説明

画像処理方法および装置並びにプログラム

【課題】MIP処理等の3次元医用画像から投影画像を生成する画像処理において、特定のハードウェアを必要とせず、また、投影画像の画質を実用に耐えうるレベルで維持しつつ、処理の高速化を可能にする。
【解決手段】MIP処理の場合、投影画像を構成する投影画素と視点と3次元医用画像とを通る視線上に複数の探索点を設定する際に、処理対象の探索点において、その視線で処理済の探索点中での最大画素値が更新されたかどうかを評価し、更新された場合には、その探索点とその次の探索点との間のステップ幅を、更新されなかった場合のステップ幅よりも小さくする。これにより、視線に沿った画素値変化の一例を表す図では、最大画素値が更新される可能性が高い実線部分では詳細な探索が行われ(画質レベルの維持)、更新される可能性が低い一点鎖線部分では粗い探索が行われる(処理の高速化)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理に関し、特に詳しくは、3次元医用画像から投影画像を生成する処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、CT装置、MRI装置、超音波診断装置(エコー)等で得られる3次元医用画像を所望の投影面に投影した投影画像の観察、診断が行われている。このような投影画像を得る方法としては、3次元医用画像中に、任意の視点と投影面上の各投影画素とを通る視線に沿って複数の探索点を設定し、設定された複数の探索点の画素値に基づいて、視線毎に投影画素の画素値を求める画像処理が行われている。このような画像処理としては、例えば、視線毎に探索点の画素値の最大値を抽出して投影するMIP(Maximum Intensity Projection;最大値投影)処理や最小値を抽出して投影するMinIP(Minimum Intensity Projection;最小値投影)処理等が知られている。
【0003】
しかし、このような画像処理では、各視線に沿ったすべての画素(探索点)についてその画素値に基づく大小比較や積和演算等を行う必要があり、処理対象のデータ量が膨大な3次元医用画像では、処理の負荷がかなり高くなる。
【0004】
そこで、このような画像処理の高速化の手法が種々提案されている。例えば、MIP処理やMinIP処理では、視線毎の画素値の最大値または最小値を求める演算をさせるための計算機に複数のCPUを設けて、並列処理を行わせることにより、演算に要する時間を短縮させる手法や、視線に沿った画素列の画素を一定の間隔で間引いて最大値あるいは最小値を検索する手法(例えば、特許文献1)などがある。
【特許文献1】特開2001−236492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の並列処理による手法では、複数のCPUが設けられた特定のハードウェアが必要になるので、汎用の計算機を手軽に用いることができず、コスト高にもつながる。また、特許文献1に記載されている一定の間隔で検索対象の画素の間引きを行う手法では、間引く画素の数を増やすほど処理は高速になるが、間引かれた画素(または検索点)の中に真の最大値や最小値を有する画素が存在し、真の最大値や最小値が検索されなくなる可能性がそれだけ高くなり、実用に耐えられない程度の画質の劣化を引き起こしてしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、3次元医用画像中に、その3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定していき、設定された複数の探索点の各画素値に基づいて視線毎に各投影画素の画素値を決定することによって、3次元医用画像から投影画像を生成する画像処理において、特定のハードウェアを必要とせず、また、投影画像の画質を実用に耐えうるレベルで維持しつつ、処理の高速化を可能にする方法および装置並びにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による画像処理方法は、被検体を表す3次元医用画像中に、その3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定していき、設定された複数の探索点の各画素値に基づいて視線毎に各投影画素の画素値を決定し、画素値が決定された各投影画素から構成される投影画像を生成する画像処理方法において、探索点毎に投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価し、寄与がより大きいと評価された探索点と次の探索点との間のステップ幅が、寄与がより小さいと評価された探索点と次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように次の探索点を設定するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明による画像処理装置はこの方法を実施するものである。すなわち、被検体を表す3次元医用画像中に、その3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定する探索点設定手段と、設定された複数の探索点の各画素値に基づいて視線毎に各投影画素の画素値を決定し、画素値が決定された各投影画素から構成される投影画像を生成する投影画像生成手段とを備えた画像処理装置に、探索点毎に投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価する評価手段をさらに設け、探索点設定手段は、寄与がより大きいと評価された探索点と次の探索点との間のステップ幅が、寄与がより小さいと評価された探索点と次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように次の探索点を設定するようにしたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明による画像処理プログラムは上記の方法をコンピュータに実行させるためのものである。すなわち、被検体を表す3次元医用画像中に、その3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定していき、設定された複数の探索点の各画素値に基づいて視線毎に各投影画素の画素値を決定し、画素値が決定された各投影画素から構成される投影画像を生成する画像処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、そのコンピュータに、探索点毎に投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価させ、寄与がより大きいと評価された探索点と次の探索点との間のステップ幅が、寄与がより小さいと評価された探索点と次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように次の探索点を設定させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
次に、本発明による画像処理方法および装置並びにプログラムの詳細について説明する。
【0011】
「被検体を表す3次元医用画像」とは、被検体を表す医用画像であって、3次元的に配列された画素(ボクセル)の各々に画素値を与えることによって定義された3次元画像データによる画像である。具体例としては、CT装置やMRI装置を使用した撮影によって得られる複数の2次元のスライス画像を奥行き(深さ)方向に積み重ねて3次元にした画像が考えられる。
【0012】
「視線」は投影面上の投影画素と任意の視点とを結ぶものである。3次元医用画像を投影面に平行投影する場合には、視点は無限遠方に位置し、各視線は互いに平行となる。一方、3次元医用画像を投影面に透視投影する場合には、視点は有限の距離に位置し、各視線は放射状をなす。なお、「視点」と「3次元医用画像」と「投影面」との位置関係は問わない。例えば、視線が「視点」、「3次元医用画像」、「投影面」の順に通過する位置関係であってもよいし、視線が「視点」、「投影面」、「3次元医用画像」の順に通過する位置関係であってもよい。
【0013】
視線に沿った「複数の探索点」は、視線上にあってもよいし、視線の近傍の画素を代用してもよい。また、「探索点」の「画素値」は、その探索点の位置に存在する3次元医用画像の画素の画素値としてもよいし、探索点近傍の3次元医用画像の画素の画素値に基づいて補間計算して求めた値であってもよい。さらに、探索点近傍の3次元医用画像の画素の画素値をそのまま代用してもよい。
【0014】
「探索点毎に投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価」する際には、その探索点の画素値を直接的に評価してもよいし、その探索点の画素値に基づく演算やテーブル参照等により評価値を取得してもよい。また、その探索点の画素値だけでなく、その探索点の近傍の画素の画素値等にも基づいて評価を行うようにしてもよい。具体例としては、その探索点の近傍の画素の画素値に基づいてその探索点の画素値の勾配を算出し、算出された画素値の勾配とその探索点の画素値とに基づいて評価を行うことが考えられる。
【0015】
「ステップ幅」とは、ある視線に沿った処理対象の探索点とその視線に沿った次に処理対象となる探索点との間隔をいう。本発明では、このステップ幅を、直近に処理された探索点における投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさに応じて変化させながら、次に処理対象となる探索点を設定していく。したがって、ある視線に沿った複数の探索点の間隔は一定になるとは限らない。また、本発明は、このステップ幅を、この寄与の大きさに応じて2段階に変化させるものに限定されず、3以上の段階に変化させるものであってもよい。
【0016】
次に、本発明による画像処理の具体例を挙げる。
【0017】
本発明による画像処理の具体例としては、MIP処理またはMinIP処理が考えられる。すなわち、「各投影画素の画素値」を、視線毎の複数の探索点の各画素値の最大値/最小値(「/」の左側はMIP処理の場合、右側はMinIP処理の場合を示す。以下同じ)に決定するようにした場合である。この場合、視線毎に、既に処理した探索点の画素値のうちの最大値(以下、暫定最大画素値という)/最小値(以下、暫定最小画素値という)を更新しながら、その視線に沿って次の探索点を処理していき、視線毎の最終的な最大画素値/最小画素値を求める。
【0018】
また、MIP/MinIP処理の場合、処理対象の探索点における暫定最大/最小画素値の更新の有無を基準として「探索点毎に投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価し」、その評価結果に基づいて「ステップ幅」を決定し、決定された「ステップ幅」に基づいて「次の探索点を設定する」ことが考えられる。すなわち、処理対象の探索点において暫定最大/最小画素値が更新された場合には、投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きいと評価し、暫定最大/最小画素値が更新されなかった場合よりも次の探索点までのステップ幅を小さくして、次の探索点を設定するのである。これは、医用画像では周辺の画素間での画素値の相関が高いため、ある探索点で暫定最大/最小画素値が更新されたということは、その周辺においてもその探索点における画素値に近い値を有している可能性が高く、その周辺で暫定最大/最小画素値がさらに更新される可能性が高いので、より詳細に探索を行うことを意味する。なお、この寄与の大きさの評価は、その探索点における暫定最大/最小画素値の更新の有無を基準にする場合に限定されず、例えばその探索点における画素値が暫定最大画素値の80%より大きければ寄与が大きいと評価するというように、暫定最大/最小画素値に対して一定の比率を乗じた値と探索点における画素値との大小関係を基準にしてもよい。また、暫定最大/最小画素値に対する比率等によってさらに細かい段階に分類してステップ幅を変化させて次の探索点を設定するようにしてもよい。
【0019】
また、MIP/MinIP処理の場合、さらに、投影画素の画素値が既に決定された視線の近傍の視線について投影画素の画素値を決定する際に、投影画素の画素値が既に決定された視線における最大値/最小値を有する探索点の位置に近接する位置に最初の探索点を設定し、その最初の探索点から順に探索点を設定していくようにしてもよい。具体例としては、各視線を複数の区間に分割し、処理対象の視線において画素値の最大値/最小値を求めるとともに、その最大値/最小値を有する探索点が属する区間を求め、その視線の近傍の視線について投影画素の画素値を決定する際に、その求められた区間に対応する区間に最初の探索点を設定することが考えられる。
【0020】
この他、本発明の画像処理をレイキャスティング法によるボリュームレンダリング処理に適用することも考えられる。これは、3次元医用画像中を構成する各画素(ボクセル)に対して設定された不透明度(Opacity)と輝度値とに基づき、視線に沿った各探索点におけるこれらの値をサンプリングし、加算していくことによって投影画素の画素値を求め、半透明な投影画像を生成する処理である。
【0021】
この場合、「投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさ」の具体例としては、各探索点における不透明度の大小を基準とすることが考えられる。すなわち、このボリュームレンダリング処理では、ある視線において加算される不透明度の値が所定の値になった時点でその視線についての処理を終了するので、探索点における不透明度の値が大きいほどその視線についての処理の終了に対する寄与が大きいことになるから、不透明度の値が大きい探索点ほど投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きいと評価するのである。また、この不透明度は各画素(ボクセル)における信号値(CT値等)に基づいて求められるため、医用画像では周辺の画素間での画素値(信号値)の相関が高いことと合わせて考えると、周辺の画素間での不透明度の値の相関も高いことになる。したがって、ある探索点における不透明度の値が大きいということは、その周辺においてもその探索点における不透明度に近い値を有している可能性が高く、投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きい可能性が高いため、ステップ幅を小さくして、より詳細に探索を行うのである。この不透明度の値の評価の具体例としては、その探索点における不透明度が所定の閾値より大きければ投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きいと評価することが考えられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、3次元医用画像に基づく投影画像を構成する各投影画素の画素値の決定のもとになる、投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って設定される複数の探索点を順に設定していく際に、探索点毎に投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価し、寄与がより大きいと評価された探索点とその次の探索点との間のステップ幅が、寄与がより小さいと評価された探索点とその次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように次の探索点を設定する。ここで、医用画像には周辺の画素間での画素値の相関が高いという特性があるため、投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きいと評価された探索点の近傍では、同様に投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きくなる可能性が高い。したがって、前記のように直近に処理された探索点における投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさに応じてステップ幅の大きさを変化させることによって、この寄与が大きい可能性が高い部分では、この寄与が小さい可能性が高い部分よりも詳細な探索を行うことが可能になり、投影画素の画素値の決定に対する寄与が大きい部分において投影画素の画素値の決定の精度を維持しつつ、この寄与が小さい部分では探索点の数を減らした粗い探索を行うことにより、高速な処理を優先する。その結果、全体として、投影画像の画質を実用に耐えうるレベルに維持しつつ、処理の高速化が実現される。また、このような画像処理の実現には並列処理等の特定のハードウェアは不要であるから、処理コストの点においても効果的である。
【0023】
また、MIP/MinIP処理の場合、前記と同様に医用画像では周辺の画素間での画素値の相関が高いため、既に処理済の視線の近傍の視線に対する処理では、その既に処理済の視線において画素値の最大値/最小値を有する探索点の位置の近傍で画素値が最大/最小になる可能性が高くなる。また、処理対象の視線において画素値が最大/最小となる探索点は投影画素の決定に対する寄与が最大である。そこで、投影画素の画素値が既に決定された視線の近傍の視線について投影画素の画素値を決定する際に、投影画素の画素値が既に決定された視線における最大値/最小値を有する探索点の位置に近接する位置に最初の探索点を設定し、その最初の探索点から順に探索点を設定していくようにした場合には、その視線において画素値が最大/最小となる探索点の処理を早い段階で行う可能性が高くなり、その後に処理される探索点における投影画素の決定に対する寄与がそれを上回る可能性が低くなるので、より大きなステップ幅で後続の探索点を設定することが可能になる。その結果、処理対象の探索点の数が減少するので、処理効率がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、3次元医用画像処理システムの概要を示すハードウェア構成図である。図に示すように、このシステムでは、モダリティ1と、画像保管サーバ2と、画像処理ワークステーション3とが、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)等のプロトコルに基づくネットワーク9を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0026】
モダリティ1は、被検体を表す3次元医用画像Vを取得するものである。具体的には、CT装置やMRI装置、超音波診断装置等である。
【0027】
画像保管サーバ2は、モダリティ1や画像処理ワークステーション3で取得、生成された3次元医用画像Vを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理ソフトウェア(例えば、ORDB(Object Relational DataBase)管理ソフトウェア)を備えている。
【0028】
画像処理ワークステーション3は、読影者からの要求に応じて、モダリティ1や画像保管サーバ2から取得した3次元医用画像Vに対して画像処理を行い、生成された画像を表示するコンピュータであり、読影者からの要求を入力するキーボードやマウス等の入力装置と、取得した3次元医用画像Vを格納可能な容量の主記憶装置(以下、画像メモリという)と、生成された画像を表示する高精細液晶ディスプレイとを備えている。
【0029】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能を示すブロック図である。図に示すように、画像処理ワークステーション3は、処理対象となる3次元医用画像Vをモダリティ1や画像保管サーバ2から取得する画像取得部31と、読影者等のユーザが所望する画像処理の種類と詳細な内容とについての設定を行う画像処理設定部32と、画像取得部31で取得した3次元医用画像Vに対して、画像処理設定部32で設定された画像処理の種類と内容とに応じた画像処理を行う各種画像処理部33と、各種画像処理部33で処理された画像Pを画面表示する画面表示部34とから構成されている。画像処理設定部32には、読影者がキーボードやマウス等の入力装置を操作して対話的に設定を行うものと、設定ファイルに予め設定しておくものとが含まれている。各種画像処理部33には、MPR(Multi-Planar Reconstruction;多断面再構成)処理部33Aや、MIP処理部33B、MinIP処理部33C、ボリュームレンダリング処理部33D等が含まれている。ここで、MPR(Multi-Planar Reconstruction;多断面再構成)処理とは、3次元医用画像中の所定の領域の軸位断(Axial)だけでなく、冠状断(Coronal)や矢状断(Sagittal)、斜位断(Oblique)により任意の断面画像を生成する処理である。これらの機能は、画像処理ワークステーション3上でのアプリケーション・プログラムの実行により、読影者による入力・選択操作を伴いながら実現される。
【0030】
次に、この医用画像処理システム、特に画像処理ワークステーション3における読影者の操作と処理の流れとについて説明する。
【0031】
まず、読影者は、画像処理ワークステーション3の高精細液晶ディスプレイに表示される図3に示す画面を見ながら、処理対象の3次元医用画像の選択を行う。図3の画面は、画像取得部31によって生成されたものであり、検査対象の画像の検索条件が階層化されたカテゴリに分類されている。画像取得部31は、読影者がマウスやキーボード等の操作により選択したカテゴリを、処理対象の画像の検索条件を画像保管サーバ2に対する検索要求メッセージに設定する。例えば、図3のように、現在の日時を2004年1月10日16時45分として、読影者が「直近24時間の検査」、「CT」を選択した場合、画像取得部31は、検査日時が「2004年1月9日16時46分〜2004年1月10日16時45分」かつモダリティが「CT」という検索条件を検索要求メッセージに設定する。読影者がマウス操作により検索実行ボタンをクリックすると、画像取得部31は、検索要求メッセージをネットワーク9経由で画像保管サーバ2に送信する。画像保管サーバ2では、受信した検索要求メッセージに基づいて、画像データベースを検索し、該当する画像データの患者氏名、患者ID、検査日付、モダリティ、画像数等のリスト情報を応答メッセージとして画像処理ワークステーション3に送信する。画像処理ワークステーション3では、画像取得部31が受信したリスト情報を図4のように表示する。読影者が、リストされた画像データに関する情報から、読影対象の患者の画像データを表す行をマウス34やキーボード35等の操作により選択すると、画像取得部31は、選択された行のリスト情報を画像取得要求メッセージに設定し、画像保管サーバ2に送信する。画像保管サーバ2は、受信したリスト情報に基づいて、画像データベースを検索し、該当する画像データを画像処理ワークステーション3に送信する。画像処理ワークステーション3では、画像取得部31が、受信した画像データを外部補助記憶装置33に一時的に保存するとともに、この画像データを画像メモリにも書き込む。この画像データは、被検体の左右方向をx軸、前後方向をy軸、上下方向をz軸とする3次元座標系で各画素の位置が定義され、各画素の画素値は、その画素の位置の座標と関連づけられている。
【0032】
画像取得部31は、次に設定ファイルを読み込み、最初に表示する画像を生成するための画像処理に関する情報を取得し、各種画像処理部33の中から適切なものに対して画像処理を要求する要求メッセージを作成し、その画像処理部に対して送信する。要求メッセージを受けた画像処理部は、画像メモリに読み込まれた3次元医用画像Vを、画像取得部31からの要求メッセージに含まれる画像処理用のパラメータに基づいて処理し、その画像処理部で生成された画像が画像表示部34の高精細液晶ディスプレイ38に表示される。例えば、被検体全体分の領域に対してMPR処理を行って、軸位断と冠状断、矢状断による3つの断面画像を生成するように要求メッセージに設定されていた場合には、MPR処理部33Aがこの要求メッセージに基づいて3つの断面画像を生成し、画像表示部34が、生成された3つの断面画像を高精細液晶ディスプレイ38に表示する(図5参照)。
【0033】
次に、読影者は、表示された画像を確認し、画面上のメニューの選択や各種パラメータの入力等をマウス34やキーボード35等の操作によって行い、所望する画像処理を行うよう指示をする。例えば、図5は、MPR処理部33Aで生成された3つの断面画像のうちの冠状断による断面画像を右クリックすることにより、次に行う画像処理のメニューが表示された画面の一例を示している。読影者は、表示されたメニューから所望する処理を選択し、マウス34で左クリックを行うと、選択された画像処理が行われる。
【0034】
ここで、読影者が「MIP Maximum」を選択すると、MIP処理部33Bにより、本発明の画像処理の実施形態の1つである被検体全体を対象としたMIP処理が行われる。以下、図6のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0035】
まず、図7に示すように、処理対象の3次元医用画像Vを投影する投影面Sの大きさや投影される画素(投影画素)の数、投影面Sに垂直な法線ベクトルNの向き、視点Qの位置が決定される(#1)。図5の例では、投影面Sの大きさと投影画素数は、設定ファイルの設定内容に基づき、3次元医用画像Vの取得時のスライス面と同じ大きさと画素間隔(例えば、512画素×512画素、画素間隔は0.7mm程度)に決定される。法線ベクトルNの向きは、読影者が直前の操作で冠状断による断面画像に対して右クリックを行っているので、冠状断による断面画像の法線ベクトルNと同じ向き(被検体の前後方向)に決定される。視点Qの位置は、設定ファイルの設定内容に基づき、無限遠方に決定される。したがって、投影面Sに対する平行投影となり、視点Qと各投影画素とを結ぶ各々の視線Lは互いに平行となる。
【0036】
次に、最初に処理する視線Lが決定される(#2)。具体的には、投影面Sの最も左上の投影画素を通る視線Lに決定される。
【0037】
処理対象の視線Lの決定後、その視線Lにおける最初の探索点が決定される(#3)。具体的には、その視線L上、かつ3次元医用画像Vの範囲内で、視点Qに最も近い点が最初の探索点として決定される。
【0038】
そして、決定された探索点における画素値fが取得される(#4)。ここでは、投影面Sの法線ベクトルNの向き、すなわち視線Lの方向が、被検体の前後方向(y軸方向)であることから、3次元医用画像Vを構成する画素の画素値をそのまま取得することが可能である。これに対して、投影面Sの法線ベクトルNが、斜め方向、すなわち、x、y、z軸のいずれにも平行でない場合には、決定された探索点の近傍の8画素における画素値に基づく補間処理により、その探索点の画素値を算出する。
【0039】
ここで、その視線Lにおいてこれまでに処理された探索点の中での画素値の最大値(暫定最大画素値)fmaxと現在処理対象の探索点の画素値fとの比較が行われる(#5)。ただし、現在処理対象の探索点は最初のものであるから、この探索点の画素値fが暫定最大画素値fmaxの値に設定される(#6)。
【0040】
次に、この探索点から次の探索点までのステップ幅がS1に決定される(#7)。このステップ幅S1は、実質的な最小ステップ幅、すなわち、3次元医用画像Vの空間分解能(x、y軸方向の分解能、サンプリングピッチ)と同じ値としている。
【0041】
そして、この探索点からこの視線Lに沿ってステップ幅S1だけ投影面S側に進んだ点が次の探索点として決定される(#9)。
【0042】
次に、決定された探索点が3次元医用画像Vの存在範囲内であるかどうかのチェックが行われ(#10)、この存在範囲内であれば(#10;N)、この探索点における画素値fの取得が行われる(#4)。
【0043】
そして、この画素値fが暫定最大画素値fmaxよりも大きければ(#5;Y)、暫定最大画素値fmaxの値がこの画素値fに更新され(#6)、次の探索点までのステップ幅がS1に決定される(#7)。これに対して、この画素値fが暫定最大画素値fmax以下であれば(#5;N)、暫定最大画素値fmaxの更新は行われず、次の探索点までのステップ幅はS2に決定される(#8)。ここで、ステップ幅S2は、ステップ幅S1よりも大きい値に設定されている。具体的には、S1の値の3倍程度までが適切である。
【0044】
そして、決定されたステップ幅に応じて次の探索点が決定され(#9)、以下、探索点が3次元医用画像Vの存在範囲外になるまで(#10;Y)、その探索点の画素値fの取得(#4)、暫定最大画素値fmaxとの比較(#5)、暫定最大画素値fmaxの更新(#6;f>fmaxの場合のみ)、ステップ幅の設定(#7,#8)、次の探索点の決定(#9)が繰り返される。
【0045】
探索点が3次元医用画像Vの存在範囲外になった場合には(#10;Y)、その視線Lに対する処理は終了し、その時点での暫定最大画素値fmaxがその視線Lの通る投影画素の画素値となる。そして、次に処理対象となる視線Lが決定される(#11)。具体的には、その画素値が決定された投影画素の右にある投影画素を通る視線Lが次の処理対象となる視線Lになる。その画素値が決定された投影画素が投影面S上の最も右側であった場合には、その下の行の最も左にある投影画素を通る視線Lが次の処理対象の視線Lとなる。
【0046】
そして、この決定された視線Lについて前記と同様の処理が行われ(#3〜10)、最終的な暫定最大画素値fmaxが、その視線Lが通る投影画素の画素値となる。同様にして、すべての投影画素を通る視線Lについて繰り返し処理を行い(#12;Y)、最終的な暫定最大画素値fmaxを求めることによって、投影画素の画素値を決定していく。未処理の視線Lがなくなった時点、すなわち、投影面Sの最も右下の投影画素を通る視線Lの処理が終了した時点で、すべての投影画素の画素値が決定されるので、処理は完了する(#12;N)。
【0047】
以上のMIP処理により、3次元医用画像Vを被検体の前後方向の画素値の最大値を抽出して投影した投影画像(最大値投影画像)Pが生成される。
【0048】
画像表示部34は、MIP処理部33Bによって生成された最大値投影画像Pを高精細液晶ディスプレイに表示する。
【0049】
このように本発明による画像処理の実施形態となる上記のMIP処理では、探索点において暫定最大画素値fmaxが更新された場合には、投影画素の画素値の決定に対するその探索点の寄与が大きいと評価し、暫定最大画素値fmaxが更新されなかった場合よりも次の探索点までのステップ幅を小さくしている。図8はこれによる効果を視覚化したものであり、ある視線Lの探索方向(視点Qから投影面Sに向かう方向)における画素値の変化を示している。図の曲線の実線部分に対応する探索点では暫定最大画素値fmaxが更新される。この場合、後続の探索点においても暫定最大画素値fmaxが順次更新されていくと推定し、最小ステップ幅で探索点を設定していき、より詳細に探索を行う。これに対して、図の曲線の一点鎖線部分に対応する探索点では暫定最大画素値fmaxが更新されない。この場合には、後続の探索点においても暫定最大画素値fmaxが更新されないと推定し、ステップ幅を最小ステップ幅よりは大きくして探索点を設定していき、探索点の数を減らしてより粗く探索を行う。その結果、暫定最大画素値fmaxが更新される可能性の高い部分では暫定最大画素値fmaxの探索の精度を維持しつつ、暫定最大画素値fmaxが更新される可能性の低い部分では処理の高速性を優先することにより、投影画像の画質を実用に耐えうるレベルに維持しつつ、処理の高速化が実現される。
【0050】
実際に、ステップ幅S1を3次元医用画像Vの最小画素間隔に設定し、ステップ幅S2をS1の3倍に設定した場合、生成される投影画像の劣化はほとんど見られず、また、検索点の数は、視線のすべての部分を最小画素間隔で探索した場合の半分程度になる。
【0051】
ところで、このような最大画素値の探索では、画素値が最大となる「山」の部分がインパルス的な形状となっている場合に、その直前の探索点で暫定最大画素値fmaxが更新されていなければ、ステップ幅が最小ではないため、この「山」の部分をまたいで次の探索点が決定されてしまい、暫定最大画素値fmaxが正しく更新されない可能性がある。しかし、CT等の医用画像では、エッジ部分等で画素値(信号値)のある程度の急激な変化はあるにせよ、その「山」の部分がインパルス的な形状にまではならず、周辺の画素間での画素値の相関が高くなり、前記のようにして暫定最大画素値fmaxが誤って更新されなくなる可能性も低いため、前記のように暫定最大画素値fmaxの更新の有無を基準にしてステップ幅を変化させることが効果的となる。
【0052】
なお、本発明による画像処理装置における探索点設定手段は図6の#3、#7、#8、#9に、評価手段は#5に、投影画像生成手段は#1、#2、#4、#5、#6、#10、#11、#12に各々対応する。
【0053】
上記の実施形態では、ステップ幅S1やS2を直近の探索点における暫定最大画素値fmaxの更新の有無のみを基準にして決定するようにしたが、視線の方向も考慮するようにしてもよい。これは、3次元医用画像Vのx、y、z軸の各方向における分解能が等方性を有していない場合に効果的である。例えば、3次元医用画像V(CT画像)のスライス面に垂直な方向(z軸方向)の分解能がx軸、y軸方向の分解能よりも低い場合、視線の方向がz軸に平行であれば、視線の方向がx軸やy軸に平行な場合よりもステップ幅S1やS2を大きくする。これにより、もとの画像の分解能の高さに応じた効率的な探索が可能になる。
【0054】
このステップ幅S1やS2の決定において、もとの3次元医用画像Vの解像度も考慮するようにしてもよい。すなわち、もとの画像の解像度が高いほどステップ幅S1やS2を小さくする。これにより、もとの画像の解像度の高さに応じた効率的な探索が可能になる。
【0055】
また、上記の実施形態では、ステップ幅はS1とS2の2段階に設定されていたが、3段階以上に設定することも可能である。例えば、探索点における画素値fが暫定最大画素値fmaxより大きければステップ幅をS1に、暫定最大画素値fmaxの70%より大きく暫定最大画素値fmax以下であればステップ幅をS2に、暫定最大画素値fmaxの70%以下であればステップ幅をS3に設定するというように、3段階のステップ幅(S1<S2<S3、以下、大小関係は同じ)とすることが考えられる。これにより、より柔軟にステップ幅の設定ができるので、処理精度の維持と処理の高速性とがよりきめ細かに実現される。
【0056】
上記の実施形態では、探索点の画素値を取得する際に、3次元医用画像Vを構成する画素の画素値をそのまま、または、探索点の近傍の8画素における画素値に基づく補間処理により取得するようにしていたが、探索点の近傍の8画素のうち画素値が最大となる画素の画素値を探索点の画素値として代用するようにしてもよい。これにより、処理負荷の高い積和演算による補間処理を行わなくて済むようになるため、処理の高速化に資する。
【0057】
さらに、このステップ幅の段階的設定と近傍の8画素の画素値の代用による探索点の画素値の取得とを組み合わせることも考えられる。すなわち、まず、探索点の近傍の8画素のうち画素値が最大となる画素の画素値を探索点の画素値として代用し(以下、この代用された値を代用値という)、この代用値と暫定最大画素値fmaxとの比較を行う。この代用値が暫定最大画素値fmax以下の場合には、ステップ幅をS3に設定する。この代用値が暫定最大画素値fmaxより大きい場合には、この探索点自体の画素値が暫定最大画素値fmaxより大きい可能性があると判断し、この探索点の近傍の8画素の画素値に基づいて補間処理を行い、この探索点自体の画素値を算出し(以下、この算出された値を補間値という)、この補間値と暫定最大画素値fmaxとの比較を行う。この補間値が暫定最大画素値fmax以下の場合には、暫定最大画素値fmaxを更新せず、ステップ幅をS2に設定し、この補間値が暫定最大画素値fmaxより大きい場合には、暫定最大画素値fmaxをこの補間値に更新するとともに、ステップ幅をS1に設定する。以上の処理により、よりきめ細かに処理の効率化、高速化と処理精度の維持との両立を図ることが可能になる。
【0058】
また、各視線Lを複数の区間に分割し、処理対象の視線Lにおいて画素値の最大値を求めるとともに、その最大値を有する探索点が属する区間を位置情報としてメモリに記憶させ、その視線の近傍の視線Lについて投影画素の画素値を決定する際に、その求められた区間に対応する区間に最初の探索点を設定するようにしてもよい。例えば、各視線Lを3つの区間k1、k2、k3に分割し、ある視線Lにおいて最大画素値を有する探索点が区間k2に属していた場合、その近傍の視線に対する処理では、区間k2、k3、k1の順に探索点を設定していく。ここで、3次元医用画像Vでは周辺の画素間での画素値の相関が高いため、既に処理済の視線Lにおいて画素値の最大値を有する探索点が属する区間が区間k2であれば、この近傍の視線に対する処理でも区間k2内で画素値が最大になる可能性が高くなる。また、この近傍の視線に対する処理において、区間k2内で画素値が最大になれば、それ以降は暫定最大画素値fmaxが更新されることはないので、より大きなステップ幅S2で探索点の設定が行われる。したがって、この場合には、処理対象の探索点の数が減少するので処理効率がさらに向上する。
【0059】
以上、本発明の画像処理をMIP処理に適用した場合について説明したが、被検体全体を対象にしたMinIP処理に適用することも可能である。本発明の実施形態となる3次元医用画像処理システムでは、図5で「MinIP Maximum」を選択した場合であり、MinIP処理部33Cにより処理が行われる。具体的な処理の詳細については、前記のMIP処理についての説明で、大小関係を逆転させて読み替えればよい。すなわち、各視線Lの処理で、探索点の画素値fと暫定最小画素値fminとの比較を行い、f<fminの場合には、暫定最小画素値fminを更新し、次の探索点までのステップ幅をS1に設定し、f≧fminの場合には、暫定最小画素値fminの更新を行わずに次の探索点までのステップ幅をS2(S1<S2)に設定する。これにより、前記のMIP処理と同様の効果を得ることが可能である。
【0060】
さらに、本発明の画像処理を被検体の一部(関心領域)のみを対象にした、いわゆるスラブMIP/MinIP処理に適用しても同様の効果が得られる。
【0061】
また、本発明の画像処理をボリュームレンダリング処理に適用することも可能である。本発明の実施形態となる3次元医用画像処理システムでは、図5で「VR Default」または「VR ...」を選択した場合であり、ボリュームレンダリング処理部33Dにより処理が行われる。まず、ボリュームレンダリング処理の概要について説明する。
【0062】
ボリュームレンダリング処理部33Dによる処理は、前処理、輝度値の設定、不透明度の設定、レイキャスティングの各処理から構成される。
【0063】
まず、前処理では、3次元医用画像Vに対してフィルタリング演算等によるノイズ除去や画像強調等を行う。
【0064】
次に3次元医用画像Vを構成する各画素(ボクセル)に対して輝度値を設定する。ここでは、設定対象となる画素の近傍にある画素の画素値から求めた勾配値を法線ベクトルとし、さらに光源を考慮してフォンのシェーディングモデル等を適用し、各画素の輝度値を求める。
【0065】
さらに、3次元医用画像Vを構成する各画素に対して不透明度を設定する。ここでは、読影者によって定義された2次元マッピングテーブルや数式等に基づき、画素毎に、画素値と前記の勾配値から不透明度を求める。なお、各画素の画素値のみに基づいて不透明度を求めるようにしてもよい。
【0066】
そして、設定された輝度値と不透明度とに基づいてレイキャスティング処理を行い、投影画像を構成する投影画素の画素値を求める。まず、前記のMIP処理と同様に、処理対象の3次元医用画像Vを投影する投影面Sの大きさや投影される画素(投影画素)の数、投影面Sに垂直な法線ベクトルNの向き、視点Qの位置を決定することにより、視点Qと投影画素の各々とを結ぶ視線Lが定義される。次に、視線Lに沿って複数の探索点を順に設定していき、近傍の画素の輝度値や不透明度に基づく補間処理等により、その探索点における輝度値や不透明度を求める。次に、探索点に入射する光の量(入射輝度値)とその探索点における輝度値と不透明度とに基づき、その探索点に入射した光のうちその探索点を透過する光の量(輝度値)と光源からの光のうちその探索点で反射する光の量(輝度値)との和を求め、求められた光の量(輝度値)を次の探索点に対する入射輝度値とする。また、このようにして入射輝度値を求める際に、その探索点における不透明度を順に加算していく。そして、その視線Lが3次元医用画像Vから抜け出たとき、すなわち、探索点が3次元医用画像Vの範囲外となったとき、または、加算された不透明度が1となったとき、その視線Lに対する処理を終了し、その時点での入射輝度値をその視線L上にある投影画素の画素値とする。以上の処理をすべての視線について行い、すべての投影画素の画素値を求める。
【0067】
次に、本発明による画像処理のボリュームレンダリング処理への適用について説明する。本実施形態では、視線Lに沿った複数の探索点を設定していく際に、設定された探索点における不透明度に注目し、不透明度が所定の閾値よりも大きければ、投影画素の画素値の決定に対するその探索点の寄与が大きいと評価し、次の探索点までのステップ幅をS1に設定し、不透明度が所定の閾値以下であれば、投影画素の画素値の決定に対するその探索点の寄与が小さいと評価し、次の探索点までのステップ幅をS2に設定するようにしている。ここで、設定されるステップ幅の大きさはS1<S2である。このようにすることにより、前記のMIP処理の場合と同様に、投影画素の画素値の決定に対するその探索点の寄与が大きい部分ではより詳細な探索を行い、その部分における画素の情報が投影画素の画素値の決定に大きく反映されるようになり、投影画像の画質レベルが維持されるとともに、投影画素の画素値の決定に対するその探索点の寄与が小さい部分ではより粗い探索を行うことにより、処理対象の探索点が減少し、処理の高速性が実現される。
【0068】
なお、本実施形態では、画像処理ワークステーション3で画像処理と画像表示の両方を行うようにしたが、画像処理サーバを別途設けてネットワーク9に接続し、前記の画像処理はこの画像処理サーバに行わせるようにしてもよい。これにより、分散処理が図られ、例えば、画像の表示を複数の端末で行う場合には、高性能の画像処理ワークステーションを複数台設置する必要がなくなり、システム全体のコストの低減に資する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】3次元医用画像処理システムの概要を示すハードウェア構成図
【図2】画像処理ワークステーションの機能を示すブロック図
【図3】画像処理ワークステーションで処理対象画像の検索条件を設定する画面の一例を示す図
【図4】画像処理ワークステーションで検索結果リストが表示された画面の一例を示す図
【図5】画像処理ワークステーションで読影者が所望する画像処理を選択する画面の一例を示す図
【図6】本発明の画像処理が適用されたMIP処理の流れを表すフローチャート
【図7】3次元医用画像と視点、投影面、視線の関係を表す模式図
【図8】本発明の画像処理が適用されたMIP処理による視線毎の探索処理を視覚化した図
【符号の説明】
【0070】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
9 ネットワーク
31 画像取得部
32 画像処理設定部
33 各種画像処理部
33A MPR処理部
33B MIP処理部
33C MinIP処理部
33D ボリュームレンダリング処理部
34 画像表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を表す3次元医用画像中に、該3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定していき、設定された複数の探索点の各画素値に基づいて前記視線毎に各投影画素の画素値を決定し、画素値が決定された前記各投影画素から構成される投影画像を生成する画像処理方法において、
前記探索点毎に前記投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価し、
前記寄与がより大きいと評価された前記探索点と次の探索点との間のステップ幅が、前記寄与がより小さいと評価された前記探索点と次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように前記次の探索点を設定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記各投影画素の画素値を、前記視線毎の複数の探索点の各画素値の最大値または最小値に決定するようにし、
前記投影画素の画素値が既に決定された前記視線の近傍の視線に沿って前記探索点を設定する際に、前記投影画素の画素値が既に決定された視線における前記最大値または最小値を有する探索点の位置に近接する位置に最初の探索点を設定し、該最初の探索点から順に前記探索点を設定していくようにしたことを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
被検体を表す3次元医用画像中に、該3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定する探索点設定手段と、
設定された複数の探索点の各画素値に基づいて前記視線毎に各投影画素の画素値を決定し、画素値が決定された前記各投影画素から構成される投影画像を生成する投影画像生成手段とを備えた画像処理装置において、
前記探索点毎に前記投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価する評価手段をさらに備え、
前記探索点設定手段は、前記寄与がより大きいと評価された前記探索点と次の探索点との間のステップ幅が、前記寄与がより小さいと評価された前記探索点と次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように前記次の探索点を設定するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記投影画像生成手段が、前記視線毎の複数の探索点の各画素値の最大値または最小値を前記各投影画素の画素値として決定するものであり、
前記投影画素の画素値が既に決定された視線における前記最大値または最小値を有する探索点の位置を記憶する位置情報記憶部をさらに備え、
前記探索点設定手段が、前記投影画素の画素値が既に決定された視線の近傍の視線に沿った前記探索点を設定する際に、前記位置情報記憶部が記憶している位置に近接する位置に最初の探索点を設定し、該最初の探索点から順に前記探索点を設定するものであることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
被検体を表す3次元医用画像中に、該3次元医用画像が投影される投影面上の複数の投影画素の各々と任意の視点とを結ぶ複数の視線の各々に沿って複数の探索点を順に設定していき、設定された複数の探索点の各画素値に基づいて前記視線毎に各投影画素の画素値を決定し、画素値が決定された前記各投影画素から構成される投影画像を生成する画像処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記探索点毎に前記投影画素の画素値の決定に対する寄与の大きさを評価させ、
前記寄与がより大きいと評価された前記探索点と次の探索点との間のステップ幅が、前記寄与がより小さいと評価された前記探索点と次の探索点との間のステップ幅よりも小さくなるように前記次の探索点を設定させるようにしたことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記各投影画素の画素値を、前記視線毎の複数の探索点の各画素値の最大値または最小値に決定し、
前記投影画素の画素値が既に決定された前記視線の近傍の視線に沿った前記探索点を設定する際に、前記投影画素の画素値が既に決定された視線における前記最大値または最小値を有する探索点の位置に近接する位置に最初の探索点を設定し、該最初の探索点から順に前記探索点を設定するように前記コンピュータに処理を行わせることを特徴とする請求項5記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−126(P2006−126A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176363(P2004−176363)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】