説明

画像処理装置と画像処理システム

【課題】 印刷データの印刷出力を高速化しながらも、他の処理が重複することによって印刷速度の性能が劣化することの無いようにする。
【解決手段】 空き時間検知部50は、自装置が使用されていない空き時間を検知し、展開されていない印刷データが有ると判断したら、プリント制御部51へ印刷データの印刷データIDと共に展開の依頼を送る。プリント制御部51は、印刷データIDと印刷・展開データ参照テーブル60に基づいてHDD14から印刷データ61を取得してPDL52へ送り、PDL52は印刷データを画像データに展開して印刷データIDと共に展開データ保存制御部53へ送り、展開データ保存制御部53は、HDD14に展開データ62を保存し、印刷・展開データ参照テーブル60に展開データIDと格納位置情報を登録して、この処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ,プリンタ,複写機,複合機を含む画像処理装置と画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ装置,プリンタ,複写機,複合機を含む画像処理装置(「画像形成装置」ともいう)において、ページ記述言語(「プリンタ言語」とも呼び、「PDL」と略称する)で書かれた印刷データは、そのデータサイズに比例して、印刷可能な状態に展開することに時間がかかる。
一方で、画像形成装置では、蓄積印刷,機密印刷などのように印刷データを一旦溜めてから印刷を開始する場合、印刷データを蓄積してから、実際に印刷物(印刷用紙)を出力するまでに時間差(タイムラグ)がある。
そこで、蓄積印刷を行う場合において、印刷データを蓄積する際に、その印刷データの展開も行うようにして、実際に印刷物を出力する際に改めて展開処理を行わなくても良いようにして、印刷開始から印刷物の出力までの時間を早めるようにする技術が知られている。
【0003】
従来、ホストコンピュータから文書を印刷する際には、暗証番号付きでプリントコマンドをプリンタに送り、プリンタでは、受け取ったプリントコマンドをイメージに展開してからデータ圧縮して蓄積する。そして、ユーザがプリンタの設置場所に実際に来て、暗証番号をプリンタに入力すると、その時点で始めてプリンタは蓄積した圧縮データを用いて印刷処理を開始する画像形成装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、印刷データが蓄積されると直ちに展開処理を実行してしまうので、もし、容量の大きな印刷データを展開中に、すぐに使用したい(蓄積もしくは通常印刷する)ユーザから印刷要求があった場合、上記の展開処理が行われているために、処理が終わるまで待たされたり、並行して処理が行われたりすることになり、即時に印刷結果が欲しいユーザにとっては、印刷を要求してから印刷物が出力されるまでの待ち時間が長くなってしまうという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、印刷データの印刷出力を高速化しながらも、他の処理が重複することによって印刷速度の性能が劣化することの無いようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記の目的を達成するため、印刷データを蓄積する印刷データ蓄積手段と、印刷データから展開された画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、上記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データを画像データに展開する展開手段と、上記展開手段によって展開された画像データを画像データ蓄積手段に蓄積し、上記画像データ蓄積手段に蓄積した画像データと、その画像データの展開元となった上記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データとを紐付ける蓄積制御手段と、自装置が使用されていない時間を検知する検知手段と、上記検知手段によって検知された時間に、上記展開手段と上記蓄積制御手段とを動作させる制御手段と、上記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データと紐付けられた上記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを印刷する印刷手段を備えた画像処理装置を提供する。
【0006】
また、上記のような画像処理装置において、自装置の周囲の明るさを検出する検出手段を設け、上記検知手段は、上記検出手段によって検出された明るさが予め設定した明るさ以下になってからの経過時間に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段を有するようにするとよい。
さらに、上記のような画像処理装置において、自装置の利用状況の情報を保存する手段を設け、上記検知手段は、上記保存された自装置の利用状況の情報に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段を有するようにするとよい。
【0007】
また、印刷データを蓄積する印刷データ蓄積手段を有するサーバ装置と、印刷データから展開された画像データを蓄積する画像データ蓄積手段を有する画像処理装置とからなる画像処理システムであって、上記画像処理装置は、上記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データを画像データに展開する展開手段と、上記展開手段によって展開された画像データを画像データ蓄積手段に蓄積し、上記画像データ蓄積手段に蓄積した画像データと、その画像データの展開元となった上記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データとを紐付け、その紐付けの情報を上記サーバ装置に保存する蓄積制御手段と、自装置が使用されていない時間を検知する検知手段と、上記検知手段によって検知された時間に、上記展開手段と上記蓄積制御手段とを動作させる制御手段と、上記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データと紐付けられた上記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを印刷する印刷手段を備えた画像処理システムも提供する。
【発明の効果】
【0008】
この発明による画像処理装置と画像処理システムは、印刷データの印刷出力を高速化しながらも、他の処理が重複することによって印刷速度の性能が劣化することの無いようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図2に示す複合機がPCから受信して蓄積した印刷データを自装置の空き時間に画像データに展開して蓄積及び印刷する機能の説明図である。
【図2】実施例1,2に共通の画像処理装置を有する画像処理システムの構成を示す図である。
【図3】図2に示す複合機のソフトウェアとハードウェアの各構成を示す図である。
【図4】図1に示すプリンタアプリにおける空き時間の印刷データ展開処理を示すフローチャート図である。
【0010】
【図5】図1に示すプリンタアプリにおける省エネモードに移行するときの処理を示すフローチャート図である。
【図6】図1に示すプリンタアプリにおける夜間モードに移行するときの処理を示すフローチャート図である。
【図7】図2に示す複合機がPCから受信して蓄積した印刷データを自装置の空き時間に展開して蓄積する機能の他の例の説明図である。
【0011】
【図8】図7に示すプリンタアプリにおける空き時間の印刷データ展開処理を示すフローチャート図である。
【図9】図2に示す複合機がサーバに蓄積された印刷データを自装置の空き時間に展開して蓄積する機能の説明図である。
【図10】図9に示すプリンタアプリにおける空き時間の印刷データ展開処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、実施例1,2に共通の画像処理装置を有する画像処理システムの構成を示す図である。
この画像処理システムは、複合機1,ユーザ端末であるパーソナルコンピュータ(PC)2,プリンタ3,サーバ4がローカルエリアネットワーク(LAN)8によってデータ通信可能に接続されている。
また、複合機1には、PSTN(Public Switched Telephone Network)/ISDN(Integrated Services Digital Network)網6を介してPC2がデータ通信可能に接続されている。
さらに、LAN8には、ルータ5を介してインターネット7が接続されており、複合機1,LAN8上のPC2,サーバ4,プリンタ3は、それぞれインターネット7上のPC2ともデータ通信可能に接続されている。
【0013】
複合機1は、CPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータによって実現される制御部を備え、プリント機能(印刷機能),コピー機能(複写機能),スキャナ機能(画像読取機能),通信機能を含む複数の機能を備えた画像処理装置であり、PC2から、又はPC2からサーバ4を介して印刷要求を受け取ると印刷処理を実行する。また、印刷に係る空き時間検知処理と印刷データ展開処理を実行する。
PC2は、同じくCPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータによって実現される制御部を備え、印刷データの作成を含む各種のデータ処理と、印刷データの印刷要求を複合機1,プリンタ3,サーバ4へ送信する処理も行う。
プリンタ3は、同じくCPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータによって実現される制御部を備え、PC2から、又はPC2からサーバ4を介して印刷要求を受け取ると印刷処理を実行する。また、印刷に係る空き時間検知処理と印刷データ展開処理を実行する。
【0014】
サーバ4は、同じくCPU,ROM及びRAMからなるマイクロコンピュータによって実現される制御部を備え、PC2からの印刷要求と印刷データを受け取ると、複合機1又はプリンタ3に印刷を実行させる。
上記複合機1,PC2,プリンタ3,サーバ4同士のデータ通信には、例えば、TCP/IPプロトコルが用いられる。
なお、図3には、LAN8上に複合機1,PC2,サーバ4をそれぞれ1個ずつ示し、プリンタ2は2個示しているが、LAN8には、それぞれ複数個接続されており、その図示を省略している。
【0015】
また、PSTN/ISDN網6上には、PC2が複数個接続されており、その図示を省略している。このPSTN/ISDN網6上に、複合機1,プリンタ3,サーバ4が設けられていても良い。
さらに、インターネット7上にも、PC2が複数個接続されており、その図示を省略している。このインターネット7上には、複合機1,プリンタ3,サーバ4が設けられているが、その図示を省略している。
この実施例の複合機1,プリンタ3は、印刷要求のあった印刷データを蓄積し、その蓄積した印刷データの印刷に先立って、印刷データを画像データに展開する処理に関して、装置が使用されていない空き時間(例えば、夜間や省エネルギーモード中、ユーザログに基づいて求めたアイドル時間)を検知して、その空き時間に印刷データの展開を自動的に行うことが特徴である。
【0016】
図3は図2に示した複合機1のソフトウェアとハードウェアの各構成を示す図である。
複合機1は、白黒ラインプリンタ(B&WLP)10と、カラーラインプリンタ(Color LP)11と、スキャナ12と、ファクシミリ13と、ハードディスク装置(HDD)14と、メモリ15と、ネットワークインタフェース(I/F)16を含むハードウェアリソース(ハードウェア資源)を有するとともに、プラットホーム(プログラム)21とアプリケーション(プログラム)22とから構成されるソフトウェア群20とを備えている。
プラットホーム21は、アプリケーション22の各アプリ40〜45からの処理要求を解釈して上記ハードウェアリソースの獲得要求を発生させるコントロールサービス(CS)23と、一又は複数のハードウェアリソースの管理を行い、コントロールサービス23からの獲得要求を調停するシステムリソースマネージャ(SRM)24と、汎用のオペレーティングシステム(OS)25とを備えている。
【0017】
コントロールサービス23は、システムコントロールサービス(SCS)30と、エンジンコントロールサービス(ECS)31と、メモリコントロールサービス(MCS)32と、オペレーションパネルコントロールサービス(OCS)33と、ファックスコントロールサービス(FCS)34と、ネットワークコントロールサービス(NCS)35と、イメージメモリハンドラ(IMH)36の複数のサービスモジュールから構成されている。
なお、このプラットホーム21は、予め定義された関数によりアプリケーション22の各アプリ40〜45から処理要求を受信可能とするアプリケーションプログラムインタフェース(API)26を有する。
OS25は、例えば、UNIX(登録商標)を含む汎用オペレーティングシステムであり、プラットホーム21並びにアプリケーション22の各アプリ40〜45をそれぞれプロセスとして並列実行する。
【0018】
SRM24は、SCS30と共にシステムの制御及びハードウェアリソースの管理を行い、予め定義されている関数によりハードウェアリソースに対する処理要求を送信可能とするエンジンI/F17を利用して、スキャナ12,B&WLP10とカラーLP11のプリンタを含むエンジン部と、メモリ15と、HDD14と、セントロI/F,ネットワークI/F16,IEEE1394 I/F,RS232C I/Fを含むホストI/Oのハードウェアリソースを利用する上位層からの要求に従って処理要求の調停を行い、実行制御する。
SCS30は、アプリ管理、操作部制御、システム画面表示、LED表示、リソース管理、割り込みアプリ制御を含む各種の制御を行う。
ECS31は、ハードウェアリソースのエンジンの制御を行う。
MCS32は、画像メモリの取得及び解放、HDD14の利用、画像データの圧縮及び伸張を含む処理を行う。
OCS33は、オペレータ(ユーザ)と本体制御間の情報伝達手段となるオペレーションパネル(操作表示部)の制御を行う。
【0019】
FCS34は、ファックスアプリ42からPSTN/ISDN網6を利用したファクシミリ送受信、バックアップメモリ(「BKM」、例えば、バックアップSRAM)で管理されている各種ファクシミリデータの登録と引用、ファクシミリ読み取り、ファクシミリ受信印刷、融合送受信を行うためのAPIを提供する。
NCS35は、ネットワークI/F16を必要とするアプリに対して共通に利用できるサービスを提供するためのプロセスであり、ネットワーク側から各プロトコルによって受信したデータを各アプリに振り分けたり、アプリからデータをネットワーク側に送信する際の仲介をしたりする処理を行う。
具体的には、ftpd,httpd,lpd,snmpd,telnetd,smtpdを含むサーバデーモンや、同プロトコルのクライアント機能などを有している。
【0020】
アプリケーション22は、ページ記述言語をサポートする(PDLなどで言語を解釈する)プリンタ用のアプリケーション(プログラム)であるプリンタアプリ40と、コピー用アプリケーション(プログラム)であるコピーアプリ41と、ファクシミリ用アプリケーション(プログラム)であるファックスアプリ42と、スキャナ用アプリケーション(プログラム)であるスキャナアプリ43と、フィルタアプリ44と、フィルタ設定アプリ45を有している。
上記プリンタアプリ40では、PC2からドライバなどによって送信された印刷データを、プリンタ言語の設定を行うPJLやページ記述言語(PDL)の解釈を行うPCL、PSなどに渡して印刷を実行する。
また、上記各アプリ40〜45は、いずれも複合機1の起動時に初期化部(図示省略)によりプロセスとして生成されて動作する。
【0021】
アプリケーション22の各アプリ40〜45のプロセスと、コントロールサービス23の30〜36の各部のプロセスは、関数呼び出しとその戻り値送信及びメッセージの送受信によってプロセス間通信を行いながら、コピー(複写),プリント(印刷),スキャン(画像読み取り),ファクシミリ(ファクシミリ通信)を含む画像形成処理にかかるユーザサービスを実現している。
このように、複合機1には、複数のアプリ40〜45からなるアプリケーション22、及び複数の各部30〜36からなるコントロールサービス23が存在し、いずれもプロセスとして動作している。これらの各プロセス内部には、一又は複数のスレッドが生成されて、スレッド単位の並列実行が行われる。
そして、コントロールサービス23がアプリケーション22に対して共通サービスを提供しており、このため、これらの多数のプロセスが並列動作、及びスレッドの並列動作を行って互いにプロセス間通信を行って協調動作をしながら、上記コピー,プリント,スキャン,ファクシミリを含む画像形成処理にかかるユーザサービスを実現している。
【0022】
次に、上記画像処理システムにおける実施例1の機能と処理を説明する。
〔実施例1〕
図2に示した画像処理システムにおいて、複合機1又はプリンタ3は、PC2から送信された印刷データを内部のHDD14に一旦蓄積し、その印刷データを画像データに展開して印刷することができる。上記印刷データは、ページ記述言語(PDL)で記載されたデータであり、複合機1及びプリンタ3で印刷する際には画像データに展開する必要がある。そして、複合機1又はプリンタ3における蓄積した印刷データを展開する処理については、自装置の空き時間に実施する。
以下の説明では、複合機1における機能と処理を説明するが、プリンタ3においても同様に行うことができるので、その説明を省略する。
【0023】
図1は、図2に示した複合機1がPC2から受信して蓄積した印刷データを自装置の空き時間に展開して蓄積及び印刷する機能の説明図である。
図1に示すように、複合機1のプリンタアプリ40は、空き時間検知部50とプリント制御部51とPDL52と展開データ保存制御部53の各機能部を備えている。
また、PC2から受信した印刷データを、複合機1の内部にあるHDD14に蓄積し、その蓄積の際、印刷データには印刷データIDを割り当て、HDD14内に保存した印刷・展開データ参照テーブル60に、印刷データIDに対応させて印刷データのHDD14の記憶領域における格納位置情報(例えば、アドレス)を登録する。
したがって、印刷データの展開の際には、印刷・展開データ参照テーブル60の印刷データIDを参照することによって、その印刷データIDに対応する印刷データの実体にアクセスすることができる。
【0024】
また、HDD14に蓄積された印刷データを画像データに展開すると、その画像データ(以下「展開データ」という)もHDD14に蓄積し、その蓄積の際、展開データには展開データIDを割り当て、HDD14内に保存した印刷・展開データ参照テーブル60の印刷データIDと格納位置情報に対応させて、展開データIDと展開データのHDD14の記憶領域における格納位置情報(例えば、アドレス)を登録する。
したがって、印刷時には、印刷・展開データ参照テーブル60の展開データIDを参照することによって、その展開データIDに対応する展開データの実体にアクセスすることができる。
すなわち、HDD14が、印刷データを蓄積する印刷データ蓄積手段と印刷データから展開された画像データを蓄積する画像データ蓄積手段の各機能を果たす。
【0025】
空き時間検知部50は、CS23の30〜36の各サービスモジュールを介して操作表示部(ユーザインタフェース)と、B&WLP10,カラーLP11,スキャナ12,ファクシミリ13,HDD14,メモリ15のエンジンと、サーバやWebブラウザからのネットワークI/F16から通知された情報に基づいて自装置が使用されていない時間(以下「空き時間」と呼ぶ)を検知する。
すなわち、この空き時間検知部50は、自装置が使用されていない時間を検知する検知手段の機能を果たす。
また、空き時間検知部50は、空き時間を検知すると、HDD14の印刷・展開データ参照テーブル60を参照し、画像データに展開されていない印刷データの有無を判断する。その有無の判断処理については、印刷・展開データ参照テーブル60に登録されている印刷データIDについて、展開データIDが登録されていないものを画像データに展開されていない印刷データと判断する。
【0026】
そして、空き時間検知部50は、画像データに展開されていない印刷データを見つけると、その印刷データIDと共に展開依頼をプリント制御部51へ送る。
プリント制御部51は、空き時間検知部50から印刷データIDと共に展開依頼を受け取ると、HDD14の印刷・展開データ参照テーブル60を参照し、その印刷・展開データ参照テーブル60から上記受け取った印刷データIDに対応する格納位置情報を読み出し、その格納位置情報に基づいてHDD14から上記受け取った印刷データIDに対応する印刷データ61を読み出して取得し、上記受け取った印刷データIDと共に印刷データをPDL52へ送る。
PDL52は、プリント制御部51から印刷データIDと共に印刷データを受け取ると、印刷データを画像データに展開し、その展開データを印刷データIDと共に展開データ保存制御部53へ送る。
【0027】
展開データ保存制御部53は、PDL52から展開データと印刷データIDとを受け取ると、その展開データに展開データIDを割り当て、HDD14に展開データ62を蓄積し、印刷・展開データ参照テーブル60の印刷データIDに対応させて展開データIDとHDD14における展開データ62の格納位置情報を登録する。この印刷・展開データ参照テーブル60に、印刷データIDを付与した印刷データの格納位置情報に対して、展開データIDを付与した印刷データの展開データの格納位置情報を登録することを「印刷データと展開データの紐付け」という。この紐付けによって印刷データに対応する展開データを読み出して直ちにB&WLP10又はカラーLP11へ送って印刷処理に使用することができる。
すなわち、上記プリント制御部51とPDL52は、印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データを画像データに展開する展開手段の機能を果たす。
【0028】
また、上記展開データ保存制御部53は、展開手段によって展開された画像データを画像データ蓄積手段に蓄積し、画像データ蓄積手段に蓄積した画像データと、その画像データの展開元となった印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データとを紐付ける蓄積制御手段の機能を果たす。
さらに、プリンタアプリ40が、検知手段によって検知された時間に、展開手段と蓄積制御手段とを動作させる制御手段の機能を果たす。
そして、プリント制御部51は、印刷実行時、HDD14の印刷・展開データ参照テーブル60から印刷対象の印刷データIDに対して登録されている展開データIDに対応する格納位置情報に基づいてHDD14に蓄積された展開データ62を読み出し、ECS31を介してB&WLP10又はカラーLP11へ送って印刷を実行させる。
【0029】
すなわち、このプリント制御部51は、印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データと紐付けられた画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを印刷する印刷手段の機能を果たす。
このようにして、印刷実行時には、既に画像データにされた展開データを用いて印刷を実行することができる。
【0030】
次に、複合機1がPC2から受信して蓄積した印刷データを自装置の空き時間に画像データに展開して印刷する処理を説明する。
図4は、図1に示したプリンタアプリ40における空き時間の印刷データ展開処理を示すフローチャート図である。
ステップ(図中「S」で示す)1で、空き時間検知部50は、自装置の情報に基づいて自装置が使用されていない空き時間を検知すると、ステップ2で、空き時間検知部50は、HDD14の印刷・展開データ参照テーブル60に基づいて展開されていない印刷データが有るか否かを判断し、無ければ(「N」の場合)、この処理を終了するが、有れば(「Y」の場合)、ステップ3へ進む。
ステップ3で、空き時間検知部50は、プリント制御部51へ、展開対象の印刷データの印刷データIDと共に展開の依頼を送り、ステップ4へ進む。
【0031】
ステップ4で、プリント制御部51は、空き時間検知部50から展開の依頼と共に印刷データIDを受け取ると、その印刷データIDと印刷・展開データ参照テーブル60に基づいてHDD14から印刷データ61を読み出して取得し、PDL52へ印刷データIDと印刷データを送り、ステップ5へ進む。
ステップ5で、PDL52は、プリント制御部51から印刷データIDと印刷データを受け取ると、印刷データを画像データに展開し、その展開データと印刷データIDを展開データ保存制御部53へ送り、ステップ6へ進む。
【0032】
ステップ6で、展開データ保存制御部53は、PDL52から展開データと印刷データIDを受け取ると、その展開データに展開データIDを割り当て、HDD14に展開データ62を保存し、印刷・展開データ参照テーブル60に展開データIDと格納位置情報を登録して、この処理を終了する。
このようにして、複合機1は、自装置が使用されていない時間に印刷データを展開する処理を行うので、自装置が頻繁に使用されているときや使用予定があるときに、それらの使用の際の処理遅延をもたらすことを極力回避することができ、印刷データの印刷出力を高速化しながらも、他の処理が重複することによって印刷速度の性能が劣化することの無いようにすることができる。
【0033】
次に、上記空き時間を検知する処理について詳しく説明する。
複合機1は、一定時間使用されない場合、自動的に省エネルギーモード(以下「省エネモード」と略称する)へ移行し、制御部又は10〜16の各部を含むエンジンなどの電力消費を抑える機能を備えている。
この省エネモードに移行した後は、自装置に対して新たな印刷要求などの使用要求があっても自装置を復帰させるまで待たせることになるので、省エネモード時に実施する印刷データの展開処理は、新たに要求された処理を妨げたり遅延させたりする要因にはならない。
そこで、省エネモードに移行する時間を上記空き時間として検知して、省エネモードのときに印刷データの展開処理を実施するようにする。
【0034】
図5は、図1に示したプリンタアプリ40における省エネモードに移行するときの処理を示すフローチャート図である。
まず、空き時間検知部50には、OCS33を介して操作表示部から、又はNCS35を介してWebブラウザから複合機1に対する省エネモード移行時間(省エネモードへ移行する設定時間)を入力するように構成する。
図5に示すように、ステップ11で、空き時間検知部50は、省エネモード移行時間を確認すると、ステップ12へ進む。
ステップ12で、空き時間検知部50は、OS25が使用するタイマに省エネモード移行時間をセットし、移行時間のカウントを開始して、ステップ13へ進む。
ステップ13で、空き時間検知部50は、CS23からジョブ実行要求が有るか否かを判断し、有れば(「Y」の場合)ステップ12へ戻って上述の処理を繰り返し、無ければ(「N」の場合)ステップ14へ進む。
【0035】
ステップ14で、空き時間検知部50は、タイマが移行時間のカウントを終了したか否かを判断し、終了しなければ(「N」の場合)ステップ13へ戻り、終了したら(「Y」の場合)ステップ15へ進む。
このステップ14の判断で、タイマが移行時間のカウントを終了したと判断したときが、自装置の空き時間を検知したことに相当する。
ステップ15で、空き時間検知部50は、印刷データの展開処理に関わらないエンジン(B&WLP10,カラーLP11,スキャナ12,ファクシミリ13,及びネットワークI/F16)を省エネモードに移行させてエンジンの消費電力(待機電力など)を抑え、ステップ16へ進む。
ステップ16では、エンジンの省エネモード移行が完了すると、図4を用いて説明した印刷データ展開処理を実行し、ステップ17へ進む。
【0036】
ステップ17で、空き時間検知部50は、印刷データの展開が完了すると、複合機1の制御部を省エネモードに移行し、複合機1を通常の省エネモードに移行して、この処理を終了する。
このようにして、複合機1が省エネモードに移行する際、印刷データの展開に関わらない部分を省エネモードに移行した後、未展開の印刷データの展開処理を実行し、その展開処理を終えると、制御部も省エネモードに移行させて、複合機1を通常の省エネモードに移行するので、他の処理要求の妨げにならない省エネモード時に印刷データの展開を実施することができる。
なお、プリンタ3にも省エネモードの機能が備わっているので、上述した複合機1と同様にしてプリンタ3でも省エネモードのときに印刷データの展開を行わせることができる。
【0037】
次に、上記空き時間の他の例について説明する。
複合機1には、夜間モードの機能も備わっている。
夜間モードとは、複合機1が設置された室内(または自装置の周囲のみ)の明るさを監視し、予め設定した明るさ以下になってから所定時間を経過すると自動的に主電源をオフにする機能である。この夜間モードも、上述した省エネモードと同様に、複合機1の電力消費を低減するために使用される。この夜間モードは、電源を切るので待機電力も消費せず、省エネモードよりも省エネ効果が高い。
そこで、夜間モードに移行する時間を上記空き時間として検知して、夜間モードのときに印刷データの展開処理を実施するようにしても、新たに要求された処理を妨げたり遅延させたりする直接の要因にはならない。
【0038】
この場合、図示を省略するが、複合機1に周囲の明るさを検知するセンサを設け、そのセンサで検出した明るさの情報を空き時間検知部50へ入力するように構成する。
そして、空き時間検知部50は、センサからの情報に基づいて自装置の周囲の明るさが予め設定した明るさ以下になってから所定時間経過したときを空き時間として検知する。
すなわち、空き時間検知部50が、自装置の周囲の明るさを検出する検出手段と、検出手段によって検出された明るさが予め設定した明るさ以下になってからの経過時間に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段の機能を果たす。
【0039】
図6は、図1に示したプリンタアプリ40における夜間モードに移行するときの処理を示すフローチャート図である。
まず、空き時間検知部50には、OCS33を介して操作表示部から、又はNCS35を介してWebブラウザから複合機1に対する夜間モード移行時間(複合機1の周囲の明るさが所定の明るさ以下になってから夜間モードへ移行するまでの設定時間)を入力するように構成する。
図6に示すように、ステップ21で、空き時間検知部50は、夜間モード移行時間を確認すると、ステップ22へ進む。
ステップ22で、空き時間検知部50は、センサから受け取った明るさの情報が予め設定された明るさ以下になったことを検知し、消灯を検知すると、ステップ23へ進む。
ステップ22の判断では、複合機1の設置された室内が全消灯でも良いし、複合機1の周囲の照明の消灯でも良い。
【0040】
ステップ23で、OS25が使用するタイマに夜間モード移行時間をセットし、移行時間のカウントを開始して、ステップ24へ進む。
ステップ24で、空き時間検知部50は、センサから受け取った明るさの情報が予め設定された明るさを超えたことを検知し、点灯を検知すると(「Y」の場合)、ステップ22へ戻り、上述の処理を繰り返し、点灯を検知しなければ(「N」の場合)、ステップ25へ進む。
ステップ25で、空き時間検知部50は、タイマが移行時間のカウントを終了したか否かを判断し、終了しなければ(「N」の場合)ステップ24へ戻り、終了したら(「Y」の場合)ステップ26へ進む。
このステップ25の判断で、タイマが移行時間のカウントを終了したと判断したときが、自装置の空き時間を検知したことに相当する。
【0041】
ステップ26で、空き時間検知部50は、印刷データの展開処理に関わらないエンジン(B&WLP10,カラーLP11,スキャナ12,ファクシミリ13,及びネットワークI/F16)を省エネモードに移行させてエンジンの消費電力(待機電力など)を抑え、ステップ27へ進む。
ステップ27では、エンジンの省エネモード移行が完了すると、図4を用いて説明した印刷データ展開処理を実行し、ステップ28へ進む。
ステップ28で、空き時間検知部50は、印刷データの展開が完了すると、複合機1の電源をオフにし、この処理を終了する。
【0042】
このようにして、複合機1が夜間モードに移行する際、印刷データの展開に関わらない部分を省エネモードに移行した後、未展開の印刷データの展開処理を実行し、その展開処理を終えると、複合機1の電源を切るので、他の処理要求の妨げにならない夜間モード移行時に印刷データの展開を実施することができる。
なお、プリンタ3にも夜間モードの機能が備わっているので、上述した複合機1と同様にしてプリンタ3でも夜間モードのときに印刷データの展開を行わせることができる。
【0043】
次に、上記空き時間のまた他の例について説明する。
複合機1には、印刷要求毎にログデータを保存する機能を備えている。このログデータに基づいて複合機1の使用されない予定時間を知ることができ、その予定時間を上記空き時間として検知するようにしても良い。
図7は、図2に示した複合機1がPC2から受信して蓄積した印刷データを自装置の空き時間に展開して蓄積する機能の他の例の説明図であり、図1と共通する部分には同一符号を付している。
図7に示すように、HDD14には、新たにユーザログ63と空き時間テーブル64とが保存される。
そして、プリント制御部51は、印刷要求毎に、印刷要求をしたユーザ名,印刷要求受信日時,印刷終了日時からなるユーザログ63をHDD14に記録して保存する。
【0044】
また、空き時間検知部50は、複合機1の起動時又は省エネモードからの復帰時、予め設定された時刻になると、HDD14に保存されたユーザログ63を参照し、そのユーザログ63の内容から、複合機1の使用されていない曜日毎の時間帯の空き時間情報を検出し、その空き時間情報を空き時間テーブル64に保存する。この空き時間テーブル64の空き時間情報は、起動時又は省エネモードからの復帰時に予め設定された時刻毎に更新される。
【0045】
さらに、空き時間検知部50は、空き時間テーブル64の空き時間情報を更新すると、OS25の使用するタイマに、空き時間テーブル64の空き時間情報に基づいて次の空き時間になるまでの時間をセットしてカウントを開始させ、空き時間になると、複合機1が他の処理で使用中であるか否かを判断し、使用中でなければ、印刷・展開データ参照テーブル60を参照し、画像データに展開されていない印刷データの有無を判断する。その有無の判断処理については、印刷・展開データ参照テーブル60に登録されている印刷データIDについて、展開データIDが登録されていないものを画像データに展開されていない印刷データと判断する。
そして、空き時間検知部50は、画像データに展開されていない印刷データを見つけると、その印刷データIDと共に展開依頼をプリント制御部51へ送る。
【0046】
プリント制御部51は、空き時間検知部50から印刷データIDと共に展開依頼を受け取ると、HDD14の印刷・展開データ参照テーブル60を参照し、その印刷・展開データ参照テーブル60から上記受け取った印刷データIDに対応する格納位置情報を読み出し、その格納位置情報に基づいてHDD14から上記受け取った印刷データIDに対応する印刷データ61を読み出して取得し、上記受け取った印刷データIDと共に印刷データをPDL52へ送る。
PDL52は、プリント制御部51から印刷データIDと共に印刷データを受け取ると、印刷データを画像データに展開し、その展開データを印刷データIDと共に展開データ保存制御部53へ送る。
【0047】
展開データ保存制御部53は、PDL52から展開データと印刷データIDとを受け取ると、その展開データに展開データIDを割り当て、HDD14に展開データ62を蓄積し、印刷・展開データ参照テーブル60の印刷データIDに対応させて展開データIDとHDD14における展開データ62の格納位置情報を登録する。この印刷・展開データ参照テーブル60に、印刷データIDを付与した印刷データの格納位置情報に対して、展開データIDを付与した印刷データの展開データの格納位置情報を登録することを「印刷データと展開データの紐付け」という。この紐付けによって印刷データに対応する展開データを読み出して直ちにB&WLP10又はカラーLP11へ送って印刷処理に使用することができる。
【0048】
すなわち、この場合、上記プリント制御部51とHDD14が、自装置の利用状況の情報を保存する手段の機能を果たし、上記空き時間検知部50が、HDD14保存された自装置の利用状況の情報に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段の機能を果たす。
上述の判断で、もし、空き時間になったときに複合機1が他の処理で使用中であれば、次の空き時間をタイマにセットして、上述と同様の処理を行う。
このようにして、印刷実行時には、既に画像データにされた展開データを用いて印刷を実行することができる。
【0049】
図8は、図7に示したプリンタアプリ40における空き時間の印刷データ展開処理を示すフローチャート図である。
図8に示すように、ステップ31で、空き時間検知部50は、ユーザログ63に基づいて空き時間テーブル64の空き時間情報を更新し、ステップ32へ進む。
ステップ32で、空き時間検知部50は、OS25が使用するタイマに次の空き時間までの時間をセットし、その時間のカウントを開始して、ステップ33へ進む。
ステップ33で、空き時間検知部50は、タイマが時間のカウントを終了したら、ステップ34へ進む。
ステップ34で、空き時間検知部50は、複合機1が他の処理で使用中か否かを判断し、使用中ならば(「Y」の場合)ステップ32へ戻って上述の処理を繰り返し、使用中でなければ(「N」の場合)ステップ35へ進む。
【0050】
このステップ33と34の判断で、タイマが時間のカウントを終了し、なおかつ複合機1が使用中でないと判断したときが、自装置の空き時間を検知したことに相当する。
ステップ35では、図4を用いて説明した印刷データ展開処理を実行し、この処理を終了する。
このようにして、複合機1が過去の使用状況を示すユーザログから使用されないことが予想される時間帯に、未展開の印刷データの展開処理を実行することができる。
なお、プリンタ3にもユーザログを保存する機能が備わっているので、上述した複合機1と同様にしてプリンタ3でもユーザログから求めた空き時間のときに印刷データの展開を行わせることができる。
【0051】
〔実施例2〕
実施例1では、画像処理システムの複合機1に印刷データと展開データとを蓄積する場合について説明したが、実施例2では、複合機1の外部に保存された印刷データを、複合機1の空き時間に取得して展開し、その展開データを複合機1に保存する場合の機能と処理を説明する。
実施例2の画像処理システムでは、LAN8上の複合機1,プリンタ3のどのマシンからでも印刷ができるロケーションフリー印刷をする。
この場合、サーバ4は、PC2から送信された印刷データを蓄積して、LAN8上の複合機1及びプリンタ3は、サーバ4にアクセスし、そのサーバ4に蓄積された印刷データを取得して印刷する。
【0052】
図9は、図2に示す複合機1がサーバ4に蓄積された印刷データを自装置の空き時間に展開して蓄積する機能の説明図である。
図9に示すHDD70は、サーバ4に備わる記憶装置である。HDD70は、PC2から受信した印刷データ72を蓄積すると共に、実施例1でも説明したものと同様の印刷・展開データ参照テーブル71と、ユーザログ73と、空き時間テーブル74を保存している。
この印刷・展開データ参照テーブル71には、PC2から受信した印刷データに付与した印刷データIDと、その印刷データIDの印刷データ72のHDD70における格納位置情報と、複合機1において展開された後に付与される展開データIDと、その展開データIDに対応する複合機1のHDD14の展開データ62の格納位置情報と、複合機1のネットワーク上の識別情報である機器のIPアドレスとを対応させて記憶する。
【0053】
また、ユーザログ73は、印刷要求毎の、印刷要求をしたユーザ名,印刷要求受信日時,印刷終了日時,印刷を実行した複合機1(又はプリンタ3)の機器のIPアドレスとを対応させて記憶する。このユーザログ73の保存と内容の更新は、複合機1(又はプリンタ3)のプリント制御部51によって行う。
さらに、空き時間テーブル74には、ユーザログ73の内容から求められた、複合機1(又はプリンタ3)の使用されていない曜日毎の時間帯と複合機1(又はプリンタ3)の識別情報である機器のIPアドレスとからなる空き時間情報を記憶する。この空き時間テーブル74の保存と内容の更新は、空き時間検知部50が行う。
サーバ4は、PC2から受信した印刷データを、内部にあるHDD70に蓄積し、その蓄積の際、印刷データには印刷データIDを割り当て、HDD70内に保存した印刷・展開データ参照テーブル71に、印刷データIDに対応させて印刷データのHDD70の記憶領域における格納位置情報(例えば、アドレス)を登録する。
【0054】
したがって、複合機1(又はプリンタ3)は印刷データの展開の際に、印刷・展開データ参照テーブル71の印刷データIDを参照することによって、その印刷データIDに対応する印刷データの実体にアクセスすることができる。
また、複合機1(又はプリンタ3)は、HDD70から読み出した印刷データを画像データに展開すると、その展開データ62をHDD14に蓄積し、その蓄積の際、展開データには展開データIDを割り当て、HDD70内に保存した印刷・展開データ参照テーブル71の印刷データIDと格納位置情報に対応させて、展開データIDと展開データのHDD14の記憶領域における格納位置情報(例えば、アドレス)を登録する。
したがって、印刷時には、印刷・展開データ参照テーブル71の展開データIDを参照することによって、その展開データIDに対応するHDD14内の展開データの実体にアクセスすることができる。
【0055】
すなわち、上記HDD70が、印刷データを蓄積する印刷データ蓄積手段の機能を果たし、上記HDD14が、印刷データから展開された画像データを蓄積する画像データ蓄積手段の機能を果たす。
空き時間検知部50は、印刷要求時と、複合機1の起動時又は省エネモードからの復帰時に予め設定された時刻になると、サーバ4のHDD70に保存されたユーザログ73を参照し、そのユーザログ73の内容から、複合機1の使用されていない曜日毎の時間帯の空き時間情報を検出し、その空き時間情報を、サーバ4のHDD70の空き時間テーブル74に保存する。この空き時間テーブル74の空き時間情報は、印刷実行時、及び起動時又は省エネモードからの復帰時に予め設定された時刻毎に更新される。
【0056】
さらに、空き時間検知部50は、空き時間テーブル74の空き時間情報を更新すると、OS25の使用するタイマに、空き時間テーブル74の空き時間情報に基づいて次の空き時間になるまでの時間をセットしてカウントを開始させ、空き時間になると、複合機1が他の処理で使用中であるか否かを判断し、使用中でなければ、印刷・展開データ参照テーブル71を参照し、画像データに展開されていない印刷データの有無を判断する。その有無の判断処理については、印刷・展開データ参照テーブル71に登録されている印刷データIDについて、展開データIDが登録されていないものを画像データに展開されていない印刷データと判断する。
そして、空き時間検知部50は、画像データに展開されていない印刷データを見つけると、その印刷データIDと共に展開依頼をプリント制御部51へ送る。
【0057】
プリント制御部51は、空き時間検知部50から印刷データIDと共に展開依頼を受け取ると、サーバ4のHDD70の印刷・展開データ参照テーブル71を参照し、その印刷・展開データ参照テーブル71から上記受け取った印刷データIDに対応する格納位置情報を読み出し、その格納位置情報に基づいてHDD70から上記受け取った印刷データIDに対応する印刷データ72を読み出して取得し、上記受け取った印刷データIDと共に印刷データをPDL52へ送る。
PDL52は、プリント制御部51から印刷データIDと共に印刷データを受け取ると、印刷データを画像データに展開し、その展開データを印刷データIDと共に展開データ保存制御部53へ送る。
【0058】
展開データ保存制御部53は、PDL52から展開データと印刷データIDとを受け取ると、その展開データに展開データIDを割り当て、HDD14に展開データ62を蓄積し、サーバ4のHDD70にアクセスし、印刷・展開データ参照テーブル71の印刷データIDに対応させて展開データIDとHDD14における展開データ62の格納位置情報と機器のIPアドレス(複合機1のネットワーク上のIPアドレス)を登録する。この印刷・展開データ参照テーブル71に、印刷データIDを付与した印刷データの格納位置情報に対して、展開データIDを付与した印刷データの展開データの格納位置情報と機器のIPアドレス(複合機1のネットワーク上のIPアドレス)を登録することを「印刷データと展開データの紐付け」という。この紐付けによって印刷データに対応する展開データを読み出して直ちにB&WLP10又はカラーLP11へ送って印刷処理に使用することができる。
【0059】
すなわち、この場合、上記プリント制御部51とHDD70が、自装置の利用状況の情報を保存する手段の機能を果たし、上記空き時間検知部50が、HDD70に保存された自装置の利用状況の情報に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段の機能を果たす。
上述の判断で、もし、空き時間になったときに複合機1が他の処理で使用中であれば、次の空き時間をタイマにセットして、上述と同様の処理を行う。
このようにして、印刷実行時には、既に画像データにされた展開データを用いて印刷を実行することができる。
【0060】
また、空き時間検知部50は、CS23の30〜36の各サービスモジュールを介して操作表示部(ユーザインタフェース)と、B&WLP10,カラーLP11,スキャナ12,ファクシミリ13,HDD14,メモリ15のエンジンと、サーバやWebブラウザからのネットワークI/F16から通知された情報に基づいて自装置が使用されていない空き時間を検知した場合に印刷データの展開処理を実行するようにすることもできる。
この場合、空き時間検知部50は、空き時間を検知すると、サーバ4のHDD70の印刷・展開データ参照テーブル71を参照し、画像データに展開されていない印刷データの有無を判断する。その有無の判断処理については、上述と同様に展開データIDが登録されていないものを画像データに展開されていない印刷データと判断する。
そして、空き時間検知部50は、画像データに展開されていない印刷データを見つけると、その印刷データIDと共に展開依頼をプリント制御部51へ送る。
【0061】
以後の処理は、上述と同様にして行い、印刷データの展開後は、HDD14に展開データ62を蓄積し、その展開データIDと格納位置情報と機器のIPアドレスをサーバ4のHDD70の印刷・展開データ参照テーブル71に登録する。
すなわち、上記プリント制御部51とPDL52は、印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データを画像データに展開する展開手段の機能を果たす。
また、上記展開データ保存制御部53は、展開手段によって展開された画像データを画像データ蓄積手段に蓄積し、画像データ蓄積手段に蓄積した画像データと、その画像データの展開元となった印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データとを紐付ける蓄積制御手段の機能を果たす。
【0062】
さらに、プリンタアプリ40が、検知手段によって検知された時間に、展開手段と蓄積制御手段とを動作させる制御手段の機能を果たす。
そして、プリント制御部51は、印刷実行時、HDD70の印刷・展開データ参照テーブル71から印刷対象の印刷データIDに対して登録されている展開データIDに対応する格納位置情報に基づいて、HDD14に蓄積された展開データ62を読み出し、ECS31を介してB&WLP10又はカラーLP11へ送って印刷を実行させる。
すなわち、このプリント制御部51は、印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データと紐付けられた画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを印刷する印刷手段の機能を果たす。
このようにしても、印刷実行時には、既に画像データにされた展開データを用いて印刷を実行することができる。
【0063】
次に、図2に示す複合機1がサーバ4に蓄積された印刷データを自装置の空き時間に展開して蓄積する処理を説明する。
図10は、図9に示したプリンタアプリ40における空き時間の印刷データ展開処理を示すフローチャート図である。
ステップ41で、複合機1の空き時間検知部50は、サーバ4のHDD70に保存されたユーザログ73と空き時間テーブル74とに基づいて空き時間を検知すると、ステップ42へ進む。
ステップ42で、複合機1の空き時間検知部50は、サーバ4のHDD70に保存された印刷・展開データ参照テーブル71を参照し、HDD70に展開されていない印刷データが有るか否かを判断し、無ければ(「N」の場合)、この処理を終了するが、有れば(「Y」の場合)、ステップ43へ進む。
【0064】
ステップ43で、複合機1の空き時間検知部50は、プリント制御部51へ、展開対象の印刷データの印刷データIDと共に、サーバに蓄積されている印刷データの展開の依頼を送り、ステップ44へ進む。
ステップ44で、複合機1のプリント制御部51は、空き時間検知部50から展開の依頼と共に印刷データIDを受け取ると、その印刷データIDとサーバ4のHDD70の印刷・展開データ参照テーブル71に基づいてHDD70から印刷データ72を読み出して取得し、PDL52へ印刷データIDと印刷データを送り、ステップ45へ進む。
ステップ45で、複合機1のPDL52は、プリント制御部51から印刷データIDと印刷データを受け取ると、印刷データを画像データに展開し、その展開データと印刷データIDを展開データ保存制御部53へ送り、ステップ46へ進む。
【0065】
ステップ46で、複合機1の展開データ保存制御部53は、PDL52から展開データと印刷データIDを受け取ると、その展開データに展開データIDを割り当て、HDD14に展開データ62を保存し、サーバ4のHDD70の印刷・展開データ参照テーブル71に展開データIDと格納位置情報と機器のIPアドレス(複合機1のIPアドレス)を登録して更新し、この処理を終了する。
このようにして、画像処理システムでのロケーションフリー印刷においても、複合機1は自装置が空き時間になると、サーバ4に蓄積された印刷データを取得し、実際の印刷処理に先立って展開して蓄積することにより、自装置が頻繁に使用されているときや使用予定があるときに、それらの使用の際の処理遅延をもたらすことを極力回避することができ、印刷データの印刷出力を高速化しながらも、他の処理が重複することによって印刷速度の性能が劣化することの無いようにすることができる。
なお、ロケーションフリー印刷の可能なプリンタ3でも、上述した複合機1と同様にして空き時間に印刷データの展開を行わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明による画像処理装置と画像処理システムは、ファクシミリ,プリンタ,複写機,複合機を含む印刷可能な装置全般において適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:複合機 2:PC 3:プリンタ 4:サーバ 5:ルータ 6:PSTN/ISDN網 7:インターネット 8:LAN 10:B&WLP 11:カラーLP 12:スキャナ 13:ファクシミリ 14,70:HDD 15:メモリ 16:ネットワークI/F 17:エンジンI/F 20:ソフトウェア群 21:プラットフォーム 22:アプリケーション 23:コントロールサービス 24:SRM 25:OS 26:API 30:SCS 31:ECS 32:MCS 33:OCS 34:FCS 35:NCS 36:IMH 40:プリンタアプリ 41:コピーアプリ 42:ファックスアプリ 43:スキャナアプリ 44:フィルタアプリ 45:フィルタ設定アプリ 50:空き時間検知部 51:プリント制御部 52:PDL 53:展開データ保存制御部 60,71:印刷・展開データ参照テーブル 61:印刷データ 62:展開データ 63,73:ユーザログ 64,74:空き時間テーブル
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平11−353137号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを蓄積する印刷データ蓄積手段と、
印刷データから展開された画像データを蓄積する画像データ蓄積手段と、
前記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データを画像データに展開する展開手段と、
前記展開手段によって展開された画像データを画像データ蓄積手段に蓄積し、前記画像データ蓄積手段に蓄積した画像データと、該画像データの展開元となった前記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データとを紐付ける蓄積制御手段と、
自装置が使用されていない時間を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された時間に、前記展開手段と前記蓄積制御手段とを動作させる制御手段と、
前記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データと紐付けられた前記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを印刷する印刷手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
自装置の周囲の明るさを検出する検出手段を設け、
前記検知手段は、前記検出手段によって検出された明るさが予め設定した明るさ以下になってからの経過時間に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
自装置の利用状況の情報を保存する手段を設け、
前記検知手段は、前記保存された自装置の利用状況の情報に基づいて、自装置が使用されていない時間を検知する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
印刷データを蓄積する印刷データ蓄積手段を有するサーバ装置と、
印刷データから展開された画像データを蓄積する画像データ蓄積手段を有する画像処理装置とからなる画像処理システムであって、
前記画像処理装置は、
前記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データを画像データに展開する展開手段と、
前記展開手段によって展開された画像データを画像データ蓄積手段に蓄積し、前記画像データ蓄積手段に蓄積した画像データと、該画像データの展開元となった前記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データとを紐付け、該紐付けの情報を前記サーバ装置に保存する蓄積制御手段と、
自装置が使用されていない時間を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された時間に、前記展開手段と前記蓄積制御手段とを動作させる制御手段と、
前記印刷データ蓄積手段に蓄積された印刷データと紐付けられた前記画像データ蓄積手段に蓄積された画像データを印刷する印刷手段とを備えたことを特徴とする画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188411(P2011−188411A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54144(P2010−54144)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】