説明

画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置および測定方法

【課題】非接触でパンタグラフの水平加速度を測定することを可能とした画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】車両に取り付けたラインセンサカメラ1でパンタグラフを撮像し、画像処理部2により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する装置において、画像処理部2に、ラインセンサカメラ1によって撮像した画像を入力する画像入力部21と、ラインセンサカメラ1によって撮像した画像を処理することによってラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を求めるパンタグラフ位置検出部23と、ラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づきパンタグラフ水平加速度を算出するパンタグラフ水平加速度算出部24とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置および測定方法に関し、とくに一台のラインセンサで走行中の車両に設置されたパンタグラフの挙動を撮像し、画像処理によって検出した測定点のパンタグラフの水平加速度に基づいて、加振点におけるパンタグラフの水平加速度を測定する画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道の車両屋根上に設置されたパンタグラフにおいて、地上に固定された金具等がまれに振動などで外れると、走行中の車両に設置されたパンタグラフと衝突し、パンタグラフが凹んだり破損したりするおそれがある。
【0003】
そこで、金具等がパンタグラフに衝突するとパンタグラフに大きな水平加速度が発生することを利用して、パンタグラフの水平加速度を測定し水平加速度が大きい箇所を検出することによって、金具等の地上設備に不具合が生じている箇所を特定し、対策を施すことが行われている。
【0004】
従来、このようなパンタグラフの水平加速度を測定する方法として、加速度センサをパンタグラフに取り付け、この加速度センサによる計測結果に基づいてパンタグラフへの衝撃による水平加速度を測定することが知られている(例えば、下記特許文献1、非特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−253232号公報
【非特許文献1】久須美、福谷、「電車線金具衝突によるパンタグラフ衝撃」、鉄道技術連合シンポジウム講演論文集、社団法人日本機械学会、Vol.2003、No.10(20031208)、p.455-456
【非特許文献2】岩井中、佐藤、出野、「パンタグラフ接触力測定システムの開発とデータの活用」、JR EAST Technical Review-No.10、p.68-72
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような加速度センサを用いる方法においては、上記非特許文献2に記載されているように、特高圧2.5kVのパンタグラフに加速度センサを取り付けるため、加速度センサの出力をそのまま車内に取り込めず、加速度センサの出力をテレメータで伝送するか、光ケーブルで伝送する。テレメータで伝送する場合は電源電池の交換が必要になるという問題があった。また、光ケーブルで伝送する場合は安定度の問題や温度による出力値ドリフトの低減などの問題があった。
【0007】
このようなことから本発明は、非接触でパンタグラフの水平加速度を測定することを可能とした画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置は、車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する装置であって、前記画像処理部が、前記ラインセンサカメラによって撮像した画像を入力する画像入力手段と、入力された前記画像からなるラインセンサ画像に対して画像処理を施すことによってラインセンサ画像上の前記パンタグラフの位置を求めるパンタグラフ位置検出手段と、前記ラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づき前記パンタグラフ水平加速度を算出するパンタグラフ水平加速度算出手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置は、第1の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置において、前記パンタグラフ水平加速度算出手段が、前記位置検出手段によって求めた前記ラインセンサ画像上のパンタグラフの位置と予め設定する伝達関数とに基づき前記パンタグラフ水平加速度を算出することを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置は、第2の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置において、前記画像処理部が、加振点において前記パンタグラフに水平方向の振動を与えたときの前記パンタグラフの実際の水平加速度と前記ラインセンサ画像上のパンタグラフの水平加速度とから前記伝達関数を求める伝達関数算出手段を備えることを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法は、車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する方法であって、ラインセンサカメラから画像データを入力し、入力された前記画像データからなるラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を検出し、検出されたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づいてパンタグラフの水平加速度を算出することを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法は、車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する方法であって、ラインセンサカメラから画像データを入力し、入力された前記画像データからなるラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を検出し、検出されたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づいて予め求めた伝達関数によりパンタグラフの水平加速度を算出することを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第6の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法は、第5の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法において、前記パンタグラフの所定の加振点に水平方向の振動を与えると同時に前記ラインセンサカメラによって前記パンタグラフの測定点を撮像し、前記加振点におけるパンタグラフの水平加速度と撮像したラインセンサ画像上のパンタグラフの水平加速度とから前記伝達関数を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上述した第1の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置によれば、車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する装置であって、画像処理部が、ラインセンサカメラによって撮像した画像を入力する画像入力手段と、入力された画像からなるラインセンサ画像に対して画像処理を施すことによってラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を求めるパンタグラフ位置検出手段と、ラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づきパンタグラフ水平加速度を算出するパンタグラフ水平加速度算出手段とを備えるので、非接触でパンタグラフの水平加速度を測定することができる。
【0015】
上述した第2の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置によれば、パンタグラフ水平加速度算出手段が、位置検出手段によって求めたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置と予め設定する伝達関数とに基づきパンタグラフ水平加速度を算出するので、小型の装置で非接触かつ計測結果を蓄積しつつ、高精度にパンタグラフの水平加速度を測定することができる。
【0016】
上述した第3の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置によれば、画像処理部が、加振点において前記パンタグラフに水平方向の振動を与えたときのパンタグラフの実際の水平加速度とラインセンサ画像上のパンタグラフの水平加速度とから伝達関数を求める伝達関数算出手段を備えるので、ひとつの装置で伝達関数の算出とパンタグラフの水平加速度の測定とを行うことができ、利便性が向上する。
【0017】
上述した第4の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法によれば、車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する方法であって、ラインセンサカメラから画像データを入力し、入力された画像データからなるラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を検出し、検出されたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づいてパンタグラフの水平加速度を算出するので、非接触でパンタグラフの水平加速度を測定することができる。
【0018】
上述した第5の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法によれば、車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する方法であって、ラインセンサカメラから画像データを入力し、入力された画像データからなるラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を検出し、検出されたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づいて予め求めた伝達関数によりパンタグラフの水平加速度を算出することができる。
【0019】
上述した第6の発明に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法によれば、パンタグラフの所定の加振点に水平方向の振動を与えると同時にラインセンサカメラによってパンタグラフの測定点を撮像し、加振点におけるパンタグラフの水平加速度と撮像したラインセンサ画像上のパンタグラフの水平加速度とから伝達関数を算出するので、ひとつの装置で伝達関数の算出とパンタグラフの水平加速度の測定とを行うことができ、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1ないし図5に基づいて本発明の第1の実施例を説明する。図1は本実施例に係る画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置の概略構成図、図2は本実施例の画像処理部の構成を示すブロック図、図3は本実施例の画像処理部における処理の流れを示すフローチャート、図4は本実施例において得られるラインセンサ画像の一例を示す説明図、図5は本実施例のパタンマッチ用モデルを示す説明図である。
【0022】
図1に示すように、本実施例に係る画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置は、ラインセンサカメラ1と、ラインセンサカメラ1によって撮像した画像に基づいて画像処理を行う画像処理部2とから構成されている。
【0023】
ラインセンサカメラ1は、車両3の屋根上に鉛直上方を撮像するように設置されている。そしてその位置はパンタグラフ31の長手方向の中心とこのパンタグラフ31のホーン31aとの間にある測定点Psを撮像するように設定されている。また、その走査線方向は、パンタグラフ31に直交するように、換言すると、車両の進行方向に平行に設定されている。なお、図1中の符合4はトロリ線を示している。
【0024】
また、画像処理部2は車両の内部に設置され、画像入力部21、画像記録部22、パンタグラフ位置検出部23、パンタグラフ水平加速度算出部24、およびデータ記録部25から構成されている。
【0025】
画像入力部21はラインセンサカメラ1が撮像した画像を所定の一定時間間隔で入力する手段、画像記録部22は画像入力部21によって入力された画像データを保存する手段である。なお、この画像記録部22には予め図5に示すようなパタンマッチ用のモデルを登録しておくものとする。
【0026】
パンタグラフ位置検出部23は画像記録部22に保管された画像を時系列的に並べてなるラインセンサ画像(図4参照)とパタンマッチ用モデルとを比較して、ラインセンサ画像上のパンタグラフの軌跡11を背景12から抽出し、ラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置を検出する手段である。また、パンタグラフ水平加速度算出部24はパンタグラフ位置検出部23において検出したラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置に基づいて導出したパンタグラフ31の実際の位置を二階微分してパンタグラフ31の水平加速度u(x)を算出する手段である。データ記録部25は各種データを保存する手段である。
【0027】
以下に、図3に基づいて本実施例に係る画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置の画像処理部2においてパンタグラフの水平加速度を算出する処理について説明する。
【0028】
本実施例においてパンタグラフ31の水平加速度を算出する場合、まず、パタンマッチ用のモデルを登録し(ステップS1)、画像入力部21によりラインセンサカメラ1によって撮像された画像を所定の一定時間間隔で入力して画像記録部22に保存する(ステップS2)。
【0029】
その後、パンタグラフ位置検出部23において画像記録部22から取り出した画像データを時系列的に並べてなるラインセンサ画像と画像記録部22に予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較し(ステップS3)、ラインセンサ画像上のパンタグラフの軌跡11を抽出して画像上のパンタグラフ31の位置を検出する(ステップS4)。
【0030】
続いて、パンタグラフ水平加速度算出部24において、パンタグラフ位置検出部23によって得られたラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置に基づき水平加速度u(x)を算出する(ステップS5)。
【0031】
上述した本実施例に係る画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置および測定方法によれば、ラインセンサカメラ1によって撮像したパンタグラフ31の挙動から、パンタグラフ31の水平加速度を非接触で高精度に求めることができる。
【実施例2】
【0032】
図6及び図7に基づいて本発明の第2の実施例を説明する。図6は本実施例に係るパンタグラフの水平加速度測定装置の画像処理部の構成を示すブロック図、図7は本実施例に係る画像処理部における処理の流れを示すフローチャート、図8は本実施例において加振点に対して振動を与える例を示す説明図である。
【0033】
なお、本実施例は図2に示し上述した実施例1の画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置の画像処理部2に伝達関数算出部26を追加したものである。その他の構成は図1に示し上述したものと概ね同様であり、以下、同様の作用を奏する部材には同一の符合を付して重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0034】
図6に示すように、本実施例において画像処理部2は画像入力部21と、画像記録部22と、パンタグラフ位置検出部23と、パンタグラフ水平加速度算出部24と、データ記憶部25と、伝達関数算出部26とから構成されている。
【0035】
伝達関数算出部26は図示しない加速度センサによって測定した加振点における水平加速度u(t)と、このときにラインセンサカメラ1によってパンタグラフ31の測定点Psを撮像して得られるラインセンサ画像上のパンタグラフ31の加速度y(t)とから後述する伝達関数H(ω)を算出する手段である。
【0036】
図7に基づいて本実施例に係る画像処理によるパンタグラフの水平加速度測定装置の画像処理部2においてパンタグラフ31の水平加速度を算出する処理について説明する。
【0037】
図7に示すように、画像処理部2においては、まず図5に示すようなパタンマッチ用のモデルを登録し(ステップS11)、続いて伝達関数H(ω)を算出する処理を行う(ステップS12)。
【0038】
伝達関数H(ω)の算出する際は、まず、ラインセンサカメラ1によって測定点Psを撮像する一方、図8に示すようにパンタグラフ31の長手方向の中心を加振点Pwとしてここに水平方向の振動を加え、このときのパンタグラフ31の水平加速度u(t)を図示しない加速度センサで計測する。
【0039】
このとき、ラインセンサカメラ1によって撮像した画像を画像処理部2の画像入力部21において所定の一定時間間隔で入力し、これを画像記録部22に保存する。続いて、パンタグラフ位置検出部23において画像記録部22から取り出したラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの軌跡11を抽出し、ラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置を検出する。
【0040】
そして、伝達関数算出部24において、パンタグラフ31に振動を与えたときのパンタグラフ31の水平加速度u(t)と、パンタグラフ位置検出部23で求めたラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置を二階微分して得た水平加速度y(t)とを用いて、次式(1)により伝達関数H(ω)を算出する。なお、本実施例においては、例えば実際のパンタグラフ31の挙動からノイズ除去を特性とする伝達関数H(ω)を求めるなど、目的に応じた伝達関数H(ω)を求めるようにすればよい。
【0041】
H(ω)=Y(ω)/U(ω) ・・・(1)
ただし、Y(ω)、H(ω)、U(ω)はラインセンサ画像上のパンタグラフ31の水平加速度y(t)、伝達関数h(t)、実際のパンタグラフ31の水平加速度u(t)のフーリエ変換を表す。
【0042】
ここで、ラインセンサ画像上のパンタグラフ31の水平加速度y(t)、伝達関数h(t)、加振点Pwに振動を加えたときのパンタグラフ31の水平加速度u(t)の関係は次式(2)で表される。
【0043】
【数1】

【0044】
そしてこの上式(2)から次式(3)が得られる。
Y(ω)=H(ω)・U(ω) ・・・(3)
この(3)式から上記(1)式が得られる。算出した伝達関数H(ω)はデータ記憶部25に保存する。
【0045】
続いて、車両の走行中にラインセンサカメラ1でパンタグラフ31の測定点Psを撮像し、これを画像入力部21によって所定の一定時間間隔で入力し、画像記録部22に保存する(ステップS13)。
【0046】
続いて、パンタグラフ位置検出部23において画像記録部22からラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを取り出し、これらを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの軌跡11を抽出し(ステップS14)、ラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置を検出する(ステップS15)。
【0047】
その後、パンタグラフ水平加速度算出部26において、ラインセンサ画像上のパンタグラフ31の位置の変化から求めたパンタグラフ31の水平加速度y(t)を用いて、次式(4)に基づく演算を行う。
U(ω)=Y(ω)/H(ω) ・・・(4)
これにより、パンタグラフ31の水平加速度u(t)が得られる(ステップS16)。
【0048】
上述した本実施例に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置および測定方法によれば、伝達関数H(ω)を用いてパンタグラフ31の水平加速度u(t)を算出するようにしたので、ノイズ除去を特性にした伝達関数H(ω)を実際のパンタグラフ31の挙動から求め、この伝達関数H(ω)を用いることで、高周波成分を多く含むパンタグラフの挙動からノイズ成分を除去したパンタグラフ31の挙動を求めることができるなど、利便性が向上する。
【0049】
なお、上述した実施例では伝達関数を求める際に画像上のパンタグラフ31の位置をパタンマッチ用モデルを用いて検出する例を示したが、画像上のパンタグラフの位置を検出する方法は上述した方法に限定されるものではなく、例えば、特開2006−250774号公報に記載されている方法を用いてもよい。また、本実施例では画像処理部2に画像記録部22を設ける例を示したが、ラインセンサカメラ1によって撮像した画像を即時に処理してパンタグラフの軌跡11を検出し、リアルタイムでパンタグラフ水平加速度を出力するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置および測定方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1に係る画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1の画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1の画像処理部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1において得られるラインセンサ画像の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例1のパタンマッチ用モデルを示す説明図である。
【図6】本発明の実施例2の画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例2の画像処理部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2においてパンタグラフに振動を与える例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ラインセンサカメラ
2 画像処理部
3 車両
4 トロリ線
21 画像入力部
22 画像記録部
23 パンタグラフ位置検出部
24 パンタグラフ水平加速度算出部
25 データ記憶部
26 伝達関数算出部
31 パンタグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する装置であって、
前記画像処理部が、前記ラインセンサカメラによって撮像した画像を入力する画像入力手段と、入力された前記画像からなるラインセンサ画像に対して画像処理を施すことによってラインセンサ画像上の前記パンタグラフの位置を求めるパンタグラフ位置検出手段と、前記ラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づき前記パンタグラフ水平加速度を算出するパンタグラフ水平加速度算出手段とを備える
ことを特徴とする画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置。
【請求項2】
前記パンタグラフ水平加速度算出手段が、前記位置検出手段によって求めた前記ラインセンサ画像上のパンタグラフの位置と予め設定する伝達関数とに基づき前記パンタグラフ水平加速度を算出する
ことを特徴とする請求項1記載の画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置。
【請求項3】
前記画像処理部が、加振点において前記パンタグラフに水平方向の振動を与えたときの前記パンタグラフの実際の水平加速度と前記ラインセンサ画像上のパンタグラフの水平加速度とから前記伝達関数を求める伝達関数算出手段を備える
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定装置。
【請求項4】
車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する方法であって、
ラインセンサカメラから画像データを入力し、
入力された前記画像データからなるラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を検出し、
検出されたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づいてパンタグラフの水平加速度を算出する
ことを特徴とする画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法。
【請求項5】
車両に取り付けたラインセンサカメラでパンタグラフを撮像し、画像処理部により撮像された画像に基づいてパンタグラフの水平加速度を測定する方法であって、
ラインセンサカメラから画像データを入力し、
入力された前記画像データからなるラインセンサ画像と予め登録しておいたパタンマッチ用モデルとを比較してラインセンサ画像上のパンタグラフの位置を検出し、
検出されたラインセンサ画像上のパンタグラフの位置に基づいて予め求めた伝達関数によりパンタグラフの水平加速度を算出する
ことを特徴とする画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法。
【請求項6】
前記パンタグラフの所定の加振点に水平方向の振動を与えると同時に前記ラインセンサカメラによって前記パンタグラフの測定点を撮像し、
前記加振点におけるパンタグラフの水平加速度と撮像したラインセンサ画像上のパンタグラフの水平加速度とから前記伝達関数を算出する
ことを特徴とする請求項5記載の画像処理によるパンタグラフ水平加速度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−74899(P2010−74899A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237358(P2008−237358)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】