説明

画像処理装置及びX線コンピュータ断層撮影装置

【課題】 心機能解析の精度向上を実現する画像処理装置及びX線コンピュータ断層撮影装置の提供
【解決手段】 記憶部36は、造影された心臓領域に関する基準ボリュームデータを記憶する。心筋領域特定部42は、基準ボリュームデータの画素値の分布に基づいて心臓領域に含まれる心筋領域を特定する。ROI設定部44は、特定された心筋領域を縮小させた領域をROIに設定する。インデックス計算部46は、設定されたROIについて心機能に関するインデックスを計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の心機能に関する指標、特に血流機能に関する指標を計算する画像処理装置及びX線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT検査において、心機能解析、具体的には左心室心筋領域についての血流解析が行われている。血流解析においては、解析対象となる関心領域(典型的には、左心室心筋領域)を設定し、設定された関心領域の造影剤濃度変化量を計算し、計算された値に基づいて血流動態に関する様々なインデックスを計算する。典型的な血流解析手法では、複数時刻での造影剤濃度変化量のデータを必要とする。
【0003】
心筋領域を設定する手法としては、例えば特許文献1記載のLevel set法が知られている。このような従来法では、造影されていない時刻におけるボリュームデータでは、心筋と内腔の画素値が等しいため、心筋領域が特定できない。また、造影剤によるコントラストが十分にあるボリュームデータにおいては、心筋領域の輪郭が忠実に特定され、特定された心筋領域に関心領域が設定される。そのため心臓の拍動やパーシャルボリューム効果により、心筋領域の画素値は、心筋領域外、例えば左心室内腔の造影剤や乳頭筋領域、肺領域等の画素値の影響を受けるため、血流解析の精度が低下してしまう。また、複数のボリュームデータファイルに複数の関心領域をそれぞれ設定する場合、各ボリュームデータファイルに同様の処理を繰り返すことによって各関心領域を設定するため、演算量が膨大になってしまう。
【特許文献1】特許第3902765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、心機能解析の精度を向上することが可能な画像処理装置及びX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に係る画像処理装置は、医療機器で収集された、造影された心臓領域に関する第1画像のデータを記憶する記憶部と、前記第1画像のデータの画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する第1特定部と、前記特定された特定領域を縮小させた領域を関心領域に設定する設定部と、前記設定された関心領域について前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、を具備する。
【0006】
本発明の第2局面に係る画像処理装置は、造影された心臓領域を含む複数のボリュームデータファイルを記憶する記憶部と、前記複数のボリュームデータファイルの時間濃度曲線に基づいて、前記複数のボリュームデータファイルから第1時刻に関する第1ボリュームデータファイルを特定するボリュームデータ特定部と、前記特定された第1ボリュームデータファイルに含まれる前記心臓領域の画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する領域特定部と、前記特定された特定領域について前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、を具備する。
【0007】
本発明の第3局面に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体の造影された心臓を含むスキャン領域をスキャンするスキャン部と、前記スキャン部からの投影データに基づいて前記心臓の領域を含む画像のデータを発生する発生部と、前記発生された画像のデータの画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する特定部と、前記特定された特定領域を縮小させた領域を関心領域に設定する設定部と、前記設定された関心領域について前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、を具備する。
【0008】
本発明の第4局面に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、被検体の造影された心臓を含むスキャン領域を繰り返しスキャンするスキャン部と、前記スキャン部からの投影データに基づいて前記心臓の領域を含む複数のボリュームデータファイルを再構成する再構成部と、前記再構成された複数のボリュームデータファイルの時間濃度曲線に基づいて、前記複数のボリュームデータファイルから第1時刻に関する第1ボリュームデータファイルを特定するボリュームデータ特定部と、前記特定された第1ボリュームデータファイルの画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する領域特定部と、前記特定された特定領域について、前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、心機能解析の精度向上を実現する画像処理装置及びX線コンピュータ断層撮影装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る画像処理装置とX線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶ)とを図面を参照しながら説明する。本実施形態の特徴としては、被検体の心臓に関する複数のボリュームデータから心臓の関心領域(以下、ROIと呼ぶ)の血流解析を行う場合において、心臓の拍動やパーシャルボリューム効果等による影響の少ないROIを設定することで血流解析の精度を向上することにある。心臓の血流解析のためのROIとしては、血液を全身へと駆出する主要器官である左心室の心筋領域が好まれる。左心室の心筋領域の血流動態を調べることで、心機能の異常を特定するのに役立つ。本実施形態に係るROIは、左心室の心筋領域に設定するものとする。
【0011】
なお、本実施形態に係るボリュームデータを発生する医療機器は、特定の装置に限定されることは無い。モダリティは、例えば、X線CT装置、シングルフォトンエミッショントモグラフィ装置(SPECT)、ポジトロンエミッショントモグラフィ装置(PET)、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、超音波診断装置等の何れでもよい。以下、医療機器として、X線CT装置を例に本実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置1の構成を示す図である。X線CT装置1は、スキャン部10とコンピュータ装置20とから構成される。スキャン部10は、円環又は円板状の回転フレームを回転可能に支持する。回転フレームは、スキャン領域中に天板12に載置された被検体Pを挟んで対向するようにX線管14とX線検出器16とを備える。回転フレームは、高速に連続回転する。X線管14は、高電圧発生装置18からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受けてX線を発生する。X線検出器16には、データ収集部(DAS;Data Acquisition System)21が接続される。データ収集部21は、X線検出器16の各チャンネルの電流信号を収集する。X線検出器16は、チャンネル方向に複数の検出素子を並べた素子列をスライス方向(X線検出器16の回転軸に沿った方向)に複数列配置してなる。X線検出器16は、例えば256列以上の素子列を有する。
【0013】
コンピュータ装置20は、画像処理装置30と、表示部22と、入力部23とを備える。画像処理装置30は、制御部31を中枢として、前処理部32、再構成部34、記憶部36、TDC作成部38、ボリュームデータ特定部40、心筋領域特定部42、ROI設定部44、及びインデックス計算部46を有する。
【0014】
前処理部32は、データ収集部21からの投影データに対数変換処理やX線検出器16の感度補正等の処理を行なう。再構成部34は、投影データに再構成処理を繰り返し行い、撮影時刻の異なる複数のボリュームデータV1、…、ボリュームデータVn(n>1、但しnは整数とする)を発生する。添え字1は、造影剤注入直後あるいは直前を表す。添え字nは、心臓に流れた造影剤が十分に薄まった時刻を表す。ボリュームデータは、心臓領域を含む。ボリュームデータは、3次元的に配置された複数のボクセルから構成される。以下、ボリュームデータにおけるボクセルと、画像データにおけるピクセルとを区別せずまとめて画素と呼ぶことにする。
【0015】
記憶部36は、投影データや複数のボリュームデータV1〜Vnを記憶する。記憶部36は、各ボリュームデータV1〜Vnを個別のファイルに記憶する。
【0016】
TDC作成部38は、複数のボリュームデータV1〜Vnの全体又は特定領域に関する時間濃度曲線(以下、TDCと呼ぶ)を作成する。
【0017】
ボリュームデータ特定部40は、作成されたTDCに基づいて、複数のボリュームデータV1〜Vnから、例えば造影剤が十分に流入しているボリュームデータVp(1<p≦n)を特定する。以下、特定されたボリュームデータVpを、基準ボリュームデータVpと呼ぶ。
【0018】
心筋領域特定部42は、基準ボリュームデータVpの画素値の分布に基づいて、基準ボリュームデータVpに含まれる左心室の心筋領域を特定する。具体的には、心筋領域特定部42は、基準ボリュームデータVpを画素値で閾値処理することにより心筋領域を特定する。
【0019】
ROI設定部44は、特定された心筋領域を、基準ボリュームデータVpに含まれる心筋領域をその内部方向に向けてエロージョン処理等により縮小させ(痩せさせ)、縮小後の領域を血流解析のためのROI(以下、基準ROIと呼ぶ)に設定する。また、ROI設定部44は、基準ROIを、他のボリュームデータVm(1<m≦n、m≠p)に含まれる左心室心筋領域の形状や位置に応じて変形や移動させることにより、他のボリュームデータVmに他のROIを設定する。
【0020】
インデックス計算部46は、設定されたROIについて、心筋領域の機能についての様々なインデックス、具体的には血流動態に関する様々なインデックスを計算する。インデックスは、ROIを構成する画素毎に計算される。血流動態に関するインデックスは、例えば、BP(心筋組織内の単位体積及び単位時間あたりの血流量)[ml/100ml/min]、BV(心筋組織内の単位体積あたりの血流量)[ml/100ml]、MTT(平均通過時間)[min]等がある。
【0021】
以下、制御部31による血流解析処理について詳細に説明する。図2は、制御部31による血流解析処理の流れを示す図である。なお、本実施形態においてスキャン部位は、被検体の心臓を含む胸部とする。X線CT装置1は、造影剤注入直後あるいは直前から被検体胸部をダイナミックCT撮影する。ダイナミックCT撮影は、同一スキャン部位を反復してCT撮影することである。このダイナミックCT撮影により異なる撮影時刻に対応する複数のボリュームデータV1、ボリュームデータV2、…、ボリュームデータVnが発生される。具体的には、ダイナミックCT撮影により収集された投影データは再構成部34により心電同期再構成処理され、拡張末期に関する複数のボリュームデータV1〜Vnが発生される。拡張末期に限定することで、拍動によるモーションアーチファクトや、ボリュームデータ間の位置ずれ等を低減することが可能となる。発生された複数のボリュームデータV1〜Vnは、撮影時刻に関連付けて記憶部36に記憶される。
【0022】
まず、入力部23等からの血流解析処理の開始要求を受けて制御部31は、TDC作成部38にTDC作成処理を行なわせる。TDC作成処理においてTDC作成部38は、複数のボリュームデータV1〜Vnを記憶部36から読み込み、複数のボリュームデータV1〜Vnに関するTDCを作成する(ステップS1)。具体的には、TDC作成部38は、複数のボリュームデータV1〜Vnの複数の所定領域それぞれについて、所定領域を構成する複数画素の画素値の平均値を算出する。そして、算出された複数のボリュームデータV1〜Vnの複数の平均値に基づいてTDCを作成する。なお、所定領域は、各ボリュームデータの全体領域であっても、各ボリュームデータの着目する一部領域(例えば左心室領域や左心室の心筋領域等)であってもよい。
【0023】
図3は、作成されるTDCの一例を示す図である。図3に示すようにTDCは、縦軸を平均画素値[HU]に、横軸を撮影時刻[t]に規定したグラフである。TDCは、ある時刻tpにおいて最大値を有する。
【0024】
TDCが作成されると制御部31は、ボリュームデータ特定部40にボリュームデータ特定処理を行なわせる。ボリュームデータ特定処理においてボリュームデータ特定部40は、TDCに基づいて、複数のボリュームデータV1〜Vnから基準ボリュームデータVpを特定する(ステップS2)。具体的には図3に示すように、ボリュームデータ特定部40は、TDCから平均画素値が最大となる時刻tpを特定し、特定された時刻tpに関連付けられているボリュームデータ(基準ボリュームデータVp)を特定する。なお、平均画素値が最大となるボリュームデータを基準ボリュームデータVpとしたが、ステップS2はこの方法に限定されない。例えば、設定された閾値以上の平均画素値を有するボリュームデータを基準ボリュームデータVpとしてもよい。また、例えば、最大画素値数と最小画素値数との比や画素値の標準偏差、微分強度等を用いて基準ボリュームデータVpを特定してもよい。
【0025】
基準ボリュームデータVpが特定されると制御部31は、心筋領域特定部42に心筋領域特定処理を行なわせる。心筋領域特定部42は、基準ボリュームデータVpの画素値の分布に基づいて、左心室の心筋領域を特定する(ステップS3)。以下、ステップS3について詳述する。なお、ボリュームデータの中心は、左心室領域の解剖学的な中心と略一致しているものとする。一致させる方法は、スキャン時において再構成領域中心と被検体の左心室中心とを実座標上で一致させる方法でも、ボリュームデータ発生後に画像処理によりボリュームデータ座標上で一致させる方法でも良い。
【0026】
図4(a)は左心室領域CRの模式的な構造を示す図である。図4(a)は左心室領域CRのアキシャル断面を模式的に示す図である。図4(a)に示すように、左心室領域CRは、血液の流路である内腔領域LRを含む。また、左心室領域CRは、内腔領域LRの外側に、血液を大動脈へ送り出すための心筋領域MRを有する。図示しないが、心筋領域MRには毛細血管領域が縦横に分布している。心筋領域MRの内側輪郭IC(内壁)は、無数の細かい襞を有する。また、左心室領域CRは、断面位置によっては、内腔領域LR内に乳頭筋領域PRを含む。乳頭筋領域は、心筋領域MRに接続され、心筋領域MRから円錐上に突出している。この乳頭筋領域PRは、血流解析の対象ではないのでROIに含めてはならない。
【0027】
図4(b)は、内腔領域LRのTDCを示す図である。図4(c)は、心筋領域MRのTDCを示す図である。造影剤は、心室内腔に流入してから心筋に流入する。図4(b)と図4(c)とに示すように、心筋領域MRよりも内腔領域LRの方が早く造影剤に反応し、また、造影剤による画素値の変化が小さい。このため基準ボリュームデータVpにおいて、造影剤による心筋領域MRの画素値と内腔領域LRの画素値との間には、心筋領域MRと内腔領域LRとを閾値処理によって区別できるほどの差異が生じる。
【0028】
このような造影剤に対する左心室の各組織の応答特性の違い、すなわち基準ボリュームデータVpにおける心筋領域MRと内腔領域LRとの画素値の違いを利用して、心筋領域特定部42は、心筋領域MRを特定する。この処理の具体的手順は以下の通りである。まず心筋領域特定部42は、閾値処理(K―Means法)により、ボリュームデータVpを筋肉領域、造影剤領域、空気領域に分割する。次に心筋領域特定部42は、乳頭筋領域PRが有する特徴的な形状等に基づいて乳頭筋領域PRを基準ボリュームデータVpから除外する。この乳頭筋領域PRの除外処理は、既存技術によって行なわれる。乳頭筋領域PRを除去すると、心筋領域特定部42は、予め設定された心筋領域MRの画素を基準ボリュームデータVpの端部から中心に向けて探索していき、心筋領域MRの外側輪郭OCを特定する。次に心筋領域特定部42は、心筋領域MRの画素を基準ボリュームデータVpの中心から端部に向けて探索していき、心筋領域MRの内側輪郭ICを特定する。そして心筋領域特定部42は、特定された外側輪郭OCと内側輪郭ICとに挟まれる領域(外側輪郭OCと内側輪郭ICとの間の領域)を心筋領域MRに特定する。
【0029】
なお、心筋領域を特定する他の方法として、特許文献1記載のLEVEL SET法を用いても良い。
【0030】
心筋領域が特定されると制御部31は、ROI設定部44にROI設定処理を行なわせる。ROI設定処理においてROI設定部44は、心筋領域の形状に応じて心筋領域を縮小させ、縮小後の領域を基準ROIに設定する(ステップS4)。縮小法の具体例としては、様々な方法が考えられる。例えば以下の方法がある。まず、心筋領域の外側輪郭と内側輪郭とをそれぞれ多面体で近似する。そして、多面体で近似された内側輪郭を心筋領域の内部方向に向けて拡大させ、多面体で近似された外側輪郭を心筋領域の内部方向に向けて縮小させることによって、心筋領域を縮小させる。多面体で近似された内側輪郭は、心筋領域の内側輪郭に分布している襞やモーションアーチファクト、パーシャルボリューム効果を有する領域等がROIに含まれなくなるまで拡大させるのが良い。具体的な縮小幅や拡大幅は、予め設定された値を使用しても良い。また、縮小幅や拡大幅を被検体の心拍数やスキャン条件、再構成条件により決定しても良い。
【0031】
他の縮小法としては、心筋領域の外側輪郭部や内側輪郭部を削るように、心筋領域の外側輪郭部や内側輪郭部の画素値を例えば空気領域の画素値に置き換えることによって心筋領域をエロージョン処理(侵食処理)により縮小させる方法がある。
【0032】
基準ROIが設定されると制御部31は、ROI設定部44に他のROI設定処理を行なわせる。他のROI設定処理においてROI設定部44は、基準ROIpを、他のボリュームデータVmに含まれる左心室心筋領域の形状や位置に応じて変形や移動をさせることにより、他のボリュームデータVmに他のROIを設定する(ステップS5)。具体的には、ROI設定部44は、基準ボリュームデータVpにおける左心室領域の中心と、他のボリュームデータVmにおける左心室領域の中心の位置ずれ量を計算する。そして、ROI設定部は、他のボリュームデータVm内において、計算した位置ずれ量だけ基準ROIを移動させ、移動後の基準ROIを他のROIに設定する。また、画素値に基づいて他のROI内に心筋領域以外の領域含まれていると判定した場合、ROI設定部44は、心筋領域以外の領域が含まれなくなるまで他のROIを縮小させる。
【0033】
ROIが設定されると制御部31は、インデックス計算部46にインデックス計算処理を行なわせる。インデックス計算処理においてインデックス計算部46は、ステップS4やステップS5にて設定されたROIについて血流動態に関するインデックスを計算する(ステップS6)。インデックスによっては、単一のROIに基づいて計算されるものや、複数のROIに基づいて計算されるものがある。計算されたインデックスは、インデックスの種類に応じた図5に示すようなマップにプロットされる。インデックスがマップにプロットされることでインデックスマップ(ポーラーマップ)が作成される。インデックスマップの作成方法は、公知の技術である。なお、インデックスマップは、心臓領域に関し、心軸を横切る複数の断面のそれぞれについて計算されるインデックスを、左心室の長軸周りの角度と左心室先端からの距離とに応じた極座標にプロットしたマップである。具体的には、図5に示す円形状のマップの中心点は、左心室先端(apex)に対応している。マップの中心からの距離(半径)は、左心室の長軸に沿う左心室先端から基底(Basal)の距離を表している。インデックスマップは、他のボリュームデータVmについても同様に作成することができる。医師等は、表示部22に表示されたインデックスマップを観察することによって、被検体の心臓機能(虚血の有無等)を評価する。
【0034】
上記構成によれば、X線CT装置1は、心筋領域の血流解析において、心筋領域を縮小させた領域をROIに設定することにより、血流解析精度を低下させる要因である心筋領域の境界部分(少なくとも内側輪郭と外側輪郭とを含む部分)をROIから除外する。従って、心筋領域の境界部分を含んだ領域を血流解析していた従来に比して、本実施形態に係る血流解析の精度は向上する。また、X線CT装置1は、基準ボリュームデータに設定された基準ROIを利用することにより、処理量の少ない簡便な画像処理によって他のボリュームデータに対して他のROIを自動的に設定することが可能である。
【0035】
かくして本実施形態によれば、心機能解析の精度を向上することが可能となる。
【0036】
なお、上記の血流解析処理は、複数のボクセルからなるボリュームデータに対して行なうとした。しかし、本血流解析処理は、アキシャル断面に関する多数(例えば100枚)の断層画像のデータ(マルチスライス画像データ)から構成されるボリュームデータに対して行なってもよい。この場合、血流解析処理は、全てのボリュームデータについて、各ボリュームデータを構成する断層画像一枚一枚に対して行なわれる。すなわち、各断層画像について、ステップS4にてROI設定部44は左心室の心筋領域にROIを設定し、ステップS6にてインデックス計算部46はインデックスを計算する。なお、マルチスライス画像データの場合、ステップS4における心筋領域の内側輪郭と外側輪郭とは、多角形に近似される。また、記憶部36に撮影時刻の異なる複数の画像のデータが記憶されている場合、ステップS2にて撮影時刻の異なる複数の画像のデータから、時間濃度曲線に基づいて基準の画像のデータを特定する特定部を設けても良い。
【0037】
上記実施形態において画像処理装置30は、X線CT装置1に含まれる装置であるとした。しかしながらこれに限定する必要はなく、画像処理装置30は、X線CT装置1と電気的通信回線を介して接続されたワークステーションであってもよい。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図。
【図2】図1の制御部による血流解析処理の流れを示す図。
【図3】図2のステップS1にて作成されるTDCの一例を示す図。
【図4】図2のステップS3とステップS4との処理を説明するための図。
【図5】図2のステップS6にて計算されるインデックスがプロットされるマップの一例を示す図。
【符号の説明】
【0040】
1…X線コンピュータ断層撮影装置、10…スキャン部、12…天板、14…X線管、16…X線検出器、18…高電圧発生装置、20…コンピュータ装置、21…データ収集部、22…表示部、23…入力部、30…画像処理装置、31…制御部、32…前処理部、34…再構成部、36…記憶部、38…時間濃度曲線(TDC)作成部、40…ボリュームデータ特定部、42…心筋領域特定部、44…関心領域(ROI)設定部、46…インデックス計算部、P…被検体、CR…左心室領域、LR…内腔領域、MR…心筋領域、PR…乳頭筋領域、IC…内側輪郭、OC…外側輪郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器で収集された、造影された心臓領域に関する第1画像のデータを記憶する記憶部と、
前記第1画像のデータの画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する第1特定部と、
前記特定された特定領域を縮小させた領域を関心領域に設定する設定部と、
前記設定された関心領域について前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記第1特定部は、前記特定領域として、心筋領域の外側輪郭と内側輪郭との間の領域を特定する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記外側輪郭と前記内側輪郭との間の厚みを縮小させた領域を前記関心領域に設定する、請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記心臓領域に関し前記第1画像のデータとは異なる時刻に対応する第2画像のデータを記憶し、
前記設定部は、前記第2画像に含まれる左心室の心筋領域の位置又は形状に応じて前記関心領域を移動し又は変形して、前記移動又は変形された関心領域を第2画像の関心領域に設定する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記心臓領域を含み、異なる時刻に関する複数の画像のデータを記憶する記憶部と、
前記複数の画像のデータに関する時間濃度曲線に基づいて、前記複数の画像のデータから第1時刻に関する前記第1の画像のデータを特定する第2特定部と、
をさらに備える請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記指標計算部は、前記心筋領域に関する複数の断面のそれぞれについて、前記計算される指標値を、前記心筋領域の左心室の長軸周りの角度と前記左心室の先端からの距離とに応じた極座標にプロットしたマップを作成し、
前記表示部は、前記作成されたマップを表示する、
請求項2記載の画像処理装置
【請求項7】
造影された心臓領域を含む複数のボリュームデータファイルを記憶する記憶部と、
前記複数のボリュームデータファイルの時間濃度曲線に基づいて、前記複数のボリュームデータファイルから第1時刻に関する第1ボリュームデータファイルを特定するボリュームデータ特定部と、
前記特定された第1ボリュームデータファイルに含まれる前記心臓領域の画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する領域特定部と、
前記特定された特定領域について前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項8】
被検体の造影された心臓を含むスキャン領域をスキャンするスキャン部と、
前記スキャン部からの投影データに基づいて前記心臓の領域を含む画像のデータを発生する発生部と、
前記発生された画像のデータの画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する特定部と、
前記特定された特定領域を縮小させた領域を関心領域に設定する設定部と、
前記設定された関心領域について前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
被検体の造影された心臓を含むスキャン領域を繰り返しスキャンするスキャン部と、
前記スキャン部からの投影データに基づいて前記心臓の領域を含む複数のボリュームデータファイルを再構成する再構成部と、
前記再構成された複数のボリュームデータファイルの時間濃度曲線に基づいて、前記複数のボリュームデータファイルから第1時刻に関する第1ボリュームデータファイルを特定するボリュームデータ特定部と、
前記特定された第1ボリュームデータファイルの画素値の分布に基づいて前記心臓領域に含まれる特定領域を特定する領域特定部と、
前記特定された特定領域について、前記特定領域の機能に関する指標を計算する指標計算部と、
を具備するX線コンピュータ断層撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−225850(P2009−225850A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71800(P2008−71800)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】