説明

画像形成装置、その制御方法及びその制御プログラム

【課題】環境や条件に応じて地紋画像を適正に出力すること。
【解決手段】 記録媒体の表面に地紋画像を形成する画像形成手段と、画像形成手段の状態を検出する検出手段と、検出手段が検出した画像形成手段の状態に応じて、地紋画像を形成する条件を調整する調整手段と、を備えることを特徴とする。例えば、帯電ローラ2から感光体1に印加される電流を用いて、感光体1の膜厚を検出し、その膜厚から、地紋画像を形成する際に適した線数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地紋画像を付加して像形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、文書を印刷する場合に、印刷される文書の画像の背景に地紋画像を形成する技術が知られている。この技術は、例えば、重要な文書の不正な複製を抑止する目的で利用される。領収書や証券や証明書などの文書の背景に予め特殊な模様を埋め込み、画像形成すると背景に「複製」などの文字や画像(以降、潜像と呼ぶ)が浮かび上がるようになっている。このように背景に埋め込まれている画像は、一般に「地紋画像」と呼ばれ、原本の複写を抑止する効果などを実現する。
【0003】
地紋画像は、画像形成後にドットが明瞭化する領域(潜像部)と、画像形成後にドットが見えにくくなる或いは見えなくなる領域(背景部)とを含む。潜像部のドット密度は、背景部のドット密度よりも高く構成されているが、これら2つの領域の画像の平均濃度はほぼ同じである。従って、一見すると文字や画像が隠れていることは分からない。
【0004】
一般的に、画像形成装置は、原稿の微小なドットを読み取る入力解像度や微小なドットを再現する出力解像度に依存した画像再現能力の限界が存在する。したがって、複写機の画像再現能力の限界を超えた孤立した微小なドットが原稿中に存在すると、その複写物では微小なドットが完全には再現されない。
【0005】
つまり、地紋画像の背景部のドット1つ1つが複写機の画像再現能力の限界を超えた小ささで作成されている場合、高いドット密度となっている部分は、印刷物を原稿として複写した場合、複写抑止地紋の大きなドットとして再現される。しかし、低いドット密度の部分は、それぞれの小さなドットが再現できず、消えてしまう。したがって、画像形成後、隠された画像(潜像)が浮かび上がる現象が起きる。
【0006】
また、画像形成により分散したドットが完全に消えなくとも、集中したドットと比較して明らかに画像形成後の濃度差があるような場合にも、隠された画像(潜像)が浮かび上がる。
【0007】
以上のような地紋画像を形成する技術は以前から存在していたが、近年、ソフトウェアやレーザプリンタ等の画像形成装置における技術の向上により、容易に、地紋画像が背景に配置された文書を出力する技術が実現されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この地紋画像の出力方法では、必要な時に必要な枚数だけ普通紙を用いて背景に地紋画像が配置された文書を印刷できる。また、利用者が任意の文字や画像を潜像として地紋画像に埋め込むことができる。従来から使われている会社のロゴや禁複写等の文字だけでなく、例えば出力プリンタを識別するシリアル番号やIPアドレス、プリント命令を発行したコンピュータを識別するコンピュータ名やIPアドレスを潜像として地紋画像に埋め込むことができる。更には、プリント命令を発行したユーザのユーザ名やログイン名、印刷処理を識別するためのプリントジョブ番号、印刷日時、印刷場所、電子文書のファイル名など様々な情報を埋め込むこともでき、より高度な追跡機能を実現できる。
【特許文献1】特開2001−197297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した地紋画像の出力方法においては、プリントエンジン特性(特にドラム感度)の変化、印刷環境(温度や湿度)や出力する用紙(メディア)等の状態に依存して、潜像部の濃度と背景部の濃度が変動する。
【0010】
したがって、地紋画像の潜像部及び背景部との印刷濃度がほぼ等しくなり、かつ地紋画像が形成された用紙を原稿とした画像形成後に潜像部が浮かび上がるように地紋画像の潜像部と背景部の濃度を適切に調整する地紋用のキャリブレーションが必要になる。
【0011】
そこで従来は、文書と地紋画像を合成する前に、潜像部と背景部の一方又は双方を、最終的に得られる潜像部と背景部の濃度の差が視覚的に分りづらい程度に少しずつ濃度変化させ、濃度を変えて試し刷りを複数回実行していた。そして、印刷時に潜像部と背景部の濃度がほぼ等しくなり、ターゲットとなる複写機で複写した後に潜像が浮かび上がる地紋画像を、視覚的に見つける作業が必要だった。特に、印刷環境の変化や耐久に依存する濃度変動幅が大きなプリンタの場合、最適な地紋画像を見つけるために必要な地紋濃度形成条件の組み合わせは非常に多く、試し刷りに多数の紙及び時間を要していた。
【0012】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、環境に応じて地紋画像を適正に出力することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
記録媒体の表面に、地紋画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体に形成された画像が複写された場合に識別可能に現われる潜像部及び背景部を、前記地紋画像として形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段の状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記画像形成手段の状態に応じて、前記地紋画像を形成する条件を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
記録媒体の表面に地紋画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成装置の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記画像形成装置の状態に応じて、地紋画像を形成する条件を調整する調整工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
記録媒体の表面に、潜像部と背景部とを有する地紋画像を形成する画像形成装置の制御プログラムであって、
前記画像形成装置の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記画像形成装置の状態に応じて、地紋画像を形成する条件を調整する調整工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環境や条件に応じて地紋画像を適正に出力することができます。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
(第1実施形態)
[画像形成装置例の概略構成]
図1は本実施の形態の画像形成装置の概略構成図である。ここでは、画像形成装置として、転写式電子写真プロセスを使用した、接触帯電方式、反転現像方式のレーザビームプリンタについて説明する。このレーザビームプリンタは、記録媒体の表面に地紋画像を形成する画像形成手段を備えている。以下、画像形成手段の各構成部分について、分けて説明する。
【0019】
[帯電部]
1は静電潜像を担持するための像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光体と略記する)である。感光体1は、例えば、アルミニウム等の導電性ドラム基体と、その外周面に形成した感光層(光導電層)で構成した、直径30mm、長さ350mmの、負帯電極性のOPC感光体(ネガ感光体)である。また、感光体1は、例えば、矢印の方向に150mm/secのプロセススピード(周速度)をもって回転駆動されている。ここで感光体1の感光層の厚み(膜厚)は、初期状態では30μmであるものとする。
【0020】
2は像担持体の表面を帯電するための帯電手段としての帯電ローラである。この帯電ローラ2は中心の芯金と、その外周に同心一体にローラ状に形成した弾性導電層と、更にその外周面に形成した抵抗層とを含む、複合層構造のローラである。弾性導電層は、例えば、104Ωcm以下の導電性ゴム(EPDM等)などの単層あるいは複合層である。抵抗層は107〜1011Ωcm、厚さ100μm程度以下のヒドリンゴムやトレジン(商品名、ナイロン樹脂、カーボン分散)等の単層あるいは複合層である。抵抗層は感光体へのリーク防止や弾性導電層中の可塑剤のブリード防止等の役目をする。
【0021】
帯電ローラ2はその芯金の両端部を不図示の軸受け部材に回転自由に軸受けさせて、ドラム型の感光体1に並行に配置して不図示の押圧手段で感光体1に対して所定の押圧力をもって圧接させる。本例の場合は感光体1の回転駆動に伴い矢印の反時計方向に従動回転する。感光体1と帯電ローラ2の圧接ニップ部nが帯電部位(帯電領域)である。
【0022】
3は帯電バイアス印加電源(帯電部材用電源)であり、この電源3から帯電ローラ2の芯金に所定のバイアス電圧が印加されることにより感光体1の外周面が接触帯電方式で所定の極性・電位に一様に帯電処理される。
【0023】
本実施の形態は交流電圧に直流電圧を重畳したバイアス電圧(AC+DC)を帯電ローラ2に印加するAC印加方式である。帯電制御ユニットS1により、印加される帯電バイアスは制御される。なお、帯電制御ユニットS1は、各種データベースを考慮して中央制御ユニット50より制御される。
【0024】
AC電流成分は、感光体1、及び帯電ローラ2が初期の状態で帯電均一性を確保できる様に設定されている。本実施の形態においては、感光体1の表面を均一帯電処理するに当たり、
直流電圧成分:−750Vの定電圧
交流電流成分:周波数1800Hz、1500μA、の定電流制御
を帯電ローラ2に印加することで、感光体1の表面電位(帯電電位、暗電位)として−730Vを得ることができる。
【0025】
本実施形態に係る帯電した像担持体としての感光体1の表面に露光して、感光体1の表面に静電潜像を生成する露光手段として、レーザ駆動部5を備えている。レーザ駆動部5は、画像データを入力し、感光体1の帯電処理面に対して、入力した画像データに応じた露光を行なう。これにより、感光体1の表面に、画像データに応じた静電潜像が形成される。レーザ駆動部5は、回転する6面体のポリゴンミラー(不図示)に対してレーザビームを走査する。なお、レーザ駆動部5は、中央制御ユニット50と接続されており、中央制御ユニット50は、種々の条件に応じて露光条件を調節することができる。
【0026】
[現像部]
現像スリーブ6は、現像剤を収容する収容部43を有し、収容した現像剤を用いて、像担持体としての感光体1の表面に生成された静電潜像を現像する現像手段である。ここでは、静電潜像の露光明部にマイナストナー(ネガトナー)を付着させることで静電潜像を反転現像する。収容部43からのトナー補給の制御は、トナー補給制御ユニットS3が補給ローラ44の回転数を制御することにより行われる。
【0027】
現像スリーブ6は、感光体1に0.3mmのギャップを介して対向配設された非磁性の現像剤担持体としての現像スリーブ6aと、現像スリーブ6aを反時計方向に回転駆動する不図示のモータとを含む。
【0028】
現像スリーブ6aの外周面には、収容部43に収容されたトナーが薄層として塗布され、マグネットローラの磁力で保持されて、感光体1と現像スリーブ6aとの対向部である現像部位に搬送される。また現像スリーブ6aには現像制御ユニットS4から、本実施の形態においては
DC成分:−500V
AC成分:周波数1800Hz、VPP1400V
の重畳電圧が現像バイアス電圧として印加される。なお、中央制御ユニット50は、トナー補給制御ユニットS3と現像制御ユニットS4とを制御する。現像バイアスが印加されることにより、現像部位においてトナーが飛翔して感光体1面の静電潜像が現像される。
【0029】
[転写]
7は感光体1の表面に担持されたトナー画像を記録媒体としての記録紙に転写する転写手段としての転写ローラである。この転写ローラ7は、中心の芯金と、その外周に同心一体にローラ状に形成した中抵抗の弾性層とからなる。本実施形態における転写ローラ7は、抵抗が5×108Ω、直径16mmの導電性ゴムローラである。
【0030】
そして転写ローラ7はその芯金の両端部を不図示の軸受け部材に回転自由に軸受けさせて、ドラム型の感光体1に並行に配置して不図示の押圧手段で感光体1に対して所定の押圧力をもって圧接させてある。このため感光体1の回転駆動に伴い矢印の反時計方向に従動回転する。感光体1と転写ローラ7の圧接ニップ部が転写部位である。
【0031】
記録紙は不図示の給紙部から給紙され、所定のタイミングで、感光体1と転写ローラ7の圧接ニップ部である転写部位に給送される。即ち、感光体1の面に形成されたトナー画像の先端部が転写部位に到達したとき、記録紙の先端部も丁度転写部位に到達するタイミングにて記録紙が転写部位に給送される。
【0032】
転写部位に給送された記録紙はその表面が感光体1に密着して転写部位を挟持搬送されていく。また、転写部位に記録紙の先端部が到達してから後端部が転写部位を抜け出るまでの間、転写ローラ7の芯金には転写バイアス印加電源(転写部材用電源)からトナーと逆極性の所定の直流バイアスが転写バイアスとして印加される。本実施の形態では+3500VのDC電圧を印加する。転写ローラ7に対して印加する電圧は、転写制御ユニットS5によって制御される。転写制御ユニットS5は、中央制御ユニット50と接続されており、中央制御ユニット50によって制御される。
【0033】
そして、記録紙が転写部位を挟持搬送されていく過程において、感光体1側のトナー画像が記録紙側に、転写ローラ7によって形成される転写電界の作用と転写部位における押圧力にて順次に転写されていく。
【0034】
[定着]
転写ローラ7を通過し、感光体1面から分離された記録紙は不図示の定着装置へ搬送されてトナー画像が定着され、その後装置本体外部に排出されるか、又は例えば、裏面にも像形成するものであれば、転写部位への再搬送手段へ搬送される。
【0035】
[クリーニング]
9は、クリーニング装置であり、クリーニングブレードを用いて、記録紙に転写されずに感光体1面に残ったトナー(転写残りトナー)や紙粉等の残留付着汚染物の除去を行なう。
【0036】
[環境検知]
42は、環境センサであり、画像形成手段の周囲の環境として、温度、湿度を検出する。ここで、環境センサ42の検出結果はセンサ制御ユニットS2を介して、中央制御ユニット50に送られる。
【0037】
帯電制御ユニットS1、センサ制御ユニットS2、トナー補給制御ユニットS3、現像制御ユニットS4、転写制御ユニットS5は、画像形成手段の状態を検出する検出手段として機能する。中央制御ユニット50は、検出手段が検出した画像形成手段の状態に応じて、地紋画像を形成する条件を調整する調整手段として機能する。
【0038】
(2)画像データの制御
画像データ(600dpi、256階調)が所定の変換テーブル(輝度濃度変換テーブルや目標濃度変換テーブル、以後LUTと称する)で所望のデータに加工された後、画像形成装置の特性を補正するγ変換テーブル(γ−LUT)で変換される。所定の誤差拡散やスクリーン処理若しくはPWM等の処理を施された後、レーザ駆動部5へ画像データが転送される。
【0039】
図2は、感光体1が同一膜厚の状態における256階調と、256階調の画像データを横軸に、600線と200線の反射濃度を縦軸にプロットしたグラフである。これより、線数の低いほうが画像データに対する濃度の変化率が安定に緩やかであることがわかる。なお、600線とは、主走査の画素密度が1inchあたり、600画素(ライン)の書き込み密度(解像度)であることを示す。例えば、166線と268線のイメージを図8に示す。
【0040】
これに対し、感光体の膜厚が厚い場合と薄い場合ではドットの大きさ、及びドット再現性、濃度が異なってくる。感光体の膜厚が異なる場合の静電潜像の模式図を図3に示す。図3は縦軸に感光体電位、横軸に感光体の表面上での位置を表わし、実線は膜厚が27μmであるときの静電潜像の電位分布を示し、破線は膜厚が14μmであるときの静電潜像の電位分布を示している。膜厚が厚いとき(図では感光体膜厚27μm)は静電潜像が浅くて広い、即ち、ドット再現性が安定しない、膜厚が薄い場合(図では感光体膜厚14μm)には静電潜像が深くて狭い、即ち、ドット再現性が安定する。つまり、従来技術の手法を用いて出力濃度を安定させても、感光体の膜厚に応じてドットの再現性(ドットゲイン)、中間調域の濃度と粒状感などが異なってくる。
【0041】
感光体の膜厚が薄くなるにつれ、濃度変動(特に中間調の濃度域が変動)とドットの再現性が変化してしまう。図9に示すように、複写前は潜像部が目立たず、複写後に潜像部が浮かび上がる地紋画像を形成しようとしても、ドット再現性が変化したままであればうまくいかない。例えば、地紋内の潜像部が複写前から浮かび上がってしまったり、複写後に浮かび上がらなかったりと、適切な潜像を形成することができなくなってしまう。
【0042】
そこで、本実施の形態では、感光体の膜厚の変化を検出する検出手段として帯電制御ユニットS1を用いる。帯電ローラ2を用いた場合、所定のバイアスを印加した際に生じる直流電流成分と感光体の膜厚(容量)には一対一の相関関係があることを利用する。例えば、図5のような相関関係を用いて、直流電流値(絶対値)が27.1μAの時は残膜厚が30μm、34.9μAの時は残膜厚が23μm、47.7μAの時は残膜厚が16μmと、残膜厚を求めることができる。図5のような相関関係を示すデータを、中央制御ユニット50又は帯電制御ユニットS1に格納すればよい。以上のように、感光体に流れ込む直流電流を検知することで、感光体の膜厚を知ることができる。中央制御ユニット50は、検出した膜厚結果に応じて、地紋を形成する際の線数(解像度)を変更する。
【0043】
[地紋画像に対する制御]
ある画像信号において、地紋画像が含まれている場合、地紋画像(特に背景部)のみを限定して線数を変更する。地紋画像が含まれている場合の地紋画像の線数変更までの過程を、図6、図7に示す。
【0044】
画像情報に地紋画像が含まれていると判断された場合に、図6のフローチャートに示すプログラムを起動する。まず環境センサ42によって検知した環境情報を取得する(S601)。次に、像担持体の特性変化として、帯電制御ユニットS1を利用して感光体の膜厚を検出する(S602)。そして、夫々の検出結果を中央制御ユニット50内に格納されているデータベースと照合する(S603)。データベースと照合し、地紋画像の形成条件(例えば線数)を決定する(S604)。以上のように、地紋画像の形成条件を決定し、画像形成を開始する。
【0045】
予め感光体の膜厚などの画像形成手段の状態に対する各線数の階調濃度、ドット再現性をデータベース化しておき、地紋画像を形成するのに最適な画像形成条件を予測算出する。なお、画像形成手段の状態とは、帯電電位、露光電位、現像電位、現像バイアスなど現像する際に画像濃度に影響する要素を指す。
【0046】
例えば、感光体の膜厚が23μm以上(直流電流値の絶対値が34.9μA以下)の時は100線で、地紋画像の背景部を形成すればよい。また、感光体の膜厚が16μm以上、23μm未満の(直流電流値の絶対値が34.9μA〜47.7μAの間)時は140線で地紋画像の背景部を形成すればよい。更に、膜厚が16μm未満(直流電流値の47.7μA超)の時には170線で地紋画像の背景部を形成すればよい。なお、潜像部の線数は80線とする。
【0047】
図4に、感光体の膜厚が27μm(23〜30μmの代表値)での100線の画像の反射濃度と、20μm(16〜23μmの代表値)での140線の画像の反射濃度と、14μm(16μm未満の代表値)での170線の画像の反射濃度を示す。この図から、感光体の膜厚が薄くなるにつれ、ドット再現性が向上するため、線数を大きくすれば、画像データに対する反射濃度の変化率を一定にできることがわかる。これによって、地紋画像の潜像部を狙いどおりの濃度とドット再現性にて形成できる。
【0048】
中央制御ユニット50は、図7に示すフローチャートにしたがって、地紋の画像形成条件を決定する。図7は、中央制御ユニット50が行なう、地紋画像形成条件の調整処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
まず、ステップS701において、各種の検出手段から検出結果を取得する。次に、ステップS702において、環境センサ42からの出力を参照し、湿度が第1の所定値(ここでは80%)以上か否かを判定する。湿度が80%以上と判定した場合には、ステップS703に進み、H/H(High Humidity)用のデータベースを参照する。湿度が80%以上ではない判定した場合には、ステップS704に進み、L/H(Low Humidity)用のデータベースを参照する。
【0050】
次にステップS705、706では、感光体1(図中Dr)の膜厚が、第2の所定値(ここでは20μm)以上か否かを、帯電制御ユニットS1からの検出結果に基づいて判定する。ステップS705で、膜厚が20μm未満と判定すると、ステップS707に進み、膜厚20μm未満用のデータベースを参照し、更に、ステップS708において線数=Aに決定する。ステップS705で、感光体1の膜厚が20μm以上と判定すれば、ステップS709に進み、膜厚20μm以上用のデータベースを参照し、更に、ステップS710において線数=Bに決定する。
【0051】
一方、ステップS706において、膜厚が20μm未満と判定すると、ステップS711に進み、膜厚20μm未満用のデータベースを参照し、更に、ステップS712において線数=Cに決定する。ステップS706で、感光体1の膜厚が20μmより大きいと判定すれば、ステップS713に進み、膜厚20μm以上用のデータベースを参照し、更に、ステップS708において線数=Dに決定する。
装置が動作している環境の湿度が高くなるほど、中間調の濃度域が低めになりドット再現性も低下する傾向にある。そのため、H/H環境とL/H環境においてデータベースを選択する構成とする。特に、湿度が高いH/H環境の線数を低めに設定し、L/H環境における線数をH/H環境に比べ高めに設定する。具体的には、H/H環境用のデータベースから選択される感光体の膜厚ちがいである背景部の線数Aと線数Bはそれぞれ、線数Aが150線、線数Bは100線とした。また、L/H環境用のデータベースから選択される感光体の膜厚ちがいでの背景部の線数Cが200線、線数Dは160線とした。また、このときの潜像部の線数は、30〜90線が適切であった。なお、ここで示した線数の選択値は、感光体の特性はもちろん、現像剤の特性などに大きく左右されるものである。具体的な線数に関しては、一例を示したにすぎず、装置構成によっては、線数の関係が本例と異なることもありえる。
【0052】
通常、線数を変更してしまうと、画質が変わってしまうが、地紋画像に求められる主目的は画質ではなく、複写防止のための潜像画像(潜像部と背景部)を確実に形成することが第一目的であるので、線数を変更しても支障はない。
【0053】
以上のように、感光体の膜厚に応じて、地紋画像(特に背景部)の線数を変更することによって、地紋画像を適正濃度にて形成できるので、地紋用キャリブレーションを簡単に行うことができ、適切な濃度の地紋画像の潜像と背景を形成できる。
【0054】
なお、画像データの取り扱いは、スクリーン処理やPWMなど種々の画像処理においても、同様の効果があるのは勿論である。
【0055】
(第2実施形態)
第1実施形態では、感光体の膜厚を検知した検出結果と予め登録してあるデータベースを照合し、地紋画像形成の線数(特に背景部)を選択した。これに対し、本実施の形態においては、感光体の膜厚検知に加え、現像剤の劣化状態を検出する。ここでは、トナー補給制御ユニットS3が、現像スリーブ6aの回転時間又は回転数を積算し、その積算値を用いて、現像剤の劣化状態を検出する。初期の現像剤と何万枚か画像形成を行った現像剤では、トナーに添加された外添剤の状態や量、キャリアの帯電特性が変化してくるため、同じ現像コントラスト電位を印加しても現像される状態が異なり、ドット再現性や現像性が変わる。そこで、感光体の膜厚に加え、現像スリーブの積算回転時間や積算回転数から現像剤の状態を検出し、予め登録してあるデータベースから地紋画像形成の線数(特に背景部)を選択する。現像剤の状態を考慮することによって、地紋画像の潜像部と背景部を適切濃度にて形成できる。
【0056】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、感光体に流れ込む電流から膜厚を検出したが、例えば感光体の回転数、あるいは画像形成枚数をカウントし、感光層膜の削れ量を予測して膜厚を算出することも可能である。
【0057】
第2実施形態では、現像スリーブ6aの回転時間を用いて現像剤の劣化状態を検出したが、トナー消費量を積算して、その値から現像剤の劣化状態を検出してもよいし、画像形成枚数をカウントして、そのトータル枚数から現像剤の劣化状態を求めてもよい。
【0058】
第1、第2実施形態においては、地紋画像の画像形成条件として線数を変更したが、線数ではなく、ドットの大きさ、又は、画像濃度を変更しても同様の効果を得ることができる。ドットの大きさ、線数、画像濃度の変更の制御は、独立、あるいは併用して変更してもよい。
【0059】
また、環境(温度・湿度)によって画像濃度、階調性は、変動するので、環境を検出する手段を具備させ、環境毎の地紋画像条件変更データベースを作っておけば、より適切な地紋画像条件を決定することができる。
【0060】
本実施形態では、地紋画像の線数、変更は膜厚の値に応じて3段階に変更、制御する例を示したが、2段階に変更しても良いし、4段階以上に変更してもよい。更には、無段階(連続的)に解像度(線数)を変更、制御しても構わない。なお、感光体の膜厚、現像剤の状態、及び線数の値はこれに限定されるものではなく、適宜、画像形成装置の形態、特性に応じて最適値が異なるのは勿論である。
【0061】
上記の実施形態によれば、画像形成のエンジン特性に大きく影響するドラムの膜厚、現像剤の状態、装置の設置環境を検知し、検知結果に基づいて、地紋の線数、若しくは、ドットの大きさ、濃度を変更する。これにより、地紋用のキャリブレーションを自動かつ効率的に行うことができる。
【0062】
その結果、プリンタによるオンデマンド地紋出力法における複写抑止地紋を用いて、地紋を印刷するユーザにその手段を提供するなら、プリンタによるオンデマンド地紋出力法をより多くのプリンタに汎用的に適用することができるというメリットがある。
【0063】
以上、本発明の実施形態として、レーザビームプリンタについて説明したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良い。
【0064】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現する地紋画像を調整するための制御プログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0066】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクがある。また、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0067】
その他、クライアントPCのブラウザを用いてインターネットサイトに接続し、本発明に係るプログラムそのもの、若しくは更に自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードするという利用方法もある。また、本発明に係るプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。 また、本発明に係るプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布してもよい。所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0068】
また、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部又は全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0069】
さらに、PCの機能拡張ユニットに備わるメモリに本発明に係るプログラムが書き込まれ、そのプログラムに基づき、その機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行なう場合も、本発明の範疇に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
重要な文書の複写による不正な偽造や情報漏洩を抑止する目的で文書の背景に複写抑止地紋を合成し出力する画像形成装置を用いる産業において、利用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1実施形態としての画像形成装置の概略構成図である。
【図2】感光体の膜厚27μm時の600線時と200線時の画像データに対する反射濃度の関係を示す図である。
【図3】感光体膜厚27μm時と14μm時の静電潜像の形状(孤立ドット)を示す図である。
【図4】実施の形態1における各感光体膜厚、各画像処理法における画像データに対する反射濃度の関係を示す図である。
【図5】感光体に流れ込む直流電流値と感光体膜厚の関係を示す図である。
【図6】地紋画像の形成条件を決定するまでのフローチャートである。
【図7】地紋画像の形成条件を決定するまでのフローチャートである。
【図8】線数を変更した時のドットイメージを示す図である。
【図9】地紋画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 感光体
2 帯電ローラ
5 レーザ光
6 現像器
6a現像スリーブ
7 転写ローラ
42 環境センサ
50 中央制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の表面に、地紋画像を形成する画像形成装置であって、
記録媒体に形成された画像が複写された場合に識別可能に現われる潜像部及び背景部を、前記地紋画像として形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段の状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した前記画像形成手段の状態に応じて、前記地紋画像を形成する条件を調整する調整手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成手段は、
静電潜像を担持するための像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像担持体の表面に露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を生成する露光手段と、
現像剤を収容する収容部を有し、収容した現像剤を用いて、前記像担持体の表面に生成された静電潜像を現像する現像手段と、
前記現像手段により現像された画像を前記記録媒体に転写する転写手段と、
を含み、
前記検出手段は、前記画像形成手段の状態として、
前記像担持体の特性変化、収容された前記現像剤の劣化状態、及び、画像形成が行われる環境、の少なくとも何れか1つを検出し、
前記調整手段は、前記検出手段による検出結果のうち少なくとも何れか1つを参照し、地紋画像を形成する条件を調整することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記画像形成手段の状態として、像担持体の膜厚を検出することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記画像形成手段の状態として、前記現像手段に含まれる現像剤担持体の積算回転数から、前記現像剤の劣化状態を検出することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記検出手段による検出結果を参照して、地紋画像の画素密度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記調整手段は、前記検出手段による検出結果を参照して、地紋画像のドットの大きさを変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記検出手段による検出結果を参照して、地紋画像の濃度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記画像形成が行われる環境として、前記画像形成手段の周囲の温度及び湿度を検出することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録媒体の表面に地紋画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
前記画像形成装置の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記画像形成装置の状態に応じて、地紋画像を形成する条件を調整する調整工程と、
を含むことを特徴とする画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
記録媒体の表面に、潜像部と背景部とを有する地紋画像を形成する画像形成装置の制御プログラムであって、
前記画像形成装置の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記画像形成装置の状態に応じて、地紋画像を形成する条件を調整する調整工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像形成装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−36983(P2009−36983A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201095(P2007−201095)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】