画像処理装置および方法並びにプログラム
【課題】人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像において、人体の領域とそれ以外の領域とを分離する。
【解決手段】画像取得部1が、被写体の頭部を複数の切断位置で切断したときの各輪切の画像からなる複数のCT画像を取得する。多値化部2が、複数のCT画像のそれぞれを多値化して多値化画像を生成し、結合部3が、多値化画像の連結成分同士を結合する。削除部4が、CT画像から人体以外の領域を削除し、疑似3次元医用画像生成部5が、人体以外の領域が削除されたCT画像の人体の領域を表す画像情報に基づいて、例えばminIP法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する。表示部6が、疑似3次元医用画像生成部3により生成された疑似3次元医用画像を表示する。
【解決手段】画像取得部1が、被写体の頭部を複数の切断位置で切断したときの各輪切の画像からなる複数のCT画像を取得する。多値化部2が、複数のCT画像のそれぞれを多値化して多値化画像を生成し、結合部3が、多値化画像の連結成分同士を結合する。削除部4が、CT画像から人体以外の領域を削除し、疑似3次元医用画像生成部5が、人体以外の領域が削除されたCT画像の人体の領域を表す画像情報に基づいて、例えばminIP法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する。表示部6が、疑似3次元医用画像生成部3により生成された疑似3次元医用画像を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像から不要な部分を削除する画像処理装置および方法並びに画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、X線CT装置等で人体を撮影する場合、被験者を寝台により支えて撮影を行うため、撮影により取得される医用画像には、人体の領域とともに寝台の領域が含まれることとなる。このような寝台の領域は、医用画像においては診断の邪魔となるため、診断前に除去することが好ましい。このため、特許文献1,2に示すように、医用画像を二値化処理し、医用画像を人体の領域とそれ以外の領域とに分離し、人体以外の領域を医用画像から削除する手法が提案されている。
【0003】
一方、医療分野においては、複数の医用画像に対して、3次元的な画像の構築を可能とする画像投影法(Intensity Projection法、以下IP法という)を実行することにより、疑似3次元医用画像を生成することが行われている。
【0004】
画像投影法は、処理対象であるすべての医用画像に対して、対応するそれぞれのピクセルについて最大値(もしくは最小値,特定値)を取り出して投影することで得られた疑似3次元医用画像を得る処理である。すなわち、図11に示すような場合、奥行き方向に得られた第1番目から第N番目までの医用画像に対して、同一ピクセルでの最大値(もしくは最小値,特定値)を取り出す処理を全ピクセルについて行うことにより、疑似3次元医用画像を得ることを可能としている。
【0005】
この画像投影法としては、複数の医用画像のそれぞれから最大値を取り出して疑似3次元医用画像を生成するMIP(Maximum Intensity Projection)法、および複数の医用画像のそれぞれから最小値を取り出して疑似3次元医用画像を生成するminIP(Minimum Intensity Projection)法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−187444号公報
【特許文献2】特開2003−70782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された手法は二値化処理により人体とそれ以外の領域とを分離するものであるため、人体と寝台とが接触していると、人体と寝台とが同一の領域となるようにラベリングされてしまう。このため、人体と寝台とが接触している場合、特許文献1,2に記載された手法によっては、人体と寝台とを分離することができず、その結果、医用画像から寝台の領域を削除することができない。このように医用画像から寝台の領域を削除できないと、とくに、上述した疑似3次元医用画像を生成する場合においては、3次元医用画像に寝台が含まれてしまうことから、診断の妨げとなる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像において、人体の領域と人体以外の領域とを分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による画像処理装置は、人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成する多値化手段と、
前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合する結合手段と、
前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除する削除手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明による画像処理装置においては、前記医用画像はCT画像であってもよい。
【0011】
また、本発明による画像処理装置においては、前記多値化手段を、前記医用画像を輝度域が異なる3つの連結成分に分離するよう多値化する手段とし、
前記結合手段を、前記3つの連結成分のうちの輝度域が隣接する2つの連結成分同士が接触している部分の長さを測定し、前記2つの連結成分において前記接触している部分の長さの、該2つの連結成分のうちの一方の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している2つの連結成分を1つの連結成分に結合する手段とし、
前記削除手段を、前記結合された連結成分および前記3つの連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段としてもよい。
【0012】
また、本発明による画像処理装置においては、前記医用画像がCT画像である場合、前記多値化手段を、該医用画像を低CT値領域からなる第1の連結成分、中CT値領域からなる第2の連結成分および高CT値領域からなる第3の連結成分に多値化する手段とし、
前記結合手段を、前記第2の連結成分と前記第3の連結成分における前記接触している部分の長さを測定し、前記第2および前記第3の連結成分が接触している部分の長さの、該第2または該第3の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している前記第2および前記第3の連結成分を1つの連結成分に結合する手段とし、
前記削除手段を、前記第2の連結成分、前記第3の連結成分、および前記結合された第2および第3の連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段としてもよい。
【0013】
また、本発明による画像処理装置においては、前記削除手段を、前記人体の横断面を示す複数の医用画像のそれぞれから前記人体以外の領域を削除する手段とし、
前記人体以外の領域が削除された前記複数の医用画像に基づき画像投影法を実行することにより3次元医用画像を生成する3次元医用画像生成手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0014】
「3次元医用画像生成部」は、画像投影法のうち、minIP法またはMIP法いずれかの手法を実行するものであってもよい。
【0015】
本発明による画像処理方法は、多値化画像生成手段が、人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成し、
結合手段が、前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、
削除手段が、前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除することを特徴とするものである。
【0016】
なお、本発明による画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、医用画像が多値化されて多値化画像が生成される。多値化画像においては、多値化する際のしきい値を適切に設定することにより、人体と、骨および寝台等の不要部分と、何も存在しない(空気のみが存在する)部分とをそれぞれ別個の連結領域とすることができる。ここで、撮影時に人体を寝台により支えた場合、人体と寝台との接触部分は、人体または寝台の全領域の周囲長と比較して小さいものとなる。このため、多値化画像の連結成分同士を、連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、結合結果に基づいて、医用画像における人体以外の領域を削除することにより、人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像から人体以外の領域を削除することができる。
【0018】
また、医用画像を輝度域が異なる3つの連結成分に分離するように多値化し、3つの連結成分のうちの輝度域が隣接する2つの連結成分同士が接触している部分の長さを測定し、これら2つの連結成分において接触している部分の長さの、2つの連結成分のうちの一方の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、その比率が所定のしきい値以上の場合に、接触している2つの連結成分を1つの連結成分に結合することにより、人体の連結成分と、寝台の連結成分とが1つの連結成分に結合されることがなくなる。したがって、人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像から寝台等の人体以外の領域を確実に削除することができる。
【0019】
とくに、医用画像をCT画像とした場合において、医用画像を低CT値領域からなる第1の連結成分、中CT値領域からなる第2の連結成分および高CT値領域からなる第3の連結成分に多値化し、第2の連結成分と第3の連結成分における接触している部分の長さを測定し、第2および第3の連結成分が接触している部分の長さの、第2または第3の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、比率が所定のしきい値以上の場合に、接触している第2および第3の連結成分を1つの連結成分に結合し、第2の連結成分、第3の連結成分、および結合された第2および第3の連結成分のうち、最大領域以外の連結成分を医用画像から削除することにより、医用画像から寝台を確実に削除することができる。
【0020】
また、予め撮像された人体の横断面を示す複数の医用画像のそれぞれから人体以外の領域を削除し、人体以外の領域が削除された複数の医用画像に基づき画像投影法を実行して3次元医用画像を生成することにより、生成された3次元医用画像には寝台が含まれることがなくなる。したがって、3次元医用画像を用いての診断を、寝台に邪魔されることなく、効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図
【図2】CT画像の例を示す図
【図3】図2に示すCT画像を多値化することにより生成した多値化画像を示す図
【図4】撮影時の頭部と寝台との関係を示す図
【図5】本実施形態において生成されるマスク画像を示す図
【図6】本実施形態によりCT画像から寝台が削除された状態を示す図
【図7】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【図8】図2に示すCT画像を二値化することにより生成した二値化画像を示す図
【図9】二値化処理により生成されるマスク画像を示す図
【図10】二値化処理を行った場合におけるCT画像から寝台が削除された状態を示す図
【図11】疑似3次元医用画像上の指定点と対応する医用画像の対応点との一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による画像処理装置10は、人体の横断面を示す複数の医用画像を取得する画像取得部1、複数の医用画像のそれぞれを多値化する多値化部2、多値化画像の連結成分同士を結合する結合部3、結合結果に基づいて、各医用画像から人体以外の領域を削除する削除部4、人体以外の領域が削除された医用画像における人体の領域を表す画像情報に基づき、画像投影法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する疑似3次元医用画像生成部5、および疑似3次元医用画像および/または医用画像を表示する表示部6を備える。
【0023】
画像取得部1は、複数の医用画像(例えば、CT画像やMRI画像等)を記録した記録媒体を読み取ることにより、もしくはCT装置(コンピュータ断層撮影装置;Computed Tomography)やMRI装置(核磁気共鳴撮像装置)から通信回線を経由することにより、複数の医用画像を取得するものである。なお、画像取得部1が、CT装置やMRI装置であってもよい。ここで、本実施形態においては、被写体の頭部を複数の切断位置で切断したときの各輪切の画像からなる複数のCT画像を医用画像として取得するものとする。
【0024】
多値化部2は、複数のCT画像のそれぞれを多値化する。ここで、CT画像におけるCT値は−1000(空気のCT値)から+4000までの範囲に分布している。また、CT画像において、被写体が存在せず空気のみが存在するすぬけ部、骨の内部の空間部分および照射野外の領域はCT値が−200より低く、人体組織はCT値が−200〜+400に分布し、寝台、骨および造影血管等はCT値が+400よりも高くなる。したがって、多値化部2は、−200程度の第1のしきい値Th1および+400程度の第2のしきい値Th2によりCT画像を多値化する。具体的には、CT画像において、CT値が第1のしきい値Th1未満の低CT値を有する画素を0に、CT値が第1のしきい値Th1以上第2のしきい値Th2未満の中CT値を有する画素を0.5に、CT値が第2のしきい値Th2以上の高CT値を有する画素を1に置き換える処理を行って多値化画像を生成する。なお、多値化画像における画素値は、1が最高輝度(白)、0が最低輝度(黒)、0.5がグレーとなって表現される。
【0025】
図2はCT画像の例を示す図、図3は図2に示すCT画像を第1のしきい値Th1および第2のしきい値Th2により多値化することにより生成した多値化画像を示す図である。なお、図2に示すCT画像は、図4に示すようにクッション21を介して寝台20に載せた人体の頭部22をCT装置により撮影することにより取得したものであり、CT画像には、頭部22に対応する頭部領域、および寝台20に対応する寝台領域が含まれている。なお、クッション21はX線を透過するため、CT画像にはクッション21は現れないこととなる。また、CT画像における頭部領域内には、頭部組織、骨、骨内部の空間および造影血管等が含まれる。
【0026】
なお、図3に示すように多値化画像においては、CT画像における空気の領域は最低輝度、寝台、骨および造影血管の領域は最高輝度、人体組織の領域は中間輝度のグレーとなっている。
【0027】
結合部3は、まず多値化画像をラベリング処理する。ラベリング処理とは、繋がっているすべての画素(連結成分)に同じ番号(ラベル)を付与し、異なる連結成分には別の番号を付与する処理である。例えば、隣接する画素が互いに0.5の場合には、これらの画素は繋がっていることになる。これにより、多値化画像は、低CT値の連結成分(第1の連結成分とする)、中CT値の連結成分(第2の連結成分とする)、および高CT値の連結成分(第3の連結成分とする)にラベリングされる。
【0028】
また、結合部3は、第2および第3の連結成分同士の接触部分の長さを算出し、その長さの第3の連結成分の周囲長の対する割合がしきい値Th3以上(例えば40%以上)となる場合に、その第2および第3の連結成分を結合する。例えば、図3に示す多値化画像において、頭部領域内における頭部組織は主に第2の連結成分となるが、頭部領域の内部には骨等の第3の連結成分が存在する。頭部領域内部の第3の連結成分の、頭部組織の第2の連結成分と接触する部分の長さは、第3の連結成分の周囲長と略一致するものとなっている。このため、結合部3は、頭部領域の内部においては、第2および第3の連結成分を結合する。なお、第2および第3の連結成分同士の接触部分の長さの、第2の連結成分の周囲長の対する割合がしきい値Th3以上となる場合に、その第2および第3の連結成分を結合するようにしてもよい。
【0029】
一方、図3に示す多値化画像において、その左側にある左耳の領域は左側の寝台領域と接触している。ここで、左耳の領域と左側の寝台領域との接触部分の長さは非常に短く、左側の寝台領域の周囲長に対するその接触部分の長さの割合は非常に小さいものとなっている。したがって、左耳の領域に対応する第2の連結成分と、左側の寝台領域に対応する第3の連結成分とは接触しているものの、その接触部分の長さの左側の寝台領域の周囲長に対する割合はしきい値Th3未満となることから、結合部3は、左耳の領域に対応する第2の連結成分と、左側の寝台領域に対応する第3の連結成分とを結合しない。
【0030】
なお、右耳の領域は右側の寝台領域と接触していないため、結合部3は、右耳の領域に対応する第2の連結成分と右側の寝台領域に対応する第3の連結成分とを結合しない。
【0031】
削除部4は、各CT画像の多値化画像に含まれる第2の連結成分、第3の連結成分、および結合された第2および第3の連結成分(以下結合成分とする)のうち、最も画素数が多い連結成分(最大連結成分)を人体の領域に設定し、各CT画像から人体の領域以外の領域を削除する。
【0032】
具体的には、削除部4は、多値化画像において、最大連結成分を残し、それ以外の連結成分の画素を0に置き換える。具体的には、ラベリングした多値化画像を走査し、最も画素数が多かったラベル値を有する画素を残し、それ以外の画素を0に置き換える。
【0033】
そして、削除部4は、最大連結成分の輪郭を追跡し、最大連結成分の最外周の輪郭線を抽出する。具体的には、最大連結成分のみが残された多値化画像の左上隅画素から横に走査し、最初に出会った非ゼロのラベル値を有する画素を開始点として反時計回り方向に輪郭を追跡し、開始点に戻ったら追跡を終了する。上記輪郭線上の画素にはラベル値とは異なる値、例えば1を代入しておく。
【0034】
さらに削除部4は、輪郭線の内部を1で塗りつぶし、マスク画像を作成する。図5はマスク画像を示す図である。図5に示すようにマスク画像におけるマスク領域は、CT画像における頭部領域にのみ相当するものとなっている。
【0035】
そして削除部4は、CT画像とマスク画像とを掛け合わせて、マスク領域外の画素をCT画像から削除する。具体的には、マスク画像を1画素ずつ調べ、ゼロの画素を検出したら、その画素の座標に対応するCT画像の画素を最低輝度(CT画像の場合は−1000)に置き換える処理をする。これを全画素について行えば、マスク領域外の画素がCT画像から削除される。
【0036】
これにより、CT画像からは図6に示すように寝台に相当する領域が削除され、頭部領域のみが残ることとなる。
【0037】
疑似3次元医用画像生成部5は、寝台の領域が削除された複数のCT画像に基づき、画像投影法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する。画像投影法としては、例えば、minIP法またはMIP法を用いる。
【0038】
表示部6は、医用画像や疑似3次元医用画像を表示するモニタ、CRT画面、液晶画面等である。
【0039】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図7は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。
【0040】
まず、画像取得部1が複数のCT画像を取得する(ステップST1)。次いで、多値化部2が、複数のCT画像のそれぞれを多値化して多値化画像を生成し(ステップST2)、結合部3が、多値化画像の連結成分同士を結合する(ステップST3)。そして削除部4が、各CT画像から人体以外の領域を削除し(ステップST4)、疑似3次元医用画像生成部5が、人体以外の領域が削除された各CT画像の人体領域を表す画像情報に基づいて、上述したminIP法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する(ステップST5)。そして、表示部6が、疑似3次元医用画像生成部3により生成された疑似3次元医用画像を表示し(ステップST6)、処理を終了する。
【0041】
ここで、従来の二値化処理による手法と本実施形態による手法とを比較する。図8は図2に示すCT画像を、1つのしきい値(=−200)により二値化することにより生成した二値化画像を示す図である。図8に示すように二値化画像においては、CT画像における空気の領域は最低輝度、寝台、骨および造影血管の領域、並びに人体組織の領域は最高輝度となっている。
【0042】
このように生成された二値化画像は、低CT値の連結成分と、それ以外の連結成分の2つにラベリングされることとなる。このようにラベリングされた二値化画像においては、図3に示す本実施形態により生成した多値化画像と比較して、左耳の領域と左側の寝台領域とが同一の輝度となっている。このため、削除部4において、二値化画像の最大連結成分を残し、それ以外の連結成分の画素を0に置き換えた場合、マスク画像は図9に示すように頭部領域と左側の寝台領域にマスク領域を有するものとなるため、マスク領域外の画素をCT画像から削除した場合、CT画像には図10に示すように頭部領域の他に寝台領域が残ってしまう。
【0043】
本実施形態においては、CT画像を多値化するようにしたものである。ここで、多値化画像においては、多値化のしきい値を適切に設定することにより、人体と、骨および寝台等の不要部分と、何も存在しない(空気のみが存在する)部分とをそれぞれ別個の連結領域とすることができる。一方、撮影時に人体を寝台により支えた場合、人体と寝台との接触部分は、人体の全領域の周囲長と比較して小さいものとなる。このため、多値化画像の連結成分同士を、連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、結合結果に基づいて、医用画像における人体以外の領域を削除することにより、人体と寝台とが接触していても、医用画像から人体以外の寝台等の領域を削除することができる。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、図6に示すように、CT画像から寝台に相当する領域をすべて削除することができるため、3次元医用画像を生成した際に、生成された3次元医用画像には寝台が含まれることがなくなる。したがって、3次元医用画像を用いての診断を、寝台に邪魔されることなく、効率よく行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態においては、頭部のCT画像を対象として処理を行っているが、医用画像として、MRI画像を用いることも可能である。また、被写体としても頭部に限定されるものではなく、人体の各種部分の医用画像を対象とすることが可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、複数のCT画像から人体以外の領域を削除して疑似3次元医用画像を生成しているが、疑似3次元医用画像を生成しない場合にも本発明を適用できることはもちろんである。
【0047】
また、上記実施形態においては、2つのしきい値により医用画像を多値化しているが、3以上のしきい値により医用画像を多値化してもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る装置10について説明したが、コンピュータを、上記の画像取得部1、多値化部2、結合部3、削除部4および疑似3次元医用画像生成部5に対応する手段として機能させ、図7に示すような処理を行わせるプログラムも本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の実施形態の1つである。
【符号の説明】
【0049】
1 画像取得部
2 多値化部
3 結合部
4 削除部
5 疑似3次元医用画像生成部
6 表示部
10 画像処理装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像から不要な部分を削除する画像処理装置および方法並びに画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、X線CT装置等で人体を撮影する場合、被験者を寝台により支えて撮影を行うため、撮影により取得される医用画像には、人体の領域とともに寝台の領域が含まれることとなる。このような寝台の領域は、医用画像においては診断の邪魔となるため、診断前に除去することが好ましい。このため、特許文献1,2に示すように、医用画像を二値化処理し、医用画像を人体の領域とそれ以外の領域とに分離し、人体以外の領域を医用画像から削除する手法が提案されている。
【0003】
一方、医療分野においては、複数の医用画像に対して、3次元的な画像の構築を可能とする画像投影法(Intensity Projection法、以下IP法という)を実行することにより、疑似3次元医用画像を生成することが行われている。
【0004】
画像投影法は、処理対象であるすべての医用画像に対して、対応するそれぞれのピクセルについて最大値(もしくは最小値,特定値)を取り出して投影することで得られた疑似3次元医用画像を得る処理である。すなわち、図11に示すような場合、奥行き方向に得られた第1番目から第N番目までの医用画像に対して、同一ピクセルでの最大値(もしくは最小値,特定値)を取り出す処理を全ピクセルについて行うことにより、疑似3次元医用画像を得ることを可能としている。
【0005】
この画像投影法としては、複数の医用画像のそれぞれから最大値を取り出して疑似3次元医用画像を生成するMIP(Maximum Intensity Projection)法、および複数の医用画像のそれぞれから最小値を取り出して疑似3次元医用画像を生成するminIP(Minimum Intensity Projection)法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−187444号公報
【特許文献2】特開2003−70782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された手法は二値化処理により人体とそれ以外の領域とを分離するものであるため、人体と寝台とが接触していると、人体と寝台とが同一の領域となるようにラベリングされてしまう。このため、人体と寝台とが接触している場合、特許文献1,2に記載された手法によっては、人体と寝台とを分離することができず、その結果、医用画像から寝台の領域を削除することができない。このように医用画像から寝台の領域を削除できないと、とくに、上述した疑似3次元医用画像を生成する場合においては、3次元医用画像に寝台が含まれてしまうことから、診断の妨げとなる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像において、人体の領域と人体以外の領域とを分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による画像処理装置は、人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成する多値化手段と、
前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合する結合手段と、
前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除する削除手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明による画像処理装置においては、前記医用画像はCT画像であってもよい。
【0011】
また、本発明による画像処理装置においては、前記多値化手段を、前記医用画像を輝度域が異なる3つの連結成分に分離するよう多値化する手段とし、
前記結合手段を、前記3つの連結成分のうちの輝度域が隣接する2つの連結成分同士が接触している部分の長さを測定し、前記2つの連結成分において前記接触している部分の長さの、該2つの連結成分のうちの一方の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している2つの連結成分を1つの連結成分に結合する手段とし、
前記削除手段を、前記結合された連結成分および前記3つの連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段としてもよい。
【0012】
また、本発明による画像処理装置においては、前記医用画像がCT画像である場合、前記多値化手段を、該医用画像を低CT値領域からなる第1の連結成分、中CT値領域からなる第2の連結成分および高CT値領域からなる第3の連結成分に多値化する手段とし、
前記結合手段を、前記第2の連結成分と前記第3の連結成分における前記接触している部分の長さを測定し、前記第2および前記第3の連結成分が接触している部分の長さの、該第2または該第3の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している前記第2および前記第3の連結成分を1つの連結成分に結合する手段とし、
前記削除手段を、前記第2の連結成分、前記第3の連結成分、および前記結合された第2および第3の連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段としてもよい。
【0013】
また、本発明による画像処理装置においては、前記削除手段を、前記人体の横断面を示す複数の医用画像のそれぞれから前記人体以外の領域を削除する手段とし、
前記人体以外の領域が削除された前記複数の医用画像に基づき画像投影法を実行することにより3次元医用画像を生成する3次元医用画像生成手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0014】
「3次元医用画像生成部」は、画像投影法のうち、minIP法またはMIP法いずれかの手法を実行するものであってもよい。
【0015】
本発明による画像処理方法は、多値化画像生成手段が、人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成し、
結合手段が、前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、
削除手段が、前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除することを特徴とするものである。
【0016】
なお、本発明による画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、医用画像が多値化されて多値化画像が生成される。多値化画像においては、多値化する際のしきい値を適切に設定することにより、人体と、骨および寝台等の不要部分と、何も存在しない(空気のみが存在する)部分とをそれぞれ別個の連結領域とすることができる。ここで、撮影時に人体を寝台により支えた場合、人体と寝台との接触部分は、人体または寝台の全領域の周囲長と比較して小さいものとなる。このため、多値化画像の連結成分同士を、連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、結合結果に基づいて、医用画像における人体以外の領域を削除することにより、人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像から人体以外の領域を削除することができる。
【0018】
また、医用画像を輝度域が異なる3つの連結成分に分離するように多値化し、3つの連結成分のうちの輝度域が隣接する2つの連結成分同士が接触している部分の長さを測定し、これら2つの連結成分において接触している部分の長さの、2つの連結成分のうちの一方の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、その比率が所定のしきい値以上の場合に、接触している2つの連結成分を1つの連結成分に結合することにより、人体の連結成分と、寝台の連結成分とが1つの連結成分に結合されることがなくなる。したがって、人体と寝台等の人体以外の被写体とが接触していても、医用画像から寝台等の人体以外の領域を確実に削除することができる。
【0019】
とくに、医用画像をCT画像とした場合において、医用画像を低CT値領域からなる第1の連結成分、中CT値領域からなる第2の連結成分および高CT値領域からなる第3の連結成分に多値化し、第2の連結成分と第3の連結成分における接触している部分の長さを測定し、第2および第3の連結成分が接触している部分の長さの、第2または第3の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、比率が所定のしきい値以上の場合に、接触している第2および第3の連結成分を1つの連結成分に結合し、第2の連結成分、第3の連結成分、および結合された第2および第3の連結成分のうち、最大領域以外の連結成分を医用画像から削除することにより、医用画像から寝台を確実に削除することができる。
【0020】
また、予め撮像された人体の横断面を示す複数の医用画像のそれぞれから人体以外の領域を削除し、人体以外の領域が削除された複数の医用画像に基づき画像投影法を実行して3次元医用画像を生成することにより、生成された3次元医用画像には寝台が含まれることがなくなる。したがって、3次元医用画像を用いての診断を、寝台に邪魔されることなく、効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図
【図2】CT画像の例を示す図
【図3】図2に示すCT画像を多値化することにより生成した多値化画像を示す図
【図4】撮影時の頭部と寝台との関係を示す図
【図5】本実施形態において生成されるマスク画像を示す図
【図6】本実施形態によりCT画像から寝台が削除された状態を示す図
【図7】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【図8】図2に示すCT画像を二値化することにより生成した二値化画像を示す図
【図9】二値化処理により生成されるマスク画像を示す図
【図10】二値化処理を行った場合におけるCT画像から寝台が削除された状態を示す図
【図11】疑似3次元医用画像上の指定点と対応する医用画像の対応点との一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による画像処理装置10は、人体の横断面を示す複数の医用画像を取得する画像取得部1、複数の医用画像のそれぞれを多値化する多値化部2、多値化画像の連結成分同士を結合する結合部3、結合結果に基づいて、各医用画像から人体以外の領域を削除する削除部4、人体以外の領域が削除された医用画像における人体の領域を表す画像情報に基づき、画像投影法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する疑似3次元医用画像生成部5、および疑似3次元医用画像および/または医用画像を表示する表示部6を備える。
【0023】
画像取得部1は、複数の医用画像(例えば、CT画像やMRI画像等)を記録した記録媒体を読み取ることにより、もしくはCT装置(コンピュータ断層撮影装置;Computed Tomography)やMRI装置(核磁気共鳴撮像装置)から通信回線を経由することにより、複数の医用画像を取得するものである。なお、画像取得部1が、CT装置やMRI装置であってもよい。ここで、本実施形態においては、被写体の頭部を複数の切断位置で切断したときの各輪切の画像からなる複数のCT画像を医用画像として取得するものとする。
【0024】
多値化部2は、複数のCT画像のそれぞれを多値化する。ここで、CT画像におけるCT値は−1000(空気のCT値)から+4000までの範囲に分布している。また、CT画像において、被写体が存在せず空気のみが存在するすぬけ部、骨の内部の空間部分および照射野外の領域はCT値が−200より低く、人体組織はCT値が−200〜+400に分布し、寝台、骨および造影血管等はCT値が+400よりも高くなる。したがって、多値化部2は、−200程度の第1のしきい値Th1および+400程度の第2のしきい値Th2によりCT画像を多値化する。具体的には、CT画像において、CT値が第1のしきい値Th1未満の低CT値を有する画素を0に、CT値が第1のしきい値Th1以上第2のしきい値Th2未満の中CT値を有する画素を0.5に、CT値が第2のしきい値Th2以上の高CT値を有する画素を1に置き換える処理を行って多値化画像を生成する。なお、多値化画像における画素値は、1が最高輝度(白)、0が最低輝度(黒)、0.5がグレーとなって表現される。
【0025】
図2はCT画像の例を示す図、図3は図2に示すCT画像を第1のしきい値Th1および第2のしきい値Th2により多値化することにより生成した多値化画像を示す図である。なお、図2に示すCT画像は、図4に示すようにクッション21を介して寝台20に載せた人体の頭部22をCT装置により撮影することにより取得したものであり、CT画像には、頭部22に対応する頭部領域、および寝台20に対応する寝台領域が含まれている。なお、クッション21はX線を透過するため、CT画像にはクッション21は現れないこととなる。また、CT画像における頭部領域内には、頭部組織、骨、骨内部の空間および造影血管等が含まれる。
【0026】
なお、図3に示すように多値化画像においては、CT画像における空気の領域は最低輝度、寝台、骨および造影血管の領域は最高輝度、人体組織の領域は中間輝度のグレーとなっている。
【0027】
結合部3は、まず多値化画像をラベリング処理する。ラベリング処理とは、繋がっているすべての画素(連結成分)に同じ番号(ラベル)を付与し、異なる連結成分には別の番号を付与する処理である。例えば、隣接する画素が互いに0.5の場合には、これらの画素は繋がっていることになる。これにより、多値化画像は、低CT値の連結成分(第1の連結成分とする)、中CT値の連結成分(第2の連結成分とする)、および高CT値の連結成分(第3の連結成分とする)にラベリングされる。
【0028】
また、結合部3は、第2および第3の連結成分同士の接触部分の長さを算出し、その長さの第3の連結成分の周囲長の対する割合がしきい値Th3以上(例えば40%以上)となる場合に、その第2および第3の連結成分を結合する。例えば、図3に示す多値化画像において、頭部領域内における頭部組織は主に第2の連結成分となるが、頭部領域の内部には骨等の第3の連結成分が存在する。頭部領域内部の第3の連結成分の、頭部組織の第2の連結成分と接触する部分の長さは、第3の連結成分の周囲長と略一致するものとなっている。このため、結合部3は、頭部領域の内部においては、第2および第3の連結成分を結合する。なお、第2および第3の連結成分同士の接触部分の長さの、第2の連結成分の周囲長の対する割合がしきい値Th3以上となる場合に、その第2および第3の連結成分を結合するようにしてもよい。
【0029】
一方、図3に示す多値化画像において、その左側にある左耳の領域は左側の寝台領域と接触している。ここで、左耳の領域と左側の寝台領域との接触部分の長さは非常に短く、左側の寝台領域の周囲長に対するその接触部分の長さの割合は非常に小さいものとなっている。したがって、左耳の領域に対応する第2の連結成分と、左側の寝台領域に対応する第3の連結成分とは接触しているものの、その接触部分の長さの左側の寝台領域の周囲長に対する割合はしきい値Th3未満となることから、結合部3は、左耳の領域に対応する第2の連結成分と、左側の寝台領域に対応する第3の連結成分とを結合しない。
【0030】
なお、右耳の領域は右側の寝台領域と接触していないため、結合部3は、右耳の領域に対応する第2の連結成分と右側の寝台領域に対応する第3の連結成分とを結合しない。
【0031】
削除部4は、各CT画像の多値化画像に含まれる第2の連結成分、第3の連結成分、および結合された第2および第3の連結成分(以下結合成分とする)のうち、最も画素数が多い連結成分(最大連結成分)を人体の領域に設定し、各CT画像から人体の領域以外の領域を削除する。
【0032】
具体的には、削除部4は、多値化画像において、最大連結成分を残し、それ以外の連結成分の画素を0に置き換える。具体的には、ラベリングした多値化画像を走査し、最も画素数が多かったラベル値を有する画素を残し、それ以外の画素を0に置き換える。
【0033】
そして、削除部4は、最大連結成分の輪郭を追跡し、最大連結成分の最外周の輪郭線を抽出する。具体的には、最大連結成分のみが残された多値化画像の左上隅画素から横に走査し、最初に出会った非ゼロのラベル値を有する画素を開始点として反時計回り方向に輪郭を追跡し、開始点に戻ったら追跡を終了する。上記輪郭線上の画素にはラベル値とは異なる値、例えば1を代入しておく。
【0034】
さらに削除部4は、輪郭線の内部を1で塗りつぶし、マスク画像を作成する。図5はマスク画像を示す図である。図5に示すようにマスク画像におけるマスク領域は、CT画像における頭部領域にのみ相当するものとなっている。
【0035】
そして削除部4は、CT画像とマスク画像とを掛け合わせて、マスク領域外の画素をCT画像から削除する。具体的には、マスク画像を1画素ずつ調べ、ゼロの画素を検出したら、その画素の座標に対応するCT画像の画素を最低輝度(CT画像の場合は−1000)に置き換える処理をする。これを全画素について行えば、マスク領域外の画素がCT画像から削除される。
【0036】
これにより、CT画像からは図6に示すように寝台に相当する領域が削除され、頭部領域のみが残ることとなる。
【0037】
疑似3次元医用画像生成部5は、寝台の領域が削除された複数のCT画像に基づき、画像投影法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する。画像投影法としては、例えば、minIP法またはMIP法を用いる。
【0038】
表示部6は、医用画像や疑似3次元医用画像を表示するモニタ、CRT画面、液晶画面等である。
【0039】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図7は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。
【0040】
まず、画像取得部1が複数のCT画像を取得する(ステップST1)。次いで、多値化部2が、複数のCT画像のそれぞれを多値化して多値化画像を生成し(ステップST2)、結合部3が、多値化画像の連結成分同士を結合する(ステップST3)。そして削除部4が、各CT画像から人体以外の領域を削除し(ステップST4)、疑似3次元医用画像生成部5が、人体以外の領域が削除された各CT画像の人体領域を表す画像情報に基づいて、上述したminIP法を実行することにより疑似3次元医用画像を生成する(ステップST5)。そして、表示部6が、疑似3次元医用画像生成部3により生成された疑似3次元医用画像を表示し(ステップST6)、処理を終了する。
【0041】
ここで、従来の二値化処理による手法と本実施形態による手法とを比較する。図8は図2に示すCT画像を、1つのしきい値(=−200)により二値化することにより生成した二値化画像を示す図である。図8に示すように二値化画像においては、CT画像における空気の領域は最低輝度、寝台、骨および造影血管の領域、並びに人体組織の領域は最高輝度となっている。
【0042】
このように生成された二値化画像は、低CT値の連結成分と、それ以外の連結成分の2つにラベリングされることとなる。このようにラベリングされた二値化画像においては、図3に示す本実施形態により生成した多値化画像と比較して、左耳の領域と左側の寝台領域とが同一の輝度となっている。このため、削除部4において、二値化画像の最大連結成分を残し、それ以外の連結成分の画素を0に置き換えた場合、マスク画像は図9に示すように頭部領域と左側の寝台領域にマスク領域を有するものとなるため、マスク領域外の画素をCT画像から削除した場合、CT画像には図10に示すように頭部領域の他に寝台領域が残ってしまう。
【0043】
本実施形態においては、CT画像を多値化するようにしたものである。ここで、多値化画像においては、多値化のしきい値を適切に設定することにより、人体と、骨および寝台等の不要部分と、何も存在しない(空気のみが存在する)部分とをそれぞれ別個の連結領域とすることができる。一方、撮影時に人体を寝台により支えた場合、人体と寝台との接触部分は、人体の全領域の周囲長と比較して小さいものとなる。このため、多値化画像の連結成分同士を、連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、結合結果に基づいて、医用画像における人体以外の領域を削除することにより、人体と寝台とが接触していても、医用画像から人体以外の寝台等の領域を削除することができる。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、図6に示すように、CT画像から寝台に相当する領域をすべて削除することができるため、3次元医用画像を生成した際に、生成された3次元医用画像には寝台が含まれることがなくなる。したがって、3次元医用画像を用いての診断を、寝台に邪魔されることなく、効率よく行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態においては、頭部のCT画像を対象として処理を行っているが、医用画像として、MRI画像を用いることも可能である。また、被写体としても頭部に限定されるものではなく、人体の各種部分の医用画像を対象とすることが可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、複数のCT画像から人体以外の領域を削除して疑似3次元医用画像を生成しているが、疑似3次元医用画像を生成しない場合にも本発明を適用できることはもちろんである。
【0047】
また、上記実施形態においては、2つのしきい値により医用画像を多値化しているが、3以上のしきい値により医用画像を多値化してもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態に係る装置10について説明したが、コンピュータを、上記の画像取得部1、多値化部2、結合部3、削除部4および疑似3次元医用画像生成部5に対応する手段として機能させ、図7に示すような処理を行わせるプログラムも本発明の実施形態の1つである。また、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の実施形態の1つである。
【符号の説明】
【0049】
1 画像取得部
2 多値化部
3 結合部
4 削除部
5 疑似3次元医用画像生成部
6 表示部
10 画像処理装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成する多値化手段と、
前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合する結合手段と、
前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除する削除手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記医用画像は、CT画像であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記多値化手段は、前記医用画像を輝度域が異なる3つの連結成分に分離するよう多値化する手段であり、
前記結合手段は、前記3つの連結成分のうちの輝度域が隣接する2つの連結成分同士が接触している部分の長さを測定し、前記2つの連結成分において前記接触している部分の長さの、該2つの連結成分のうちの一方の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している2つの連結成分を1つの連結成分に結合する手段であり、
前記削除手段は、前記結合された連結成分および前記3つの連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記医用画像がCT画像である場合、前記多値化手段は、該医用画像を低CT値領域からなる第1の連結成分、中CT値領域からなる第2の連結成分および高CT値領域からなる第3の連結成分に多値化する手段であり、
前記結合手段は、前記第2の連結成分と前記第3の連結成分における前記接触している部分の長さを測定し、前記第2および前記第3の連結成分が接触している部分の長さの、該第2または該第3の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している前記第2および前記第3の連結成分を1つの連結成分に結合する手段であり、
前記削除手段は、前記第2の連結成分、前記第3の連結成分、および前記結合された第2および第3の連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段であることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記削除手段は、前記人体の横断面を示す複数の医用画像のそれぞれから前記人体以外の領域を削除する手段であり、
前記人体以外の領域が削除された前記複数の医用画像に基づき画像投影法を実行することにより、3次元医用画像を生成する3次元医用画像生成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項5記載の画像処理装置。
【請求項6】
多値化画像生成手段が、人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成し、
結合手段が、前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、
削除手段が、前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成する手順と、
前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合する手順と、
前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除する手順とを有する画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成する多値化手段と、
前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合する結合手段と、
前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除する削除手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記医用画像は、CT画像であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記多値化手段は、前記医用画像を輝度域が異なる3つの連結成分に分離するよう多値化する手段であり、
前記結合手段は、前記3つの連結成分のうちの輝度域が隣接する2つの連結成分同士が接触している部分の長さを測定し、前記2つの連結成分において前記接触している部分の長さの、該2つの連結成分のうちの一方の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している2つの連結成分を1つの連結成分に結合する手段であり、
前記削除手段は、前記結合された連結成分および前記3つの連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記医用画像がCT画像である場合、前記多値化手段は、該医用画像を低CT値領域からなる第1の連結成分、中CT値領域からなる第2の連結成分および高CT値領域からなる第3の連結成分に多値化する手段であり、
前記結合手段は、前記第2の連結成分と前記第3の連結成分における前記接触している部分の長さを測定し、前記第2および前記第3の連結成分が接触している部分の長さの、該第2または該第3の連結成分の周囲長に対する比率を算出し、該比率が所定のしきい値以上の場合に、該接触している前記第2および前記第3の連結成分を1つの連結成分に結合する手段であり、
前記削除手段は、前記第2の連結成分、前記第3の連結成分、および前記結合された第2および第3の連結成分のうち、最大領域となる連結成分以外の連結成分を前記医用画像から削除する手段であることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記削除手段は、前記人体の横断面を示す複数の医用画像のそれぞれから前記人体以外の領域を削除する手段であり、
前記人体以外の領域が削除された前記複数の医用画像に基づき画像投影法を実行することにより、3次元医用画像を生成する3次元医用画像生成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項5記載の画像処理装置。
【請求項6】
多値化画像生成手段が、人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成し、
結合手段が、前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合し、
削除手段が、前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
人体を撮影することにより取得した医用画像を多値化して多値化画像を生成する手順と、
前記多値化画像の連結成分同士を、該連結成分同士の接触状況に基づいて結合する手順と、
前記結合結果に基づいて、前記医用画像から前記人体以外の領域を削除する手順とを有する画像処理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図4】
【図7】
【図11】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図4】
【図7】
【図11】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−172515(P2010−172515A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19054(P2009−19054)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】
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