説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】 記録ヘッドの複数回の走査によって記録媒体の所定領域(画素領域)に画像を形成するにあたり、画像濃度が大きく変化せず濃度むらを軽減した均一な画像を形成する。
【解決手段】 所定領域に形成すべき画像を表す入力画像データに基づいて複数回の走査に対応した複数の多値の画像データを生成する際、複数の多値の画像データの値を異ならせて、複数の多値の画像データを生成する。これにより、複数回の走査によって形成されるドット間のレジストレーションが変化しても、画像濃度の変化を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドの複数回の走査あるいは複数の記録ヘッドで記録媒体の所定領域(例えば画素領域)に画像を記録するために、その所定領域に対応する画像データを処理するための画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の記録素子を備えた記録ヘッドを用いる装置の一例として、従来より、複数のインクの吐出口を備えた記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
このような装置では、吐出口の吐出口径のばらつきや吐出方向のばらつきなどによってインクにより形成されるドットの大きさや形成位置がばらつき、印刷された画像に濃度ムラが生じることがある。特に、記録ヘッドをその複数の記録素子の配列方向とは異なる方向、例えば、直交する方向に走査させて記録を行うシリアル型の記録装置では、上述した吐出口径などのばらつきに起因した濃度ムラはスジムラとなって印刷された画像中に現れるため、さらに印刷された画像の品位を低下させる場合がある。
【0004】
このような濃度ムラを補正するため、インクジェット記録方式に従った記録ヘッドを用いて画像形成を行う場合、低階調化処理(2値化処理など)を施した画像データを複数の異なる吐出口から吐出されるインクで1画素、または記録ヘッド1走査に相当するラインからなる画素の画像を形成する方式が提案されている。これは、例えば、記録ヘッドの幅未満の紙送りを行うことにより、1画素を複数の走査(スキャン、パス)で補完することにより実現できる。
【0005】
図3は従来のインクジェット記録ヘッド部の並び状況を示す図である。本プリンタは基本4色のCMYKインクで画像を構成している。記録ヘッド部601は各インク色のインクジェットヘッドをそれぞれ2本ずつ搭載しており、図の上部に並んでいるヘッド603(以下、リアヘッドと称する)と、下部に並んでいるヘッド602(以下、フロントヘッドと称する)とが、副走査方向に2.5バンド(バンドとは、インクジェットヘッドが1回の走査で印字するノズル列方向の幅の単位である)の距離に配置されている。
【0006】
図4は図3に示す記録ヘッドを用いるプリンタにおいて、フロントヘッド602とリアヘッド603の印字の重ね状態を示す図である。主走査1回につき、副走査を1回行う。副走査方向への送り量は1バンドであり、フロントヘッド602とリアヘッド603が半バンドずれた状態、つまり半バンド重ねで画像が構成される。ここで、半バンド703はそれぞれフロントヘッド602の図示上半分、リアヘッド603の下半分で形成され、半バンド704はそれぞれフロントヘッド602の下半分、リアヘッド603の上半分で形成される。
【0007】
上記プリンタに転送された多値の画像データを2値化し、ヘッド駆動データに変換してノズルからインクを吐出させて印字するまでの処理内容を図5に示し、図に添って処理の流れを説明する。
(1)ホストコンピュータから転送された多値の画像データは画像データ記憶装置801に記憶される。ここから1バンドごとにデータが読み出されていく。
(2)パレット変換回路802では画像データが各インク色の多値のデータに分解される。以下、黒インクBkについて代表して説明する。
(3)γ変換回路803−Kではそれぞれインク色に分解された多値のデータに対しγ変換が行なわれる。
(4)ムラ補正回路804−Kにてムラ補正テーブル(多値→多値のルックアップテーブル)によりノズルの特性ばらつきに起因したムラの補正を行う。
(5)2値化回路805−Kで誤差拡散法(ED)により多値のデータを2値のデータに変換する。
(6)各色の2値データをフロントヘッド602−K、リアヘッド603−Kのどちらで印字するかをSMS(シーケンシャル・マルチ・スキャン)回路806−Kで決定する。このSMS回路−Kは、あるラスターに注目した時に、画像の左端から最初に現れるドットから順にフロント,リア,フロント,リア,…と交互に割り振るもので、それぞれTMC(Timing Memory Controller)回路807−K1,807−K2に出力される。これにより、隣接するドットを同一のヘッドで印字することがなくなり、ヘッドの駆動周波数の倍速で印字を行うことが可能である。さらに、各ラスターで最初に現れるドットを印字するのは、奇数ラスターの場合はリアヘッド603−K、偶数ラスターの場合はフロントヘッド602−Kで印字する。
(7)TMC回路807−K1,807−K2では、各ヘッド602−K,603−Kに対し1バンドのデータをノズル列方向に1列ずつ出力している。ヘッド807−K1,807−K2間のヘッド主走査方向の位置ズレを調整するのが横レジ調値であるが、横レジ調値に応じて1列分のデータの出力タイミングは異なる。
(8)PHC(Printer Head間 コネクタ)基板808−K1,808−K2では、ノズル列方向の2値データを、実際に印字を行うノズルに対応させて出力する。ヘッド807−K1,807−K2間のノズル列方向の位置ズレを調整するのが縦レジ調値である。本例におけるヘッドは1344ノズルに加えて上下8ノズルが印字有効ノズルであるので、縦レジ調値は−8〜+8の範囲である。縦レジ調値が±0の場合は中央の1344ノズルを使用するが、縦レジ調値が±1〜8の場合は実際に印字する1344ノズルを中央から1〜8ノズル分ずらしている。この縦レジ調値によって、1344ノズル分のデータを実際に印字を行うノズルに対応させて出力する。
(9)最後に各ノズルの2値のデータを、印字制御装置(Head CPU)809でヘッド駆動データに変換し、インクを吐出させて印字を行う。
【0008】
ここで特に、(5)、(6)の処理を具体的に示しているのが図7である。各インク色に分解され、γ変換、ムラ補正処理(図5の802,803,804)を行った後の多値のデータ(同図A)を誤差拡散マトリックスA(図6Aに示す誤差拡散マトリックスの例)で誤差拡散処理(図7B)を行い2値化を行う(同図C)。なお、図6中*は注目画素を表す。
【0009】
そして、SMS(図5の806)により、フロントヘッドとリアヘッドのどちらで印字するかを決定する(図7D)。そして、図7Eに示すデータがフロントヘッドに送られ、図7Fに示すデータがリアヘッドに送られる。
【0010】
上述の方法によれば、所定領域の画像は2つのヘッドの異なるノズルによって形成されるので、複数のノズルの特性ばらつきに起因する濃度ムラ等を軽減することが出来る。また、画像の繋ぎ目が半バンド単位となるので、バンディングの周期が半分となり、バンディングも目立ちにくくなる。
【0011】
このように、インクジェットヘッドの吐出口に固有の特性に起因して生じる濃度ムラを被記録媒体上に分散させて相対的に濃度ムラを低減する方式は、マルチスキャン(マルチパスとも呼ばれる)方式と呼ばれる。さらに、このマルチスキャン方式において、主に各インク吐出口の使用頻度を均一化することを目的として、各インク吐出口を一定の順序で用いる、所謂シーケンシャルマルチスキャン(SMS)方式も提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このようなマルチスキャン方式あるいはシーケンシャルマルチスキャン方式を、捺染装置のように走査範囲が数メートルにおよび、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色のほか、淡色、特色で構成される大型、多色のカラーインクジェットプリント装置において適用する場合に、次の課題を見いだした。すなわち、本来、理想的な装置を用いて上記方法で記録を行えば、単位記録画素は均等に並ぶはずである。しかしながら、実際の記録装置では、上述のインク吐出口の吐出口径のばらつきや吐出方向のばらつきなどによってインクにより形成されるドットの大きさや形成位置がばらつくほか、複数の記録ヘッド間の機械的な取付精度の誤差により、それぞれの主走査間でレジストレーションの変化が発生してしまう。このために、マルチスキャンで重ねられた単位記録画素間隔の差異が発生し、その結果モアレ効果や半走査間隔のムラが発生する。特に、往復の主走査記録では、記録ヘッドの取付角精度や、吐出口の形状について、往路と復路で差異が発生し、これによる往復ムラが発生する。
【0013】
これは、上記の方法では、複数の走査で形成される印字画像間にある「補完関係」が完全であることに起因していることが、本発明者らの検討により判明した。
【0014】
すなわち、上述の方法では、2回の走査で完成される半バンドの画像は互いに完全に補完する関係にある(以下、それぞれのパスで印字するドットが空間的に補完する関係のことを「補完関係」と呼ぶ。)。このため、各バンド毎にレジストレーションに誤差が生じると、例えば、半ドット分の横レジがずれると、横レジがずれた状態で補完がなされてしまうこととなる。
【0015】
本来、理想的な装置を用いて上記の方法で記録を行えば、図8に示すベタ(均一)の画像は、それぞれの走査で記録される画像を重ねても、ドットが重なることなく均等に並んでいるはずである。図8において、21(黒丸のドット)は第1の走査で印字したものを示し、22(白丸のドット)は第2の走査で印字したものとする。
【0016】
しかしながら、実際の装置では、物理的な精度の誤差によりそれぞれの走査で微妙にレジストレーションが変化してしまうために、それぞれの走査で記録される画像を重ねると、ドット同士が近ずいたり遠くに離れたり、あるいは重なったりしてしまう。例えば、第1の走査に半ドット分の横レジのずれが生じると、図9に示すように、ドット間に粗密が発生したりドットの重なりが生じてしまう。21(黒丸のドット)は第1の走査で印字したものを示し、22(白丸のドット)は第2の走査で印字したものとする。その結果、記録される画像は本来の画像濃度と異なり、濃度むらが発生しこれが大きな問題となっている。すなわち、濃度の濃いバンド(バンドとは、インクジェットヘッドが1回の走査で印字するノズル列方向の幅の単位である)や薄いバンドができ、半バンドむらが生じてしまう。
【0017】
このように、従来のマルチパス印字においては、複数回の走査で画像を形成する際、複数の走査で完成される画像は完全な補完関係にあったため、レジストレーションの変化がそのまま画像のムラとして現れることが、本発明者らの検討によって判明した。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、マルチスキャン方式による記録において、単位記録画素間隔の差異による濃度差を軽減し、より高品位な画像を高速に記録するための画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、物理的な精度誤差によるレジストレーションが微妙に変化しても、画像濃度が大きく変化せず濃度むらを軽減した均一な画像を形成するための画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための本発明は、記録ヘッドの少なくとも2回の走査によって記録媒体の画素領域に画像を形成するために、前記画素領域に対応した入力画像データを処理するための画像処理装置であって、前記入力画像データに基づいて、前記2回の走査のうちの第1の走査に対応した第1の多値画像データと前記2回の走査のうちの第2の走査に対応した第2の多値画像データとを生成するための生成手段と、前記生成手段により生成された第1および第2の多値画像データに誤差拡散処理を行うための誤差拡散処理手段とを有し、前記生成手段は、1つの前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の多値画像データと、当該第1の多値画像データの値とは異なる値を有する前記第2の多値画像データとを生成可能であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、同じ色のドットを形成するための第1および第2の記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体の画素領域に画像を形成するために、前記画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、前記入力画像データに基づいて、前記第1の記録ヘッドに対応した第1の多値の画像データと前記第2の記録ヘッドに対応した第2の多値の画像データを生成する生成手段と、前記生成手段により生成された第1および第2の多値の画像データに誤差拡散処理を実行するための誤差拡散処理手段とを有し、前記生成手段は、1つの前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の多値画像データと、当該第1の多値画像データの値とは異なる値を有する前記第2の多値画像データとを生成可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、物理的な精度誤差によるレジストレーションが微妙に変化しても、レジストレーションの変化に対する依存度が低下するため、画像濃度が大きく変化せず濃度むらの軽減された均一な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に適用可能な布帛に対して記録を行うインクジェット記録方式の捺染機の画像プリント部の概要を示す模式図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリント部A−2付近の詳細を示す斜視図である。
【図3】本発明に適用可能なヘッドの並び状態を示す図である。
【図4】フロントヘッドとリアヘッドの印字画像の重ね状態を示す図である。
【図5】従来のプリンタに送られたデータが印字されるまでに処理される流れを示すブロック図である。
【図6】誤差の分配マトリックスの例を示した図である。
【図7】従来の画像処理方法の流れを示す図である。
【図8】従来の理想的なフロントヘッドとリアヘッドで重ね印字を行った場合のドットの配置を示す図である。
【図9】従来の実際のフロントヘッドとリアヘッドで重ね印字を行った場合のドットの配置を示す図である。
【図10】本発明におけるプリンタに送られたデータが印字されるまでの処理の流れを示すブロック図である。
【図11】本発明の実施例1における画像処理の具体例を示す図である。
【図12】本発明により理想的なフロントヘッドとリアヘッドで重ね印字を行った場合のドットの配置を示す図である。
【図13】本発明により実際のフロントヘッドとリアヘッドで重ね印字を行った場合のドットの配置を示す図である。
【図14】本発明の実施例2における画像処理の具体例を示す図である。
【図15】本発明の実施例3における画像処理の具体例を示す図である。
【図16】本発明の実施例4における画像処理の具体例を示す図である。
【図17】本発明の実施例5における画像処理の具体例を示す図である。
【図18】本発明適用可能な一色あたり一本のヘッドを持つプリンタの各走査の印字画像の重ね状態を示す図である。
【図19】本発明の実施例6における画像処理の具体例を示す図である。
【図20】本発明の実施例7であるフルカラーインクジェット捺染装置の概略構成を示す断面図である。
【図21】本発明の実施例7における画像データ処理の流れを示すブロック図である。
【図22】本発明の実施例7によるシーケンシャル・マルチスキャンによる記録方法示す説明図である。
【図23】本発明の実施例7におけるシーケンシャルマルチスキャン実行部の構成を示すブロック図である。
【図24】本発明の実施例7におけるランダム分配フラグ発生部の構成を示すブロック図である。
【図25】本発明の実施例7におけるAND−ORマトリクス部の構成を示すブロック図である。
【図26】本発明の実施例8におけるシーケンシャルマルチスキャン実行部の構成を示すブロック図である。
【図27】本発明の実施例8によるシーケンシャル・マルチスキャンによる記録方法示す説明図である。
【図28】本発明の実施例8におけるランダム分配フラグ発生部の構成を示すブロック図である。
【図29】本発明の実施例8におけるAND−ORマトリクス部の動作を説明するための図である。
【図30】本発明の実施例9であるフルカラーインクジェット捺染装置における画像データ処理の流れを示すブロック図である。
【図31】本発明の実施例9における多値SMS実行部の構成を示すブロック図である。
【図32】本発明の実施例9における多値SMS実行部、データ変換部の具体的な動作を示す図である。
【図33】本発明の実施例10における多値SMS実行部、データ変換部および2値化処理部の構成を示すブロック図である。
【図34】本発明の実施例10による多値SMS実行部とデータ変換部の具体的な動作を示す図である。
【図35】本発明の実施例11における多値SMS実行部の構成を示すブロック図である。
【図36】本発明の実施例11における多値SMS実行部、データ変換部および2値化処理部の構成を示すブロック図である。
【図37】本発明の実施例11における多値SMS実行部、データ変換部および2値化処理部の具体的な動作を示す図である。
【図38】本発明の実施例12における多値SMS実行部の構成を示すブロック図である。
【図39】本発明の実施例12における多値SMS実行部、データ変換部および2値化処理部の構成を示すブロック図である。
【図40】本発明の実施例12における多値SMS実行部、データ変換部および2値化処理部の具体的な動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。実施例1〜3は同色のヘッドを複数本持つ場合の実施例であり、実施例4は低階調化として2値化に代えて4値化処理を行った場合の実施例であり、実施例5は同色のヘッドを1本もつ場合の実施例である。
【0025】
図1は、本発明に適用可能な布帛に対して記録を行うインクジェット記録方式の捺染機の画像プリント部の概要を示す模式図である。このプリント装置は、大きく分けて、捺染用の前処理を施されたロール状の布帛等のプリント媒体を送り出す給布部Bと、送られてきたプリント媒体を精密に行送りして、インクジェットヘッドでプリントを行う本体部Aと、プリントされたプリント媒体を乾燥させ巻取る巻取り部Cからなる。そして、本体部Aはさらにプラテンを含むプリント媒体の精密送り部A−1とインクジェットプリント部A−2とからなる。
【0026】
以下、プリント媒体として前処理されたプリント媒体を用い捺染を実施する場合を例にとってこの装置の動作を説明する。
【0027】
前処理されたロール状のプリント媒体236は給付部Bから送り出され、本体部に送られる。本体部には精密にステップ駆動される薄い無端のベルト237が駆動ローラ247、巻回ローラ249に架け回されている。駆動ローラ247は、高分解能のステッピングモータ(図示せず)でダイレクトにステップ駆動されてそのステップ量だけベルトをステップ送りする。送られてきた布236は巻回ローラ249によってバックアップされたベルト237表面に、押付けローラ240によって押付けられ、張付けられる。
【0028】
ベルトによってステップ送りをされてきたプリント媒体236は、第1のプリント部602において、ベルト裏面のプラテン232によって定位され表側からプリントされる。1行のプリントが終る毎に、所定量ステップ送りされ、次いでベルト裏面からの加熱プレート234による加熱と、温風ダクト235によって供給/排出される、表面からの温風によって乾燥される。続いて第2のプリント部603において、第1のプリント部と同様な方法で重ねプリントがなされる。
【0029】
プリントが終ったプリント媒体236は引き剥されて、前述の加熱プレート234と温風ダクト235と同様な後乾燥部246で再度乾燥され、ガイドロール241に導かれて巻取りロール248に巻取られる。そして、巻取られたプリント媒体236は本装置から取外され、バッチ処理で発色、洗浄、乾燥等の後処理工程を経て製品となる。
【0030】
次に、インクジェットプリント部A−2付近の詳細について図2に基づき説明する。
【0031】
ここで、第1プリント部のヘッドにより、ドット数を間引いて情報をプリントし、乾燥工程を経て、第2プリント部のヘッドにより、第1プリント部で間引かれた情報を補完するようにインク滴を吐出する。
【0032】
図2において、プリント媒体236は、ベルト237に張り付けられて、図中の上方向にステップ送りされるようになっている。図中下方の第1プリント部602にはY,M,C,K用のインクジェットヘッド4本を搭載した第1のキャリッジ244がある。本例におけるインクジェットヘッド(プリントヘッド)は、インクを吐出するために利用されるエネルギーとして、インクに膜沸騰を生じさせる熱エネルギーを発生する素子を有するものを用いている。
【0033】
第1のプリント部の下流側にはベルトの裏面から加熱する加熱プレート234と、表側から乾燥させる温風ダクト235とからなる乾燥部245が設けられている。加熱プレート234の熱伝達面は、強くテンションをかけられた無端のベルト237に押し当てられ、中空になっている内側に通してある高温高圧の蒸気によって、ベルト237を裏面から強力に加熱する。ベルト237は貼り付けられているプリント媒体236を熱伝導によって直接に効果的に加熱する。加熱プレート面の内側は集熱のためのフィン234′が設けられていて熱を効率的にベルト裏面に集中できるようにしてある。ベルトに接しない側は断熱材243でカバーしてあり、放熱による損失を防いでいる。
【0034】
表側では、下流側の供給ダクト230から乾燥温風を吹き付けることによって、乾燥しつつあるプリント媒体236に、より湿度の低い空気を当てて効果を高めるようにしている。そしてプリント媒体236の搬送方向とは逆に流れて充分に水分を含んだ空気は、上流側の吸引ダクト233から、吹き付けの量よりもはるかに多量の吸引をすることによって、蒸発水分が漏れて周囲の機械装置に結露しないようにしてある。温風の供給源は図2の奥側にあり、吸引は手前側から行うようになっていて、プリント媒体236に対向している吹き出し口238と吸引口239との圧力差が長手方向全域にわたって均一になるようにしてある。空気の吹き付け/吸引部は裏面の加熱プレート234の中心に対して下流側にオフセットされており、充分に加熱された所に空気が当たるようにしてある。これらによって第1のプリント部602がプリント媒体236が受容した薄め液も含むインク中の多量の水分を強力に乾燥させる。
【0035】
その下流(図中、上方)には第2のプリント部603があり、第1のキャリッジと同様の構成の第2のキャッリジ244′で第2のプリント部を形成している。その下流には、温風ダクト235と同様の構成の後乾燥部46が設けられている。
【0036】
次に、インクジェット捺染プリントの具体例を説明する。先に説明したように図1は捺染に好適なインクジェットプリント装置の構成を示す図である。図1に示すようなインクジェットプリント装置を用いて、インクジェット印捺工程を経た後、プリント媒体を乾燥(自然乾燥を含む)させる。そして、引き続きプリント媒体繊維上の染料を拡散させ、かつ繊維への染料を反応定着させる工程を施す。この工程により、充分な発色性と染料の固着による堅牢性を得ることができる。
【0037】
この拡散、反応定着工程は従来公知の方法でよく、例えば、スチーミング法が挙げられる。なお、この場合、印捺工程の前に、予めプリント媒体にアルカリ処理を施してもよい。
【0038】
その後、後処理工程において、未反応の染料の除去及び前処理に用いた物質の除去が行われる。最後に、欠陥補正、アイロン仕上げ等の整理仕上げ工程を経てプリントが完成する。
【0039】
(実施例1)
本実施例では、従来例とは異なり2値化処理を行ってからフロントヘッドとリアヘッドへの2値データの振り分けを行うのではなく、2値化処理を行う前の多値のデータをフロントヘッド用とリアヘッド用に分配し、分配された多値データをそれぞれ異なる係数によりデータ変換し、変換されたデータに対しそれぞれ2値化処理を行っている。これにより、各走査における印字画像の「補完関係」を低減し、半バンドむらを防止することを可能にした。
【0040】
本実施例において、多値の画像データを2値化し、ヘッド駆動データに変換してノズルからインクを吐出させて印字するまでの処理内容を図10に示し、図を用いて処理の流れを説明する。
(1)ホストコンピュータから転送された多値の画像データは画像データ記憶装置1001に記憶される。ここから1バンドごとにデータが読み出されていく。
(2)パレット変換回路1002では画像データが各インク色の多値のデータに分解される。以下、黒インクBkについて代表して説明する。
(3)γ変換回路1003−Kではそれぞれインク色に分解された多値のデータに対しγ変換が行なわれる。
(4)ムラ補正回路1004−Kにてムラ補正テーブル(多値→多値のルックアップテーブル)によりノズルの特性ばらつきに起因したムラの補正を行う。なおここまでは、図5に示す従来の処理と同じである。
(5)分配回路1005−K1,1005−K2でフロントヘッド用とリアヘッド用にデータの分配を行う。
(6)データ変換回路1006−K1,1006−K2において、それぞれ分配されたデータを所定の係数でデータ変換を行う。
(7)低階調化回路1007−K1,1007−K2では、各ヘッド毎に誤差拡散法により低階調化処理が行われる。
(8)TMC(Timing Memory Controller)回路1008−K1,1008−K2では各ヘッドごとに、1バンドのデータをノズル列方向に1列ずつ出力している。ヘッドのヘッド主走査方向の位置ズレを調整するのが横レジ調値であるが、横レジ調値に応じて1列分のデータの出力タイミングは異なる。
(9)PHC(Printer Head間 コネクタ)基板1009−K1,1009−K2では、ノズル列方向の2値データを、実際に印字を行うノズルに対応させて出力する。ヘッドのノズル列方向の位置ズレを調整するのが縦レジ調値である。本例におけるヘッドは1344ノズルに加えて上下8ノズルが印字有効ノズルであるので、縦レジ調値は−8〜+8の範囲である。縦レジ調値が±0の場合は中央の1344ノズルを使用するが、縦レジ調値が±1〜8の場合は実際に印字する1344ノズルを中央から1〜8ノズル分ずらしている。この縦レジ調値によって、1344ノズル分のデータを実際に印字を行うノズルに対応させて出力する。
(10)最後に各ノズルの2値のデータを、印字制御装置(Head CPU)1010でヘッド駆動データに変換し、インクを吐出させて印字を行う。
【0041】
なお、本実施例では上述の処理を画像処理装置のハード構成にて実現した例を説明したが、適宜ソフトウエア等を用いて実現することも可能である。
【0042】
図11は図10の1005,1006,1007の処理の具体例を示したものである。図11において、多値のデータ(同図A)をフロントヘッド602に送るための画像データ(同図B)と、リアヘッド603に送るための画像データ(同図C)とに2つに分配する。分配されたデータにそれぞれ異なる係数を掛ける。例えば、注目画素のデータが100であった時、フロント用データとして100,リア用データとして100をそれぞれに分配する。次に、それぞれフロント用データを0.55倍(同図D)、リア用データを0.45倍(同図E)する。この時、各係数の和は後述のとおり、1とは限らない。また、ここでは、データの分配と変換を別々の回路で実現したが、1つの手段として実現してもよい。
【0043】
次に、データ変換されたそれぞれのデータを誤差拡散法により2値化し(同図F、G)、2値化されたデータ(同図H、I)をそれぞれのヘッドで印字する。
【0044】
図12は物理的な精度が理想的であると仮定した場合、ベタの画像を本発明による画像処理方法を用いて、フロントヘッドとリアヘッドで重ね印字を行った場合の図である。21(黒のドット)はフロントヘッドで印字したものを示し、22(白丸のドット)はリアヘッドで印字したものを示す。また、23(ハッチングのドット)はフロントヘッドとリアヘッドの両者で印字したものを示す。ベタの画像であるのにも係わらず印字されない画素や、フロントヘッドとリアヘッドの両者で印字されるドットが生じるのは、異なる係数をかけて得られた多値画像データを各々独立に2値化しているためであり、これが両者の補完関係を低減している根拠である。
【0045】
図13は図12において、フロントヘッドとリアヘッドのレジストレーションが微妙にずれている場合である。ここでは、フロントヘッドのレジストレーションが半ドット横にずれている場合を示す。図12と図13を比較しても、画像の濃度に大きな変化は見られない。つまり、各走査におけるレジストレーションが微妙に変化しても、濃度はほとんど変化せず、半バンドむらが生じないことがわかる。
【0046】
本実施例では、フロントヘッドのデータとリアヘッドの多値データに対して、異なる係数を掛けてそれぞれ2値化処理するために、それぞれのヘッドで印字する画像は「補完関係」が低減される。このため、レジストレーションの変化に対する依存度が低下するため、レジストレーションが微妙にずれた場合でも完全な補完関係にある場合に比べ画像濃度の変化が少なく、半バンドむらの軽減された画像を形成することができる。
【0047】
なお、ここでは本実施例によって複数のパスで形成される画像をマクロ的に捉えた「補完関係」の概念で説明したが、ミクロ的に捉えることも可能である。この場合、複数のパスで記録されるドットに着目し、あるパスで記録されたドットの隣に他のパスで記録されたドットが存在するという「相関関係」をなくした画像を形成する、と捉えることもできる。
【0048】
(実施例2)
図14は図10の1005,1006,1007の処理の部分の具体例を示したものである。図14において、多値のデータ(同図A0)をフロントヘッドに送るための画像データ(同図B)とリアヘッドに送るための画像データ(同図C)と2つに分配し、分配されたデータにそれぞれ同じ係数(0.5)を掛ける。データ変換されたそれぞれのデータ(同図D、E)を異なる誤差分配マトリックスの誤差拡散法(同図F、G)により2値化し、2値化したデータ(同図H,I)をそれぞれのヘッドで印字する。
【0049】
フロントヘッドとリアヘッド用に分配され、データ変換された多値データはそれぞれ同じであるが、誤差拡散の誤差分配マトリックスが互いに異なるため、それぞれのヘッドで印字する画像は「補完関係」が低減され、半バンドむらの軽減された画像を形成することが可能となる。
【0050】
(実施例3)
図15は図10の1005,1006,1007の処理の部分の具体例を示したものである。図15において、多値のデータ(同図A)をフロントヘッドに送るための画像データ(同図B)とリアヘッドに送るための画像データ(同図C)と2つに分配し、分配されたそれぞれの多値データに同じ係数)(0.5)を掛ける。データ変換された2つのデータ(同図D、E)をそれぞれしスレッショルド値の異なる誤差拡散法(同図F,G)により2値化し、2値化したデータ(同図H,I)をそれぞれのヘッドで印字する。
【0051】
フロントヘッドとリアヘッド用に分配され、変換された多値データはそれぞれ同じであるが、誤差拡散のスレッショルド値がそれぞれ異なるために、それぞれのヘッドで印字する画像は「補完関係」が低減され、半バンドむらの軽減された画像を形成するとが可能となる。
【0052】
実施例1〜実施例3のそれぞれの要素(フロントとリアのデータ変換係数,誤差拡散の誤差分配マトリックス,2値化のスレッショルド値)を組合わせても同様の効果を得ることができる。
【0053】
(実施例4)
図16は図10の1005,1006,1007の処理の部分の具体例を示したものである。図16において、多値のデータ(同図A)をフロントヘッドに送るための画像データ(同図B)とリアヘッドに送るための画像データ(同図C)と2つに分配し、分配されたデータにそれぞれ同じ係数(0.6)を掛ける。データ変換されたそれぞれのデータ(同図D、E)を異なる誤差分配マトリックスの誤差拡散法(同図F,G)により2値化し、2値化したデータをそれぞれのヘッドで印字する。ここで、実施例1〜3と異なるのは、データ変換処理における係数の和が1ではなく1以上であるという点である。本実施例4では、係数の和が1.2となっている。このことは即ち、100%以上のデューティーでの印字が可能であることを示している。
【0054】
本実施例4では、実施例2と同様に、データ変換されたそれぞれのデータを異なる誤差分配マトリックスの誤差拡散法により2値化し、2値化したデータをそれぞれのヘッドで印字するという処理のものを示したが、実施例1及び実施例3の処理においても、データ変換処理時のデータ変換係数の和が1以上になるものを用いることによって、100%以上のデューティーでの印字が可能となる。以下、実施例5、及び実施例6に関しても同様である。
【0055】
(実施例5)
次に、図10において、低階調化としてドット径変調を用いて4値化処理を行った場合の実施例について、図17に処理の具体例を示す。低階調化処理として4値化処理を行う以外は実施例1と同じで、多値のデータ(同図A)を同一領域を走査する回数分に分配し(同図B、C)、分配された多値データにそれぞれ異なる係数(0.55,0.45)を掛ける。それぞれ変換されたデータ(同図D,E)を誤差拡散法(同図F、G)により4値化し、4値化されたデータ(同図H,I)をそれぞれのヘッドで印字する。
【0056】
4値化処理を行っても、従来の処理方法で印字した場合、それぞれのヘッドで印字される画像には完全な「補完関係」があるが、本発明による処理を行うことで双方のヘッドの「補完関係」を低減し、半バンドむらを軽減した画像を形成することができる。
【0057】
実施例1〜3と同様に、誤差拡散法において誤差分配マトリックス,及びスレッショルド値を各走査にて異なるものを用いても、同様の効果を得ることができる。
【0058】
(実施例6)
次に、1色につき1本のヘッドを持つプリンタの実施例について図を用いて説明する。図10において、F(フロント)ヘッドを第1走査、R(リア)ヘッドを第2走査におき換えると、本実施例の画像処理の流れの図になる。
【0059】
図18は第1走査と第2走査の印字画像の重ね状態を示すものである。メディアの送り量は半バンドであり、第1走査と第2走査の半バンド重ねで画像を形成する。
【0060】
図19は、図10に対応させて処理の具体例を示したものである。図19において、実施例1〜実施例3と同様に、多値のデータ(同図A)を同一領域を走査する回数分(2つ)のデータ(同図B、C)に分配し、それぞれのデータを所定の係数(第1走査:0.55,第2走査:0.45)でデータ変換する(同図D,E)。変換されたデータを誤差拡散法(同図F,G)により2値化処理し、2値化したデータ(同図H,I)を第1走査と第2走査で印字する。
【0061】
メディアの副走査方向の送り量に誤差が生じたり、レジストレーションが微妙に変化しても、各走査で印字する画像は「補完関係」が低減されているので、半バンドむらの軽減された均一な画像を形成することができる。
【0062】
また、実施例1〜実施例3と同様に、誤差拡散法において、誤差分配マトリックス,及びスレッショルド値を各走査にて異なるものを用いても、同様の効果を得ることができる。
【0063】
(実施例7)
本実施例は、本発明をインクジェット方式の捺染機に適用した例を示すものであり、図20は本発明の実施例7を示すフルカラーインクジェット記録装置の概略構成を示す構造断面図である。
【0064】
図20において、100は被記録媒体としての布帛101(以下、被記録媒体ともいう)を搬送する搬送部、102は記録を行うプリンタユニット、103はプリントされた記録媒体101を巻き取る巻き取りユニット、104は記録媒体101を巻いた繰り出しローラ、105、106は押さえローラ、107は駆動ローラ、108、109はプリント部の平坦性を保つプラテン部、110は押さえローラ、111は駆動ローラ、112は乾燥部、113は巻き取りローラ、114はキャリッジユニット116を上に載せ支持する支柱、117はキャリッジユニットを主走査させるモータ、駆動ローラ107、111は搬送モータ115が駆動源である。搬送ベルト118は、キャリッジユニット116の走査領域を挟んで駆動ローラ107および111によって帳架され、接着剤が外側に塗布されており、これらローラが搬送モータ115によって駆動されることにより、被記録媒体101との間に生じる接着力および摩擦力が発生し、被記録媒体101を図中矢印A方向に搬送することができる。
【0065】
キャリッジユニット116は、キャリッジモータ117によって支柱114の上を水平に移動する。そして、キャリッジユニット116に設けられたインクジェットヘッド119〜134によるプリントが行われる。このうち119〜126は被記録媒体101の搬送路において上流側、つまり繰り出しローラ102に近い方に配置されるものであり、119はマゼンタインクを吐出する複数の吐出口を備えた(以下のヘッドについても同様)第1のマゼンタヘッド、120はイエローインクを吐出する第1のイエローヘッド、121はオレンジインクを吐出する第1のオレンジヘッド、122は淡マゼンタインクを吐出する第2の淡マゼンタヘッド、123はシアンインクを吐出する第1のシアンヘッド、124は淡シアンインクを吐出する第1の淡シアンヘッド、125はブルーインクを吐出する第1のブルーヘッド、126はブラックインクを吐出する第1のブラックヘッドである。
【0066】
また、インクジェットヘッド127〜134は被記録媒体101の搬送経路において下流側、つまり、インクジェットヘッド119〜126よりも後に記録される側に設けられるものであり、上流側のインクジェットヘッド119〜126の配置位置とは、これらヘッドによる走査がキャリッジユニット116による1回の走査で記録する幅(以下、バンド幅ともいう)の半分の距離だけずれた位置になるよう配置される。ここでは、0.5バンドずらして配置されている。これらのヘッドのうち、127はマゼンタインクを吐出する第2のマゼンタヘッド、128はイエローインクを吐出する第2のイエローヘッド、129はオレンジインクを吐出する第2のオレンジヘッド、130は淡マゼンタインクを吐出する第2の淡マゼンタヘッド、131はシアンインクを吐出する第2のシアンヘッド、132は淡シアンインクを吐出する第2の淡シアンヘッド、133はブルーインクを吐出する第2のブルーヘッド、134はブラックインクを吐出する第2のブラックヘッドである。
【0067】
従って、本実施形態では8色の異なるインクを吐出する8組の記録ヘッドが備えられ、各組2つづつの記録ヘッドは記録媒体101の搬送方向に0.5バンド幅だけ距離をおいて配置されている。なお、シアンとマゼンタの画像は、それぞれ(濃)シアンインクと淡シアンインク、(濃)マゼンタインクとマゼンタインクによって形成される。
【0068】
図21は、図20に示すインクジェットプリンタの制御構成を示すブロック図である。図21において、201はインクジェット捺染システムを制御するホストコンピュータを示す。
【0069】
ホストコンピュータ201からGPIB(General Purpose Interface Bus)インタフェースを介して転送されたプリント画像データは、CPU202の制御に従い一旦、フレームメモリ203に格納される。CPU203はホストコンピュータ201から発行されたプリント開始コマンドに従って、フレームメモリ203に格納されたプリント画像データから1主走査幅相当量を、多値/二値変換部204を介してシーケンシャルマルチスキャン部205へと順次読み出す。シーケンシャルマルチスキャン部205は、受けとったプリント画像データを第1バンドメモリ206、第2バンドメモリ207に振り分けて送出する。第1バンドメモリ206、第2バンドメモリ207内の画像データは、片方向印字あるいは双方向印字シーケンスに従って読み出され、それぞれ第1プリントヘッド208(図1のインクジェットヘッド119〜126に対応)、第2プリントヘッド209(図1のインクジェットヘッド127〜134に対応)によって記録される。なお、第2バンドメモリ207からは画像データを0.5バンド幅だけ遅延して第2プリントヘッド209に読み出すことにより、第1プリントヘッド206と第2プリントヘッド207の副走査方向における相対位置のずれを補正している。
【0070】
図22は、図20および図21に示すインクジェット捺染装置のプリンタユニット102による印刷処理を説明するための図である。
【0071】
ここで、第1バンドメモリ206に接続された第1プリントヘッド208は被記録媒体101の搬送方向Yの上流側に位置しており、被記録媒体101に対して最初の印刷を行う。
【0072】
この印刷に際しては、シーケンシヤル・マルチスキャンのアルゴリズムに従って振り分けられた第1バンドメモリ206の記録データに応じて記録(印刷)を行う。そして、第1プリントヘッド208の全ての吐出口を用い、往方向Xaの走査で記録媒体101に部分301aを記録する。
【0073】
記録された部分301aはプリントヘッドの吐出口配列幅Lに対応した所定量だけ搬送され、第2プリントヘッド209の記録領域に対応する領域301bとなる。この領域301bにマルチスキヤン方式に従って分配された残りの第2バンドメモリ207の記録データに基づいて、第2プリントヘッド209よって印刷が行われる。前述したように、第1プリントヘッド208と第2プリントヘッド209とは、その記録位置が互いに上記吐出口配列幅Lの半分だけずれている。このため、第2プリントヘッド209は、そのヘッドの吐出口の内、上流側半分の吐出口を用い、上記第1プリントヘッド208によりすでに記録された領域301bの下流側半分に相当する領域302Aに復方向Xbの走査で記録する。
【0074】
次に、記録媒体101が上記吐出口配列幅Lに相当する分だけ搬送され、記録媒体101の上記領域301bが、領域301cとなると、第2プリントヘッド209の下流側半分の吐出口を用いて、第1プリントヘッド208で記録された領域301cの上流側半分の領域301Bに往方向Xaの走査で記録する。以上のようにして第1プリントヘッド208および第2プリントヘッド209で記録された領域を符号302で表すことができる。
【0075】
以上説明したように、本実施例ではマルチスキヤン方式の採用により領域302のそれぞれのラインは第1プリントヘッド208と第2プリントヘッド209のそれぞれ異なる吐出口から吐出されるインクで形成されることになる。すなわち、第1および第2のプリントヘッド、208および209に対し記録データを2分して記録を行い、更に第1プリントヘッド208と第2プリントヘッド209とで記録する領域を、それぞれの吐出口の上流側半分と下流側半分というようにそれぞれ異ならせているため、インクジェットヘッドの吐出口径や吐出方向等に起因する濃度ムラやすじ等を分散させることができる。
【0076】
図23は、図22に示したマルチスキャン方式に従って記録データを分配して供給するためのシーケンシャルマルチスキャン部205の内部回路の構成を示すブロック図である。ここでは、第1マゼンタヘッド119と第2マゼンタヘッド127に記録データを分配する場合を例にとって説明する。
【0077】
図23において、ランダム分配フラグ発生部401は、乱数発生用クロックφ2,φ3(φ1≠φ2≠φ3)から、記録データ転送同期クロックφ1に同期した第1分配フラグ(EN1)および第2分配フラグ(EN2)を発生する。これら分配フラグと記録データとの論理積演算の結果を、第1バンドメモリ206あるいは第2バンドメモリ207へ供給することにより、記録データの分配を行う。このとき、
(1)EN1=”H”,EN2=”L”のとき、第1プリントヘッド208のみへ分配する。
(2)EN1=”L”,EN2=”H”のとき、第2プリントヘッド209のみへ分配する。
(3)EN1=”H”,EN2=”H”のとき、第1プリントヘッド208および第2プリントヘッド209の両方へ分配する。
(4)EN1=”L”,EN2=”L”のとき、第1プリントヘッド208および第2プリントヘッド209共に分配しない(記録データ出力は共に”L”)。
【0078】
本実施例では分配条件(1)〜(4)に従ってランダムに出力される分配フラグに従って記録データ転送同期クロックφ1に同期しながら、記録データを合成部402がランダムに切り換えて出力する。ここで、合成部402は1ビット構成であるが、記録データは8ビット単位で転送されるために、図示しないバッファを入力(パラレル−シリアル変換)と出力(シリアル−パラレル変換)に備えている。
【0079】
図24はランダム分配フラグ発生部401の内部ブロック図である。
【0080】
本実施例では、互いに非同期なクロックφ2、φ3をそれぞれカウンタ501、502にて256種の値を発生する。これをAND−ORマトリクス503、504、505、506にて値の範囲を判定し、上記(1)、(2)、(3)および(4)の発生確率を決定する。上記AND−ORマトリクス503、504、505、506の詳細を示すブロック図とテーブルを図25に示す。
【0081】
本構成によれば、カウンタの値が、0〜63、128〜159、224〜231および254のとき、AND−ORマトリクス503において、第1バンドメモリ206のみへ画像データを送出することを示すフラグ信号Fを発生する。発生確率は約41%(105/256=41.015625%)になる。
【0082】
カウンタの値が、64〜127、160〜191、232〜239および255のとき、AND−ORマトリクス504において、第2バンドメモリ207のみへ画像データを送出することを示すフラグ信号Rを発生する。発生確率は約41%(105/256=41.015625%)になる。
【0083】
カウンタの値が、192〜223、240〜247、252および253のとき、AND−ORマトリクス505において、第1バンドメモリ206および第2バンドメモリ207へ画像データを送出することを示すフラグ信号Bを発生する。発生確率は約16.4%(42/256=16.40625%)になる。
【0084】
カウンタの値が、248〜251のとき、AND−ORマトリクス506において、第1バンドメモリ206および第2バンドメモリ207へ画像データを送出しないことを示すフラグ信号Bを発生する。発生確率は約1.6%(4/256=1.5625%)になる。
【0085】
本実施例ではAND−ORマトリクス503、504、505、506の構成を変更することで(1)、(2)、(3)および、(4)の発生確率を約0.39%(0.390625%)刻みで設定することができる。
【0086】
先に示した図12は物理的な精度が理想的であると仮定した場合、ベタの画像を本発明による画像処理方法を用いて、第1プリントヘッドと第2プリントヘッドで重ね印字を行った場合の図と見ることも可能である。この場合、21(黒のドット)は第1プリントヘッドで印字したものを示し、22(白丸のドット)は第2プリントヘッドで印字したものを示す。また、23(ハッチングのドット)は第1プリントヘッドと第2プリントヘッドの両者で印字したものを示す。ベタの画像であるのにも係わらず印字されない画素や、第1プリントヘッドと第2プリントヘッドの両者で印字されるドットが生じるのは、上述の(1)、(2)の発生確率が0でないためであり、これにより両者の補完関係を低減している。
【0087】
先に示した図13は図12において、第1プリントヘッドと第2プリントヘッドのレジストレーションが微妙にずれている場合の図と見ることも可能である。この場合、第1プリントヘッドのレジストレーションが半ドット横にずれていることを示す。図12と図13を比較しても、画像の濃度に大きな変化は見られない。つまり、各走査におけるレジストレーションが微妙に変化しても、濃度はほとんど変化せず、半バンドむらが生じないことがわかる。
【0088】
本実施例では、従来と同様に、2値化した画像データを分配するものであるが、第1プリントヘッドと第2プリントヘッドに対して、ランダムに画像データを分配する際、ランダムに両方のヘッドに画像データを分配したり、ランダムにいずれのヘッドにも画像データを分配しないために、それぞれのヘッドで印字する画像は「補完関係」が低減される。このため、レジストレーションの変化に対する依存度が低下するため、レジストレーションが微妙にずれた場合でも完全な補完関係にある場合に比べ画像濃度の変化が少なく、半バンドむらの軽減された画像を形成することができる。
【0089】
以上のように、本実施例によれば、複数の記録ヘッド間の機械的な取付精度差による定量的なマルチスキャンで重ねられた単位記録画素間隔の差異を拡散することができ、結果的にモアレ効果や半走査間隔のムラを低減することができる。
【0090】
(実施例8)
図26は、図22に示したマルチスキャン方式に従って記録データを分配して供給するためのシーケンシャルマルチスキャン部205の内部回路の第2の構成を示すブロック図である。ここでは、第1マゼンタヘッド119と第2マゼンタヘッド127に記録データを分配する場合を例にとって説明する。
【0091】
図26において、図23に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。図26の構成によれば、701は画像データ信号、702は画像データ信号に同期した1主走査中の画像データ有効期間信号、703は画像データ信号に同期したラスタラインでの画像データ有効期間信号、704はプリント開始時からの1主走査中の画像データ有効期間信号702をカウントし、カウント値が奇数か偶数かを判定する主走査方向判定部、705はラスタラインでの画像データ有効期間信号703をカウントし、画像データの吐出位置が記録ヘッドの上流側前半部か下流側後半部かを判定する吐出位置判定部である。
【0092】
図27は、図26におけるランダム分配フラグ発生部706の動作を説明するための図である。ここで、第1プリントヘッド208は往復主走査をおこなうことでプリント開始から往路プリント→復路プリント路→往路プリント→復路プリント・・・とプリント動作を繰り返す。また、第2プリントヘッド209においては、その取付位置が布搬送方向でバンド幅の1.5倍の間隔が開けられているとき、第1プリントヘッド208が2回目の往路プリント時に1回目の往路プリントを上流側前半部の吐出口でプリントし、その後、→復路プリント路→往路プリント→復路プリント・・・とプリント動作を繰り返す。従って、第1プリントヘッドと第2プリントヘッドの主走査方向に着目した重ね合せプリント条件は
第1プリントヘッド=往路+第2プリントヘッド=往路 ・・・81
第1プリントヘッド=往路+第2プリントヘッド=復路 ・・・82
第1プリントヘッド=復路+第2プリントヘッド=復路 ・・・83
第1プリントヘッド=復路+第2プリントヘッド=往路 ・・・84
の4種になり、これらがプリント開始時から
81→82→83→84→81→82→83・・・
と繰り返されることになる。
【0093】
図28はランダム分配フラグ発生部706の内部ブロック図である。本実施例では、第1プリントヘッドと第2プリントヘッドの主走査方向に着目した重ね合せプリント条件81〜84に対応する4種のAND−ORマトリクス群901、902、903、904を備え、プリント中に前記(1)〜(4)の分配条件の発生確率を切り換える。
【0094】
図29に4種のAND−ORマトリクス群901、902、903、904の設定例を示す。本設定例は記録ヘッドのプリント特性が
往路プリント時の濃度<復路プリント時の濃度
の時に有効な設定である。即ち、往路プリント時には記録ヘッドへの分配を相対的に高く設定することにより、往路と復路とでの濃度差を解消している。
【0095】
条件81(第1/第2:往路/往路)では、第1プリントヘッド208と第2プリントヘッド209へ共に分配する確率を約10%与え、プリント濃度を110%に高めることで、往路印字における濃度低下を防止している。
【0096】
条件82(第1/第2:往路/復路)では、第2プリントヘッド209へ分配する確率を減らすことで、プリント濃度を100%としながら第2プリントヘッド209による復路プリント頻度を約45%に減らしている。
【0097】
条件83(第1/第2:復路/復路)では、第1プリントヘッド208と第2プリントヘッド209へ共に分配しない確率を約10%与え、プリント濃度を90%にさげることで、復路印字における濃度上昇を防止している。
【0098】
条件84(第1/第2:復路/往路)では、第1プリントヘッド208へ分配する確率を減らすことで、プリント濃度を100%としながら第1プリントヘッド208による復路プリント頻度を約45%に減らしている。
【0099】
本実施例によれば、複数の記録ヘッド間の機械的な取付精度差による定量的なマルチスキャンで重ねられた単位記録画素間隔の差異を拡散することができ、結果的にモアレ効果や半走査間隔のムラを低減することは勿論、往路と復路でプリント特性が異なるプリントヘッドによる往復ムラを補正することができる。
【0100】
上述の実施形態7,8では、記録ヘッドが副走査方向にずれて配置された第1と第2のヘッドから構成され、両ヘッドによって記録媒体の所定領域への複数回の走査を行って画像を形成していた。本発明に適用可能な記録ヘッドは、これに限定されるものではなく、記録ヘッドの記録幅未満の紙送りを行うことによって、記録媒体の所定領域への複数回の走査を行うことも可能である。
【0101】
また、上述の実施形態7,8では、ランダム分配フラグ発生部によって画像データを複数(2つ)のバンドメモリに分配していたが、独立の乱数発生器を複数のバンドメモリに対応して設け、画像データをそれぞれの乱数発生器が発生した乱数に基づいて分配しても良い。独立の乱数によって分配されるので、両メモリに分配された画像データの補完関係が完全ではなくなるからである。
【0102】
要は、複数のメモリに画像データをランダムに分配する際、両メモリによって補完して形成される画像の補完関係が完全ではなく、低減されればよい。
【0103】
(実施例9)
実施例9の基本構成は、図20に示す実施例7の構成と同様である。
【0104】
図30は、本実施例のインクジェットプリンタの制御構成を示すブロック図である。図30において、2001はインクジェット捺染システムを制御するホストコンピュータを示す。
【0105】
ホストコンピュータ2001からGPIB(General PurposeInterface Bus)インタフェースを介して転送されたプリント画像データは、CPU2002の制御に従い、一旦、パレットデータ形式でフレームメモリ2003に格納される。CPU2002は、ホストコンピュータ2001から発行されたプリント開始コマンドに従って、フレームメモリ2003に格納されたプリント画像データから1主走査幅相当量を読み出す。読み出されたパレットデータはパレット変換部2004にて各インク色の発色特性に対応した多値階調画像データに変換される。変換された多値階調画像データは各色の記録ヘッドの基本吐出特性に対応したガンマ変換を行うガンマ補正部2005、各記録ヘッド固有の吐出特性を補正するムラ補正部2006にて処理がなされ、多値SMS部2007で第1記録ヘッド2014向けと第2記録ヘッド2015向けに分配される。
【0106】
2つに分配された多値階調画像データはそれぞれ第1データ変換部2008および第2データ変換部2009にて分配係数による変換処理がなされ、第1の2値化処理部2010および第2の2値化処理部2011にて誤差マトリクスと閾値を用いた誤差拡散法による2値化処理が行われる。2値化された2値画像データはそれぞれ第1バンドメモリ2012および第2バンドメモリ2013へ格納され、CPU2002が制御する片方向印字あるいは双方向印字シーケンスに従って読み出され、それぞれ第1プリントヘッド2014、第2プリントヘッド2015によって記録される。
【0107】
上記インクジェット捺染装置のプリンタユニットによる印刷処理は、先に説明した図22と同様である。
【0108】
図31は、マルチスキャン方式に従って多値階調画像データを分配して供給するための多値SMS部207の内部回路の構成を示すブロック図である。特に、第1マゼンタヘッド、第2マゼンタヘッドに記録データを分配する場合を例にとって説明する。
【0109】
図31において、ランダム分配フラグ発生部401は、乱数発生用クロックφ2,φ3(φ1≠φ2≠φ3)から、記録データ転送同期クロックφ1に同期した第1分配フラグ(EN1)および第2分配フラグ(EN2)を発生する。これら分配フラグと記録データとの論理積演算の結果を、第1データ変換部2008あるいは、第2データ変換部2009へ供給することにより、記録データの分配を行なう。このとき、
(1)EN1=“H”,EN2=“L”のとき、第1データ変換部2008のみへ分配する。
(2)EN1=“L”,EN2=“H”のとき、第2データ変換部2009のみへ分配する。
(3)EN1=“H”,EN2=“H”のとき、第1データ変換部2008および第2データ変換部2009へ、等しく分配する。
(4)EN1=“L”,EN2=“L”のとき、第1データ変換部2008および第2データ変換部2009、共に分配しない。(多値階調画像データ出力は共に“L”)
本実施例では分配条件(1)〜(4)に従ってランダムに出力される分配フラグに従って、記録データ転送同期クロックφ1に同期しながら、記録データを合成部402がランダムに切り換えて出力する。図31中の合成部402は、1ビット構成で示してあり、マゼンタ色に関しては8個(8ビット)にて構成されている。図23との相違は、本実施例が1画素8ビットの多値データを分配するのに対して、図23では1画素1ビットの2値データを分配している点にある。
【0110】
なお、ランダム分配フラグ発生部401の内部ブロックは、図24と同様である。
【0111】
AND−ORマトリクス503、504、505、506の構成も図25と同様であり、(1)、(2)、(3)および、(4)の発生確率を約0.39%(0.390625%)刻みで設定することができる。第1データ変換部2008および第2データ変換部2009内のルックアップテーブル(LUT)にて各分配先の濃度に異なる変換係数をかけている。
【0112】
例えば、図32に示す処理の具体例では、不規則に分配される多値階調画像データの注目画素の多値階調値に、第1データ変換部2008にて第1プリントヘッド2014向けデータ変換係数として「F1=1.10」を、第2データ変換部2009にて第2プリントヘッド2015向けデータ変換係数として「F2=0.90」を乗じている。ただし、このときの各係数の和は「2」には限らない。この和を調整することで画像の濃度を調整することができる。これらの演算は画像データ転送速度と等しく同期しながら行われ、それぞれ第1の2値化処理部2011、第2の2値化処理部2012へと送出される。
【0113】
本実施例では、複数の定量的なマルチスキャンで重ねられる多値階調画像データそれぞれを画素単位に不規則に分配し、「補完関係」を低減している。つまり互いに非補完の関係にしている。従って、複数の記録ヘッド間の機械的な取付精度差による単位記録画素間隔の差異を拡散することができ、結果的にモアレ効果や半走査間隔のムラを低減することができる。
【0114】
(実施例10)
図33は実施例10における、特に、多値SMS処理部2007および、第1データ変換部2008(または第2データ変換部2009)のブロック図を示したものである。ここでは、図30に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。
【0115】
多値SMS処理部2007では、第1プリントヘッド2014向けと第2プリントヘッド2015向けに等しく多値階調画像データを分配している。
【0116】
第1データ変換部2008および第2データ変換部2009はそれぞれ異なる値が設定されたルックアップテーブル(LUT)2801および2802で構成され、分配された多値階調画像データに、それぞれ異なる係数を乗ずる。
【0117】
第1の2値化処理部2010および第2の2値化処理部2011では、データ変換された各々の画像データに、異なる構造の誤差拡散マトリクスA(2803)および誤差拡散マトリクスB(2804)による周辺画素への分散と、異なる閾値Th1(2805)およびTh2(2806)を用いた誤差拡散法による2値化演算を行う。
【0118】
例えば、図34に示す処理の具体例では、8ビット構造を備えた注目画素の多値階調値が、例えば「80」に、第1データ変換部2008にて第1ヘッド向けデータ変換係数として「F1=0.55」(2801)を、第2データ変換部2009にて第2ヘッド向けデータ変換係数として「F2=0.45」(2802)を乗じている。このとき、各係数の和は「1」には限らない。これらの演算は画像データ転送速度と等しく同期しながら行われ、それぞれ第1の2値化処理部2010、第2の2値化処理部2011へと送出される。
【0119】
第1の2値化処理部2010では、誤差拡散マトリクスA(2803)によって、注目画素値の5/32または9/32の値を、図示の注目画素(*)の周囲に加算し、第2の2値化処理部2011では、誤差拡散マトリクスB(2804)によって、注目画素値の1/8または2/8の値を、図示の注目画素の周囲に加算することで、複数画素への拡散を行う。その後、第1の2値化処理部2010では、閾値として「Th1=135」、第2の2値化処理部2011では閾値として「Th2=175」を用いた2値化処理が画像転送速度に同期して実行される。
【0120】
本実施例によれば、複数の定量的なマルチスキャンで重ねられる多値階調画像データを等しく分配するため、データ分配直後の画像データには相関関係がある。しかし、分配後のデータ変換係数、誤差拡散マトリクスの構造、2値化閾値がそれぞれ異なることから、マルチスキャンによる補完関係が大きく低減されることで、定量的な差異を拡散することができ、結果的に半走査間隔のムラを低減することができる。
【0121】
(実施例11)
図35は実施例11における、多値SMS部2007の内部で、特に、第1マゼンタヘッド119、第2マゼンタヘッド127に記録データを分配する回路の構成を示すブロック図である。ここでは、図30に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。
【0122】
図35において、多値階調画像データは1ビット下位にシフトして約1/2の値となり第1の+1加算器1001および第2の+1加算器1002へ入力される。ビットシフトはフリップフロップ1000の出力を第1、第2の加算器1001、1002に入力する際にシフトすることでなされる。また、1ビット下位シフトにより溢れた最下位ビットb0は、画像データ転送同期クロックφ1に同期して、第1の+1加算器1001および第2の+1加算器1002の他方の1ビット入力として画素単位で交互に与えられる。これにより、第1、第2の加算器1001、1002からは画像データを1/2した余りが交互に加算されて出力される。
【0123】
図36は実施例11に関わる、多値SMS処理部2007および第1データ変換部2008および第1の2値化処理部2010(または第2データ変換部2009および第2の2値化処理部2011)の処理の具体例を示したものである。ここでは、図30に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。
【0124】
多値階調画像データは多値SMS処理部2007にて第1プリントヘッド2014向けと第2プリントヘッド2015向けに、ほぼ2分されて分配され、第1データ変換部2008および第2データ変換部2009へ送出される。第1データ変換部2008および第2データ変換部2009はそれぞれ異なる値が設定されたルックアップテーブル(LUT)2801および2802で構成され、分配された多値階調画像データに、異なる係数を乗ずる。この時、第1データ変換部2008および第2データ変換部2009内のルックアップテーブル(LUT)2801および2802にて各分配先の濃度を変換する。
【0125】
第1の2値化処理部2010および第2の2値化処理部2011では、データ変換されたそれぞれの画像データに、異なる構造を備えた誤差分配マトリクス、および異なる閾値を用いた誤差拡散法による2値化演算を行う。
【0126】
図37に示す処理の具体例では、ほぼ1/2に分配される多値階調画像データの注目画素の多値階調値、例えば「80」に、第1データ変換部2008にて第1プリントヘッド2014向けデータ変換係数として「F1=1.15」(2801)を、第2データ変換部2009にて第2プリントヘッド2015向けデータ変換係数として「F2=0.85」(2802)を乗じている。ただし、このときの各係数の和は「2」には限らない。これらの演算は画像データ転送速度と等しく同期しながら行われ、それぞれ第1の2値化処理部2010、第2の2値化処理部2011へと送出される。
【0127】
第1の2値化処理部2010では、誤差拡散マトリクスA(2803)によって、注目画素値の5/32または9/32の値を、図示の注目画素(*)の周囲に加算し、第2の2値化処理部2011では、誤差拡散マトリクスB(2804)によって、注目画素値の1/8または2/8の値を、図示の注目画素の周囲に加算することで、複数画素への拡散を行う。その後、第1の2値化処理部2010では、閾値として「Th1=135」、第2の2値化処理部2011では閾値として「Th2=175」を用いた2値化処理が画像転送速度に同期して実行される。
【0128】
本実施例によれば、複数の定量的なマルチスキャンで重ねられる多値階調画像データはほぼ1/2に分配され、データ分配直後の画像データには、ほぼ相関関係がある。しかし、分配後のデータ変換係数、誤差拡散マトリクスの構造、2値化閾値がそれぞれ異なることから、マルチスキャンによる補完関係が大きく低減されることで、定量的な差異を拡散することができ、結果的に半走査間隔のムラを低減することができる。なお、本実施例では第1、第2データ変換部と第1、第2の2値化処理部の構成を異ならせているが、2値化処理部に誤差拡散法を用いているので、必ずしも異ならせる必要はない。分配された画像データに相関関係があっても、2値化の際に相関関係が低減されるからである。
【0129】
(実施例12)
図38は実施例12における、多値SMS部2007の内部で、特に第1マゼンタヘッド119、第2マゼンタヘッド127に記録データを分配する回路の構成を示すブロック図である。ここでは、図30に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。
【0130】
図38において、交互分配フラグ発生部1301は、画像データ転送同期クロックφ1に同期した第1分配フラグ(EN1)および第2分配フラグ(EN2)を交互に発生する。これら交互分配フラグと記録データとは、合成部402にて論理積が演算され、第1データ変換部2008あるいは、第2データ変換部2009へ交互に分配される。
【0131】
図39は実施例12に関わる、多値SMS処理部2007および第1データ変換部2008および第1の2値化処理部2010(または第2データ変換部2009および第2の2値化処理部2011)の処理の具体例を示したものである。ここでは、図30に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。
【0132】
多値階調画像データは多値SMS処理部2007にて第1プリントヘッド2014向けと第2プリントヘッド2015向けに、画素単位に交互に分配され、第1データ変換部2008および第2データ変換部2009へ送出される。第1データ変換部2008および第2データ変換部2009はそれぞれ異なる値が設定されたルックアップテーブル(LUT)2801および2082で構成され、分配された多値階調画像データに異なる係数を乗ずる。
【0133】
第1の2値化処理部2010および第2の2値化処理部2011では、データ変換されたそれぞれの画像データに、異なる構造を備えた誤差分配マトリクス、および異なる閾値を用いた誤差拡散法による2値化演算を行う。
【0134】
図40は第1データ変換部2008および第1の2値化処理部2010(または第2データ変換部2009および第2の2値化処理部2011)の処理の具体例を示したものである。ここでは、図30に示したものと同じ構成要素には同じ参照番号を付し、これらの説明は省略する。
【0135】
例えば、図40に示す処理の具体例では、8ビット構造を備えた注目画素の多値階調値、例えば「80」に、第1データ変換部2008にて第1ヘッド向けデータ変換係数として「F1=1.20」(2801)を、第2データ変換部2009にて第2ヘッド向けデータ変換係数として「F2=0.80」(2802)を乗じている。このとき、各係数の和は「2」には限らない。これらの演算は画像データ転送速度と等しく同期しながら行われ、それぞれ第1の2値化処理部2010、第2の2値化処理部2011へと送出される。
【0136】
第1の2値化処理部2010では、誤差拡散マトリクスA(2803)によって、注目画素値の5/32または9/32の値を、図示の注目画素(*)の周囲に加算し、第2の2値化処理部2011では、誤差拡散マトリクスB(2804)によって、注目画素値の1/8または2/8の値を、図示の注目画素の周囲に加算することで、複数画素への拡散を行う。その後、第1の2値化処理部2010では、閾値として「Th1=140」、第2の2値化処理部2011では閾値として「Th2=180」を用いた2値化処理が画像転送速度に同期して実行される。
【0137】
本実施例によれば、複数の定量的なマルチスキャンで重ねられる多値階調画像データが画素単位で交互に分配され、データ分配直後の画像データには相関関係がある。しかし、分配後の誤差拡散マトリクスの閾値が異なり、さらに、交互分配により演算結果の差が顕著化することから、マルチスキャンによる補完関係が低減されることで、定量的な差異を拡散することができ、結果的に半走査間隔のムラを低減することができる。
【0138】
また、実施例9から実施例12の構成を適宜組み合わせることで、ムラを低減する効果を高めることができる。
【0139】
次に、上記構成の記録装置によって実行される捺染記録の工程全体を説明する。上述のインクジェット方式に従う記録装置を用いて、インクジェット印捺工程を経た後、布帛を乾燥(自然乾燥を含む)させる。そして、引き続き布帛繊維上の染料を拡散させ、且つ布帛への染料を反応定着させる工程を施す。この工程により、十分な発色性と染料の固着による堅牢性を得ることができる。
【0140】
この拡散、反応定着工程は従来公知の方法でよく、例えば、スチーミング法が挙げられる。尚、この場合、印捺工程の前に、予め布帛にアルカリ処理を施しても良い。
【0141】
その後、後処理工程において、未反応の染料の除去および前処理に用いた物質の除去が行われる。最後に、欠陥補正、アイロン仕上げなどの整理し挙げ工程を経て記録が完成する。
【0142】
特にインクジェット捺染用布帛としては、
(1)インクを十分な濃度に発色させ得ること。
(2)インクの染着率が高いこと。
(3)インクが布帛上で速やかに乾燥すること。
(4)布帛上での不規則なインク滲みの発生が少ないこと。
(5)装置内での搬送性に優れること。
等の性能が要求される。これらの要求性能を満足させるために、本発明において、不要に応じて布帛に対し、予め前処理を施しておくことができる。例えば、特開昭62−53492号公報においてはインク受容量を有する布帛類が開示され、特開平3−46589号公報においては還元防止剤やアルカリ性物質を含有させた布帛の提案がなされている。このような前処理の例としては、布帛にアルカリ性物質、水溶性高分子、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチオ尿素から選ばれる物質を含有させる処理を挙げることができる。
【0143】
アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属、モノ、ジ、トリエタノールアミン等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸もしくは重炭酸アルカリ金属塩などが挙げられる。さらに酢酸カルシウム、酢酸バリウム等の有機酸金属塩やアンモニアおよびアンモニア化合物等がある。また、スチーミングおよび」乾熱下でアルカリ物質となるトリクロロ酢酸ナトリウム等も用い得る。特に好ましいアルカリ性物質としては、反応性染料の染色に用いられる炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムがある。
【0144】
水溶性高分子としては、トウモロコシ、小麦などのデンプン物質、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系物質、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ローカスイトビーンガム、トラガントガム、グアガム、クマリンド種等の他糖類、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質物質、タンニン系物質、リグニン系物質等の天然水溶性高分子が挙げられる。
【0145】
また、合成高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレンオキサイド系化合物、アクリル酸系水溶性高分子、無水マレイン酸系水溶性高分子などが挙げられる。これらの中でも他糖類系高分子やセルロース系高分子が好ましい。
【0146】
水溶性金属塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型的なイオン結晶を作るものであって、ph4〜10である化合物が挙げられる。かかる化合物の代表的な例としては、例えば、アルカリ金属では、NaCl、Na2SO4、KClおよびCH3COONa等が挙げられ、また、アルカリ土類金属としては、CaCl2およびMgCl2などが挙げられる。中でも、Na、KおよびCaの塩類が望ましい。
【0147】
前処理において上記物質などを布帛に含有させる方法は特に制限されないが、通常行われる浸漬法、パッド法、コーティング法、スプレー法などを挙げることができる。さらに、インクジェット捺染用布帛に付与される捺染インクは、布帛上に付与された状態では単に付着しているに過ぎないので、引き続き繊維への捺染等インク中の色素の定着工程を施すのが望ましい。このような定着工程は、従来公知の方法でよく、例えば、スチーミング法、HTスチーミング法、サーモフィックス法、あらかじめアルカリ処理した布帛を使用しない場合は、アルカリパッドスチーム法、アルカリブロッチスチーム法、アルカリショック法、アルカリコールドフィックス法等が挙げられる。また、定着工程は、染料によって反応工程を含むものと、含まないものとがあり、後者の例としては繊維に含浸させて物理的に離脱しないものもある。また、インクとしては所要の色素を有するものであれば適宜のものを用いることができ、染料に限らず顔料を含むものでもよい。
【0148】
さらに、未反応の染料の除去および前処理に用いた物質の除去は、上記反応定着工程の後に従来公知の方法に準じ、洗浄により行うことができる。なお、この洗浄の際に従来のフィックス処理を併用することが好ましい。
【0149】
以上述べた後処理工程が施されたプリント物は、その後、所望の大きさに切り離され、切り離された片は、逢着、接着、溶着など、最終的な加工品を得るための工程が施され、ワンピース、ドレス、ネクタイ、水着などの衣類や布団カバー、ソファカバー、ハンカチ、カーテンなどが得られる。布帛を縫製などにより加工して衣類やその他の日用品とする方法は、従来より公知の技術である。
【0150】
尚、プリント用媒体としては、布帛、壁布、刺繍に用いられる糸、壁紙、紙、OHPフィルム、アルマイトなどの板状物、その他、インクジェット技術を用いて所定の液体を付与可能な種々の媒体が挙げられ、布帛としては、素材、織り方、編み方を問わず、あらゆる織物、不織物およびその他の布地を含む。
【0151】
本発明は、上述したインクジェット記録方式に限らず種々の記録方式を採用できるが、インクジェット方式を採用する場合には、その中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段を備え、その熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方法、すなわちキヤノン株式会社が提唱するバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッド、記録装置を用いることで優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0152】
その他、代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796同明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが望ましい。この方法は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用綿に膜沸騰を生じさせて、結果的に、この気泡の成長、収縮により吐出用開口部を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262同明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0153】
記録ヘッドの構成としては、上述の明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録を確実に効率よく行うことができるようになるからである。
【0154】
加えて、記録ヘッドは、記録装置の形態に対応して構成できるのは勿論であり、所謂ラインプリンタ形態のものに対しては記録媒体の幅に対応した範囲にわたって吐出口を配列したものとすればよい。また、上例のようなシリアルタイプの記録ヘッドとしては、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは、記録ヘッド自体に一時的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0155】
また、本発明の記録装置の構成として、記録ヘッドの吐出回復手段、予備的な吐出補助手段を付加することは記録動作を一層安定することができるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出手段を挙げることができる。
【0156】
さらに加えて、以上述べた本実施例に於いては、インクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温でも軟化もしくは液化するものを用いてもよく、或いはインクジェット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、記録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよい。加えて、熱エネルギーによる昇温を、インクの固形形態から液状形態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によって液体が液化し、液状インクが吐出されるものや記録媒体に到達する時短では既に固化し始めるものなどのような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合にも本発明は適用可能である。このような場合のインクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液体または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明に於いては、上述した各インクに対して最も有効なのは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0157】
さらに加えて、本発明の形態としては、コンピュータなどの情報処理機器の画像出力端末として用いられているものの他、リーダなどと組み合わせた複写装置の形態を探るものなどであってもよい。
【0158】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0159】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0160】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0161】
プログラムコードを供給するため記憶媒体としては、例えば、フロッピィディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0162】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0163】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれていることは言うまでもない。
【0164】
本発明によれば、物理的な精度誤差によるレジストレーションが微妙に変化しても、レジストレーションの変化に対する依存度が低下するため、画像濃度が大きく変化せず濃度むらの軽減された均一な画像を形成することができる。
【0165】
また、往復主走査を伴う記録動作においては、記録方向の違いによって発生する濃度ムラをも低減することができる。これによって、例えば、綿、絹、ナイロン、ポリエステルなどの記録媒体への捺染記録の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0166】
201 ホストコンピュータ
202 CPU
203 フレームメモリ
204 多値/二値変換部
205 シーケンシャルマルチスキャン部
206 第1バンドメモリ
207 第2バンドメモリ
208 第1プリントヘッド
209 第2プリントヘッド
212 第2プリントヘッド
1001 画像データ記憶装置
1002 パレット変換回路
1003 γ変換回路
1004 ムラ補正回路
1005 分配回路
1006 データ変換回路
1007 低階調化回路
1008 TMC(Timing Memory Controller)回路
1009 PHC(Printer Head間Connector)基板
1010 印字制御装置
601 記録ヘッド部
602 フロントヘッド
603 リアヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドの少なくとも2回の走査によって記録媒体の画素領域に画像を形成するために、前記画素領域に対応した入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記入力画像データに基づいて、前記2回の走査のうちの第1の走査に対応した第1の多値画像データと前記2回の走査のうちの第2の走査に対応した第2の多値画像データとを生成するための生成手段と、
前記生成手段により生成された第1および第2の多値画像データに誤差拡散処理を行うための誤差拡散処理手段とを有し、
前記生成手段は、1つの前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の多値画像データと、当該第1の多値画像データの値とは異なる値を有する前記第2の多値画像データとを生成可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
同じ色のドットを形成するための第1および第2の記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体の画素領域に画像を形成するために、前記画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記入力画像データに基づいて、前記第1の記録ヘッドに対応した第1の多値の画像データと前記第2の記録ヘッドに対応した第2の多値の画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された第1および第2の多値の画像データに誤差拡散処理を実行するための誤差拡散処理手段とを有し、
前記生成手段は、1つの前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の多値画像データと、当該第1の多値画像データの値とは異なる値を有する前記第2の多値画像データとを生成可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
記録ヘッドの第1および第2の走査を含む複数回の走査によって記録媒体上の画素領域に画像を形成するための画像処理を行う画像処理方法であって、
前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の走査に対応した第1の多値画像データおよび前記第2の走査に対応した第2の多値画像データを生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された第1および第2の多値画像データに誤差拡散処理を行う誤差拡散処理工程とを有し、
前記生成工程では、1つの前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の多値画像データと、当該第1の多値画像データの値とは異なる値を有する前記第2の多値画像データとを生成可能であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
同じ色のドットを形成するための第1および第2の記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体の画素領域に画像を形成するために、前記画素領域に対応する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記入力画像データに基づいて、前記第1の記録ヘッドに対応した第1の多値の画像データと前記第2の記録ヘッドに対応した第2の多値の画像データを生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された第1および第2の多値の画像データに誤差拡散処理を実行するための誤差拡散処理工程とを有し、
前記生成工程では、1つの前記画素領域に対応した入力画像データに基づいて、前記第1の多値画像データと、当該第1の多値画像データの値とは異なる値を有する前記第2の多値画像データとを生成可能であることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2010−283847(P2010−283847A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158134(P2010−158134)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2009−182575(P2009−182575)の分割
【原出願日】平成11年5月14日(1999.5.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】