説明

用紙重送検知装置、画像形成装置、及び用紙重送検知制御プログラム

【課題】超音波素子の所要のレベル得るための出力を短時間で決定できるようにする。
【解決手段】超音波発信素子を駆動して超音波発信が開始されると(S201)、周波数変調回路から出力される駆動周波数(発信信号)と周波数認識回路から入力される最終受信信号の周波数との差の絶対値と、予め設定された許容誤差αとを比較し(S202)、周波数の差が許容誤差α以上の場合、駆動周波数と最終受信信号周波数とを比較し(S203)、駆動周波数が最終受信信号周波数より小さい場合、駆動周波数をΔf上げ(S204)、駆動周波数が最終受信信号周波数以上の場合、駆動周波数をΔf下げ(S205)、さらに、駆動周波数と最終受信信号周波数を比較し、両者の差の絶対値が許容誤差αより小さくなったときに、重送検知を行う(S206)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙重送検知装置、画像形成装置、及び用紙重送検知制御プログラムに係り、特に、超音波を使用して用紙の重送検知を行う用紙重送検知装置、画像形成装置、及び用紙重送検知制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
用紙が重なったまま搬送されるいわゆる重送が発生することは、無駄紙を発生させ、白紙で出てしまった紙を取り除くための労力を必要とするなどの問題があり、用紙を搬送させる必要のある機器には重送状態を検知する手段が搭載されている。重送検知手段としては一般的に光検知方式が用いられている。これは発光用LEDなどからの光を受光素子で受けてその光量をある閾値と比較することにより用紙が1枚かどうかを判別するものである。しかし、この方式では、予めプリントされた紙や色紙の場合に誤検知してしまうことがある。そこで、近年、超音波を用いた検知方式が用いられるようになっている。
【0003】
超音波素子は駆動周波数と発信用超音波素子(一般に超音波センサと呼ばれる。「センサ」と称しているが、発信側にも受信側にも使用できる)共振周波数との違いにより、さらに発信用超音波素子共振周波数と受信用超音波素子共振周波数の違いによって各波(駆動1波目、2波目と続く各波)による振動波形が打ち消しあう「干渉」という現象が知られている。ここでいう「干渉」とは、駆動波1波ごとにインパルス応答としての振動波が発生し、駆動波周波数とセンサ固有共振周波数が一致していないと各波の振動波同士で波形の打ち消し合いが起きてしまい、受信波の低下が見られるという現象のことである。このような干渉が発生すると、振動波形の積み重ねにより生成される最終出力波形がレベル低下を起こし、所要のレベルが得られないという問題があった。
【0004】
そこで、この問題点に鑑みて特許文献1(特許第4315062号公報)には、駆動周波数/超音波発信素子固有共振周波数/超音波受信素子固有共振周波数の相違による出力低下を補償する目的で、超音波センサの発信周波数を連続的に変化させて出力が閾値より高いかどうかで用紙の重送を判断する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特許第3860126号公報)には、受信波が規定値レベルとなるよう、周波数や駆動パルス振幅を変える技術、例えば、超音波受信手段が出力する超音波受信信号の振幅を増減させて予め定められた規定値となるよう調整するために、超音波受信信号の取得タイミング及び/又は超音波発信手段が発信する超音波の特性をし、調整された超音波受信手段が出力する超音波受信信号の振幅の変化を基に重送であるか否かを解析する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明は、周波数差異による出力バラツキを補償するようになっているが、給紙装置では駆動周波数を掃引する必要があり、そのための時間が必要となる。
【0007】
また、特許文献2記載の発明は、受信波が規定値レベルとなるよう、周波数や駆動パルス振幅を変えるが、出力レベルを上げるため駆動周波数を上げたらいいのか下げたらいいのか制御部はわからないので、駆動周波数を上げたり下げたりという処理を何度も繰り返さねばならなかった。
【0008】
いずれにしても、超音波素子の所要のレベルを得るための出力を決定するのに時間がかかるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、超音波素子の所要のレベル得るための出力を短時間で決定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、第1の手段は、駆動周波数によって駆動され超音波を発信する発信部と、発信部が発信した超音波を受信する受信部と、受信波の周波数を取得する周波数取得手段と、前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも大きい場合には前記駆動周波数を大きくし、前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも小さい場合には前記駆動周波数を小さくするように前記駆動周波数を可変する駆動周波数可変手段と、を備えた用紙重送検知装置を特徴とする。
【0011】
第2の手段は、第1の手段において、前記駆動周波数可変手段は、前記駆動周波数を前記受信波の周波数に変化させることを特徴とする。
【0012】
第3の手段は、第1の手段において、前記駆動周波数可変手段は、前記駆動周波数を徐々に発信部の素子の固有振動数に一致するように変化させることを特徴とする。
【0013】
第4の手段は、第1ないし第3のいずれかの手段において、前記駆動周波数可変手段は受信波の波数が3以上の受信波の周波数に基づいて前記駆動周波数を可変することを特徴とする。
【0014】
第5の手段は、第4の手段において、前記駆動周波数可変手段は、複数の受信波を受信し、その周波数情報から前記駆動周波数を変化させることを特徴とする。
【0015】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段に係る用紙重送検知装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0016】
第7の手段は、第6の手段において、前記駆動周波数可変手段は印刷を実施していない時間帯に前記駆動周波数を可変する処理を実行し、前記発信部はそのときに得た周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として発信することを特徴とする。
【0017】
第8の手段は、第6の手段において、前記駆動周波数可変手段は省エネモード又は省エネモードに入る直前に前記駆動周波数を可変する処理を実行し、前記発信部はそのときに得た周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として発信することを特徴とする。
【0018】
第9の手段は、第6の手段において、前記駆動周波数可変手段は電源投入時の用紙搬送前に前記駆動周波数を可変する処理を実行し、前記発信部はそのときに得た周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として発信することを特徴とする。
【0019】
第10の手段は、第6ないし第9のいずれかの手段において、前記受信波の周波数と前記駆動周波数が一致又は概ね一致するまでの受信波数を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された受信波数が規定値を超えた場合にエラーと判断するエラー判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
第11の手段は、第6ないし第9のいずれかの手段において、前記受信波の周波数と前記駆動周波数が一致又は概ね一致するまでの受信波数を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された受信波数が規定値に達したとき、受信波周波数と駆動周波数が一致していない、又は概一致していない場合にエラーと判断するエラー判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
第12の手段は、第10又は第11の手段において、前記エラー判断手段は、前記エラーの発生頻度を統計的に処理し、発生頻度が高くなってきたときにその旨を操作パネルあるいは通信手段を通じてユーザに報知することを特徴とする。
【0022】
第13の手段は、駆動周波数によって駆動され超音波を発信する発信部と、発信部が発信した超音波を受信する受信部と、受信波の周波数を取得する周波数取得手段と、これら各部制御する制御部と、を備え、前記制御部が前記発信部の駆動周波数を制御し、用紙の重送を検知する用紙重送検知制御プログラムにおいて、前記周波数取得手段によって取得された前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも大きい場合には前記駆動周波数を大きくする手順と、前記周波数取得手段によって取得された前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも小さい場合には前記駆動周波数を小さくする手順と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
なお、後述の実施形態では、発信部は超音波送信素子1に、受信部は超音波受信素子2に、周波数取得手段は周波数認識回路15に、駆動周波数可変手段は制御部16及び周波数変調回路11に、用紙重送検知装置は符号100に、画像形成装置は符号200に、測定手段及びエラー判断手段は制御部16に、制御部は符号16に、受信波の周波数が駆動周波数よりも大きい場合には前記駆動周波数を大きくする手順はステップS203,S204に、受信波の周波数が前記駆動周波数よりも小さい場合には駆動周波数を小さくする手順はステップS203,S205に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、受信波の周波数が前記駆動周波数よりも大きい場合には発信部の駆動周波数を大きくし、受信波の周波数が前記駆動周波数よりも小さい場合には発信部の駆動周波数を小さくするように駆動周波数を変化させるので、発信部の所要のレベル得るための出力を短時間で決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用される超音波発信/受信素子による用紙の重送検知の原理を示す説明図である。
【図2】本実施形態における実施例1の重送検知装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図2における周波数認識回路をソフトウェアで構成したときの周波数認識の手順を示すフローチャートである。
【図4】実施例1の駆動波形と最終受信波形を示す図である。
【図5】実施例2の駆動波形と最終受信波形を示す図である。
【図6】実施例2における駆動周波数と最終受信信号周波数から駆動周波数を制御する制御部の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】実施例3として用紙重送検知装置が使用される画像形成装置の典型例としての複写機の要部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、超音波センサを用いた重送検知に際して、超音波駆動周波数と最終受信周波数との差異を小さくするよう駆動周波数を変調し、最終受信周波数に駆動周波数を一致させ、あるいは概一致させるように駆動周波数を変調することによって駆動周波数を選択し、その後はその駆動周波数によって超音波発信素子を駆動することを特徴とするものである。
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明が適用される超音波発信/受信素子による用紙の重送検知の原理を示す説明図である。
【0029】
同図(a)に示すように超音波発信素子1から発信された超音波SDが用紙2に当たると、用紙Pが超音波SDによって振動し、その超音波が二次輻射SD1として超音波受信素子2に伝わる。受信素子2に伝わる超音波SD2のレベルは発信素子1から発信されたレベルよりも小さくなる。
【0030】
用紙Pが1枚ではなく、同図(b)に示すように2枚ないしは複数枚だったとき、1枚目の用紙P1で二次輻射SD1が発生し、その二次輻射超音波SD2が2枚目の用紙P2を振動させてその用紙からの二次輻射SD3が発生して受信素子2にはさらに減衰された超音波SD4が届くことになる。そこで、本発明では、受信素子2が検知する超音波のレベルが、用紙1枚のときと用紙が2枚以上のときとで異なることを利用し、用紙Pが重送しているかどうかを判別する。
【実施例1】
【0031】
図2は、本実施形態における実施例1の重送検知装置の構成の一例を示すブロック図である。同図において、超音波発信素子1及び超音波受信素子2は通常、数百kHzの超音波を共振周波数としている。ここでは仮に100kHzの共振周波数を持った素子を例にとって説明する。なお、適切な価格で素子が供給されるために素子の周波数はある程度のバラツキを有している。そこで、本実施形態では素子が±20kHzの公差を持っているものとする。
【0032】
図2において重送検知装置100は、信号出力側から基本周波数発信回路10、周波数変調回路11、駆動回路12、超音波送信素子1、超音波受信素子2,増幅回路13、比較器14、周波数認識回路15、及び制御部16を備えている。
【0033】
基本周波数発信回路10は、中央周波数100kHzで駆動するために100kHzのクロック信号CLKを生成する。生成されたクロック信号CLKはその後段の周波数変調回路11で変調される。周波数発振回路に変調機能を持たせることは技術的に困難なことではないことから、基本周波数発信回路10に周波数変調機能を持たせることも可能である。
【0034】
周波数変調回路11で変調されなければ100kHzのクロック信号CLKが駆動回路12に入力され、当該クロック信号CLKで超音波発信素子1が駆動される。本実施形態においては超音波発信素子1として電圧駆動型の素子を使っているため、駆動回路12では12Vあるいは24Vの電圧を超音波送信素子1に印加する。
【0035】
この駆動によって超音波送信素子1は超音波SDを発信する。この超音波SDは図1に示した原理で用紙に当たり、1回又は2回、二次輻射された超音波SD2,SD4が超音波受信素子2に届く。超音波受信素子2からの出力は微小な電圧として現われるため、後段に設けた増幅回路13によって増幅される。駆動波の波形例、最終受信波の波形例は図4及び図5(実施例2)に、わかりやすいように極端な周波数の違いと共に示してある。
【0036】
増幅回路13で十分弁別できる程度まで増幅された受信信号(本発明では最終受信信号SGと称している)は、一般には比較器14に入力されて所定の閾値電圧THと比較され、その比較出力は制御部16に入力される。制御部16では入力された出力が、例えば閾値電圧より大きい場合「1枚搬送」、閾値電圧より小さい場合「重送」と判断する。
【0037】
本実施形態では増幅回路13で増幅された最終受信信号SGは前記比較器14のみならず、増幅回路13の後段に接続された周波数認識回路15にも入力される。周波数認識回路15の内部構成は本発明とは直接関係しないので詳細については説明しないが、周波数認識回路15はピークレベルを有するタイミングとタイミングの時間差から周波数を認識する方式、あるいは波形の上昇、下降から認識する方式など、さまざまな方式があり、回路に入力された信号波形の周波数をこの回路で得ることができる。
【0038】
制御部16は周波数認識回路15の後段に接続され、周波数認識回路15で得た周波数と基本周波数発信回路10から出力される基本周波数CLKとの差を小さくするように周波数変調回路11に信号を送り、周波数を加減する。制御部16は一般にマイコンと称されるCPUで実現されるが、アナログ/デジタル変換入力ポートを持っているCPUも多く、図2の比較器14、周波数認識回路15をCPU、すなわち制御部16に含むように構成することもできる。
【0039】
すなわち、受信波の周波数を重送検知装置100の制御部16が得たらこの周波数と一致するよう、周波数変調回路11に指示し、駆動周波数を変える。その結果、駆動周波数と最終受信周波数が一致し、重送検知装置100内の超音波発信及び受信素子1,2が最も効率的に振動する周波数で駆動することが可能となる。その結果、最終受信波の振幅が大きくなる。この状態は、後述の図4に示されている。
【0040】
どのような条件を満たすと周波数を同定したと判断するかというのは各システムによって異なるが、周波数を同定したときの周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として用いるようにする。一旦周波数の同定が成功すると用紙搬送時にはこの周波数で駆動するだけなので、短時間で重送検知ができる。
【0041】
図3は周波数認識回路15をソフトウェアで構成したときの周波数認識の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示された手順では、受信波のレベル変化から周波数を認識するもので、波形の極大点と極小点を捉え、その時間差から周波数を求めるというアルゴリズムに基づいている。ここでは、波形の上昇、下降を監視し、上昇から下降に移行したときを極大点、下降から上昇に移行したときを極小点とし、極大点と極小点の差時間を2倍化することにより周波数を求めている。実際の波形にはジッタ等が存在するのでジッタを排除して極大と極小を求めるために例えば制御にヒステリシス特性を持たせることも必要になってくるが、このフローチャートに示した例は、あくまで概念であり、前記ヒステリシス特性まで配慮されたものではない。
【0042】
すなわち、図3において、周波数認識回路15はこの制御が開始されると、増幅回路13から今回入力された信号レベルと前回入力された信号レベルとを比較する(ステップS101)。そして、今回信号レベルが前回信号レベルより大きい場合には(ステップS101:Y)、以前も上昇を続けていたかどうかをチェックし(ステップS102)、今回信号レベルが前回信号レベルより大きくない場合には(ステップS101:N)、以前も下降を続けていたかどうかをチェックする(ステップS103)。
【0043】
ステップS102のチェックで以前も上昇を続けていた場合には(ステップS102:Y)、ステップS101に戻って信号レベルを再度比較し、上昇を続けていない場合には(ステップS102:N)、「以前の極小点発生時刻との差時間×2」の計算を行い、超音波受信素子2で受信した周波数を得る(ステップS104)。
【0044】
また、ステップS103のチェックで以前も下降を続けていた場合には、ステップS101に戻って信号レベルを再度比較し、下降を続けていない場合には(ステップS103:N)、「以前の最大値発生事項との差時間×2」の計算を行い、同じく超音波受信素子2で受信した周波数を得る(ステップS105)。
【0045】
図4は実施例1の駆動波形と最終受信波形を示す図で、基本的な概念を示している。本実施例1において、制御部16は周波数認識回路15から入力された周波数情報に基づき、入力された周波数情報の周波数と駆動周波数が一致するように周波数変調回路11に対して駆動周波数を上げ、又は下げるように指示する。
【0046】
図4において、駆動回路12は周波数変調回路11からの変調信号によって駆動周波数f1で超音波発信素子1を駆動し、超音波受信素子2を経てf2という周波数を得られた場合に、制御部16は周波数変調回路11に対して駆動周波数をf1からf2に変え、駆動回路は駆動周波数f2で超音波発振素子1を駆動する。最終受信信号SGは周波数f2であったから駆動信号f1と最終受信信号SGの周波数f2が一致し、素子の固有周波数特性に合った駆動となって図に示したように最終受信信号SGのピークレベルも最大のものが得られる。すなわち、本実施例では、最終出力レベルが最大になる周波数に固定して超音波発振素子1を駆動する。
【0047】
なお、図では駆動信号と受信信号としているが、駆動信号は駆動周波数に、受信信号は最終受信信号周波数をそれぞれ意味している。
【0048】
この図では2波(2周期分)を示しているが、システムの構成の仕方により、1周期分あるいは複数周期の周波数を基に駆動周波数f1へフィードバックをかけているということ、また駆動信号f1と受信信号f2を同じピークツーピークレベルで記載しているが、実際には駆動電圧と受信した電圧の大きさは全く異なる。したがって、これらの細かい相違点も本発明の範囲に含まれる。
【0049】
図4では最も簡単なモデルを示したが、一般に最終受信信号SGはまず素子の固有共振周波数が現われるといわれている。したがって最終受信信号SGの周波数f2を得たらその周波数f2に合うように駆動周波数f1を同定すればよい。すなわち、本実施例1では、得られた最終受信信号SGの周波数f2を駆動信号の駆動周波数f1として制御する。
【実施例2】
【0050】
本実施例2は実施例1に対してより実機に即して周波数を同定する例である。実施例1とは制御部16の制御が異なるだけで、その他の各部は実施例1と同一なので、重複する説明は省略する。
【0051】
図5は実施例2の駆動波形と最終受信波形を示す図で、実施例1では、前述のように「最終受信信号SGはまず素子の固有共振周波数が現われる」という前提でフィードバックしているが、実際には固有周波数とは異なる周波数で最終受信波は振動する。そのため、この周波数f2を得てすぐこの周波数f2に駆動周波数を合わせても最終受信波がその周波数に一致しないこともあり、実施例2では、制御部16は適当な周波数で駆動波周波数と素子の固有共振周波数が一致するように徐々に駆動周波数を変化させていく(図5では周波数f2’、f2”、f2'''、・・・、f0)。最終的に周波数を概ね一致させる位置を何波目にするかはそのシステムの構成に依存し、また、事前に実験等によって決めておけばよい。
【0052】
例えば駆動波形を超音波発信素子1に入力してから超音波受信素子2が増幅回路13に出力するまでは数ミリ秒程度かかるように超音波発信素子1と超音波受信素子2の距離を離してシステムを構成するのが普通である。時間がかかるのは主に音波の速度に限界があるからである。このような状況であると最終受信信号SGを得てからフィードバックしても駆動波ははるか先の波位置の駆動を実施していることになる。
【0053】
したがってこのようなシステムではリアルタイムでフィードバックをかけるのではなく、複数波を受信してその周波数情報から駆動周波数にフィードバックする。フィードバックした結果は数ミリ秒後に反映されるのでその結果でまたフィードバックするという方式を採る。図5の波形はそれを模式的に表わしている。
【0054】
徐々に周波数を合わせていくのは最初に受信波形として現われる周波数が超音波発信素子1の固有周波数ではなく、他の周波数の場合があり、実験等によって何回周波数の同定を繰り返せば最適な周波数となるかを予め決めておき、その決定に基づいて制御される。なお、「徐々に」という言葉は1回を含む。
【0055】
図6は駆動周波数と最終受信信号周波数から駆動周波数を制御する前記制御部16の制御手順を示すフローチャートである。同図において、駆動回路12は周波数変調回路11からの変調信号によって駆動周波数f1で超音波発信素子1を駆動して超音波発信が開始されると(ステップS201)、周波数変調回路11から出力される駆動周波数(発信信号)と周波数認識回路15から入力される最終受信信号SGの周波数との差の絶対値と、予め設定された許容誤差αとを比較し(ステップS202)、周波数の差が許容誤差α以上の場合(ステップS202:No)、さらに、駆動周波数と最終受信信号周波数とを比較する(ステップS203)。
【0056】
この比較結果で、駆動周波数が最終受信信号周波数より小さい場合(ステップS203:Yes)、駆動周波数をΔf上げ(ステップS204)、駆動周波数が最終受信信号周波数以上の場合(ステップS203:No)、駆動周波数をΔf下げ(ステップS205)、それぞれステップS202に戻って駆動周波数(発信信号)と最終受信信号周波数を比較する。そして、両者の差の絶対値が許容誤差αより小さくなったときに、重送検知を行う(ステップS206)。このように制御すると、最初から最終出力レベルが最大になる周波数に固定しないまでも、周波数をどちらに動かしたらよいかが明白なので、短時間で最適な駆動周波数を得ることができる。
【0057】
なお、許容誤差αはシステム固有の値であり、そのシステムあるいは使用する部品、例えば、超音波送信素子1、超音波受信素子2、周波数変調回路11、駆動回路12、増幅回路13及び周波数認識回路15によっても変化する。
【0058】
また、上下させる周波数幅Δfもシステム固有の値であり、同様にシステムあるいは使用する部品である超音波送信素子1、超音波受信素子2、周波数変調回路11、駆動回路12、増幅回路13及び周波数認識回路15によっても変化する。
【0059】
また、図5では、駆動信号f1,f2’・・・は連続波を用いて駆動しているが、駆動周波数と素子の固有共振周波数の相違から発生する干渉という現象が発生する可能性もあるので、連続波ではなく、複数波の駆動を複数回繰り返して周波数の同定を実施するようにすることもできる。
【0060】
なお、一般的な最終受信波波形を図6に示しているが、例えば最初の1波から2波程度は回路への入力レベルが低いので、暗ノイズに対するS/Nを確保するためには、最終受信波の少なくとも2波までは無視し、3波以降、あるいはシステムに応じて8波までのいずれかの波数までの最終受信波に基づいて周波数の差異を埋めるように駆動周波数を変化させることが望ましい。実施例1の場合も同様である。波数は例えば制御部16内のCPUが備えるカウンタによってカウントされる。したがって、受信波数を測定する測定手段はCPUの機能として備えることになる。
【0061】
その他、特に説明しない各部は実施例1と同一であり、同一の機能を有する。
【実施例3】
【0062】
実施例3は実施例1及び2に係る用紙重送検知装置100を画像形成装置に適用した例である。図7は実施例3として用紙重送検知装置100が使用される画像形成装置の典型例としての複写機200の要部を示す概略構成図である。
【0063】
同図において、複写機200は、感光体ドラム210、感光体210と対向した位置に配置された転写ベルト220、感光体ドラム210と転写ベルト220とのニップ位置に用紙を搬送する用紙搬送路230、用紙搬送路230へ給送する用紙が集積される用紙カセット240、用紙搬送路230に配置され、前記感光体ドラム210と転写ベルト220とのニップ位置(転写位置)に用紙を送り出すタイミングを設定するレジストローラ対250を備え、このレジストローラ対250の用紙搬送方向上流側の直前に用紙重送検知装置100の超音波発振素子1と超音波受信素子2が用紙搬送路230を挟んで互いに対向した位置に配置されている。両素子1,2は両者間に用紙が通過し、超音波検出ができれば、互いの位置関係は任意である。
【0064】
重送検知装置100は図7のように超音波発振素子1と超音波受信素子2を配置することにより、図2に示した回路構成で、実施例1又は2に例示したようにして駆動周波数と最終受信信号周波数に基づいて駆動周波数を制御することによって重送を精度よく検出することができる。
【0065】
なお、図2における制御部16は、例えば画像形成装置200の図示しない制御部に含まれる。当該制御部は図示しないCPU、ROM及びRAMを備え、CPUはROMに格納されたプログラムコードをRAMに展開し、当該RAMをワークエリア及びデータバッファとして使用しながら前記プログラムコードで定義された処理を実行し、用紙重送検知装置100及び複写機200の各部を制御する。なお、CPU、ROM、RAMはコンピュータ資源(リソース)である。
【0066】
前述したように一般のシステムでは超音波発振器1から超音波を発信してから超音波受信機2で超音波を受信するまでに時間がかかるため、リアルタイムのフィードバックは難しい。したがって超音波駆動からフィードバックを完了するまである程度の時間が必要となる。そこで、周波数の同定に最適なタイミングの1つは印刷を実施していない時間、すなわちホストコンピュータから画像形成装置に印刷指令が送られてきておらず、かつオペレータからもコピー指示が入っていないときである。印刷を実施していない時間若しくは時間帯は予測までを含むものではなく、印刷指示があった時点で同定の処理を終わらせればよい。そのときに得た適切な駆動周波数を、実際に用紙搬送時に使われる駆動周波数として用いる。
【0067】
もう1つの最適なタイミングは省エネモード時である。通常、省エネモード時には最低電力の状態であり、確実に機器は止まっているのでこの時間帯に周波数の同定を実施するとよい。あるいは省エネモードに入る直前だとなおよい。そして、このときに得た適切な駆動周波数を実際に用紙搬送時に使われる駆動周波数として用いる。
【0068】
さらに、もう1つの最適なタイミングは電源投入時である。電源投入時であればさまざまな初期化処理をしており、そのときに得た適切な駆動周波数を、実際に用紙搬送時に使われる駆動周波数として用いる。
【0069】
超音波発信素子1あるいは超音波受信素子2が不良品だった場合、これらの素子1,2が正しく取り付けられておらず余分な振動を拾ってしまった場合など、システムが設計者の想定を超えるような場合、受信波周波数と駆動周波数を一致又は概ね一致させることができない可能性がある。このようなときには画像形成装置200の制御部16はエラーと判断する。エラーの場合には通信によりホストコンピュータに、あるいは重送検知装置100を備えた複写機200の図示しない操作部へ、その旨表示する。したがって、本実施例では、エラーと判断するエラー判断手段は制御部16が機能として備えることになる。
【0070】
なお、前記「概ね一致」は必ずしも超音波素子1,2の固有周波数の周辺周波数のみを示しているのではなく、前述したように設計上対象システムで受信周波数として得られる周波数範囲に入っていてかつ受信信号レベルが最大あるいは最大に近くなるような周波数を含む。
【0071】
連続波で考えるとわかりやすいが、周波数の同定作業を何度か繰り返して受信波周波数と駆動周波数が一致又は概ね一致したとしても、規定回数内で同定できない場合が発生することも有り得る。このような場合は、前述の超音波素子1,2が不良品だった、超音波素子1,2が正しく取り付けられておらず余分な振動を拾ってしまったなどと同様にシステムが設計者の想定を超えるような場合である。このような場合にも複写機200制御部16はエラーと判断し、前述のようなエラー通知及びエラー表示などのアラーム処理を行う。
【0072】
このように制御部16はエラーが発生したときに通信又は操作パネルなどによってアラーム処理を行うが、エラー情報を逐次保存しておいてその都度統計処理をし、その結果、システム的にある閾値を超える発生頻度と判断されたときにその旨をオペレータや、図示しないネットワーク/電話回線等の通信手段を用いてサービス拠点に知らせるようにすることも可能である。
【0073】
以上のように本実施形態によれば、最終出力レベルが最大になる周波数に固定して超音波発振素子1を駆動するので、あるいは最初からその周波数に固定しないまでも、周波数をどちらに動かしたらよいかが明白なので、駆動周波数、超音波発信素子固有共振周波数、及び超音波受信素子固有共振周波数の相違による出力低下を短時間で防止することができる。
【0074】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記各実施例は、好適な実施形態をそれぞれ示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲により規定される範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 超音波送信素子
2 超音波受信素子
11 周波数変調回路
15 周波数認識回路
16 制御部
100 用紙重送検知装置
200 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特許第4315062号公報
【特許文献2】特許第3860126号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動周波数によって駆動され超音波を発信する発信部と、
発信部が発信した超音波を受信する受信部と、
受信波の周波数を取得する周波数取得手段と、
前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも大きい場合には前記駆動周波数を大きくし、前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも小さい場合には前記駆動周波数を小さくするように前記駆動周波数を可変する駆動周波数可変手段と、
を備えた用紙重送検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙重送検知装置において、
前記駆動周波数可変手段は、前記駆動周波数を前記受信波の周波数に変化させること
を特徴とする用紙重送検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の用紙重送検知装置において、
前記駆動周波数可変手段は、前記駆動周波数を徐々に発信部の素子の固有振動数に一致するように変化させること
を特徴とする用紙重送検知装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の用紙重送検知装置において、
前記駆動周波数可変手段は受信波の波数が3以上の受信波の周波数に基づいて前記駆動周波数を可変すること
を特徴とする用紙重送検知装置。
【請求項5】
請求項4記載の用紙重送検知装置において、
前記駆動周波数可変手段は、複数の受信波を受信し、その周波数情報から前記駆動周波数を変化させること
を特徴とする用紙重送検知装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の用紙重送検知装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記駆動周波数可変手段は印刷を実施していない時間帯に前記駆動周波数を可変する処理を実行し、
前記発信部はそのときに得た周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として発信すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記駆動周波数可変手段は省エネモード又は省エネモードに入る直前に前記駆動周波数を可変する処理を実行し、
前記発信部はそのときに得た周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として発信すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項6記載の画像形成装置において、
前記駆動周波数可変手段は電源投入時の用紙搬送前に前記駆動周波数を可変する処理を実行し、
前記発信部はそのときに得た周波数を用紙搬送時の重送検知用発信駆動周波数として発信すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記受信波の周波数と前記駆動周波数が一致又は概ね一致するまでの受信波数を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された受信波数が規定値を超えた場合にエラーと判断するエラー判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記受信波の周波数と前記駆動周波数が一致又は概ね一致するまでの受信波数を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された受信波数が規定値に達したとき、受信波周波数と駆動周波数が一致していない、又は概一致していない場合にエラーと判断するエラー判断手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項10又は11記載の画像形成装置において、
前記エラー判断手段は、前記エラーの発生頻度を統計的に処理し、発生頻度が高くなってきたときにその旨を操作パネルあるいは通信手段を通じてユーザに報知すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
駆動周波数によって駆動され超音波を発信する発信部と、
発信部が発信した超音波を受信する受信部と、
受信波の周波数を取得する周波数取得手段と、
これら各部制御する制御部と、
を備え、前記制御部がコンピュータ資源を使用して前記発信部の駆動周波数を制御し、用紙の重送を検知する用紙重送検知制御プログラムにおいて、
前記周波数取得手段によって取得された前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも大きい場合には前記駆動周波数を大きくする手順と、
前記周波数取得手段によって取得された前記受信波の周波数が前記駆動周波数よりも小さい場合には前記駆動周波数を小さくする手順と、
を備えていることを特徴とする用紙重送検知制御プログラム。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−56723(P2012−56723A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202154(P2010−202154)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】