中心から15°おきにフィード管を2段挿入し、ドライアイスを炉体中胴部より炉内に常時供給して行った。1段目のノズル位置は炉頂から80cmの高さ、2段目の位置は炉頂から100cmの高さに設置した。ドライアイスは氷削機で削り出した後、エゼクターにて移送、炉内へ供給した。フィード管については15AのSUSパイプを用いた。
【0021】
ドライアイスの供給量は炉内温度がドライアイスを供給しない時に比べて50〜150℃低下する程度が好ましい。炉内温度の低下が50℃を下回るとδ相のピークが増加せず、150℃を超えるとδ相のピーク強度は変化しなくなる。
【0022】
急冷処理時の温度変化測定
急冷処理の程度については、ドライアイス供給前とドライアイス供給後の炉内温度を測定することで、その冷却効果を確認した。温度計測にはR熱電対を使用し、熱電対は炉頂から100cmの高さに、炉壁面まで挿入した。
【0023】
本発明における、球状アルミナ粉末のδ相とθ相のピーク強度はドライアイスの供給量を調整し、火炎−空気境界面の温度をコントロールすることにより達成できる。ドライアイスの供給量を増やすとθ相のピークが減少しδ相のピークが増加する傾向にある。
【0024】
本発明におけるポイントは、火炎温度を2050℃以上、2300℃以下にして、急冷処理によりδ相とθ相のピーク強度をコントロールすることにある。アルミナ原料のフィード量を増やすと火炎温度が下がってしまい、球状アルミナ粉末の平均球形度を高く維持することが難しい。火炎温度と冷却による温度低下を考慮すると、原料粉末のフィード量は20kg/Hr以下とすることが好ましい。
【0025】
電融アルミナ破砕物とはバイヤー法アルミナの溶融固化物の粉砕物のことである。バイヤー法アルミナの溶融にはアーク炉を使用することができる。電融アルミナ粉砕物はボールミルで粉砕後、分級処理や篩処理により粒度分布を調整した。ボールミルでの粉砕にはアルミナボールを使用した。
【0026】
本発明の球状アルミナ粉末を半導体封止材に使用する際は、イオン性不純物を低減させる必要がある。イオン性不純物の低減を目的として、電融アルミナ破砕物の火炎処理物の水洗を実施した。水洗処理は特開2005−281063号公報に記載の方法により実施した。
【0027】
本発明の樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム−スチレン)樹脂、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。
また、樹脂として、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムを用いることができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、本発明の球状アルミナ粉末を樹脂に含有させたものである。球状アルミナ粉末の含有率は用途によって異なるが、熱伝導特性を考慮すると40〜90体積%とすることが好ましい。
本発明の球状アルミナ粉末をシリコーン樹脂又はシリコーンゴムに含有させたものは放熱部材として好適である。放熱部材として高い熱伝導率を発現させるためには球状アルミナ粉末の含有率を高くすることに越したことはないが、引っ張り強度や柔軟性等の特性を考慮すると65〜80体積%にすることが好ましい。
本発明の球状アルミナ粉末をエポキシ樹脂に含有させたものは半導体封止材として好適である。半導体封止材用として3W/m・Kを越える高い熱伝導率を発現させるためには、球状アルミナ粉末の含有率を70〜90体積%にすることが好ましい。半導体封止材は、各材料の所定量をブレンダーやヘンシェルミキサー等によりブレンドした後、加熱ロール、ニーダー、一軸又は二軸押し出し機等によって混練し冷却後、粉砕することによって製造することができる。半導体の封止方法としては、トランスファーモールドなどを採用することができる。
【実施例】
【0029】
アルミナ原料には、下記に記載のアルミナ原料1〜6を使用した。
[アルミナ原料1]
日本軽金属社製水酸化アルミニウムBHP39(平均粒子径35μm)を使用した。
[アルミナ原料2]
日本軽金属社製アルミナLS−210(平均粒子径4μm)を使用した。
[アルミナ原料3]
日本軽金属社製アルミナLS−21(平均粒子径55μm)を使用した。
[アルミナ原料4〜6]
アルミナ原料2(LS−210)をアーク炉で溶融・冷却・粉砕して電融アルミナ粉砕物を調整し、分級処理によりアルミナ原料4(平均粒子径30μm)とアルミナ原料5(平均粒子径92μm)、アルミナ原料6(平均粒子径120μm)を調製した。
【0030】
アルミナ原料4〜6調製の粉砕処理はボールミルで行い、粉砕メディアにはアルミナボールを使用した。得られたアルミナ粉砕物を篩、分級処理してアルミナ原料4〜6を調製した。
【0031】
火炎溶融処理
火炎溶融処理は図1に示す製造装置を用いて行った。アルミナ原料は酸素ガス20Nm/Hrに同伴させノズルから火炎中に供給した。
【0032】
溶融及びドライアイス急冷処理
球状アルミナ粉末のδ相とθ相のピークをコントロールするために、アルミナ原料を火炎溶融する際に炉内へドライアイスを供給して冷却処理を行った。アルミナ原料の種類、溶融条件及び冷却処理条件について表1に示す。
【0033】
[イオン性不純物低減処理]
得られた球状アルミナ粉末には水洗処理を施した。水洗処理は原子吸光分光光度計測定においてLi、Na、K成分が未検出であるPH=7のイオン交換水と球状アルミナ粉末を混合して、球状アルミナ粉末濃度が40質量%の水スラリーを調製し、撹拌混合装置(アシザワ・ファインテック株式会社製商品名「スターディスパーサーRSV175」)を用いて1時間撹拌し、フィルタープレスで脱水処理した。ケーキの含水率は全て20質量%以下であった。ケーキは棚段乾燥機にて150℃×48時間乾燥処理した。
【0034】
平均球形度
得られた球状アルミナ粉末の円形度をSysmex社製フロー式粒子像解析装置「FPIA−3000」で測定し、平均球形度を算出した。その結果を表2に示す。
【0035】
平均粒子径
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定機シーラスグラニュロメーター「モデル1064」を用いて測定した。その結果を表2に示す。
【0036】
δ相とθ相のピーク強度測定
X線回折装置には、封入管X線回折装置D8ADVANCE(ブルカー社製)、検出器には、LynxEyeを使用した。その結果を表2に示す。
【0037】
α相含有率の測定
α相アルミナ粉末AA−05(住友化学社製)とθ相アルミナ粉末タイミクロンTM−100D(大明化学社製)を0:10、5:5、10:0の質量割合で混合した粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°に検出されるα相のピークの積分強度を算出し、混合割合と積分強度の検量線を作成した。
次に球状アルミナ粉末のX線回折測定を行い、2θ=43°のピークの積分強度を算出し、検量線からα相含有率を求めた。なお、X線回折にはJDX−3500型X線回折装置(日本電子社製)を使用した。その結果を表2に示す。
【0038】
[放熱部材評価]
実施例1〜5、実施例7〜13、比較例1〜5は、表1で調製した球状アルミナ粉末A〜Qについて、液状シリコーンゴム40体積部と球状アルミナ粉末60体積部を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、その粘度を以下に従い評価した。また実施例6では、液状シリコーンゴム30体積部と球状アルミナ粉末E70体積部を混合してシリコーンゴム組成物を調製し、その粘度とその硬化物の熱伝導率を評価した。その結果を表3に示す。
[粘度測定]
粘度測定はMomentive Material社製、液状シリコーンゴムYE5822Aに球状アルミナ粉末を投入し、NZ−1100(東京理化器械社製攪拌機)を用いて混合した。混合した組成物は真空脱泡し、東機産業社製、B型粘度計TVB−10で粘度測定を行った。粘度測定はNo7スピンドルを使用し、回転数は20rpm、室温20℃で行った。
なお、上記にて調製した液状シリコーンゴムYE5822Aと球状アルミナ粉末の組成物にMomentive Material社製、液状シリコーンゴムYE5822BをYE5822Aの10質量%添加し、成形した後120℃雰囲気で加熱処理するとシリコーンゴムが硬化し、放熱部材となる。
【0039】
[半導体封止材評価]
実施例14〜18、実施例20〜26、比較例6〜10は、表1で調製した球状アルミナ粉末A〜Qについて、表4に示される配合物30体積部と球状アルミナ粉末70体積部を混合してエポキシ樹脂組成物を調製し、その流動性を以下に従い評価した。また実施例19では、表4に示される配合物20体積部と球状アルミナ粉末80体積部を混合してエポキシ樹脂組成物を調製し、その流動性とその熱伝導率を以下に従い評価した。その結果を表5に示す。
[流動性]
スパイラルフロー金型を用い、EMMI−66(Epoxy Molding Material Institute;Society of Plastic Industry)に準拠したスパイラルフロー測定用金型を取り付けたトランスファー成型機を用いて、二軸押出混練機で加熱混練して調製した半導体封止材料のスパイラルフロー値を測定した。トランスファー成形条件は、金型温度175℃、成形圧力7.4MPa、保圧時間90秒とした。
【0040】
[熱伝導率測定]
樹脂組成物(エポキシ樹脂硬化物・シリコーンゴム硬化物)を25×25mm、厚み3mmに成形し、これを15×15mmの銅製ヒーターケースと銅板の間に挟み、締め付けトルク5kgf/cmにてセットした後、銅製ヒーターケースに15Wの電力をかけて4分間保持し、銅製ヒーターケースと銅板の温度差を測定し、熱抵抗を測定する。
熱抵抗(℃/W)=銅製ヒーターケースと銅板の温度差(℃)/ヒーター電力(W)
熱伝導率は熱抵抗(℃/W)と伝熱面積[銅製ヒーターケースの面積](m)、締め付けトルク5kgf/cm時の成形体厚(m)から算出することができる。
熱伝導率(W/m・K)= 成形体厚(m)/{熱抵抗(℃/W)×伝熱面積(m)}
熱伝導率測定の結果を表3及び表5に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】



【0046】
表3及び表5から明らかなように、本発明の球状アルミナ粉末を使用した樹脂組成物は、粘度が低く、スパイラルフロー値が高いため、流動特性が著しく向上している。本発明のアルミナ粉末を使用した樹脂組成物は、放熱部材と半導体封止材の用途に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の球状アルミナ粉末は、樹脂組成物の充填材として使用される。本発明の樹脂組成物は、自動車、携帯電子機器、産業用機器、家庭用電化製品等のモールディングコンパウンドや放熱シート等に用いられる。本発明の半導体封止材は、グラフィックチップ等の放熱特性が重要とされる用途で使用される。
【符号の説明】
【0048】
1 溶融炉
2 バーナー
3 燃料ガス供給管
4 助燃ガス供給管
5 原料粉末供給管
6 冷却媒体供給口
7 バグフィルター
8 ブロワー
9 R熱電対


【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折において2θ=45.6°に検出されるδ相ピーク強度と2θ=44.8°に検出されるθ相ピーク強度の比、(δ相ピーク強度/θ相ピーク強度)が1.0以上である、平均球形度が0.90以上、平均粒子径100μm以下の球状アルミナ粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の球状アルミナ粉末を含有してなる樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂がシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の樹脂組成物を用いた放熱部材。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の樹脂組成物を用いた半導体封止材。
【請求項6】
アルミナ原料を溶融後、ドライアイスで急冷処理することを特徴とする請求項1に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。
【請求項7】
アルミナ原料が電融アルミナであることを特徴とする請求項6に記載の球状アルミナ粉末の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−102215(P2011−102215A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258201(P2009−258201)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】