説明

産業車両

【課題】 車輪の回転に利用できるスペースを確保しやすく、しかも、アクスル装置を確実に支持することができるようにする。
【解決手段】 車体1は、前後方向へ延設されたフレーム11と、フレーム11の端部から上方へ突設されたサポート13と、サポート13から前方向へ離間した位置でフレームから上方へ突設されたサポート12とを備える。アクスル装置20は、両サポート12,13の間に配置され、フレーム11よりも上方位置で両サポート12,13によりその前後を支持されると共に、フレーム11よりも下方位置で左右の車輪5を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は産業車両に関し、特に車輪を支持するアクスル装置の車体への取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトのような産業車両では、車両の旋回半径を小さくすることが試みられており、下記特許文献に示すような車輪の回転角度を大きくしたアクスル装置が提案されている。
このようなアクスル装置は、特許文献1に記述されているように、アクスル装置が備えるピンを介して車体に取り付けられる他、特許文献2に示されているように、アクスル装置の貫通孔に車体から延びるピンを挿入して車体に取り付けられる。尚、アクスル装置が備えるピン(軸)を介した車体への取り付け構造の具体例としては、特許文献3に示すように、車体フレームの下面に設けられた前後一対の軸受にてピン(軸)を支持するものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−1179号公報
【特許文献2】特表2003−531075号公報
【特許文献3】特開2003−11630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、アクスル装置において、車輪の回転角度を大きくするには、車輪を回転させる機構もさることながら、車輪の回転に利用できるスペースを確保することが重要である。従って、特許文献3に示すように、車体フレームの下方にアクスル装置が配置されるレイアウトの場合、そのままではスペースの確保が難しいという問題が生じやすい。
【0005】
そこで本発明は、車輪の回転に利用できるスペースを確保しやすく、しかも、アクスル装置を確実に支持することができる取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、車体に、左右の車輪をそれぞれ回転可能に支持するアクスル装置を取り付けた産業車両であって、上記車体は、前後方向へ延設されたフレームと、該フレームの端部から上方へ突設された第1サポートと、該第1サポートから前後方向へ離間した位置で上記フレームから上方へ突設された第2サポートとを備えており、上記アクスル装置は、上記第1及び第2サポートの間に配置され、上記フレームよりも上方位置で上記両サポートによりその前後を支持されると共に、上記フレームよりも下方位置で上記両車輪を支持することを特徴とする構成としている。
【0007】
このような本発明によれば、フレームよりも上方でアクスル装置が支持され、又、アクスル装置がフレームよりも下方位置で左右両車輪を支持するので、フレーム下方のスペースで両車輪を回転させることができるようになる。もちろん、アクスル装置はその前後を第1及び第2サポートで支持されるので、車体に確実に取り付けられる。
尚、第1及び第2サポートによりアクスル装置を支持する構成としては、アクスル装置に設けられた軸部を各サポートに設けられた軸受部に挿入し支持するものや、アクスル装置に設けられた軸受部に各サポートに設けられた軸部を挿入し支持するもの、アクスル装置及び各サポートに設けられた軸受部にこれらとは別個の軸体を挿入し支持するものなどを採用することができる。
【0008】
上記の構成においては、上記第1サポートは、上記フレーム端部に下方から当接させて固定する取付部と、該取付部が固定された状態で上記フレームよりも上方へ突出し、上記アクスル装置を支持する支持部とを備えるものとすることができる。
【0009】
このようにすれば、第1サポートを、その取付部をフレームに下方から当接させて固定するので、アクスル装置を介して支持部に上向きの力が作用してもそれをフレームで受け止めることができる。従って、アクスル装置を強固に支持でき、又、第1サポートとフレームの固定部分にも大きな負担がかからない。
【0010】
又、上記の構成においては、上記フレーム端部には少なくとも下方へ開口した螺旋孔が形成されると共に、上記第1サポートの取付部には貫通孔が形成され、上記フレーム端部の下面に上記取付部の上面を接触させた状態で、下方から上記貫通孔に挿入された螺旋体を上記螺旋孔に螺着させて、上記フレーム端部に上記第1サポートが固定されるものとすることができる。
【0011】
このようにすれば、螺旋体(ボルトなど)を用いているので、第1サポートとフレームとを比較的簡単に固定することができ、又、メンテナンス時など必要に応じて螺旋体を螺旋孔から離脱させれば、固定を解除することもできる。更に、アクスル装置を介して第1サポートに上向きの力が作用しても螺旋体及び螺旋孔には大きな負担がかからないので、これらについては特に堅強なものとしなくてよい。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、本発明によれば、フレーム下方を車輪の回転スペースとして利用できるようになり、又、第1及び第2サポートを介してアクスル装置を確実に車体に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をフォークリフトに適用した実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、この実施例に係るフォークリフトは、車体1の前方にマスト装置2が設けられ、このマスト装置2に昇降可能に支持されたフォーク3にて荷物を取り扱う。又、車体1前部の下方には左右の前輪4が、車体1後部の下方には左右の後輪5が設けられており、後輪5の上方にウエイト6が設けられている。更に、車体1の前後中央部にはバッテリ7が設けられ、その上方には運転者が着座するシート8が、シート8と対向する車体1前部にはハンドル9などの操作装置がそれぞれ設けられている。
【0015】
図2に示すように、車体1にはバッテリ7が収容されるバッテリ室が形成されており、バッテリ室の後壁をなす立設されたプレート10から後方へ向けてフレーム11が突設されている。このフレーム11に前後に離間してサポート12及びサポート13が設けられ、これらサポート12,13を介して後輪5を支持する後輪用アクスル装置20が車体1に取り付けられる。
【0016】
図2と図3に示すように、後輪用アクスル装置20は、サポート12,13により支持されるボディ21と、ボディ21に縦軸回りに回転可能に支持される左右のブラケット22と、各ブラケット22に横軸回りに回転可能に支持されるハブ23と、各ブラケット22に固定され、一体的に回転可能なナックル24と、ボディ21に取り付けられ、両ナックル24と連結されたロッドが左右方向へ移動可能なシリンダ25と、シリンダ25と連結され、ロッドを駆動するモータ26とを備えている。そして、各ハブ23に後輪5が固定されることで、後輪用アクスル装置20に後輪5が支持される。
【0017】
ブラケット22は、上部が軸方向を上下に向けたシャフトに形成されると共に、下部が軸方向を外方に向けたシャフトに形成されており、上部シャフトがボディ21にベアリングを介して支持され、下部シャフトにハブ23がベアリングを介して支持される。尚、図3に示すように、後輪用アクスル装置20が車体1に取り付けられた状態で、下部シャフトがフレーム11よりも下方位置となるようにブラケット22は形成される。そして、走行時には、ハブ23と後輪5とが一体的に下部シャフトの軸心回りに回転する。
上部シャフトにはナックル24が固定され、モータ26によりシリンダ25のロッドが移動すると、ナックル24が上部シャフトの軸心回りに回転する。これによりブラケット22全体が回転し、ハブ23、延いては後輪5も一体的に回転する。尚、モータ26は、バッテリ7から電力供給がなされるようになっており、ハンドル9の操作に応じて車体1に設けられた制御装置(図示せず)によりその出力が制御される。
【0018】
さて、図4に示すように、ボディ21は、左右のブラケット22の上部シャフトを支持する軸受部21Aと、前方及び後方へそれぞれ突設された軸部21Bとを備える。各軸受部21Aには上部シャフトが通される孔が上下に貫通して形成されており、上部シャフトの、この孔から上方へ突出した部分にナックル24が固定される。又、各軸部21Bはボディ21の左右方向中央に設けられており、前方へ突出した軸部21Bがサポート12に支持され、後方へ突出した軸部21Bがサポート13に支持される。これにより、ボディ21、延いては後輪用アクスル装置20が車体1に取り付けられる。
【0019】
図3に示すように、フレーム11は、プレート10の左右方向中央で、プレート10の下端よりもある程度上方に設けられており、プレート10よりも左右に幅狭の平板状に形成されている。図5に示すように、フレーム11の後端部には後方へ向けて開口させて凹状に切欠き11Aが形成されており、切欠き11Aの左右両側に1箇所ずつ螺旋孔11Bが上下に貫通して形成されている。
【0020】
又、図5に示すように、サポート12は、切欠き11Aよりも前方位置でフレーム11の上面に固定されており、その左右方向中央に貫通孔12Aが前後に貫通して形成されている。この貫通孔12Aにボディ21の前側の軸部21Bが挿入され、支持される。尚、後輪用アクスル装置20を車体1に取り付ける際は、サポート13のフレーム11への固定に先立って貫通孔12Aへ軸部21Bが挿入される。
サポート13は、逆T字形に形成されており、左右に突出した取付部13Aを備えている。各取付部13Aには貫通孔13Bが上下に貫通して形成されており、この貫通孔13Bに取り付け用のボルト14が通される。又、サポート13は、上方へ突出した支持部13Cを備え、支持部13Cの左右方向中央には貫通孔13Dが前後に貫通して形成されている。この貫通孔13Dにボディ21の後側の軸部21Bが挿入され、支持される。
【0021】
サポート13の固定の際は、貫通孔13Dに軸部21Bが挿入された状態で、取付部13Aの上面がフレーム11の下面に当接させられ、このとき支持部13Cの下部は切欠き11Aに嵌め合わされる。そのまま、下方より貫通孔13Bを通したボルト14を螺旋孔11Bに螺着させることで、サポート13がフレーム11に固定され、サポート13の、貫通孔13Dを含む上部がフレーム11の上面から突出した状態で保持される。尚、図5において15はワッシャである。
【0022】
こうして、サポート13がフレーム11に固定され、後輪用アクスル装置20が車体1に取り付けられると、図3に示すように、後輪用アクスル装置20はフレーム11よりも上方位置でサポート12,13によりその前後を支持され、フレーム11よりも下方位置で後輪5を支持する。
【0023】
このような実施例によれば、フレーム11の左右で、フレーム11よりも下方に、後輪5の回転に利用できる十分なスペースを容易に確保することができる。又、走行中などに後輪用アクスル装置20を介してサポート13の支持部13Cに上向きの力が作用しても、それをフレーム11で受け止めることができる。従って、後輪用アクスル装置20を強固に車体1に支持でき、又、ボルト14及び螺旋孔11Bにも大きな負担がかからない。更に、ボルト14を用いているので、サポート13とフレーム11とを比較的簡単に固定することができ、又、メンテナンス時など必要に応じてボルト14を螺旋孔11Bから離脱させれば、固定を解除することも比較的簡単に行うことができる。
【0024】
尚、上記の実施例は後輪用アクスル装置20について説明しているが、本発明を適用するアクスル装置は前輪用であっても構わない。又、アクスル装置の構成も上記と同一である必要はなく、例えばモータ26を用いずに油圧にてシリンダ25を駆動するものや、各ナックル24にそれぞれ別個のシリンダを連結したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係るフォークリフトの側面図である。
【図2】本発明の実施例の側面図である。
【図3】本発明の実施例の背面図である。
【図4】本発明の実施例の斜視図である。
【図5】本発明の実施例の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 車体
5 後輪
10 プレート
11 フレーム
11A 切欠き
11B 螺旋孔
12 サポート
12A 貫通孔
13 サポート
13A 取付部
13B 貫通孔
13C 支持部
13D 貫通孔
14 ボルト
20 後輪用アクスル装置
21 ボディ
21B 軸部
22 ブラケット
23 ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に、左右の車輪をそれぞれ回転可能に支持するアクスル装置を取り付けた産業車両であって、
上記車体は、前後方向へ延設されたフレームと、該フレームの端部から上方へ突設された第1サポートと、該第1サポートから前後方向へ離間した位置で上記フレームから上方へ突設された第2サポートとを備えており、
上記アクスル装置は、上記第1及び第2サポートの間に配置され、上記フレームよりも上方位置で上記両サポートによりその前後を支持されると共に、上記フレームよりも下方位置で上記両車輪を支持することを特徴とする産業車両。
【請求項2】
上記第1サポートは、上記フレーム端部に下方から当接させて固定する取付部と、該取付部が固定された状態で上記フレームよりも上方へ突出し、上記アクスル装置を支持する支持部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
上記フレーム端部には少なくとも下方へ開口した螺旋孔が形成されると共に、上記第1サポートの取付部には貫通孔が形成され、
上記フレーム端部の下面に上記取付部の上面を接触させた状態で、下方から上記貫通孔に挿入された螺旋体を上記螺旋孔に螺着させて、上記フレーム端部に上記第1サポートが固定されることを特徴とする請求項2に記載の産業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−6943(P2008−6943A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178660(P2006−178660)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】