説明

画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラム

【課題】輪郭線近傍の欠陥であっても高い精度で存在を検出することができ、高い精度で良品判定を行うことができる画像処理装置、画像処理方法、及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出する。算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する。判定対象物に関する第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定対象物を撮像して取得した多値画像を、基準となる多値画像と比較する画像処理装置、画像処理方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、判定対象物を撮像して取得した多値画像を、基準となる多値画像と単純に比較することにより判定対象物が良品であるか否かを判定する方法が開発されている。しかし、両画像を単純に比較するだけでは、良品自体の形状ばらつき、計算誤差、ノイズ等による輝度値変動を考慮することができず、良品であるにもかかわらず良品ではないと誤って判定する等、正しく良品判定を行うことができないおそれがある等の問題があった。
【0003】
斯かる問題を解決するために、例えば特許文献1では、複数の良品に関する多値画像を準備しておき、それらの平均画像、標準偏差画像を求めることで、安定した良否判定を可能としている。具体的には、複数の良品に関する多値画像について位置合わせを行った後、同一座標の画素ごとに画素値の平均値及び標準偏差を算出する。判定対象物の多値画像について良品に関する多値画像との間で位置合わせを行った後、同一座標の画素ごとに、平均値との差分を算出し、標準偏差に基づいて定義した閾値画像と画素ごとに比較することにより、良品判定を行っている。
【0004】
このようにすることで、良品自体の形状ばらつき、計算誤差、ノイズ等による画素値変動分を画素ごとの画素値のばらつき度合に応じて効果的に排除することができるとともに、画素ごとに良品であると判定する範囲が相違することから、部位ごとに適切な良品判定の閾値を設定することができる。したがって、より高い精度で良品判定を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−265661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている画像処理方法では、欠陥が輪郭線の近傍に生じている場合、画素値の標準偏差が大きいことから欠陥として認識することが困難であり、欠陥の存在を検出する感度が低くなってしまうという問題点があった。輪郭線の近傍にて画素値の標準偏差が大きくなるのは、位置合わせにおける微妙な相違の存在、撮像位置の相違、個々の良品ばらつき等に起因する。
【0007】
また、白黒画像では色の相違を検出することは困難である場合もある。さらに全体的に濃淡のばらつきが大きい場合には、部分的に明暗が相違している部分、例えば表面のくぼみ部分等を検出することが困難であるという問題点もあった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、輪郭線近傍の欠陥であっても高い精度で存在を検出することができ、高い精度で良品判定を行うことができる画像処理装置、画像処理方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る画像処理装置は、判定対象物を撮像した多値画像を、良品に関する多値画像群と比較して良品判定を行う画像処理装置において、撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得する良品画像取得手段と、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と、算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出する平均値算出手段と、算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する分布領域算出手段と、撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得する多値画像取得手段と、取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する画像エッジ強度算出手段と、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する判断手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2発明に係る画像処理装置は、第1発明において、前記エッジ強度算出手段は、前記エッジ強度を互いに直交する二方向にて算出するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、第3発明に係る画像処理装置は、第2発明において、前記エッジ強度算出手段は、前記エッジ強度を二次元画像における列方向と行方向との二方向にて算出するようにしてあることを特徴とする。
【0012】
また、第4発明に係る画像処理装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記第一の多値画像と前記第二の多値画像との位置合わせを行う位置調整手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5発明に係る画像処理装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記分布領域算出手段は、仮想的な楕円領域として前記相互相関分布領域を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、第6発明に係る画像処理装置は、第5発明において、前記判断手段は、仮想的な前記楕円領域の重心から前記第二の多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離を、前記重心から前記エッジ点に向かう方向における前記楕円領域の境界と前記重心との距離で正規化したマハラノビス距離を算出する距離算出手段を備え、算出したマハラノビス距離が所定値より小さいか否かで前記相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
また、第7発明に係る画像処理装置は、第5発明において、前記距離算出手段は、仮想的な前記楕円領域の重心から前記第二の多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離であるユークリッド距離を算出するようにしてあり、前記判断手段は、算出したユークリッド距離が、前記楕円領域の重心から前記第二の多値画像の画素ごとのエッジ点に向かう方向における前記楕円領域の境界と前記重心との距離に基づく所定値より小さいか否かで前記相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、第8発明に係る画像処理装置は、第5発明において、仮想的な前記楕円領域の長軸、及び前記楕円領域の中心点を通り該長軸と直交する短軸を座標軸とした座標系に座標値を変換する座標変換手段と、変換した座標系の長軸方向及び短軸方向にて、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、エッジ強度、エッジ強度の平均値、及びエッジ強度の相互相関分布領域を再算出する再算出手段とを備え、前記画像エッジ強度算出手段は、取得した第二の多値画像の画素ごとに、変換した座標系の長軸方向及び短軸方向におけるエッジ強度を算出するようにしてあり、前記判断手段は、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、再算出した各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の要素ごとの相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
また、第9発明に係る画像処理装置は、第1乃至第8発明のいずれか1つにおいて、取得した前記第一の多値画像及び前記第二の多値画像はカラー画像であり、色の成分ごとにエッジ強度、エッジ強度の平均値、及びエッジ強度の相互相関分布領域を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
また、第10発明に係る画像処理装置は、第9発明において、色の成分ごとに算出したエッジ強度の相互相関分布領域を包括する近似分布領域を算出する近似分布領域算出手段を備え、前記判断手段は、算出した近似分布領域を相互相関分布領域として、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、前記近似分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
次に、上記目的を達成するために第11発明に係る画像処理方法は、判定対象物を撮像した多値画像を、良品に関する多値画像群と比較して良品判定を行う画像処理装置で実行することが可能な画像処理方法において、前記画像処理装置は、撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得し、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出し、算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出し、撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得し、取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することを特徴とする。
【0020】
次に、上記目的を達成するために第12発明に係るコンピュータプログラムは、判定対象物を撮像した多値画像を、良品に関する多値画像群と比較して良品判定を行う画像処理装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記画像処理装置を、撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得する良品画像取得手段、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段、算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出する平均値算出手段、算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する分布領域算出手段、撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得する多値画像取得手段、取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する画像エッジ強度算出手段、及び算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する判断手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
第1発明、第11発明及び第12発明では、撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得し、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出し、算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する。撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得し、取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する。異なる二方向のエッジ強度に基づいて、画素ごとに相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することにより、画素値だけでは検出することが困難であった輪郭線近傍に存在する欠陥についても、エッジ強度の方向が変化することにより相互相関分布領域から外れるか否かに基づいて敏感に検出することができ、確実に欠陥の存在等を検出することが可能となる。
【0022】
第2発明では、エッジ強度を互いに直交する二方向にて算出することにより、相互相関分布領域の算出が容易となり、演算処理負荷を軽減することが可能となる。
【0023】
第3発明では、エッジ強度を二次元画像における列方向と行方向との二方向にて算出することにより、さらに相互相関分布領域の算出が容易となり、演算処理負荷をより軽減することが可能となる。
【0024】
第4発明では、第一の多値画像と第二の多値画像との位置合わせを行うことにより、第二の多値画像の画素ごとに算出した異なる二方向におけるエッジ強度が、相互相関分布領域に含まれているか否かをより正確に判断することが可能となる。
【0025】
第5発明では、仮想的な楕円領域として相互相関分布領域を算出することにより、第二の多値画像の画素ごとに算出した異なる二方向におけるエッジ強度が、相互相関分布領域に含まれているか否かをより容易に判断することが可能となる。
【0026】
第6発明では、仮想的な楕円領域の重心から第二の多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離を、重心からエッジ点に向かう方向における楕円領域の境界と重心との距離で正規化したマハラノビス距離を算出し、算出したマハラノビス距離が所定値より小さいか否かで相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する。マハラノビス距離を用いることにより、相互相関分布領域の境界線と重心との距離に対する比率として重心からエッジ強度までの距離を表すことができるので、より良品の分布広がりに応じた感度で相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することが可能となる。
【0027】
第7発明では、仮想的な楕円領域の重心から第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度までの距離であるユークリッド距離を算出し、算出したユークリッド距離が、楕円領域の重心から第二の多値画像の画素ごとのエッジ点に向かう方向における楕円領域の境界と重心との距離に基づく所定値より小さいか否かで相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する。ユークリッド距離を用いることにより、分布広がりの大小により感度が大きく変化することなく良品として判定される相互相関分布領域から外れている度合いを算出することが可能となる。
【0028】
第8発明では、仮想的な楕円領域の長軸、及び楕円領域の中心点を通り該長軸と直交する短軸を座標軸とした座標系に座標値を変換し、変換した座標系の長軸方向及び短軸方向にて、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、エッジ強度、エッジ強度の平均値、及びエッジ強度の相互相関分布領域を再算出する。取得した第二の多値画像の画素ごとに、変換した座標系の長軸方向及び短軸方向におけるエッジ強度を算出し、算出した第二の多値画像の画素ごとの異なる二方向におけるエッジ強度が、再算出した各第一の多値画像の画素ごとの異なる二方向におけるエッジ強度の要素ごとの分布領域に含まれているか否かを判断する。これにより、検出精度をあまり落とすことなく、演算処理負荷を大きく軽減することが可能となる。
【0029】
第9発明では、取得した第一の多値画像及び第二の多値画像はカラー画像であり、色の成分ごとにエッジ強度、エッジ強度の平均値、及びエッジ強度の相互相関分布領域を算出することにより、白黒画像では輪郭線が明確に出ないカラー画像についても、明確に輪郭線を検出することができ、より正確に相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することが可能となる。
【0030】
第10発明では、色の成分ごとに算出したエッジ強度の相互相関分布領域を包括する近似分布領域を算出し、算出した近似分布領域を相互相関分布領域として、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、近似分布領域に含まれているか否かを判断する。色の成分として例えばR成分、G成分、B成分ごとに相互相関分布領域を算出した場合、通常は3つの相互相関分布領域が形成される。これらの相互相関分布領域を包含する一の領域を仮想的な近似分布領域とすることにより、色の成分ごとに相互相関分布領域に関する情報を記憶しておく必要がなく、近似分布領域に関する情報のみを記憶しておけば足りるので、記憶容量を節約することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、異なる二方向のエッジ強度に基づいて、画素ごとに相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することにより、画素値だけでは検出することが困難であった輪郭線近傍に存在する欠陥についても、エッジ強度の方向が変化することにより相互相関分布領域から外れるか否かに基づいて敏感に検出することができ、確実に欠陥の存在等を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の主制御部の相互相関分布領域の算出処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の主制御部の良品判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の、異なる二方向におけるエッジ強度のばらつきが小さく、ばらつく方向がランダムになっている場合の、所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の、輪郭線以外の部分の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の、輪郭線のばらつきが大きい場合の、所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の、異なる二方向におけるエッジ強度のばらつき方向がほぼ揃っている場合の、所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の主制御部の、指標値を用いる場合の良品判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の色の成分ごとの相互相関分布領域の例示図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の近似分布領域の例示図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の主制御部の近似分布領域の算出処理手順を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の主制御部の良品判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を模式的に示すブロック図である。図1に示すように本実施の形態1に係る画像処理装置2は、多値画像を撮像する撮像手段であるカメラ1及び撮像された多値画像又は演算処理の途上で生成された画像を表示する画像表示手段である表示装置3に接続されている。
【0035】
画像処理装置2は、少なくともCPU(中央演算装置)、LSI等で構成された主制御部21、メモリ22、記憶手段23、入力手段24、出力手段25、通信手段26、補助記憶手段27及び上述したハードウェアを接続する内部バス28で構成されている。主制御部21は、内部バス28を介して画像処理装置2の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部の動作を制御するとともに、記憶手段23に記憶されているコンピュータプログラム5に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。メモリ22は、SRAM、SDRAM等の揮発性メモリで構成され、コンピュータプログラム5の実行時にロードモジュールが展開され、コンピュータプログラム5の実行時に発生する一時的なデータ等を記憶する。
【0036】
記憶手段23は、内蔵される固定型記憶装置(ハードディスク、フラッシュメモリ)、ROM等で構成されている。記憶手段23に記憶されているコンピュータプログラム5は、プログラム及びデータ等の情報を記録したDVD、CD−ROM、フラッシュメモリ等の可搬型記録媒体4から、補助記憶手段27によりダウンロードされ、実行時には記憶手段23からメモリ22へ展開して実行される。もちろん、通信手段26を介して外部のコンピュータからダウンロードされたコンピュータプログラムであっても良い。
【0037】
記憶手段23は、取得した良品に関する複数の多値画像データを記憶しておく良品画像データ記憶部231と、良品画像データ記憶部231に記憶してある良品に関する複数の多値画像データに基づいて、異なる二方向、例えば二次元画像における列方向及び行方向における画素ごとのエッジ強度、該エッジ強度に基づいて算出された相互相関分布領域に関する情報(分布領域情報)等を記憶する分布領域情報記憶部232とを備えている。判定対象物に関するエッジ強度が、分布領域情報記憶部232に記憶してある分布領域情報に基づいて特定される相互相関分布領域に含まれているか否かの判断に応じて、判定対象物が良品であるか否かを判定する。
【0038】
通信手段26は内部バス28に接続されており、インターネット、LAN、WAN等の外部のネットワークに接続されることにより、外部のコンピュータ等とデータ送受信を行うことが可能となっている。すなわち、上述した記憶手段23は、画像処理装置2に内蔵される構成に限定されるものではなく、通信手段26を介して接続されている外部のサーバコンピュータ等に設置されているハードディスク等の外部記録媒体であっても良い。
【0039】
入力手段24は、キーボード及びマウス等のデータ入力媒体の他、液晶パネル等と一体となったタッチパネル等の入力情報を取得する装置全般を含む広い概念である。出力手段25は、レーザプリンタ、ドットプリンタ等の印刷装置等を意味する。
【0040】
カメラ(撮像手段)1は、CCD撮像素子を備えたCCDカメラ等である。表示装置(画像表示手段)3は、CRT、液晶パネル等を有する表示装置である。カメラ1、表示装置3等は、画像処理装置2と一体化されていても良いし、分離されていても良い。外部制御機器6は、通信手段26を介して接続されている制御機器であり、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)等が相当する。ここで外部制御機器6とは、画像処理装置2による画像処理結果に応じて後処理を実行する機器全般を意味している。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の一構成例を示す機能ブロック図である。図2において、本実施の形態1に係る画像処理装置2は、カメラ1と、画像処理装置2の処理を実行する画像処理部7と、記憶手段23と、画像表示部8とから構成される。
【0042】
カメラ1は、例えばディジタルカメラであり、判定対象物として例えばフィルム表面を撮像し多値画像を取得して画像処理部7へ出力する。
【0043】
画像処理部7は、良品画像取得手段71と、エッジ強度算出手段72と、平均値算出手段73と、分布領域算出手段74と、多値画像取得手段75と、位置調整手段76と、画像エッジ強度算出手段77と、判断手段78とを含む。また、画像処理部7は、主制御部21、メモリ22、外部I/F等を含んで構成され、良品画像取得手段71、エッジ強度算出手段72、平均値算出手段73、分布領域算出手段74、多値画像取得手段75、位置調整手段76、画像エッジ強度算出手段77、及び判断手段78の処理動作を制御する。
【0044】
記憶手段23は、画像メモリとして機能し、カメラ1により撮像された多値画像に関する多値画像データ、及び画像処理部7において位置合わせ、平均値算出等の各種処理を行った後の画像データを随時記憶する。画像データとしてではなく、画素ごとの輝度値データとして記憶しても良い。
【0045】
画像表示部8は、コンピュータ用のモニタ等の表示装置3で構成される。画像表示部8は、良品判定の対象となる判定対象物を撮像した多値画像、良品であるか否かの判定結果を、表示装置3の表示画面上に表示させる。すなわち多値画像表示手段81は、画像処理部7の指示に応じた多値画像を表示装置3の表示画面上に表示させ、判定結果表示手段82は、判定対象物が良品であるか否かの判定結果を表示装置3の表示画面上に表示させる。
【0046】
次に、画像処理部7の各構成について説明する。
【0047】
良品画像取得手段71は、カメラ1で撮像した、良品に関する複数の多値画像を取得する。すなわち、良品を撮像した多値画像を複数取得しておくことにより、画素ごとの輝度値のエッジ強度の平均値等を算出することができる。取得した各多値画像に関する多値画像データは、記憶手段23の良品画像データ記憶部231に記憶される。
【0048】
エッジ強度算出手段72は、取得した各多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する。エッジ強度の算出方法は周知の方法であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態1では、異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向について、それぞれエッジ強度を算出する。具体的にはソーベルフィルタで用いる3×3のウインドウテンプレートを用いて、行方向及び列方向のエッジ強度を算出すれば良い。
【0049】
平均値算出手段73は、算出した画素ごとのエッジ強度に基づいて、各多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出する。
【0050】
分布領域算出手段74は、算出した平均値を中心として、各多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。図3では、二次元画像における行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0052】
平均値算出手段73により、各多値画像の画素ごとに、二次元画像における行方向のエッジ強度exの平均値及び列方向のエッジ強度eyの平均値が算出されているので、各多値画像の画素ごとのエッジ強度の平均値ベクトルEAVE は、エッジ角度θを傾斜角とする直線上に位置する。そして、例えば取得した良品に関する各多値画像(第一の多値画像)の画素ごとのエッジ強度のばらつきが大きい場合であって、エッジ強度のばらつき方向がほぼ揃っているときには、良品に関する多値画像のエッジ強度の平均値ベクトルEAVE を長軸及び短軸が交差する点を中心とした仮想的な楕円領域に算出したエッジ強度が分布する。したがって、判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度を算出して、同一の画素について、二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点32が、相互相関分布領域31に含まれているか否かを判断することにより、判定対象物が良品であるか否かを判定することができる。
【0053】
すなわち、図2の多値画像取得手段75は、カメラ1で撮像した、判定対象物に関する多値画像(第二の多値画像)を取得する。位置調整手段76は、取得した判定対象物に関する多値画像と、良品に関する多値画像(第一の多値画像)との位置合わせを行う。具体的には、良品に関する複数の多値画像の平均画像を算出しておき、平均画像との間で位置合わせを行う。
【0054】
多値画像間で位置合わせを行う手段は、周知の技術であれば特に限定されるものではない。例えば、パターンマッチングにより双方の多値画像の位置を検出して、位置合わせを行っても良い。また、正規化相関等を算出することにより双方の多値画像の一致度を算出し、一致度が所定値より大きく、しかも極大となるよう位置合わせを行っても良い。もちろん、双方の多値画像の輪郭線、面積、重心等を一致させるよう位置合わせを行っても良い。
【0055】
画像エッジ強度算出手段77は、取得した判定対象物に関する多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する。エッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではないが、上述した方法と同様、異なる二方向である二次元画像の列方向及び行方向について、それぞれエッジ強度を算出する。
【0056】
判断手段78は、算出した判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある良品に関する複数の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する。算出したエッジ強度が相互相関分布領域に含まれていると判断した場合には、判定対象物が良品であると判定し、含まれていないと判断した場合には、判定対象物が良品ではないと判定する。
【0057】
なお、判断手段78で、算出した判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある良品に関する複数の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するのに、いわゆるマハラノビス距離を用いても良い。この場合、判断手段78の距離算出手段79は、相互相関分布領域の重心、例えば図3の例では仮想的な楕円領域である相互相関分布領域31の重心(中心点)から判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離を、重心からエッジ点に向かう方向における楕円領域の境界と重心との距離で正規化したマハラノビス距離を算出する。
【0058】
画素ごとのエッジ点のマハラノビス距離DM は、異なる二方向、すなわち図3の例ではX軸方向及びY軸方向における画素ごとのエッジ強度ベクトルx(ex 、ey )の平均値をそれぞれ平均値ベクトルμi (ex バー、ey バー)、分散共分散行列の逆行列をΣi-1 とした場合、ベクトル行列式を用いて(式1)のように算出することができる。
【0059】
【数1】

【0060】
(式1)において、λj は固有値であり、ベクトルφj は固有値λj に対応した固有ベクトルである。すなわち(式1)で算出するマハラノビス距離DM は、点x(ex 、ey )と相互相関分布領域31の重心との距離を、固有ベクトルφj 方向成分に分解し、固有ベクトルφj 方向成分を分散λj で正規化した距離と言える。なお、(式1)におけるiは分布の区別を示しており、上述した計算では相互相関分布領域31が1つであることから特段の意味を有してはいない。
【0061】
判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度について、(式1)で算出されるマハラノビス距離DM 、すなわち相互相関分布領域31の重心から判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離を、相互相関分布領域31の重心から該エッジ点に向かう方向における楕円領域の境界と重心との距離で正規化した値が所定の閾値より大きい場合には、エッジ点は相互相関分布領域31に含まれていない。したがって、エッジ角度が良品範囲を超えて変動したことを示しているので、輪郭線の形状が変化したと判断することができ、良品ではないと判定することができる。
【0062】
また、判断手段78で、算出した判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある良品に関する複数の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するのに、いわゆるユークリッド距離を用いても良い。この場合、判断手段78の距離算出手段79は、相互相関分布領域の重心、例えば図3の例では仮想的な楕円領域である相互相関分布領域31の重心(中心点)から判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度までの距離であるユークリッド距離を算出する。
【0063】
画素ごとのエッジ強度のユークリッド距離DE は、異なる二方向、すなわち図3の例ではX軸方向及びY軸方向における画素ごとのエッジ強度ベクトルx(ex 、ey )の平均値をそれぞれ平均値ベクトルμi (ex バー、ey バー)とした場合、(式2)のように算出することができる。
【0064】
【数2】

【0065】
(式2)において、ベクトルφj は、(式1)の固有値λj に対応した固有ベクトルである。なお、(式2)においても、iは分布の区別を示しており、上述した計算では相互相関分布領域31が1つであることから特段の意味を有してはいない。
【0066】
判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度について、(式2)で算出されるユークリッド距離DE、すなわち相互相関分布領域31の重心から判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離が、エッジ点に向かう方向における楕円領域の境界と重心との距離に基づく所定の閾値より大きい場合には、エッジ点は相互相関分布領域31に含まれていない。したがって、エッジ角度が良品範囲を超えて変動したことを示しているので、輪郭線の形状が変化したと判断することができ、良品ではないと判定することができる。
【0067】
図4は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の主制御部21の相互相関分布領域の算出処理手順を示すフローチャートである。画像処理装置2の主制御部21は、カメラ1で撮像した、良品に関する複数の多値画像を取得する(ステップS401)。主制御部21は、取得した多値画像群の多値画像データを、記憶手段23の良品画像データ記憶部231に記憶する(ステップS402)。
【0068】
主制御部21は、取得した各多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する(ステップS403)。エッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではないが、本実施の形態1では、異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向について、それぞれエッジ強度を算出する。
【0069】
主制御部21は、算出した画素ごとのエッジ強度に基づいて、各多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値、分散値、共分散値を算出する(ステップS404)。
【0070】
主制御部21は、算出した平均値を中心として、各多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出し(ステップS405)、算出した相互相関分布領域に関する情報を、記憶手段23の分布領域情報記憶部232に記憶する(ステップS406)。
【0071】
図5は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の主制御部21の良品判定処理の手順を示すフローチャートである。画像処理装置2の主制御部21は、カメラ1で撮像した、判定対象物に関する多値画像を取得する(ステップS501)。主制御部21は、取得した判定対象物に関する多値画像と、良品画像データ記憶部231に記憶してある良品に関する多値画像との位置合わせを行う(ステップS502)。具体的には、良品に関する複数の多値画像の平均画像を算出しておき、平均画像との間で位置合わせを行う。多値画像間で位置合わせを行う手段は、周知の技術であれば特に限定されるものではない。
【0072】
主制御部21は、取得した多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する(ステップS503)。エッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではないが、上述した方法と同様、異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向について、それぞれエッジ強度を算出する。
【0073】
主制御部21は、算出した多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出した良品に関する複数の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する(ステップS504)。主制御部21が、算出したエッジ強度が相互相関分布領域に含まれていると判断した場合(ステップS504:YES)、主制御部21は、判定対象物が良品であると判定し、判定対象物が良品である旨を示す情報を判定結果として、表示装置3の表示画面上に表示する(ステップS505)。主制御部21が、算出したエッジ強度が相互相関分布領域に含まれていないと判断した場合(ステップS504:NO)、主制御部21は、判定対象物が良品ではないと判定し、判定対象物が良品ではない旨を示す情報を判定結果として、表示装置3の表示画面上に表示する(ステップS506)。
【0074】
なお、上述した実施の形態1では、相互相関分布領域が、仮想的な楕円領域である場合について説明しているが、例えば取得した良品に関する多値画像のエッジ強度のばらつきが小さい場合であって、ばらつく方向がランダムになっているときには、良品に関する多値画像のエッジ強度の平均値ベクトルEAVE を中心とした仮想的な円領域に、算出したエッジ点が分布する。図6は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の、異なる二方向におけるエッジ強度のばらつきが小さく、ばらつく方向がランダムになっている場合の、所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。図6も図3と同様、二次元画像の行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0075】
図6に示すように、相互相関分布領域61を算出する基礎となった良品の精度が高い場合、良品に関する多値画像のエッジ強度の平均値ベクトルEAVE を中心とした非常に狭い円領域として相互相関分布領域61が算出される。判定対象物に関する多値画像について画素ごとに異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、同一の画素について、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点62が、相互相関分布領域61に含まれているか否かを判断する場合、相互相関分布領域61が狭小であることから、図3よりも微妙な相違、例えば輪郭線のシャープさ、形状の微妙な相違等まで検出することが可能となる。
【0076】
一方、良品の輪郭線以外の部分については、通常はエッジ強度は0(ゼロ)に近い。したがって、エッジ強度の平均値ベクトルEAVE が原点である仮想的な円領域に、算出したエッジ強度が分布する。図7は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の、輪郭線以外の部分の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。図7も図3と同様、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0077】
図7に示すように、良品の輪郭線以外の部分である場合、良品に関する多値画像のエッジ強度の平均値ベクトルEAVE が原点である非常に狭い円領域として相互相関分布領域63が算出される。判定対象物に関する多値画像の画素ごとに異なる二方向におけるエッジ強度を算出して、同一の画素について、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点64が、相互相関分布領域63に含まれているか否かを判断する場合、従来の方法では検出することが困難であった、判定対象物表面の傷、くぼみ等であっても、相互相関分布領域63が狭小であることから、形状の微妙な相違まで容易に検出することが可能となる。
【0078】
また、良品ごとに、輪郭線に微妙な歪が存在する場合、すなわち輪郭線近傍の画素において、輪郭線であったりなかったりするほど輪郭線のばらつきが大きい場合には、相互相関分布領域が仮想的な楕円領域であっても相互相関分布領域が原点近傍を含むように広がる。図8は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の、輪郭線のばらつきが大きい場合の、所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。図8も図3と同様、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0079】
図8に示すように、輪郭線のばらつきが大きい場合、図3と比べて広い範囲に相互相関分布領域65が存在するので、輪郭線の微妙なブレ、位置の微妙なズレ等を検出することはできない。しかし、バリ、欠け等が存在する判定対象物について、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点66は、エッジの方向が大きく変化することから、相互相関分布領域65に含まれることはない。したがって、バリ、欠け等の存在は、容易に検出することができる。
【0080】
さらに、良品ごとに色が異なる等の相違がある場合であって、良品に関する多値画像のエッジの方向が反転しているようなときには、エッジ強度の平均値ベクトルEAVE を中心とした複数の仮想的な円領域に、算出したエッジ強度が分布する場合も生じうる。図9は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の、異なる二方向におけるエッジ強度のばらつき方向がほぼ揃っている場合の、所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の相互相関分布領域の例示図である。図9も図3と同様、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0081】
図9に示すように、相互相関分布領域を算出する基礎となった良品ごとに色が相違し、良品に関する多値画像のエッジの方向が反転しているときには、エッジ強度の平均値ベクトルとして2つの平均値ベクトルEAVE1、EAVE2が存在し、エッジ強度の平均値ベクトルEAVE1、EAVE2をそれぞれ中心とした仮想的な楕円領域として相互相関分布領域91、92が存在する。判定対象物に関する多値画像の画素ごとのエッジ強度を算出し、同一の画素について、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点94が、相互相関分布領域91、92に含まれているか否かを判断する場合、相互相関分布領域91、92を包括するような分布領域(以下、近似分布領域)93を算出して、近似分布領域93に含まれているか否かを判断する。
【0082】
近似分布領域93の算出方法は特に限定されるものではない。
【0083】
近似分布領域93に含まれているが、相互相関分布領域91、92には含まれていない領域については、エッジ強度の方向が略一致していると判断することができる。形状が相違する等の場合には、エッジ強度の方向が大きく相違することから、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点94は、近似分布領域93から離れる。したがって、エッジ強度の変化を確実に把握することができ、良品であるか否かを判定することが可能となる。
【0084】
相互相関分布領域に含まれているか否かの判断を数値演算する場合、相互相関分布領域が角度θを有する楕円領域であることから主制御部21の演算処理負荷が大きい。そこで、相互相関分布領域が仮想的な楕円領域である場合、楕円領域の長軸、及び楕円領域の中心点を通り該長軸と直交する短軸を座標軸とした座標系に座標値を変換し、変換した座標系の長軸方向及び短軸方向を異なる二方向として、取得した良品に関する多値画像の画素ごとに、要素ごとのエッジ強度、エッジ強度の要素ごとの平均値、及びエッジ強度の要素ごとの分布領域を再算出しても良い。
【0085】
なお、判断の基準となる分布領域を、画素ごとの異なる二方向である二次元画像における指標値として算出しても良い。この場合、行方向、列方向、それぞれについてエッジ強度の総和、エッジ強度の二乗値の総和、行方向エッジ強度と列方向エッジ強度との積の総和を算出し、行方向、列方向、それぞれのエッジ強度の相関分布の分散共分散行列を算出する。
【0086】
そして、算出したそれぞれの分散共分散行列の固有値を定数倍して、定数を加算することにより、画素ごとの指標値を求めることができる。
【0087】
図10は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置2の主制御部21の、指標値を用いる場合の良品判定処理の手順を示すフローチャートである。画像処理装置2の主制御部21は、カメラ1で撮像した、判定対象物に関する多値画像を取得する(ステップS1001)。主制御部21は、取得した判定対象物に関する多値画像と、良品画像データ記憶部231に記憶してある良品に関する多値画像との位置合わせを行う(ステップS1002)。具体的には、良品に関する複数の多値画像の平均画像を算出しておき、平均画像との間で位置合わせを行う。多値画像間で位置合わせを行う手段は、周知の技術であれば特に限定されるものではない。
【0088】
主制御部21は、取得した多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する(ステップS1003)。エッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではないが、上述した方法と同様、異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向について、それぞれエッジ強度を算出する。
【0089】
主制御部21は、算出した多値画像の画素ごとの異なる二方向におけるエッジ強度と、エッジ強度の平均値との差分値を、画素ごとに算出し(ステップS1004)、算出した差分値を一組とした差分値ベクトルと、異なる二方向におけるエッジ強度の2つの固有ベクトルとのそれぞれ内積によって得ることができる2つの値(a、b)を指標値として算出する(ステップS1005)。
【0090】
主制御部21は、(a、b)が相互相関分布領域に含まれているか否かを判断し(ステップS1006)、主制御部21が、(a、b)が相互相関分布領域に含まれていると判断した場合(ステップS1006:YES)、主制御部21は、判定対象物が良品であると判定し、判定対象物が良品である旨を示す情報を判定結果として、表示装置3の表示画面上に表示する(ステップS1007)。具体的には、良品であることを示す‘0’を表示装置3の表示画面上に表示する。
【0091】
主制御部21が、(a、b)が相互相関分布領域に含まれていないと判断した場合(ステップS1006:NO)、主制御部21は、判定対象物が良品ではないと判定し、判定対象物が良品ではない旨を示す情報を判定結果として、表示装置3の表示画面上に表示する(ステップS1008)。具体的には、良品ではないことを示す‘1’を、あるいは相互相関分布領域からのはみ出し量を、表示装置3の表示画面上に表示する。
【0092】
以上のように本実施の形態1によれば、取得した判定対象物に関する多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、算出した画素ごとのエッジ強度が、算出してある良品に関する複数の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かにより良品であるか否かを判定するので、画素値だけでは検出することが困難であった輪郭線近傍に存在する欠陥についても、エッジ強度の方向が変化することにより相互相関分布領域から外れるか否かに基づいて敏感に検出することができ、確実に欠陥の存在等を検出することが可能となる。
【0093】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る画像処理装置の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。本実施の形態2は、カラー画像に関する良品判定処理を行う点で、実施の形態1とは相違する。
【0094】
図11は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置2の一構成例を示す機能ブロック図である。図11において、本実施の形態2に係る画像処理装置2は、実施の形態1と同様、カメラ1と、画像処理装置2の処理を実行する画像処理部7と、記憶手段23と、画像表示部8とから構成される。
【0095】
カメラ1は、例えばディジタルカメラであり、判定対象物として例えばフィルム表面を撮像し、カラー画像として多値画像を取得して画像処理部7へ出力する。
【0096】
画像処理部7は、良品画像取得手段71と、エッジ強度算出手段72と、統計値算出手段83と、分布領域算出手段74と、多値画像取得手段75と、位置調整手段76と、画像エッジ強度算出手段77と、判断手段78とを含む。また、画像処理部7は、主制御部21、メモリ22、外部I/F等を含んで構成され、良品画像取得手段71、エッジ強度算出手段72、統計値算出手段83、分布領域算出手段74、多値画像取得手段75、位置調整手段76、画像エッジ強度算出手段77、及び判断手段78の処理動作を制御する。
【0097】
記憶手段23は、画像メモリとして機能し、カメラ1により撮像された多値画像に関する多値画像データ、及び画像処理部7において位置合わせ、平均値算出等の各種処理を行った後の画像データを随時記憶する。画像データとしてではなく、画素ごとに色の成分ごとの輝度値データとして記憶しても良い。
【0098】
画像表示部8は、コンピュータ用のモニタ等の表示装置3で構成される。画像表示部8は、良品判定の対象となる判定対象物を撮像した多値画像、良品であるか否かの判定結果を、表示装置3の表示画面上に表示させる。すなわち多値画像表示手段81は、画像処理部7の指示に応じた多値画像を表示装置3の表示画面上に表示させ、判定結果表示手段82は、判定対象物が良品であるか否かの判定結果を表示装置3の表示画面上に表示させる。
【0099】
次に、画像処理部7の各構成について説明する。
【0100】
良品画像取得手段71は、カメラ1で撮像した、良品に関する複数のカラー多値画像を取得する。すなわち、良品を撮像したカラー多値画像を複数取得しておくことにより、画素ごとに色の成分ごとの輝度値のエッジ強度の平均値等を算出する。例えばR成分の輝度値のエッジ強度、G成分の輝度値のエッジ強度、及びB成分の輝度値のエッジ強度をそれぞれ算出する。取得した各カラー多値画像に関するカラー多値画像データは、記憶手段23の良品画像データ記憶部231に記憶される。
【0101】
エッジ強度算出手段72は、取得した各カラー多値画像の画素ごとに、異なる二方向における色の成分ごとのエッジ強度を算出する。エッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではなく、実施の形態1と同様、異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向について、それぞれエッジ強度を算出する。
【0102】
統計値算出手段83は、算出した画素ごとの色の成分ごとのエッジ強度に基づいて、各カラー多値画像の画素ごとに、異なる二方向における色の成分ごとのエッジ強度の平均値、分散値及び共分散値を算出する。
【0103】
分布領域算出手段74は、算出した平均値を中心として、各カラー多値画像の画素ごとに、色の成分ごとに異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する。算出した相互相関分布領域に関する情報は、領域の境界を示す関数式、座標値等として、記憶手段23の分布領域情報記憶部232に記憶される。
【0104】
近似分布領域算出手段80は、分布領域算出手段74で算出した色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に基づいて、すべての色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域を包括する仮想的な楕円領域を算出する。具体的には、色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域を包括するような楕円領域を、R成分、G成分、B成分ごとの異なる二方向のエッジ強度を特徴量として、近似分布領域を算出する。
【0105】
図12は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置2の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の色の成分ごとの相互相関分布領域の例示図である。図12では、図3と同様、二次元画像における行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0106】
平均値算出手段73により、各カラー多値画像の画素ごとに、二次元画像における行方向の色の成分ごとのエッジ強度exの平均値及び列方向の色の成分ごとのエッジ強度eyの平均値が算出されているので、R成分、G成分、B成分それぞれのエッジ強度の平均値ベクトルEAVER、EAVEG、EAVEBは、エッジ角度θを傾斜角とする直線上に位置する。したがって、判定対象物のカラー多値画像の画素ごとのエッジ強度を算出して、同一の画素について、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度ex及び列方向のエッジ強度eyをプロットしたエッジ点32が、相互相関分布領域31R、31G、31Bに含まれているか否かを判断することにより、判定対象物が良品であるか否かを判定することができる。
【0107】
しかし、相互相関分布領域31R、31G、31Bは、エッジ角θ方向を長軸方向とした楕円領域であり、すべての画素について色の成分ごとに分布領域情報記憶部232に記憶するのでは、記憶容量が過大となる。例えばR成分、G成分、B成分について、それぞれX軸方向及びY軸方向のエッジ強度を算出するので、6種類の演算処理が必要であり、それぞれの算出結果を分布領域情報記憶部232に記憶するので、記憶するべきデータ量が膨大となる。
【0108】
そこで、相互相関分布領域31R、31G、31Bにおいて原点を通る同一直線上に位置するエッジ点に着目し、色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域31R、31G、31Bを包括するような一の楕円領域を、近似分布領域として算出する。この場合、R成分、G成分、B成分について、それぞれX軸方向及びY軸方向のエッジ強度の相関分布を別々に算出するのではなく、全体として一つの相関分布を算出すれば足りるので、2種類の演算処理で足り、分布領域情報記憶部232に記憶するべきデータ量を大きく減少させることができる。
【0109】
判断手段78は、算出した判定対象物に関するカラー多値画像の画素ごとの色の成分ごとのエッジ強度が、算出してある良品に関する近似分布領域に含まれているか否かを判断する。算出したエッジ強度が近似分布領域に含まれていると判断した場合には、判定対象物が良品であると判定し、含まれていないと判断した場合には、判定対象物が良品ではないと判定する。
【0110】
図13は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置2の所定の画素における異なる二方向でのエッジ強度の近似分布領域の例示図である。図13では、図3と同様、異なる二方向である二次元画像における行方向のエッジ強度exをX軸、列方向のエッジ強度eyをY軸としている。
【0111】
図13に示すように、色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域31R、31G、31Bを包括するような楕円領域を、近似分布領域33として特定している。形状が相違する場合、エッジ強度の方向が大きく変化するので、プロットしたエッジ点32のように近似分布領域33から離れる。したがって、形状の相違は確実に検出することができる。
【0112】
図14は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置2の主制御部21の近似分布領域の算出処理手順を示すフローチャートである。画像処理装置2の主制御部21は、カメラ1で撮像した、良品に関する複数のカラー多値画像を取得する(ステップS1401)。主制御部21は、取得したカラー多値画像群のカラー多値画像データを、記憶手段23の良品画像データ記憶部231に記憶する(ステップS1402)。
【0113】
主制御部21は、取得した各カラー多値画像の画素ごとに、異なる二方向における色の成分ごとのエッジ強度を算出する(ステップS1403)。色の成分ごとのエッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではない。
【0114】
主制御部21は、算出した画素ごとのエッジ強度に基づいて、各カラー多値画像の画素ごとに、異なる二方向における色の成分ごとのエッジ強度の平均値、分散値、共分散値を算出する(ステップS1404)。
【0115】
主制御部21は、算出した平均値を中心として、各カラー多値画像の画素ごとに、異なる二方向における色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域を算出し(ステップS1405)、算出した画素ごとの色の成分ごとのエッジ強度の相互相関分布領域を包括する近似分布領域を算出する(ステップS1406)。主制御部21は、算出した近似分布領域に関する情報を、記憶手段23の分布領域情報記憶部232に記憶する(ステップS1407)。
【0116】
図15は、本発明の実施の形態2に係る画像処理装置2の主制御部21の良品判定処理の手順を示すフローチャートである。画像処理装置2の主制御部21は、カメラ1で撮像した、判定対象物に関するカラー多値画像を取得する(ステップS1501)。主制御部21は、取得した判定対象物に関するカラー多値画像と、良品画像データ記憶部231に記憶してある良品に関するカラー多値画像との位置合わせを行う(ステップS1502)。具体的には、良品に関する複数のカラー多値画像の平均画像を算出しておき、平均画像との間で位置合わせを行う。カラー多値画像間で位置合わせを行う手段は、周知の技術であれば特に限定されるものではない。
【0117】
主制御部21は、取得したカラー多値画像の画素ごとに、異なる二方向における色の成分ごとのエッジ強度を算出する(ステップS1503)。エッジ強度を算出する方向は特に限定されるものではないが、上述した方法と同様、異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向について、それぞれ色の成分ごとのエッジ強度を算出する。
【0118】
主制御部21は、算出したカラー多値画像の画素ごとの色の成分ごとのエッジ強度が、算出してある良品に関する複数のカラー多値画像の画素ごとのエッジ強度の近似分布領域に含まれているか否かを判断する(ステップS1504)。主制御部21が、算出したエッジ強度が算出してある近似分布領域に含まれていると判断した場合(ステップS1504:YES)、主制御部21は、判定対象物が良品であると判定し、判定対象物が良品である旨を示す情報を判定結果として、表示装置3の表示画面上に表示する(ステップS1505)。主制御部21が、算出したエッジ強度が算出してある近似分布領域に含まれていないと判断した場合(ステップS1504:NO)、主制御部21は、判定対象物が良品ではないと判定し、判定対象物が良品ではない旨を示す情報を判定結果として、表示装置3の表示画面上に表示する(ステップS1506)。
【0119】
以上のように本実施の形態2によれば、白黒画像では輪郭線が明確ではなかったカラー画像についても、明確に輪郭線を検出することができ、より正確に相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することが可能となる。また、例えば色の成分としてR成分、G成分、B成分ごとに相互相関分布領域を算出した場合、通常は3つの相互相関分布領域が形成される。これらの相互相関分布領域を包括する一の相互相関分布領域を仮想的な近似分布領域として一回の演算処理で算出することにより、色の成分ごとに別個に相互相関分布領域を算出する必要がなく、一回の演算処理で算出した近似分布領域に関する情報のみを記憶しておけば足りるので、記憶容量を節約することも可能となる。
【0120】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。異なる二方向である二次元画像における列方向及び行方向にとしているが、特に限定されるものではないし、色の成分についてもR成分、G成分、B成分だけではなく、シアン成分、マゼンタ成分、イエロー成分であっても良い。また、良品を撮像した複数の多値画像に基づいて、良品判定の基準となる相互相関分布領域を算出しているが、良品と判定される都度、良品と判定された判定対象物の多値画像を含めて相互相関分布領域を再算出することにより、動的に相互相関分布領域による判定精度を高めても良い。
【符号の説明】
【0121】
1 カメラ(撮像手段)
2 画像処理装置
3 表示装置(画像表示手段)
4 可搬型記録媒体
5 コンピュータプログラム
6 外部制御機器
7 画像処理部
8 画像表示部
21 主制御部
22 メモリ
23 記憶手段
24 入力手段
25 出力手段
26 通信手段
27 補助記憶手段
28 内部バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象物を撮像した多値画像を、良品に関する多値画像群と比較して良品判定を行う画像処理装置において、
撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得する良品画像取得手段と、
取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と、
算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出する平均値算出手段と、
算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する分布領域算出手段と、
撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得する多値画像取得手段と、
取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する画像エッジ強度算出手段と、
算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する判断手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記エッジ強度算出手段は、前記エッジ強度を互いに直交する二方向にて算出するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ強度算出手段は、前記エッジ強度を二次元画像における列方向と行方向との二方向にて算出するようにしてあることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第一の多値画像と前記第二の多値画像との位置合わせを行う位置調整手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記分布領域算出手段は、仮想的な楕円領域として前記相互相関分布領域を算出するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判断手段は、仮想的な前記楕円領域の重心から前記第二の多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離を、前記重心から前記エッジ点に向かう方向における前記楕円領域の境界と前記重心との距離で正規化したマハラノビス距離を算出する距離算出手段を備え、
算出したマハラノビス距離が所定値より小さいか否かで前記相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記距離算出手段は、仮想的な前記楕円領域の重心から前記第二の多値画像の画素ごとのエッジ点までの距離であるユークリッド距離を算出するようにしてあり、
前記判断手段は、算出したユークリッド距離が、前記楕円領域の重心から前記第二の多値画像の画素ごとのエッジ点に向かう方向における前記楕円領域の境界と前記重心との距離に基づく所定値より小さいか否かで前記相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
仮想的な前記楕円領域の長軸、及び前記楕円領域の中心点を通り該長軸と直交する短軸を座標軸とした座標系に座標値を変換する座標変換手段と、
変換した座標系の長軸方向及び短軸方向にて、取得した各第一の多値画像の画素ごとに、エッジ強度、エッジ強度の平均値、及びエッジ強度の相互相関分布領域を再算出する再算出手段と
を備え、
前記画像エッジ強度算出手段は、取得した第二の多値画像の画素ごとに、変換した座標系の長軸方向及び短軸方向におけるエッジ強度を算出するようにしてあり、
前記判断手段は、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、再算出した各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の要素ごとの相互相関分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項9】
取得した前記第一の多値画像及び前記第二の多値画像はカラー画像であり、
色の成分ごとにエッジ強度、エッジ強度の平均値、及びエッジ強度の相互相関分布領域を算出するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
色の成分ごとに算出したエッジ強度の相互相関分布領域を包括する近似分布領域を算出する近似分布領域算出手段を備え、
前記判断手段は、算出した近似分布領域を相互相関分布領域として、算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、前記近似分布領域に含まれているか否かを判断するようにしてあることを特徴とする請求項9記載の画像処理装置。
【請求項11】
判定対象物を撮像した多値画像を、良品に関する多値画像群と比較して良品判定を行う画像処理装置で実行することが可能な画像処理方法において、
前記画像処理装置は、
撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得し、
取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、
算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出し、
算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出し、
撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得し、
取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出し、
算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
判定対象物を撮像した多値画像を、良品に関する多値画像群と比較して良品判定を行う画像処理装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記画像処理装置を、
撮像手段で撮像された、良品に関する複数の第一の多値画像を取得する良品画像取得手段、
取得した各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段、
算出したエッジ強度に基づいて、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の平均値を算出する平均値算出手段、
算出した平均値を中心として、各第一の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度の相互相関分布領域を算出する分布領域算出手段、
撮像手段で撮像された、判定対象物に関する第二の多値画像を取得する多値画像取得手段、
取得した第二の多値画像の画素ごとに、異なる二方向におけるエッジ強度を算出する画像エッジ強度算出手段、及び
算出した第二の多値画像の画素ごとのエッジ強度が、算出してある各第一の多値画像の画素ごとのエッジ強度の相互相関分布領域に含まれているか否かを判断する判断手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−243138(P2011−243138A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117083(P2010−117083)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】