説明

画像処理装置

【課題】印刷機種や経時変化により、印刷された地紋パターン(不正コピー禁止パターン)のドット径がばらついている場合でも、画像処理装置において地紋パターンを確実に検知できるようにする。
【解決手段】地紋検知処理部104は、読取り部102により読み取られた原稿画像データを入力して、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを、該地紋パターンのドットとして認識可能なドット径に補正する。そして、このドット径の補正された原稿画像データについて、標準地紋パターンをマスクパターンとしてパターンマッチング法により地紋パターンを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、ファクシミリ装置、ファイリング装置などの画像処理装置に関し、詳しくは、特定パターンの入った原稿を読み取った場合に、該原稿画像の記録紙への印刷あるいはその画像データの他装置への転送を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報セキュリティ管理の安全性が重要視されてきている。そのため、使用者が作成した紙原稿が不特定多数の人々に公開されないようにする目的で、原稿作成時にある特定パターン(地紋パターン)を原稿に印字しておき、当該原稿を読取り、地紋パターンが検出された場合、その原稿画像データを別のデータに変換して判読できないようにする(例えば、原稿画像データを塗りつぶす等)、いわゆる不正コピー防止機能を備えた画像処理装置が種々知られている。
【0003】
この場合、画像処理装置において原稿画像データに付加されている地紋パターンが確実に検出(検知)される必要がある。原稿画像に地紋パターンを付加して印刷する場合、印刷機種のぱらつきや経時変化によって地紋パターンを形成するドットのドット径がぱらつくと、画像処理装置側では原稿画像データに重畳されている地紋パターンを認識できない場合が生じ、当該原稿画像がそのまま記録紙へ印刷されたり、他装置へ転送されたりしかねない。
【0004】
そのため、従来、地紋パターンの再現精度を安定させる目的で、原稿画像に地紋パターンを付加して印刷する機器側に地紋パターンの認識処理機能を持たせて、原稿画像データに対して地紋パターンを重畳した後に地紋パターンを認識し、該地紋パターンのドット径を調整してばらつきをなくして印刷出力するようにした方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原稿画像に地紋パターンを付加して印刷する機器が、例えばA0広幅機のように、書込み手段としてLDの代わりにLEDという焦点深度の浅い部品を使っている機種の場合、感光ドラムに光を照射して画像を転写する際に少しのずれでぼけてしまい、1ドットのドット径が全体的に大きくなる(一般に縦長になる)。このため、印刷前にいくら地紋パターンのドット径を調整しても、印刷された地紋パターンのドット径は改善されない。
【0006】
本発明は、印刷機種や経時変化などによって、印刷された地紋パターンのドット径がばらついている場合でも、原稿画像を読み取り処理する画像処理装置側で、地紋パターンのドット径の精度を安定させて、地紋パターンの検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原稿画像を読み取る画像読取手段と、前記画像読取手段により読み取られた原稿画像データを処理する画像データ処理手段を備え、前記画像データ処理手段で処理された原稿画像データを印刷、蓄積又は他装置へ送信する画像処理装置において、
前記画像読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを、該地紋パターンのドットとして認識可能なドット径に補正するドット径補正手段と、
前記ドット径補正手段にて補正された原稿画像データをもとに地紋パターンを検出する地紋パターン検出手段と、
前記地紋パターン検出手段による地紋パターン検出結果により、前記原稿画像データが印刷又は他装置への転送を禁じられているものか否か判別する判別手段と、
前記原稿画像データが印刷又は他装置への転送を禁じられている場合、該原稿画像データを判読不可能な画像データに変換する画像変換手段と、
を有することを特徴とする。
【0008】
一実施例では、前記ドット径補正手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように主走査方向、副走査方向に独立に変倍する変倍手段を有し、該変倍手段によりドット補正を行うことを特徴とする。
【0009】
前記変倍手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターン形成するドットのドット径を計測して、認識可能なドット径になるように変倍率を算出するようにする。
【0010】
また、前記ドット径補正手段は、前記読取手段より読み取られた原稿画像データの変倍に合わせて、地紋パターン検知用のマスクパターンを変倍するマスク変倍手段を更に有することを特徴とする。
【0011】
別の実施例では、前記ドット径補正手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように2値化する2値化手段を有し、該2値化手段によりドット補正を行うことを特徴とする。
【0012】
前記2値化手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットのドット径が地紋パターン検知用マスクパターンのドット検知条件に合うように、前記原稿画像データを2値化する閾値を算出するようにする。
【0013】
更に別の実施例では、前記ドット径補正手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように主走査方向、副走査方向に独立に変倍する変倍手段と、前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように2値化する2値化手段と、前記読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットの状態により、前記変倍手段あるいは前記2値化手段のいずれかを選択してドット補正を実施せしめる補正処理判別手段と有することを特徴とする。
【0014】
前記補正処理判別手段は、黒画素の最小値>白画素の最大値を満足する場合には前記2値化手段を選択し、満足しない場合には前記変倍手段を選択するようにする。
【0015】
更に別の実施例では、前記ドット径補正手段は、前記読取手段にて読み取られた原稿画像データの領域を指定する領域指定手段を有し、該指定された領域の原稿画像データについてドット処理を実施する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、原稿画像を読み取り処理する画像処理装置にて、読み取った原稿画像データ内の地紋パターンを検出する処理に先立って、該読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように補正することにより、ドット径が安定し、地紋パターンの検知精度が向上する。
【0017】
なお、本発明の画像処理装置における更なる作用、効果は、本発明の実施の形態の説明で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる画像処理装置の一実施形態の全体構成図。
【図2】本画像処理装置における画像データの複写処理の概略フローチャートを示す図。
【図3】本画像処理装置における画像データの外部装置への送信処理の概略フローチャートを示す図。
【図4】図1中の地紋検知処理部の詳細構成図。
【図5】画像形成装置側での地紋パターンを埋め込んだ画像データの印刷処理の流れを示す図。
【図6】地紋パターンを形成するドットのばらつきの一例を示す図。
【図7】図4のドット径補正処理部におけるドット補正処理の実施例1のフローチャートを示す図。
【図8】実施例1における変倍率の算出法を説明する図。
【図9】従来の変倍処理なしと実施例1の変倍ありの場合の2値化ドットの具体例を示す図。
【図10】地紋パターン検知用のマスクパターンの変倍を説明する図。
【図11】図4のドット径補正処理部におけるドット補正処理の実施例2のフローチャートを示す図。
【図12】地紋パターン検知用のマスクパターンの具体例を示す図。
【図13】読み取られたドットの画素情報の具体例を示す図。
【図14】従来の閾値での2値化画像と実施例2の補正閾値での2値化画像の具体例を示す図。
【図15】図4のドット径補正処理部におけるドット補正処理の実施例3のフローチャートを示す図。
【図16】地紋パターン検知用のマスクパターン(ドット検知条件)と読み取られたドットの画素情報の具体例を示す図。
【図17】実施例3での補正処理判別を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる画像処理装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、本発明にかかる画像処理装置の一実施形態の全体構成図を示す。図1において、100は拡張バスとしての内部バスであり、操作表示部101、読取り部102、プロッタ部103、地紋検知処理部104、画像データ処理部105、CPU106、メモリ107、ハードディスク(HDD)108、外部インタフェース制御部(外部I/F制御部)109などが接続されている。さらに、外部I/F制御部109にはNIC(Network Interface Card)110、FAX送受信部111が接続され、NIC110にはネットワークを介してパソコン(PC)120が接続されている。図1では省略したが、FAX送受信部111は、通信回線を介して相手FAX装置と接続される。つまり、図1の画像処理装置は複合機能複写機として機能する。
【0021】
操作表示部101は、使用者からの入力操作を受けると共に、使用者に向けた必要な表示を行う操作ボードである。使用者が該操作表示部101上のキー群を操作することで、CPU106の制御下で、種々の動作(コピー、FAX、データ転送、変倍、その他)が実行される。
【0022】
読取り部102は、CCD等のセンサ、A/Dコンバータ、それらの駆動部等からなり、セットされた原稿をスキャンして読み取り、例えば、1画素8ビットからなるデジタル画像データとして入力する。
【0023】
ここで、該読取り部102により読み取られた原稿画像データの記録紙への印刷や他装置への転送等を禁止したい場合、原稿画像作成時、当該原稿画像に特定パターンの地紋パターンをあらかじめ埋め込んでおく。該特定パターンは、一般に原稿画像のほぼ全領域にわたって埋め込まれる。
【0024】
プロッタ部103は、該画像処理装置が複写機として動作する場合、読取り部102により読み取られた原稿画像データを記録紙へ印刷する(プリントアウト)。後述するように、読取り部102により読み取られた原稿画像データは、画像データ処理部105により必要な処理が実施された後、該プロッタ103にて記録紙へ印刷されることになる。
【0025】
なお、プロッタ部103は、外部パソコン120のプリンタやFAX部110の出力装置としても利用されるが、その詳細は省略する。
【0026】
地紋検知処理部104は、読取り部102により読み取られた原稿画像データから地紋パターンを検出して、当該原稿画像が記録紙への印刷あるいは他装置への転送を禁じられているか否かを判別する。
【0027】
画像データ処理部105は、読取り部102により読み取られた原稿画像データについて必要な処理を実施する。ここで、必要な処理とは、シェーディング補正、γ補正、MTF補正等である。該画像データ処理部105は、また、地紋検知処理部104にて当該原稿画像が記録紙への印刷あるいは他装置への転送を禁じられていると判別された場合、当該原稿画像データを判読不可能な画像データに変換する画像変換手段を有している。該画像変換手段は、例えば、当初の原稿画像データを塗りつぶすなどして判読できないようにする。
【0028】
CPU106は、操作表示部101からの操作入力等に応じて、該画像処理装置全体の動作を制御する。メモリ107は、読取り部102により読み取られた原稿画像データ、画像データ処理部105による処理途中あるいは処理結果の原稿画像データ、外部パソコン120からの入力データ、相手FAX装置からの受信データ等々を一時的に記憶する。HDD107は、画像データ処理部105による処理結果の原稿画像データ、CPU106のためのプログラム、プロッタ部103のためのフォントデータ、地紋検知処理部104のための標準地紋パターン(マスクパターン)データ、画像データ処理部105のためのLUT(Look Up Table)類等々を蓄積している。
【0029】
外部I/F制御部109は、NIC110やFAX部111などの外部デバイスの動作を制御する。NIC110は、ネットワーク経由で外部のパソコン120と通信を行う。FAX部111は、通信回線経由で相手FAX装置とFAXデータの送受信を行う。
【0030】
図2は、図1の画像処理装置における複写処理の概略フローチャートを示したものである。読取り部102は、セットされた原稿をスキャンして読み取り、原稿画像データを出力する(ステップ1001)。地紋検知処理部104は、該原稿画像データを入力して地紋パターンの検出処理を行う(ステップ1002)。画像データ処理部105は、地紋検知処理部104で地紋パターンが検出された場合には(ステップ1003でYES)、読取り部102で読み取られた原稿画像データを塗りつぶすなどして、判読不可能な画像データに変換して出力する(ステップ1004)。一方、地紋検知処理部104で地紋パターンが検出されなかった場合には(ステップ1003でNO)、画像データ処理部105は、読取り部102で読み取られた原稿画像データについて通常の必要な画像処理を実施して出力する(ステップ1005)。プロッタ部103は、画像データ処理部105で処理された原稿画像データを入力して記録紙に印刷する(ステップ1006)。この結果、読み取り部102にセットされた原稿に地紋パターンが入っている場合には、プロッタ部103では、全体が塗りつぶしなどされた判読不可能な画像を記録紙に印刷することになる。
【0031】
図4は、図1の画像形成装置における外部への送信処理概略フローチャートを示したものである。図4において、ステップ2001〜2005は、図3のステップ1001〜1005とまったく同じであるので説明を省略する。画像データで処理された原稿画像データは、メモリ107に一時格納された後、外部I/F制御部109、NIC110を経由して外部のパソコン120などに送信される(ステップ2006)。この場合も、読取り部102にセットされた原稿に地紋パターンが入っている場合には。全体が塗りつぶしなどされた判読不可能な画像データが外部のパソコン120などに送信されることになる。これは、FAX部111を介して相手のFAX装置へ送信する場合も同様である。
【0032】
なお、地紋検知処理部104で地紋パターンが検出された場合、CPU106は、当該原稿画像データの記録紙への印刷や外部への送信等を禁止するように制御することでもよい。
【0033】
本発明は、図1中の地紋検知処理部104に係る。図4に、該地紋検知処理部104の構成例を示す。ここで、地紋検知処理部104は、ドット径補正部210、地紋パターン検出部220、不正コピー判別部230からなる。
【0034】
ドット径補正部210は、読取り部102により読み取られた原稿画像データを入力して、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを、該地紋パターンのドットとして認識可能なドット径に補正する。具体的には、原稿画像中の所定領域を指定し、該領域内の原稿画像データについてドット補正処理を実施する。本発明の特徴は、地紋パターン検出部220の前段に該ドット径補正部210を追加し点にある。このドット径補正部210でのドット補正処理については後で詳述する。
【0035】
地紋パターン検出部220は、ドット径補正部210でドット径の補正された原稿画像データをもとに地紋パターンの検出を行う。具体的には、指定された領域内の原稿画像データについて、標準地紋パターンをマスクパターンとして画素単位にスキャンして、パターンマッチング法により地紋パターンを検出する。パターンマッチング法は従来から知られているので、詳しい説明は省略する。ここで、ドット径補正部210において原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットのドット径が地紋パターンドットとして認識可能なドット径に補正されているので、地紋パターン検出精度が向上する。
【0036】
不正コピー判別部230は、地紋パターン検出部220の地紋パターン検出結果により読取り部102にて読み取られた当該原稿画像データが印刷(コピー)又は他装置への転送等を禁じられているものか否か判別する。すなわち、地紋パターンが検出された場合、当該原稿画像データは印刷又は他装置への転送等を禁止されていると判別する。
【0037】
不正コピー判別部230の判別結果は、CPU106を介して又は直接、画像データ処理部105へ通知される。これを受けて、画像データ処理部105では必要な画像処理を取り止め、該画像データ処理部105内の画像変換手段が、当該原稿画像データを塗りつぶすなどして判読できない画像データに変換して出力することになる。
【0038】
以下に、図4のドット径補正部210でのドット補正処理について詳述するが、その前に、画像形成装置により地紋パターンの埋め込まれた原稿を印刷出力する動作概要を説明する。
【0039】
図5は、画像形成装置による印刷処理の概略フローチャートである。パソコン等の外部装置で、所望の画像データを生成し(ステップ3001)、更に該画像データに特定のパターンの地紋パターンを付加する(ステップ3002)。この画像データに地紋パターンの付加された電子データが画像形成装置に転送される。
【0040】
画像形成装置は、画像データに地紋パターンの付加された電子データを入力し(ステップ3003)、プロッタ部にて印刷する(ステップ3004)。これにより、画像データに地紋パターンの埋め込まれた原稿の印刷物が作成される。
【0041】
ここで、問題となるのは、プロッタ部にて地紋パターンを印刷するとき、機種の違いや経時変化等によって地紋パターンのドット径がばらつくことである。これに対して、従来考えられている方法は、画像形成装置にて地紋パターンの付加された電子データについてドット径を調整することであったが(例えば、特許文献1、特許文献2)、書込み手段としてLEDのような焦点深度の浅い部品を使っている場合には、少しのずれで焦点がぼやけてします、いくら事前にドット径を調整しても、印刷された地紋パターンは改善されない。
【0042】
図6は、ドットの様々なばらつきの様子を示したものである。図6(a)は通常の(標準)の大きさのドットで、これが認識可能なドットである。図6(b)は、通常のドットより横もしくは縦方向(例では縦方向)に長い楕円形のドットである。通常は感光体の回転に伴い光学系の調整を行ってドットを丸くしているが、調整ができない部品を使っている場合には、図6(b)のように楕円形になる。図6(c)は、規定より大きいドットである。LEDを光源に使う書込み装置は、焦点深度が浅くピントがずれやすいので、感光体に当たる光がぼやけて大きなドットとなる。図6(d)は、規定により小さく形のくずれた薄いドットである。経時変化により、感光体が弱りトナーの付着が悪くなったときに、規定により小さい薄いドットになる。
【0043】
本発明は、このようにドット径がばらつくという課題を、原稿画像を読取り処理する画像処理装置側において、読み取った原稿画像データについて地紋パターン検知に先立って、地紋パターンを形成するドットのドット径を認識可能なドット径に補正し安定させることで解決するものである。以下、図4のドット径補正部210でのドット補正処理について詳述する。
【0044】
図7は、図4のドット径補正部210におけるドット補正処理の一実施例(実施例1とする)のフローチャートを示したものである。ここで、ステップ4001が領域指定手段として機能する。また、ステップ4002、4003が変倍手段として機能し、ステップ4005がマスク変倍手段として機能する。
【0045】
<ステップ4001>
読取り部102で読み取られた原稿画像データについて、領域を指定し、該領域の原稿画像データのみを切り出す。具体的には、画素数をカウントして切り出したい画像領域(ドット条件の良い領域)を指定して画像データを切り出す。以降、この切り出した原稿画像データを対象にドット補正処理、地紋パターン検知処理を実施する。
【0046】
A0幅のような広域の画像を扱う機種においては、A0幅はすべての画像領域を読み取ったとしても、地紋パターン検知には一部の画像データで十分である(通常、地紋パターンは原稿の全領域に埋め込まれている)。全部の原稿画像データを取り込むのは、処理的にも負荷がかかり意味がない。
【0047】
領域を指定し、該領域の原稿画像データのみを切出し取り込むことで、広域の画像を扱う場合であっても、読取装置、書込装置の安定した部分のドットの条件の良い部分だけの、必要な部分のみの画像を切り出せ、ドット補正処理、地紋パターン検知処理等の無駄が省ける。
【0048】
<ステップ4002>
ステップ4001で切り出した原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットのドット径が認識可能なドット径になるように、ドット径を最適化する変倍率を設定する。該変倍率は主走査方向、副走査方向独立に設定する。
【0049】
具体的には、地紋パターンを埋め込んだ原稿画像データを作成する際に、ある部分に該地紋パターンを形成するドット径のドット(例えば、1ドット)を付加しておく。その結果、地紋パターンが埋め込まれた原稿画像データとともに該ドットが、画像形成装置で印字され、本画像処理装置の読取り部102で読み取られる。ステップ4001で領域を指定する際、その領域内に当該ドットが含まれるようにする。そして、切り出した原稿画像データ内の当該ドットのドット径を計測し(これが、読取り部102で読み取られる地紋パターンを形成するドットのドット径を表す)、あらかじめ定めた認識可能なドット径から、下記の計算式で変倍率を計算する。
(認識可能なドット径)/(計測したドット径)×100
ここで、横方向と縦方向でドットの寸法のばらつきが想定されるので、主走査方向、副走査方向それぞれの変倍率を計算する必要がある。ここでは、読取り部102で読み取られる地紋パターンを形成するドットのドット径が規定より小さい場合(図6(d)のケース)を例に説明する。
【0050】
いま、認識可能なドット径と計測したドット径の寸法が図8に示す値とする。この場合、主走査方向、副走査方向の変倍率は次のように計算される。
主走査:160÷ 90=170%
副走査:160÷100=160%
図6(b)や(c)のケースの場合にも、同様にして主走査方向、副走査方向の変倍率を計算することができる。
【0051】
<ステップ4003>
ステップ4001で切り出した原稿画像データについて、ステップ4002で算出した変倍率で主走査方向、副走査方向をそれぞれ独立に変倍する。この結果、読取り部102で読み取られる地紋パターンを形成するドットのドット径を認識可能なドット径とすることができる。
【0052】
例えば、読取り部102で読み取った地紋パターンを形成するドットのドット径が薄くて縦長のドットであった場合、上記変倍率にて主走査方向、副走査方向それぞれ独立に変倍することで、認識するのに想定しているドット径とすることができる。
【0053】
<ステップ4004>
ステップ4003で変倍した原稿画像データ(所定領域の原稿画像データ)を2値化する。変倍しないで2値化した場合、例えば、図6(d)のケースでは、黒画素部が足りなくなるが、変倍することで、ドットが規定の大きさになるので、地紋パターンのドットを検知できるようになる。
【0054】
図9(a)は変倍しないで2値化したドットの例である(塗りつぶし部)、この場合、ドットが規定より小さいので(読取り部読み取ったドットが小さい)、本来の黒画素Bの部分が足りなくドットを検知できなくなる。一方、図9(b)は変倍して2値化したドットの例である。この場合、変倍によりドットが大きくなり、検知できる状態になる。
【0055】
<ステップ4005>
ステップ4003で変倍処理することにより、読取り部102で読み取られた原稿画像データに含まれている地紋パターンのドットの並びがくずれ、後段の地紋パターン検出部220で地紋パターンを検知できない可能性が生じる。そこで、あらかじめ地紋パターン検知用のマスクパターン(標準パターンデータ)も変倍しておく。変倍率はステップ4002で算出した値とする。
【0056】
地紋パターン検出部220では、所定領域内の原稿画像データを変倍し2値化した画像データについて、変倍したマスクパターンをもとに地紋パターン検出処理を実施する。これにより地紋パターンが確実に検知可能になる。
【0057】
図10に具体例を示す。図10(a)は、変倍なしの地紋パターンと該地紋パターン検知用のマスクパターンの関係を示した図である。ここで、塗りつぶし部が地紋パターンのドット、Bがマスクパターンの黒画素である。これであれば問題はない。
【0058】
図10(b)は、原稿画像データを変倍したときの地紋パターンとマスクパターンの関係を示した図である。このように、変倍を行うと、マスクパターンの黒画素Bと地紋パターンの実際のドット(塗りつぶし部)がずれ、地紋パターンを検知できなくなる可能性が生じる。
【0059】
図10(c)は、原稿画像データを変倍し、更にマスクパターンも同様に変倍した場合の、地紋パターンとマスクパターンの関係を示した図である。このように、変倍した地紋パターンに伴い、マスクパターンの黒画素の位置も変倍に応じて変更することで、地紋パターンに合わせることができるため、地紋パターンが確実に検知可能になる。なお、変倍したマスクパターンはメモリ107やHDD108に格納しておけばよい。
【0060】
本実施例によれば、読取り部102で読み取られた原稿画像データについて、主走査方向、副走査方向それぞれ独立に変倍処理を実施し、ばらついたドット径を、地紋パターンのドットの認識可能なドット径に補正することで、地紋パターンを形成するドットを確実に検知できるようになり、地紋パターンの検知精度が向上する。さらに、地紋パターン検知用のマスクパターンも変倍することで、地紋パターンの検知精度が更に向上する。また、読取り部で読み取られた原稿画像データの所定領域のみを切出して、ドット補正処理、地紋パターン検知処理に供するため、広域の画像を扱う場合でも処理の無駄が省ける。
【0061】
図11は、図4のドット径補正部210におけるドット補正処理の別の実施例(実施例2とする)のフローチャートを示したものである。ここで、ステップ5001が図7のステップ4001と同様に領域指定手段として機能する。または、ステップ5002、5003が2値化手段として機能する。
【0062】
本実施例は、読取り部102で読み取られた原稿画像データについて、先の実施例1のように変倍処理を実施することなく、直接、2値化処理にてぱらついたドット径を地紋パターンのドットの認識可能なドット径に補正するものである。
【0063】
<ステップ5001>
ここでの処理は、図7のステップ4001の場合と同様である。すなわち、読取り部102で読み取られた原稿画像データについて、領域を指定し、該領域の原稿画像データのみを切出す。具体的には、画素数をカウントして切り出したい画像領域(ドット条件の良い領域)を指定して画像データを切出す。以降、この切り出した原稿画像データを対象にドット補正処理、パターン検知処理を実施する。
【0064】
<ステップ5002>
ステップ5001で切り出した原稿画像データを2値化したとき、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットのドット径が認識可能なドット径の範囲になるように2値化閾値を算出する。
【0065】
具体的には、先の実施例1と同様に、地紋パターンを埋め込んだ原稿画像データを作成する際に、ある部分に該地紋パターンを形成するドット(例えば、1ドット)を付加しておく。その結果、地紋パターンが埋め込まれた原稿画像データと共に該ドットが、画像形成装置で印字され、本画像処理装置の読取り部102で読み取られる。ステップ5001で領域を指定する際、その領域内に当該ドットが含まれるようにする。そして、切出した原稿画像データ内の当該ドットの状態と地紋パターン検知用のマスクパターンのドットの状態とから最適な2値化閾値を算出する。以下、具体例で説明する。
【0066】
いま、地紋パターン検知用のマスクパターンのドットは図12とする。一方、切り出した原稿画像データ内の上記ドット(読取り部102で読み取られる地紋パターンを形成するドットも、これと同じである)は、図13(a)に示す状態とする。ここで、画素値は0(真白)から255(真黒)のレベルをとるとしている。なお、図13(b)は、該ドットは図6(c)に対応することを示している。
【0067】
図12、図13より、黒画素Wの領域の最大値が130、黒画素Bの領域の最小値が210とすると、2値化閾値が
130<閾値<210
の範囲であれば、読み取られた地紋パターンについて、白でなければならない領域に白くなり、黒くならなければならない領域は黒くなる。
【0068】
<ステップ5003>
ステップ5001で切り出した原稿画像データを、ステップ5002で算出した閾値で2値化する。これにより、地紋パターン検知部220では、マスクパターンとのパターンマッチング時、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを確実に検知でき、地紋パターン検知精度が向上する。
【0069】
例えば、図13(a)の例の場合、上記範囲の209を閾値として2値化すると、2値化画像は図14(a)に示すようになる。これは、図12に示したマスクパータンのドット検知の条件に当てはまり、読取り部102で読み取られた地紋パターンの規定より大きなドット(例えば、図13(b)のケース)も確実に検知できるようになる。
【0070】
一方、従来の閾値の決め方は、(画像の最大値+画像の最小値)/2とするのが一般的である。この場合、図13(a)の例では、閾値は115となり、この閾値で2値化すると、2値化画像は図14(b)に示すようになる。これは、図12に示したマスクパターンの条件に当てはまらないので、地紋パターンのドットを検知できない。
【0071】
本実施例では、切り出した原稿画像データを2値化する過程で、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットがマスクパターンの検知条件に当てはまるように補正するため、ドット径補正部210のドット補正処理は、先の実施例1に比べて簡単になる。しかも、地紋パターン検出部220では、本来のマスクパターンを用いて、切り出した原稿画像データ内の地紋パターンを確実に検出できるようになる。
【0072】
なお、先の実施例1と同様に、読取り部で読み取られた原稿画像データの所定領域のみを切出して、ドット補正処理、地紋パターン検知処理に供するため、広域の画像を扱う場合でも処理の無駄が省ける。
【0073】
図15は、図14のドット径補正部210におけるドット径補正処理の更に別の実施例のフローチャートを示したものである。本実施例は、地紋パターンを形成するドットの状態により、これまで説明した実施例1と2を使い分けるものである。
【0074】
図15において、ステップ6001は図7や図11のステップ4001や5001に対応し、枠6100で囲ったステップ6003,6004は図11のステップ5002,5003に対応し、また、枠6200で囲ったステップ6005〜6008は図7の4002〜4005に対応するので、これらの詳しい説明は省略する。以下、ステップ6002について説明する。ここで、ステップ6002が補正処理判別手段として機能する。
【0075】
実施例2の閾値補正処理は、処理が簡単であるが、ドット径があまりにも小さくなった場合、ドット検知に必要な黒領域がなくなる懸念がある。その場合、実施例1の変倍補正処理を選択し、ドットを拡大して対応する。条件式は黒画素(B)の最小値>白画素(W)の最小値とし、該条件式を満足する場合は実施例2の処理(6100)を選択し、満足しない場合は実施例1の処理(6200)を選択するようにする。
【0076】
いま、地紋パターン検知用のマスクパターンのドットを図16(a)とする(ドット検知の条件)。一方、読取り部102で読み取られる地紋パターンを形成するドットの状態を図16(b)とする(図6(d)のケース)。実施例2を適用すると、白画素(W)の最大値は10、黒画素の最小値も10なので、11の閾値で2値化しなければならない。しかし、11の閾値で2値化すると、必要なドットが一つなくなり(ドット検知の条件から外れる)、ドット検知ができなくなる。図17(a)は、閾値11で、2値化した場合を示している。すなわち、ドットがあまりにも小さくなっていると、実施例2では対応できない。そこで、実施例1を適用し、ドットを拡大する。この場合、ドットは図17(b)のようになり、ドット検知の条件を満たすようになる。
【0077】
逆に、読取り部102で読み取られる地紋パターンを形成するドットが、あまりにも大きくなりすぎると(例えば、図6(c)のケース)、実施例1では縮小率が大きくなり、変倍によりドットとドットの間が狭くなりすぎて、たとえマスクパターンを変倍しても、地紋パターン検知が困難になる懸念が生じる。この場合には、実施例2で対応すればよい。
【0078】
ドット検知用のマスクパターンを構成するマトリクス(例えば、図16(a))の黒画素(B)の最小値が白画素(W)の最大値を超えていれば、真黒になり、ドットがなくなることは無く、実施例2が適用できる。そこで、読取り部102にて読み取られた原稿画像データのある部分に付加されている地紋パターンを形成するドット(例えば、図13,図16(b))のBの最小値とWの最小値を比較し、Bの最小値>Wの最大値を満足する場合は実施例2を選択し、満足しない場合には実施例1を選択するようにする(ステップ6002)。これにより、例えば、図6の(b)〜(d)に示した全てのドットについてドット検知が可能になる。例えば、大きなドット径が経時等により小さくなり、実施例2では対応できなくなっても、実施例1で対応可能となる。
【符号の説明】
【0079】
101 操作表示部
102 読取り部
103 プロッタ部
104 地紋検知処理部
105 画像データ処理部
210 ドット径補正部
220 地紋パターン検出部
230 不正コピー判別部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2008−035376号公報
【特許文献2】特開2008−042746号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像を読み取る画像読取手段と、前記画像読取手段により読み取られた原稿画像データを処理する画像データ処理手段を備え、前記画像データ処理手段で処理された原稿画像データを印刷、蓄積又は他装置へ送信する画像処理装置において、
前記画像読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを、該地紋パターンのドットとして認識可能なドット径に補正するドット径補正手段と、
前記ドット径補正手段にて補正された原稿画像データをもとに地紋パターンを検出する地紋パターン検出手段と、
前記地紋パターン検出手段による地紋パターン検出結果により、前記原稿画像データが印刷又は他装置への転送を禁じられているものか否か判別する判別手段と、
前記原稿画像データが印刷又は他装置への転送を禁じられている場合、該原稿画像データを判読不可能な画像データに変換する画像変換手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ドット径補正手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように主走査方向、副走査方向に独立に変倍する変倍手段を有し、該変倍手段によりドット補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変倍手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターン形成するドットのドット径を計測して、認識可能なドット径になるように変倍率を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ドット径補正手段は、前記読取手段より読み取られた原稿画像データの変倍に合わせて、地紋パターン検知用のマスクパターンを変倍するマスク変倍手段を更に有することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ドット径補正手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように2値化する2値化手段を有し、該2値化手段によりドット補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記2値化手段は、前記読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットのドット径が地紋パターン検知用マスクパターンのドット検知条件に合うように、前記原稿画像データを2値化する閾値を算出することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ドット径補正手段は、
前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように主走査方向、副走査方向に独立に変倍する変倍手段と、
前記読取手段により読み取られた原稿画像データについて、該原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットを認識可能なドット径になるように2値化する2値化手段と、
前記読取手段により読み取られた原稿画像データ内の地紋パターンを形成するドットの状態により、前記変倍手段あるいは前記2値化手段のいずれかを選択してドット補正を実施せしめる補正処理判別手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正処理判別手段は、黒画素の最小値>白画素の最大値を満足する場合には前記2値化手段を選択し、満足しない場合には前記変倍手段を選択することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記ドット径補正手段は、前記読取手段にて読み取られた原稿画像データの領域を指定する領域指定手段を有し、該指定された領域の原稿画像データについてドット処理を実施することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−199404(P2011−199404A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61432(P2010−61432)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】