説明

環境パラメータに対する依存特性補償信号生成回路

【課題】生成すべき補償信号の極性に制限がなく、環境パラメータ依存特性に対する補償信号の選択範囲が広い補償信号生成回路を、簡易な構成で実現する。
【解決手段】基準温度未満の低温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存し、高温側領域では基準温度に対応する一定の基準出力レベルとなる特性を有する低温側信号を生成する低温側信号生成回路7aと、低温側領域では基準出力レベルとなり、高温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存する特性を有する高温側信号を生成する高温側信号生成回路7bと、低温側信号における低温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する低温側特性調整回路9a、10aと、高温側信号における高温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する高温側特性調整回路9b、10bと、低温側特性調整回路および高温側特性調整回路の出力信号を加算して温度補償信号として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器や各種センサー回路等の電子素子の、温度、圧力、湿度などの周囲環境に依存する動作特性の変動、すなわち環境依存特性を補償するための信号を生成する補償信号生成回路に関する。例えば、角速度センサの検出出力の温度依存性を補償する温度補償信号を生成する回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、各種の電子素子が用いられている。電子素子としては、例えば、水晶発振器、温度センサー、圧力センサー、湿度センサー、角速度センサ、加速度センサ等がある。
【0003】
例えば、水晶発振器は、電子機器の基準クロック信号を生成するための小型で且つ高精度な発振装置を構成するためには必須である。水晶発振器の発振周波数は、水晶振動子に起因する3次及び1次成分を持つ温度特性を有する。すなわち、図22(a)に示すように、横軸に周囲温度Ta、縦軸に発振周波数fをとると、温度補償を行なわない場合の水晶発振器の発振周波数fは、その特性が極大値と極小値との間において10ppm〜30ppm程度のずれを有する概ね3次曲線Oとなる。但し、通常、電子機器を動作させる周囲温度Taを−30℃〜+80℃程度とする。従って、図22(b)に示すように、横軸に周囲温度Ta、縦軸に制御電圧Vcをとったときに、理想的な制御電圧曲線Pを生成し、水晶発振器に印加すれば、図22(c)に示す直性Qのように、df/dTa=0となって、発振周波数fは実質的に温度に依存しなくなる。
【0004】
実際には、図22(b)に示す理想的な温度特性を持つ制御電圧Vcを発生させることは技術的に難しく、一般には、擬似的な3次の温度特性を持つ制御電圧を様々な方法で発生させ、発振周波数の温度補償を行なっている。例えば、特許文献1には、図23に示すような、温度補償機能付き水晶発振装置が開示されている。
【0005】
図23に示す温度補償機能付き水晶発振装置は、周囲温度に依存しない所定の電圧値を生成して出力する第1のアナログ信号生成回路としての定電圧回路101と、周囲温度に比例した電圧値を生成して出力する第2のアナログ信号生成回路としての温度センサ回路102を備えている。
【0006】
制御回路103は、定電圧回路101からの定電圧出力と温度センサ回路102からの温度に比例した電圧出力を受け、水晶振動子の温度特性を補償するための制御電圧Vcを生成する。制御電圧Vcは、周囲温度の全温度領域にわたって水晶振動子の温度特性を補償するための負の3次曲線を、連続した直線を用いて折れ線近似して得られるものである。電圧制御水晶発振回路(以下、VCXOと略称する。)104は、制御回路103からの制御電圧Vcにより発振周波数が所定値に制御される。また、制御回路103が出力する制御電圧Vcに対して、VCXO104が出力する発振周波数を最適化するために、制御電圧Vcの温度特性を補償する温度補償用パラメータを記憶するROM/RAM回路105が設けられている。
【0007】
制御回路103は、MAX回路103aと、MIN回路103bとから構成されている。MAX回路103aには、定電圧回路101及び温度センサ回路102によって生成される第1の制御電圧y1、第2の制御電圧y2及び第3の制御電圧y3が入力され、そのうちの最大電圧値を選択して第6の制御電圧y6として出力する。MIN回路103bには、定電圧回路101及び温度センサ回路102によって生成される第4の制御電圧y4及び第5の制御電圧y5並びにMAX回路103aからの第6の制御電圧y6が入力され、そのうちの最小電圧値を選択して第7の制御電圧y7として出力する。第7の制御電圧y7が、すなわち温度補償用の制御電圧Vcとなる。
【0008】
このように、温度補償用の制御電圧Vcを生成する制御回路103によると、複数の簡単な回路を用いて、制御電圧Vcとしての第7の制御電圧y7を連続した直線状に変化する5本の制御電圧群として出力することにより、温度補償特性の折れ線近似を行なうことができる。
【特許文献1】国際公開第99/03195号パンフレット(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された温度補償信号を生成する回路の場合、各温度範囲に対し、あらかじめ、全温度範囲に対し勾配、極性が調整された複数の信号同士を、MIN回路やMAX回路を組み合わせ合成して補償信号を作成するため、決められた極性に設定された補償信号しか生成することができない。従って、温度補償特性の選択範囲が制限される。
【0010】
しかも、全温度範囲に亘り、温度に依存した出力レベルを持つ複数の調整回路の出力信号の比較、加算を複数回繰り返す構成であるため、システムが複雑である。
【0011】
また、4次の曲線、5次の曲線などのように次数が増えると、生成すべき補償信号の変曲点が増え、複数のMAX回路、MIN回路を経由しなくてはならず、システムの複雑化を避けることができない。また、理想的な曲線に対し誤差が大きくなる。
【0012】
さらに、生成する補償信号が、ゲイン調整用、オフセット調整用、など、異なる特性を有した信号生成が必要な場合、それぞれにそれを生成する素子が増えるため、コストアップが避けられない。
【0013】
従って本発明は、生成すべき補償信号の極性に制限がなく、環境パラメータに対する依存特性補償信号の選択範囲が広い補償信号生成回路を、簡易な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第1構成の依存特性補償信号生成回路は、所定の環境パラメータの基準値未満の低値側領域では出力レベルが前記環境パラメータの値に線形依存し、前記環境パラメータ基準値を超えた高値側領域では前記環境パラメータ基準値に対応する一定の基準出力レベルとなる特性を有する低値側信号を生成する低値側信号生成回路と、前記環境パラメータ基準値未満の低値側領域では前記基準出力レベルとなり、前記環境パラメータ基準値を超えた高値側領域では出力レベルが前記環境パラメータの値に線形依存する特性を有する高値側信号を生成する高値側信号生成回路と、前記低値側信号における前記低値側領域での前記環境パラメータに対する依存特性の勾配および極性を調整する低値側特性調整回路と、前記高値側信号における前記高値側領域での前記環境パラメータに対する依存特性の勾配および極性を調整する高値側特性調整回路とを備え、前記低値側特性調整回路および前記高値側特性調整回路の出力信号を加算して、依存特性補償信号として出力する。なお、「加算」とは、加算器で演算する場合だけでなく、差を演算して出力する減算器の場合でも同様の効果は得られるので、減算器による演算も含むものとする。
【0015】
本発明の第2構成の依存特性補償信号生成回路は、所定の環境パラメータに対する所定の動作範囲全域で前記環境パラメータに対し線形依存する環境パラメータ感知信号を出力する環境パラメータ感知回路と、所定の環境パラメータ基準値に対応するレベルの基準電位を発生する基準電位用定電源と、前記環境パラメータ感知信号における環境パラメータ依存特性の勾配および極性を調整する低値側特性調整回路と、前記環境パラメータ感知信号における環境パラメータ依存特性の勾配および極性を調整する前記低値側特性調整回路とは独立して設けられた高値側特性調整回路と、前記環境パラメータ感知信号を前記基準電位と比較して、前記環境パラメータ感知信号が前記基準電位に対して低値側の電位である場合は前記低値側特性調整回路の出力信号を選択し、前記環境パラメータ感知信号が前記基準電位に対して高値側の電位である場合は前記高値側特性調整回路の出力信号を選択して、依存特性補償信号として出力する選択回路とを備える。
【0016】
本発明の第1構成の温度補償信号生成回路は、所定の基準温度未満の低温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存し、前記基準温度を超えた高温側領域では前記基準温度に対応する一定の基準出力レベルとなる特性を有する低温側信号を生成する低温側信号生成回路と、前記基準温度未満の低温側領域では前記基準出力レベルとなり、前記基準温度を超えた高温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存する特性を有する高温側信号を生成する高温側信号生成回路と、前記低温側信号における前記低温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する低温側特性調整回路と、前記高温側信号における前記高温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する高温側特性調整回路とを備え、前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路の出力信号を加算して、温度補償信号として出力する。
【0017】
本発明の第2構成の温度補償信号生成回路は、所定の動作温度範囲全域で温度に対し線形依存する温度感知信号を出力する温度感知回路と、所定の基準温度に対応するレベルの基準電位を発生する基準電位用定電源と、前記温度感知信号における温度依存特性の勾配および極性を調整する低温側特性調整回路と、前記温度感知信号における温度依存特性の勾配および極性を調整する前記低温側特性調整回路とは独立して設けられた高温側特性調整回路と、前記温度感知信号を前記基準電位と比較して、前記温度感知信号が前記基準電位に対して低温側の電位である場合は前記低温側特性調整回路の出力信号を選択し、前記温度感知信号が前記基準電位に対して高温側の電位である場合は前記高温側特性調整回路の出力信号を選択して、温度補償信号として出力する選択回路とを備える。
【発明の効果】
【0018】
上記構成の補償信号生成回路によれば、例えば、所定の環境パラメータが温度である場合、各温度範囲のみについてそれぞれ、温度に依存した補償出力を各調整回路で生成し、それらを加算(または減算)するのみで温度補償信号を生成できる。従って、回路を簡素に構成することができる。また、各温度範囲のみで特性の調整を行い、各温度範囲で調整された出力を加算(または減算)するのみで、最終的な温度補償信号を出力できるため、生成したい補償信号の極性に制限はなく、特性の調整範囲が広い。
【0019】
さらに、生成したい補償信号の変曲点が増えた(多項式化)場合、基準温度の設定数が増えて、各基準温度間の範囲毎に、上述と同様の構成を追加すればよいので、多項式の設定の自由度も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の依存特性補償信号生成回路、あるいは温度補償信号生成回路は、上記構成を基本として、以下のような態様をとることができる。
【0021】
すなわち、上記の第1構成の依存特性補償信号生成回路において、前記低値側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記低値側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記低値側領域での依存特性の勾配が調整された信号を生成するように構成され、前記高値側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記高値側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記高値側領域での依存特性の勾配が調整された信号を生成するように構成され、前記低値側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する低値側極性反転回路と、前記高値側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する高値側極性反転回路と、前記低値側特性調整回路の出力信号と前記低値側極性反転回路の出力信号を選択する低値側切り替えスイッチと、前記高値側特性調整回路の出力信号と前記高値側極性反転回路の出力信号を選択する高値側切り替えスイッチとを更に備え、前記低値側切り替えスイッチと前記高値側切り替えスイッチによりそれぞれ選択された信号を加算して、前記依存特性補償信号として出力する構成とすることができる。
【0022】
また、上記いずれかの構成の依存特性補償信号生成回路において、前記環境パラメータは、温度、圧力、および湿度の少なくとも1種である構成とすることができる。
【0023】
また、上記の第1構成の温度補償信号生成回路において、所定の動作温度範囲の全域で温度に対し線形依存する温度感知信号を出力する温度感知回路と、前記基準出力レベルの基準電位を発生する基準電位用定電源と、前記温度感知信号を前記基準電位と比較して、前記温度感知信号が前記基準電位に対して低温側の電位である場合は前記温度感知信号を出力し、前記温度感知信号が前記基準電位に対して高温側の電位である場合は前記基準電位を出力する低温側比較回路と、前記温度感知信号を前記基準電位と比較して、前記温度感知信号が前記基準電位に対して低温側の電位である場合は前記基準電位を出力し、前記温度感知信号が前記基準電位に対して高温側の電位である場合は前記温度感知信号を出力する高温側比較回路とを備え、前記温度感知回路、前記基準電位用定電源、および前記低温側比較回路により前記低温側信号生成回路が構成されて、前記低温側比較回路の出力が前記低温側信号として出力され、前記温度感知回路、前記基準電位用定電源、および前記高温側比較回路により前記高温側信号生成回路が構成されて、前記高温側比較回路の出力が前記高温側信号として出力される構成とすることができる。
【0024】
また、上記いずれかの構成の温度補償信号生成回路において、前記低温側信号のレベルを前記基準出力レベルに対して反転して反転低温側信号を生成する低温側反転回路と、前記高温側信号のレベルを前記基準出力レベルに対して反転して反転高温側信号を生成する高温側反転回路とを備え、前記低温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記低温側信号および前記反転低温側信号のレベルを所定の比率で加算することにより、前記低温側領域での温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成され、前記高温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記高温側信号および前記反転高温側信号のレベルを所定の比率で加算することにより、前記高温側領域での温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成することができる。
【0025】
あるいは、前記低温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記低温側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記低温側領域での温度依存特性の勾配が調整された信号を出力するように構成され、前記高温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記高温側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記高温側領域での温度依存特性の勾配が調整された信号を出力するように構成され、前記低温側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する低温側極性反転回路と、前記高温側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する高温側極性反転回路と、前記低温側特性調整回路の出力信号と前記低温側極性反転回路の出力信号を選択する低温側切り替えスイッチと、前記高温側特性調整回路の出力信号と前記高温側極性反転回路の出力信号を選択する高温側切り替えスイッチとを更に備え、前記低温側切り替えスイッチと前記高温側切り替えスイッチによりそれぞれ選択された信号を加算して、前記温度補償信号として出力する構成とすることができる。
【0026】
また、上記いずれかの構成の温度補償信号生成回路において、前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路の組み合わせを複数対備え、前記低温側信号生成回路および前記高温側信号生成回路の出力信号は、複数対の前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路に対して共通に供給される構成とすることができる。
【0027】
また、第2構成の温度補償信号生成回路において、前記温度感知信号のレベルを前記基準電位に対して反転して反転温度感知信号を生成する反転回路を備え、前記低温側特性調整回路は、前記基準電位を出力信号のゼロレベルとし、前記温度感知信号および前記反転温度感知信号のレベルを所定の比率で加算することにより、温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成され、前記高温側特性調整回路は、前記基準電位を出力信号のゼロレベルとし、前記温度感知信号および前記反転温度感知信号のレベルを所定の比率で加算することにより、温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成とすることができる。
【0028】
また、前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路の組み合わせを複数対備え、前記温度感知回路、前記基準電位用定電源および前記反転回路の出力信号は、複数対の前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路に対して共通に供給される構成とすることができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における温度補償信号生成回路を示すブロック図である。本実施の形態では、角速度センサの温度特性を補償するための温度補償信号を生成する回路を例として示す。
【0031】
図1に示す温度補償信号生成回路は、温度切替回路1、オフセット特性調整回路2、およびゲイン特性調整回路3から構成される。オフセット調整処理回路4は、角速度センサ回路の構成要素であり、オフセット特性調整回路2が出力する温度補償信号が供給される。すなわち、本実施の形態の温度補償信号生成回路から、温度補償信号が供給される要素の一例として、参考のために示したものである。
【0032】
温度切替回路1は、温度感知回路5、基準電位用定電源6、低温側比較回路7a、高温側比較回路7b、バッファ8a、8b、反転アンプ9a、9bから構成される。オフセット特性調整回路2は、低温側DAコンバータ10a、高温側DAコンバータ10b、常時DAコンバータ10cから構成される。ゲイン特性調整回路3は、低温側DAコンバータ11a、高温側DAコンバータ11b、常時DAコンバータ11cから構成される。
【0033】
上記構成の回路の動作について、図2に示す特性直線を参照して説明する。図2の波形図における特性a〜特性hの符号は、図1の各部に付した符号と対応する。横軸は温度、縦軸は出力レベルを示す。縦の破線が基準温度を示す。基準温度は、温度特性の変曲点に対応して設定される。すなわち、温度補償信号の特性線の変曲点となる温度である。本実施の形態では、基準温度は一点であるが、複数点設定することもできる。
【0034】
温度感知回路5は、全温度範囲、すなわち少なくとも、想定される所定の動作温度範囲内の全域において、図2の特性aのように、温度に線形依存した温度感知信号Stを出力する。基準電位用定電源6は、特性bのように、基準温度に対応するレベルの基準電位Sdcを発生する。上述のとおり基準温度は、所望の温度補償特性に合わせて任意に設定され、温度補償特性の変曲点に対応する温度が、基準温度として設定される。
【0035】
低温側比較回路7aおよび高温側比較回路7bはそれぞれ、温度感知回路5からの温度感知信号Stと、基準電位用定電源6からの基準電位Sdcの供給を受ける。
【0036】
低温側比較回路7aは、温度感知信号Stと基準電位Sdcを比較して、温度感知信号Stが基準電位Sdcに対して低温側の電位である場合は温度感知信号Stを出力し、温度感知信号Stが基準電位Sdcに対して高温側の電位である場合は基準電位Sdcを出力する。従って、低温側比較回路7aが出力する低温側信号は、図2の特性cのような出力特性を有する。低温側比較回路7aは例えば、MAX回路により構成することができる。
【0037】
高温側比較回路7bは、温度感知信号Stと基準電位Sdcを比較して、温度感知信号Stが基準電位Sdcに対して低温側の電位である場合は基準電位Sdcを出力し、温度感知信号Stが基準電位Sdcに対して高温側の電位である場合は温度感知信号Stを出力する。従って、高温側比較回路7bが出力する高温側信号は、図2の特性dのような出力特性を有する。高温側比較回路7bは例えば、MIN回路により構成することができる。
【0038】
低温側比較回路7aの出力信号は、一方でバッファ8aを介し、図2の特性eを有する信号となり、オフセット特性調整回路2の低温側DAコンバータ10aの一方の入力、およびゲイン特性調整回路3の低温側DAコンバータ11aの一方の入力として供給される。バッファ8aからの出力はまた、反転アンプ9aの一方の入力となる。反転アンプ9aの他方の入力としては基準電位Sdcが供給される。反転アンプ9aの出力信号は、図2の特性fを有する信号となり、低温側DAコンバータ10a、11aの他方の入力として供給される。
【0039】
高温側比較回路7bの出力信号は、一方でバッファ8bを介し、図2の特性gを有する信号となり、オフセット特性調整回路2の高温側DAコンバータ10bの一方の入力、およびゲイン特性調整回路3の高温側DAコンバータ11bの一方の入力として供給される。バッファ8bの出力はまた、反転アンプ9bの一方の入力となる。反転アンプ9bの他方の入力としては基準電位Sdcが供給される。反転アンプ9bの出力信号は、図2の特性hを有する信号となり、オフセット特性調整回路2の高温側DAコンバータ10bの他方の入力、およびゲイン特性調整回路3の高温側DAコンバータ11bの他方の入力として供給される。
【0040】
DAコンバータ10a、10b、11a、11bは、例えば図3に示すようなR−2Rラダーを用いた構成とすることができる。入力端子14には、すなわち上側のR−2Rラダーには、バッファ8aまたは8bから出力される特性eまたはgを有する非反転信号が入力される。入力端子15には、すなわち下側のR−2Rラダーには、反転アンプ9aまたは9bから出力される特性fまたはhを有する反転信号が入力される。入力端子16には、基準電位用定電源6からの基準電位Sdcが入力される。出力端子17からは、上下のR−2Rラダーの出力信号が所定の比率で加算され、供給される。設定スイッチS1〜S6の切替え選択は、オフセット特性調整回路2またはゲイン特性調整回路3に対してそれぞれ要求される温度補償特性に応じて、任意に設定される。
【0041】
低温側DAコンバータ10a、11aの場合は、特性eを有する非反転信号が入力端子14に、特性fを有する反転信号が入力端子15に入力される。上下のR−2Rラダーは、入力信号が基準電位Sdcよりも高電位または低電位の領域、従って、基準温度よりも低温側領域でのみ動作する。
【0042】
高温側DAコンバータ10b、11bの場合は、特性gを有する非反転信号が入力端子14に、特性hを有する反転信号が入力端子15に入力される。上下のR−2Rラダーは、入力信号が基準電位Sdcよりも高電位または低電位の領域、従って、基準温度よりも高温側領域でのみ動作する。
【0043】
以上のように、低温側DAコンバータ10a、11aと高温側DAコンバータ10b、11bとは、動作する方が温度に応じて自動的に切り替わるように機能する。
【0044】
低温側DAコンバータ10a、11aでは、低温側領域において、特性eからなる出力信号を負極性の最大勾配、特性fからなる出力信号を正極性の最大勾配として、設定スイッチS1〜S6の選択により、出力特性の勾配および極性を適宜設定することができる。また高温側DAコンバータ10b、11bでは、高温側領域において、特性hからなる出力信号を正極性の最大勾配、特性gからなる出力信号を負極性の最大勾配として、設定スイッチS1〜S6の選択により、出力特性の勾配および極性を適宜設定することができる。
【0045】
常時DAコンバータ10c、11cは、実際には切替機能付の電流源により構成される。すなわち、周囲温度にかかわらず、仕様により設定された一定の電流を常に出力し、低温側調整回路、高温側調整回路からの出力電流と加算される。
【0046】
オフセット特性調整回路2からは、DAコンバータ10a〜10cの出力が加算されて温度補償信号として出力され、オフセット調整処理回路4に供給される。オフセット調整処理回路4では、温度補償信号は電流電圧変換回路12により電圧に変換された後、オペアンプ13の非反転入力端子に入力される。オペアンプ13の反転入力端子には、角速度センサの検出信号に対する処理中の信号が入力され、オフセット温度特性を補償するための処理が行われる。一方、ゲイン特性調整回路3からは、DAコンバータ11a、11bの出力が加算され、さらにDAコンバータ11cを経た信号が温度補償信号として出力され、角速度センサの検出信号に対する処理中の信号に対して、ゲイン温度特性を補償するための処理に供される。
【0047】
以上のように、本実施の形態の温度補償信号生成回路によれば、低温側および高温側の各温度範囲のみについてそれぞれ、温度に依存した補償出力を各調整回路で生成し、それらを加算(または減算)するのみで温度補償信号を生成できる。従って、回路を簡素に構成することができる。また、各温度範囲のみで特性の調整を行い、各温度範囲で調整された出力を加算(または減算)するのみで、最終的な温度補償信号を出力できるため、生成したい補償信号の極性に制限はなく、特性の調整範囲が広い。
【0048】
また、生成したい補償信号の変曲点が増えた(多項式化)場合、基準電位Sdcの設定数を増加させて、各基準電位間の温度範囲毎に、上述と同様の構成を追加すればよいので、多項式の自由度も向上する。
【0049】
また、本実施の形態の構成では、角速度センサ回路におけるオフセットおよびゲインの温度補償信号をそれぞれ生成するための、オフセット特性調整回路2およびゲイン特性調整回路3に対して、温度切替回路1を共通に用いることができる。これに対して、従来例の温度補償信号生成回路では、それぞれの温度特性補償信号を生成するための回路が別個に構成され、一部が共通に使用されることはなかった。したがって、本実施の形態によれば、多岐に亘る温度特性についてそれぞれ温度特性補償信号を生成する場合に、システムの簡素化の効果が顕著である。
【0050】
例えば図4は、4種類の温度特性補償信号を生成するための温度補償信号生成回路の例を示す。この回路は、角速度センサ回路におけるX軸用検知素子およびY軸用検知素子の出力信号を処理する回路に対してそれぞれ、オフセットおよびゲインの温度補償信号を生成するための、X軸用補償信号生成回路18およびY軸用補償信号生成回路19を備えている。
【0051】
X軸用補償信号生成回路18およびY軸用補償信号生成回路19はそれぞれ、オフセット特性調整回路2A、2Bおよびゲイン特性調整回路3A、3Bを備えている。オフセット特性調整回路2A、2Bおよびゲイン特性調整回路3A、3Bは、低温側DAコンバータ20a、21a、22a、23a、および高温側DAコンバータ20b、21b、22b、23bから構成されている。各DAコンバータの特性は、図3に示したように、個別に調整可能である。
【0052】
一方、温度切替回路1は、オフセット特性調整回路2A、2Bおよびゲイン特性調整回路3A、3Bに対して共通に出力信号を供給する。温度切替回路1は、図1に示したものと同様、温度感知回路5、低温側比較回路(MAX回路)7a、高温側比較回路(MIN回路)7b、反転アンプ9a、9b等から構成される。以上のとおり、温度切替回路1を共用することにより、全体の構成を簡素にすることができる。
【0053】
図1に示した温度補償信号生成回路の構成は、図5のように表すことができる。すなわち、温度感知回路5からの温度感知信号Stと基準電位用定電源6からの基準電位Sdcを用いて、比較回路(MAX/MIN回路)24により、図2に示した特性cを有する低温側信号Smaxと、特性dを有する高温側信号Sminを生成する。
【0054】
低温側信号Smaxをバッファ8aを通した出力と、低温側信号Smaxを反転アンプ9aにより反転させた反転低温側信号SmaxRと、基準電位Sdcが、第1低温側特性調整回路25aおよび第2低温側特性調整回路26aに入力される。
【0055】
高温側信号Sminをバッファ8bを通した出力と、高温側信号Sminを反転アンプ9bにより反転させた反転高温側信号SminRと、基準電位Sdcが、第1高温側特性調整回路25bおよび第2高温側特性調整回路26bに入力される。
【0056】
第1低温側特性調整回路25aおよび第1高温側特性調整回路25bの出力信号は、第1加算器27により加算され、第1温度補償信号として出力される。また、第2低温側特性調整回路26aおよび第2高温側特性調整回路26bの出力信号は、第2加算器28により加算され、第2温度補償信号として出力される。なお、第1低温側特性調整回路25aおよび第1高温側特性調整回路25bの出力信号の演算は、加算器に代えて減算器により行うことも可能である。
【0057】
第1低温側特性調整回路25aおよび第1高温側特性調整回路25bはそれぞれ、図1のオフセット特性調整回路2の、低温側DAコンバータ10aおよび高温側DAコンバータ10bに対応する。第2低温側特性調整回路26aおよび第2高温側特性調整回路26bは、図1のゲイン特性調整回路3の、低温側DAコンバータ11aおよび高温側DAコンバータ11bに対応する。
【0058】
ここで、低温側信号Smaxを生成するための回路構成を、低温側信号生成回路と称する。低温側信号Smaxは、基準温度未満の低温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存し、基準温度を超えた高温側領域では周囲温度に関わらず基準温度に対応する一定の基準出力レベルとなる特性を有する信号と定義することができる。また、高温側信号Sminを生成するための回路構成を、高温側信号生成回路と称する。高温側信号Sminは、基準温度未満の低温側領域では周囲温度に関わらず基準出力レベルとなり、基準温度を超えた高温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存する特性を有する信号と定義することができる。
【0059】
また、反転アンプ9aおよび第1低温側特性調整回路25a(第2低温側特性調整回路26a)を合わせた回路構成により、低温側信号Smaxにおける低温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する機能を持つ。一方、反転アンプ9bおよび第1高温側特性調整回路25b(第2高温側特性調整回路26b)を合わせた回路構成により、高温側信号Sminにおける高温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する機能を持つ。
【0060】
以上の構成の温度補償信号生成回路において、温度感知回路5として、例えば図6Aに示すような構成を用いることができる。2個のダイオード29の直列接続に定電流源30により電流を供給する回路である。ダイオード29の温度特性に基づき、温度感知信号Stを出力することができる。この回路は、図6Bに示すような出力特性を示す。基準温度および基準電位Sdcの例を併せて示す。
【0061】
また、低温側比較回路7aを構成するMAX回路の構成例を、図7Aに示す。2個のNPNトランジスタ31、32を並列接続し、NPNトランジスタ31のベースに基準電位Sdcを、NPNトランジスタ32のベースに温度感知信号Stを供給する。この回路の出力特性(低温側信号Smax)を図7Bに示す。
【0062】
高温側比較回路7bを構成するMIN回路の構成例を、図8Aに示す。2個のPNPトランジスタ33、34を並列接続し、PNPトランジスタ33のベースに基準電位Sdcを、PNPトランジスタ34のベースに温度感知信号Stを供給する。この回路の出力特性(高温側信号Smin)を図8Bに示す。
【0063】
図9Aは、第1低温側特性調整回路25a(低温側DAコンバータ10a)の入力特性を示す。図7Bに示した低温側比較回路7aの出力特性(Smax)と、それを反転した特性(SmaxR)を併せたものになっている。図9Bは、第1低温側特性調整回路25aの出力特性を示す。この出力特性は、基準温度よりも低温側で特性直線の勾配および極性が調整される様子を示す。すなわち、正負の最大勾配間に示される複数の特性直線のいずれかで表される特性になるように、例えば低温側DAコンバータ10aの設定スイッチS1〜S6(図3参照)が切替えられる。
【0064】
図10Aは、第1高温側特性調整回路25b(高温側DAコンバータ10b)の入力特性を示す。図8Bに示した高温側比較回路7bの出力特性(Smin)と、それを反転した特性(SminR)を併せたものになっている。図10Bは、第1高温側特性調整回路25bの出力特性を示す。この出力特性は、基準温度よりも高温側で特性直線の勾配および極性が調整される様子を示す。すなわち、正負の最大勾配間に示される複数の特性直線のいずれかで表される特性になるように、例えば低温側DAコンバータ10bの設定スイッチS1〜S6(図3参照)が切替えられる。
【0065】
図11は、例えば低温側特性調整回路を構成するDAコンバータ10a、10b等の設定Bitに対する出力電流の特性を示す。設定Bitは、図3に示した設定スイッチS1〜S6の切り替えに対応する。すなわち、設定Bitに対応した図11の特性に応じて、低温側信号Smaxおよび反転低温側信号SmaxRの加算の比率が決定され、従って、補償信号の極性と勾配が決定される。
【0066】
なお、上述の構成では、DAコンバータとして電流値に変換する形態のものを用いたが、電圧値に変換する形態のものでも同様に使用可能である。
【0067】
(実施の形態2)
図12は、実施の形態2における温度補償信号生成回路を示すブロック図である。本実施の形態の回路は、実施の形態1における図5に示した構成を一部変更したものである。従って、図5に示した要素と同一の要素については、同一の参照符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0068】
本実施の形態では、図5の構成のような比較回路(MAX/MIN回路)24、および低温側用、高温側用のバッファ8a、8b、反転アンプ9a、9bを設けず、比較回路(コンパレータ)35と、一組のバッファ36、反転アンプ37を設ける。更に、第1低温側特性調整回路25aと第2高温側特性調整回路25bの出力を、切替えスイッチ38a、38bにより切替える切替え回路38、および第2低温側特性調整回路26aと第2高温側特性調整回路26bの出力を、切替えスイッチ39a、39bにより切替える切替え回路39が設けられる。
【0069】
温度感知回路5からの温度感知信号Stは、バッファ36および比較回路35に供給される。基準電位用定電源6からの基準電位Sdcは、反転アンプ37、および比較回路35に供給される。反転アンプ37は、バッファ36を経由した温度感知信号Stを基準電位Sdcを基準として反転し、反転温度感知信号StRを生成する。
【0070】
第1、第2低温側特性調整回路25a、26a、第1、第2高温側特性調整回路25b、26bは、実施の形態1と同様の、図13に示したようなDAコンバータにより構成される。但し、第1、第2低温側特性調整回路25a、26a、第1、第2高温側特性調整回路25b、26bのいずれにおいても、入力端子には温度感知信号Stおよび反転温度感知信号StRが供給される。従って、それらの回路の入力特性は同一であり、図14Aに示すとおりである。出力特性は、図14Bに示すとおりとなる。すなわち、全温度領域において、温度感知信号Stに対応する出力電流および反転温度感知信号StRに対応する出力電流の特性直線により挟まれた範囲で、出力特性直線の勾配および極性が調整される。
【0071】
第1、第2低温側特性調整回路25a、26a、第1、第2高温側特性調整回路25b、26bの出力特性直線の勾配および極性は、各々別個に調整される。例えば、第1低温側特性調整回路25aは、オフセットについて所望される温度補償信号の低温側領域での特性に適合するように調整され、第1高温側特性調整回路25bは、高温側領域での特性に適合するように調整される。第2低温側特性調整回路26aは、ゲインについて所望される温度補償信号の低温側領域での特性に適合するように調整され、第2高温側特性調整回路26bは、高温側領域での特性に適合するように調整される。
【0072】
図14Cは、低温側(高温側)特性調整回路を構成するDAコンバータの設定Bitに対する出力電流の特性を示す。設定Bitは、図13に示した設定スイッチS1〜S6による設定に対応する。すなわち、設定Bitに対応した図14Cの特性に応じて、低温側信号SmaxRまたは反転低温側信号Smaxの加算の比率が決定され、従って、補償信号の極性と勾配が決定される。
【0073】
比較回路35は、温度感知信号Stと基準電位Sdcを比較して、切替え回路38、19を切替える信号を供給する。すなわち、温度感知信号Stが基準電位Sdcに対して低温側の電位である場合は第1、第2低温側特性調整回路25a、26aの出力信号を選択し、温度感知信号Stが基準電位Sdcに対して高温側の電位である場合は第1、第2高温側特性調整回路25b、26bの出力信号を選択するように制御が行われる。
【0074】
以上のようにして、加算器27、28からは、実施の形態1と同様の温度補償信号が出力される。
【0075】
(実施の形態3)
図15は、実施の形態5における温度補償信号生成回路を示すブロック図である。本実施の形態の回路は、実施の形態1における図5に示した構成を一部変更したものである。従って、図5に示した要素と同一の要素については、同一の参照符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0076】
本実施の形態では、図5の構成のような反転アンプ9a、9bを設けず、各特性調整回路41a、41b、42a、42bの出力を反転するための極性反転回路43a、43b、44a、44bが設けられる。さらに、各調整回路の非反転出力信号と反転出力信号を切替えるためのスイッチ45a、45b、46a、46bが設けられる。
【0077】
各特性調整回路41a、41b、42a、42bはそれぞれ、図16に示すような、R−2Rラダーを用いたDAコンバータにより構成される。第1、第2低温側特性調整回路41a、42aの場合、入力端子47には、低温側信号Smaxが入力され、入力端子48には、基準電位Sdcが入力される。第1、第2高温側特性調整回路41b、42bの場合、入力端子47には、高温側信号Sminが入力され、入力端子48には、基準電位Sdcが入力される。
【0078】
従って、第1、第2低温側特性調整回路41a、42aの場合、入力特性は17Aに示すとおりである。これに対して、出力端子49からの出力特性は、図17Bに示すとおりになる。すなわち、低温側信号Smaxからなる出力信号を最大勾配として負極性側のみで勾配の調整が行われる。また、第1、第2高温側特性調整回路41b、42bの場合、入力特性は18Aに示すとおりである。これに対して、出力端子49からの出力特性は、図18Bに示すとおりになる。すなわち、高温側信号Sminからなる出力信号を最大勾配として正極性側のみで勾配の調整が行われる。
【0079】
図19は、図16のDAコンバータの設定Bitに対する出力電流の特性を示す。設定Bitに対応した図19の特性に応じて、低温側信号Smaxまたは高温側信号Sminからなる出力信号の低減比率が決定され、従って、補償信号の勾配が決定される。
【0080】
第1、第2低温側特性調整回路41a、42a、および第1、第2高温側特性調整回路41b、42bの出力特性直線の勾配は、各々別個に調整される。第1、第2低温側特性調整回路41a、42a、第1、第2高温側特性調整回路41b、42bの出力は、極性反転回路43a、43b、44a、44bにより極性反転を受ける。選択スイッチ45a、45b、46a、46bにより、非反転信号と反転信号の一方を選択することにより、実施の形態1および2において、反転アンプを用いて反転信号を作成し、温度補償信号の正負両極性を選択可能としたのと同様、広い範囲での調整が可能となる。
【0081】
図20Aは、第1、第2低温側特性調整回路41a、42aに接続された極性反転回路43a、44aの構成の一例を示す。NPNトランジスタ50a、50bで構成されたミラー回路からなり、図20Bのような入出力特性を有する。第1、第2低温側特性調整回路41a、42aの出力信号が入力され、極性反転された信号を出力する。
【0082】
図21Aは、第1、第2高温側特性調整回路41b、42bに接続された極性反転回路43b、44bの構成の一例を示す。PNPトランジスタ51a、51bで構成されたミラー回路からなり、図21Bのような入出力特性を有する。第1、第2高温側特性調整回路41b、42bの出力信号が入力され、極性反転された信号を出力する。
【0083】
なお、以上の各実施の形態では、温度補償特性の変曲点が1つの場合が示されたが、変曲点が複数ある場合でも、同様に対応可能である。すなわち、基準温度として、第1〜第n基準温度(nは整数)を設定する場合、例えば、第i基準温度(iは1〜nまでのいずれかの整数)に対して、第(i−1)基準温度から第i基準温度までを低温側領域とし、第i基準温度から第(i+1)基準温度までを高温側領域として、上記各実施の形態と同様に構成すれば、全ての温度領域について、補償特性線を規定し、調整することができる。その結果、任意の次数の多項式となる補償信号を、容易に生成可能である。
【0084】
また、電子素子の特性に影響を与える因子としては、温度に限らず、圧力、湿度などの他の種々の周囲環境に対して、本発明を適用することが可能である。
【0085】
また、実施の形態の説明に記載した、MAX回路(図7A)、MIN回路(図8A)、NPNトランジスタのミラー回路(図20A)、PNPトランジスタのミラー回路(図21A)等については、NPNトランジスタおよびPNPトランジスタに代えて、それぞれ、NMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタを用いても、同等の特性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の補償信号生成回路によれば、生成すべき補償信号の極性に制限がなく、環境パラメータに対する依存特性補償信号の選択範囲が広い回路を、簡易な構成で実現できるので、種々の環境パラメータに依存する特性を補償する制御を行う、水晶発振器や各種センサー回路等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施の形態1における温度補償信号生成回路を示すブロック図
【図2】同温度補償信号生成回路の各部における信号の特性を示す波形図
【図3】同温度補償信号生成回路に用いられるDAコンバータの構成例を示す回路図
【図4】同温度補償信号生成回路の他の適用例を示すブロック図
【図5】同温度補償信号生成回路の原理的構成を示すブロック図
【図6A】同温度補償信号生成回路に用いられる温度感知回路の構成例を示す回路図
【図6B】同温度感知回路の出力特性を示す図
【図7A】実施の形態1の温度補償信号生成回路に用いられる低温側比較回路の構成例を示す回路図
【図7B】同低温側比較回路の出力特性を示す図
【図8A】実施の形態1の温度補償信号生成回路に用いられる高温側比較回路の構成例を示す回路図
【図8B】同高温側比較回路の出力特性を示す図
【図9A】実施の形態1の温度補償信号生成回路に用いられる低温側特性調整回路の入力特性を示す図
【図9B】同低温側特性調整回路の出力特性を示す図
【図10A】実施の形態1の温度補償信号生成回路に用いられる高温側特性調整回路の入力特性を示す図
【図10B】同高温側特性調整回路の出力特性を示す図
【図11】同低温側(高温側)特性調整回路を構成するDAコンバータの設定Bitに対する出力電流の特性を示す図
【図12】実施の形態2における温度補償信号生成回路を示すブロック図
【図13】同温度補償信号生成回路の特性調整回路に用いられるDAコンバータの構成例を示す回路図
【図14A】図12の温度補償信号生成回路に用いられる低温側特性調整回路および高温側特性調整回路の入力特性を示す図
【図14B】同低温側(高温側)特性調整回路の出力特性を示す図
【図14C】同低温側(高温側)特性調整回路を構成するDAコンバータの設定Bitに対する出力電流の特性を示す図
【図15】実施の形態3における温度補償信号生成回路を示すブロック図
【図16】同温度補償信号生成回路の特性調整回路に用いられるDAコンバータの構成例を示す回路図
【図17A】図15の温度補償信号生成回路に用いられる低温側特性調整回路の入力特性を示す図
【図17B】同低温側特性調整回路の出力特性を示す図
【図18A】図15の温度補償信号生成回路に用いられる高温側特性調整回路の入力特性を示す図
【図18B】同高温側特性調整回路の出力特性を示す図
【図19】図16のDAコンバータの設定Bitに対する出力電流の特性を示す図
【図20A】図15の温度補償信号生成回路に用いられる低温側特性調整回路に接続された極性反転回路の構成例を示す回路図
【図20B】同極性反転回路の出力特性を示す図
【図21A】図15の温度補償信号生成回路に用いられる高温側特性調整回路に接続された極性反転回路の構成例を示す回路図
【図21B】同極性反転回路の出力特性を示す図
【図22】水晶発振器の発振周波数の温度特性と、その温度特性の補償動作について説明する図
【図23】従来例の温度補償機能付き水晶発振装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0088】
1 温度切替回路
2、2A、2B オフセット特性調整回路
3、3A、3B ゲイン特性調整回路
4 オフセット調整処理回路
5 温度感知回路
6 基準電位用定電源
7a 低温側比較回路
7b 高温側比較回路
8a、8b、36 バッファ
9a、9b、37 反転アンプ
10a、11a、20a、21a、22a、23a 低温側DAコンバータ
10b、11b、20b、21b、22b、23b 高温側DAコンバータ
10c、11c 常時DAコンバータ
14、15、16、47、48 入力端子
17、49 出力端子
18 X軸用補償信号生成回路
19 Y軸用補償信号生成回路
24 比較回路(MAX/MIN回路)
25a、41a 第1低温側特性調整回路
25b、41b 第1高温側特性調整回路
26a、42a 第2低温側特性調整回路
26b、42b 第2高温側特性調整回路
27 第1加算器
28 第2加算器
29 ダイオード
30 定電流源
31、32、50a、50b NPNトランジスタ
33、34、51a、51b PNNトランジスタ
35 比較回路(コンパレータ)
38、39 切替え回路
38a、38b、39a、39b 切り替えスイッチ
45a、45b、46a、46b 選択スイッチ
43a、43b、44a、44b 極性反転回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の環境パラメータの基準値未満の低値側領域では出力レベルが前記環境パラメータの値に線形依存し、前記環境パラメータ基準値を超えた高値側領域では前記環境パラメータ基準値に対応する一定の基準出力レベルとなる特性を有する低値側信号を生成する低値側信号生成回路と、
前記環境パラメータ基準値未満の低値側領域では前記基準出力レベルとなり、前記環境パラメータ基準値を超えた高値側領域では出力レベルが前記環境パラメータの値に線形依存する特性を有する高値側信号を生成する高値側信号生成回路と、
前記低値側信号における前記低値側領域での前記環境パラメータに対する依存特性の勾配および極性を調整する低値側特性調整回路と、
前記高値側信号における前記高値側領域での前記環境パラメータに対する依存特性の勾配および極性を調整する高値側特性調整回路とを備え、
前記低値側特性調整回路および前記高値側特性調整回路の出力信号を加算して、依存特性補償信号として出力する依存特性補償信号生成回路。
【請求項2】
前記低値側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記低値側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記低値側領域での依存特性の勾配が調整された信号を生成するように構成され、
前記高値側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記高値側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記高値側領域での依存特性の勾配が調整された信号を生成するように構成され、
前記低値側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する低値側極性反転回路と、
前記高値側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する高値側極性反転回路と、
前記低値側特性調整回路の出力信号と前記低値側極性反転回路の出力信号を選択する低値側切り替えスイッチと、
前記高値側特性調整回路の出力信号と前記高値側極性反転回路の出力信号を選択する高値側切り替えスイッチとを更に備え、
前記低値側切り替えスイッチと前記高値側切り替えスイッチによりそれぞれ選択された信号を加算して、前記依存特性補償信号として出力する請求項1に記載の依存特性補償信号生成回路。
【請求項3】
所定の環境パラメータに対する所定の動作範囲全域で前記環境パラメータに対し線形依存する環境パラメータ感知信号を出力する環境パラメータ感知回路と、
所定の環境パラメータ基準値に対応するレベルの基準電位を発生する基準電位用定電源と、
前記環境パラメータ感知信号における環境パラメータ依存特性の勾配および極性を調整する低値側特性調整回路と、
前記環境パラメータ感知信号における環境パラメータ依存特性の勾配および極性を調整する前記低値側特性調整回路とは独立して設けられた高値側特性調整回路と、
前記環境パラメータ感知信号を前記基準電位と比較して、前記環境パラメータ感知信号が前記基準電位に対して低値側の電位である場合は前記低値側特性調整回路の出力信号を選択し、前記環境パラメータ感知信号が前記基準電位に対して高値側の電位である場合は前記高値側特性調整回路の出力信号を選択して、依存特性補償信号として出力する選択回路とを備えた依存特性補償信号生成回路。
【請求項4】
前記環境パラメータは、温度、圧力、および湿度の少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の依存特性補償信号生成回路。
【請求項5】
所定の基準温度未満の低温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存し、前記基準温度を超えた高温側領域では前記基準温度に対応する一定の基準出力レベルとなる特性を有する低温側信号を生成する低温側信号生成回路と、
前記基準温度未満の低温側領域では前記基準出力レベルとなり、前記基準温度を超えた高温側領域では出力レベルが周囲温度に線形依存する特性を有する高温側信号を生成する高温側信号生成回路と、
前記低温側信号における前記低温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する低温側特性調整回路と、
前記高温側信号における前記高温側領域での温度依存特性の勾配および極性を調整する高温側特性調整回路とを備え、
前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路の出力信号を加算して、温度補償信号として出力する温度補償信号生成回路。
【請求項6】
所定の動作温度範囲の全域で温度に対し線形依存する温度感知信号を出力する温度感知回路と、
前記基準出力レベルの基準電位を発生する基準電位用定電源と、
前記温度感知信号を前記基準電位と比較して、前記温度感知信号が前記基準電位に対して低温側の電位である場合は前記温度感知信号を出力し、前記温度感知信号が前記基準電位に対して高温側の電位である場合は前記基準電位を出力する低温側比較回路と、
前記温度感知信号を前記基準電位と比較して、前記温度感知信号が前記基準電位に対して低温側の電位である場合は前記基準電位を出力し、前記温度感知信号が前記基準電位に対して高温側の電位である場合は前記温度感知信号を出力する高温側比較回路とを備え、
前記温度感知回路、前記基準電位用定電源、および前記低温側比較回路により前記低温側信号生成回路が構成されて、前記低温側比較回路の出力が前記低温側信号として出力され、
前記温度感知回路、前記基準電位用定電源、および前記高温側比較回路により前記高温側信号生成回路が構成されて、前記高温側比較回路の出力が前記高温側信号として出力される請求項5に記載の温度補償信号生成回路。
【請求項7】
前記低温側信号のレベルを前記基準出力レベルに対して反転して反転低温側信号を生成する低温側反転回路と、
前記高温側信号のレベルを前記基準出力レベルに対して反転して反転高温側信号を生成する高温側反転回路とを備え、
前記低温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記低温側信号および前記反転低温側信号のレベルを所定の比率で加算することにより、前記低温側領域での温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成され、
前記高温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記高温側信号および前記反転高温側信号のレベルを所定の比率で加算することにより、前記高温側領域での温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成された請求項5または6に記載の温度補償信号生成回路。
【請求項8】
前記低温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記低温側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記低温側領域での温度依存特性の勾配が調整された信号を生成するように構成され、
前記高温側特性調整回路は、前記基準出力レベルを出力信号のゼロレベルとし、前記高温側信号のレベルを所定の比率で低減することにより、前記高温側領域での温度依存特性の勾配が調整された信号を生成するように構成され、
前記低温側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する低温側極性反転回路と、
前記高温側特性調整回路の出力信号の極性を反転して出力する高温側極性反転回路と、
前記低温側特性調整回路の出力信号と前記低温側極性反転回路の出力信号を選択する低温側切り替えスイッチと、
前記高温側特性調整回路の出力信号と前記高温側極性反転回路の出力信号を選択する高温側切り替えスイッチとを更に備え、
前記低温側切り替えスイッチと前記高温側切り替えスイッチによりそれぞれ選択された信号を加算して、前記温度補償信号として出力する請求項5または6に記載の温度補償信号生成回路。
【請求項9】
前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路の組み合わせを複数対備え、
前記低温側信号生成回路および前記高温側信号生成回路の出力信号は、複数対の前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路に対して共通に供給される請求項5〜8のいずれか1項に記載の温度補償信号生成回路。
【請求項10】
所定の動作温度範囲全域で温度に対し線形依存する温度感知信号を出力する温度感知回路と、
所定の基準温度に対応するレベルの基準電位を発生する基準電位用定電源と、
前記温度感知信号における温度依存特性の勾配および極性を調整する低温側特性調整回路と、
前記温度感知信号における温度依存特性の勾配および極性を調整する前記低温側特性調整回路とは独立して設けられた高温側特性調整回路と、
前記温度感知信号を前記基準電位と比較して、前記温度感知信号が前記基準電位に対して低温側の電位である場合は前記低温側特性調整回路の出力信号を選択し、前記温度感知信号が前記基準電位に対して高温側の電位である場合は前記高温側特性調整回路の出力信号を選択して、温度補償信号として出力する選択回路とを備えた温度補償信号生成回路。
【請求項11】
前記温度感知信号のレベルを前記基準電位に対して反転して反転温度感知信号を生成する反転回路を備え、
前記低温側特性調整回路は、前記基準電位を出力信号のゼロレベルとし、前記温度感知信号および前記反転温度感知信号のレベルを所定の比率で加算することにより、温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成され、
前記高温側特性調整回路は、前記基準電位を出力信号のゼロレベルとし、前記温度感知信号および前記反転温度感知信号のレベルを所定の比率で加算することにより、温度依存特性の勾配および極性が調整された信号を出力するように構成された請求項10に記載の温度補償信号生成回路。
【請求項12】
前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路の組み合わせを複数対備え、
前記温度感知回路、前記基準電位用定電源および前記反転回路の出力信号は、複数対の前記低温側特性調整回路および前記高温側特性調整回路に対して共通に供給される請求項11に記載の温度補償信号生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−48675(P2010−48675A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213202(P2008−213202)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】