説明

生体情報測定用ハンドル

【課題】人体の生体情報を正確に測定する生体情報計測用ハンドル1を提供すること。
【解決手段】人体の生体情報を計測するための複数の第1の電極51と複数の第2の電極52とが互いに隣り合うように配置され、人体の測定部位が接触可能な接触部5を備えており、第2の電極52とこれと隣り合う第1の電極51との対向部の長さの合計L1+L2が、第2の電極51の外周長LB(L)の長さに対して所定の割合以上であるように第1の電極51及び第2の電極52が配置された接触部5を有する生体情報計測用ハンドル1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の測定に用いられるハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドルの所定領域に配置された各静電容量検出用の電極に、利用者が触れたときの静電容量の変化を検知して、人がハンドルを把持したか否かの判断を行い、この判断に応じて運転を制御する電気掃除機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−75581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、配置された複数の電極のうちの何れかの電極に利用者が触れると、静電容量の変化を検出することができるため、電極の配置は利用者が触れる位置であれば特に限定されない。
【0005】
しかしながら、生体情報を取得する目的で機能の異なる複数の電極を配置する場合には、人体の測定部位(例えば片手の指掌)が機能の異なる複数の電極に同じ条件で触れることが要求されるため、従来の技術のような電極の配置では、精度の高い生体情報を取得することができないという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、精度の高い生体情報を取得することができる生体情報計測用ハンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、互いに隣り合う第1の電極及び第2の電極のうち、第1の電極の対向部の長さの合計が、第1の電極の外周長に対して所定の割合以上となるように第1の電極及び第2の電極が配置された接触部を備えることにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、互いに隣り合う第1又は第2の電極の対向部の長さの合計が第1の電極の外周長に対して所定の割合以上となるように第1又は第2の電極が配置された接触部を設けたので、人体の測定部位が複数の第1及び第2の電極に同じ条件で触れることができるため、人体との接触領域ごとに生じる接触抵抗の差による測定値のバラツキを抑制することができる。この結果、精度の高い生体情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の本実施形態に係るハンドルを備える生体情報計測装置の概要図である。
【図2】図1に示すII-II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すハンドルの表皮を剥離して、接触部を露出させた状態のハンドルを示す図である。
【図4】図3に示すA部分の拡大図である。
【図5A】電極のパターンの第1の例を示す図である。
【図5B】電極のパターンの第2の例を示す図である。
【図5C】電極のパターンの第3の例を示す図である。
【図6A】電極のパターンの第4の例を示す図である。
【図6B】図6Aに示す電極の外周長を示す図である。
【図7A】電極のパターンの第5の例を示す図である。
【図7B】図7Aに示す電極の外周長を示す図である。
【図8A】電極のパターンの第6の例を示す図である。
【図8B】電極のパターンの第7の例を示す図である。
【図8C】電極のパターンの第8の例を示す図である。
【図9】電極のパターンが円形である場合の例を示す図である。
【図10】実施例4の接触部の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、車両に搭載され、人体の脂肪率などの生体情報を計測する生体情報計測装置100に本発明に係るハンドル1を適用した場合を例にして説明する。
【0011】
本実施形態の生体情報計測装置100は、ハンドル1により取得された電気信号に基づいて人体の体脂肪率を計測する。
【0012】
図1に示すように、車両Vに搭載されたハンドル1と、ハンドル1により検出される生体信号に基づいて生体情報を計測する計測装置6と、計測された生体情報に基づいて人体の状態を算出する演算装置7と、演算結果を出力する出力装置8とを備えている。
【0013】
具体的に、本実施形態のハンドル1は、人体に微弱な電流を流したときの電気信号を取得する。本実施形態のハンドル1は、乗員の体脂肪率、心電図、体温、皮膚抵抗を計測することができる。
【0014】
本実施形態の計測装置6は、ハンドル1によって取得された電気信号から人体(生体)の電気的なインピーダンス(生体電気インピーダンスともいう)を計測する。
【0015】
本実施形態の演算装置7は、計測された生体電気インピーダンスに基づいて人体の体脂肪率の推測値を算出するプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで生体情報計測装置100として機能させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えている。演算装置7の演算結果(算出された体脂肪率などの生体情報)は、出力装置8へ送出される。
【0016】
本実施形態の出力装置8は、ディスプレイ、スピーカ等の情報提示装置であり、演算装置7の演算結果を利用者に提示する。本実施形態の出力装置8は、演算結果を車載装置や、車外の外部端末へ出力(送信)する通信装置として機能させることもできる。
【0017】
出力された生体情報は、経時的に蓄積して健康管理データとして利用することができる。また、出力された生体情報は、車載の運転支援システムにおいて利用することができる。例えば生体情報に応じて運転者の健康状態を判断し、判断結果に基づいて車両を減速・停止させるといった車両の駆動制御を支援することができる。
【0018】
図1に示すハンドル1は、ボス部2と、リング状のリム部4とが、3本のスポーク部3で連結されることにより構成されている。本実施形態のハンドル1は、車両等の各種移動体に備えられ、不図示のステアリングシャフトを介して、車輪に操舵力を伝達する操舵用の把持部として用いられる。以下においては、本実施形態のハンドル1が、車両の操舵用の把持部として用いられる場合を例にして説明する。
【0019】
図1に示すように、リム部4の所定領域(図中二点破線で示す)には、接触部5が設けられている。この接触部5は、運転者が運転時に握る可能性の高い、左右に延びるスポーク部3とリム部4との接続領域に設けることができる。
【0020】
図2は、接触部5が設けられているリム部4のII-II線に沿う断面図である。図2に示すように、リム部4は、中空の円環状の心材41と、この心材41の周囲に配置された発泡体層42と、発泡体層42の表面(心材41とは反対側)に配置された接触部5と、接触部5の上層側(心材41とは反対側)に配置された表皮層43とを有する。図示は省略するが、本実施形態の表皮層43には複数の孔やスリットなどの貫通部が形成されており、表皮層43の上からハンドル1を握ったユーザの掌が接触部5に接触することができるようになっている。また、本例では、接触部5の少なくとも一部が表皮層43によって覆われている例を示すが、手触り等の問題がなければ、接触部5は表皮層43の上層側に設けることも可能である。なお、図2は、リム部4の断面を模式的に表す図であり、各層の実際の厚み等を必ずしも反映したものではない。
【0021】
特に限定されないが、本実施形態の心材41としては、例えば一般的な鉄心材などを用いることができ、発泡体層42としては、例えば一般的な発泡ウレタンなどを用いて構成することができる。
【0022】
本実施形態の表皮層43は、リム部4の最外層を構成する層であり、ユーザがその表面を直接触れるため、触り心地や、風合いのよい材料で構成されることが好ましい。表皮層43を構成する材料の厚みは、特に限定はされないが、0.5〜3.0mm程度であることが好ましい。表皮層43を構成する具体的な材料としては、たとえば、牛革、馬革、豚革等の本革や、樹脂層と繊維質基材とからなる合成皮革などが挙げられる。
【0023】
合成皮革の具体例としては、たとえば、繊維基材として両面編組織を有する緯編布を用い、かつ、繊維基材表面に、ポリウレタン樹脂接着層を介して、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン樹脂表皮層を積層したものや、基布表面上に、ウレタン系接着層及びポリウレタン表皮層を順次積層し、該基布が表面に起毛を有するメリヤスを用いたもの、さらには、グランド糸と起毛糸とがポリエステルマルチフィラメント糸からなり、起毛丸編地の起毛面側に、ポリウレタン接着層、及びポリウレタン表皮層が順次積層されたもの等が挙げられる。
【0024】
図3は、表皮層43を剥離して、接触部5を露出させた状態のハンドル1を示す図である。
【0025】
図3に示すように、本実施形態の接触部5は、リム4の右側とリム4の左側にそれぞれ設けられており、運転時において乗員の測定部位となる掌が接触可能な状態となっている。同図に示すように、本実施形態の接触部5は、互いに隣り合うように配置された複数の第1の電極51(53)と複数の第2の電極52(54)とを有する。本例では、10個の第1の電極51(53)と10個の第2の電極52(54)とが配置されているものを示すが、電極の配置数は特に限定されない。先述したように、接触部5の上層側(心材41とは反対側)には表皮層43が配置されているが、この表皮層43には、孔やスリットなどの欠損部があるため、乗員が表皮層43の上からハンドル1を握った場合であっても乗員の掌は接触部5と接触することができる。
【0026】
本実施形態の第1及び第2の電極51〜54は、ハンドル1の心材41から発泡体層42、表皮層43の積層方向に対して、表皮層43に触れる人体の測定部位と接触する領域に設けられた接触部5に配置される。人体の測定部位が第1及び第2の電極51〜54に直接触れることにより、第1及び第2の電極51〜54が生体情報を測定する端子として機能する。
【0027】
第1及び第2の電極51〜54は、金属板、導電ペースト、カーボン粉末、金属蒸着膜、導電性高分子等の導電材料を用いて構成することができる。生体との電位差を小さくする観点からは、第1及び第2の電極51〜54をステンレス板で構成することができる。第1及び第2の電極51〜54の厚さは特に限定はされないが、0.01〜3.0mm程度とすることができる。
【0028】
第1の電極51(53)と第2の電極52(54)は、表皮層43の主面に貼り付け又は積層して形成することもでき、表皮層43に直接印刷して形成することもできる。表皮層43には、予め、パンチングや切り込みを入れて、貫通孔又はスリットを形成しておくことが好ましい。
【0029】
本実施形態において、第1の電極51(53)と第2の電極52(54)は、接触部5に接触する人体に微弱電流を流す際において、第1の電極51(53)又は第2の電極52(54)は一方が正極として機能し、他方が負極として機能する。第1の電極51(53)に接続する配線及び複数の第2の電極52(54)に接続する配線は、それぞれ引き出されて、上述した計測装置6に接続されている。計測装置6は、人体を介して第1の電極51(53)と複数の第2の電極52(54)との間に流れる電流に応じた電気信号から生体インピーダンスを取得することができる。
【0030】
図4は、図3に示すA部分を拡大して模擬的に示す図である。図4では、ハンドル1の左手側の第1の電極51と第2の電極52とを有する接触部5の一部を示すが、ハンドル1の右手側の第1の電極53と第2の電極54とを有する接触部5の構成もこれと共通する。
【0031】
図4に示すように、本実施形態の接触部5が有する第1の電極51(53)と、これと隣り合う第2の電極52(54)の電極との対向部L1,L2の長さの合計K(L1+L2)は、第1の電極51(53)の外周長L(L1+L2+L3+L4)の長さに対して所定の割合以上である。つまり、本実施形態の各第1の電極51(53)は、その外周長Lに対して、所定割合以上の長さの範囲で、第2の電極52(54)と対向するように配置されている。
【0032】
また、複数(N枚)の第1の電極51及び複数(N枚)第2の電極52が配置される場合においても、接触部5が有する第1の電極51(53)と、これと隣り合う第2の電極52(54)の電極との対向部L1等の長さの合計K(L1×(2N−1))は、第1の電極51(53)の外周長L(L1+L2+L3+L4)×Nの長さに対して所定の割合以上である。第1の電極51(53)は、その外周長Lに対して、所定割合以上の長さの範囲で、第2の電極52(54)と対向するように配置されている。
【0033】
なお、第1の電極51が二つの第2の電極52に挟まれている場合には、第1の電極51の対向部の長さの合計KはL1+L2となるが、第1の電極51が端部にあり、隣接する第2の電極52が一つである場合には、第1の電極51の対向部の長さの合計KはL1(又はL2)となる。
【0034】
図4では、第1の電極51(53)を中心に対向部L1,L2の長さと外周長Lの長さとの関係を示すが、第2の電極52(54)の対向部の長さの合計K(L1+L2)と外周長Lの長さとの関係も、第1の電極51(53)における対向部の長さの合計K(L1+L2)と外周長Lの長さとの関係と同様に定義することができる。
【0035】
なお、電極51〜54の対向部の長さとは、機能、例えば極性や用途が異なる第1の電極51(53)と第2の電極52(54)との少なくとも一部が向かい合う状態において、その向かい合っている部分の辺の長さをいう。対向部は、両電極が向かい合っていればよく、物理的に接触している必要はない。
【0036】
特に限定されないが、本実施形態における第1(又は第2)の電極51(52)の対向部の長さの合計K(L1+L2)と、第1(又は第2)の電極51(52)の外周長L(L1+L2+L3+L4)との割合(K/L)は、所定の割合、例えば25%以上(4分の1以上)とすることができる。好ましくは、所定の割合を50%以上(2分の1以上)とすることができる。
【0037】
対向部の長さの合計Kと外周長Lとの割合が50%以上になるためには、第1(又は第2)の電極51(52)が2枚の第2(又は第1の)電極52(51)に挟まれる必要がある。この場合は、合わせて4枚以上の第1の電極51及び第2の電極52が接触部5に配置される。
【0038】
このように、機能が異なる第1の電極51及び第2の電極52を交互に並列に配置することにより、第1の電極51及び第2の電極52よりも面積が広い測定部位(掌)が接触部5に接触したときに、人体の測定部位を機能の異なる第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)に同じ条件で接触させることができる。これにより、第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)の接触抵抗のバラツキを小さくすることができ、精度の高い生体情報を取得することができる。
【0039】
また、図4に示すように、環状のハンドル1の接触部5に、その環の直径方向に沿って、測定部位よりも小さい複数の第1の電極51及び第2の電極52を交互に並列に配置する。第1及び第2の電極(51〜54)の配置は、特に限定されないが、図3及び図4に示すように、ハンドル1の環の直径方向に沿う長辺を有する矩形状の第1及び第2の電極(51〜54)を同数ずつ、交互に配置することができる。このような配置にすることにより、人体の測定部位を機能の異なる第1の電極51及び第2の電極52に同時に同じ条件で接触させることができる。
【0040】
さらに、第1の電極51及び第2の電極52の形状を、図4に示すように、ハンドル1の環の直径方向に沿う辺が、これと直交する辺(ハンドル1の環の外周方向に沿う辺)よりも長くなるようにしたので、第1の電極51及び第2の電極52の長辺がハンドル1を掴む指掌に沿うように電極を設けることができる。乗員の指掌は第1の電極51及び第2の電極52の長辺に沿ってハンドル1を握るため、機能の異なる第1の電極51及び第2の電極52と測定部位とが広い範囲で同時に同じ条件で接触し、接触抵抗を安定させることができる。
【0041】
なお、第1の電極51及び第2の電極52の配列の態様は図4に示すものに限定されず、環状のハンドル1に、その環の連なる向に沿って複数の第1の電極51及び第2の電極52を交互に並列に配置することができる。具体的には後述する図10に示すように、ハンドル1の環の外周方向に沿うに沿う辺が、これと直交する辺(ハンドル1の環の直径方向に沿う辺)よりも長くなるようにすることができる。この場合においても、乗員の指掌は第1の電極51及び第2の電極52の長辺を束ねるようにハンドル1を握るため、機能の異なる第1の電極51及び第2の電極52と測定部位とが広い範囲で接触し、接触抵抗を安定させることができる。
【0042】
特に限定されないが、第1及び第2の電極(51〜54)の面積を、接触部5に接触可能な人体の測定部位の面積よりも小さくし、さらに、接触部5に対する第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)の面積比を均等にすることができる。人体の測定部位は特に限定されないが、例えば指掌、足の裏の他、腹部、背部等の、生体情報を測定できる人体(生体)の部位、特に生体情報の測定がしやすい指掌又は足の裏とすることができる。
【0043】
第1及び第2の電極(51〜54)を測定部位よりも小さい面積とし、面積比を均等にしておくことにより、生体情報を計測する際(生体情報に応じた電気信号を計測する際)に、第1及び第2の電極(51〜54)と測定部位との接触抵抗の影響を低減することができる。
【0044】
また、本実施形態では、第1及び第2の電極51〜54のピッチが1cm以下、好ましくは0.5cm以下とすることができる。第1及び第2の電極51〜54電極のピッチは小さいほど測定精度が向上するものの、製造コストを抑える観点から0.1mm程度以上とすることができる。
【0045】
本実施形態における第1の電極51のピッチとは、図4に示すように、第1の電極51の一方端(長辺)と、この第1の電極51と隣接する第2の電極52の一方端(長辺)との間の隙間を含む距離Paである。また、第2の電極52のピッチとは、第2の電極52の一方端(長辺)と、この第2の電極52と隣接する第1の電極51の一方端(長辺)との間の隙間を含む距離Pbである。
【0046】
第1及び第2の電極51〜54のピッチを1cm以下とすることにより、生体情報を計測する際(生体情報に応じた電気信号を計測する際)に、測定部位が複数の第1及び第2の電極51〜54に同時に接触するため、第1及び第2の電極(51〜54)と測定部位との接触抵抗の影響を低減することができ、生体情報の計測精度を向上させることができる。特に測定部位が指掌や足の裏である場合には、1cm以下のピッチで設けられた複数の第1及び第2の電極51〜54を測定部位に同時に接触させることができる。
【0047】
第1及び第2の電極51〜54の形状は、図4に示すような矩形に限定されず、方形のほか、三角形、六角形、八角形などの多角形、円形、楕円形などとすることができる。また、図5A,図5B,図5Cに示すように上記形状を繰り返し配置してもよいし、又はこれらの形状を組み合わせた形状としてもよい。さらに、図6A,図7Aのように、螺旋状の形状としてもよい。このような形状における第1及び第2の電極51〜54の外周長は、図6B及び図7Bで示すように、その第1及び第2の電極51〜54の1単位の最外縁を結ぶ包絡線の長さLとして定義することができる。
【0048】
本実施形態において、複数の第1及び第2の電極51〜54を小さいピッチで配置する観点からは、第1及び第2の電極51〜54の形状を方形や六角形又はこれらの組合せの形状とすることができる。特に限定されないが、図8A,図8B,図8Cに第1及び第2の電極51〜54が六角形である場合の例を示す。同図においてAで示す電極が第1の電極51(53)であり、Bで示す電極が第2の電極52(54)である。この場合において、各第1の電極51(53)又は第2の電極52(54)は連続させてもよいし、後述する導通部55によって接続してもよい。
【0049】
先述したように、第1及び第2の電極51〜54の形状を円形にすることも可能である。この場合は、図9に示すように、第1の電極51(53)と第2の電極52(54)とが隣接するように配置することができる。第1及び第2の電極51〜54の形状が円形である場合には、第1又は第2の電極51〜54の各中心から円周側に延びる法線が最も先に接した他の第1又は第2の電極51〜54が隣り合う電極であると定義することができる。
【0050】
第1の電極51(53)又は第2の電極52(54)が円形や楕円形である場合における第1及び第2の電極51〜54の外周長は、図9に示すように、その円周長L(楕円周長L)である。
【0051】
また、特に限定されないが、第1の電極51(53)と、これと隣接する(対向する)第2の電極52(54)との対向部の長さの合計は、以下のように求めることができる。たとえば、円形の第1の電極51(53)の外周長Lを360等分に分割し、その外周長Lを分割する360本の法線のうち、機能の異なる第2の電極52(54)と接し、かつ機能が共通する第1の電極51(53)と接しない法線の数をカウントし、この法泉の数を(外周長L/360)に乗じることにより、対向部の長さの合計Kを求めることができる。
【0052】
図9に示す例では、外周長は第1の電極51(53)の円周Lであり、対向部の長さの合計Kは、法線P1からP2までの円弧の長さx1と、法線P3からP4までの円弧の長さx2と、法線P5からP6までの円弧の長さx3との和である。言い換えると、対向部の長さの合計Kは、外周長Lから、第1の電極51(53)が第1の電極51(53)と隣合う(対向する)法線P4からP5までの円弧の長さy1と、法線P6からP1までの円弧の長さy2と、法線P2からP3までの円弧の長さy3とを差し引いた長さである。
【0053】
図4に戻り、本実施形態の接触部5は、第1の電極51(53)同士、第2の電極52(54)同士をそれぞれ接続する導通部55を備えている。導通部55は、信号線、ヒーター線等に用いられる金属線や、金属線の織布、樹脂織布の心材に金属コートした導電性のテープ、金属ペースト(を焼成したもの)、導電性高分子の塗装等を用いることができる。
【0054】
本実施形態において、導通部55を設けることにより、複数の第1の電極51(53)又は複数の第2の電極52(54)を繰り返し並列に配置することができる。また、第1の電極51(53)と第2の電極52(54)とを交互に配置することができる。さらに、複数の第1の電極51(53)又は複数の第2の電極52(54)を設けることにより、人体の測定部位がいずれかの第1の電極51(53)又は第2の電極52(54)に接触すれば、生体情報を計測することができるので、測定部位の接触状態によって測定不能となることを防ぐことができる。
【0055】
また、本実施形態の導通部55の面積は、接触部5の面積よりも小さくすることができる。特に限定されないが、導通部55の面積は、接触部5の面積の10分の1以下、好ましくは100分の1以下とすることができる。
【0056】
本実施形態における第1の電極51(53)同士を接続する導通部55の面積とは、図4に示すように、第1の電極51(53)の一方端(長辺)と、この第1の電極51(53)に最も近い第1の電極51の他方端(長辺)との距離Taに導通部55の線幅を乗じた値である。また、第2の電極52(54)同士を接続する導通部55の面積とは、同図に示すように、第2の電極52(54)の一方端(長辺)と、この第2の電極52(54)に最も近い第2の電極52(54)の他方端(長辺)との距離Tbに導通部55の線幅を乗じた値である。
【0057】
例えば、接触部5の面積が10cm×10cmの100cmであるとすると、導通部55の面積は10cm以下、好ましくは1cm以下とすることができる。このように導通部55を小さくすることにより、人体の測定部位が導通部55に触れる面積を小さくすることができるため、測定部位と導通部55との接触による影響を低減することができる。この結果、人体の測定部位が接触部5に接触することによって計測される生体情報の測定精度を向上させることができる。
【0058】
接触部5の第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)並びに導通部55は、上述した金属やカーボン等のほか、導電性高分子材料により構成することができる。金属、カーボン等によって構成する場合と比べて、バインダーを必要とせず、脱離を防ぎやすいという利点がある。また、酸化劣化の程度が低いので、耐久性を向上させることができる。
【0059】
導電性高分子としては、電子伝導性を有する高分子材料であればよく、特に限定されないが、たとえば、アセチレン系高分子、複素5員環系高分子、フェニレン系高分子、アニリン系高分子やこれらの共重合体、またはこれらの誘導体、さらには、ポリフェニレンビニレン;ポリチオフェンビニレン;ポリペリナフタレン;ポリアントラセン;ポリナフタレン;ポリピレン;ポリアズレンなどが挙げられる。
【0060】
アセチレン系高分子としては、下記式(1)〜(5)に示す基本骨格を有するものが挙げられる。
【化1】

上記式(1)〜(5)中、nは重合数を表し、その数は特に限定されない。また、上記式(2)、(4)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基、または炭素数6〜18、好ましくは炭素数6〜12のアリール基を示す。
【0061】
上記式(1)〜(5)に示す基本骨格を有するアセチレン系高分子の具体例としては、ポリアセチレン、ポリメチルアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリフルオロアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレンなどが挙げられる。
【0062】
複素5員環系高分子としては、下記式(6)、(7)に示す基本骨格を有するピロール系高分子、下記式(8)〜(11)に示す基本骨格を有するチオフェン系高分子、下記式(12)に示す基本骨格を有するイソチアナフテン系高分子が挙げられる。
【化2】

【化3】

上記式(6)〜(12)中、nは重合数を表し、その数は特に限定されない。また、上記式(7)、(9)、(10)中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基を示す。
【0063】
また、フェニレン系高分子としては、下記式(13)〜(15)に示す基本骨格を有するものが挙げられる。
【化4】

上記式(13)〜(15)中、nは重合数を表し、その数は特に限定されない。
【0064】
さらに、アニリン系高分子としては、下記式(16)、(17)に示す基本骨格を有するものが挙げられる。
【化5】

上記式(16)、(17)中、nは重合数を表し、その数は特に限定されない。また、上記式(17)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐または環状のアルキル基を示す。
【0065】
上記各式において、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基、およびシクロヘキシル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状アルキル基などが挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o−,m−若しくはp−トリル基、2,3−若しくは2,4−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基およびピレニル基などが挙げられる。
【0066】
導電性高分子のより具体的な例としては、ポリアセチレン、ポリメチルアセチレン、ポリフェニルアセチレン、ポリフルオロアセチレン、ポリブチルアセチレン、ポリメチルフェニルアセチレンなどのポリアセチレン系高分子;ポリオルソフェニレン、ポリメタフェニレン、ポリパラフェニレンなどのポリフェニレン系高分子;ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−ドデシルピロール)、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(N−ドデシルピロール)、ポリ(N−メチル−3−メチルピロール)、ポリ(N−エチル−3−ドデシルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)などのポリピロール系高分子;ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジエチルチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェン系高分子;ポリフラン;ポリセレノフェン;ポリイソチアナフテン;ポリフェニレンスルフィド;ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(2−エチルアニリン)、ポリ(2,6−ジメチルアニリン)などのポリアニリン系高分子;ポリパラフェニレンビニレンなどのポリフェニレンビニレン;ポリチオフェンビニレン;ポリペリナフタレン;ポリアントラセン;ポリナフタレン;ポリピレン;ポリアズレン;またはこれらの誘導体が好ましく挙げられる。
なお、これら導電性高分子には、ドーパントが含まれてもよく、ドーパントとしては、使用する導電性高分子の種類などによって適宜選択される。
【0067】
これらのなかでも、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択された一つのモノマーを重合した高分子に、ポリ(4−スチレンサルフォネート)をドープしたもの(たとえば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)にポリ(4−スチレンサルフォネート)(PSS)をドープしたPEDTOT/PSS)、および、ポリパラフェニレンビニレンからなる群から選択された導電性高分子、ならびに、これらの誘導体から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。導電性高分子は単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0068】
第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)と導通部55とを有する接触部5を構成する導電性高分子の膜厚は特に制限は設けないが、厚さが大きくなると皮革が硬くなり、人体の指掌が触れるハンドル1の触感や風合いが損なわれてしまうので、500μm程度以下とすることが好ましい。
【0069】
以下、本実施形態のハンドル1の製造方法を説明する。特に限定されないが、たとえば、金属を加工して得た心材41の表面に、発泡体を被覆又は吹き付けることによって発泡体層42を形成し、この発泡体層42の表面に接触部5を形成する。樹脂シートの上に第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)及び導通部55を形成した接触部5を発泡体層42の表面の所定領域に配置してもよいし、発泡体層42の表面の所定領域に第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)及び導通部55を印刷又は貼りつけて、接触部5を発泡体層42の表面に直接配置してもよい。さらに、欠損部が形成されている表皮層43で、接触部5が形成された発泡体層42を被覆する。このような手順で接触部5を備えるハンドル1を得ることができる。
【0070】
また、接触部5を導電性高分子材料で形成する場合には、表皮層43に接触部5を構成する樹脂材料及び/又は導電性高分子材料を含浸又は塗布することが好ましい。表皮層43に導電性高分子材料を含浸させることにより、表皮層43の空隙に導電部を形成することができる。この導通部は、表皮層43の表面(人体が触れる場所)と接触部5とを導通させる、表皮層43の主面と直交する方向に沿う柱状の部材である。表皮層43内部に形成された導電部は、表皮層43の一方主面と他方主面とを電気的に導通させる。この導電部により、表皮層43に孔やスリットなどの欠損部を形成しなくても、この導電部を介して測定部位の生体情報(生体信号)を接触部5に伝達することができる。この結果、表皮層43の表面に接触した測定部位の生体情報を接触部5にて計測することができる。
【0071】
具体的には、樹脂材料または導電性高分子を溶媒に溶解して混合溶液として、表皮層43に含浸または塗布し、その後、溶媒を除去することができる。この方法は、効率及びコストにおいて有利である。溶解に用いる溶媒としては、たとえば、水、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒やグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、およびこれらとロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、さらにはこれら溶媒同士、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが挙げられる。これらの中でも、水やDMSO、エチレングリコール等がコスト、回収性等の工程通過性の点で最も好適である。
【0072】
混合溶液中の樹脂材料または導電性高分子の濃度は、これらの組成や重合度、あるいは使用する溶媒の種類によって異なるが、混合溶液全体100重量部に対し、1〜10重量部の範囲であることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、混合溶液には、必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、特殊機能剤などの各種添加剤が含有されていてもよく、これら添加剤は、一種単独で、あるいは二種以上を併用して用いることができる。
【0073】
混合溶液の粘度は、500mPa・s以上、10,000mPa・s以下であることが好ましく、さらに好ましくは1,000mPa・s以上、5,000mPa・s以下であることが好ましい。混合溶液の粘度を上記範囲に制御することで、含浸または塗布を容易に行なうことが可能となる。含浸後、熱処理を行うことができる。熱処理温度は、通常、100℃以上であり、好ましくは110℃〜250℃である。導電性高分子を含む表皮層43について熱処理を行なうことにより、接触抵抗の低下効果をさらに高めることができる。その一方で、熱処理温度が低すぎると、接触抵抗の低下効果が不十分となる場合があり、また、熱処理温度が高すぎると、接触部5の表面に、融解が生じてしまい、これにより、接触部5の力学物性が低下する場合がある。
【0074】
本発明の本実施形態に係るハンドル1は、以下の効果を奏する。
【0075】
本実施形態のハンドル1においては、互いに隣り合う第1又は第2の電極51〜54の対向部の長さの合計Kが第1の電極51(53)の外周長Lに対して所定の割合以上となるように第1又は第2の電極51〜54が配置された接触部5を設けたので、人体の測定部位が複数の第1及び第2の電極に同じ条件で触れることができるため、人体との接触領域ごとに生じる接触抵抗の差による測定値のバラツキを抑制することができる。この結果、精度の高い生体情報を取得することができる。
【0076】
本実施形態の接触部5は、第1の電極51(53)同士又は第2の電極52(53)同士を接続する導通部55を有するので、第1の電極51(53)と第2の電極52(54)の形状や配列の自由度を向上させることができる。この導通部55により互いに接続された複数の第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)が配置されているので、測定部位がいずれかの第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)に確実に触れるようにすることができる。この結果、測定部位の接触状態によって測定不能となる事態を防ぐことができる。
【0077】
本実施形態の導通部55の面積を接触部5の面積よりも小さくしたので、人体の測定部位が導通部55に触れる面積を小さくすることができる。これにより、人体の測定部位と導通部55とが接触することによる影響を低減することができる。この結果、人体の測定部位が接触部5に接触することによって計測される生体情報の測定精度を向上させることができる。
【0078】
第1及び第2電極51〜54の面積は、接触部5に接触可能な人体の測定部位の面積よりも小さく、接触部5に対する第1及び第2の電極51〜54の面積比は均等としたので、生体情報を計測する際(生体情報に応じた電気信号を計測する際)に、第1及び第2の電極(51〜54)と測定部位との接触抵抗の影響を低減することができる。
【0079】
第1及び第2の電極51〜54のピッチを1cm以下とすることにより、生体情報を計測する際(生体情報に応じた電気信号を計測する際)に、第1及び第2の電極(51〜54)と測定部位との接触抵抗の影響を低減することができ、生体情報の計測精度を向上させることができる。
【0080】
本実施形態では電極51〜54及び/又は導通部55を、導電性高分子材料によって構成することにより、金属、カーボン等によって構成する場合とは異なり、バインダーを必要とせず、脱離を防ぎやすい。また、酸化劣化の程度が低いので、耐久性を向上させることができる。
【0081】
本実施形態に係る生体情報計測用ハンドル1を車両Vに搭載することにより、特別な操作を要求されることなく、運転時に体脂肪率などの生体情報を計測することができる。
【0082】
本明細書では、本発明に係る第1の電極と第2の電極とを有する接触部を備える生体情報計測用ハンドルの一例として、第1の電極51(53)と第2の電極52(54)を有するハンドル1を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本発明に係る導通部を有する生体情報計測用ハンドルの一例として、導通部55を有するハンドル1を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
なお、本実施形態では、ハンドル1が人体の体脂肪率を計測する生体情報計測装置100に用いられる例を説明するが、これに限定されず、ハンドル1は人体の特定部位に接触する2以上の電極から得られた電気情報に基づいて生体の状態を計測する装置に適用することができる。例えば、本実施形態のハンドル1は、人体の皮膚抵抗に基づいて緊張又はリラックスなどの心理状態を判定する心理状態判定装置や、同じく人体の皮膚抵抗に基づいて覚醒水準を計測する覚醒状態判定装置などに適用することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0086】
以下の実施例において、生体情報としての体脂肪率を下記の方法により測定した。
【0087】
本実施例において、体脂肪率の算出は市販の両手式体脂肪計(オムロン製HBF−306)を用いて行った。上述した第1の電極51(53)と第2の電極52(53)と導通部55とを有する接触部5を準備し、この接触部5を体脂肪率計のハンドル又は車両のハンドルに設置し、これを市販の両手式体脂肪計(オムロン製HBF−306)の電極に適用して体脂肪率を計測した。
【0088】
体脂肪率の測定は、1回測定するごとに測定位置(測定部位が接触する位置)を変えて、握りなおして行った。測定位置は、体脂肪率計のハンドルに設置したものでは標準位置と、上半分、下半分を握った場合に変更して行い、車両のハンドル1に設置したものではスポーク部3の上部と下部を握った場合の値を測定した。このように測定位置を変えて体脂肪率を測定するのは、測定部位が電極に触れる際の接触条件を変化させるためである。
【0089】
[実施例1]
本実施例では、以下のようにして、本実施形態(図1〜図4)に示す態様のハンドル1を作製した。
【0090】
第1の電極51及び第2の電極52を構成する厚さ0.3mmのステンレス板(SUS304)を幅3.5cm、長さ0.8cmとなるように加工し、第1の電極51及び第2の電極52のピッチPa,Pb(図4参照、以下同じ)が1cmとなるようにステンレス板を8枚並べ、1枚おきに第1の電極51及び第2の電極52が隣り合うように繰り返し設置して、左手の指掌用の接触部5を準備した。
また、第1の電極53及び第2の電極54を構成する厚さ0.3mmのステンレス板(SUS304)を3.5cm(幅)×0.8cm(長さ)となるように加工し、第1の電極51及び第2の電極52と同様に配置して、右手の指掌用の接触部5を準備した。
【0091】
本実施例1の接触部5において、外周長Lに対する対向部の長さの合計Kの配置割合は、対向部の長さの合計Kが3.5×2=7であり、1枚の電極の外周長Lが8.6であるので、8枚並べた状態では、(3.5*7)/(8.6*4)=71%であった。この接触部5を、上述の体脂肪率計(オムロン社HBF−306)のハンドル部に設置し、接触部5の各電極51〜54を体脂肪計に適切に接続した。
【0092】
接触部5が設けられたハンドル部の標準位置を左右両手の指掌で握った。ハンドル部5の標準位置とは、接触部5の第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)のすべて乃至90%以上が指掌に覆われる位置である。この状態で体脂肪率を計測したところ、22.9%の値を示した。次に、左右それぞれのハンドル部の上半分(接触部5の中心から上の長さ4cmの部分)を握って体脂肪率を計測したところ22.9%の値を示した。さらに、左右それぞれのハンドル部の下半分(接触部5の中心から下の長さ4cmの部分)を握って体脂肪率を計測したところ、22.8%の値を示した。
【0093】
[実施例2]
第1の電極51(53)及び第2の電極52(54)を構成する厚さ0.3mmのステンレス板(SUS304)を幅3.5cm、長さ0.35cmとし、ピッチPa,Pbが0.5cmとなるように16枚ずつ並べた以外は、実施例1と同様にして接触部5を準備した。本実施例2の接触部5において、外周長Lに対する対向部の長さの合計Kの配置割合は85%であった。
【0094】
[実施例3]
第1の電極51及び第2の電極52を構成する厚さ0.3mmのステンレス板の幅を9.5cm、長さを0.7cmとなるように加工し、ピッチPa,Pbが1cmとなるように30枚ずつ並べ、1枚おきに第1の電極51及び第2の電極52が隣り合うように繰り返し設置して、9.5cm×30cmの大きさの左手の指掌用の接触部5を準備した。同様に、第1の電極53及び第2の電極54が隣り合うように繰り返し設置し、右手の指掌用の接触部5を準備した。
【0095】
日産自動車製スカイライン(V36)のステアリングホイール(リム部の太さ30mm程度)の皮革をはがし、準備した二つの接触部5をステアリングホイールのリム部4に図3に示す態様で巻きつけた。本実施例の接触部5において、外周長Lに対する対向部の長さの合計Kの配置割合は90%であった。
【0096】
[実施例4]
第1の電極51及び第2の電極52を構成する厚さを0.3mmのステンレス板の幅を0.7cm、長さを30cmに加工し、ピッチPa,Pbが1cmとなるように4枚ずつ並べ、1枚おきに第1の電極51及び第2の電極52が隣り合うように繰り返し設置して、4cm×30cmの大きさの左手の指掌用の接触部5を準備した。同様に、第1の電極53及び第2の電極54が隣り合うように繰り返し設置し、右手の指掌用の接触部5を準備した。準備した接触部5を図10に示す態様でリム部4に貼り付けた。本実施例の接触部5において、外周長Lに対する対向部の長さの合計Kの配置割合は73%であった。
【0097】
[実施例5]
実施例1の接触部5の第1の電極51(53)を互いに接続する導通部55を図4のように設けた。導通部55の線幅を3mmとした。第2の電極52(54)についても同様の導通部55を同様に設けた。これ以外は実施例1と同様のハンドル1を得た。本実施例の接触部5において、外周長Lに対する対向部の長さの合計Kの配置割合は71%であった。
【0098】
[実施例6]
PEDOT/PSS粉末(アグフア製Orgacon Dry)をPEDOT/PSS濃度が3wt%となるようにエチレングリコール(和光純薬製特級)に分散させ混合溶液を得た。
【0099】
本実施例では、表皮層43を形成する厚さ1.0mmの牛革の主面に接触部5を形成した。このため、実施例3と同様の態様の第1の電極53及び第2の電極54を形成するように、コーティング装置(Mathis製LTE−S)を用い、第1の電極53及び第2の電極54の配置パターンに合わせて導電性高分子材料を含む混合溶液を牛革の主面に10μmの厚さとなるように塗布した。
【0100】
心材41の表面にポリウレタンの発泡体層42を設け、その表面に先述の接触部5が形成された表皮層43を貼りつけた。ハンドル1のスポーク部3から信号線を引き出して設置した。続いて、表皮を縫い合わせた。最後に、スポーク3領域で生じた余分な皮革を切除し、表皮層43を加熱して皮革のシワを取り除いて実施例6のハンドル1を得た。
【0101】
[実施例7]
厚さ1.0mmの牛革に1箇所ごとφ1mmの孔を空け、表皮層43を準備した。この表皮層43となる牛革の裏面側に、実施例6で用いた導電性高分子材料を含む混合溶液を用いて実施例3と同様のパターンを塗布した。このとき、混合溶液が孔を通して裏面側まで行き届かせ、牛革の裏面側にも混合溶液が塗布された表皮層43を得た。混合溶液の塗布厚さは10μmであった。
【0102】
[実施例8]
電極51〜54の幅が9.5cm、長さが0.05cm、ピッチPa,Pbが0.1cmとなるように混合溶液を塗布して接触部5を表皮層43に形成した以外は実施例6と同様にしてハンドル1を得た。
【0103】
[比較例1]
ステンレス板から構成されたサイズ3.5×4cmの電極4枚を備えた接触部を有する体脂肪率計(オムロン社HBF−306)を用意した。接触部は、片手につき2枚ずつ設置されている。片手の指掌で2枚の接触部を把持できる標準位置を握って体脂肪率を計測した。計測された体脂肪率の値は22.8%であった。上半分の接触部のみを握って体脂肪率を計測したところ、体脂肪率は29.8%であった。下半分の接触部のみを握って体脂肪率を計測したところ「測定不可」であった。
【0104】
上記実施例1〜8及び比較例9の測定結果を表1に示す。
【表1】

【0105】
上記実施例の測定結果のとおり、本実施例に係るハンドル1は、測定部位が接触部5に触れた際の接触抵抗のバラツキなどの接触条件の相違による影響を小さくすることができる。特にハンドル1の接触部5を部分的に握った場合であっても、測定結果の差が標準時の測定結果に対して0.43%〜0.47%程度であり、体脂肪率(生体信号)に係る計測結果のバラツキが小さかった。このように、本実施例に係るハンドル1は、比較例1のような従来の体脂肪計のハンドルと比べて、高い精度で生体情報に応じた生体信号を取得することができる。
【0106】
他方、比較例1の測定結果に示されるように、従来の体脂肪率計に設けられた接触部を部分的に握る又は接触位置をずらす(偏らせる)と、測定結果の差が標準時の測定結果に対して30%であった。また、場所によっては測定不可となった。
【0107】
本実施例のハンドル1によれば、測定部位が接触する接触部の電極51〜54の面積が不均一であっても、正常に測定が可能であり、しかも、高い精度を維持することができる。
【0108】
本明細書では、本発明に係るハンドル1が車両用のハンドルである場合を説明したが、これに限定されず、各種機器の操作用のハンドルに本発明に係るハンドル1を適用することができる。例えば、自転車用ハンドル、エクササイズ用器具のハンドル、体組成計の把持部等に本発明に係るハンドル1を適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
100…生体情報計測装置
1…ハンドル
2…ボス部
3…スポーク部
4…リム部
41…心材
42…発泡体層
43…表皮層
5…接触部
51,53…第1の電極,電極A
52,54…第2の電極,電極B
55…導通部
6…計測装置
7…演算装置
8…出力装置,ディスプレイ,通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の生体情報を計測するための複数の第1の電極と、前記第1の電極とは機能が異なる複数の第2の電極とが互いに隣り合うように配置され、人体の測定部位が接触可能な接触部を備える生体情報計測用のハンドルであって、
前記第1の電極と、これと隣り合う前記第2の電極との対向部の長さの合計が、前記第1の電極の外周長に対して所定の割合以上であることを特徴とする生体情報計測用ハンドル。
【請求項2】
前記接触部は、前記第1の電極同士又は前記第2の電極同士を接続する導通部を有することを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測用ハンドル。
【請求項3】
前記導通部の面積は、前記接触部の面積よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の生体情報計測用ハンドル。
【請求項4】
前記第1及び第2電極の面積は、前記接触部に接触可能な人体の測定部位の面積よりも小さく、
前記接触部に対する前記第1及び第2の電極の面積比は均等であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の生体情報計測用ハンドル。
【請求項5】
前記第1及び第2の電極のピッチが1cm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の生体情報計測用ハンドル。
【請求項6】
前記電極又は前記導通部は、導電性高分子材料によって構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の生体情報計測用ハンドル。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載された生体情報計測用ハンドルを備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−217642(P2012−217642A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86687(P2011−86687)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】