説明

球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法

【課題】研磨コストを低減することが可能な球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法を提供する。
【解決手段】研磨装置は、回転盤研磨面10Aを有する回転盤10と、回転盤研磨面10Aに対向する固定盤研磨面を有する固定盤とを備えている。回転盤研磨面10Aは固定盤研磨面に対して対向する状態を維持しつつ、相対的な回転が可能となっている。回転盤研磨面10Aには、上記回転に沿った周方向に延在する溝部11が形成されている。溝部11が形成された回転盤10は、球状体である素球よりも高い硬度を有するダイヤモンド粒子からなる砥粒を含む砥粒層18と、砥粒層18上に形成され、砥粒層18よりも低い硬度を有する保持層19とを含んでいる。そして、溝部11は深さ方向において保持層19を貫通し、砥粒層18に至るように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法に関し、より特定的には、研磨コストを低減することが可能な球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の転動体やボールバルブの弁体などとして使用される球状部材の製造プロセスは、球状体の表面を研磨する工程を含む場合が多い。この球状体を研磨する工程に対しては、効率の向上、コストの低減などの要求がある。ここで、球状体の研磨は、一般に球状体よりも硬度の大きい砥粒を用いて実施される。したがって、球状体が窒化珪素、サイアロンなどのセラミックスのような硬度の高い素材からなる場合、砥粒としては、ダイヤモンド、CBN(Cubic Boron Nitride;立方晶窒化硼素)などの極めて高い硬度を有するとともに、高価な砥粒を用いる必要がある。
【0003】
これに対し、効率の向上やコストの低減を目的とした検討が行なわれ、種々の提案がなされている(たとえば特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2000−210862号公報
【特許文献2】特開2000−326238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のように、ダイヤモンド砥粒を遊離砥粒としてラップ液に混入することにより、ラップ液が研磨定盤の目立てに作用し、研磨効率が向上する。しかし、遊離砥粒に高価なダイヤモンド砥粒等を用いる必要があること、および遊離砥粒の作用により研磨定盤の摩耗が促進されることから、ランニングコストが上昇するという問題がある。
【0005】
また、上記特許文献2にように、炭化硼素からなる砥粒を結合剤により結合した構成を有する砥石を採用することにより、ダイヤモンドやCBNからなる砥粒を採用する場合に比べて砥石のコストを低減することができる。しかし、この場合、ダイヤモンドやCBNからなる砥粒を採用する場合に比べて加工効率も同時に低下するため、研磨コスト自体を十分に低減することは難しいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、研磨コストを低減することが可能な球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った球状体の研磨装置は、球状体の表面を研磨する球状体の研磨装置であって、第1の研磨面を有する第1部材と、当該第1の研磨面に対向する第2の研磨面を有する第2部材とを備えている。第1の研磨面と第2の研磨面とは、互いに対向する状態を維持しつつ互いに相対的な回転が可能となっている。第1の研磨面および第2の研磨面の少なくともいずれか一方には、上記回転に沿った周方向に延在する溝部が形成されている。溝部が形成された第1部材および第2部材の少なくともいずれか一方は、球状体よりも高い硬度を有する砥粒を含む砥粒層と、砥粒層上に形成され、砥粒層よりも低い硬度を有する保持層とを含んでいる。そして、溝部は深さ方向において保持層を貫通し、砥粒層に至るように形成されている。
【0008】
球状体の研磨装置においては、相対する研磨面を有する1対の部材(定盤)の間に被研磨物である球状体が挟持され、当該1対の定盤の研磨面が相対的に回転することにより研磨が実施される構成が採用される場合がある。この場合、1対の定盤の研磨面のうち少なくともいずれか一方には、当該球状体が保持され、研磨されるための周方向に延在する溝部が形成される場合が多い。ここで、従来の球状体の研磨装置においては、定盤の研磨面全体が球状体よりも高い硬度を有する砥粒を含む砥粒層となっており、当該砥粒層に上記溝部が形成されている。そして、1対の定盤に挟持された球状体は、砥粒層に形成された溝部により保持されつつ当該溝部上を転走しつつ滑ることにより研磨される。
【0009】
このような従来の球状体の研磨装置では、球状体を安定して保持する観点から、砥粒層に十分な深さの溝部を形成する必要がある。また、溝部のうち球状体の研磨に寄与する領域は、球状体と接触する溝部の底部付近のみである。したがって、球状体を安定して保持可能な深さを確保しつつ、溝部の底部が砥粒層内に位置する必要があるため、これに対応する十分な厚みを有する砥粒層が必要となる。これは、特に砥粒が高硬度かつ高価な場合、砥粒層の素材費および加工費の増大の原因となる。また、球状体の研磨装置を継続して使用すると、球状体と接触する溝部の底部が徐々に摩耗し、溝部の深さが増大する結果、相対する研磨面同士が接触する可能性がある。これを回避するため、所定の期間継続して使用された球状体の研磨装置に対しては、溝部の深さを小さくする加工(溝部深さの修正加工)が必要となる。具体的には、当該加工は、砥粒層の表面層を除去する研削加工などを実施することにより達成される。しかし、砥粒層は加工される球状体よりも高い硬度を有する砥粒を含むことから、当該加工のコストは大きくなる場合が多い。特に、砥粒がダイヤモンドやCBNなどの極めて高硬度な砥粒を含む場合、研削加工による溝部深さの修正加工は難しく、よりコストの高い放電加工などを実施する必要があるため、溝部深さの修正加工に要するコストは極めて大きくなる。
【0010】
これに対し、本発明の球状体の研磨装置においては、溝部が形成される部材は砥粒層と、砥粒層上に形成され、砥粒層よりも硬度の低い保持層を含んでおり、溝部は深さ方向において保持層を貫通し、砥粒層に至るように形成されている。これにより、球状体の研磨に寄与する溝部の底部において砥粒層が露出するとともに、球状体の保持に寄与する溝部の側壁部は保持層からなっている。
【0011】
このような構成を有することにより、本発明の球状体の研磨装置では、保持層の厚みを大きくすることにより、球状体を安定して保持することができるため、砥粒層に形成する溝部の深さを抑制するとともに、砥粒層の厚みを低減することが可能となる。その結果、上記構成によれば、砥粒層の素材費および加工費を抑制することができる。さらに、上記本発明の球状体の加工装置においては、硬度の高い砥粒層ではなく、保持層の表層部を除去する加工を実施することにより、溝部深さの修正加工を達成することができる。そのため、球状体の加工装置を継続して使用する場合のランニングコストを低減することができる。
【0012】
以上のように、本発明の球状体の研磨装置によれば、研磨コストを低減することが可能な球状体の研磨装置を提供することができる。
【0013】
上記球状体の研磨装置において好ましくは、上記砥粒は、ダイヤモンドの粒子、立方晶窒化硼素の粒子および炭化硼素の粒子からなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいる。
【0014】
このような極めて硬度の高い粒子を砥粒として採用することにより、セラミックスなどの高硬度の材料からなる球状体の研磨を実施することが可能となる。そして、上記砥粒は極めて硬度が高く、高価であるため、砥粒層の厚みを低減することにより砥粒の使用量を抑制し、かつ砥粒層に対する加工を抑制することが可能な本発明の球状体の加工装置に採用することで、研磨コストの低減効果が特に大きくなる。
【0015】
上記球状体の研磨装置において好ましくは、砥粒層は、上記砥粒が結合剤により結合されて構成されている。これにより、種々の砥粒を含む砥粒層を容易に形成することができる。
【0016】
上記球状体の研磨装置においては、結合剤は、レジノイドボンド、ビトリファイドボンドおよびメタルボンドからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含むものとすることができる。これにより、十分な強度を有する砥粒層を容易に形成することができる。
【0017】
上記球状体の研磨装置においては、上記保持層は砥粒層において砥粒を結合する結合剤からなるものとすることができる。
【0018】
これにより、砥粒と結合剤とを混合した層を形成した後、当該層の上に結合剤からなる層を形成し、その後焼成などの処理を実施することにより、砥粒層と砥粒層上の保持層とを効率よく作製することができる。
【0019】
上記球状体の研磨装置においては、上記保持層は鋼または鋳物からなっていてもよい。これにより、十分な強度を有するとともに、安価な保持層を形成することができる。
【0020】
本発明に従った球状体の研磨方法は、第1の研磨面を有する第1部材と、第1の研磨面に対向する第2の研磨面を有する第2部材との間に被加工物である球状体を配置する工程と、第1の研磨面と第2の研磨面とに対し、互いに対向する状態を維持しつつ相対的な回転を与えることにより、球状体を研磨する工程とを備えている。第1の研磨面および第2の研磨面の少なくともいずれか一方には、上記回転に沿った周方向に延在する溝部が形成されている。溝部が形成された第1部材および第2部材の少なくともいずれか一方は、球状体よりも高い硬度を有する砥粒を含む砥粒層と、砥粒層上に形成され、砥粒層よりも低い硬度を有する保持層とを含んでいる。溝部は深さ方向において保持層を貫通し、砥粒層に至るように形成されている。そして、球状体を研磨する工程では、球状体は、溝部の保持層において保持されつつ、砥粒層に接触することにより研磨される。
【0021】
本発明の球状体の研磨方法においては、球状体を研磨する工程において、球状体が溝部の砥粒層上に形成された保持層において保持されつつ、砥粒層に接触することにより研磨される。そして、砥粒層に比べて硬度低い保持層の厚みを大きくしておくことにより、球状体を安定して保持することができるため、砥粒層に形成する溝部の深さを抑制するとともに、砥粒層の厚みを低減することが可能となる。これにより、球状体の研磨に使用する砥粒層の素材費および加工費を抑制することができる。さらに、溝部深さの修正加工が必要となった場合、硬度の高い砥粒層ではなく、保持層の表層部を除去する加工により、当該修正加工が可能である。そのため、球状体の加工装置のランニングコストを低減することができる。
【0022】
以上のように、本発明の球状体の研磨方法によれば、研磨コストを低減することが可能な球状体の研磨方法を提供することができる。
【0023】
上記球状体の研磨方法において好ましくは、球状体は、セラミックスからなっている。そして、上記砥粒は、ダイヤモンドの粒子、立方晶窒化硼素の粒子および炭化硼素の粒子からなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいる。
【0024】
砥粒層の厚みを低減することにより砥粒の使用量を抑制し、かつ砥粒層に対する加工を抑制することが可能な本発明の球状体の研磨方法は、上述のような極めて硬度の高い粒子を砥粒として採用して、高硬度なセラミックスからなる球状体の研磨に適用することにより、特に大きい研磨コストの低減効果を得ることができる。
【0025】
上記球状体の研磨方法において好ましくは、砥粒層は、上記砥粒が結合剤により結合されて構成されている。これにより、種々の砥粒を含む砥粒層を容易に形成することが可能となり、研磨コストを一層低減することができる。
【0026】
上記球状体の研磨方法においては、結合剤は、レジノイドボンド、ビトリファイドボンドおよびメタルボンドからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含むものとすることができる。これにより、十分な強度を有する砥粒層を用いて球状体の研磨を実施することができる。
【0027】
上記球状体の研磨方法においては、上記保持層は砥粒層において砥粒を結合する結合剤からなるものとすることができる。
【0028】
これにより、砥粒と結合剤とを混合した層を形成した後、当該層の上に結合剤からなる層を形成し、その後焼成などの処理を実施することにより、砥粒層と砥粒層上の保持層とを効率よく作製できるため、研磨コストを一層抑制することができる。
【0029】
上記球状体の研磨方法においては、上記保持層は鋼または鋳物からなっていてもよい。これにより、十分な強度を有するとともに、安価な保持層を用いて球状体の研磨を実施することができる。
【0030】
本発明に従った球状部材の製造方法は、球状体を準備する工程と、当該球状体を研磨する工程とを備えている。そして、球状体を研磨する工程では、上記本発明の球状体の研磨方法により、球状体が研磨される。
【0031】
本発明の球状部材の製造方法によれば、研磨コストを低減可能な上記球状体の研磨方法が採用されることにより、球状部材を安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の説明から明らかなように、本発明の球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法によれば、研磨コストを低減することが可能な球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0034】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1における球状体の研磨装置の構成を示す概略図である。また、図2は、図1の球状体の研磨装置が備える定盤の構成を示す概略断面図である。
【0035】
図1を参照して、実施の形態1における研磨装置1は、回転盤研磨面10Aを有する円盤状の定盤である回転盤10と、回転盤研磨面10Aに対向する固定盤研磨面20Aを有する円盤状の定盤である固定盤20と、回転盤10と固定盤20との間に球状体である素球91を導入する入口シュート30と、研磨された素球91が取り出される出口シュート40とを備えている。
【0036】
固定盤20と回転盤10とは、固定盤研磨面20Aと回転盤研磨面10Aとが平行になるように、かつ中心軸が回転軸αに一致するように所定の間隔を空けて配置されている。また、固定盤20は固定盤20を保持する架台(図示しない)に対して固定される一方、回転盤10は回転軸α周りに(回転盤10の周方向に沿った回転の向きβに沿って)回転可能となっている。
【0037】
図1および図2を参照して、回転盤研磨面10Aには、回転軸αと回転盤研磨面10Aとの交点を中心とした同心円状の複数の(本実施例では3本の)溝部11が形成されている。つまり、回転盤研磨面10Aには、回転盤10の回転に沿った周方向に延在する3本の溝部11が形成されている。
【0038】
固定盤20には、厚み方向(回転軸αに沿った方向)に固定盤20を貫通する開口部24が形成されている。そして、この開口部24から、回転盤研磨面10Aに形成された3本の溝部11が露出している。一方、入口シュート30は、それぞれ平行に延在する複数の溝31が形成された上面を有している。そして、当該溝31が延在する方向が回転盤研磨面10Aに形成された溝部11に交差するように、かつ溝31の一方の端部が溝部11に隣接するように、入口シュート30はその一部が開口部24に挿入されるように配置されている。また、入口シュート30は、溝31が開口部24に向けて傾斜するように、上面が水平面に対して交差する態様で図示しない架台に固定されている。これにより、入口シュート30の溝31に供給された素球91は、溝31に沿って転走し、回転盤10と固定盤20との間に投入される。
【0039】
出口シュート40は、入口シュート30に対して回転盤10の回転の向きβとは反対側に隣接して、かつ固定盤20を回転軸α方向に貫通するように配置されている。
【0040】
次に、図2を参照して、回転盤10の詳細について説明する。なお、図2は、回転盤研磨面10Aに垂直であり、かつ回転盤研磨面10Aの径方向に沿った面における回転盤10の断面図に相当する。ここで、固定盤20の固定盤研磨面20Aには、回転盤研磨面10Aと同様に、回転軸αと固定盤研磨面20Aとの交点を中心とした同心円状の複数の(本実施例では3本の)溝部(図示しない)が形成されており、当該複数の(3本の)溝部と回転盤研磨面10Aの3本の溝部11とは互いに対向するように配置されている。そして、固定盤20は、以下に説明する回転盤10と同様の構成を有している。
【0041】
図2を参照して、実施の形態1における回転盤10は、鉄、鋳物などの素材からなる円盤状の定盤本体17と、定盤本体17上に配置されたダイヤモンドの粒子を砥粒として含む砥粒層18と、砥粒層18上に形成された鋼からなる保持層19とを備えている。保持層19の硬度は、砥粒層18よりも低くなっている。そして、保持層19の砥粒層18とは反対側の表面である回転盤研磨面10Aから深さ方向に保持層19を貫通し、砥粒層18に至るように、溝部11が形成されている。つまり、溝部11の底部は、砥粒層18内に位置している。また、溝部11は、延在方向に垂直な断面において、その壁面は円弧状の形状を有している。これにより、素球91の研磨に寄与する溝部11の底部において砥粒層18が露出するとともに、素球91の保持に寄与する溝部11の側壁部(溝部11の壁面と溝部11が形成されていない回転盤研磨面10Aの領域とが交差する部位)は保持層19内に位置している。砥粒層18は、砥粒が結合剤により結合されて構成されている。
【0042】
すなわち、実施の形態1における球状体の研磨装置1は、球状体の表面を研磨する球状体の研磨装置であって、第1の研磨面としての回転盤研磨面10Aを有する第1部材である回転盤10と、回転盤研磨面10Aに対向する第2の研磨面としての固定盤研磨面20Aを有する第2部材である固定盤20とを備えている。回転盤研磨面10Aは固定盤研磨面20Aに対して対向する状態を維持しつつ、相対的な回転が可能となっている。回転盤研磨面10Aには、上記回転に沿った周方向に延在する溝部11が形成されている。溝部11が形成された回転盤10は、球状体である素球91よりも高い硬度を有するダイヤモンド粒子からなる砥粒を含む砥粒層18と、砥粒層18上に形成され、砥粒層18よりも低い硬度を有する保持層19とを含んでいる。そして、溝部11は深さ方向において保持層19を貫通し、砥粒層18に至るように形成されている。
【0043】
次に、上記実施の形態1における球状体の研磨装置1を用いた研磨方法を採用して実施される球状部材としての軸受の玉の製造方法について説明する。
【0044】
図3は、実施の形態1における軸受の玉の製造方法の概略を示すフローチャートである。図3を参照して、実施の形態1における軸受の玉の製造方法では、まず、工程(S10)として被加工球準備工程が実施される。具体的には、図1〜図3を参照して、たとえば窒化珪素、サイアロンなどのセラミックスの原料粉末が準備され、当該原料粉末が球状に成形された後、加圧焼結あるいは常圧焼結などが実施されることにより、セラミックスの焼結体からなる球状体としての素球91が作製される。
【0045】
次に、工程(S20)として被加工球投入工程が実施される。この工程(S20)では、工程(S10)において準備された素球91が図1に示す研磨装置に投入される。具体的には、図1を参照して、工程(S10)において準備された素球91が入口シュート30の溝31上に供給される。供給された素球91は、入口シュート30の溝31上を転走し、開口部24を通って回転盤10の溝部11に接触する位置まで進行する。このとき、回転盤10を回転の向きβに沿って回転させておくことにより、素球91は向かい合う回転盤10と固定盤20との間に引き込まれる。
【0046】
次に、工程(S30)として加工工程が実施される。この工程(S30)では、回転盤10と固定盤20との間に引き込まれた素球91が回転盤10に形成された溝部11と固定盤20に形成された溝部との間において保持され、回転盤10の回転の向きβの向きに転走することにより、研磨される。具体的には、図2を参照して、回転盤10と固定盤20との間に引き込まれた素球91は、溝部11内の保持層19によって回転盤10の径方向に保持されつつ、溝部11において露出した砥粒層18に対して滑りつつ転走することにより研磨される。なお、この工程(S30)では、回転盤10と固定盤20との間に遊離砥粒を含む研磨液が供給されてもよい。
【0047】
次に、工程(S40)として、排出工程が実施される。この工程(S40)では、研磨が終了した素球91が、出口シュート40から排出される。具体的には、図1を参照して、工程(S30)において回転盤10の回転の向きβの向きに転走することにより研磨された素球91は、出口シュート40が配置された位置まで進行することにより溝部11から離脱し、出口シュート40を介して研磨装置1の外部に排出される。
【0048】
次に、工程(S50)として仕上げ工程が実施される。この工程(S50)では、工程(S10)において準備され、(S20)〜(S40)において研磨された素球91に対して仕上げ加工が実施されることにより、球状部材としての軸受の玉が完成する。具体的には、工程(S40)までが完了した素球91に対して、図1に基づいて説明した研磨装置1において、砥粒層18に含まれる砥粒がより細かいダイヤモンドの粒子からなる他の研磨装置を用いて、上述の場合と同様の手順により、素球91の表面粗さがさらに低減される仕上げ加工が実施される。この仕上げ加工は、砥粒を構成するダイヤモンドの粒子を徐々に細かくしつつ、複数回実施されてもよい。また、最終研磨として、公知のラップ盤を用いたラッピング加工が実施されてもよい。以上の工程により、本実施の形態における球状部材としての転がり軸受の玉(転動体)が完成する。
【0049】
上記本実施の形態における研磨装置1を用いた研磨方法では、図1および図2を参照して、保持層19の厚みを大きくすることにより、素球91を安定して保持することができるため、砥粒層18に形成する溝部11の深さを抑制するとともに、砥粒層18の厚みを低減することが可能となる。その結果、極めて高価なダイヤモンドからなる砥粒を含み、加工が困難な砥粒層の素材費および加工費を抑制することができる。
【0050】
また、軸受の玉の生産ラインにおいて研磨装置1を継続的に使用した場合、素球91の研磨に寄与する砥粒層18の摩耗が進行し、溝部11の深さが大きくなっていく。そして、溝部11の深さが限度を超えて大きくなると、固定盤20と回転盤10とが接触することとなるため、溝部深さの修正加工が必要となる。本実施の形態における研磨装置1においては、砥粒層18よりも硬度の低い保持層19が砥粒層18上に形成されているため、加工の容易な保持層19の表面層を除去することにより、この溝部深さの修正加工を達成することができる。その結果、砥粒層18および保持層19が一層の砥粒層で形成された従来の研磨装置に比べて、溝部深さの修正加工に要する費用が抑制され、ランニングコストを低減することができる。
【0051】
より具体的には、図1および図2を参照して、たとえば回転盤10の溝部深さの修正加工が必要となった場合、砥粒層18および保持層19が一層の砥粒層で形成された従来の研磨装置では、研磨装置から回転盤10を取り外し、コストの高い放電加工などの方法により修正加工が実施される。さらに、回転盤10を再度研磨装置に取り付ける場合、この取付精度が素球91の加工精度に大きな影響を与えるため、取付後の微調整が必要となる。この微調整は、たとえば素球91を実際に研磨する慣らし運転を実施し、素球91の研磨状態を確認することにより行なうことができる。このような取付後の微調整のため、生産ラインの休止時間が長くなり、コストの上昇を招来する。
【0052】
これに対し、本実施の形態における研磨装置1を用いた研磨方法では、回転盤10の回転盤研磨面10Aの表層部が、硬度の低い保持層19から構成されているため、回転盤10を研磨装置1から取り外すことなく、かつ安価な方法で溝部深さの修正加工を実施することができる。たとえば、図1を参照して、回転盤10の溝部深さの修正加工が必要となった場合、回転盤10を回転させた状態で開口部24からドレッサーを挿入して保持層19に接触させ、保持層19の表層部を除去することにより、修正加工を実施することができる。すなわち、本実施の形態における研磨装置1においては、インラインでの溝部深さの修正加工が可能である。その結果、放電加工などのコストの高い加工が必要ないため、溝部深さの修正加工の加工費が抑制できるだけでなく、修正加工に伴う生産ラインの休止時間を大幅に低減することが可能となり、生産コストの低減に寄与することができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態におけるの球状体の研磨装置を用いた球状体の研磨方法によれば、球状体である素球の研磨コストを低減することができる。
【0054】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図4は、実施の形態2における球状体の研磨装置が備える定盤の構成を示す概略断面図である。
【0055】
実施の形態2における球状体の研磨装置は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様に動作するとともに、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における球状体の研磨装置は、保持層の構成において実施の形態2の場合とは異なっている。
【0056】
図4を参照して、実施の形態2における回転盤10の砥粒層18は、実施の形態1の場合と同様に、ダイヤモンドからなる砥粒が結合剤により結合されて構成されている。そして、実施の形態2における回転盤10では、図2に示す鋼からなる保持層19に代えて、砥粒層18において砥粒を結合する結合剤からなる保持層59が採用されている。
【0057】
これにより、砥粒と結合剤とを混合した層を形成した後、当該層の上に結合剤からなる層を形成し、その後焼成などの処理を実施することにより、砥粒層18と砥粒層18上の保持層59とを効率よく作製することが可能となっている。
【0058】
なお、図1を参照して、実施の形態2における固定盤20は、実施の形態1における回転盤10と同様の構成を有していてもよいし、上記実施の形態2における回転盤10と同様の構成を有していてもよい。また、実施の形態1における固定盤20は、上記実施の形態2における回転盤10と同様の構成を有していてもよい。
【0059】
さらに、上記実施の形態においては、研磨装置が回転盤および固定盤を備える場合について説明したが、本発明の球状体の研磨装置はこれに限られず、たとえば互いに対向する定盤が異なる回転の向きで回転し、かつ/または異なる回転速度で回転することにより、一方が他方に対して相対的に回転するものであればよい。
【0060】
また、上記実施の形態における砥粒としては、素球91よりも硬度の高いものであれば種々の素材からなる粒子を採用することができるが、硬度の高いダイヤモンド、CBN、炭化硼素、アルミナおよび炭化珪素の粒子からなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいることが好ましい。特に、硬度が極めて高く、かつ高価であるダイヤモンド、CBNおよび炭化硼素からなる群から選択される少なくともいずれか1つを含む場合、本発明の効果がより顕著となる。
【0061】
さらに、砥粒層18において砥粒を結合する結合剤としては、任意の結合剤を採用することができるが、たとえばレジノイドボンド、ビトリファイドボンドおよびメタルボンドからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含むものを採用することができる。
【0062】
また、保持層としては、上記実施の形態2にように、砥粒層18を構成する結合剤からなる保持層59を採用してもよいし、JIS規格S53Cなどの鋼からなる保持層19を採用してもよい。さらに、保持層を構成する素材としては、ミーハナイト鋳鉄やねずみ鋳鉄などの鋳鉄(鋳物)を採用してもよい。
【0063】
また、上記実施の形態における研磨装置を用いた研磨方法は、種々の球状部材の製造における研磨に採用することができるが、硬度が高いため硬度の高い砥粒を必要とし、かつ高い表面仕上げ精度が要求される窒化珪素またはサイアロンからなる転がり軸受の玉の製造における研磨に、特に有利に採用することができる。
【実施例1】
【0064】
以下、本発明の実施例1について説明する。実施の形態2において図4に基づいて説明した定盤と同様の構成を有する定盤を製作し、製作コストの低減効果を確認する調査を行なった。具体的には、鉄製の定盤本体上にダイヤモンド粒子からなる砥粒とメタルボンドと混合した厚み3mmの砥粒含有層を形成し、さらにメタルボンドからなる厚み1.6mmのボンド層を形成した。その後、焼成し、定盤本体上に砥粒層および保持層が形成された部材を作製した。そして、当該部材の保持層側の表面に曲率半径4.37mm、深さ2.6mmの溝部を放電加工により形成した。溝部は同心状に半径145mm、132mm、119mmの3本形成した。これにより図4と同様の構成を有する定盤を完成させた(実施例A)。
【0065】
一方、比較のため、本発明の範囲外である比較例の定盤も製作した。図5は、比較例の定盤の構成を示す概略断面図である。図5を参照して、比較例の定盤として、上記実施例Aの定盤と同様の手順においてボンド層の形成を省略し、上記ボンド層の厚みの分だけ砥粒含有層の厚みを増加させることにより、実施例Aにおいて保持層の厚みの分だけ砥粒層の厚みが増加したものを製作した(比較例A)。つまり、図5を参照して、比較例の定盤110は、定盤本体117と、定盤本体117上に形成され、ダイヤモンドの粒子からなる砥粒を含む砥粒層118とを備えている。そして、定盤110の表面である研磨面110Aには、砥粒118内に底部を有する溝部110が形成されている。そして、実施例Aおよび比較例Aの製作に要した製作コストを算出した。表1に、算出された実施例Aおよび比較例Aの製作コストを、比較例Aの製作コストを1として示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1を参照して、実施例Aの定盤は、砥粒含有層上にボンド層を形成する工程が追加されているにもかかわらず、比較例の定盤に対して25%の製作コストの低減を達成することができた。これは、高価なダイヤモンド砥粒を含む砥粒層の厚みを低減できたことによる素材コストの低減、および溝部の形成における砥粒層に対する加工の相当部分が硬度の低い保持層に対する加工に置き換わったことによる加工コストの低減によるものである。なお、実施例Aの定盤においては、図4に示すように溝部の底部に球状体の研磨に寄与する砥粒層18が露出しているため、図5に示す比較例Aの定盤と同様の研磨加工を実施することができる。
【0068】
以上の調査結果より、本発明の球状体の研磨装置によれば、研磨加工に対する機能を維持しつつ、定盤の大幅なコスト低減が可能であることが確認された。
【実施例2】
【0069】
以下、本発明の実施例2について説明する。本発明の球状体の研磨装置を用いて種々のサイズのセラミック球を研磨し、砥石寿命を確認する実験を行なった。実験の手順は以下の通りである。
【0070】
まず上記実施例1において作製した実施例および比較例と同様の構成を有する定盤を作製し、これを用いて直径5/16インチ、1/2インチおよび1・7/8インチの3種類のサイズの窒化珪素からなるセラミック球を実際に研磨した。なお、溝部の深さは研磨されるセラミック球の大きさに応じて最適な値に決定した。そして、研磨により砥粒層が摩耗して溝部の深さが大きくなり、研磨を続行できなくなった時点で保持層または砥粒層の表層部を除去して溝部の深さを減少させる加工(溝部深さの修正加工)を行ない、研磨を続行した。そして、この手順を繰り返すことにより砥粒層が摩滅し、溝部の底部に定盤本体が露出した時点を寿命(砥石寿命)として記録した。表2に実験結果を示す。表2においては、5/16インチ、1/2インチおよび1・7/8インチのセラミック球を研磨した場合の実施例の定盤の結果をそれぞれ実施例B、CおよびD、比較例の定盤の結果をそれぞれ比較例B、CおよびDとし、比較例B、CおよびDの寿命を1として砥石寿命を表示している。
【0071】
【表2】

【0072】
表2を参照して、実施例の定盤を用いて研磨を行なった場合、比較例の定盤を用いた場合に対して砥石寿命が5.2〜9.3倍となっている。これは、比較例の定盤においては、砥粒層の厚みは実施例に比べて厚いにもかかわらず、溝部の底と定盤本体との間に存在する砥粒層の厚みが小さいためである。また、研磨されるセラミック球の直径が大きいほど、実施例の定盤を使用する効果が大きくなっている。これは、研磨されるセラミック球のサイズが大きくなるほど溝部の深さを大きくする必要があるため、溝部の底と定盤本体との間に存在する砥粒層の厚みがより小さくなることに起因するものと考えられる。
【0073】
以上の実験結果より、本発明の球状体の研磨装置によれば、研磨加工に対する機能を維持しつつ、定盤の砥石寿命を向上させることが可能であることが確認された。
【実施例3】
【0074】
以下、本発明の実施例3について説明する。本発明の球状体の研磨装置が備える定盤について、溝部深さの修正加工を実施した場合の加工コストを調査する実験を行なった。実験の手順は以下の通りである。
【0075】
上記実施例1において作製した実施例および比較例の定盤を備えた研磨装置によりセラミック球の研磨を行なった。そして、砥粒層が摩耗して溝部の深さが大きくなり、研磨を続行できなくなった時点で保持層または砥粒層の表層部を除去して溝部の深さを減少させる加工(溝部深さの修正加工)を行ない、当該溝部深さの修正加工に要したコストを算出した。実験結果を表3に示す。表3においては、実施例の結果を実施例E、比較例の結果を比較例Eとし、比較例Eのコストを1として、溝部深さの修正加工に要したコスト表示している。
【0076】
【表3】

【0077】
表3を参照して、実施例の定盤を用いることにより、比較例の定盤を用いた場合の1/50程度にまで溝部深さの修正加工のコストを低減できることが分かった。これは、比較例の定盤では、溝部深さの修正加工を実施するために研磨装置から定盤を取り外し、さらに放電加工を実施する必要があったのに対し、実施例の定盤では、研磨装置から取り外すことなく、一般的なドレッサーを保持層に接触させて当該保持層の表層部を除去することにより、溝部深さの修正加工が実施できたことによる。
【0078】
以上の実験結果より、本発明の球状体の研磨装置によれば、溝部深さの修正加工に要するコストを低減可能であるため、研磨装置のランニングコストを低減し、球状部材の製造コストを抑制できることが確認された。
【0079】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法は、研磨コストを低減することが求められる球状体の研磨装置、球状体の研磨方法および球状部材の製造方法に、特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施の形態1における球状体の研磨装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1の球状体の研磨装置が備える定盤の構成を示す概略断面図である。
【図3】実施の形態1における軸受の玉の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2における球状体の研磨装置が備える定盤の構成を示す概略断面図である。
【図5】比較例の定盤の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 研磨装置、10 回転盤、10A 回転盤研磨面、11 溝部、17 定盤本体、18 砥粒層、19 保持層、20 固定盤、20A 固定盤研磨面、24 開口部、30 入口シュート、31 溝、40 出口シュート、59 保持層、91 素球。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状体の表面を研磨する球状体の研磨装置であって、
第1の研磨面を有する第1部材と、
前記第1の研磨面に対向する第2の研磨面を有する第2部材とを備え、
前記第1の研磨面と前記第2の研磨面とは、互いに対向する状態を維持しつつ互いに相対的な回転が可能となっており、
前記第1の研磨面および前記第2の研磨面の少なくともいずれか一方には、前記回転に沿った周方向に延在する溝部が形成されており、
前記溝部が形成された前記第1部材および前記第2部材の少なくともいずれか一方は、
前記球状体よりも高い硬度を有する砥粒を含む砥粒層と、
前記砥粒層上に形成され、前記砥粒層よりも低い硬度を有する保持層とを含み、
前記溝部は深さ方向において前記保持層を貫通し、前記砥粒層に至るように形成されている、球状体の研磨装置。
【請求項2】
前記砥粒は、ダイヤモンドの粒子、立方晶窒化硼素の粒子および炭化硼素の粒子からなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいる、請求項1に記載の球状体の研磨装置。
【請求項3】
前記砥粒層は、前記砥粒が結合剤により結合されて構成されている、請求項1または2に記載の球状体の研磨装置。
【請求項4】
前記結合剤は、レジノイドボンド、ビトリファイドボンドおよびメタルボンドからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいる、請求項3に記載の球状体の研磨装置。
【請求項5】
前記保持層は前記結合剤からなっている、請求項3または4に記載の球状体の研磨装置。
【請求項6】
前記保持層は鋼または鋳物からなっている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の球状体の研磨装置。
【請求項7】
第1の研磨面を有する第1部材と、前記第1の研磨面に対向する第2の研磨面を有する第2部材との間に被加工物である球状体を配置する工程と、
前記第1の研磨面と前記第2の研磨面とに対し、互いに対向する状態を維持しつつ相対的な回転を与えることにより、前記球状体を研磨する工程とを備え、
前記第1の研磨面および前記第2の研磨面の少なくともいずれか一方には、前記回転に沿った周方向に延在する溝部が形成されており、
前記溝部が形成された前記第1部材および前記第2部材の少なくともいずれか一方は、
前記球状体よりも高い硬度を有する砥粒を含む砥粒層と、
前記砥粒層上に形成され、前記砥粒層よりも低い硬度を有する保持層とを含み、
前記溝部は深さ方向において前記保持層を貫通し、前記砥粒層に至るように形成されており、
前記球状体を研磨する工程では、前記球状体は、前記溝部の前記保持層において保持されつつ、前記砥粒層に接触することにより研磨される、球状体の研磨方法。
【請求項8】
前記球状体は、セラミックスからなっており、
前記砥粒は、ダイヤモンドの粒子、立方晶窒化硼素の粒子および炭化硼素の粒子からなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいる、請求項7に記載の球状体の研磨方法。
【請求項9】
前記砥粒層は、前記砥粒が結合剤により結合されて構成されている、請求項7または8に記載の球状体の研磨方法。
【請求項10】
前記結合剤は、レジノイドボンド、ビトリファイドボンドおよびメタルボンドからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含んでいる、請求項9に記載の球状体の研磨方法。
【請求項11】
前記保持層は前記結合剤からなっている、請求項9または10に記載の球状体の研磨方法。
【請求項12】
前記保持層は鋼または鋳物からなっている、請求項7〜10のいずれか1項に記載の球状体の研磨方法。
【請求項13】
球状体を準備する工程と、
前記球状体を研磨する工程とを備え、
前記球状体を研磨する工程では、請求項7〜12のいずれか1項に記載の球状体の研磨方法により前記球状体が研磨される、球状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−89170(P2010−89170A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258419(P2008−258419)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】