画像処理装置
【課題】流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行する。
【解決手段】画像処理部60は、行及び列に配列した画素値を含むRGB色空間の画像データの画素値の1行を2行出力する処理を行うに際して、行に直交する列方向を優先して画素値を出力する。次に、出力された画素値を用い、C,M,Yのインクに対応する画素値については、列方向の2個の画素値の平均化を行うと共に、平均化した画素値を2個複製することにより、Kのインクに対応する画素の個数に合わせた画素群とし、画素群に含まれる画素値を奇数ライン及び偶数ラインに分解する。続いて、分解された2行の画素値のうちいずれか1行をC,M,Yのインク用の画素値とすると共に、分解された各行をKのインク用の画素値として含む印刷データをRAM54へ出力する。
【解決手段】画像処理部60は、行及び列に配列した画素値を含むRGB色空間の画像データの画素値の1行を2行出力する処理を行うに際して、行に直交する列方向を優先して画素値を出力する。次に、出力された画素値を用い、C,M,Yのインクに対応する画素値については、列方向の2個の画素値の平均化を行うと共に、平均化した画素値を2個複製することにより、Kのインクに対応する画素の個数に合わせた画素群とし、画素群に含まれる画素値を奇数ライン及び偶数ラインに分解する。続いて、分解された2行の画素値のうちいずれか1行をC,M,Yのインク用の画素値とすると共に、分解された各行をKのインク用の画素値として含む印刷データをRAM54へ出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、より詳しくは、所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと前記所定解像度よりも高い解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備えた流体吐出装置が利用する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置としては、所定の画像処理を行う種々のメインユニットを直列に接続したメインユニット群と、複数のパスユニットを直列に接続したパスユニット群とを備えているものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。例えば、特許文献1の装置では、メインユニット群には、白黒エッジ処理ユニットによって4画素の階調値が平均化された平均化データが順次転送され、パスユニット群には、色変換ユニットによって生成された標準エッジデータとノイズデータとが、メインユニット群に平均化データが転送されるのと同期して順次転送される。こうしてパスユニット群を転送されたデータは、ブロック内平滑化ユニットに入力されて、かかるブロック内平滑化ユニットによる平滑化処理に供される。この装置では、画像処理をハードウェアにより実現する画像出力装置において、画像処理の内容に関する設計変更等に柔軟に対応しうる構成を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76306号公報
【特許文献2】特開2007−82090号公報
【特許文献3】特開2007−28262号公報
【特許文献4】特開2007−20046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の印刷品質の高品質化に対応するため、印刷に用いるインク色の増加やインクを吐出するノズルの高密度化などが行なわれる場合がある。特に、特定のインク色のみ解像度をより高めることが考えられる。このような場合、インク色毎に異なる処理が望まれるなど、印刷データを作成する処理が複雑化してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる画像処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像処理装置は、
所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと前記所定解像度のn倍(nは正数)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備え、該第1種別及び第2種別の流体を所定の媒体上へ吐出する流体吐出装置が利用する画像処理装置であって、
データを記憶する記憶手段と、
行及び列に配列した画素値を含む画像データの前記画素値をn行(nは正数)分出力するに際して、該行に直交する列方向に配列された前記画素値を行方向に配列された前記画素値に優先して出力する画素値出力手段と、
前記出力された画素値を用い、前記所定解像度に基づく前記第1種別の流体に対応する画素の個数と、前記所定解像度のn倍に基づく前記第2種別の流体に対応する画素の個数と、の数を合わせた画素群とする画素調整手段と、
前記画素群に含まれる画素値を第1行から第n行まで分解する分解手段と、
前記分解した各行の画素値を用い、前記第1種別及び前記第2種別の流体用の画素値のハーフトーン処理を実行するハーフトーン処理手段と、
前記ハーフトーン処理された各行の画素値のうち、所定の1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記n行のそれぞれを前記第2種別の流体用の画素値とした処理後データを前記記憶手段へ出力するデータ出力手段と、
を備えたものである。
【0008】
この画像処理装置では、行及び列に配列した画素値を含む画像データの画素値の1行をn行(nは正数)出力する処理を行うに際して、行に直交する列方向を優先して画素値を出力する。次に、出力された画素値を用い、所定解像度に基づく前記第1種別の流体に対応する画素の個数と、所定解像度のn倍に基づく第2種別の流体に対応する画素の個数と、の数を合わせた画素群に調整し、画素群に含まれる画素値を第1行から第n行まで分解する。続いて、分解した各行の画素値を用い、第1種別及び第2種別の流体用の画素値のハーフトーン処理を実行する。そして、ハーフトーン処理された各行の画素値のうち、所定の1行を第1種別の流体用の画素値とすると共に、n行のそれぞれを第2種別の流体用の画素値とした処理後データを出力する。このように、n行のデータを出力するに際して、列方向に連続する画素値を出力するため、解像度の低い第1種別の流体の画素に対しては、まとめて処理する画素群としやすい。また、解像度の高い第2種別の流体の画素については、それぞれのまま処理すれば高い解像度を維持することができる。したがって、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。また、処理後データは第1種別の流体用の画素値が1行に対し第2種別の流体用の画素値がn行あることから、所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと所定解像度のn倍の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備えた流体吐出装置に適したデータとすることができる。
【0009】
本発明の画像処理装置において、前記画素調整手段は、前記第1種別の流体に対応する画素の個数と前記第2種別の流体に対応する画素の個数とを合わせた画素群とするに際して、前記第1種別の流体に対応する画素値については前記列方向のn個の画素値の平均化を行うと共に、該平均化した画素値を前記n個複製することにより前記第1種別の流体に対応する画素の個数を前記第2種別の流体に対応する画素の個数に合わせた画素群とし、前記データ出力手段は、前記分解された第n行の画素値のうちいずれか1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記分解された各行を前記第2種別の流体用の画素値として含む処理後データを出力するものとしてもよい。こうすれば、列方向にn個連続して出力された画素値を並び順に平均化することが可能であるため、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0010】
本発明の画像処理装置において、前記流体吐出装置は、前記所定解像度の2倍(n=2)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルが形成された吐出ヘッドを備えており、前記画素値出力手段は、前記画像データの前記画素値を2行(n=2)出力する処理を行うものとしてもよい。こうすれば、流体の種別に応じて2倍異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0011】
本発明の画像処理装置において、前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施す第1処理部と、第2種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施すn個の第2処理部と、を備えているものとしてもよい。こうすれば、解像度の異なる画素値に対して、複数の処理部を用いて並行してハーフトーン処理を実行可能であるため、処理をより円滑にすると共に、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。
【0012】
本発明の画像処理装置において、前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備え、且つ前記第2種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備えているものとしてもよい。こうすれば、複数のハーフトーン処理のうちいずれかを適用することが可能であるため、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。ここで、例えば、第1のハーフトーン処理として、ディザ法を用いた処理を行うものとしてもよいし、第2のハーフトーン処理として、誤差拡散法を用いた処理を行うものとしてもよい。
【0013】
本発明の画像処理装置は、第1の色空間の画素値を、該第1の色空間と異なり前記第1種別及び第2種別の流体に合わせた第2の色空間の画素値に変換する色空間変換手段、を備え、前記画素値出力手段は、前記第1の色空間の画像データから前記第1の色空間の画素値を前記色空間変換手段へ出力し、前記画素調整手段は、前記変換された第2の色空間の画素値を前記出力された画素値として用いるものとしてもよい。こうすれば、第1の色空間の画像データから、吐出ヘッドに合わせた第2の色空間に変換した画素値に対して、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンターシステム10の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】印刷ヘッド44の構成の概略を示す構成図。
【図3】画像処理部60の構成の概略の一例を示す構成図。
【図4】平均化ユニット65の構成の概略の一例を示す説明図。
【図5】入力分解ユニット66の構成の概略の一例を示す構成図。
【図6】出力選択ユニット67の構成の概略の一例を示す構成図。
【図7】印刷データ生成処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図8】画素値の出力態様の一例を示す説明図。
【図9】定解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図。
【図10】一部倍解像度処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図11】一部倍解像度モードでの処理の概要を示す説明図。
【図12】入力分解ユニット66での処理の概要の一例を示す説明図。
【図13】一部倍解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態であるプリンターシステム10の構成の概略の一例を示す構成図である。図2は、印刷ヘッド44の構成の概略を示す構成図である。図3は、画像処理部60の構成の概略の一例を示す構成図である。図4は、平均化ユニット65の構成の概略の一例を示す説明図である。図5は、入力分解ユニット66の構成の概略の一例を示す構成図である。図6は、出力選択ユニット67の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態のプリンターシステム10は、図1に示すように、プリンター20へデータ通信可能に接続され画像データを出力するパソコン(PC)11と、記録紙Sにインクを吐出して印刷対象である画像データの印刷処理を行うプリンター20と、を備えている。
【0016】
PC11は、ユーザーが使用する情報処理装置として構成されたパソコンである。このPC11は、装置全体の制御を司るコントローラーと、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD15と、プリンター20などの外部機器とのデータの入出力を行う図示しないネットワークインターフェイス(I/F)とを備えている。コントローラーは、各種制御を実行するCPU12や各種制御プログラムを記憶するフラッシュROM13、データを一時記憶するRAM14などを備えている。また、PC11は、ユーザーが各種指令を入力するキーボード及びマウス等の入力装置17や、各種情報を表示するディスプレイ18などを備えている。このPC11は、ディスプレイ18に表示されたカーソル等をユーザーが入力装置17を介して入力操作するとその入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。
【0017】
プリンター20は、印刷処理を実行するプリンター部30と、メモリーカードMCとのデータのやりとりを行うメモリーカードコントローラー33と、装置全体をコントロールするメインコントローラー50と、を備えている。プリンター部30は、プリンターASIC31と印刷機構32とを備えている。プリンターASIC31は、印刷機構32を駆動制御する機能を備えている。印刷機構32は、ベルト37によりキャリッジ軸48に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ41と、インクに圧力をかけノズル42からインク滴を吐出する印刷ヘッド44と、各色のインクを収容しこの収容したインクを印刷ヘッド44へ供給するカートリッジ45と、駆動モーター38により駆動され記録紙Sを搬送する紙送りローラー39とを備えている。印刷ヘッド44は、キャリッジ41の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により、印刷ヘッド44の下面に設けられたノズル42から各色のインクを吐出するものである。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。カートリッジ45は、本体側に装着され、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)などの各色のインクを個別に収容しており、図示しないチューブを介して印刷ヘッド44へインクを供給する。メインコントローラー50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュROM53と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM54と、PC11などの外部機器とのデータの入出力を行うI/F55と、画像データを印刷データへ変換する機能を有する画像処理部60と、を備えている。このメインコントローラー50は、PC11や、メモリーカードコントローラー33を介してメモリーカードMCなどから画像データを受信すると共に、印刷処理を実行するよう印刷機構32を制御する。メモリーカードMCから入力された画像データは、例えば、印刷ヘッド44に合わせたドットの解像度(例えば600dpi,300dpiなど)のRGBデータとしてRAM54に記憶される。なお、入力された画像データがRGBデータ以外のときにはCPU52によりRGBデータに色変換したり、解像度が上記以外のときには隣接する画素同士の間に補間により画素を生成したり所定の割合で画素を間引いたりしてもよい。
【0018】
印刷ヘッド44は、図2に示すように、CMYの各色のインクを個別に吐出可能なノズル42C,42M,42Yが記録紙Sの搬送方向(副走査方向)に沿って配置されたノズル群43C,43M,43Yと、ブラック(K)のインクを吐出可能なノズル42Kが副走査方向に沿って配置されたノズル群43K1,43K2とが形成されている。ここで、各ノズル群の構成について、シアン(C)のノズル群43Cを例に挙げて説明する。ノズル群43Cは、2つのノズル列C1,C2からなり、各ノズル列C1,C2はそれぞれピッチが所定長さLとなるようにノズル42Cが配置されている。また、ノズル列C1のノズル42Cとノズル列C2のノズル42Cとは副走査方向に沿って千鳥(ジグザグ)になるよう配置され、そのピッチが所定長さLの半分の長さL/2となっている。本実施形態では、所定長さLはドットが150dpiの解像度となるように設定されており、ノズル列C1によって形成されるドットとノズル列C2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、シアン(C)のドットの解像度は300dpiとなる。マゼンタ(M)のノズル群43Mおよびイエロー(Y)のノズル群43Yも同様に構成され、得られる解像度は300dpiとなる。また、ブラック(K)のノズル群43K1,43K2も同様にそれぞれ2つのノズル列K11,K12および2つのノズル列K21,K22からなる。さらに、ノズル群43K1のノズル42Kとノズル群43K2のノズル42Kとの副走査方向のピッチが長さL/2の半分の長さL/4となるよう配置されている。このため、ノズル群43K1によって形成されるドットとノズル群43K2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、ブラック(K)のドットの解像度は600dpiとなる。このように、印刷ヘッド44は、合計10列のノズル列を備え、CMYのドットの解像度が300dpi、Kのドットの解像度が600dpiとなるよう構成されている。即ち、CMYのノズル密度に比してKのノズル密度が2倍(n=2)高密度となっている。このように、印刷ヘッド44は、所定解像度(300dpi)を有するCMYのノズル42C,42M,42Yと、所定解像度のn倍(n=2)の解像度を有するKのノズル42Kとが形成されている。この印刷ヘッド44は、各ノズルに個々に設けられた圧電素子に電圧を印加して変形させ、これにより加圧されたインクが吐出されることで記録紙Sにドットを形成する。この印刷ヘッド44は、圧電素子の変形に応じて大ドット、中ドット及び小ドットを形成可能に構成されているが、本発明の主要部ではないことから、詳細な説明は割愛する。
【0019】
画像処理部60は、図1,3に示すように、ライン取得ユニット61や、交互出力ユニット62、色空間変換ユニット63、濃度補正ユニット64、平均化ユニット65、入力分解ユニット66、出力選択ユニット67、デコードユニット68、印刷データ出力ユニット69、ハーフトーンユニット70などを備えている。ライン取得ユニット61は、RAM54に記憶されている画像データから2行(2ライン)の画素値を取得する機能を有する回路により構成されている。交互出力ユニット62は、入力した2行の画素値のうち、行に直交する列方向を優先して出力する(後述図8参照)機能を有する回路により構成されている。色空間変換ユニット63は、図示しないルックアップテーブル(LUT)を用い、RGB色空間の画像データをCMYK色空間の印刷データへ変換する機能を有する回路により構成されている。LUTは、RGBの画素値とCMYKの画素値とを経験的に対応付けた対応関係情報として構成されている。濃度補正ユニット64は、図示しないテーブルを用い、出力先の各ラインごとに最適な画素値となるよう画素値の補正を実行する機能を有している。
【0020】
平均化ユニット65は、図4に示すように、CPU52からの信号ave#enに基づいて複数(n個)の画素値を平均化する機能及び、平均化した画素値をn個複製して出力する機能を有する回路(平均化部65a)として構成されている。この平均化ユニット65は、例えば、8色など8種のインク種別に応じた画素値を処理可能なように、8個の平均化部65aを備えている。入力分解ユニット66は、図5に示すように、CPU52からの信号linesel,unitenなどに基づいて、入力した画素値を1画素単位で交互に切替、奇数行の画素値と偶数行の画素値との分離を行う機能を有する回路として構成されている。この入力分解ユニット66は、4つのインセルコア66a,66b,66c,66dと、これらインセルコアのそれぞれに接続されたスプリット66eとを備えている。本実施形態においては、C,M,Yのカラーデータと、K1の黒データ、K2の黒データの3種類を3つのインセルコアを用いて同時処理可能となっている。インセルコアは、8つの画素値を処理可能に構成されており、入力分解ユニット66としては、4つのインセルコアにより32個のデータに分離可能になっている。なお、4つめのインセルコアは予備であるが、例えばインク色が3種類以上の場合などに利用することができる。
【0021】
ハーフトーンユニット70は、図3,5に示すように、4つのインセルコア66a〜66dにそれぞれ接続された、第1ハーフトーンユニット71,第2ハーフトーンユニット72,第3ハーフトーンユニット73,第4ハーフトーンユニット74の4つのユニット(処理部)を備えている。ハーフトーンユニット70は、カラーデータ(C,M,Y)の画素値にハーフトーン処理を施す第1ハーフトーンユニット71と、黒データ(K1,K2)の画素値にハーフトーン処理を施す2個の第2ハーフトーンユニット72,第3ハーフトーンユニット73と、予備の第4ハーフトーンユニット74とを備えている。ハーフトーンユニット70は、上記入力分解ユニット66と同様に、C,M,Yのカラーデータと、黒データ(K1)、黒データ(K2)の3種類を3つのユニットを用いて同時処理可能となっている。これは、印刷処理時に、カラーデータと、黒データK1と、黒データK2とのインク吐出位置が異なることから、カラーデータの1個のハーフトーンユニット、およびn倍の解像度を有するインク種に対して最低n個のハーフトーンユニットを要することによる。こうすれば、効率よく各色を同時処理することができる。
【0022】
また、各々のハーフトーンユニット71〜74は、2種類のハーフトーン処理を実行可能な回路を備えている。処理方法としては、例えば、複数のテーブルを引くことを要し処理速度が遅いが、データを可逆圧縮・解凍可能な機能を有しRAM54の使用領域を低減可能な誤差拡散法を実行するrdエンコード部70aと、RAM54の使用領域を要するが処理速度が速いディザ部70bとの2つの実行部を有している。このハーフトーンユニット70は、各8ビットのCMYKデータを各2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を行なう。このハーフトーン処理は、本実施形態では要求される印刷品質に応じてディザ法と誤差拡散法とを選択して行なうものとした。ここで、ディザ法は、予め設定されたディザマトリックスによって与えられる閾値と各画素の階調値との大小比較によって、ドットのオン/オフに2値化するものである。一方、誤差拡散法は、注目画素の階調値と所定の閾値とを大小比較してドットのオン/オフに2値化し、2値化後の階調値と元の階調値との差分である誤差を注目画素の周囲の未処理画素に一定の割合で拡散するものである。なお、CMYKデータ上の左上隅の画素から1画素ずつ左から右へ,上から下へと順に誤差拡散法により処理する場合、未処理画素は注目画素の右隣と左斜め下,真下,右斜め下の計4つの画素が該当する。このように、誤差拡散法は、誤差を周囲に隣接する画素に拡散してその影響を小さくすることができるため、ディザ法に比して処理速度は遅くなるものの良好な画質が得られる。このため、本実施形態では、通常の印刷品質且つ高速処理が要求される場合にはディザ法を選択し、より高品質且つが要求される場合には誤差拡散法を選択するものとした。このディザ法及び誤差拡散法のいずれかを用いることで、例えば、CMYKデータを、ドットの有無を表すCMYKの印刷データに変換することができる。
【0023】
ハーフトーンユニット70では、rdエンコード部のエンコード処理とデコードユニット68のデコード処理とが別ユニットになっており、エンコード及びデコード処理を連続又は別々に実行可能に構成されている。このため、rdエンコード部によりエンコード処理されたデータを一旦RAM54に出力させ、あとでデコードユニット68によりデコード処理を実行可能となっている。このエンコード処理では、所定の量子化テーブルを参照し画素の階調値を量子化データにコード化する処理を行う。また、デコード処理では、コード化したデータをデコードして、ドットの発生位置を決定するという処理を行う。この具体的な処理内容については、特開2007−82090号公報や特開2007−76306号公報などに詳しく記載されており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0024】
出力選択ユニット67は、図6に示すように、CPU52からの信号htsel,colsel,outselに基づいて、4つのハーフトーンユニットによりハーフトーン処理されたデータから必要な画素値を選択して出力する機能を有する回路により構成されている。印刷データ出力ユニット69は、出力選択ユニット67により選択された画素値を入力し、各々の色種別(C,M,Y,K1,K2)に応じてRAM54に設けられたバッファ領域にそれぞれの画素値を処理後データとして出力する機能を有している。
【0025】
また、図3に示すように、交互出力ユニット62や、色空間変換ユニット63、濃度補正ユニット64、平均化ユニット65、入力分解ユニット66、出力選択ユニット67、ハーフトーンユニット70は、それぞれパスユニット82〜87を備えている。このパスユニットは、パスユニットが接続されているメインユニットにデータが伝達するのと同期して、データが順次伝達する構成となっている。こうすれば、パスユニットを転送されている種々のデータを、対応するメインユニットに容易に取り込むことができ、回路の拡張性を高めることができる。また、取り扱うデータの容量が増加し、メインユニット間のバス幅が不足した場合にも、パスユニットを利用することでより多くのデータを扱うことが可能になる。
【0026】
次に、こうして構成された本実施形態のプリンター20の動作、特に、PC11やメモリーカードMCから出力されたRGB色空間の画像データを、プリンター20が直接印刷する処理について説明する。このプリンター20では、画像全体を単一の解像度(例えば300dpi)で印刷処理する定解像度モード印刷(通常モード)と、C,M,Y(カラー)の解像度(例えば300dpi)に比してK(黒)が2倍の解像度(600dpi)となる一部倍解像度モード印刷とを選択することができる。図7は、プリンター20のCPU52が実行する、印刷データ生成処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図示しない印刷設定画面で、印刷条件を設定したあと、ユーザーにより印刷実行ボタンが押下されたのちに実行される。
【0027】
このルーチンが実行されると、まず、CPU52は、設定されている解像度モードを調べ(ステップS100)、定解像度モードが設定されているときには、画像処理部60の各ユニットへ指令する指令信号の内容を定解像度モードに合わせた内容に設定する(ステップS110)。次に、CPU52は、設定された指令信号を画像処理部60の各ユニットへ出力し(ステップS120)、これを受けた各ユニットが指令信号に基づいて印刷データの生成処理を実行し(ステップS130)、このルーチンを終了する。なお、300dpiのRGB画像データを誤差拡散法で処理する場合、定解像度モードの信号設定を以下のものとしてもよい。以下、この指令信号例について具体例として説明する。平均化ユニット65では、例えば、信号ave#en1〜8を無効とし、平均化処理を無効化する。また、入力分解ユニット66の信号linesel1〜4を奇数とし、信号uniten1を有効、信号uniten2〜4を無効に設定する。こうすれば、C,M,Y,Kの全色の画素値を第1ハーフトーンユニット71のみで処理することができる。また、ハーフトーンユニット70の信号htselを誤差拡散法を用いるrd#encに設定し、デコードユニット68の信号outselをデコードユニット68を用いるrd#decに設定する。また、出力選択ユニット67の信号colselM(i,j)を、信号colsel1(1,1),colsel2(1,2),colsel3(1,3),colsel4(1,4),colsel5〜8(0,0)に設定する。こうすれば、第1ハーフトーンユニット71で処理した1〜4番、即ちC,M,Y,Kの各色の画素値をそのまま印刷データ(処理後データ)として出力することができる。なお、信号colselM(i,j)のMは、出力選択ユニット67のユニット番号、iはハーフトーンユニット70のユニットの番号、jは色データの番号を表す。
【0028】
図8は、色空間変換ユニット63に入力される画素値の出力態様の一例を示す説明図である。また、図9は、定解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図である。なお、図9では、ハーフトーンユニット70を3ユニットだけ示した。定解像度モードにおいては、ライン取得ユニット61で取得したラインのRGB画素値をそのまま色空間変換ユニット63へ出力するものとした。したがって、この定解像度モードでは、RGB色空間の画像データに含まれる2行の画素値を出力するに際して、行方向に配列した画素値を優先して出力するものとした(図8の左図)。次に、これを受けた色空間変換ユニット63が、LUTを用い、RGB色空間の画素値からCMYK色空間の画素値への変換を行う。次に、濃度補正ユニット64で濃度補正を行う。ノズル列43は製造誤差に起因してその内径や圧電素子の変形度が異なることがあることから、この誤差を補正する補正テーブルを予め記憶しておき、濃度補正ユニット64は、この補正テーブルを用いてインクの吐出量を補正する処理を行う。ここでは、濃度補正ユニット64では、CMYK色空間の画素値としてCMYK色空間のインク吐出量を用いて補正処理するものとした。次に、平均化ユニット65で平均化を行わずに、行方向に優先的に流れている各画素値が入力分解ユニット66に入力される。入力分解ユニット66では、行方向に優先的に流れている各画素値が奇数行と偶数行に分離され(図9参照)、そのうちの奇数行について、第1ハーフトーンユニット71で誤差拡散のエンコードが行われる。図9では、シアンを例にすると、「Ce」がエンコード済みのデータ、「Cd」がデコード済みのデータを表し、「Ca,b」のaが行番号、bが列番号を表す。例えば、Ce1,2は、エンコード済みの1行、2列目のシアンの画素値を表している。ハーフトーンユニット70で出力された全画素値のうち、必要な画素値を出力選択ユニット67で選択し、デコードユニット68へ出力する。デコードユニット68では、所定のデコード処理を施し、出力選択ユニット67及び印刷データ出力ユニット69を介して各色に対応するRAM54のバッファ領域に出力、記憶させる。
【0029】
一方、ステップS100で一部倍解像度モードが設定されているときには、CPU52は、画像処理部60の各ユニットへ指令する指令信号の内容を一部倍解像度モードに合わせた内容に設定する(ステップS140)。なお、具体的な指令信号については、詳しくは後述する。次に、CPU52は、設定された指令信号を画像処理部60の各ユニットへ出力し(ステップS150)、これを受けた各ユニットが指令信号に基づいて印刷データの生成処理を実行し(ステップS160)、このルーチンを終了する。ここで、一部倍解像度モードでの印刷データの生成処理について詳細に説明する。図10は、一部倍解像度モードでの処理の概要を示す説明図である。図11は、画像処理部60が実行する一部倍解像度処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。図12は、入力分解ユニット66での処理の概要の一例を示す説明図である。図13は、一部倍解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図である。なお、図13では、ハーフトーンユニット70を3ユニットだけ示した。この一部倍解像度処理では、図10に示すように、RGB色空間の画像をCMYK色空間の印刷データ(インク吐出量データ)に変換すると共に、カラーデータを列方向に平均化しカラーデータに対して黒データの解像度がn倍(ここではn=2)となる印刷データを生成する処理を行う。なお、生成した印刷データは、C,M,Y,K1,K2の各色毎にRAM54に記憶し、その後印刷ヘッドに出力される。
【0030】
画像処理部60では、図11に示す一部倍解像度処理が実行されると、ライン取得ユニット61がn行(ここではn=2)の画素値を入力し(ステップS200)、交互出力ユニット62が列方向を優先してn行の画素値を出力し(ステップS210)、色空間変換ユニット63がRGB色空間からCMYK色空間へ変換する(ステップS220)。次に、変換した画素値に対して濃度補正ユニット64がインク量補正を行う(ステップS230)。次に、平均化ユニット65が、濃度補正した画素値のうち、C,M,Yの色データに対して列方向の平均化を実行すると共に、2倍に複製する処理を行うと共に、K1,K2の色データに対してはそのまま出力し、Kの画素個数にC,M,Yの画素個数を合わせ画素値群とする処理を行う(ステップS240)。続いて、入力分解ユニット66が、入力した画素値を第1行から第n行に分解し(ステップS250)、ハーフトーンユニット70がそれぞれの画素行に対しハーフトーン処理を行う(ステップS260)。なお、ハーフトーン処理において、必要に応じてデコードユニット68がデコード処理を行う。そして、ハーフトーンされた各行の各画素値のうち、出力選択ユニット67が必要なものを選択し(ステップS270)、選択された画素値を印刷データとして各色に応じて設けられたRAM54のバッファ領域に出力し、記憶させ(ステップS280)、全画素に対してこの処理を行い(ステップS290)、このルーチンを終了する。
【0031】
この一部倍解像度処理において、600dpiのRGB画像データをディザ法で処理する場合について具体例として説明する。このとき、一部倍解像度モードの信号設定(図7のステップS140)を以下のものとしてもよい。例えば、平均化ユニット65では、信号ave#en1〜3を有効とし、信号ave#en4〜8を無効とする。こうすれば、C,M,Yの画素値に対して2行の平均化を行い半分の解像度(300dpi)とし、K1,K2に対してはそのままの解像度(600dpi)とすることができる。また、入力分解ユニット66の信号linesel1〜2を奇数、信号linesel3を偶数とし、信号uniten1〜3を有効に設定する。こうすれば、奇数行のC,M,Yの画素値を第1ハーフトーンユニット71で、奇数行のK1の画素値を第2ハーフトーンユニット72で、偶数行のK2の画素値を第3ハーフトーンユニット73で処理することができる。また、ハーフトーンユニット70の信号htselをディザ法を用いるditherに設定し、デコードユニット68の信号outselをデコードユニット68をスルーさせるthruに設定する。また、出力選択ユニット67の信号colselM(i,j)を、信号colsel1(1,1),colsel2(1,2),colsel3(1,3),colsel4(2,4),colsel5(3.4),colsel6〜8(0,0)に設定する。こうすれば、第1ハーフトーンユニット71で処理した1〜3番(C,M,Y)の各色の画素値、第2ハーフトーンユニット72で処理した4番(K1)、第3ハーフトーンユニット73で処理した4番(K2)を印刷データとして出力することができる。
【0032】
次に、画像処理部60の各ユニットでの動作について説明する。交互出力ユニット62では、図8の右図に示すように、データ行の長手方向に対して直行する短手方向の列方向の2行の画素データをペアにして出力する処理を行う。こうして出力された画素データを受けると、上述の定解像度モードと同様に、色空間変換ユニット63がRGB色空間の画素値をCMYK色空間の画素値に変換し、濃度補正ユニット64が濃度補正処理を行う。次に、図4下段に示すように、平均化ユニット65は、平均化を行わない色(K)は、入力した値をそのまま2つ出力する一方、平均化を行う色(C,M,Y)の画素値については奇数ラインと偶数ラインの平均値をとり、さらに平均した値を複製し2回出力する。これにより、平均化を行わない色との画素数を合わせることが可能であり、同時並行的にデータを流すことができる。次に、図12,13に示すように、入力分解ユニット66で偶数ラインと奇数ラインとに分解される。このとき、両ライン共にカラー(C,M,Y)については同じ値が格納されているから、実質的には黒(K1,K2)が奇数ラインと偶数ラインとに分解される。そして、インセルコア66aでは、奇数ラインの値を第1ハーフトーンユニット71側へ出力する。続いて、入力された奇数ラインに対して、第1ハーフトーンユニット71及び第2ハーフトーンユニット72によりディザ法のハーフトーン処理を行い、入力された偶数ラインに対して第3ハーフトーンユニット73によりディザ法のハーフトーン処理が行われる。このように、解像度の異なる画素値に対して、それぞれに適したパラメーターを用いて、それぞれのハーフトーン処理を実行することが可能であり、より適した印刷データを生成することができる。
【0033】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のRAM54が本発明の記憶手段に相当し、交互出力ユニット62が画素値出力手段に相当し、平均化ユニット65が画素調整手段に相当し、入力分解ユニット66が分解手段に相当し、ハーフトーンユニット70がハーフトーン処理手段に相当し、出力選択ユニット67及び印刷データ出力ユニット69がデータ出力手段に相当し、色空間変換ユニット63が色空間変換手段に相当し、各ハーフトーンユニット71〜74が第1処理部及び第2処理部に相当し、rdエンコード部70a及びディザ部70bが第1実行部及び第2実行部に相当する。また、第1種別の流体及び第2種別の流体がC,M,Y,Kのインクに相当し、ノズル42が吐出ノズルに相当し、プリンター20が流体吐出装置に相当する。
【0034】
以上詳述した本実施形態の画像処理部60によれば、行及び列に配列した画素値を含むRGB色空間の画像データの画素値の1行を2行出力する処理を行うに際して、行に直交する列方向を優先して画素値を出力する。次に、出力された画素値を用い、C,M,Yのインクに対応する画素値については、列方向の2個の画素値の平均化を行うと共に、平均化した画素値を2個複製することにより、Kのインクに対応する画素の個数に合わせた画素群とし、画素群に含まれる画素値を奇数ライン及び偶数ラインに分解する。続いて、分解された2行の画素値のうちいずれか1行をC,M,Yのインク用の画素値とすると共に、分解された各行をKのインク用の画素値として含む印刷データをRAM54へ出力する。このように、2行のデータを出力するに際して、列方向に連続する画素値を出力するため、解像度の低いC,M,Yの画素に対しては、列方向に2個連続して出力された画素値を並び順に処理可能であるため、平均化しやすい。また、解像度の高いKの画素については、それぞれのまま処理すれば高い解像度を維持することができる。したがって、インク種別に応じて2倍異なる異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。また、印刷データはC,M,Yの画素値が1行に対しKの画素値が2行あることから、ノズル42C,42M,42Yに対して2倍の解像度を有するノズル42Kが形成された印刷ヘッド44を備えたプリンター20に適したデータとすることができる。
【0035】
また、ハーフトーンユニット70は、C,M,Yの画素値にハーフトーン処理を施す第1ハーフトーンユニット71と、Kの画素値にハーフトーン処理を施す2個の第2ハーフトーンユニット72,第3ハーフトーンユニット73を備えているため、解像度の異なる画素値に対して、複数の処理部を用いて並行してハーフトーン処理を実行可能であり、処理をより円滑にすると共に、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。更に、ハーフトーンユニット70は、rdエンコード部70a及びディザ部70bを備えているため、複数のハーフトーン処理のうちいずれかを適用することが可能であり、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。更にまた、RGB色空間の画素値を、CMYK色空間の画素値に変換するため、RGB色空間の画像データから、印刷ヘッド44に合わせたCMYK色空間に変換した画素値に対して、インクの種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、平均化ユニット65によりn行の画素値を平均化し、且つn個複製してn倍の解像度の画素の個数と合わせるものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、解像度の低い画素については、間引き処理を行うものとしてもよい。また、n個複製するのに替えて、ダミーの画素値を加えるものとし、出力選択ユニット67でダミーの画素値を選択しないものとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、2行(n=2)のデータを処理するものとしたが、特にこれに限定されず、3行以上であってもよい。こうしても、上述した内容と同様の処理を行うことにより、色の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0039】
上述した実施形態では、ハーフトーンユニット70は、C,M,Yの画素値にハーフトーン処理を施す1つのハーフトーンユニットと、解像度が2倍のKの画素値にハーフトーン処理を施す2つのハーフトーンユニットとを備えるものとしたが、特にこれに限定されない。1つのハーフトーンユニットのみによっても、全画素値のハーフトーン処理自体を行うことはできる。なお、C,M,Y,K1の画素値にハーフトーン処理を施す1つのハーフトーンユニットと、K2の画素値にハーフトーン処理を施す1つのハーフトーンユニットとを備えるものとしてもよい。こうすれば、解像度が異なる画素を1つの処理部で処理するため最適とまではいえないが、同時並行的にハーフトーン処理を実行することはでき、好ましい。
【0040】
上述した実施形態では、ハーフトーンユニット70は、rdエンコード部70a及びディザ部70bの2種類のハーフトーン処理を実行するものとしたが、特にこれに限定されず、他のハーフトーン処理を実行可能なものとしてもよいし、いずれかを省略し、1つのハーフトーン処理を実行可能なものとしてもよい。こうしても、色の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0041】
上述した実施形態では、RGB色空間の画素値の状態で交互出力ユニット62により処理するものとしたが、色空間の変換はライン取得ユニット61の前から、入力分解ユニット66の前のいずれかのタイミングで行うものとすればよい。また、画像処理部60での処理から省略するものとしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、画像処理部60はC,M,Y,Kの色空間の画像データを生成し、印刷ヘッド44はC,M,Y,Kのインク(着色剤)を吐出するものとしたが、色の種類は、特にこれに限定されず、その他の色、例えば、ライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)、赤(R)、青(B)、紫(P)、橙(O)などのいずれか1以上の色を含む色空間としてもよいし、印刷ヘッド44はこれらの色のインクを吐出するものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、本発明の流体吐出装置をプリンタ20に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよいし、流体として吐出可能な固体を吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体を吐出する粉体吐出式記録装置としてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、画像処理部60は、回路により構成されているものとして説明したが、上述した処理を実現可能なものとすれば、特にこれに限定されない。
【符号の説明】
【0045】
10 プリンターシステム、11 パソコン(PC)、12 CPU、13 フラッシュROM、14 RAM、15 HDD、17 入力装置、18 ディスプレイ、20 プリンター、30 プリンター部、31 プリンターASIC、32 印刷機構、33 メモリーカードコントローラー、37 ベルト、38 駆動モーター、39 紙送りローラー、41 キャリッジ、42,42C,42M,42Y,42K ノズル、43,43C,43M,43Y,43K1,43K2 ノズル列、44 印刷ヘッド、45 カートリッジ、48 キャリッジ軸、50 メインコントローラー、52 CPU、53 フラッシュROM、54 RAM、55 ネットワークインターフェイス(I/F)、60 画像処理部、61 ライン取得ユニット、62 交互出力ユニット、63 色空間変換ユニット、64 濃度補正ユニット、65 平均化ユニット、65a 平均化部、66 入力分解ユニット、66a〜66d インセルコア、66e スプリット、67 出力選択ユニット、68 デコードユニット、69 印刷データ出力ユニット、70 ハーフトーンユニット、70a rdエンコード部、70b ディザ部、71 第1ハーフトーンユニット、72 第2ハーフトーンユニット、73 第3ハーフトーンユニット、74 第4ハーフトーンユニット、82〜88 パスユニット、MC メモリーカード、S 記録紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、より詳しくは、所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと前記所定解像度よりも高い解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備えた流体吐出装置が利用する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置としては、所定の画像処理を行う種々のメインユニットを直列に接続したメインユニット群と、複数のパスユニットを直列に接続したパスユニット群とを備えているものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。例えば、特許文献1の装置では、メインユニット群には、白黒エッジ処理ユニットによって4画素の階調値が平均化された平均化データが順次転送され、パスユニット群には、色変換ユニットによって生成された標準エッジデータとノイズデータとが、メインユニット群に平均化データが転送されるのと同期して順次転送される。こうしてパスユニット群を転送されたデータは、ブロック内平滑化ユニットに入力されて、かかるブロック内平滑化ユニットによる平滑化処理に供される。この装置では、画像処理をハードウェアにより実現する画像出力装置において、画像処理の内容に関する設計変更等に柔軟に対応しうる構成を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76306号公報
【特許文献2】特開2007−82090号公報
【特許文献3】特開2007−28262号公報
【特許文献4】特開2007−20046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の印刷品質の高品質化に対応するため、印刷に用いるインク色の増加やインクを吐出するノズルの高密度化などが行なわれる場合がある。特に、特定のインク色のみ解像度をより高めることが考えられる。このような場合、インク色毎に異なる処理が望まれるなど、印刷データを作成する処理が複雑化してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる画像処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像処理装置は、
所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと前記所定解像度のn倍(nは正数)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備え、該第1種別及び第2種別の流体を所定の媒体上へ吐出する流体吐出装置が利用する画像処理装置であって、
データを記憶する記憶手段と、
行及び列に配列した画素値を含む画像データの前記画素値をn行(nは正数)分出力するに際して、該行に直交する列方向に配列された前記画素値を行方向に配列された前記画素値に優先して出力する画素値出力手段と、
前記出力された画素値を用い、前記所定解像度に基づく前記第1種別の流体に対応する画素の個数と、前記所定解像度のn倍に基づく前記第2種別の流体に対応する画素の個数と、の数を合わせた画素群とする画素調整手段と、
前記画素群に含まれる画素値を第1行から第n行まで分解する分解手段と、
前記分解した各行の画素値を用い、前記第1種別及び前記第2種別の流体用の画素値のハーフトーン処理を実行するハーフトーン処理手段と、
前記ハーフトーン処理された各行の画素値のうち、所定の1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記n行のそれぞれを前記第2種別の流体用の画素値とした処理後データを前記記憶手段へ出力するデータ出力手段と、
を備えたものである。
【0008】
この画像処理装置では、行及び列に配列した画素値を含む画像データの画素値の1行をn行(nは正数)出力する処理を行うに際して、行に直交する列方向を優先して画素値を出力する。次に、出力された画素値を用い、所定解像度に基づく前記第1種別の流体に対応する画素の個数と、所定解像度のn倍に基づく第2種別の流体に対応する画素の個数と、の数を合わせた画素群に調整し、画素群に含まれる画素値を第1行から第n行まで分解する。続いて、分解した各行の画素値を用い、第1種別及び第2種別の流体用の画素値のハーフトーン処理を実行する。そして、ハーフトーン処理された各行の画素値のうち、所定の1行を第1種別の流体用の画素値とすると共に、n行のそれぞれを第2種別の流体用の画素値とした処理後データを出力する。このように、n行のデータを出力するに際して、列方向に連続する画素値を出力するため、解像度の低い第1種別の流体の画素に対しては、まとめて処理する画素群としやすい。また、解像度の高い第2種別の流体の画素については、それぞれのまま処理すれば高い解像度を維持することができる。したがって、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。また、処理後データは第1種別の流体用の画素値が1行に対し第2種別の流体用の画素値がn行あることから、所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと所定解像度のn倍の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備えた流体吐出装置に適したデータとすることができる。
【0009】
本発明の画像処理装置において、前記画素調整手段は、前記第1種別の流体に対応する画素の個数と前記第2種別の流体に対応する画素の個数とを合わせた画素群とするに際して、前記第1種別の流体に対応する画素値については前記列方向のn個の画素値の平均化を行うと共に、該平均化した画素値を前記n個複製することにより前記第1種別の流体に対応する画素の個数を前記第2種別の流体に対応する画素の個数に合わせた画素群とし、前記データ出力手段は、前記分解された第n行の画素値のうちいずれか1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記分解された各行を前記第2種別の流体用の画素値として含む処理後データを出力するものとしてもよい。こうすれば、列方向にn個連続して出力された画素値を並び順に平均化することが可能であるため、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0010】
本発明の画像処理装置において、前記流体吐出装置は、前記所定解像度の2倍(n=2)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルが形成された吐出ヘッドを備えており、前記画素値出力手段は、前記画像データの前記画素値を2行(n=2)出力する処理を行うものとしてもよい。こうすれば、流体の種別に応じて2倍異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0011】
本発明の画像処理装置において、前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施す第1処理部と、第2種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施すn個の第2処理部と、を備えているものとしてもよい。こうすれば、解像度の異なる画素値に対して、複数の処理部を用いて並行してハーフトーン処理を実行可能であるため、処理をより円滑にすると共に、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。
【0012】
本発明の画像処理装置において、前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備え、且つ前記第2種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備えているものとしてもよい。こうすれば、複数のハーフトーン処理のうちいずれかを適用することが可能であるため、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。ここで、例えば、第1のハーフトーン処理として、ディザ法を用いた処理を行うものとしてもよいし、第2のハーフトーン処理として、誤差拡散法を用いた処理を行うものとしてもよい。
【0013】
本発明の画像処理装置は、第1の色空間の画素値を、該第1の色空間と異なり前記第1種別及び第2種別の流体に合わせた第2の色空間の画素値に変換する色空間変換手段、を備え、前記画素値出力手段は、前記第1の色空間の画像データから前記第1の色空間の画素値を前記色空間変換手段へ出力し、前記画素調整手段は、前記変換された第2の色空間の画素値を前記出力された画素値として用いるものとしてもよい。こうすれば、第1の色空間の画像データから、吐出ヘッドに合わせた第2の色空間に変換した画素値に対して、流体の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プリンターシステム10の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】印刷ヘッド44の構成の概略を示す構成図。
【図3】画像処理部60の構成の概略の一例を示す構成図。
【図4】平均化ユニット65の構成の概略の一例を示す説明図。
【図5】入力分解ユニット66の構成の概略の一例を示す構成図。
【図6】出力選択ユニット67の構成の概略の一例を示す構成図。
【図7】印刷データ生成処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図8】画素値の出力態様の一例を示す説明図。
【図9】定解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図。
【図10】一部倍解像度処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図11】一部倍解像度モードでの処理の概要を示す説明図。
【図12】入力分解ユニット66での処理の概要の一例を示す説明図。
【図13】一部倍解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態であるプリンターシステム10の構成の概略の一例を示す構成図である。図2は、印刷ヘッド44の構成の概略を示す構成図である。図3は、画像処理部60の構成の概略の一例を示す構成図である。図4は、平均化ユニット65の構成の概略の一例を示す説明図である。図5は、入力分解ユニット66の構成の概略の一例を示す構成図である。図6は、出力選択ユニット67の構成の概略の一例を示す構成図である。本実施形態のプリンターシステム10は、図1に示すように、プリンター20へデータ通信可能に接続され画像データを出力するパソコン(PC)11と、記録紙Sにインクを吐出して印刷対象である画像データの印刷処理を行うプリンター20と、を備えている。
【0016】
PC11は、ユーザーが使用する情報処理装置として構成されたパソコンである。このPC11は、装置全体の制御を司るコントローラーと、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリであるHDD15と、プリンター20などの外部機器とのデータの入出力を行う図示しないネットワークインターフェイス(I/F)とを備えている。コントローラーは、各種制御を実行するCPU12や各種制御プログラムを記憶するフラッシュROM13、データを一時記憶するRAM14などを備えている。また、PC11は、ユーザーが各種指令を入力するキーボード及びマウス等の入力装置17や、各種情報を表示するディスプレイ18などを備えている。このPC11は、ディスプレイ18に表示されたカーソル等をユーザーが入力装置17を介して入力操作するとその入力操作に応じた動作を実行する機能を有している。
【0017】
プリンター20は、印刷処理を実行するプリンター部30と、メモリーカードMCとのデータのやりとりを行うメモリーカードコントローラー33と、装置全体をコントロールするメインコントローラー50と、を備えている。プリンター部30は、プリンターASIC31と印刷機構32とを備えている。プリンターASIC31は、印刷機構32を駆動制御する機能を備えている。印刷機構32は、ベルト37によりキャリッジ軸48に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ41と、インクに圧力をかけノズル42からインク滴を吐出する印刷ヘッド44と、各色のインクを収容しこの収容したインクを印刷ヘッド44へ供給するカートリッジ45と、駆動モーター38により駆動され記録紙Sを搬送する紙送りローラー39とを備えている。印刷ヘッド44は、キャリッジ41の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により、印刷ヘッド44の下面に設けられたノズル42から各色のインクを吐出するものである。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。カートリッジ45は、本体側に装着され、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)などの各色のインクを個別に収容しており、図示しないチューブを介して印刷ヘッド44へインクを供給する。メインコントローラー50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュROM53と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM54と、PC11などの外部機器とのデータの入出力を行うI/F55と、画像データを印刷データへ変換する機能を有する画像処理部60と、を備えている。このメインコントローラー50は、PC11や、メモリーカードコントローラー33を介してメモリーカードMCなどから画像データを受信すると共に、印刷処理を実行するよう印刷機構32を制御する。メモリーカードMCから入力された画像データは、例えば、印刷ヘッド44に合わせたドットの解像度(例えば600dpi,300dpiなど)のRGBデータとしてRAM54に記憶される。なお、入力された画像データがRGBデータ以外のときにはCPU52によりRGBデータに色変換したり、解像度が上記以外のときには隣接する画素同士の間に補間により画素を生成したり所定の割合で画素を間引いたりしてもよい。
【0018】
印刷ヘッド44は、図2に示すように、CMYの各色のインクを個別に吐出可能なノズル42C,42M,42Yが記録紙Sの搬送方向(副走査方向)に沿って配置されたノズル群43C,43M,43Yと、ブラック(K)のインクを吐出可能なノズル42Kが副走査方向に沿って配置されたノズル群43K1,43K2とが形成されている。ここで、各ノズル群の構成について、シアン(C)のノズル群43Cを例に挙げて説明する。ノズル群43Cは、2つのノズル列C1,C2からなり、各ノズル列C1,C2はそれぞれピッチが所定長さLとなるようにノズル42Cが配置されている。また、ノズル列C1のノズル42Cとノズル列C2のノズル42Cとは副走査方向に沿って千鳥(ジグザグ)になるよう配置され、そのピッチが所定長さLの半分の長さL/2となっている。本実施形態では、所定長さLはドットが150dpiの解像度となるように設定されており、ノズル列C1によって形成されるドットとノズル列C2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、シアン(C)のドットの解像度は300dpiとなる。マゼンタ(M)のノズル群43Mおよびイエロー(Y)のノズル群43Yも同様に構成され、得られる解像度は300dpiとなる。また、ブラック(K)のノズル群43K1,43K2も同様にそれぞれ2つのノズル列K11,K12および2つのノズル列K21,K22からなる。さらに、ノズル群43K1のノズル42Kとノズル群43K2のノズル42Kとの副走査方向のピッチが長さL/2の半分の長さL/4となるよう配置されている。このため、ノズル群43K1によって形成されるドットとノズル群43K2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、ブラック(K)のドットの解像度は600dpiとなる。このように、印刷ヘッド44は、合計10列のノズル列を備え、CMYのドットの解像度が300dpi、Kのドットの解像度が600dpiとなるよう構成されている。即ち、CMYのノズル密度に比してKのノズル密度が2倍(n=2)高密度となっている。このように、印刷ヘッド44は、所定解像度(300dpi)を有するCMYのノズル42C,42M,42Yと、所定解像度のn倍(n=2)の解像度を有するKのノズル42Kとが形成されている。この印刷ヘッド44は、各ノズルに個々に設けられた圧電素子に電圧を印加して変形させ、これにより加圧されたインクが吐出されることで記録紙Sにドットを形成する。この印刷ヘッド44は、圧電素子の変形に応じて大ドット、中ドット及び小ドットを形成可能に構成されているが、本発明の主要部ではないことから、詳細な説明は割愛する。
【0019】
画像処理部60は、図1,3に示すように、ライン取得ユニット61や、交互出力ユニット62、色空間変換ユニット63、濃度補正ユニット64、平均化ユニット65、入力分解ユニット66、出力選択ユニット67、デコードユニット68、印刷データ出力ユニット69、ハーフトーンユニット70などを備えている。ライン取得ユニット61は、RAM54に記憶されている画像データから2行(2ライン)の画素値を取得する機能を有する回路により構成されている。交互出力ユニット62は、入力した2行の画素値のうち、行に直交する列方向を優先して出力する(後述図8参照)機能を有する回路により構成されている。色空間変換ユニット63は、図示しないルックアップテーブル(LUT)を用い、RGB色空間の画像データをCMYK色空間の印刷データへ変換する機能を有する回路により構成されている。LUTは、RGBの画素値とCMYKの画素値とを経験的に対応付けた対応関係情報として構成されている。濃度補正ユニット64は、図示しないテーブルを用い、出力先の各ラインごとに最適な画素値となるよう画素値の補正を実行する機能を有している。
【0020】
平均化ユニット65は、図4に示すように、CPU52からの信号ave#enに基づいて複数(n個)の画素値を平均化する機能及び、平均化した画素値をn個複製して出力する機能を有する回路(平均化部65a)として構成されている。この平均化ユニット65は、例えば、8色など8種のインク種別に応じた画素値を処理可能なように、8個の平均化部65aを備えている。入力分解ユニット66は、図5に示すように、CPU52からの信号linesel,unitenなどに基づいて、入力した画素値を1画素単位で交互に切替、奇数行の画素値と偶数行の画素値との分離を行う機能を有する回路として構成されている。この入力分解ユニット66は、4つのインセルコア66a,66b,66c,66dと、これらインセルコアのそれぞれに接続されたスプリット66eとを備えている。本実施形態においては、C,M,Yのカラーデータと、K1の黒データ、K2の黒データの3種類を3つのインセルコアを用いて同時処理可能となっている。インセルコアは、8つの画素値を処理可能に構成されており、入力分解ユニット66としては、4つのインセルコアにより32個のデータに分離可能になっている。なお、4つめのインセルコアは予備であるが、例えばインク色が3種類以上の場合などに利用することができる。
【0021】
ハーフトーンユニット70は、図3,5に示すように、4つのインセルコア66a〜66dにそれぞれ接続された、第1ハーフトーンユニット71,第2ハーフトーンユニット72,第3ハーフトーンユニット73,第4ハーフトーンユニット74の4つのユニット(処理部)を備えている。ハーフトーンユニット70は、カラーデータ(C,M,Y)の画素値にハーフトーン処理を施す第1ハーフトーンユニット71と、黒データ(K1,K2)の画素値にハーフトーン処理を施す2個の第2ハーフトーンユニット72,第3ハーフトーンユニット73と、予備の第4ハーフトーンユニット74とを備えている。ハーフトーンユニット70は、上記入力分解ユニット66と同様に、C,M,Yのカラーデータと、黒データ(K1)、黒データ(K2)の3種類を3つのユニットを用いて同時処理可能となっている。これは、印刷処理時に、カラーデータと、黒データK1と、黒データK2とのインク吐出位置が異なることから、カラーデータの1個のハーフトーンユニット、およびn倍の解像度を有するインク種に対して最低n個のハーフトーンユニットを要することによる。こうすれば、効率よく各色を同時処理することができる。
【0022】
また、各々のハーフトーンユニット71〜74は、2種類のハーフトーン処理を実行可能な回路を備えている。処理方法としては、例えば、複数のテーブルを引くことを要し処理速度が遅いが、データを可逆圧縮・解凍可能な機能を有しRAM54の使用領域を低減可能な誤差拡散法を実行するrdエンコード部70aと、RAM54の使用領域を要するが処理速度が速いディザ部70bとの2つの実行部を有している。このハーフトーンユニット70は、各8ビットのCMYKデータを各2ビットの2値化データに変換するハーフトーン処理を行なう。このハーフトーン処理は、本実施形態では要求される印刷品質に応じてディザ法と誤差拡散法とを選択して行なうものとした。ここで、ディザ法は、予め設定されたディザマトリックスによって与えられる閾値と各画素の階調値との大小比較によって、ドットのオン/オフに2値化するものである。一方、誤差拡散法は、注目画素の階調値と所定の閾値とを大小比較してドットのオン/オフに2値化し、2値化後の階調値と元の階調値との差分である誤差を注目画素の周囲の未処理画素に一定の割合で拡散するものである。なお、CMYKデータ上の左上隅の画素から1画素ずつ左から右へ,上から下へと順に誤差拡散法により処理する場合、未処理画素は注目画素の右隣と左斜め下,真下,右斜め下の計4つの画素が該当する。このように、誤差拡散法は、誤差を周囲に隣接する画素に拡散してその影響を小さくすることができるため、ディザ法に比して処理速度は遅くなるものの良好な画質が得られる。このため、本実施形態では、通常の印刷品質且つ高速処理が要求される場合にはディザ法を選択し、より高品質且つが要求される場合には誤差拡散法を選択するものとした。このディザ法及び誤差拡散法のいずれかを用いることで、例えば、CMYKデータを、ドットの有無を表すCMYKの印刷データに変換することができる。
【0023】
ハーフトーンユニット70では、rdエンコード部のエンコード処理とデコードユニット68のデコード処理とが別ユニットになっており、エンコード及びデコード処理を連続又は別々に実行可能に構成されている。このため、rdエンコード部によりエンコード処理されたデータを一旦RAM54に出力させ、あとでデコードユニット68によりデコード処理を実行可能となっている。このエンコード処理では、所定の量子化テーブルを参照し画素の階調値を量子化データにコード化する処理を行う。また、デコード処理では、コード化したデータをデコードして、ドットの発生位置を決定するという処理を行う。この具体的な処理内容については、特開2007−82090号公報や特開2007−76306号公報などに詳しく記載されており、ここでの詳細な説明は省略する。
【0024】
出力選択ユニット67は、図6に示すように、CPU52からの信号htsel,colsel,outselに基づいて、4つのハーフトーンユニットによりハーフトーン処理されたデータから必要な画素値を選択して出力する機能を有する回路により構成されている。印刷データ出力ユニット69は、出力選択ユニット67により選択された画素値を入力し、各々の色種別(C,M,Y,K1,K2)に応じてRAM54に設けられたバッファ領域にそれぞれの画素値を処理後データとして出力する機能を有している。
【0025】
また、図3に示すように、交互出力ユニット62や、色空間変換ユニット63、濃度補正ユニット64、平均化ユニット65、入力分解ユニット66、出力選択ユニット67、ハーフトーンユニット70は、それぞれパスユニット82〜87を備えている。このパスユニットは、パスユニットが接続されているメインユニットにデータが伝達するのと同期して、データが順次伝達する構成となっている。こうすれば、パスユニットを転送されている種々のデータを、対応するメインユニットに容易に取り込むことができ、回路の拡張性を高めることができる。また、取り扱うデータの容量が増加し、メインユニット間のバス幅が不足した場合にも、パスユニットを利用することでより多くのデータを扱うことが可能になる。
【0026】
次に、こうして構成された本実施形態のプリンター20の動作、特に、PC11やメモリーカードMCから出力されたRGB色空間の画像データを、プリンター20が直接印刷する処理について説明する。このプリンター20では、画像全体を単一の解像度(例えば300dpi)で印刷処理する定解像度モード印刷(通常モード)と、C,M,Y(カラー)の解像度(例えば300dpi)に比してK(黒)が2倍の解像度(600dpi)となる一部倍解像度モード印刷とを選択することができる。図7は、プリンター20のCPU52が実行する、印刷データ生成処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、図示しない印刷設定画面で、印刷条件を設定したあと、ユーザーにより印刷実行ボタンが押下されたのちに実行される。
【0027】
このルーチンが実行されると、まず、CPU52は、設定されている解像度モードを調べ(ステップS100)、定解像度モードが設定されているときには、画像処理部60の各ユニットへ指令する指令信号の内容を定解像度モードに合わせた内容に設定する(ステップS110)。次に、CPU52は、設定された指令信号を画像処理部60の各ユニットへ出力し(ステップS120)、これを受けた各ユニットが指令信号に基づいて印刷データの生成処理を実行し(ステップS130)、このルーチンを終了する。なお、300dpiのRGB画像データを誤差拡散法で処理する場合、定解像度モードの信号設定を以下のものとしてもよい。以下、この指令信号例について具体例として説明する。平均化ユニット65では、例えば、信号ave#en1〜8を無効とし、平均化処理を無効化する。また、入力分解ユニット66の信号linesel1〜4を奇数とし、信号uniten1を有効、信号uniten2〜4を無効に設定する。こうすれば、C,M,Y,Kの全色の画素値を第1ハーフトーンユニット71のみで処理することができる。また、ハーフトーンユニット70の信号htselを誤差拡散法を用いるrd#encに設定し、デコードユニット68の信号outselをデコードユニット68を用いるrd#decに設定する。また、出力選択ユニット67の信号colselM(i,j)を、信号colsel1(1,1),colsel2(1,2),colsel3(1,3),colsel4(1,4),colsel5〜8(0,0)に設定する。こうすれば、第1ハーフトーンユニット71で処理した1〜4番、即ちC,M,Y,Kの各色の画素値をそのまま印刷データ(処理後データ)として出力することができる。なお、信号colselM(i,j)のMは、出力選択ユニット67のユニット番号、iはハーフトーンユニット70のユニットの番号、jは色データの番号を表す。
【0028】
図8は、色空間変換ユニット63に入力される画素値の出力態様の一例を示す説明図である。また、図9は、定解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図である。なお、図9では、ハーフトーンユニット70を3ユニットだけ示した。定解像度モードにおいては、ライン取得ユニット61で取得したラインのRGB画素値をそのまま色空間変換ユニット63へ出力するものとした。したがって、この定解像度モードでは、RGB色空間の画像データに含まれる2行の画素値を出力するに際して、行方向に配列した画素値を優先して出力するものとした(図8の左図)。次に、これを受けた色空間変換ユニット63が、LUTを用い、RGB色空間の画素値からCMYK色空間の画素値への変換を行う。次に、濃度補正ユニット64で濃度補正を行う。ノズル列43は製造誤差に起因してその内径や圧電素子の変形度が異なることがあることから、この誤差を補正する補正テーブルを予め記憶しておき、濃度補正ユニット64は、この補正テーブルを用いてインクの吐出量を補正する処理を行う。ここでは、濃度補正ユニット64では、CMYK色空間の画素値としてCMYK色空間のインク吐出量を用いて補正処理するものとした。次に、平均化ユニット65で平均化を行わずに、行方向に優先的に流れている各画素値が入力分解ユニット66に入力される。入力分解ユニット66では、行方向に優先的に流れている各画素値が奇数行と偶数行に分離され(図9参照)、そのうちの奇数行について、第1ハーフトーンユニット71で誤差拡散のエンコードが行われる。図9では、シアンを例にすると、「Ce」がエンコード済みのデータ、「Cd」がデコード済みのデータを表し、「Ca,b」のaが行番号、bが列番号を表す。例えば、Ce1,2は、エンコード済みの1行、2列目のシアンの画素値を表している。ハーフトーンユニット70で出力された全画素値のうち、必要な画素値を出力選択ユニット67で選択し、デコードユニット68へ出力する。デコードユニット68では、所定のデコード処理を施し、出力選択ユニット67及び印刷データ出力ユニット69を介して各色に対応するRAM54のバッファ領域に出力、記憶させる。
【0029】
一方、ステップS100で一部倍解像度モードが設定されているときには、CPU52は、画像処理部60の各ユニットへ指令する指令信号の内容を一部倍解像度モードに合わせた内容に設定する(ステップS140)。なお、具体的な指令信号については、詳しくは後述する。次に、CPU52は、設定された指令信号を画像処理部60の各ユニットへ出力し(ステップS150)、これを受けた各ユニットが指令信号に基づいて印刷データの生成処理を実行し(ステップS160)、このルーチンを終了する。ここで、一部倍解像度モードでの印刷データの生成処理について詳細に説明する。図10は、一部倍解像度モードでの処理の概要を示す説明図である。図11は、画像処理部60が実行する一部倍解像度処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。図12は、入力分解ユニット66での処理の概要の一例を示す説明図である。図13は、一部倍解像度モードでのデータ出力処理の概要の一例を示す説明図である。なお、図13では、ハーフトーンユニット70を3ユニットだけ示した。この一部倍解像度処理では、図10に示すように、RGB色空間の画像をCMYK色空間の印刷データ(インク吐出量データ)に変換すると共に、カラーデータを列方向に平均化しカラーデータに対して黒データの解像度がn倍(ここではn=2)となる印刷データを生成する処理を行う。なお、生成した印刷データは、C,M,Y,K1,K2の各色毎にRAM54に記憶し、その後印刷ヘッドに出力される。
【0030】
画像処理部60では、図11に示す一部倍解像度処理が実行されると、ライン取得ユニット61がn行(ここではn=2)の画素値を入力し(ステップS200)、交互出力ユニット62が列方向を優先してn行の画素値を出力し(ステップS210)、色空間変換ユニット63がRGB色空間からCMYK色空間へ変換する(ステップS220)。次に、変換した画素値に対して濃度補正ユニット64がインク量補正を行う(ステップS230)。次に、平均化ユニット65が、濃度補正した画素値のうち、C,M,Yの色データに対して列方向の平均化を実行すると共に、2倍に複製する処理を行うと共に、K1,K2の色データに対してはそのまま出力し、Kの画素個数にC,M,Yの画素個数を合わせ画素値群とする処理を行う(ステップS240)。続いて、入力分解ユニット66が、入力した画素値を第1行から第n行に分解し(ステップS250)、ハーフトーンユニット70がそれぞれの画素行に対しハーフトーン処理を行う(ステップS260)。なお、ハーフトーン処理において、必要に応じてデコードユニット68がデコード処理を行う。そして、ハーフトーンされた各行の各画素値のうち、出力選択ユニット67が必要なものを選択し(ステップS270)、選択された画素値を印刷データとして各色に応じて設けられたRAM54のバッファ領域に出力し、記憶させ(ステップS280)、全画素に対してこの処理を行い(ステップS290)、このルーチンを終了する。
【0031】
この一部倍解像度処理において、600dpiのRGB画像データをディザ法で処理する場合について具体例として説明する。このとき、一部倍解像度モードの信号設定(図7のステップS140)を以下のものとしてもよい。例えば、平均化ユニット65では、信号ave#en1〜3を有効とし、信号ave#en4〜8を無効とする。こうすれば、C,M,Yの画素値に対して2行の平均化を行い半分の解像度(300dpi)とし、K1,K2に対してはそのままの解像度(600dpi)とすることができる。また、入力分解ユニット66の信号linesel1〜2を奇数、信号linesel3を偶数とし、信号uniten1〜3を有効に設定する。こうすれば、奇数行のC,M,Yの画素値を第1ハーフトーンユニット71で、奇数行のK1の画素値を第2ハーフトーンユニット72で、偶数行のK2の画素値を第3ハーフトーンユニット73で処理することができる。また、ハーフトーンユニット70の信号htselをディザ法を用いるditherに設定し、デコードユニット68の信号outselをデコードユニット68をスルーさせるthruに設定する。また、出力選択ユニット67の信号colselM(i,j)を、信号colsel1(1,1),colsel2(1,2),colsel3(1,3),colsel4(2,4),colsel5(3.4),colsel6〜8(0,0)に設定する。こうすれば、第1ハーフトーンユニット71で処理した1〜3番(C,M,Y)の各色の画素値、第2ハーフトーンユニット72で処理した4番(K1)、第3ハーフトーンユニット73で処理した4番(K2)を印刷データとして出力することができる。
【0032】
次に、画像処理部60の各ユニットでの動作について説明する。交互出力ユニット62では、図8の右図に示すように、データ行の長手方向に対して直行する短手方向の列方向の2行の画素データをペアにして出力する処理を行う。こうして出力された画素データを受けると、上述の定解像度モードと同様に、色空間変換ユニット63がRGB色空間の画素値をCMYK色空間の画素値に変換し、濃度補正ユニット64が濃度補正処理を行う。次に、図4下段に示すように、平均化ユニット65は、平均化を行わない色(K)は、入力した値をそのまま2つ出力する一方、平均化を行う色(C,M,Y)の画素値については奇数ラインと偶数ラインの平均値をとり、さらに平均した値を複製し2回出力する。これにより、平均化を行わない色との画素数を合わせることが可能であり、同時並行的にデータを流すことができる。次に、図12,13に示すように、入力分解ユニット66で偶数ラインと奇数ラインとに分解される。このとき、両ライン共にカラー(C,M,Y)については同じ値が格納されているから、実質的には黒(K1,K2)が奇数ラインと偶数ラインとに分解される。そして、インセルコア66aでは、奇数ラインの値を第1ハーフトーンユニット71側へ出力する。続いて、入力された奇数ラインに対して、第1ハーフトーンユニット71及び第2ハーフトーンユニット72によりディザ法のハーフトーン処理を行い、入力された偶数ラインに対して第3ハーフトーンユニット73によりディザ法のハーフトーン処理が行われる。このように、解像度の異なる画素値に対して、それぞれに適したパラメーターを用いて、それぞれのハーフトーン処理を実行することが可能であり、より適した印刷データを生成することができる。
【0033】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のRAM54が本発明の記憶手段に相当し、交互出力ユニット62が画素値出力手段に相当し、平均化ユニット65が画素調整手段に相当し、入力分解ユニット66が分解手段に相当し、ハーフトーンユニット70がハーフトーン処理手段に相当し、出力選択ユニット67及び印刷データ出力ユニット69がデータ出力手段に相当し、色空間変換ユニット63が色空間変換手段に相当し、各ハーフトーンユニット71〜74が第1処理部及び第2処理部に相当し、rdエンコード部70a及びディザ部70bが第1実行部及び第2実行部に相当する。また、第1種別の流体及び第2種別の流体がC,M,Y,Kのインクに相当し、ノズル42が吐出ノズルに相当し、プリンター20が流体吐出装置に相当する。
【0034】
以上詳述した本実施形態の画像処理部60によれば、行及び列に配列した画素値を含むRGB色空間の画像データの画素値の1行を2行出力する処理を行うに際して、行に直交する列方向を優先して画素値を出力する。次に、出力された画素値を用い、C,M,Yのインクに対応する画素値については、列方向の2個の画素値の平均化を行うと共に、平均化した画素値を2個複製することにより、Kのインクに対応する画素の個数に合わせた画素群とし、画素群に含まれる画素値を奇数ライン及び偶数ラインに分解する。続いて、分解された2行の画素値のうちいずれか1行をC,M,Yのインク用の画素値とすると共に、分解された各行をKのインク用の画素値として含む印刷データをRAM54へ出力する。このように、2行のデータを出力するに際して、列方向に連続する画素値を出力するため、解像度の低いC,M,Yの画素に対しては、列方向に2個連続して出力された画素値を並び順に処理可能であるため、平均化しやすい。また、解像度の高いKの画素については、それぞれのまま処理すれば高い解像度を維持することができる。したがって、インク種別に応じて2倍異なる異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。また、印刷データはC,M,Yの画素値が1行に対しKの画素値が2行あることから、ノズル42C,42M,42Yに対して2倍の解像度を有するノズル42Kが形成された印刷ヘッド44を備えたプリンター20に適したデータとすることができる。
【0035】
また、ハーフトーンユニット70は、C,M,Yの画素値にハーフトーン処理を施す第1ハーフトーンユニット71と、Kの画素値にハーフトーン処理を施す2個の第2ハーフトーンユニット72,第3ハーフトーンユニット73を備えているため、解像度の異なる画素値に対して、複数の処理部を用いて並行してハーフトーン処理を実行可能であり、処理をより円滑にすると共に、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。更に、ハーフトーンユニット70は、rdエンコード部70a及びディザ部70bを備えているため、複数のハーフトーン処理のうちいずれかを適用することが可能であり、異なる解像度の画素値に対してより適切なハーフトーン処理を実行することができる。更にまた、RGB色空間の画素値を、CMYK色空間の画素値に変換するため、RGB色空間の画像データから、印刷ヘッド44に合わせたCMYK色空間に変換した画素値に対して、インクの種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、平均化ユニット65によりn行の画素値を平均化し、且つn個複製してn倍の解像度の画素の個数と合わせるものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、解像度の低い画素については、間引き処理を行うものとしてもよい。また、n個複製するのに替えて、ダミーの画素値を加えるものとし、出力選択ユニット67でダミーの画素値を選択しないものとしてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、2行(n=2)のデータを処理するものとしたが、特にこれに限定されず、3行以上であってもよい。こうしても、上述した内容と同様の処理を行うことにより、色の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0039】
上述した実施形態では、ハーフトーンユニット70は、C,M,Yの画素値にハーフトーン処理を施す1つのハーフトーンユニットと、解像度が2倍のKの画素値にハーフトーン処理を施す2つのハーフトーンユニットとを備えるものとしたが、特にこれに限定されない。1つのハーフトーンユニットのみによっても、全画素値のハーフトーン処理自体を行うことはできる。なお、C,M,Y,K1の画素値にハーフトーン処理を施す1つのハーフトーンユニットと、K2の画素値にハーフトーン処理を施す1つのハーフトーンユニットとを備えるものとしてもよい。こうすれば、解像度が異なる画素を1つの処理部で処理するため最適とまではいえないが、同時並行的にハーフトーン処理を実行することはでき、好ましい。
【0040】
上述した実施形態では、ハーフトーンユニット70は、rdエンコード部70a及びディザ部70bの2種類のハーフトーン処理を実行するものとしたが、特にこれに限定されず、他のハーフトーン処理を実行可能なものとしてもよいし、いずれかを省略し、1つのハーフトーン処理を実行可能なものとしてもよい。こうしても、色の種別に応じて異なる解像度のデータ処理をより容易に実行することができる。
【0041】
上述した実施形態では、RGB色空間の画素値の状態で交互出力ユニット62により処理するものとしたが、色空間の変換はライン取得ユニット61の前から、入力分解ユニット66の前のいずれかのタイミングで行うものとすればよい。また、画像処理部60での処理から省略するものとしてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、画像処理部60はC,M,Y,Kの色空間の画像データを生成し、印刷ヘッド44はC,M,Y,Kのインク(着色剤)を吐出するものとしたが、色の種類は、特にこれに限定されず、その他の色、例えば、ライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)、赤(R)、青(B)、紫(P)、橙(O)などのいずれか1以上の色を含む色空間としてもよいし、印刷ヘッド44はこれらの色のインクを吐出するものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、本発明の流体吐出装置をプリンタ20に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよいし、流体として吐出可能な固体を吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体を吐出する粉体吐出式記録装置としてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、画像処理部60は、回路により構成されているものとして説明したが、上述した処理を実現可能なものとすれば、特にこれに限定されない。
【符号の説明】
【0045】
10 プリンターシステム、11 パソコン(PC)、12 CPU、13 フラッシュROM、14 RAM、15 HDD、17 入力装置、18 ディスプレイ、20 プリンター、30 プリンター部、31 プリンターASIC、32 印刷機構、33 メモリーカードコントローラー、37 ベルト、38 駆動モーター、39 紙送りローラー、41 キャリッジ、42,42C,42M,42Y,42K ノズル、43,43C,43M,43Y,43K1,43K2 ノズル列、44 印刷ヘッド、45 カートリッジ、48 キャリッジ軸、50 メインコントローラー、52 CPU、53 フラッシュROM、54 RAM、55 ネットワークインターフェイス(I/F)、60 画像処理部、61 ライン取得ユニット、62 交互出力ユニット、63 色空間変換ユニット、64 濃度補正ユニット、65 平均化ユニット、65a 平均化部、66 入力分解ユニット、66a〜66d インセルコア、66e スプリット、67 出力選択ユニット、68 デコードユニット、69 印刷データ出力ユニット、70 ハーフトーンユニット、70a rdエンコード部、70b ディザ部、71 第1ハーフトーンユニット、72 第2ハーフトーンユニット、73 第3ハーフトーンユニット、74 第4ハーフトーンユニット、82〜88 パスユニット、MC メモリーカード、S 記録紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと前記所定解像度のn倍(nは正数)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備え、該第1種別及び第2種別の流体を所定の媒体上へ吐出する流体吐出装置が利用する画像処理装置であって、
データを記憶する記憶手段と、
行及び列に配列した画素値を含む画像データの前記画素値をn行(nは正数)分出力するに際して、該行に直交する列方向に配列された前記画素値を行方向に配列された前記画素値に優先して出力する画素値出力手段と、
前記出力された画素値を用い、前記所定解像度に基づく前記第1種別の流体に対応する画素の個数と、前記所定解像度のn倍に基づく前記第2種別の流体に対応する画素の個数と、の数を合わせた画素群とする画素調整手段と、
前記画素群に含まれる画素値を第1行から第n行まで分解する分解手段と、
前記分解した各行の画素値を用い、前記第1種別及び前記第2種別の流体用の画素値のハーフトーン処理を実行するハーフトーン処理手段と、
前記ハーフトーン処理された各行の画素値のうち、所定の1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記n行のそれぞれを前記第2種別の流体用の画素値とした処理後データを前記記憶手段へ出力するデータ出力手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記画素調整手段は、前記第1種別の流体に対応する画素の個数と前記第2種別の流体に対応する画素の個数とを合わせた画素群とするに際して、前記第1種別の流体に対応する画素値については前記列方向のn個の画素値の平均化を行うと共に、該平均化した画素値を前記n個複製することにより前記第1種別の流体に対応する画素の個数を前記第2種別の流体に対応する画素の個数に合わせた画素群とし、
前記データ出力手段は、前記分解された第n行の画素値のうちいずれか1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記分解された各行を前記第2種別の流体用の画素値として含む処理後データを出力する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記流体吐出装置は、前記所定解像度の2倍(n=2)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルが形成された吐出ヘッドを備えており、
前記画素値出力手段は、前記画像データの前記画素値を2行(n=2)出力する処理を行う、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施す第1処理部と、第2種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施すn個の第2処理部と、を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備え、且つ前記第2種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
第1の色空間の画素値を、該第1の色空間と異なり前記第1種別及び第2種別の流体に合わせた第2の色空間の画素値に変換する色空間変換手段、を備え、
前記画素値出力手段は、前記第1の色空間の画像データから前記第1の色空間の画素値を前記色空間変換手段へ出力し、
前記画素調整手段は、前記変換された第2の色空間の画素値を前記出力された画素値として用いる、画像処理装置。
【請求項1】
所定解像度を有する第1種別の流体の吐出ノズルと前記所定解像度のn倍(nは正数)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルとが形成された吐出ヘッドを備え、該第1種別及び第2種別の流体を所定の媒体上へ吐出する流体吐出装置が利用する画像処理装置であって、
データを記憶する記憶手段と、
行及び列に配列した画素値を含む画像データの前記画素値をn行(nは正数)分出力するに際して、該行に直交する列方向に配列された前記画素値を行方向に配列された前記画素値に優先して出力する画素値出力手段と、
前記出力された画素値を用い、前記所定解像度に基づく前記第1種別の流体に対応する画素の個数と、前記所定解像度のn倍に基づく前記第2種別の流体に対応する画素の個数と、の数を合わせた画素群とする画素調整手段と、
前記画素群に含まれる画素値を第1行から第n行まで分解する分解手段と、
前記分解した各行の画素値を用い、前記第1種別及び前記第2種別の流体用の画素値のハーフトーン処理を実行するハーフトーン処理手段と、
前記ハーフトーン処理された各行の画素値のうち、所定の1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記n行のそれぞれを前記第2種別の流体用の画素値とした処理後データを前記記憶手段へ出力するデータ出力手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記画素調整手段は、前記第1種別の流体に対応する画素の個数と前記第2種別の流体に対応する画素の個数とを合わせた画素群とするに際して、前記第1種別の流体に対応する画素値については前記列方向のn個の画素値の平均化を行うと共に、該平均化した画素値を前記n個複製することにより前記第1種別の流体に対応する画素の個数を前記第2種別の流体に対応する画素の個数に合わせた画素群とし、
前記データ出力手段は、前記分解された第n行の画素値のうちいずれか1行を前記第1種別の流体用の画素値とすると共に、前記分解された各行を前記第2種別の流体用の画素値として含む処理後データを出力する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記流体吐出装置は、前記所定解像度の2倍(n=2)の解像度を有する第2種別の流体の吐出ノズルが形成された吐出ヘッドを備えており、
前記画素値出力手段は、前記画像データの前記画素値を2行(n=2)出力する処理を行う、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施す第1処理部と、第2種別の流体の画素値にハーフトーン処理を施すn個の第2処理部と、を備えている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ハーフトーン処理手段は、前記第1種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備え、且つ前記第2種別の流体の画素値に対し、第1のハーフトーン処理を施す第1実行部と、該第1実行部と異なる第2のハーフトーン処理を施す第2実行部と、を備えている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
第1の色空間の画素値を、該第1の色空間と異なり前記第1種別及び第2種別の流体に合わせた第2の色空間の画素値に変換する色空間変換手段、を備え、
前記画素値出力手段は、前記第1の色空間の画像データから前記第1の色空間の画素値を前記色空間変換手段へ出力し、
前記画素調整手段は、前記変換された第2の色空間の画素値を前記出力された画素値として用いる、画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【公開番号】特開2012−160971(P2012−160971A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20107(P2011−20107)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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