説明

産業用ロボット用減速機

【課題】 即時の故障の予知を可能にすることができる産業用ロボット用減速機を提供する。
【解決手段】 減速機は、減速機本体と、減速機本体の潤滑油131aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサ139aとを備えており、潤滑油劣化センサ139aは、白色の光を発する白色LED52と、受けた光の色を検出するRGBセンサ53と、潤滑油131aが侵入するための隙間である油用隙間40aが形成された隙間形成部材40と、白色LED52、RGBセンサ53および隙間形成部材40を支持する支持部材20とを備えており、隙間形成部材40は、白色LED52によって発せられる光を透過させ、油用隙間40aは、白色LED52からRGBセンサ53までの光路上に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、故障の予知が可能である産業用ロボット用減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは、関節部に減速機が使用されており、この減速機の性能によってアームの軌跡の精度などが大きく左右される。したがって、産業用ロボット用減速機は、性能が落ちた場合に適切に交換されることが大切である。しかしながら、産業用ロボット用減速機が交換される場合、その産業用ロボット用減速機を備えている産業用ロボットや、その産業用ロボットが設置されている生産ラインが停止されなければならない。そこで、産業用ロボット用減速機の交換時期を把握するために、産業用ロボット用減速機の故障が適切に予知されることは非常に重要である。
【0003】
従来、産業用ロボット用減速機の故障を予知する技術として、減速機の潤滑油をサンプリングしてその鉄粉濃度を磁気的に検出し、検出した鉄粉濃度に基づいて減速機の故障を予知する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4523977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術は、減速機から潤滑油を抜き取って鉄粉量を検出する必要があり、即時性に欠けるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、即時の故障の予知を可能にすることができる産業用ロボット用減速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の産業用ロボット用減速機は、減速機本体と、前記減速機本体の潤滑油の劣化を検出するための潤滑油劣化センサとを備えており、前記潤滑油劣化センサは、光を発する発光素子と、受けた光の色を検出するカラー受光素子と、前記潤滑油が侵入するための隙間である油用隙間が形成された隙間形成部材と、前記発光素子、前記カラー受光素子および前記隙間形成部材を支持する支持部材とを備えており、前記隙間形成部材は、前記発光素子によって発せられる光を透過させ、前記油用隙間は、前記発光素子から前記カラー受光素子までの光路上に配置されていることを特徴とする。
【0008】
この構成により、潤滑油劣化センサは、発光素子によって発せられた光のうち油用隙間において潤滑油中の鉄粉などの汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、カラー受光素子によって色を検出するので、減速機本体の潤滑油中の汚染物質の色を即時に検出することができる。つまり、潤滑油劣化センサは、カラー受光素子によって検出した色に基づいて減速機本体の潤滑油中の汚染物質の種類および量を即時に特定可能にすることができる。したがって、本発明の産業用ロボット用減速機は、即時の故障の予知を可能にすることができる。
【0009】
本発明の産業用ロボット用減速機の前記発光素子は、白色の光を発する白色LEDであっても良い。
【0010】
この構成により、潤滑油劣化センサは、発光素子が例えばLED以外のランプである構成と比較して、小型化することができる。したがって、本発明の産業用ロボット用減速機は、小型化することができる。
【0011】
また、本発明の産業用ロボット用減速機の前記隙間形成部材は、前記光路を曲げる反射面が形成されていても良い。
【0012】
この構成により、潤滑油劣化センサは、発光素子からカラー受光素子までの光路が一直線である構成と比較して、発光素子およびカラー受光素子を近くに配置して全体を小型化することができる。また、潤滑油劣化センサは、隙間形成部材が油用隙間を形成する役割だけでなく、光路を曲げる役割も備えているので、隙間形成部材の代わりに光路を曲げる部材を別途備える構成と比較して、部品点数を減らすことができる。したがって、本発明の産業用ロボット用減速機は、小型化することができるとともに、部品点数を減らすことができる。
【0013】
また、本発明の産業用ロボット用減速機の前記隙間形成部材は、前記光路を90度曲げる前記反射面がそれぞれ形成されている2つの直角プリズムを備えており、前記2つの直角プリズムの前記反射面によって前記光路を180度曲げ、前記油用隙間は、前記2つの直角プリズムの間に形成されていても良い。
【0014】
この構成により、潤滑油劣化センサは、部品点数の少ない簡単な構成で小型化することができる。したがって、本発明の産業用ロボット用減速機は、部品点数の少ない簡単な構成で小型化することができる。
【0015】
また、本発明の産業用ロボット用減速機は、前記光路の少なくとも一部を囲む光路囲み部材を備えており、前記光路囲み部材は、光の反射を防止する処理が表面に施されていても良い。
【0016】
この構成により、潤滑油劣化センサは、不要な反射光をカラー受光素子が受けることを防止するので、不要な反射光をカラー受光素子が受ける構成と比較して、潤滑油中の汚染物質の色の検出精度を向上することができる。したがって、本発明の産業用ロボット用減速機は、故障の予知の精度を向上することができる。
【0017】
また、本発明の産業用ロボット用減速機の前記隙間形成部材のうち前記油用隙間を形成する面は、撥油処理が施されていても良い。
【0018】
この構成により、潤滑油劣化センサは、潤滑油に油用隙間を容易に流通させるので、潤滑油が油用隙間に滞り易い構成と比較して、潤滑油中の汚染物質の色の検出精度を向上することができる。また、潤滑油劣化センサは、油用隙間を形成する面に撥油処理が施されている場合、油用隙間を形成する面に汚れが付着し難いので、潤滑油中の汚染物質の色の検出精度が汚れの付着によって低下することを抑えることができる。したがって、本発明の産業用ロボット用減速機は、故障の予知の精度を向上することができる。
【0019】
本発明の産業用ロボットは、アームと、前記アームの関節部に使用される減速機と、前記減速機の潤滑油の劣化を検出するための潤滑油劣化センサとを備えており、前記潤滑油劣化センサは、光を発する発光素子と、受けた光の色を検出するカラー受光素子と、前記潤滑油が侵入するための隙間である油用隙間が形成された隙間形成部材と、前記発光素子、前記カラー受光素子および前記隙間形成部材を支持する支持部材とを備えており、前記隙間形成部材は、前記発光素子によって発せられる光を透過させ、前記油用隙間は、前記発光素子から前記カラー受光素子までの光路上に配置されていることを特徴とする。
【0020】
この構成により、潤滑油劣化センサは、発光素子によって発せられた光のうち油用隙間において潤滑油中の鉄粉などの汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、カラー受光素子によって色を検出するので、減速機本体の潤滑油中の汚染物質の色を即時に検出することができる。つまり、潤滑油劣化センサは、カラー受光素子によって検出した色に基づいて減速機の潤滑油中の汚染物質の種類および量を即時に特定可能にすることができる。したがって、本発明の産業用ロボットは、即時の故障の予知を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の産業用ロボット用減速機は、即時の故障の予知を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る産業用ロボットの側面図である。
【図2】図1に示す産業用ロボットの関節部の断面図である。
【図3】図2に示す潤滑油劣化センサの正面図である。
【図4】図3に示す潤滑油劣化センサの正面断面図である。
【図5】(a)は、図3に示す支持部材の正面図である。(b)は、図3に示す支持部材の正面断面図である。
【図6】(a)は、図3に示す支持部材の側面図である。(b)は、図3に示す支持部材の側面断面図である。
【図7】(a)は、図3に示す支持部材の平面図である。(b)は、図3に示す支持部材の底面図である。
【図8】(a)は、図3に示すホルダの正面図である。(b)は、図3に示すホルダの正面断面図である。
【図9】(a)は、図3に示すホルダの側面図である。(b)は、図3に示すホルダの側面断面図である。
【図10】(a)は、図3に示すホルダの平面図である。(b)は、図3に示すホルダの底面図である。
【図11】図4に示す白色LEDからRGBセンサまでの光路を示す図である。
【図12】(a)は、図3に示すカバーの正面断面図である。(b)は、図3に示すカバーの側面断面図である。
【図13】(a)は、図3に示すカバーの平面図である。(b)は、図3に示すカバーの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
まず、本実施の形態に係る産業用ロボットの構成について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る産業用ロボット100の側面図である。
【0026】
図1に示すように、産業用ロボット100は、床、天井などの設置部分900に取り付けられる取付部111と、アーム112〜116と、取付部111およびアーム112を接続する関節部120と、アーム112およびアーム113を接続する関節部130と、アーム113およびアーム114を接続する関節部140と、アーム114およびアーム115を接続する関節部150と、アーム115およびアーム116を接続する関節部160と、アーム116および図示していないハンドを接続する関節部170とを備えている。
【0027】
図2は、関節部130の断面図である。なお、以下においては、関節部130について説明するが、関節部120、140〜170についても同様である。
【0028】
図2に示すように、関節部130は、アーム112およびアーム113を接続する本発明の産業用ロボット用減速機としての減速機131と、ボルト138aによってアーム112に固定されたモータ138と、減速機131の潤滑油131aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサ139aおよび潤滑油劣化センサ139bとを備えている。
【0029】
減速機131は、減速機本体132と、減速機本体132の潤滑油131aの劣化を検出するための潤滑油劣化センサ137aおよび潤滑油劣化センサ137bとを備えている。
【0030】
減速機本体132は、ボルト133aによってアーム112に固定されたケース133と、ボルト134aによってアーム113に固定された支持体134と、モータ138の出力軸に固定された歯車135aと、減速機131の中心軸の周りに等間隔に3個配置されていて歯車135aと噛み合う歯車135bと、減速機131の中心軸の周りに等間隔に3個配置されていて歯車135bに固定されたクランク軸135cと、ケース133に設けられた内歯歯車と噛み合う2個の外歯歯車136とを備えている。
【0031】
支持体134は、ケース133に軸受133bを介して回転可能に支持されている。ケース133と、支持体134との間には、潤滑油131aの漏れを防止するためのシール部材133cが設けられている。
【0032】
クランク軸135cは、支持体134に軸受134bを介して回転可能に支持されているとともに、外歯歯車136に軸受136aを介して回転可能に支持されている。
【0033】
潤滑油劣化センサ137aおよび潤滑油劣化センサ137bは、ケース133に固定されている。潤滑油劣化センサ139aは、アーム112に固定されている。潤滑油劣化センサ139bは、アーム113に固定されている。
【0034】
図3は、潤滑油劣化センサ139aの正面図である。図4は、アーム112に取り付けられた状態での潤滑油劣化センサ139aの正面断面図である。なお、以下においては、潤滑油劣化センサ139aについて説明するが、潤滑油劣化センサ137a、137b、139bなど、潤滑油劣化センサ139a以外の潤滑油劣化センサについても同様である。
【0035】
図3および図4に示すように、潤滑油劣化センサ139aは、潤滑油劣化センサ139aの各部品を支持するアルミニウム合金製の支持部材20と、支持部材20にネジ11によって固定されたアルミニウム合金製のホルダ30と、ホルダ30に保持された隙間形成部材40と、支持部材20にネジ12によって固定された回路基板51を備えている電子部品群50と、支持部材20にネジ13によって固定されたアルミニウム合金製のカバー60とを備えている。
【0036】
隙間形成部材40は、2つのガラス製の直角プリズム41、42によって構成されており、潤滑油131aが侵入するための隙間である油用隙間40aが2つの直角プリズム41、42の間に形成されている。
【0037】
電子部品群50は、回路基板51に実装された白色LED52と、回路基板51に実装されたRGBセンサ53と、回路基板51に対して白色LED52およびRGBセンサ53側とは反対側に配置された回路基板54と、回路基板51および回路基板54を固定する複数本の柱55と、回路基板54に対して回路基板51側とは反対側に配置された回路基板56と、回路基板54および回路基板56を固定する複数本の柱57と、回路基板54側とは反対側に回路基板56に実装されたコネクタ58とを備えている。回路基板51、回路基板54および回路基板56は、複数の電子部品が実装されている。また、回路基板51、回路基板54および回路基板56は、互いに電気的に接続されている。
【0038】
潤滑油劣化センサ139aは、支持部材20およびアーム112の間からの潤滑油131aの漏れを防止するOリング14と、支持部材20およびホルダ30の間からの潤滑油131aの漏れを防止するOリング15とを備えている。
【0039】
図5(a)は、支持部材20の正面図である。図5(b)は、支持部材20の正面断面図である。図6(a)は、支持部材20の側面図である。図6(b)は、支持部材20の側面断面図である。図7(a)は、支持部材20の平面図である。図7(b)は、支持部材20の底面図である。
【0040】
図3〜図7に示すように、支持部材20は、アーム112のネジ穴112aに固定されるためのネジ部21と、アーム112のネジ穴112aに対してネジ部21が回転させられるときに工具によって掴まれるための八角形状の工具接触部22と、ホルダ30が収納されるホルダ収納部23とを備えている。また、支持部材20は、白色LED52が挿入される穴24と、RGBセンサ53が挿入される穴25と、ネジ11が挿入されるための2つの穴26と、ネジ12がねじ込まれるための2つのネジ穴27と、ネジ13がねじ込まれるための2つのネジ穴28とが形成されている。
【0041】
なお、支持部材20は、回路基板51を介して白色LED52およびRGBセンサ53を支持している。また、支持部材20は、ホルダ30を介して隙間形成部材40を支持している。
【0042】
図8(a)は、ホルダ30の正面図である。図8(b)は、ホルダ30の正面断面図である。図9(a)は、ホルダ30の側面図である。図9(b)は、ホルダ30の側面断面図である。図10(a)は、ホルダ30の平面図である。図10(b)は、ホルダ30の底面図である。図11は、白色LED52からRGBセンサ53までの光路10aを示す図である。
【0043】
図3、図4および図8〜図11に示すように、ホルダ30は、直角プリズム41が収納されるプリズム収納部31と、直角プリズム42が収納されるプリズム収納部32と、白色LED52が収納されるLED収納部33とを備えている。また、ホルダ30は、RGBセンサ53用の穴34と、プリズム収納部31およびLED収納部33を連通する穴35と、プリズム収納部32および穴34を連通する穴36と、ネジ11がねじ込まれるための2つのネジ穴37と、Oリング15が嵌る溝38と、プリズム収納部31に直角プリズム41を固定する接着剤が穴35に浸入することを防止するための環状の溝39aと、プリズム収納部32に直角プリズム42を固定する接着剤が穴36に浸入することを防止するための環状の溝39bとが形成されている。
【0044】
プリズム収納部31は、直角プリズム41を挟み込む2つの壁31aを備えており、壁31aにおいて接着剤によって直角プリズム41を固定している。プリズム収納部32は、直角プリズム42を挟み込む2つの壁32aを備えており、壁32aにおいて接着剤によって直角プリズム42を固定している。
【0045】
ホルダ30は、LED収納部33、穴35、プリズム収納部31、プリズム収納部32、穴36および穴34によって、白色LED52からRGBセンサ53までの光路10aの少なくとも一部を囲んでおり、本発明の光路囲み部材を構成している。
【0046】
ホルダ30は、例えば艶消しの黒アルマイト処理のように、光の反射を防止する処理が表面に施されている。
【0047】
図11に示すように、隙間形成部材40の油用隙間40aは、白色LED52からRGBセンサ53までの光路10a上に配置されている。
【0048】
直角プリズム41、42は、白色LED52によって発せられる光を透過させる。直角プリズム41は、白色LED52によって発せられる光が入射する入射面41aと、入射面41aから入射した光を反射して光の進行方向を90度曲げる反射面41bと、反射面41bで反射した光が出射する出射面41cとが形成されている。直角プリズム42は、直角プリズム41の出射面41cから出射した光が入射する入射面42aと、入射面42aから入射した光を反射して光の進行方向を90度曲げる反射面42bと、反射面42bで反射した光が出射する出射面42cとが形成されている。
【0049】
直角プリズム41の入射面41a、反射面41bおよび出射面41cと、直角プリズム42の入射面42a、反射面42bおよび出射面42cとは、光学研磨されている。また、直角プリズム41の反射面41bと、直角プリズム42の反射面42bとは、アルミ蒸着膜が施されている。そして、硬度や密着力が弱いアルミ蒸着膜を保護するために、SiO膜がアルミ蒸着膜上に更に施されている。
【0050】
光路10aは、直角プリズム41の反射面41bで90度曲げられていて、直角プリズム42の反射面42bでも90度曲げられている。すなわち、光路10aは、隙間形成部材40によって180度曲げられている。
【0051】
直角プリズム41の出射面41cと、直角プリズム42の入射面42aとの距離、すなわち、油用隙間40aの長さは、例えば1mmである。油用隙間40aの長さが短過ぎる場合、潤滑油131a中の汚染物質が油用隙間40aを適切に流通し難いので、潤滑油131a中の汚染物質の色の検出精度が落ちる。一方、油用隙間40aの長さが長過ぎる場合、白色LED52から発せられた光が油用隙間40a内の潤滑油131a中の汚染物質によって吸収され過ぎてRGBセンサ53まで届き難いので、やはり潤滑油131a中の汚染物質の色の検出精度が落ちる。したがって、油用隙間40aの長さは、潤滑油131a中の汚染物質の色の検出精度が高くなるように、適切に設定されることが好ましい。
【0052】
白色LED52は、白色の光を発する電子部品であり、本発明の発光素子を構成している。白色LED52として、例えば、日亜化学工業株式会社製のNSPW500GS-K1が使用されても良い。
【0053】
RGBセンサ53は、受けた光の色を検出する電子部品であり、本発明のカラー受光素子を構成している。RGBセンサ53として、例えば、浜松ホトニクス株式会社製のS9032-02が使用されても良い。
【0054】
図4に示すように、コネクタ58は、潤滑油劣化センサ139aの外部の装置のコネクタ95が接続されて、外部の装置からコネクタ95を介して電力が供給されるとともに、潤滑油劣化センサ139aの検出結果を電気信号としてコネクタ95を介して外部の装置に出力するようになっている。
【0055】
図12(a)は、カバー60の正面断面図である。図12(b)は、カバー60の側面断面図である。図13(a)は、カバー60の平面図である。図13(b)は、カバー60の底面図である。
【0056】
図3、図4、図12および図13に示すように、カバー60は、コネクタ58が挿入される穴61と、ネジ13が挿入されるための2つの穴62とが形成されている。
【0057】
カバー60は、例えば艶消しの黒アルマイト処理のように、光の反射を防止する処理が表面に施されている。
【0058】
次に、潤滑油劣化センサ139aの組立方法について説明する。なお、以下においては、潤滑油劣化センサ139aについて説明するが、潤滑油劣化センサ137a、137b、139bなど、潤滑油劣化センサ139a以外の潤滑油劣化センサについても同様である。
【0059】
まず、ホルダ30のプリズム収納部31うち直角プリズム41の入射面41aと接触する面であって溝39aの外周側の面と、直角プリズム41の面のうちプリズム収納部31の2つの壁31aとそれぞれ接触する2つの面とに接着剤が塗られ、その接着剤によってプリズム収納部31に直角プリズム41が固定される。また、ホルダ30のプリズム収納部32うち直角プリズム42の出射面42cと接触する面であって溝39bの外周側の面と、直角プリズム42の面のうちプリズム収納部32の2つの壁32aとそれぞれ接触する2つの面とに接着剤が塗られ、その接着剤によってプリズム収納部32に直角プリズム42が固定される。また、ホルダ30のLED収納部33に白色LED52が接着剤によって固定される。
【0060】
次いで、Oリング15が取り付けられたホルダ30が、Oリング14が取り付けられた支持部材20のホルダ収納部23にネジ11によって固定される。
【0061】
次いで、回路基板51、RGBセンサ53、コネクタ58など、白色LED52を除く各種の電子部品が予め組み上げられた電子部品群50が支持部材20にネジ12によって固定され、白色LED52が回路基板51にハンダによって固定される。
【0062】
最後に、カバー60が支持部材20にネジ13によって固定される。
【0063】
次に、アーム112への潤滑油劣化センサ139aの設置方法について説明する。なお、以下においては、潤滑油劣化センサ139aについて説明するが、潤滑油劣化センサ137a、137b、139bなど、潤滑油劣化センサ139a以外の潤滑油劣化センサについても同様である。
【0064】
まず、支持部材20の工具接触部22が工具によって掴まれて、アーム112のネジ穴112aに支持部材20のネジ部21がねじ込まれることによって、アーム112に潤滑油劣化センサ139aが固定される。
【0065】
そして、潤滑油劣化センサ139aの外部の装置のコネクタ95がコネクタ58に接続される。
【0066】
次に、産業用ロボット100の動作について説明する。
【0067】
まず、関節部130の動作について説明する。なお、以下においては、関節部130について説明するが、関節部120、140〜170についても同様である。
【0068】
関節部130のモータ138の出力軸が回転すると、モータ138の回転力は、減速機131によって減速されて、減速機131のケース133に固定されたアーム112に対して、減速機131の支持体134に固定されたアーム113を動かす。
【0069】
次に、潤滑油劣化センサ139aの動作について説明する。なお、以下においては、潤滑油劣化センサ139aについて説明するが、潤滑油劣化センサ137a、137b、139bなど、潤滑油劣化センサ139a以外の潤滑油劣化センサについても同様である。
【0070】
潤滑油劣化センサ139aは、コネクタ58を介して外部の装置から供給される電力によって白色LED52から白色の光を発する。
【0071】
そして、潤滑油劣化センサ139aは、RGBセンサ53によって受けた光のRGBの各色の光量を電気信号としてコネクタ58を介して外部の装置に出力する。
【0072】
なお、潤滑油劣化センサ139aは、RGBセンサ53以外のセンサを別途搭載していても良い。例えば、潤滑油劣化センサ139aは、潤滑油131aの温度を検出する温度センサが電子部品群50に含まれている場合には、温度センサによって検出された温度も電気信号としてコネクタ58を介して外部の装置に出力することができる。
【0073】
以上に説明したように、潤滑油劣化センサ139aなどの各潤滑油劣化センサは、白色LED52によって発せられた白色の光のうち油用隙間40aにおいて潤滑油131a中の汚染物質によって吸収されなかった波長の光に対して、RGBセンサ53によって色を検出するので、減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の色を即時に検出することができる。つまり、各潤滑油劣化センサは、RGBセンサ53によって検出した色に基づいて減速機131の潤滑油131a中の汚染物質の種類および量をコンピュータなどの外部の装置によって即時に特定可能にすることができる。したがって、減速機131などの各減速機および産業用ロボット100は、即時の故障の予知を可能にすることができる。なお、各潤滑油劣化センサは、RGBセンサ53によって検出した色に基づいて潤滑油中の汚染物質の種類および量を特定する電子部品が電子部品群50に含まれていても良い。
【0074】
潤滑油131aには、摩擦面の摩擦を低減するためのMoDTC、MoDTPなどの有機モリブデンなどの摩擦低減剤、摩擦面の焼き付きを抑える性能である極圧性を向上するためのSP系添加剤などの極圧添加剤、スラッジの発生や付着を抑えるためのCaスルフォネートなどの分散剤など、各種の添加剤が添加される場合がある。これらの添加剤は、潤滑油131aの劣化とともに、沈降して潤滑油131aから分離される。つまり、潤滑油131a中の添加剤の減少量は、各減速機および産業用ロボット100の故障の予知に活用されることができる。各潤滑油劣化センサは、潤滑油131a中の鉄粉の量だけでなく、潤滑油131aに添加されている各種の添加剤の減少に伴う基油の劣化度やスラッジ等の汚染物質の増加を、検出した色に基づいて特定することができる。したがって、各減速機および産業用ロボット100は、鉄粉濃度のみに基づいて減速機の故障を予知する従来の技術と比較して、故障の予知の精度を向上することができる。
【0075】
また、各潤滑油劣化センサは、発光素子が白色の光を発する白色LEDであるので、発光素子が例えばLED以外のランプである構成と比較して、小型化することができる。したがって、各減速機および産業用ロボット100は、小型化することができる。なお、本発明の発光素子は、白色LED以外のものであっても良い。例えば、発光素子は、LED以外のランプであっても良い。また、発光素子は、赤色のLED、あるいは、LED以外の赤色のランプと、緑色のLED、あるいは、LED以外の緑色のランプと、青色のLED、あるいは、LED以外の青色のランプとを備えており、それらのLED、あるいは、LED以外のランプから発せられる各色の光を合成して白色の光を発するものであっても良い。
【0076】
また、各潤滑油劣化センサは、隙間形成部材40に光路10aを曲げる反射面41b、42bが形成されているので、白色LED52からRGBセンサ53までの光路10aが一直線である構成と比較して、白色LED52およびRGBセンサ53を近くに配置して全体を小型化することができる。また、各潤滑油劣化センサは、隙間形成部材40が油用隙間40aを形成する役割だけでなく、光路10aを曲げる役割も備えているので、隙間形成部材40の代わりに光路10aを曲げる部材を別途備える構成と比較して、部品点数を減らすことができる。したがって、各減速機および産業用ロボット100は、小型化することができるとともに、部品点数を減らすことができる。
【0077】
特に、各潤滑油劣化センサは、光路10aを90度曲げる反射面41b、42bがそれぞれ形成されている2つの直角プリズム41、42によって隙間形成部材40が構成されており、2つの直角プリズム41、42の反射面41b、42bによって光路10aを180度曲げ、2つの直角プリズム41、42の間に油用隙間40aが形成されている構成であるので、部品点数の少ない簡単な構成で小型化することができる。したがって、各減速機および産業用ロボット100は、部品点数の少ない簡単な構成で小型化することができる。
【0078】
また、各潤滑油劣化センサは、光路10aの少なくとも一部を囲むホルダ30を備えており、光の反射を防止する処理がホルダ30の表面に施されている構成であるので、不要な反射光をRGBセンサ53が受けることを防止することができる。そのため、各潤滑油劣化センサは、不要な反射光をRGBセンサ53が受ける構成と比較して、潤滑油131a中の汚染物質の色の検出精度を向上することができる。したがって、各減速機および産業用ロボット100は、故障の予知の精度を向上することができる。
【0079】
また、各潤滑油劣化センサは、隙間形成部材40のうち油用隙間40aを形成する面、すなわち、直角プリズム41の出射面41cおよび直角プリズム42の入射面42aに撥油処理が施されていても良い。各潤滑油劣化センサは、直角プリズム41の出射面41cおよび直角プリズム42の入射面42aに撥油処理が施されている場合、潤滑油131aに油用隙間40aを容易に流通させるので、潤滑油131aが油用隙間40aに滞り易い構成と比較して、潤滑油131a中の汚染物質の色の検出精度を向上することができる。また、各潤滑油劣化センサは、直角プリズム41の出射面41cおよび直角プリズム42の入射面42aに撥油処理が施されている場合、直角プリズム41の出射面41cおよび直角プリズム42の入射面42aに汚れが付着し難いので、潤滑油131a中の汚染物質の色の検出精度が汚れの付着によって低下することを抑えることができる。したがって、各減速機および産業用ロボット100は、故障の予知の精度を向上することができる。
【0080】
なお、各潤滑油劣化センサは、白色LED52およびRGBセンサ53の配置が本実施の形態において説明した配置以外の配置であっても良い。例えば、各潤滑油劣化センサは、白色LED52からRGBセンサ53までの光路10aが一直線であっても良い。
【0081】
また、各潤滑油劣化センサは、直角プリズム以外の構成によって、光路10aを曲げるようになっていても良い。
【0082】
また、各潤滑油劣化センサは、電力の供給手段として、例えば、電池などのバッテリーを使用し、外部の装置への検出結果の出力手段として、例えば、ワイヤレス通信を使用しても良い。
【0083】
また、潤滑油劣化センサの設置位置は、本実施の形態において示した位置に限らず、産業用ロボット100の用途などに合わせて適宜設定されることが好ましい。
【符号の説明】
【0084】
10a 光路
20 支持部材
30 ホルダ(光路囲み部材)
40 隙間形成部材
40a 油用隙間
41 直角プリズム
41b 反射面
41c 出射面(油用隙間を形成する面)
42 直角プリズム
42a 入射面(油用隙間を形成する面)
42b 反射面
52 白色LED(発光素子)
53 RGBセンサ(カラー受光素子)
100 産業用ロボット
112〜116 アーム
120、130、140、150、160、170 関節部
131 減速機(産業用ロボット用減速機)
131a 潤滑油
132 減速機本体
137a、137b、139a、139b 潤滑油劣化センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機本体と、前記減速機本体の潤滑油の劣化を検出するための潤滑油劣化センサとを備えており、
前記潤滑油劣化センサは、光を発する発光素子と、受けた光の色を検出するカラー受光素子と、前記潤滑油が侵入するための隙間である油用隙間が形成された隙間形成部材と、前記発光素子、前記カラー受光素子および前記隙間形成部材を支持する支持部材とを備えており、
前記隙間形成部材は、前記発光素子によって発せられる光を透過させ、
前記油用隙間は、前記発光素子から前記カラー受光素子までの光路上に配置されていることを特徴とする産業用ロボット用減速機。
【請求項2】
前記発光素子は、白色の光を発する白色LEDであることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット用減速機。
【請求項3】
前記隙間形成部材は、前記光路を曲げる反射面が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボット用減速機。
【請求項4】
前記隙間形成部材は、前記光路を90度曲げる前記反射面がそれぞれ形成されている2つの直角プリズムを備えており、前記2つの直角プリズムの前記反射面によって前記光路を180度曲げ、
前記油用隙間は、前記2つの直角プリズムの間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の産業用ロボット用減速機。
【請求項5】
前記光路の少なくとも一部を囲む光路囲み部材を備えており、
前記光路囲み部材は、光の反射を防止する処理が表面に施されていることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の産業用ロボット用減速機。
【請求項6】
前記隙間形成部材のうち前記油用隙間を形成する面は、撥油処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の産業用ロボット用減速機。
【請求項7】
アームと、前記アームの関節部に使用される減速機と、前記減速機の潤滑油の劣化を検出するための潤滑油劣化センサとを備えており、
前記潤滑油劣化センサは、光を発する発光素子と、受けた光の色を検出するカラー受光素子と、前記潤滑油が侵入するための隙間である油用隙間が形成された隙間形成部材と、前記発光素子、前記カラー受光素子および前記隙間形成部材を支持する支持部材とを備えており、
前記隙間形成部材は、前記発光素子によって発せられる光を透過させ、
前記油用隙間は、前記発光素子から前記カラー受光素子までの光路上に配置されていることを特徴とする産業用ロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−143837(P2012−143837A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3853(P2011−3853)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】