説明

画像形成装置、およびプログラム

【課題】通信回線から送信される信号に起因する画像形成装置での消費電力の増加を抑制する。
【解決手段】画像形成命令および一斉送信信号を処理する制御部30に省電力状態が設定された期間において、通信部31がデータ領域に予め定めた文字列が記述された一斉送信信号を受信することにより、制御部30を稼動状態に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク等の通信回線に接続されたプリンタ等の画像形成装置は、通常、例えば通信回線から送られる画像形成命令等の信号の受信状況等に応じて、消費電力を低く抑える省電力状態に移行する。しかし、画像形成装置において画像形成命令以外の信号による省電力状態からの復帰回数が多くなると、省電力状態への移行による画像形成装置の消費電力の削減効果は充分に得られない。
例えば特許文献1には、一定時間毎にネットワーク回路のオン/オフを行い、複数のプリンタがネットワーク接続されるシステムの省電力化を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−110695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、マルチキャストやブロードキャストのように不特定多数に対して一斉に送信される信号は、自装置にて処理が必要なものか否かが不明である。そのため、画像形成装置では、一斉送信される信号を受信した場合には信号を処理する信号処理部が省電力状態から復帰し、処理が必要な信号か否かを判断する。そのため、マルチキャスト等の一斉送信される信号が多い通信環境下では、信号処理部での省電力状態からの復帰回数が多くなり、画像形成装置の消費電力が充分に削減されない。
本発明は、通信回線から送信される信号に起因する画像形成装置での消費電力の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、通信回線を介して自装置宛に送信される画像形成命令および当該通信回線を介して一斉に送信される一斉送信信号を受信する受信手段と、稼動状態と当該稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて前記受信手段にて受信した前記画像形成命令および前記一斉送信信号を処理する処理手段と、前記処理手段に省電力状態が設定された期間においてデータ領域に予め定めた文字列が記述された前記一斉送信信号を前記受信手段にて受信することにより、当該処理手段を稼動状態に設定する設定手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記受信手段は、前記一斉送信信号を受信する通信ポートが予め定められ、前記設定手段は、当該受信手段の予め定められた当該通信ポートにより前記文字列がデータ領域に記述された前記一斉送信信号を受信することにより、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項3に記載の発明は、前記設定手段は、前記一斉送信信号のデータ領域に予め定めた第1文字列と予め定めた第3文字列との間に予め定めた第2文字列が記述されている場合に、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
請求項4に記載の発明は、前記設定手段は、前記一斉送信信号のデータ領域にて予め定めた第1文字列に続いて記述された予め定めたデータ量の文字列が予め定めた第2文字列と一致する場合に、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置である。
【0007】
請求項5に記載の発明は、コンピュータに、通信回線を介して自装置宛に送信される画像形成命令および当該通信回線を介して一斉に送信される一斉送信信号を受信する機能と、受信した前記画像形成命令および前記一斉送信信号を処理する処理手段に稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態が設定された期間においてデータ領域に予め定めた文字列が記述された前記一斉送信信号を受信することにより、当該処理手段を稼動状態に設定する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【0008】
請求項6に記載の発明は、前記処理手段を稼動状態に設定する機能は、前記文字列がデータ領域に記述された前記一斉送信信号を予め定められた通信ポートにより受信することにより、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項5記載のプログラムである。
請求項7に記載の発明は、前記一斉送信信号のデータ領域に予め定めた第1文字列と予め定めた第3文字列との間に予め定めた第2文字列が記述されているか否かを判定する機能をさらに有し、前記処理手段を稼動状態に設定する機能は、前記第2文字列が記述されていると判定されることで前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項5記載のプログラムである。
請求項8に記載の発明は、前記一斉送信信号のデータ領域にて予め定めた第1文字列に続いて記述された予め定めたデータ量の文字列が予め定めた第2文字列と一致するか否かを判定する機能をさらに有し、前記処理手段を稼動状態に設定する機能は、前記文字列が前記第2文字列と一致すると判定されることで前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項5記載のプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べ、通信回線から送信される信号に起因する画像形成装置での消費電力の増加を抑制することができる。
本発明の請求項2によれば、稼働状態への移行判断の対象となる一斉送信信号を絞り込むことができ、本発明を採用しない場合に比べ、処理手段を稼動状態に設定する必要のある一斉送信信号の選別を容易にまた迅速に行うことができる。
本発明の請求項3によれば、本発明を採用しない場合に比べ、予め定めた複数の文字列を記憶しておくことにより、一斉送信信号のデータ領域において判断対象となる文字列を容易に特定することができる。
本発明の請求項4によれば、本発明を採用しない場合に比べ、予め定めた文字列とデータ量とを記憶しておくことにより、一斉送信信号のデータ領域において判断対象となる文字列を容易に特定することができる。
【0010】
本発明の請求項5によれば、本発明を採用しない場合に比べ、通信回線から送信される信号に起因する画像形成装置での消費電力の増加を抑制することができる。
本発明の請求項6によれば、稼働状態への移行判断の対象となる一斉送信信号を絞り込むことができ、本発明を採用しない場合に比べ、処理手段を稼動状態に設定する必要のある一斉送信信号の選別を容易にまた迅速に行うことができる。
本発明の請求項7によれば、本発明を採用しない場合に比べ、予め定めた複数の文字列を記憶しておくことにより、一斉送信信号のデータ領域において判断対象となる文字列を容易に特定することができる。
本発明の請求項8によれば、本発明を採用しない場合に比べ、予め定めた文字列とデータ量とを記憶しておくことにより、一斉送信信号のデータ領域において判断対象となる文字列を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の画像形成システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態の端末装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】本実施の形態の画像形成装置の構成を説明するブロック図である。
【図4】本実施の形態の画像形成装置にて設定される動作モードを説明する図である。
【図5】文字列記憶部に記憶されるプロトコル種別およびポート番号と特定の文字列の組み合わせとの一例を示した図である。
【図6】(a)データ領域内にプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した3つの特定文字列の組み合わせに合致する文字列が記述された一斉送信信号のデータ構成、(b)データ領域内にプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した2つの特定文字列の組み合わせに合致する文字列が記述された一斉送信信号のデータ構成をそれぞれ示した図である。
【図7】本実施の形態の画像形成装置がパケットを受信した際に行う処理の内容の一例を示すフローチャートの前半部分である。
【図8】本実施の形態の画像形成装置がパケットを受信した際に行う処理の内容の一例を示すフローチャートの後半部分である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成システムの説明>
図1は、本実施の形態の画像形成システム1の構成例を示す図である。図1に例示した画像形成システム1では、例えばユーザ(操作者、作業者)の作業スペース(例えば、デスク)等に設置された外部装置の一例としての端末装置2A〜2C(以下、「端末装置2」とも総称する)と、端末装置2からの画像形成命令に基づき用紙上に画像を形成する画像形成装置の一例としての画像形成装置3A,3B(以下、「画像形成装置3」とも総称する)とが、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等といった通信回線の一例としてのネットワーク4を介して双方向に通信可能に接続されている。通信回線としては、電話回線や衛星通信回線(例えば、デジタル衛星放送における空間伝送路)等を含んでもよい。
なお、ネットワーク4上には通常、複数の端末装置2と複数の画像形成装置3とが接続可能であるが、図1では、画像形成システム1の一例として、それぞれ3台の端末装置2と2台の画像形成装置3とが接続された構成を示したものであって、ネットワーク4上に4台以上の端末装置2や3台以上の画像形成装置3が接続される構成も含まれる。
【0013】
<端末装置の説明>
まず、端末装置2(2A〜2C)について説明する。
ネットワーク4に接続される端末装置2は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられ、文書や図形、グラフィック、写真等からなる画像データを作成/記憶する。
図2は、本実施の形態の端末装置2の構成を説明するブロック図である。図2に示したように、端末装置2は、端末装置2全体の動作制御や各種の情報処理を行う制御部20、予め定めたアプリケーションソフトに従って画像データを作成する画像データ作成部21、ユーザからの指示入力の受付やユーザへの各種情報の表示を行うユーザインタフェース(UI)部22を備えている。また、端末装置2は、プログラムや各種データ等が記憶される外部記憶部23、ネットワーク4との通信を行い、例えば画像データに関する画像形成命令を画像形成装置3に送信する通信部24を備えている。さらに、端末装置2は、端末装置2の各構成部に対して電力を供給する電力供給部25を備えている。
この制御部20、画像データ作成部21、UI部22、外部記憶部23、通信部24、および電力供給部25は、PCI(Peripheral Components Interconnect bus)バス26に接続され、相互に信号の送受信を行う。
【0014】
端末装置2の上記した構成部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、外部記憶部23に、端末装置2の各構成部を制御するためのオペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト、さらには、画像データ作成部21にて作成された画像データや外部記憶部23に記憶された画像データ等に関する画像形成装置3への画像形成命令(印刷命令:以下、「印刷ジョブ」)を生成するプリンタドライバプログラム等が記憶されている。そして、端末装置2の図示しない演算装置(CPU)が、これらのプログラムを外部記憶部23から主記憶装置(例えば、RAM)に読み込み、制御部20、画像データ作成部21、および通信部24等の各構成部の機能を実現する処理を行う。
【0015】
<端末装置での印刷ジョブの生成/送信処理の説明>
端末装置2においてユーザによる印刷指示がUI部22に入力されると、制御部20は、外部記憶部23からプリンタドライバプログラムを読み込み、起動させる。それにより、制御部20はプリンタドライバプログラムに従って、画像データ作成部21にて作成された画像データや外部記憶部23に記憶された画像データ等に関する印刷ジョブの生成処理を実行する。そして、制御部20は、生成した印刷ジョブを通信部24から画像形成装置3に送信する。
なお、「画像形成命令(印刷ジョブ)」とは、画像データに、例えば印刷部数、用紙サイズ、N−up(用紙の1ページ内に電子文書のNページを割り付ける印刷)、余白の大きさ等の印刷形式を指定する各種属性データが付加されたコマンドやデータからなる1まとまりの集合を意味する。
【0016】
<端末装置がネットワークを介して画像形成装置に要求するサービスの説明>
また、端末装置2の制御部20は、外部記憶部23から各種アプリケーションソフトを読み込んで起動させ、ネットワーク4に接続された画像形成装置3に対する各種サービス(役務)の提供を要求する信号(パケット)を通信部24から送信する。
具体的には、端末装置2の制御部20は、例えば次のような各種サービスの提供を画像形成装置3に要求する。すなわち、SNMP(Simple Network Management Protocol)を用いて画像形成装置3内部のMIB(Management Information Base)にて設定/管理情報を参照し、その結果を返信するサービス、WS−Discovery(Web Services Dynamic Discovery)を用いた機器の検索要求に応えるサービスやIP(Internet Protocol)アドレスの通知要求に応えるサービス、Webブラウザを用いた画像形成装置3内部の設定/管理情報の参照要求に応答するサービス、NetWareを用いたプリント要求に応えるサービス等の提供を画像形成装置3に要求する。
その場合に、制御部20は、画像形成装置3に対して要求するサービスを、画像形成装置3に送信するパケットに記述するプロトコル種別(TCP(Transmission Control Protocol)またはUDP(User Datagram Protocol))および送信先ポート番号(以下、ポート番号)により指定する。プロトコル種別はパケットのネットワーク層(IPヘッダ)で記述され、トランスポート層のプロトコル種別を特定するものであり。また、ポート番号はパケットのトランスポート層(TCPヘッダまたはUDPヘッダ)に記述され、上位のプロトコルを特定する情報である。パケットにてプロトコル種別およびポート番号が指定されることで、パケットが要求する各種サービスを実行するプロトコルは一意に定まる。そのため、パケットにて指定されたプロトコル種別およびポート番号によって、画像形成装置3に対して要求するサービスが画像形成装置3にて特定されることとなる。
【0017】
<画像形成装置の説明>
次に、画像形成装置3(3A,3B)について説明する。
本実施の形態の画像形成装置3は、省電力状態の設定期間に端末装置2から提供を要求されたサービスに関し、その要求を受け付けるか否かの選別(フィルタリング)を行うサービスを設定する。そのために、ネットワーク4内の複数の相手(画像形成装置3)に対して同じパケットを一斉送信する一斉送信信号の一例であるマルチキャストパケットについて、省電力状態の設定期間に受け付けるか否かをフィルタリングする対象とするプロトコル種別および通信ポートを予め設定する。そして、フィルタリング対象としたプロトコル種別と通信ポートに割り当てられた番号(ポート番号)とが指定されたマルチキャストパケットを受信した場合には、マルチキャストパケットのデータ領域(ペイロード)に記述された特定の文字列に基づいて、省電力状態から復帰するか否かを決定する。その結果、データ領域に特定の文字列を含む場合には、画像形成装置3は省電力状態から復帰する。
【0018】
すなわち、本実施の形態の画像形成装置3は、省電力状態に移行するに際して、マルチキャストパケット(一斉送信信号)のヘッダ領域に記述されるプロトコル種別およびポート番号を予め指定して、受け付けるか否かの選別対象とするサービスを限定して設定する。さらに、指定したプロトコル種別およびポート番号に対応させて、マルチキャストパケットのデータ領域(ペイロード)内に含まれる特定の文字列を予め指定する。そして、端末装置2から送られたマルチキャストパケットのヘッダ領域に、指定されたプロトコル種別およびポート番号が記述されていた場合には、指定されたプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定された特定の文字列がデータ領域に記述されたマルチキャストパケットに対してのみ反応し、省電力状態から復帰する。
それに対して、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号を記述していないマルチキャストパケットを受信した場合や、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号が記述されてはいるがデータ領域に特定の文字列が含まれないマルチキャストパケットを受信した場合には、画像形成装置3は省電力状態から復帰しない。
それにより、ネットワーク4を介して送信されるマルチキャストパケット(一斉送信信号)に起因して省電力状態から復帰する回数を低減し、画像形成装置3での消費電力を削減する。
なお、この場合に、マルチキャストパケットに加えて、またはマルチキャストパケットに代えて、ネットワーク4内の複数の相手(画像形成装置3)に対して同じパケットを一斉送信する一斉送信信号の一例であるブロードキャストパケットに関しても、同様な処理を行うように構成してもよい。
【0019】
一般に、印刷ジョブや、SNMPやWebブラウザを用いた設定/管理情報の参照要求に応えるサービス等を要求するパケットでは、サービスの要求先が特定される。そのため、これらのサービスを要求するパケットは、例えば端末装置2から1対1でパケットが送信されるユニキャストで画像形成装置3に送られる。そして、このような端末装置2からユニキャストで送信されるパケットは、宛先MAC(Media Access Control)アドレスや宛先IPアドレス等の画像形成装置3の識別情報が記述されているため、これらを通信部にてフィルタリングすることにより、通信部において自身宛のパケットか否かが直ちに判別される。それにより、自身にて処理の必要のあるパケットを受信した場合においてだけ、画像形成装置3は省電力状態から復帰すればよい。
【0020】
これに対し、画像形成装置3のIPアドレスが例えばDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバによって自動的に割り当てられるように構成されている通信環境では、画像形成装置3が通信を終えるとIPアドレスは自動的に回収され、他の画像形成装置3に割り当てられる。そのため、画像形成装置3のIPアドレスは、変更される可能性がある。それにより、例えば印刷ジョブを送信しようとする端末装置2は、画像形成装置3のIPアドレスを知る必要がある場合がある。その場合には、画像形成装置3は、例えばWS−Discoveryを用いた画像形成装置3のIPアドレスの通知要求をマルチキャストパケットとして一斉送信する。すなわち、端末装置2は画像形成装置3のIPアドレスに関する情報を有していないため、例えば画像形成装置3のUUID(Universally Unique Identifier)を指定して、指定したUUIDが割り当てられた画像形成装置3を例えばWS−Discoveryを用いてマルチキャストパケットでネットワーク4上を検索する。
【0021】
その場合に、マルチキャストパケットを受けた画像形成装置3は、マルチキャストパケットに宛先MACアドレスや宛先IPアドレス等の識別情報が記述されていないため、これらの識別情報によって自身宛のパケットか否かを判別できない。そこで、画像形成装置3では、通常、マルチキャストに対応する特定の通信ポート(例えば、WS−Discoveryでは3702番ポート)を常時、マルチキャストパケットを受け付ける状態に設定し、自身をサービスの要求対象とするマルチキャストパケットに対応可能な状態を設定している。そして、マルチキャストに対応する特定の通信ポートにてマルチキャストパケットを取得した場合には、マルチキャストパケットが自身で処理する必要があるものか否かを判定するために、パケットを判定する機能部である画像形成装置3の制御部(CPU)を省電力状態から復帰させる。そして、省電力状態から復帰した制御部が、例えば、マルチキャストパケットに記述されたUUIDが自身に割り当てられたものか否かを判断し、自身に割り当てられたUUIDであった場合に、自身のIPアドレスを応答することとなる。
【0022】
しかし、例えば画像形成システム1を構成する端末装置2A〜2Cから、例えばネットワーク4に接続された複数の画像形成装置3A,3Bの中の何れか一の画像形成装置3のIPアドレスの通知を要求するマルチキャストパケットが送信された場合に、画像形成装置3A,3B各々は、端末装置2A〜2Cから送られたマルチキャストパケットのすべてに応答して、省電力状態から復帰しなければならない。そのため、例えば画像形成装置3AへのIPアドレスの通知要求であっても、画像形成装置3A,3B双方ともに制御部が省電力状態から復帰することとなる。
そして、例えば数10〜数100台程度の端末装置2と数10〜数100台程度の画像形成装置3とが接続された大規模なネットワーク4では、1台の例えば端末装置2Aから送信されたマルチキャストパケットにより、数10〜数100台程度の画像形成装置3の制御部が一斉に省電力状態から復帰する。また、画像形成装置3各々の制御部は、数10〜数100台の端末装置2それぞれからのマルチキャストパケットにより省電力状態から復帰する。
そのため、画像形成装置3各々の制御部での省電力状態からの復帰回数が増え、それにより画像形成システム1全体で消費される電力は極めて大きなものとなる。
【0023】
そこで、本実施の形態の画像形成装置3では、省電力状態に移行するに際して、例えばマルチキャストパケット等の一斉送信信号のヘッダ領域に記述されるプロトコル種別およびポート番号を予め指定して、受け付けるか否かの選別対象とするサービスを限定して設定する。さらに、指定したプロトコル種別およびポート番号に対応させて、一斉送信信号のデータ領域内に含まれる特定の文字列を予め指定する。そして、端末装置2から送られた一斉送信信号内に、指定されたプロトコル種別およびポート番号が記述されていた場合には、指定されたプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定された特定の文字列がデータ領域に記述された一斉送信信号に対してのみ反応し、省電力状態から復帰する。
それに対して、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号を指定していない一斉送信信号を受信した場合や、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号を指定してはいるがデータ領域に特定の文字列が含まれない一斉送信信号を受信した場合には、画像形成装置3は省電力状態から復帰しない。
それにより、ネットワーク4を介して送信される一斉送信信号に起因して省電力状態から復帰する回数を低減し、画像形成装置3での消費電力を削減する。
【0024】
引き続いて、上記した動作を行う本実施の形態の画像形成装置3の構成について述べる。
図3は、本実施の形態の画像形成装置3の構成を説明するブロック図である。図3に示したように、画像形成装置3は、画像形成装置3全体の動作制御や画像処理を含む各種の情報処理を行う制御部30、ネットワーク4との通信を行って信号(パケット)を受信する受信手段の一例としての通信部31を備えている。
また、画像形成装置3は、操作入力部(不図示)でのユーザからの指示入力の受付や表示部(不図示)でのユーザへの各種情報の表示を行うユーザインタフェース(UI)部32、ネットワーク4を介して端末装置2から送信される印刷ジョブに従って用紙上に画像を形成する画像形成手段の一例としての画像出力部33を備えている。画像出力部33としては、例えば電子写真方式の画像形成エンジンが用いられる。
加えて、画像形成装置3は、画像形成装置3の各構成部を制御するためのオペレーティングシステム、オペレーティングシステムと協働して各構成部の特定の機能を実行するアプリケーションソフト等の各種のプログラムや、画像データ等の各種データが記憶される例えばハードディスク(HDD)で構成される外部記憶部34を備えている。
【0025】
また、画像形成装置3は、商用電源から供給される例えば100Vの交流電力または商用電源からの交流電力を予め定めた直流電圧(例えば、24V,12V,5V,3V)に変換して各構成部に供給する電力供給部35を備えている。そして、電力供給部35は、制御部30にて設定される画像形成装置3の動作モード(動作状態)に応じて、各構成部への駆動系電力や制御系電力の供給や停止を行う。一方、電力供給部35は、通信部31への制御系電力は動作モードに拘わらず常時供給する。
【0026】
画像形成装置3に配置された上記の制御部30、通信部31、UI部32、画像出力部33、外部記憶部34、および電力供給部35は、PCIバス36に接続され、相互に信号の送受信を行う。
また、画像形成装置3の上記した構成部は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。具体的には、画像形成装置3の図示しない演算装置(CPU)が、オペレーティングシステムやアプリケーションソフト等の各種プログラムを外部記憶部34から主記憶装置(例えば、RAM)に読み込み、制御部30、通信部31、UI部32、画像出力部33、外部記憶部34、および電力供給部35等の各構成部の機能を実現させる処理、または各構成部に対する動作制御や情報処理等を実行する。
【0027】
なお、このオペレーティングシステムやアプリケーションソフト等の各種プログラムに関するその他の提供形態としては、予め読み出し専用の記憶装置(ROM)に格納された状態にて提供され、主記憶装置(RAM)にロードされる形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROMを備えている場合には、演算装置(CPU)がセッティングされた後に、プログラムだけがROMにインストールされ、RAMにロードされる形態がある。また、インターネット等のネットワーク4を介してCPUにプログラムが伝送され、ROMにインストールされて、RAMにロードされる形態がある。さらにまた、DVD−ROMやフラッシュメモリ等の外部記録媒体からRAMにロードされる形態がある。
【0028】
<画像形成装置の制御部の機能の説明>
次に、画像形成装置3の制御部30の機能について説明する。
画像形成装置3の制御部30は、まず、例えば端末装置2からネットワーク4を介して画像形成装置3自身に向けて送信された印刷ジョブを処理する機能を有する。すなわち、制御部30は、ネットワーク4から送信された印刷ジョブに従って印刷ジョブに含まれる画像データに処理(画像処理)を施し、画像処理済みの画像データを画像出力部33に転送する。
【0029】
また、制御部30は、例えば端末装置2からの印刷ジョブ等のパケットの受信状況等に応じて画像形成装置3の動作モード(動作状態)を制御する機能を有する。図4は、本実施の形態の画像形成装置3にて設定される動作モードを説明する図である。図4に示したように、制御部30は、例えば動作モードとして、稼動状態の一例としての「画像形成動作モード」および「スタンバイモード」と、省電力状態の一例としての「スリープモード」とを選択的に設定する。
画像形成動作モードは、画像処理済みの画像データが画像出力部33に転送された場合に設定され、画像出力部33にて印刷ジョブに従った用紙上への画像形成動作を実行している動作状態である。また、スタンバイモードは、例えば端末装置2から印刷ジョブを取得した場合やUI部32にてユーザからの指示入力があった場合等に設定される。そしてスタンバイモードは、例えば制御部30にて印刷ジョブに含まれる画像データの全部または一部に関する画像処理が終了した際に直ちに画像形成動作モードに移行する動作状態である。さらにまた、スタンバイモードは、画像形成動作モードの終了後の予め定めた期間(待機時間T)においても設定される場合がある。画像形成動作モードやそれに準ずるスタンバイモードでは、電力供給部35から画像形成装置3内の画像形成に関する動作を行う構成部に駆動系電力が供給され、画像形成装置3内の制御/処理に関する動作を行う構成部に制御系電力が供給される。
【0030】
スリープモードは、例えば画像形成動作モードが終了しスタンバイモードが設定された後の予め定めた待機時間Tを経過しても、再び通信部31での印刷ジョブの受信やUI部32でのユーザからの指示入力がない場合に設定される動作状態である。スリープモードでは、通常、通信部31およびUI部32の操作入力部(不図示)だけが動作を継続し、制御部30を含めたそれ以外の構成部は動作を停止する。すなわち、スリープモードにおいては、電力供給部35から通信部31およびUI部32の操作入力部への制御系電力の供給は継続される。その一方で、電力供給部35から画像形成装置3内の画像形成に関する動作を行う構成部への駆動系電力が停止され、制御部30を含めた画像形成装置3内の制御/処理に関する動作を行う構成部への制御系電力が停止される。それにより、スリープモードによる画像形成装置3の省電力化が図られる。
ただし、スリープモードにおいても、通信部31にて受信された信号が自身にて処理の必要のあるものか否かを判定する必要がある場合には、制御部30は停止状態から復帰する(例えば、図4のCの領域部分)。この場合には、スリープモードにおける消費電力は、制御部30で消費される電力量だけ増加することとなる。
【0031】
また、画像形成装置3の制御部30は、通信部31がネットワーク4から受信したパケット(信号)を処理する処理手段の一例であって、受信したパケット(信号)にて要求された各種サービスを提供する機能を有する。すなわち、制御部30は、受信したパケットを解析して、パケットが画像形成装置3に対して要求するサービスをパケットに記述されたプロトコル種別およびポート番号によって特定する。そして、プロトコル種別およびポート番号によって特定されたプロトコルに基づきサービスを提供する。さらには、必要に応じて、サービスの提供により生成された情報をパケットの送信元に通信部31を介して送信する。
【0032】
さらに、制御部30は、スリープモードに移行する場合には、通信部31にて受け付ける例えばマルチキャストパケット等の一斉送信信号を指定する機能を有する。具体的には、制御部30は、通信部31に対して、一斉送信信号のヘッダ領域に記述されたプロトコル種別およびポート番号を予め指定して、フィルタリング対象とするサービスを設定する。さらに、指定したプロトコル種別およびポート番号に対応させて、一斉送信信号のデータ領域内に含まれる特定の文字列を予め指定する。そして、通信部31が予め指定されたプロトコル種別およびポート番号を含むものであって、そのプロトコル種別およびポート番号に対応させて予め指定した特定の文字列がデータ領域に記述された一斉送信信号を受信した場合に、通信部31は制御部30を省電力状態から復帰させる。それにより、制御部30は一斉送信信号にて要求されるサービスを提供する。
それによって、スリープモードを設定した場合に通信部31にて受け付ける一斉送信信号を制限して、制御部30が一斉送信信号に起因してスリープモードから復帰する回数を低減し、画像形成装置3での消費電力を削減する。
【0033】
<画像形成装置の通信部の説明>
続いて、画像形成装置3の通信部31について説明する。
画像形成装置3の通信部31は、ネットワーク4との間でデータ通信を行う。通信部31は、上記の図3に示したように、制御部30とネットワーク4との間のデータ通信を制御する通信制御部311、通信制御部311とPCIバス36との間のデータの送受信を行うPCIインターフェース(PCI_I/F)部312、通信制御部311とネットワーク4との間のデータの送受信を行うネットワークインターフェース(NET_I/F)部313を備えている。
【0034】
さらに、通信部31は、パケット判定部314および文字列記憶部315を備えている。
パケット判定部314は、NET_I/F部313から受信したパケットを通信制御部311から取得する。さらには、取得したパケットの宛先MACアドレスや宛先IPアドレス等の識別情報に基づきフィルタリングし、取得したパケットが自身宛のものか否かを判定する。そして、判定結果を通信制御部311に通知する。例えば、受信したパケットが自身宛の印刷ジョブであった場合には、通信制御部311にその旨を通知する。
【0035】
また、パケット判定部314は、判定手段の一例であって、スリープモードの設定期間に例えばマルチキャストパケット等の一斉送信信号を受信した場合には、受信した一斉送信信号のヘッダ領域に記述されたプロトコル種別およびポート番号に基づき、フィルタリングする対象を選別する。一斉送信信号のヘッダ領域内に、予め指定されたプロトコル種別およびポート番号が記述されていれば、次にデータ領域を調べる。そして、一斉送信信号のデータ領域内に、予め指定されたプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した特定の文字列が含まれるか否かを判定し、その判定結果を通信制御部311に通知する。例えば、受信した一斉送信信号に予め指定されたプロトコル種別およびポート番号がヘッダ領域に記述され、特定の文字列がデータ領域内に含まれる一斉送信信号であった場合には、通信制御部311にその旨を通知する。
【0036】
<省電力状態から復帰させる文字列の説明>
一方、文字列記憶部315は、パケット判定部314にて一斉送信信号を判定する際に用いる予め指定されたプロトコル種別およびポート番号と、プロトコル種別およびポート番号に対応させて予め指定された特定の文字列の組み合わせを記憶している。文字列記憶部315に記憶されるプロトコル種別およびポート番号と特定の文字列の組み合わせとは、スリープモードに移行する際に、制御部30により設定される。
この場合の「特定の文字列の組み合わせ」は、例えば、第1の特定文字列(第1文字列)、第2の特定文字列(第2文字列)、および第3の特定文字列(第3文字列)からなる3つの特定文字列の組み合わせで構成される。また、「特定の文字列の組み合わせ」は、例えば、第1の特定文字列(第1文字列)とそれに続く予め定めたバイト数の第2の特定文字列(第2文字列)とからなる2つの特定文字列の組み合わせで構成してもよい。すなわち、「特定の文字列の組み合わせ」は、データ領域内での判別対象となる文字列と、判別対象となる文字列の始まり(先端)を規定する先端指標と、判別対象となる文字列の終わり(後端)を規定する後端指標とで構成される。
【0037】
図5は、文字列記憶部315に記憶されるプロトコル種別およびポート番号と特定の文字列の組み合わせとの一例を示した図である。図5では、フィルタリング対象をWS−Discoveryを用いたサービスとして、WS−Discoveryに関するプロトコル種別であるUDPと、ポート番号である3702番ポートを指定している場合を例示している。そして、図5(a)は、プロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した特定の文字列として3つの特定文字列の組み合わせを設定した構成例を示し、(b)は、2つの特定文字列の組み合わせとを設定した構成例を示している。
【0038】
図5(a)に示した構成例では、データ領域内での判別対象となる文字列が第2の特定文字列(A_2)であり、判別対象となる第2の特定文字列(A_2)の始まりを規定する先端指標である第1の特定文字列(A_1)と、第2の特定文字列(A_2)の終わりを規定する後端指標である第3の特定文字列(A_3)とを指定している。それにより、パケット判定部314は、一斉送信信号のデータ領域から、文字列記憶部315に記憶された第1の特定文字列(A_1)と第3の特定文字列(A_3)とにより挟まれた文字列を抽出する。そして、抽出された文字列が文字列記憶部315に記憶された第2の特定文字列(A_2)と一致すれば、通信制御部311にその旨を通知する。通信制御部311は、それにより制御部30をスリープモードから復帰させる。
また、図5(b)に示した構成例では、データ領域内での判別対象となる文字列が第2の特定文字列(B_2)であり、第2の特定文字列(B_2)は、判別対象となる第2の特定文字列(B_2)の始まりを規定する先端指標である第1の特定文字列(B_1)に続く例えば64バイトからなる文字列であることを指定している。ここでの第2の特定文字列(B_2)のバイト数は、判別対象となる第2の特定文字列(B_2)の終わりを規定する後端指標となる。それにより、パケット判定部314は、一斉送信信号のデータ領域から、文字列記憶部315に記憶された第1の特定文字列(B_1)に続くデータ長(例えば、64バイト)からなる文字列を抽出する。そして、抽出された文字列が文字列記憶部315に記憶された第2の特定文字列(B_2)と一致すれば、パケット判定部314は通信制御部311にその旨を通知する。通信制御部311は、それにより制御部30をスリープモードから復帰させる。
【0039】
図6は、(a)データ領域内にプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した3つの特定文字列の組み合わせに合致する文字列が記述された一斉送信信号のデータ構成、(b)データ領域内にプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した2つの特定文字列の組み合わせに合致する文字列が記述された一斉送信信号のデータ構成をそれぞれ示した図である。
図6(a)では、判別対象となる文字列の先端指標である第1の特定文字列(A_1)が<d:Types>であり、後端指標である第3の特定文字列(A_3)が</d:Types>である。そして、判別対象となる文字列は、第1の特定文字列(A_1)である<d:Types>と第3の特定文字列(A_3)である</d:Types>とに挟まれた「Printer」である。この「Printer」が文字列記憶部315に記憶された第2の特定文字列(A_2)と一致すれば、パケット判定部314は通信制御部311にその旨を通知する。
また、図6(b)では、判別対象となる文字列の先端指標である第1の特定文字列(B_1)が<a:EndpointReference>であり、判別対象となる文字列は、第1の特定文字列(B_1)<a:EndpointReference>に続く予め定めたデータ長(後端指標)の文字列である「uuid:98765ac2−0670−4ad7−ac5a−9812345e3214」である。この「uuid:98765ac2−0670−4ad7−ac5a−9812345e3214」が文字列記憶部315に記憶された第2の特定文字列(B_2)と一致すれば、パケット判定部314は通信制御部311にその旨を通知する。
【0040】
本実施の形態の画像形成装置3では、通信部31は、画像形成動作モード、スタンバイモード、およびスリープモードの何れの設定時においても、ネットワーク4との間でデータ通信を行う。そして、画像形成装置3にスリープモード(省電力状態)が設定された場合において、通信部31のNET_I/F部313が端末装置2からの自身宛の印刷ジョブを取得(受信)した場合には、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する。それにより、電力供給部35は制御部30に対して制御系電力の供給を開始し、制御部30(CPU)を停止状態から復帰させる。
【0041】
また、上記したように、画像形成装置3にスリープモードが設定された期間においては、通信部31は、NET_I/F部313が一斉送信信号を取得(受信)した場合には、パケット判定部314にて一斉送信信号をフィルタリングさせる。すなわち、パケット判定部314は、一斉送信信号のヘッダ領域内に、予め指定されたプロトコル種別およびポート番号が記述されていれば、次にデータ領域を調べる。それにより、プロトコル種別およびポート番号により一斉送信信号を一次的に絞り込む。そして、一斉送信信号のデータ領域内に、予め指定されたプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定した特定の文字列が含まれるか否かを判定する。それにより、データ領域内の特定の文字列により一斉送信信号を二次的に絞り込む。その結果、受信した一斉送信信号に予め指定されたプロトコル種別およびポート番号がヘッダ領域に記述され、特定の文字列がデータ領域内に含まれる一斉送信信号であった場合には、通信制御部311にその旨を通知する。そして、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する。それにより、電力供給部35は制御部30に対して制御系電力の供給を開始し、制御部30(CPU)を停止状態から復帰させる。
一方、パケット判定部314がフィルタリングするプロトコル種別およびポート番号を記述していない一斉送信信号と判定した場合や、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号が記述されてはいるがデータ領域に特定の文字列が含まれない一斉送信信号と判定した場合には、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示しない。それにより、制御部30(CPU)は停止状態を維持する。
このように、通信部31(通信制御部311)および電力供給部35は、制御部30を停止状態(省電力状態)から復帰させて稼動状態を設定するか、または制御部30を停止状態に維持するように設定する設定手段としての機能を有する。
【0042】
<パケットに関する受信処理の説明>
本実施の形態の画像形成装置3において、通信部31にて受信したパケットに対する処理について説明する。
次の図7および図8は、本実施の形態の画像形成装置3がパケットを受信した際に行う処理の内容の一例を示すフローチャートである。
まず図7のフローチャートに示したように、本実施の形態の画像形成装置3では、通信部31の通信制御部311は、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する(ステップ101)。NET_I/F部313がネットワーク4からのパケットを取得すると(ステップ101でYes)、通信制御部311は、取得したパケットをパケット判定部314に転送する(ステップ102)。それにより、パケット判定部314は、取得したパケットの宛先MACアドレスや宛先IPアドレス等の識別情報に基づきフィルタリングし、取得したパケットが画像形成装置3自身宛のパケットであるか否かを判定する(ステップ103)。
一方、NET_I/F部313にてパケットが取得されない場合には、通信制御部311はそのままネットワーク4からのパケットの監視を継続する(ステップ101でNo)。
【0043】
パケット判定部314での判定の結果、取得したパケットが画像形成装置3自身宛のパケットであることが特定され(ステップ103でYes)、画像形成装置3にスリープモードが設定されている場合には(ステップ104でYes)、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する(ステップ105)。具体的には、通信制御部311は、制御部30への制御系電力の供給を指示する指示信号を生成して、PCIバス36を介して電力供給部35に出力する。
それに対応して、電力供給部35は、制御部30に対する制御系電力の供給を開始する(ステップ106)。それにより、制御部30が停止状態から復帰する(ステップ107)。
通信制御部311は、制御部30が停止状態から復帰した後、取得した画像形成装置3自身宛のパケットを制御部30に転送する(ステップ108)。
一方、画像形成装置3に画像形成動作モードまたはスタンバイモードがすでに設定されている場合には(ステップ104でNo)、通信制御部311は、取得した画像形成装置3自身宛のパケットを直ちに制御部30に転送する(ステップ108)。
【0044】
それにより、制御部30は、パケットを処理する。例えばパケットが印刷ジョブである場合には、制御部30は、画像形成装置3をスタンバイモードに移行させ、印刷ジョブに含まれる画像データに画像処理を施し、画像処理済みの画像データを画像出力部33に転送する。そして、画像出力部33にて画像形成動作が実行される。また、例えばパケットがSNMPやWebブラウザを用いた設定/管理情報の参照要求に応えるサービス等の提供を要求するものである場合には、制御部30は、画像形成装置3をスリープモードに維持したまま、かかるサービスを提供する。
ステップ108にてパケットを制御部30に転送した後には、通信制御部311は、ステップ101に戻り、ネットワーク4を介して送信されるパケットがNET_I/F部313にて取得されるのを監視する。
【0045】
次に、ステップ103におけるパケット判定部314での判定の結果、宛先MACアドレスや宛先IPアドレス等の識別情報に基づくフィルタリングにより、取得したパケットが画像形成装置3自身のパケットであることが特定されない場合であって(ステップ103でNo)、画像形成装置3に画像形成動作モードまたはスタンバイモードがすでに設定されている場合には(ステップ109でNo)、通信制御部311は、取得したパケットを制御部30に転送する(ステップ108)。それにより、制御部30は、パケットを処理する。
【0046】
一方、取得したパケットが画像形成装置3自身のパケットであることが特定されない場合であって(ステップ103でNo)、画像形成装置3にスリープモードが設定されている場合には(ステップ109でYes)、パケット判定部314は、取得したパケットに記述されたプロトコル種別およびポート番号を参照する(ステップ110)。そして、パケット判定部314は、取得したパケットに記述されたプロトコル種別およびポート番号が、文字列記憶部315に記憶されたプロトコル種別およびポート番号と一致するか否かを判定する(ステップ111)。
パケット判定部314での判定の結果、文字列記憶部315に記憶されたプロトコル種別およびポート番号と一致しない場合には(ステップ112でNo)、通信制御部311は、取得したパケットを受け取らない(ステップ113)。それにより、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示せず、制御部30は停止状態が維持される。
【0047】
一方、パケット判定部314での判定の結果、文字列記憶部315に記憶されたプロトコル種別およびポート番号と一致する場合には(ステップ112でYes)、次の図8のフローチャートに移り、パケット判定部314は、パケットのデータ領域内に、文字列記憶部315に記憶された特定の文字列と一致する文字列が含まれるか否かを判定する(ステップ114)。
この場合の判定は、上記の図5(a)で説明したように、パケットのデータ領域から文字列記憶部315に記憶された第1の特定文字列(A_1)と第3の特定文字列(A_3)とにより挟まれた文字列を抽出する。そして、抽出された文字列が文字列記憶部315に記憶された第2の特定文字列(A_2)と一致するか否かを判定する。また、上記の図5(b)で説明したように、パケットのデータ領域から、文字列記憶部315に記憶された第1の特定文字列(B_1)に続く予め定めたデータ長(例えば、64バイト)からなる文字列を抽出する。そして、抽出された文字列が文字列記憶部315に記憶された第2の特定文字列(B_2)と一致するか否かを判定する。
パケット判定部314にてパケットのデータ領域内に文字列記憶部315に記憶された特定の文字列と一致する文字列が含まれると判定された場合には(ステップ115でYes)、通信制御部311は、ステップ105に移り、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示する。そして、それに続いて、ステップ106以降の処理を行う。それにより、制御部30は、通信制御部311から転送されたパケットを処理する。例えばパケットがWS−Discoveryを用いた機器の検索要求に応えるサービスやIPアドレスの通知要求に応えるサービス等の提供を要求するものである場合には、制御部30は、かかるサービスを提供する。
【0048】
次に、パケット判定部314での判定の結果、パケットのデータ領域内に文字列記憶部315に記憶された特定の文字列と一致する文字列が含まれないと判定された場合には(ステップ115でNo)、通信制御部311は、取得したパケットを受け取らない(ステップ116)。それにより、通信制御部311は、電力供給部35に対して制御部30への制御系電力の供給を指示せず、制御部30は停止状態が維持される。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置3は、省電力状態に移行するに際して、ネットワーク4上に接続された画像形成装置3に一斉送信される一斉送信信号のヘッダ領域に記述されるプロトコル種別およびポート番号を予め指定して、受け付けるか否かの選別対象とするサービスを限定して設定する。さらに、指定したプロトコル種別およびポート番号に対応させて、一斉送信信号のデータ領域内に含まれる特定の文字列を予め指定する。そして、端末装置2から一斉送信信号内に、指定されたプロトコル種別およびポート番号が記述されていた場合には、指定されたプロトコル種別およびポート番号に対応させて指定された特定の文字列がデータ領域に記述された一斉送信信号に対してのみ反応し、省電力状態から復帰する。
それに対して、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号を指定していない一斉送信信号を受信した場合や、フィルタリングするプロトコル種別およびポート番号を指定してはいるがデータ領域に特定の文字列が含まれない一斉送信信号を受信した場合には、画像形成装置3は省電力状態から復帰しない。
それにより、ネットワーク4を介して送信される一斉送信信号に起因して省電力状態から復帰する回数を低減し、画像形成装置3での消費電力を削減する。
【符号の説明】
【0050】
1…画像形成システム、2(2A,2B,2C)…端末装置、3(3A,3B)…画像形成装置、4…ネットワーク、30…制御部、31…通信部、32…ユーザインタフェース(UI)部、33…画像出力部、34…外部記憶部、35…電力供給部、311…通信制御部、314…パケット判定部、315…文字列記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信回線を介して自装置宛に送信される画像形成命令および当該通信回線を介して一斉に送信される一斉送信信号を受信する受信手段と、
稼動状態と当該稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態とが設定され、当該稼動状態にて前記受信手段にて受信した前記画像形成命令および前記一斉送信信号を処理する処理手段と、
前記処理手段に省電力状態が設定された期間においてデータ領域に予め定めた文字列が記述された前記一斉送信信号を前記受信手段にて受信することにより、当該処理手段を稼動状態に設定する設定手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記一斉送信信号を受信する通信ポートが予め定められ、前記設定手段は、当該受信手段の予め定められた当該通信ポートにより前記文字列がデータ領域に記述された前記一斉送信信号を受信することにより、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記一斉送信信号のデータ領域に予め定めた第1文字列と予め定めた第3文字列との間に予め定めた第2文字列が記述されている場合に、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記一斉送信信号のデータ領域にて予め定めた第1文字列に続いて記述された予め定めたデータ量の文字列が予め定めた第2文字列と一致する場合に、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
コンピュータに、
通信回線を介して自装置宛に送信される画像形成命令および当該通信回線を介して一斉に送信される一斉送信信号を受信する機能と、
受信した前記画像形成命令および前記一斉送信信号を処理する処理手段に稼動状態よりも消費電力が低い省電力状態が設定された期間においてデータ領域に予め定めた文字列が記述された前記一斉送信信号を受信することにより、当該処理手段を稼動状態に設定する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記処理手段を稼動状態に設定する機能は、前記文字列がデータ領域に記述された前記一斉送信信号を予め定められた通信ポートにより受信することにより、前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項5記載のプログラム。
【請求項7】
前記一斉送信信号のデータ領域に予め定めた第1文字列と予め定めた第3文字列との間に予め定めた第2文字列が記述されているか否かを判定する機能をさらに有し、
前記処理手段を稼動状態に設定する機能は、前記第2文字列が記述されていると判定されることで前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項5記載のプログラム。
【請求項8】
前記一斉送信信号のデータ領域にて予め定めた第1文字列に続いて記述された予め定めたデータ量の文字列が予め定めた第2文字列と一致するか否かを判定する機能をさらに有し、
前記処理手段を稼動状態に設定する機能は、前記文字列が前記第2文字列と一致すると判定されることで前記処理手段を稼動状態に設定することを特徴とする請求項5記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−211764(P2010−211764A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60067(P2009−60067)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】