説明

生地供給装置

【課題】生地をミシンへ送り込む作業を自動化するような場合にあって、送り込みの途中で生地に弛み皺を発生させることがないようにし、またミシンの針落部に対して生地を真っ直ぐに送り込むことが確実に行えるようにする。
【解決手段】ミシン2の針落部3に向けて連設状に設置される生地テーブル5と、ミシン2へ生地Wを送り込む中間送り機構6とを有しており、中間送り機構6は、生地Wを生地テーブル5上へ押さえ付けながら駆動回転する送りローラ10と、この送りローラ10を生地テーブル5上の生地Wに対して送り方向Xと交差する方向Yで出入り移動させる出入り調節機構13とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンなどの生地処理装置に対して生地を送り込むうえで好適に採用可能となる生地供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生地をミシンへ送り込む作業を自動化できるようにした生地供給装置は公知である(例えば、特許文献1等参照)。この生地供給装置は、ミシンの針落部(ミシン針を受ける孔が形成された針板等の部分であって縫製作業位置に相当)に向けて生地テーブルを連設状(面一状)に設置すると共に、この生地テーブルの上方に、エンドレスベルトを具備する搬送ベルト装置を昇降自在に設けたものである。
【0003】
この生地供給装置では、生地テーブル上に生地が載せられたときに搬送ベルト装置を下降させ、この搬送ベルト装置で生地を生地テーブルへ押さえ付けるようにし、この状態のまま搬送ベルト装置にベルト駆動を行わせ、生地を生地テーブル上で滑らせながらミシンへ送り込むというものであった。
この生地供給装置は『マウス』と呼称する追従部材を有している。この追従部材は、ミシンの針落部から遠い位置にある生地の生地端を生地テーブル上へ押さえ付け、そのままミシンへ向けて移動させるものである。そして、この追従部材は、送り方向とは直交する方向で生地テーブル上を出入り移動可能とされている。追従部材の出入り移動は、縫製中の生地をミシンの針落部に対して真っ直ぐに送り込むために、生地の向き(搬送角度)をリアルタイムで適正に修正するためのものであった。
【0004】
なお、搬送ベルト装置は、追従部材が送り移動や出入り移動をするときに邪魔となるため、ミシンが生地を縫い始めた状態となった後は直ぐに上昇し、生地テーブルに対する生地の押さえ付けを解除するようになっていた。そのため、ミシンの縫製作業中における生地の生地送りは、実質的には、ミシン自体が生起する生地の引き取り動作(針落部に組み込まれた送り歯の立体楕円動作)のみによって行われるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−343884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の生地供給装置において、搬送ベルト装置は、ミシンの針落部へ生地の先端を到達させた後は、上昇し、その後の生地送りはしない。ここにおいて、ミシン自体が生起する生地の引き取り動作には、送り歯の立体楕円動作によって脈動的(間欠的)な送りが生じる。これに対し、追従部材が生地をミシンへ向けて送る移動は、定速移動となる。そのため、縫製を開始した直後など、ミシンの針落部から追従部材までの間の生地長さが長いときには、前記した脈動的な送りを起因として生地に弛み皺が生じるおそれがあった。
【0007】
また従来の生地供給装置では、追従部材を設けることで縫製中における生地の向き(搬送角度)を修正可能にしているが、ミシンの針落部から追従部材までの間の生地長さが長いときには、追従部材の出入り移動距離(振れ幅)を相応に大きくしなければ、針落部(縫製作業位置)での生地の位置合わせが十分に行えないことになる。そのため、送り方向に沿って長い形状をした生地の場合では、縫製中における生地の向き(搬送角度)を十分に修正できないことがあった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ミシンなどの生地処理装置に生地を送り込む作業を自動化するような場合にあって、送り込みの途中で生地に弛み皺を発生させることがないようにし、また生地処理装置の処理作業位置(ミシンの針落部など)に対して生地を真っ直ぐに送り込むことが確実に行えるようにした生地供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る生地供給装置は、生地処理装置の処理作業位置(ミシンの針落部など)に向けて連設状に設置される生地テーブルと、前記生地処理装置へ生地を送り込む中間送り機構と、を有しており、前記中間送り機構は、生地を前記生地テーブル上へ押さえ付けながら駆動回転する送りローラと、この送りローラを生地テーブル上の生地に対して送り方向と交差する方向で出入り移動させる出入り調節機構と、を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る生地供給装置は、前記生地における送り方向の尾端側を前記生地テーブル上へ押し付けながら、前記中間送り機構の送り駆動と共同しつつ生地処理装置へ向けて滑らせる尾端追い込み機構をも、有したものとするのが好適である。
前記出入り調節機構は、生地処理装置へ送り込まれる生地の側縁部に対して送り方向に沿って連続する折返し辺部を形成させる側縁成形部と、前記側縁成形部で形成された生地の折返し辺部の折幅を検出する折幅検出部と、を有したものとすることができる。
【0011】
前記尾端追い込み機構は、生地を前記生地テーブル上へ押さえ付ける尾端押圧部材と、前記尾端押圧部材を生地テーブル上で昇降させる昇降駆動部と、前記尾端押圧部材を前記生地テーブル上に下降させたままで生地処理装置へ向けて移動させる移動駆動部と、を有したものとすることができる。
本発明に係る生地供給装置は、前記生地テーブルに支持された生地を生地処理装置の処理作業位置近傍で当該生地テーブル上へ押し付けながらミシンの停止中に送り方向に沿って滑らせる生地さばき機構をも、有したものとするのが好適である。
【0012】
前記生地さばき機構は、生地を前記生地テーブル上へ押さえ付ける生地押圧部材と、前記生地押圧部材を生地テーブル上で昇降させる昇降駆動部と、前記生地押圧部材を前記生地テーブル上に下降させたままで生地処理装置へ向けて移動させる移動駆動部と、を有したものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る生地供給装置では、ミシンなどの生地処理装置に生地を送り込む作業を自動化するような場合にあって、送り込みの途中で生地に弛み皺を発生させることがなく、また生地処理装置の処理作業位置(ミシンの針落部など)に対して生地を真っ直ぐに送り込むことが確実に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る生地供給装置を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る生地供給装置を示した平面図であって(a)は生地を生地処理装置へ送り込む直前の段階であり(b)は生地を生地処理装置へ送り込んで縫製開始した段階である。
【図3】図2(a)のA−A線矢視図である。
【図4】図2(a)のB−B線位置に設けられた側縁成形部を示した側断面図である。
【図5】図2(a)のB−B線位置に設けられた折幅検出部を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図5は、本発明に係る生地供給装置1の第1実施形態を示している。この生地供給装置1は、生地処理装置に生地を送り込むうえで好適に採用可能となるものである。ここにおいて「生地処理装置」は、ミシンなどの縫製装置をはじめとして、接着剤や樹脂剤の塗布を行う装置、接着剤の塗布後に接着までもを行う接着装置、更にはステープルによる接合を行う接合装置などを含めて言う。またこの生地処理装置には、裁断装置やインクジェット捺染装置など、生地Wに対して、所定の箇所へ種々様々な加工や処理を施す装置も含めて言うものとする。
【0016】
このような生地処理装置にあって、本第1実施形態ではミシン2である場合を例示する。従って、生地処理装置が生地Wに対して加工や処理を施す処理作業位置のことを、以下
では針落部(ミシン針2aを受ける孔が形成された針板等の部分)3と言い換えて説明する。
供給装置1は、図1及び図2に示すように、生地Wをミシン2へ送り込むに際して、ミシン2の針落部3に近接した位置で、生地Wを、ミシン2へ向けた送り方向(以下「送り方向X」と言う)とは交差関係にある方向(送り方向Xに対する直交方向又は直交方向に近似した方向を言うが、これらに限定されない。以下では「出入り方向Y」と言うこともある)へ出入り移動可能にさせている。
【0017】
この生地供給装置1は、上記のような針落部3の近接位置で生地Wに出入り移動を行わせることで、生地Wの向きをリアルタイムで適正且つ確実に修正することができる。それ故、縫製中の生地Wをミシン2の針落部3に対して真っ直ぐに送り込むことができるものである。
ここにおいて「生地Wの向き」は、針落ち部3を基点として送り方向Xの上流側(図1、図2の各右方)を見たときに、この送り方向Xに対して生地Wが傾いた角度(搬送角度)を言うものとする。
【0018】
上記動作を行う生地供給装置1は、生地テーブル5と中間送り機構6とを有した構成となっており、好ましくは、更に生地さばき機構7や尾端追い込み機構8をも有した構成となっている。
生地テーブル5は、ミシン2へ向けて送り込む生地Wを支持できるように、ミシン2の針落部3に向けて連設状(面一状)に設置されたものであって、この生地テーブル5の上面は、平坦且つ平滑に形成されている。ここで「平坦且つ平滑」とは、生地Wを引っかかりのない状態で円滑に滑らすことができる程度の表面性状を言うものであって、これらの作用が得られる条件のもとでは、凹凸や起伏(うねり)、継ぎ目等が生じているものをも含むものとする。
【0019】
本実施形態では、ミシン2の針落部3に対してその正面部を含んで上流側及び下流側を取り囲むように設けられて、ミシン2に対する生地Wの搬入から搬出までを連続して支持できるものを示している。
中間送り機構6は、生地テーブル5に支持された生地Wに対し、ミシン2へ送り込むための送り駆動を付与すると共に、必要に応じて生地Wを出入り方向Yに移動させるところである。この中間送り機構6は、生地Wに送り駆動を付与するための構成として、送りローラ10と、この送りローラ10を回転駆動するローラ駆動部11と、送りローラ10を昇降させるローラ昇降部12とを備えている。また、生地Wに出入り方向移動を行わせるための構成として、出入り調節機構13を備えている。
【0020】
図3に示すように、送りローラ10は、回転軸を水平にした状態でローラブラケット16に回転自在に架設保持されており、ローラ下面がローラブラケット16の下方へ突出するようになっている。ローラブラケット16は、送りローラ10の回転軸が出入り方向Yと平行するように設けられている。
この送りローラ10は、生地テーブル5上に支持された生地Wをローラ下面で生地テーブル5へ押し付けたときに、ローラ外周面と生地Wとの間で滑りを生じさせることがなく、且つそれでいて生地Wを傷つけないようにするために、ゴム等の弾性材により形成するのが好適とされている。
【0021】
ローラ駆動部11は、送りローラ10の回転軸に伝動手段18などを介してモータ19の回転駆動を伝える構造となっている。伝動手段18は、図例では巻き掛け伝動としているが歯車伝動としてもよいし伝動手段18を省略してモータ19によるダイレクトドライブ方式としてもよい。モータ19は、直流モータでも交流モータでもよく、またブラシの有無など適宜選択できる。ただ、好ましくはパルスモータやサーボモータなどの高精度制御可能なモータを用いたり、ブレーキ付きモータやギヤドモータなどの停止時の空転回避ができるモータを用いたりするのがよい。
【0022】
ローラ昇降部12は、生地テーブル5に支持された生地Wに対して、ミシン2の針落部3から近い位置にある生地上面に送りローラ10を当接させたり、送りローラ10を生地Wに非当接となるように浮上させたりできるように、ミシン2又はミシン2を設置した装
置フレームなどの周辺構造体に対して設けられている。
このローラ昇降部12には、電動力、電磁力又はエア圧で駆動される昇降具(例えばソレノイドやエアシリンダ等)を用いることができる。本実施形態では、図1に示すように、ガイドレール21に沿わせてスライダ22を直線移動させるタイプのエアアクチュエータを用いて、スライダ22に、前記した出入り調節機構13を介して送りローラ10を支持させる構造を採用してある。
【0023】
なお、このローラ昇降部12の取付位置として、送りローラ10をどの程度、ミシン2の針落部3に近づけるようにするかは、数値的に特定できるものではない。少なくとも、送りローラ10を近づける方向においては、針落部3での縫製作業(ミシン針2aの上下動や押さえ板2bの上下動など)に対して送りローラ10が邪魔となることのない範囲とすべきである。
【0024】
また送りローラ10を遠ざける方向においては、後述する出入り調節機構13が送りローラ10を出入り方向Yに沿って移動させる量について、どれだけ少なく抑えられるかで判断すべきとなる。すなわち、送りローラ10がミシン2の針落部3から遠ざかれば遠ざかるほど、出入り調節機構13が送りローラ10を出入り方向Yに沿って移動させる量(振れ幅)も必然的に大きくなってしまうので、生地Wの向きを制御しにくくなる不都合がある。その意味で、送りローラ10をミシン2の針落部3に対して可及的に近づけるようにするのがよいということである。
【0025】
例えば、ミシン2での縫製作業に先立ち、生地Wの向きや位置を調整しつつミシン2に対する上流部(生地テーブル5上)へ生地Wを搬入し、生地Wをミシン2の針落部3に可及的に近接させて一旦停止させるような場合にあっては、停止位置にある生地W(図1や図2(a)に示した状態の生地W)においてミシン2の針落部3に近い方の生地端(送り方向Xでの始端)側を押圧できるように、送りローラ10の配置を設定するとよい。
【0026】
出入り調節機構13は、生地テーブル5上の生地Wに対し、送りローラ10を送り方向Xとは交差する方向(即ち、出入り方向Y)で出入り移動させるためのもので、ローラブラケット16と一緒に送りローラ10をその回転軸方向へ移動させるものとなっている。
本実施形態では、図3に示すように、送りローラ10の回転軸方向に平行させるようにしてラックレール26をローラブラケット16に取り付けると共に、ローラ昇降部12のスライダ22にモータ台24(図1参照)を介してモータ25を支持させて、このモータ25でラックレール26に噛合するピニオンギヤ27を回転駆動させるようにしている。
【0027】
また、モータ台24とローラブラケット16との間は、送りローラ10の回転軸方向に沿った直線移動を可能にするリニアガイド28を用いて連結してある。なお、モータ25には、パルスモータやサーボモータなどの高精度制御可能なモータを用いるのが好適である。
この出入り調節機構13は、更に、図4に示すような側縁成形部32と、図5に示すような折幅検出部33とを有したものとなっている。これら側縁成形部32及び折幅検出部33は、いずれも生地テーブル5の側縁部に対して設けられている。また、これら側縁成形部32及び折幅検出部33における送り方向Xでの配置としては、送りローラ10が出入り方向Yに沿って出入り移動する位置と近接した配置とするのが好適である。
【0028】
側縁成形部32は、ミシン2へ送り込まれる生地Wの側縁部に対して、送り方向Xに沿って連続する折返し辺部Waを形成させるためのものである。この側縁成形部32は、生地テーブル5の下面との間に生地厚を越える隙間Sを形成させて設けられた生地受台35と、生地テーブル5上に支持された生地Wが生地テーブル5の側縁部から張り出す方向へ滑らされた場合に、この生地Wの側縁部を凹曲面で当て止めしつつ生地テーブル5の下方(生地受台35の上面)へUターン状に導く折ガイド36とを有している。
【0029】
折ガイド36には、生地WをUターン状に導いている途中に、生地Wに対して生地受台35側へ押し出すような指向性のエアを噴出できるように、斜め下方を向いたエア噴出孔37を設けておくのが好適である。
また、生地受台35には、Uターン状に折り返された後の生地Wの側縁部(折返し辺部Wa)を生地テーブル5の下面へ近接させるようにする隙間調整部38を設けるのが好適
である。この隙間調整部38は、エアシリンダやソレノイドなどの駆動具40により、寄せ板41を生地テーブル5の下面へ向けて押し出すようにしたもので、寄せ板41の押出時には、この寄せ板41と生地テーブル5との間にできる隙間Sを小さくさせて生地Wを移動し難い状態にする。
【0030】
すなわち、この隙間調整部38は、生地Wに形成させた折返し辺部Waの折幅が拡縮方向(前記の出入り方向Yに同じ)に変動するのを防止しようとするものであって、決して、折返し辺部Waを生地テーブル5の下面へ押さえ付ける(固定させる)ためのものではない。
折幅検出部33は、側縁成形部32で形成された生地Wの折返し辺部Waの折幅を検出するためのもので、側縁成形部32の生地受台35に対し、出入り方向Yで異なる配置として複数のセンサ42を設けたものとなっている。センサ42には、反射型の光学センサなどを採用することができる。また、生地テーブル5の下面と生地受台35との上下間で透過型の光学センサ(投光部と受光部の上下位置関係は限定されない)を設けて、これをセンサ42として使用してもよい。言うまでもなく、センサ42の配置数などは限定されない。
【0031】
なお、この折幅検出部33は、側縁成形部32の生地受台35を利用して設けることが限定されるものではなく、当該折幅検出部33として専用となるセンサブラケットを別途設けて、このセンサブラケットにセンサ42を取り付けるようにしてもよい。
また、側縁成形部32の折ガイド36に設けられたエア噴出孔37や、隙間調整部38に対し、この折幅検出部33を送り方向Xの上流側に配置するか又は下流側に配置するかは、何ら限定されない。場合によっては、折幅検出部33を送り方向Xに沿って複数設けるようにしてもよい。
【0032】
出入り調節機構13は、前記した折幅検出部33の検出状況(何番目のセンサ42が生地Wを検出しているか)に基づき、生地Wに形成する折返し辺部Waを所定幅に保持させる構成となっている。すなわち、生地Wの折返し辺部Waが過大になったり過小になったりしたことを、この折幅検出部33が検出したときには、モータ25の駆動で送りローラ10を出入り方向Yに沿って必要量、出入り移動させ、折返し辺部Waを適正幅に合わせるようにしている。
【0033】
一方、本発明に係る生地供給装置1で装備することが好適とされる生地さばき機構7は、図1及び図2に示すように、生地テーブル5に支持された生地Wを、ミシン2における針落部3の近傍(正面部分など)で、生地テーブル5上へ押し付けながら、送り方向Xに沿って滑らせるようにするものである。この生地さばき機構7は、ミシン2の停止中に作動させて、ミシン2により縫製が完了した生地Wの尾端側をミシン2の正面から迅速且つ確実に払い出すように使用する。
【0034】
具体的に、この生地さばき機構7は、生地Wを生地テーブル5上へ押さえ付ける生地押圧部材45と、この生地押圧部材45を生地テーブル5上で昇降させる昇降駆動部46と、生地押圧部材45を生地テーブル5上の生地Wへ向けて下降させたままでミシン2へ向けて移動させる移動駆動部47とを有している。
本実施形態において、昇降駆動部46はエアシリンダを下向きに使用することで構成させてあり、このエアシリンダが有するシリンダロッドの下端部で、ゴムや樹脂によるロッドエンド部材を取り付けるか、又は取り付けないで(ロッド下端自体で)、前記した生地押圧部材45を形成させている。また、移動駆動部47にもエアシリンダを採用してあり、昇降駆動部46を支持したブラケット48を送り方向Xに沿って押し引きする構成としてある。
【0035】
このように、昇降駆動部46や移動駆動部47にエアシリンダを採用することで、生地押圧部材45の昇降速度や移動速度を高速化して動作時間を短縮させることが可能になり、しかも生地テーブル5上で生地Wを滑らせるために十分な動力が得られるようになっている。加えて、昇降駆動部46としてのエアシリンダの採用は、生地押圧部材45が生地Wを過剰に生地テーブル5上へ押しつける作用を緩和吸収できるものであり、生地Wへ疵を付けたり生地テーブル5上での生地Wの滑りを阻害したりすることの防止に繋がって好
適である。
【0036】
なお、昇降駆動部46や移動駆動部47について、ソレノイド駆動方式としたりモータ駆動方式としたりすることも可能である。また、押圧部材45は、生地Wをより広い面積で押圧できるようにプレート状、ブロック状、或いは吸盤状等の部材によって形成することができる。
このような生地さばき機構7と共に、同じく本発明に係る生地供給装置1で装備することが好適とされる尾端追い込み機構8は、生地テーブル5に支持された生地Wに対してミシン2の針落部3から遠い位置にある生地端(送り方向Xでの尾端側となる部分であって、図1及び図2の各右端側)を生地テーブル5上へ押し付けながら、中間送り機構6の送り駆動と共同しつつミシン2へ向けて滑らせるようにするものである。
【0037】
具体的に、この尾端追い込み機構8は、生地Wを生地テーブル5上へ押さえ付ける尾端押圧部材52と、この尾端押圧部材52を生地テーブル5上で昇降させる昇降駆動部53と、尾端押圧部材52を生地テーブル5上に下降させたままでミシン2へ向けて移動させる移動駆動部54とを有している。
移動駆動部54が尾端押圧部材52を移動させる範囲(移動ストローク)は、次の通りである。すなわち、ミシン2での縫製作業に先立ち、ミシン2の針落部3に可及的に近接させて一旦停止された生地W(図1や図2(a)に示した状態の生地W)に対し、その始端側を前記した送りローラ10が押圧する際に、尾端押圧部材52が生地Wの尾端側を押圧できるようにしている。また、ミシン2において縫製作業が行われたとき、生地Wの尾端側を押圧した尾端押圧部材52が、中間送り機構6(又はミシン2をはじめとする周辺構造物)と接触干渉しないでミシン2に可及的に接近できるようにしている。
【0038】
本実施形態では、尾端押圧部材52をアーム形に形成すると共に、この尾端押圧部材52の根本側(一端側)をモータ駆動方式とした昇降駆動部53で片持ち状に保持させておき、この昇降駆動部53で尾端押圧部材52を上下揺動させる構成としてある。また、移動駆動部54は、チェーン駆動やロッドレスシリンダ等を用いた駆動方式として、昇降駆動部53及び尾端押圧部材52を生地テーブル5に平行に設けたガイドレール55に沿わせつつ(送り方向Xに沿って)直線移動させる構成としてある。
【0039】
移動駆動部54は、前記した中間送り機構6が生地Wをミシン2へ送り込む際の駆動と非駆動との切り換えや送り込み速度に同調させながら、尾端押圧部材52を移動させるように構成するのが好適である。
なお、昇降駆動部53によりアーム形の尾端押圧部材52を揺動させる方式としたことは限定されるものではなく、電動力、電磁力又はエア圧で駆動される昇降具(例えばソレノイドやエアシリンダ等)によってプレート状、ブロック状、或いは吸盤状等に形成した尾端押圧部材52を垂直に上下動させる方式としてもよい。
【0040】
次に、本発明に係る生地供給装置1の動作状況について説明する。
図1及び図2(a)に示すように、ミシン2に対して下流側となる位置で生地テーブル5上に生地Wが供給されると、まず、中間送り機構6がローラ昇降部12を下降動作させて、送りローラ10が生地Wを生地テーブル5上へ押し付ける状態にする。
また、尾端追い込み機構8が昇降駆動部53を下降動作させて尾端押圧部材52を下向きに揺動させ、この尾端押圧部材52で生地Wを生地テーブル5上へ押さえ付ける状態にする。
【0041】
この状態で、中間送り機構6がローラ駆動部11を作動させ、送りローラ10の回転駆動で生地Wを生地テーブル5上で滑らせながらミシン2へ向けた送り込みを開始する。同時に、尾端追い込み機構8が移動駆動部54を作動させて、尾端押圧部材52をミシン2へ向けて移動させる。
このようにして、図2(b)に示すように、生地テーブル5上を生地Wが滑るようにしつつ、生地Wにおいてミシン2の針落部3から近い位置にある生地端(図1、図2の各左端側)をミシン2の針落部3へと導入させる。これを受けて、ミシン2は押さえ板2bを下降させるなどして縫製作業の準備を整える。
【0042】
なお、生地テーブル5上へ生地Wが供給された時点で、既に、生地Wの側縁部に折返し
辺部Waが形成されているような場合では、ミシン2の針落部3に対して生地Wの始端が導入された時点で、生地Wの折返し辺部Waは押さえ板2bにより押さえ込まれた状態となっていることになる。
しかし、生地テーブル5上へ生地Wが供給された時点で、生地Wの側縁部に未だ折返し辺部Waが形成されていない場合は、ミシン2が押さえ板2bを下降させるより前に、次のようにする。
【0043】
すなわち、中間送り機構6の出入り調節機構13は、下降させた送りローラ10を出入り方向Yに沿って移動させ、生地Wを生地テーブル5の側縁部から張り出させる方向へ滑らすようにする。これにより、生地Wは、その側縁部が折ガイド36(図4参照)に当て止めされながら生地テーブル5の下方(生地受台35の上面)へとUターン状に導かれ、生地Wの側縁部に折返し辺部Waが形成される。また、エア噴出孔37からエアが噴出されて、生地Wが折ガイド36に導かれやすく(折返し辺部Waが形成されやすく)する。
【0044】
このようにして生地Wに形成された折返し辺部Waは、折幅検出部33によってその折幅が検出される。出入り調節機構13は、この折幅検出部33による検出状況に基づいて折返し辺部Waを適正幅とすべく、必要に応じて、送りローラ10を出入り方向Yに沿って移動させる。
折返し辺部Waが適正幅となれば、隙間調整部38が寄せ板41を上昇させて、生地テーブル5との間にできる隙間Sを小さくさせ、それ以降において折返し辺部Waの折幅が拡縮方向に変動するのを防止する。これを受けて、ミシン2が押さえ板2bを下降させるようにする。
【0045】
このように、ミシン2の針落部3に対して生地Wの先端(縫い始め箇所)が確実に導入されるようになった段階で、ミシン2がミシン針2aを上下動させたり送り歯を駆動させたりして生地Wの縫製を開始する。また同時に、中間送り機構6がローラ駆動部11を作動させ、送りローラ10の回転駆動で生地Wを生地テーブル5上で滑らせながらミシン2へ向けた送り込みを開始する。
【0046】
更に、尾端追い込み機構8が移動駆動部54を作動させて、尾端押圧部材52をミシン2へ向けて移動させる。このときの尾端押圧部材52の移動は、中間送り機構6による送り駆動と同調するように行われるため、生地テーブル5上の生地Wは、中間送り機構6と尾端追い込み機構8との間で皺や弛みを生じることがなく、平坦な状態を維持しつつミシン2へ向けて円滑に送り込まれるものとなっている。
【0047】
また、このようなミシン2への生地送り込みの最中、中間送り機構6の出入り調節機構13は、側縁成形部32で生地Wに形成される折返し辺部Waの折幅を、折幅検出部33によって監視し、常に、この折返し辺部Waが適正幅を維持すべく、送りローラ10を出入り方向Yに沿って出入り移動させるものである。
このように、生地Wは、ミシン2へ向けた送り駆動(送りローラ10の回転駆動)の最中に、ミシン2の針落部3に近接した位置で、必要に応じて出入り方向Yへ向けた出入り移動(送りローラ10の軸方向移動)が行われるようになっている。そのため、ミシン2に向けた生地Wの確実な送り込みと同時に、生地Wの向きがリアルタイムで適正且つ確実に修正されることとなり、その結果、縫製中の生地Wはミシン2の針落部3に対して真っ直ぐに送り込まれるものとなる。
【0048】
従って、生地Wの側縁部に形成された折返し辺部Waなどが、ミシン2によって正確に縫製されることになる。
ミシン2による縫製が完了し、ミシン2が停止すると、生地さばき機構7が移動駆動部47を作動させ、昇降駆動部46と共に生地押圧部材45をミシン2の下流側へ突出させる。なお、この移動駆動部47の作動は、ミシン2が縫製作業中であるときに行わせてもよい。
【0049】
この状態で、生地さばき機構7は昇降駆動部46を下降動作させ、生地押圧部材45で生地Wを生地テーブル5上へ押圧する状態とさせる。
次に、生地さばき機構7は、生地押圧部材45が下降した状態を維持させたまま、再び移動駆動部47を作動させ、生地押圧部材45を送り方向Xに沿って引き込ませるように
する。これにより縫製が完了した生地Wの尾端側をミシン2の正面から迅速且つ確実に払い出すことができ、次サイクルでミシン2へ導入される生地Wと接触したり、錯綜したりするおそれがなくなる。
【0050】
この後、生地さばき機構7は昇降駆動部46を上昇動作させて生地押圧部材45を元の上方待機位置へと戻し、生地供給装置1としての1サイクル動作が終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明に係る生地供給装置1は、生地Wをミシン2へ送り込む作業を自動化するような場合にあって、送り込みの途中で生地Wに弛み皺を発生させることがなく、またミシン2の針落部3(縫製作業位置)に対して生地Wを真っ直ぐに送り込むことが確実に行えるようになる。
【0051】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、生地Wに対してその側縁部に折返し辺Waを形成させることは限定されるものではない。また、生地Wの材質は何ら限定されるものではなく、編地でも織地でもよいし、不織布などでもよい。また天然素材でも化繊素材でもよい。
【0052】
中間送り機構6において、送りローラ10は、回転軸方向の長さを生地Wの大きさに合わせて同等程度に形成させるのが好適である。しかし、必ずしも、生地Wの大きさ全体に行き渡らせる必要はなく、リング状等の短いローラによって送りローラ10を形成してもよい。また、回転軸方向に沿って複数のリング状ローラを設けることで送りローラ10を形成させることもできる。
【0053】
中間送り機構6は、尾端追い込み機構8が尾端押圧部材52をミシン2へ向けて移動させたときに、尾端押圧部材52が送りローラ10と接触干渉するおそれがあるような場合には、この接触干渉が起こる前に、予め、送りローラ10を上昇待避させるような動作パターンを組み込むようにすればよい。また、場合によっては、中間送り機構6の全体として、出入り方向Yに沿って生地テーブル5から後退させる(図2の上方へ移動させる)構成としてもよい。
【0054】
生地さばき機構7は、図1及び図2に示した位置よりも、送り方向Xの上流側(各図の右側)へ取付位置をずらして取り付けると、次のような使用も可能となる。すなわち、ミシン2に対して下流側となる位置で生地テーブル5上に生地Wが供給された後、中間送り機構6が送りローラ10を下降させる前に、生地Wにおいてミシン2の針落部3から近い位置にある生地端(図1、図2の各左端側)をミシン2の針落部3へと導入させる(引き込む)ようにすることができる。
【0055】
従来の生地供給装置に装備されていた追従部材の場合と同様に、尾端追い込み機構8において、尾端押圧部材52を出入り方向Yに移動できるように構成させることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 生地供給装置
2 ミシン(生地処理装置の一例)
2a ミシン針
2b 押さえ板
3 針落部(生地処理装置における処理作業位置の一例)
5 生地テーブル
6 中間送り機構
7 生地さばき機構
8 尾端追い込み機構
10 送りローラ
11 ローラ駆動部
12 ローラ昇降部
13 出入り調節機構
16 ローラブラケット
18 伝動手段
19 モータ
21 ガイドレール
22 スライダ
24 モータ台
25 モータ
26 ラックレール
27 ピニオンギヤ
28 リニアガイド
32 側縁成形部
33 折幅検出部
35 生地受台
36 折ガイド
37 エア噴出孔
38 隙間調整部
40 駆動具
41 寄せ板
42 センサ
45 生地押圧部材
46 昇降駆動部
47 移動駆動部
48 ブラケット
52 尾端押圧部材
53 昇降駆動部
54 移動駆動部
S 隙間
W 生地
Wa 折返し辺部
X 送り方向
Y 出入り方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地処理装置の処理作業位置に向けて連設状に設置される生地テーブルと、
前記生地処理装置へ生地を送り込む中間送り機構と、を有しており、
前記中間送り機構は、
生地を前記生地テーブル上へ押さえ付けながら駆動回転する送りローラと、
この送りローラを生地テーブル上の生地に対して送り方向と交差する方向で出入り移動させる出入り調節機構と、
を有していることを特徴とする生地供給装置。
【請求項2】
前記生地における送り方向の尾端側を前記生地テーブル上へ押し付けながら、前記中間送り機構の送り駆動と共同しつつ生地処理装置へ向けて滑らせる尾端追い込み機構を有していることを特徴とする請求項1記載の生地供給装置。
【請求項3】
前記出入り調節機構は、
生地処理装置へ送り込まれる生地の側縁部に対して送り方向に沿って連続する折返し辺部を形成させる側縁成形部と、
前記側縁成形部で形成された生地の折返し辺部の折幅を検出する折幅検出部と、
を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生地供給装置。
【請求項4】
前記尾端追い込み機構は、
生地を前記生地テーブル上へ押さえ付ける尾端押圧部材と、
前記尾端押圧部材を生地テーブル上で昇降させる昇降駆動部と、
前記尾端押圧部材を前記生地テーブル上に下降させたままで生地処理装置へ向けて移動させる移動駆動部と、
を有していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の生地供給装置。
【請求項5】
前記生地テーブルに支持された生地を生地処理装置の処理作業位置近傍で当該生地テーブル上へ押し付けながら生地処理装置の停止中に送り方向に沿って滑らせる生地さばき機構を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の生地供給装置。
【請求項6】
前記生地さばき機構は、
生地を前記生地テーブル上へ押さえ付ける生地押圧部材と、
前記生地押圧部材を生地テーブル上で昇降させる昇降駆動部と、
前記生地押圧部材を前記生地テーブル上に下降させたままで生地処理装置へ向けて移動させる移動駆動部と、
を有していることを特徴とする請求項5記載の生地供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−90829(P2013−90829A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235057(P2011−235057)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】