説明

画像処理装置および電力管理装置

【課題】省電力設定が行われる際に省電力の効果を予め確認することが可能な画像処理装置および電力管理装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置20は、印刷装置21、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24を備えている。制御装置24は、デバイスごとの状態遷移の状況が記録されるログを生成するログ生成部31と、ログ生成部31により生成されたログを用いて演算を行う演算部32と、各種のデータを送受信するネットワーク制御部33と、ログや各種のデータ、計算式、計算結果等を格納する格納部34と、を備えている。ログ生成部31は、印刷装置用ログ生成部41と、UI装置用ログ生成部42と、画像読取装置用ログ生成部43と、制御装置用ログ生成部44と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および電力管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、コピーモードやプリントモードを備え、各動作モードの動作履歴を正確に計時し、計時された計時値に基づきコピーモードやプリントモードなどの様々なジョブを処理する複合機の電力に係るログ情報を作成する複合機が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−309684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、画像形成装置を構成する例えば画像入力装置や画像出力装置等のデバイスの動作設定を変更することで消費電力量を低減することが可能である。そして、ユーザがデバイスの動作設定を省電力になるように変更しようとする際に、省電力を図ることが可能な設定を画面に表示して提案する形式が考えられる。ところが、省電力を図ることが可能な設定はユーザの使用態様によって異なるものになる。そのため、複数の設定例を予め決めておき、製品出荷時にその設定例を画像形成装置の格納部に格納させるようにしても、その設定例によって省電力の効果を十分に得ることが難しい場合が考えられる。
【0005】
本発明は、省電力設定が行われる際に省電力の効果を予め確認することが可能な画像処理装置および電力管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1の機能を実現する構成を備え、電力を消費して当該第1の機能を実現する動作状態を含む複数の動作状態を有し、当該複数の動作状態の遷移によって消費電力が増減する第1の機能部と、第2の機能を実現する構成を備え、電力を消費して当該第2の機能を実現する動作状態を含む複数の動作状態を有し、当該複数の動作状態の遷移によって消費電力が増減する第2の機能部と、前記第1の機能部について前記複数の動作状態のいずれかに遷移した履歴を示す履歴情報を生成する第1の生成部と、前記第2の機能部について前記複数の動作状態のいずれかに遷移した履歴を示す履歴情報を生成する第2の生成部と、前記第1の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第1の生成部により生成された前記履歴情報とを取得して当該第1の機能部の消費電力量を演算し、前記第2の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第2の生成部により生成された前記履歴情報とを取得して当該第2の機能部の消費電力量を演算する演算部と、を含む画像処理装置である。
請求項2に記載の発明は、前記第1の機能部と前記第2の機能部とが互いに連動して動作することになる指示である第1の動作指示および、当該第1の機能部が単独で動作することになる指示である第2の動作指示を取得する取得部を更に含み、前記演算部は、前記第1の機能部が前記第1の動作指示および前記第2の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算し、前記第2の機能部が当該第1の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
請求項3に記載の発明は、前記第1の機能部および前記第2の機能部の前記複数の動作状態のいずれかに遷移する時期に関する設定の変更を受け付ける受付部を更に含み、前記演算部は、前記受付部で受け付けた前記設定の条件下での消費電力量を、前記履歴情報を用いて予測値として演算することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置である。
請求項4に記載の発明は、前記設定の条件下での前記消費電力量を、当該設定の前の条件下での当該消費電力量と共に出力する出力部を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置である。
【0007】
請求項5に記載の発明は、消費電力量が互いに異なる複数の動作状態を有する第1の機能部について当該複数の動作状態のいずれに遷移したかの履歴を示す履歴情報を生成する第1の生成手段と、消費電力量が互いに異なる複数の動作状態を有する第2の機能部について当該複数の動作状態のいずれに遷移したかの履歴を示す履歴情報を生成する第2の生成手段と、前記第1の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第1の生成手段により生成された前記履歴情報とを取得して当該第1の機能部の消費電力量を演算し、前記第2の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第2の生成手段により生成された前記履歴情報とを取得して当該第2の機能部の消費電力量を演算する演算手段と、を含む電力管理装置である。
請求項6に記載の発明は、前記演算手段は、前記第1の機能部および前記第2の機能部が互いに連動して動作することになる指示である第1の動作指示と当該第1の機能部が単独で動作することになる指示である第2の動作指示とによって当該第1の機能部および当該第2の機能部が動作したときに、当該第1の機能部が当該第1の動作指示および当該第2の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算すると共に、当該第2の機能部が当該第1の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算することを特徴とする請求項5に記載の電力管理装置である。
請求項7に記載の発明は、前記演算手段は、前記第1の機能部および前記第2の機能部の前記複数の動作状態のいずれかに遷移する時期に関する設定を変更したときに、当該設定の条件下での消費電力量を、前記履歴情報を用いて予測値として演算することを特徴とする請求項5または6に記載の電力管理装置である。
請求項8に記載の発明は、前記設定の条件下での前記消費電力量を、当該設定の前の条件下での当該消費電力量と共に出力する出力手段を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の電力管理装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1によれば、省電力設定が行われる際に省電力の効果を予め確認することが可能になる。
請求項2によれば、コンカレント動作の場合であっても省電力の効果を予め確認することが可能になる。
請求項3によれば、第1の機能部と第2の機能部の各々について設定変更をした場合の消費電力量を算出することが可能になる。
請求項4によれば、設定変更の前後の消費電力量をユーザに通知することが可能になる。
請求項5によれば、省電力設定が行われる際に省電力の効果を予め確認することが可能になる。
請求項6によれば、コンカレント動作の場合であっても省電力の効果を予め確認することが可能になる。
請求項7によれば、第1の機能部と第2の機能部の各々について設定変更をした場合の消費電力量を算出することが可能になる。
請求項8によれば、設定変更の前後の消費電力量をユーザに通知することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の電力管理システムPSの構成の一例を示す図である。
同図に示すように、この電力管理システムPSは、複数の端末装置10と画像処理装置の一例としての画像形成装置20とが通信網NWに互いに接続されることにより構成されている。この電力管理システムPSは、例えば複数の端末装置10の各々から印刷しじが通信網NWを介して画像形成装置20に送信されると、画像形成装置20は、その印刷指示を受けて用紙に印刷を行うように構成されている。このように、電力管理システムPSは、通信網NWの環境下で画像形成装置20をユーザが使用することが可能に構成されている。
【0010】
端末装置10は、画像データを作成し外部に出力する機器であり、例えば、ソフトウェアを実行して演算等を行うコンピュータ本体、ディスプレイ等の表示装置、コンピュータ本体に対して入力を行うための入力装置等により構成される。この端末装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、その他のコンピュータが用いられる。
【0011】
画像形成装置20は、媒体に画像を印刷し、印刷文書として出力する装置である。また、画像形成装置20は、画像読取処理等の機能を実現するための各種のデバイスを備えている。その詳細については、後述する。
【0012】
通信網NWとしては、例えばイーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))によるLAN(Local Area Network)で構成することができる。更に説明すると、この通信網NWを介して、端末装置10と画像形成装置20との間でデータを相互に送受信することができる。すなわち、端末装置10は、画像形成装置20に対して通信網NWを介して印刷データを送信して印刷を指示することができる。また、画像形成装置20は、通信網NWに接続されている端末装置10の数を検知することができる。
なお、端末装置10と画像形成装置20との間で通信網NWを介してデータ転送を行う際に、送信元と送信先との間でデータ通信を確立するためのネゴシエーション(negotiation)を行う。このネゴシエーションという用語は、ハードウェアデバイス同士が通信(通信条件)に関する情報交換を行うものともいうことができる。
【0013】
図2は、画像形成装置20の構成例を示すブロック図である。
同図に示すように、本実施の形態での画像形成装置20は、取得された画像を処理して用紙に印刷する印刷装置21と、予め定められた画像を表示する表示画面やユーザが操作する操作パネル等を有するUI装置22と、を備えている。また、画像形成装置20は、処理すべき画像を読み取るスキャナ等で構成される画像読取装置23と、画像形成装置20の全体を制御する制御装置24と、を備えている。このように、画像形成装置20は、画像読取機能、印刷機能およびUI機能のためのデバイス(第1の機能部、第2の機能部)として、印刷装置21、UI装置22および画像読取装置23を備えている。
なお、印刷装置21は、トナー像を用紙等の媒体上に形成する電子写真方式を用いて印刷を行う構成を採用することができるが、その他の方式、例えばインクを用紙等の媒体に吐出して像を形成するインクジェット方式を用いてもよい。
【0014】
なお、UI装置22は、プリントジョブ(第2の動作指示)やコピージョブ(第1の動作指示)等の動作指示を取得する取得部の一部を構成するものである。また、UI装置22は、複数のモード(動作状態)のいずれかに遷移する時期に関する設定の変更を受け付ける受付部の一部を構成するものでもある。また、後述する演算部32による演算結果(消費電力量)を出力する出力部の一部を構成するものでもある。
【0015】
制御装置24は、デバイスごとの状態遷移の状況が記録されるログ(複数のモードのいずれかに遷移した履歴を示す履歴情報)を生成するログ生成部31と、ログ生成部31により生成されたログを用いて演算を行う演算部32と、端末装置10との間で通信網NWを介して各種のデータを送受信するための通信制御部33と、を備えている。
なお、通信制御部33は、UI装置22と同様に、取得部の一部を構成するものであり、受付部の一部を構成するものであり、出力部の一部を構成するものでもある。ログ生成部31、演算部32および通信制御部33を、例えばCPU(Central Processing Unit)によって構成することが考えられる。
【0016】
また、制御装置24は、ログ生成部31により生成されたログを格納し、演算部32による計算に用いられる各種のデータや計算式、計算結果を格納し、通信制御部33による送受信に用いる各種のデータを格納する格納部34を備えている。格納部34を、例えばRAM(Random Access Memory)およびROM(Read-Only Memory)で構成することが考えられる。
さらに説明すると、格納部34は、稼動状態により電力の増減があるデバイスごとの各状態での消費電力量のテーブル(電力情報テーブル)を格納している。なお、制御装置24は、印刷装置21、UI装置22および画像読取装置23に対して電力供給の制御を行う部分ということもできる。
【0017】
ログ生成部31は、印刷装置21についてのログを生成する印刷装置用ログ生成部41と、UI装置22についてのログを生成するUI装置用ログ生成部42と、画像読取装置23についてのログを生成する画像読取装置用ログ生成部43と、制御装置24についてのログを生成する制御装置用ログ生成部44と、を備えている。
なお、印刷装置用ログ生成部41、UI装置用ログ生成部42、画像読取装置用ログ生成部43または制御装置用ログ生成部44によって、第1の生成部および第2の生成部を構成することができる。
【0018】
さらに説明すると、画像形成装置20は、デバイスごとに、消費電力の異なる複数の電力モード(動作モード、動作状態)を有する。例えば、印刷装置21では、電力モードとして、発生したジョブを実行するプリントモードと、ジョブの発生に備えて待機するレディーモード(スタンバイモード)と、がある。また、印刷装置21は、レディーモードが予め定められた時間継続されると消費電力を低減するために遷移するスリープモードと、スリープモードの時にジョブが発生すると遷移するウォームアップモードと、がある。プリントモード及びレディーモードを、通常の動作状態で動作するモードとしての通常モードということができ、また、スリープモードを省電力モード(節電モード)ということができる。通常モードの消費電力よりも省電力モードの消費電力の方が低い。
UI装置22では、電力モードとして、上述したレディーモードおよびスリープモードがある。
画像読取装置23では、電力モードとして、画像を読み取るスキャンモードがあり、また、上述したレディーモードおよびスリープモードがある。
【0019】
図3は、制御装置24の格納部34に格納されている電力情報テーブル51,52,53,54の一例を説明する図である。
同図に示す電力情報テーブル51は、印刷装置21についてのものであり、スリープモードのときの消費電力は1Wであり、また、スタンバイモード(レディーモード)のときには30W、ウォームアップモードのときには800Wである。そして、プリントモードのときには、用紙がA4判であれば、1ページ当たり600Whである。このように、モードごとに消費電力が異なり、モードの遷移があると、印刷装置21の消費電力が増減することになる。
また、同図に示す電力情報テーブル52は、UI装置22についてのものであり、スリープモードのときの消費電力は0.1Wであり、また、スタンバイモードのときには5Wである。UI装置22も、モードの遷移があると、消費電力が増減することになる。
なお、同図に示す電力情報テーブル53は、画像読取装置23についてのものであり、同図に示す電力情報テーブル54は、制御装置24についてのものである。
【0020】
図4は、印刷装置21、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24の各モードの遷移例を説明するタイムチャートである。なお、同図のtは時間を示す。
同図に示すタイムチャートの例では、印刷装置21、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24がスリープモードのときにプリントジョブが発生し、プリントジョブが完了する前にさらにコピージョブが発生した場合を示している。すなわち、このタイムチャートでは、一つのジョブが動作するだけの単体動作ではなく、複数のジョブが並行に動作するコンカレント(concurrent)動作の場合を示している。なお、他のコンカレント動作の例としては、画像形成装置10がファクシミリ装置(ファクシミリ機能)を備える構成において、ファクシミリ受信中にUI装置22にてユーザがファクシミリ送信する場合が考えられる。
なお、プリントジョブは、端末装置10から送信されたものであり、通信網NWを介して通信制御部33が受信する。また、コピージョブは、ユーザにより操作された指示をUI装置22が受け付けたものである。付言すると、コピージョブは、画像読取装置23および印刷装置21が互いに連動して動作することとなる指示である。プリントジョブは、印刷装置21が単独で動作することとなる指示である。
【0021】
プリントジョブが発生すると、印刷装置21、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24はスリープモードから他のモードに移行する。すなわち、印刷装置21は、スリープモードからウォームアップモードに遷移した後にプリントモードに遷移する。また、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24は、レディーモードに遷移する。
コピージョブは、画像読取装置23がスキャンし、その画像を印刷装置21が印刷することで実行される。したがって、コピージョブが発生すると、まず、画像読取装置23がレディーモードからスキャンモードに移行する。そして、印刷装置21は、プリントジョブの実行により既にプリントモードであるので、モード遷移することなく、スキャンした画像の印刷が行われる。すなわち、単体動作であれば、コピージョブが発生すると、印刷装置21は、ウォームアップモードを経てプリントモードに遷移するものの、コンカレント動作であるので、モード遷移が不要である。
【0022】
図5は、制御装置24のログ生成部31により生成されて格納部34に格納されるログ61,62,63,64を説明する図である。
同図に示すログ61,62,63,64は、図4に示すタイムチャートの場合に生成されたものである。ログ61は、印刷装置用ログ生成部41により生成されたログであり、ログ62は、UI装置用ログ生成部42により生成されたログであり、ログ63は、画像読取装置用ログ生成部43により生成されたログである。また、ログ64は、制御装置用ログ生成部44により生成されたログである。
【0023】
具体的に説明すると、ログ61では、スリープモードが1954秒間(32分34秒間)継続し、その後にウォームアップモードに遷移して10秒後に、A4用紙への印刷を5ページ分行ったことを示している。そして、レディーモードに遷移して1800秒間(30分間)継続し、その後にスリープモードに遷移して3600秒間(1時間)継続したことを示している。
また、ログ62では、スリープモードが1954秒間(32分34秒間)継続し、その後にレディーモードに遷移して1840秒間(30分40秒間)継続し、その後にスリープモードに遷移して3600秒間(1時間)継続したことを示している。
【0024】
図5に示すログ61では、レディーモードが1800秒間継続するとスリープモードに遷移するように設定されている。すなわち、節電設定が30分間である。このような節電設定の場合における印刷装置21の消費電力量cは、実測値として次のように求めることができる。なお、このような演算は、演算部32により行われる。
【0025】
印刷装置21の実測値としての消費電力量cのうち、スリープモードでの消費電力量c1は、
1W×(1954秒+3600秒)/3600秒=1.54Wh
である。また、ウォームアップモードでの消費電力量c2は、
800W×10秒/3600秒=2.22Wh
である。また、プリントモードでの消費電力量c3は、
600Wh×5ページ=3000Wh
である。また、レディーモードでの消費電力量c4は、
30W×1800秒/3600秒=15Wh
である。したがって、印刷装置21の消費電力量cは、
c=c1+c2+c3+c4=3018.76Wh
である。
【0026】
また、図4に示すタイムチャート例では、スリープモードのUI装置22は、プリントジョブが発生するとレディーモードに遷移するように設定されている。このような設定の場合におけるUI装置22の消費電力量dは、実測値として次のように求めることができる。なお、このような演算は、演算部32により行われる。
【0027】
UI装置22の実測値としての消費電力量dのうち、スリープモードでの消費電力量d1は、
0.1W×(1954秒+3600秒)/3600秒=0.15Wh
である。また、レディーモードでの消費電力量d2は、
5W×1840秒/3600秒=2.56Wh
である。したがって、UI装置22の消費電力量dは、
d=d1+d2=2.71Wh
である。
【0028】
他のデバイスとしての画像読取装置23および制御装置24についても、演算部32が同様の演算によって消費電力量を算出する。そして、演算部32は、すべてのデバイスの消費電力量を加算することで、画像形成装置20の予め定められた期間内での消費電力量を算出する。
【0029】
ここで、ユーザは、UI装置22を操作したり、端末装置10を用いたりすることによって、消費電力量を低減するように画像形成装置20の設定を変更する場合を説明する。このような設定の変更としては、例えば、節電移行時間を変更したり、印刷装置21はプリントするまでウォームアップしない設定に変更したり、UI装置22はプリントジョブでは立ち上げない設定に変更したりすることが考えられる。
【0030】
画像形成装置20の設定変更として、まず節電移行時間の変更について説明する。
図6は、図4のタイムチャートの場合に、レディーモードからスリープモードに遷移する節電時間を変更するときの消費電力量を説明する図である。また、図7は、図5のログが生成された場合に、レディーモードからスリープモードに遷移する節電時間を変更するときの消費電力量を説明する図である。
例えば、図6および図7に示すように、節電設定が30分(1800秒)から1分(60秒)に変更されると、1分間以内にジョブが発生しないという条件の下では、レディーモードのままの時間が1740秒だけ少なくなり、スリープモードの時間がその分多くなる。印刷装置21のみならず、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24についてもスリープモードの時間が長くなるので、画像形成装置20の全体の消費電力量を低減することができる。
【0031】
具体的に説明すると、節電設定が変更された後の印刷装置21の消費電力量eは、次のように求めることができる。なお、この消費電力量eは、予測値である。そして、このような予測値の演算もまた、演算部32により行われる。
印刷装置21の予測値としての消費電力量eのうち、スリープモードでの消費電力量e1は、
1W×(1954秒+1740秒+3600秒)/3600秒=2.03Wh
になる。ウォームアップモードでの消費電力量e2は2.22Whで、上述した消費電力量c2と同じである。プリントモードでの消費電力量e3は3000Whで、上述した消費電力量c2と同じである。また、レディーモードでの消費電力量e4は、
30W×60秒/3600秒=0.5Wh
になる。したがって、節電設定を変更した場合の印刷装置21の予測値としての消費電力量eは、
e=e1+e2+e3+e4=3004.75Wh
になる。
【0032】
そして、UI装置22、画像読取装置23および制御装置24についても、演算部32が同様の演算によって予測値としての消費電力量を算出する。そして、演算部32は、すべてのデバイスの消費電力量を加算することで、画像形成装置20の予め定められた期間内での予測値としての消費電力量を算出する。
このようにして、実測値と節電設定変更後の予測値とを求め、その差を算出することにより、節電設定により節電される消費電力量を取得することができる。
【0033】
図8は、節電設定を変更する場合にUI装置22に表示される一例を示す図である。
同図に示すように、UI装置22の表示画面には、予め定められた期間内の実測値である消費電力量を表示すると共に、節電設定の変更内容および節電設定後の予測値としての消費電力量を具体的な数値で表示する。
このような表示を行うことで、予測値としての消費電力量をユーザは把握することができる。すなわち、過去の画像形成装置20の使用態様を基にして、消費電力量を低減することができたであろう設定をユーザは把握する。このため、ユーザは、将来の使用態様を推測して設定を変更することができる。
【0034】
次に、UI装置22の設定変更について説明する。
図9は、図4のタイムチャートの場合に、プリントジョブが発生してもUI装置22はスリープモードから遷移しない設定に変更するときの消費電力量を説明する図である。なお、同図のtは時間を示す。また、図10は、図5のログが生成された場合に、プリントジョブが発生してもUI装置22はスリープモードから遷移しない設定に変更するときの消費電力量を説明する図である。
スリープモードのUI装置22について、何らかのジョブ(本実施の形態ではプリントジョブ)が発生したときにレディーモードに遷移する設定を変更することで、UI装置22の消費電力量を低減することが可能である。
【0035】
設定変更の具体例としては、スリープモードのUI装置22はコピージョブが発生するまでレディーモードに遷移しないようにすることである。言い換えると、スリープモードのUI装置22はプリントジョブが発生してもレディーモードに遷移しないようにすることである。プリントジョブは、通信網NWを介して端末装置10が画像形成装置20に印刷指示を行うものであり、UI装置22がレディーモードに遷移しなくてもプリントジョブを実行することに支障がない。
このようにUI装置22の設定を変更した場合には、図9に示すように、UI装置22は、プリントジョブが発生してからコピージョブが発生するまでの時間(本実施の形態の例では150秒間)レディーモードに遷移するタイミングを遅らせることができる。
【0036】
そして、仮にそのような設定変更を行っていたら、図10に示すように、UI装置22では、スリープモードの時間が1954秒から2104秒に増え、レディーモードの時間が1840秒から1690秒に減る。
具体的な演算の内容を説明する。UI装置22についての消費電力量fは、実測値として次のように求めることができる。なお、このような演算は、演算部32により行われる。
【0037】
UI装置22についての消費電力量fのうち、スリープモードでの消費電力量f1は、
0.1W×(2104秒+3600秒)/3600秒=0.16Wh
である。また、レディーモードでの消費電力量f2は、
5W×1690秒/3600秒=2.35Wh
である。したがって、UI装置22の消費電力量fは、
f=f1+f2=2.51Wh
である。UI装置22の実測値としての消費電力量dは2.71Whであるので、上述した設定を変更しておけば0.2Whの消費電力量を低減することが可能であったことをユーザは把握できる。
【0038】
図11は、UI装置22の設定を変更する場合にUI装置22に表示される一例を示す図である。
同図に示すように、UI装置22の表示画面には、予め定められた期間内の実測値である消費電力量を表示すると共に、設定変更の内容および設定変更後の予測値としての消費電力量を表示する。
【0039】
本実施の形態では、印刷装置21の実測値としての消費電力量cを基にして、上述した節電設定を変更した場合の消費電力量eを予測値として算出することができ、その算出結果が図8に示すように表示される。また、UI装置22の実測値としての消費電力量dを基にして、UI装置22についての設定を上述したように変更した場合の消費電力量fを予測値として算出することができ、その算出結果が図11に示すように表示される。したがって、省電力設定の変更を行う表示画面で、指定した期間内での実測値としての消費電力量と、変更した場合の予測値としての消費電力量とを表示することができる。
【0040】
さらに説明すると、コンカレント動作を行うことになる複数のジョブが発生した場合に、ジョブ単位でログを生成する構成では、このような予測値を算出することができない。本実施の形態では、デバイス単位でログを生成する構成を採用することによって、予測値を算出することが可能である。すなわち、本実施の形態によれば、省電力設定をする際の予測値としての消費電力量を算出できる状況を増やすことが可能になる。
【0041】
さらにまた説明すると、ジョブ単位でログを生成する構成では予測値を算出できない場合としては、上述したコンカレント動作の場合のほかにも考えられる。例えば、プリントジョブが発生したときにUI装置22をレディーモードに遷移させるかスリープモードのままにするかの設定によって消費電力量が変わる。ところが、ジョブ単位でログを生成する構成では、そのようなUI装置22のオン/オフ設定を変更したときの予測値としての消費電力量を算出することができない。本実施の形態では、このような場合にも対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施の形態の電力管理システムの構成の一例を示す図である。
【図2】画像形成装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】制御装置の格納部に格納されている電力情報テーブルの一例を説明する図である。
【図4】印刷装置、UI装置、画像読取装置および制御装置の各モードの遷移例を説明するタイムチャートである。
【図5】制御装置のログ生成部により生成されて格納部に格納されるログを説明する図である。
【図6】図4のタイムチャートの場合に、レディーモードからスリープモードに遷移する節電時間を変更するときの消費電力量を説明する図である。
【図7】図5のログが生成された場合に、レディーモードからスリープモードに遷移する節電時間を変更するときの消費電力量を説明する図である。
【図8】節電設定を変更する場合にUI装置に表示される一例を示す図である。
【図9】図4のタイムチャートの場合に、プリントジョブが発生してもUI装置はスリープモードから遷移しない設定に変更するときの消費電力量を説明する図である。
【図10】図5のログが生成された場合に、プリントジョブが発生してもUI装置はスリープモードから遷移しない設定に変更するときの消費電力量を説明する図である。
【図11】設定を変更する場合にUI装置に表示される一例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
10…端末装置、20…画像形成装置、21…印刷装置、22…UI装置、23…画像読取装置、24…制御装置、31…ログ生成部、32…演算部、33…通信制御部、34…格納部、41…印刷装置用ログ生成部、42…UI装置用ログ生成部、43…画像読取装置用ログ生成部、44…制御装置用ログ生成部、51,52,53,54…電力情報テーブル、61,62,63,64…ログ、NW…通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の機能を実現する構成を備え、電力を消費して当該第1の機能を実現する動作状態を含む複数の動作状態を有し、当該複数の動作状態の遷移によって消費電力が増減する第1の機能部と、
第2の機能を実現する構成を備え、電力を消費して当該第2の機能を実現する動作状態を含む複数の動作状態を有し、当該複数の動作状態の遷移によって消費電力が増減する第2の機能部と、
前記第1の機能部について前記複数の動作状態のいずれかに遷移した履歴を示す履歴情報を生成する第1の生成部と、
前記第2の機能部について前記複数の動作状態のいずれかに遷移した履歴を示す履歴情報を生成する第2の生成部と、
前記第1の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第1の生成部により生成された前記履歴情報とを取得して当該第1の機能部の消費電力量を演算し、前記第2の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第2の生成部により生成された前記履歴情報とを取得して当該第2の機能部の消費電力量を演算する演算部と、
を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の機能部と前記第2の機能部とが互いに連動して動作することになる指示である第1の動作指示および、当該第1の機能部が単独で動作することになる指示である第2の動作指示を取得する取得部を更に含み、
前記演算部は、前記第1の機能部が前記第1の動作指示および前記第2の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算し、前記第2の機能部が当該第1の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の機能部および前記第2の機能部の前記複数の動作状態のいずれかに遷移する時期に関する設定の変更を受け付ける受付部を更に含み、
前記演算部は、前記受付部で受け付けた前記設定の条件下での消費電力量を、前記履歴情報を用いて予測値として演算することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記設定の条件下での前記消費電力量を、当該設定の前の条件下での当該消費電力量と共に出力する出力部を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
消費電力量が互いに異なる複数の動作状態を有する第1の機能部について当該複数の動作状態のいずれに遷移したかの履歴を示す履歴情報を生成する第1の生成手段と、
消費電力量が互いに異なる複数の動作状態を有する第2の機能部について当該複数の動作状態のいずれに遷移したかの履歴を示す履歴情報を生成する第2の生成手段と、
前記第1の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第1の生成手段により生成された前記履歴情報とを取得して当該第1の機能部の消費電力量を演算し、前記第2の機能部の前記複数の動作状態での消費電力の情報と前記第2の生成手段により生成された前記履歴情報とを取得して当該第2の機能部の消費電力量を演算する演算手段と、
を含む電力管理装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記第1の機能部および前記第2の機能部が互いに連動して動作することになる指示である第1の動作指示と当該第1の機能部が単独で動作することになる指示である第2の動作指示とによって当該第1の機能部および当該第2の機能部が動作したときに、当該第1の機能部が当該第1の動作指示および当該第2の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算すると共に、当該第2の機能部が当該第1の動作指示により動作して消費した消費電力量を演算することを特徴とする請求項5に記載の電力管理装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記第1の機能部および前記第2の機能部の前記複数の動作状態のいずれかに遷移する時期に関する設定を変更したときに、当該設定の条件下での消費電力量を、前記履歴情報を用いて予測値として演算することを特徴とする請求項5または6に記載の電力管理装置。
【請求項8】
前記設定の条件下での前記消費電力量を、当該設定の前の条件下での当該消費電力量と共に出力する出力手段を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の電力管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−41529(P2010−41529A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203703(P2008−203703)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】