説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】感光体およびそれを所定の表面電位に帯電させる帯電器を有する画像形成ステーションを複数備える画像形成装置およびその画像形成方法において、簡単な装置構成で各帯電器に適正なバイアス電圧を安定して印加することのできる技術を提供する。
【解決手段】Y、M、C色に対応した帯電ローラ231Y、231M、231Kのそれぞれに対し、単一の交流電圧発生器2321から出力された交流電圧と、直流電圧発生器2325Y、2325M、2325Cからそれぞれ出力された直流電圧とを重畳した帯電バイアスを印加する。各直流電圧発生器2324Y等の出力電圧を定めるためのルックアップテーブル105には帯電ローラ231Y等への印加電圧に直列抵抗2324Y等による電圧降下の見積もり量を加算した値が格納されている。感光体の累積稼動量が増加するにつれて帯電電流も増加するので、電圧降下の見積もり量も大きくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感光体およびそれを所定の表面電位に帯電させる帯電器を有する画像形成ステーションを複数備えた画像形成装置およびその画像形成方法において、帯電器に直流電圧と交流電圧とを重畳した帯電バイアスを与える技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光体表面を所定の表面電位に帯電させて静電潜像を形成し、該静電潜像を顕像化して画像を形成する画像形成装置においては、感光体表面を効率よく帯電させるため、感光体を帯電させるための帯電器に対し、直流電圧と交流電圧とを重畳した帯電バイアスを印加するように構成されたものがある。例えば、特許文献1に記載の画像形成装置では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4つのトナー色に対応する4つのトナー像形成ユニットに対して、4種類の直流電圧および2種類の交流電圧を発生させている。そして、そのうち1種類の直流電圧に1種類の交流電圧を重畳してなるバイアスをKトナー像形成ユニットに供給する一方、3種類の直流電圧のそれぞれにもう1種類の交流電圧を重畳してそれぞれY、MおよびCトナー像形成ユニットに供給している。
【0003】
【特許文献1】特開2006−220955号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように、複数のユニットでバイアス発生回路を共用する構成とすることにより装置構成を簡素化することができる。ただしこの場合、各ユニットの干渉を防止するための対策が必要である。このような対策としては、例えば、それぞれのユニットに対応する直流電圧発生部を、それぞれ比較的高抵抗の直列抵抗を介して交流電圧発生部に接続することが考えられる。しかしながら、このようにすると、帯電器に流れる直流電流に起因して直列抵抗による電圧ロスが発生し、感光体に所望のバイアス電圧を印加できなくなるおそれがある。特に、帯電器から感光体に流れる帯電電流の大きさは感光体の劣化の程度に応じて経時的に大きく変動することがわかっているが、特許文献1ではこのような問題については全く考慮されておらず、この点において上記従来技術には改善の余地が残されていた。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、感光体およびそれを所定の表面電位に帯電させる帯電器を有する画像形成ステーションを複数備え、帯電器に直流電圧と交流電圧とを重畳した帯電バイアスを与える画像形成装置およびその画像形成方法において、簡単な装置構成でありながら、各帯電器に適正なバイアス電圧を安定して印加することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、感光体および該感光体表面を所定の表面電位に帯電させるための帯電器をそれぞれ有し、前記帯電器により帯電させた前記感光体表面に静電潜像を形成するとともに該静電潜像をトナーにより顕像化して画像を形成する画像形成動作を実行する複数の画像形成ステーションと、前記複数の帯電器のそれぞれに対応して設けられ、当該帯電器に与える帯電バイアスの直流成分としての直流電圧を発生する複数の直流バイアス発生手段と、前記複数の帯電器のそれぞれに対応して設けられ、前記複数の帯電器と当該帯電器に対応する前記直流バイアス発生手段とを1対1の関係でそれぞれ電気的に接続する複数の直列抵抗と、前記各帯電器に与える帯電バイアスの交流成分としての交流電圧を発生する交流バイアス発生手段と、前記各直流バイアス発生手段が出力する直流電圧の電圧値を制御する制御手段とを備え、前記複数の帯電器のそれぞれには、当該帯電器に対応する前記直流バイアス発生手段から当該帯電器に対応する前記直列抵抗を介して出力される直流電圧と、前記交流バイアス発生手段から出力される交流電圧とが重畳されて前記帯電バイアスとして印加され、前記制御手段は、前記直流バイアス発生手段のそれぞれについて、該直流バイアス発生手段が出力する直流電圧の電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器に印加すべき電圧として予め設定された目標電圧と、当該帯電器に流れる直流電流に起因して当該帯電器に対応する前記直列抵抗に生じる電圧降下に相当する電圧とを加算した電圧値に設定し、しかも、前記電圧降下に相当する電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器により帯電させる前記感光体の稼動履歴に応じて補正することを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる画像形成方法は、複数の感光体のそれぞれに対応して設けた帯電器により、前記各感光体をそれぞれ所定の表面電位に帯電させて静電潜像を形成し、該静電潜像をそれぞれトナーにより顕像化して画像を形成する画像形成方法であって、上記目的を達成するため、直流電圧を発生する直流バイアス発生手段を前記複数の帯電器それぞれに対応して複数設けるとともに、前記各直流バイアス発生手段からの直流電圧をそれぞれ直列抵抗を介して交流電圧を発生する交流バイアス発生手段からの交流電圧に重畳し帯電バイアスとして前記各帯電器に印加し、前記直流バイアス発生手段のそれぞれについて、該直流バイアス発生手段が出力する直流電圧の電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器に印加すべき電圧として予め設定された目標電圧と、当該帯電器に流れる直流電流に起因して当該帯電器に対応する前記直列抵抗に生じる電圧降下に相当する電圧とを加算した電圧値に設定し、しかも、前記電圧降下に相当する電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器により帯電させる前記感光体の稼動履歴に応じて補正することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、交流バイアス発生手段から出力された交流電圧が複数の直流バイアス発生手段からの直流電圧のそれぞれに重畳されて、当該直流バイアス発生手段に対応する各帯電器に印加される。そのため、複数の帯電器の間で交流バイアス発生手段を共用することができるので、装置構成を簡単にし装置の小型化、低コスト化を図ることができる。この場合において、各直流バイアス発生手段からの出力電圧はそれぞれ直列抵抗を介して交流バイアス発生手段からの出力電圧に重畳されるので、各直流バイアス発生手段間での干渉や、直流バイアス発生手段から交流バイアス発生手段への干渉が抑制される。また、直流バイアス発生手段から発生される直流電圧には、直列抵抗による電圧降下に対応する電圧が加算されているので、各帯電器には直列抵抗による電圧降下の影響が及ぶことなく適正な帯電バイアスが印加されることになる。しかも、直列抵抗による電圧降下分については感光体の稼動履歴に応じて補正するので、感光体の稼動によってその特性が経時的に変化した結果、帯電器に流れる電流が変動した場合でも、その影響によって帯電バイアスが変動するのを防止することができる。
【0009】
上記のように構成された画像形成装置においては、例えば、前記制御手段は、前記感光体の稼動履歴と、それに対応する前記直流バイアス発生手段の出力電圧とを関連付けた補正テーブルを予め有しており、該補正テーブルに基づき前記直流バイアス発生手段の出力電圧値を設定するようにしてもよい。こうすることにより、感光体の稼動履歴に基づいて補正テーブルを参照することによりそのときの直流バイアス発生手段の出力電圧を簡単に設定することが可能となり、電圧降下分を求めるための特別な処理や制御が不要となる。
【0010】
なお、感光体の稼動履歴については、例えばその稼働時間、画像形成枚数など感光体の稼動とともに単調に変化してゆくパラメータにより表すことができる。このようなパラメータに基づき感光体の稼動履歴を適切に判定することができる。また、これらのパラメータの組み合わせによってもよい。
【0011】
また、例えば、前記各画像形成ステーションが、前記画像形成動作として互いにプロセス速度の異なる複数の動作モードを選択的に実行可能となっている場合には、前記制御手段は、前記動作モードに応じて前記補正による補正量を異ならせるようにしてもよい。プロセス速度が異なる動作モードの間では、感光体への時間当たりの電荷移動量が異なるため、帯電器に流れる電流量も異なる。したがって直列抵抗による電圧降下の大きさも変化する。そこで、直列抵抗による電圧降下分を保証するための電圧の補正量についても動作モードによって異ならせるようにすることで、画像形成動作の態様に応じたより適切な補正が可能となる。
【0012】
一般的には、感光体の稼動が進みその膜厚が磨耗により減少するのにつれて、同じ電圧を印加した場合でも帯電器から感光体へ流れる電流量が増加する傾向がある。そこで、前記制御手段は、前記稼動履歴に基づき求められる前記感光体の稼動量が増加するにつれて、前記直流バイアス発生手段の出力電圧の絶対値を増加させるようにするとよい。こうすることで、帯電器に流れる電流が経時的に増加し直列抵抗による電圧降下が増大するのを補償して、帯電器に所定の帯電バイアスを安定して印加することができる。
【0013】
また、この発明にかかる画像形成装置は、前記複数の画像形成ステーションとは別に、単独動作用感光体および該単独動作用感光体表面を所定の表面電位に帯電させるための単独動作用帯電器を有し、前記複数の画像形成ステーションを稼動させない状態で前記単独動作用帯電器により帯電させた前記単独動作用感光体表面に静電潜像を形成するとともに該静電潜像を顕像化してモノクロ画像を形成する単独画像形成動作を実行する単独動作用画像形成ステーションと、前記単独動作用帯電器に直流電圧および交流電圧を重畳した帯電バイアスを印加する単独動作用バイアス発生手段をさらに備えるように構成されてもよい。
【0014】
このように構成された画像形成装置では、単独動作用画像形成ステーションのみを稼動させる単独画像形成動作を実行することによりモノクロ画像を形成することが可能である。また、単色動作用画像形成ステーションに設けた単独動作用帯電器に帯電バイアスを与えるための単独動作用バイアス発生手段を独立して設けることにより、単独画像形成動作を実行する際には他の画像形成ステーションへの帯電バイアスの印加を停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置における画像形成ステーションの主要部の構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラに与えられると、このメインコントローラがエンジンコントローラに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラがエンジン部EGなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行させ、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板やコントローラ基板などを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0017】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成されるドラム状の感光体21が設けられている。各感光体21はそれぞれ専用の駆動モータ(図示省略)に接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25、除電用光源27および感光体クリーナ28が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時には、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時には、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0019】
図3は帯電部の構成を示す図である。帯電部23は、その表面が鉄、アルミニウムまたはステンレスなどの金属材料で構成された帯電ローラ231を備えている。この帯電ローラ231の両端部には絶縁性材料で形成されたコロ234がそれぞれ取り付けられており、コロ234が感光体21の表面に当接することによって、帯電ローラ231と感光体21表面との間には一定のギャップGPが設けられている。また、この帯電ローラ231の端面にはステンレスやリン青銅などの弾性を有する導電性板材により構成された摺動端子233の一端部が摺接されるとともに、摺動端子233の他端部は帯電バイアス発生部232に接続されており、帯電バイアス発生部232からの帯電バイアス電圧が摺動端子233を介して帯電ローラ231に印加されている。これにより感光体21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0020】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。ラインヘッド29は、感光体21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向X)に配列された複数の発光素子を備えており、感光体21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体21の表面に向けて光Lを照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0021】
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0022】
現像位置において顕像化されたトナー像は、感光体21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0023】
また、感光体21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体21に向けて除電用光源27および感光体21の表面に当接して感光体クリーナ28がこの順序で設けられている。除電用光源27が一次転写後の感光体21表面に除電光Leを照射することによって感光体21の表面電位をリセットし、感光体クリーナ27が感光体の表面に当接することで一次転写後に感光体21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。こうして除電されトナー除去された感光体21表面は、再び帯電ローラ231との対向位置に搬送され帯電部23により帯電されて静電潜像の形成に供される。
【0024】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0025】
図4は一次転写位置を示す図である。カラーモード実行時は、図4(a)に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体21に押し遣り当接させて、各感光体21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1y、TR1m、TR1cおよびTR1kを形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0026】
一方、モノクロモード実行時は、図4(b)に示すように、4個の一次転写ローラのうち、一次転写ローラ85Y、85Mおよび85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cから離間させるとともにブラック色に対応した一次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーション2Kに当接させることで、モノクロ用の画像形成ステーション2Kのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、一次転写ローラ85Kと画像形成ステーション2Kとの間にのみ一次転写位置TR1kが形成される。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Kに一次転写バイアスを印加することで、画像形成ステーション2Kに設けられた感光体21の表面上に形成されたブラックトナー像を、一次転写位置TR1kにおいて転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0027】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0028】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0029】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0030】
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0031】
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0032】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0033】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体21、帯電ローラ231、現像部25、除電用光源27および感光体クリーナ28を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0034】
図5は帯電部の電気的構成を示す図である。この図においては、Y、M、CおよびKの各トナー色に対応する4つの帯電ローラ231を区別するためそれぞれ符号231Y、231M、231Cおよび231Kを付している。
【0035】
帯電バイアス発生部232は、装置全体の動作を制御するCPU101により制御された交流電圧発生器2321K、2321YMC、直流電圧発生器2325Y、2325M、2325Cおよび2325Kを備えている。より詳しくは、各電圧発生器から発生させる電圧値を決定するための制御信号がCPU101からマルチチャネルDAコンバータ(DAC)102に出力され、マルチチャネルDAC102は該制御信号に対応するアナログ電圧を各電圧発生器に対し出力する。各電圧発生器2321K、2321YMC、2325Y、2325M、2325Cおよび2325Kは、それぞれ入力されたアナログ電圧を基準電圧として、該基準電圧に対応する電圧値を有する交流電圧または直流電圧を出力する。交流電圧発生器2321Y等は例えばインバータや、外部から与えられた基準クロックを増幅する高周波アンプによって構成することができる。また、直流電圧発生器2325Y等は例えばDC−DCコンバータにより構成することができる。
【0036】
このうち、交流電圧発生器2321Kから出力される交流電圧はトランス2322Kによって昇圧され、昇圧後の交流電圧は、直流電圧発生器2325Kから直列抵抗2325Kを介して出力される直流電圧と重畳される。こうして交流電圧と直流電圧とを重畳してなる帯電バイアス電圧が帯電ローラ231Kに印加される。なお、トランス2322Kの二次側から直流電圧との混合点までの間の導電経路には、直流遮断用のコンデンサ2323Kが介挿されている。
【0037】
帯電ローラ231Kに印加される直流電圧は、例えば(−500)V程度の負電圧であり、感光体21の帯電電位を決める。一方、帯電ローラ231Kに印加される交流電圧は、例えばピーク間電圧1500V程度、周波数1〜2kHz程度の正弦波交流電圧であり、感光体21の帯電電位には直接関係しないが、帯電ローラ231Kと感光体21とのギャップGPにおいて放電を生じさせることによって感光体21への電荷の移動を促進し、感光体21を効率よく帯電させる作用を果たす。
【0038】
一方、交流電圧発生器2321YMCから出力される交流電圧は、トランス2322YMCで昇圧された後、Y、MおよびCトナー色にそれぞれ対応する帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cに入力される。つまり、交流電圧発生器2321YMCから見れば、各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cが負荷として並列に接続されている。
【0039】
より詳しく説明すると、イエロー色画像形成ステーション2Yに対応する帯電ローラ231Yには、トランス2322YMCから直流遮断用のコンデンサ2323Yを介して出力される交流電圧と、直流電圧発生器2325Yから直列抵抗2324Yを介して出力される直流電圧とが重畳されて帯電バイアスとして印加されている。同様に、マゼンタ色に対応する帯電ローラ231Mに印加される帯電バイアスは、トランス2322YMCから直流遮断用のコンデンサ2323Mを介して出力される交流電圧と、直流電圧発生器2325Mから直列抵抗2324Mを介して出力される直流電圧とが重畳されたものである。さらに、シアン色に対応する帯電ローラ231Cに印加される帯電バイアスは、トランス2322YMCから直流遮断用のコンデンサ2323Cを介して出力される交流電圧と、直流電圧発生器2325Cから直列抵抗2324Cを介して出力される直流電圧とが重畳されたものである。
【0040】
各帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cをそれぞれコンデンサ2323Y、2323Mおよび2323Cを介してトランス2322YMCに接続することにより、各帯電ローラに印加される直流電圧が他の帯電ローラへのバイアス回路に影響を及ぼすのを抑えることができる。また、各直流電圧発生器2325Y、2325Mおよび2325Cに直列抵抗を接続することにより、交流電圧が直流電圧発生器に回り込むのを防止することができる。
【0041】
このように、この実施形態では、Y、MおよびCの3色については交流電圧発生器2321YMCおよびトランス2322YMCを共通とすることにより、装置の小型化および低コスト化を図っている。その一方、直流電圧発生器2325Y、2325Mおよび2325Cについては各帯電ローラに対応して独立して設けることにより、帯電バイアスを個別に設定し感光体21の帯電電位を各トナー色ごとに独立して設定することが可能となっている。
【0042】
また、モノクロモードにおいて単独使用されるブラック色に対応する帯電ローラ231Kについては、他のトナー色とは別に独立したバイアス発生回路を設けている。こうすることで、モノクロモードの実行時には、動作に関係しない帯電ローラ231Y、帯電ローラ231Mおよび231Cへのバイアス印加を停止することができる。その結果、モノクロモード実行時における消費電力の低減を図ることができるとともに、各画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cにそれぞれ設けられた感光体21の劣化を抑制してこれらの長寿命化を図ることができる。
【0043】
図6は直流電圧発生器の回路例を示す図である。上記した直流電圧発生器2325Y等は、例えば図6に示すようなDC−DCコンバータにより構成される。ここではイエロー用の直流電圧発生器2325Yを例としてその構造について説明するが、他のトナー色に対応する直流電圧発生器2325M、2325Cおよび2325Kの構造もこれと同一である。また、図6に示すDC−DCコンバータの回路構成自体は公知のものであるので、ここではその構成および動作の概要を簡単に説明するに留める。
【0044】
直流電圧発生器2325Yでは、トランジスタQ1とトランスT1とが自励発振器を構成している。そして、トランスT1の二次巻線の一方端に現れた交流電圧がダイオードD1およびコンデンサC1により整流されて直流電圧として出力される。トランスT1の二次巻線の他方端は接地されている。これにより、例えば24Vの直流電圧が所定の高電圧(例えば−500V)にまで昇圧される。この直流高電圧が、前記したように直列抵抗2324Yを介して帯電バイアスの直流成分として帯電ローラ231Yに印加される。図6に示すように、整流用ダイオードD1の方向は帯電ローラ231Yに負電圧を与える方向とされる。これにより、感光体21は負電位に帯電されることとなる。
【0045】
また、トランスT1の別巻線から取り出され出力電圧に比例する電圧がダイオードD2およびコンデンサC2により整流されるとともに抵抗R2により適宜に分圧されて誤差増幅器Q2に帰還信号として入力されている。誤差増幅器Q2にはCPU101からの制御信号に基づきマルチチャネルDAC102から出力される基準電圧が与えられており、誤差増幅器Q2はこの基準電圧と、帰還信号とを比較した誤差信号を出力する。この誤差信号は電流増幅器Q3およびドライバトランジスタQ4を介してトランジスタQ1のベースへの注入電力を加減し、これにより出力電圧が基準電圧に比例した電圧に定電圧制御される。
【0046】
また、直流電圧発生器2325Yには、CPU101から高圧出力をオン/オフするために与えられる制御信号に基づき動作するスイッチ素子Q5が設けられている。スイッチ素子Q5は、誤差増幅器Q2の出力に接続されており、CPU101から高圧出力をオンにするための制御信号が与えられているときには開放状態となって上記した帰還制御ループを形成する一方、CPU101から高圧出力をオフにするための制御信号が与えられているときには、誤差増幅器Q2の出力を接地して強制的にゼロ電位とすることにより、高電圧が出力されないようにする。
【0047】
次に、CPU101による各直流電圧発生器2325Y、2325M、2325Cおよび2325Kの出力電圧の設定について説明する。この実施形態では、外部装置から画像形成指令が与えられたとき、CPU101が各画像形成ステーションを制御して画像形成動作を実行させるが、それに先立って、各直流電圧発生器2325Y等から出力する直流電圧値の設定を行う。この実施形態では、CPU101とともに、各画像形成ステーションに設けられた感光体21の稼動履歴を表す情報を記憶する記憶手段(RAM)104と、感光体の稼動履歴と直流電圧発生器の設定電圧とを関連付けたルックアップテーブル(LUT)105とが設けられており、CPU101はRAM104に記憶されている感光体21の稼動履歴に関する情報に基づいてルックアップテーブル105を参照し、直流電圧発生器の出力電圧を設定する。具体的には、外部装置から画像形成指令が与えられるとCPU101は以下のような動作を実行する。以下ではイエロー用画像形成ステーション2Yの制御について説明するが、他の画像形成ステーションについても同様にすることができる。
【0048】
図7は画像形成指令が与えられたときの動作を示すフローチャートである。画像形成指令が与えられると、CPU101は使用する画像形成動作を実行させるべき画像形成ステーション2Yの感光体21の累積稼動量を、当該情報を記憶したRAM104から読み出す(ステップS101)。感光体21の累積稼動量は、当該感光体の稼動履歴の変遷に応じて単調に増加または減少するような物理量によって表すことができ、このような物理量として例えば当該感光体21の総稼働時間、累積回転数、累積画像形成枚数などを用いることができる。また、これらを適宜組み合わせてもよい。そして、読み出された感光体の稼動量に基づいてルックアップテーブル105を参照し、直流電圧発生器2325Yからの出力電圧を決定する(ステップS102)。
【0049】
図8はルックアップテーブルの例を示す図である。より詳しくは、図8(a)は通常の画像形成動作(通常モード)を実行する際に適用されるルックアップテーブルである。また、図8(b)は、より高精細な画像を形成するため、あるいは厚手の記録材に画像を形成するためにより低速でプロセスを進行させる低速モードで画像形成動作を実行する際に適用されるルックアップテーブルである。これらのルックアップテーブルでは、感光体21に印加すべき目標電圧と、感光体の累積稼動量(感光体稼動量)との組み合わせに対応する直流電圧発生器2325Yの出力電圧値がテーブル化されている。
【0050】
ここでは、感光体稼動量を、その寿命とされる稼動量の値を100%としたときのパーセント表示で示している。例えば感光体が新品のとき稼動量は0%であり、また感光体の累積稼動量が設計寿命に達したとき稼動量は100%と評価される。また、目標電圧は一定ではなく、室温の温度測定結果や、説明を省略する公知の濃度制御動作の結果に基づいて所定の可変範囲の中で適宜設定される。
【0051】
この実施形態では、図5に示すように、直流電圧発生器2325Yには直列抵抗2324Yが接続されており、直流電圧発生器2325Yから帯電ローラ231Yに至る直流回路に帯電電流が流れると、直列抵抗2324Yによる電圧降下のため、実際に帯電ローラ231Yに印加される直流電圧は、直流電圧発生器2325Yから出力される電圧からこの電圧降下分を差し引いたものとなる。一般に帯電ローラに流れる直流電流は100μA程度であるが、直列抵抗の抵抗値を例えば1MΩとすると電圧降下は100Vにもなり無視できない。
【0052】
そこで、ルックアップテーブルには、感光体21に印加すべき目標電圧に、直流電圧発生器2325Yと帯電ローラ231Yとの間に介挿された直列抵抗2324Yによる電圧降下に相当する電圧を加算した電圧値が記載されている。CPU101は、感光体21に印加すべき電圧値と、そのときの感光体稼動量とが交わる欄に記載された電圧値を、そのときの直流電圧発生器2325Yの出力電圧として決定する。こうすることで、直流電圧発生器2325Yからは直列抵抗2324Yによる電圧降下分を上乗せされた直流電圧が出力されることとなり、帯電ローラ231Yには目標電圧が印加されることとなる。
【0053】
また、感光体21が使用につれてその膜厚が磨耗により減少すると帯電電流が増加するという知見に鑑み、感光体稼動量が大きくなるにつれて電圧の絶対値が大きくなるように、つまり出力電圧の絶対値が増加するようにテーブルが作成されている。さらに、プロセス速度の遅い低速モードでは、感光体21への帯電動作がより遅い速度で行われることに起因して単位時間当たりの感光体21への電荷流入量が少なくなることから帯電電流も小さくなる。このことを考慮して、図8(b)に示す低速モードに対応するテーブルでは、図8(a)に示す通常モードに対応するテーブルよりも、直列抵抗2324Yによる電圧降下分を少なく見積もっている。
【0054】
図7に戻って説明を続ける。CPU101は、こうして決定した出力電圧に対応する制御信号をマルチチャネルDAC102に出力する(ステップS103)。これにより、直流電圧発生器2325Yからは目標電圧に直列抵抗2324Yによる電圧降下分が加算された直流電圧が出力され、帯電ローラ231Yには所望の直流電圧、すなわち目標電圧が印加されることになる。
【0055】
なお、マルチチャネルDAC102は、入力データに対するラッチ機能を有する、すなわち、基準電圧に対応するデジタル値がいったん与えられると、その値がCPU101により書き換えられない限り保持されるものであることが望ましい。この目的のためには、汎用のデジタルチューニング用DAコンバータを用いることができる。このようにすることで、CPU101からマルチチャネルDAC102への送信データ量を削減することができ、またCPU101は基準電圧を常時監視する必要がないので処理が簡単となる。
【0056】
こうして帯電ローラ231Yに所望の帯電バイアスが印加可能となった状態で、画像形成ステーション2Yに画像形成動作を実行させて画像を形成する(ステップS104)。画像の形成が終了すると、当該画像形成動作における感光体21の稼動量を算出し、RAM104に保存されている累積稼動量を更新記憶する(ステップS105)。
【0057】
上記した帯電バイアスの設定変更は、画像形成動作の実行とは別のタイミングで実行されることが望ましい。というのは、画像形成動作中に帯電バイアスの変更を行うと、感光体21の表面電位が変動することにより画像濃度や画像品質に影響を与えることがあるからである。したがって、帯電バイアスの変更は、例えば装置の電源が投入された直後や、装置に画像形成指令が与えられていない待機時など、全ての画像形成ステーションにおいて画像形成動作が実行されていないときに行われることが望ましい。また、画像品質を良好に維持するためには、一定の画像形成枚数ごと、あるいは一定時間ごとに帯電バイアスの設定が行われることが望ましい。
【0058】
しかしながら、この実施形態の画像形成装置は、転写ベルト81の移動方向に沿って画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kを列状に並べた、いわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置である。このような画像形成装置では、各画像形成ステーションによる画像形成動作を併行して行うことができるが、その位置の違いに起因して、動作の進行タイミングが少しずつずれている。そのため、例えば連続して多数枚のカラー画像を形成している場合には、いずれの画像形成ステーションにおいても画像の形成が行われない、より厳密には、静電潜像を形成するための感光体21の帯電動作が行われないタイミングが必ず存在するとは限らない。このような場合に全ての画像形成ステーションを停止させて帯電バイアスの設定を行うとすると画像形成のスループットを低下させてしまう。これを防止するためには、例えば次のようにすることができる。
【0059】
図8は帯電バイアス設定の実行タイミングを示すタイミングチャートである。図8に示すように、各画像形成ステーションにおいて帯電動作が行われるタイミングは少しずつずれており、いずれの画像形成ステーションにおいても帯電動作が行われないタイミングが存在しない場合がある。このような場合には、同図に示すように、それぞれの画像形成ステーションにおいて、当該画像形成ステーションに対応する帯電ローラの帯電動作が行われていないときに、当該帯電ローラに対する帯電バイアスの変更設定を行うことが可能である。
【0060】
その結果、各トナー色についての帯電バイアスの設定はそれぞれ異なったタイミングで実行開始されることになる。この場合、1つのトナー色についての設定は、他のトナー色についての帯電動作の実行中に行われる可能性がある。したがって、帯電バイアスの直流電圧を変更すると、実行中の他のトナー色についての帯電動作に影響を与えることが懸念される。しかしながら、装置の連続使用中において帯電バイアスを大きく変化させることが必要となることはほとんどなく、直流電圧の変化量もさほど大きくないので、このような問題が生じる可能性は極めて少ない。
【0061】
以上のように、この実施形態では、カラーモードでのみ使用する帯電ローラ231Y、231Mおよび231Cに印加する帯電バイアスのうち交流成分を発生する交流電圧発生器2321YMCをこれらの帯電ローラ間で共通化することにより、装置の小型化・低コスト化を図っている。また、帯電バイアスの直流成分を発生する直流電圧発生器については各帯電ローラに対応して個別に設けることにより、各帯電ローラに対応する各トナー色ごとの感光体21の表面電位を独立して設定することが可能である。
【0062】
また、各直流電圧発生器2325Y等から出力させる直流電圧については、帯電ローラ231Y等に印加すべき目標電圧に、当該電圧発生器に直列接続された直列抵抗2324Y等による電圧降下に相当する電圧を加算した値としている。そのため、直列抵抗による電圧降下の影響をうけることなく、所望の直流電圧を各帯電ローラ231Y等に印加することができる。
【0063】
そして、直列抵抗2324Y等による電圧降下分については、感光体21の使用が進むにつれて帯電電流が増加してゆくことに鑑み、感光体21の累積稼動量が増加するにつれて大きく見積もるようにしている。より具体的には、感光体の累積稼動量および目標電圧と、それに対応する電圧降下分を加算した電圧値とを関連付けたルックアップテーブルを予め用意しておき、このテーブルに基づき直流電圧発生器からの出力電圧を決定する。こうすることにより、帯電電流を検出するための構成を持たなくても、帯電電流に起因して生じる直列抵抗の電圧降下をキャンセルすることができ、しかも、帯電電流の経時変化にも対応することができる。
【0064】
また、モノクロモードにおいて単独使用されるブラック色については、バイアス発生回路を独立に設けることにより、モノクロモード実行時には他の感光体21を帯電させずに済むので、感光体21の長寿命化を図ることができる。
【0065】
以上説明したように、この実施形態では、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cが本発明の「画像形成ステーション」として機能しており、各画像形成ステーションに設けられた感光体21および帯電ローラ231がそれぞれ本発明の「感光体」および「帯電器」として機能している。また、交流電圧発生器2321YMCおよびトランス2322YMCが一体として本発明の「交流バイアス発生手段」として機能する一方、各直流電圧発生器2325Y、2325Mおよび2325Cがそれぞれ本発明の「直流バイアス発生手段」として機能している。また、この実施形態では、CPU101が本発明の「制御手段」として機能している。
【0066】
また、この実施形態では、各直流電圧発生器2325Y等に直列接続された抵抗2324Y等が本発明の「直列抵抗」に相当する一方、ルックアップテーブル105が本発明の「補正テーブル」に相当している。
【0067】
また、この実施形態では、本発明の「単独画像形成動作」に相当するモノクロモードで単独使用されるブラック画像形成ステーション2Kが本発明の「単独動作用画像形成ステーション」に相当しており、該画像形成ステーション2Kに設けられた感光体21および帯電ローラ231Kがそれぞれ本発明の「単独動作用感光体」および「単独動作用帯電器」として機能している。そして、該帯電ローラ231Kに帯電バイアスを与える交流電圧発生器2321K、トランス2322K、直流電圧発生器2325K等が一体として本発明の「単独動作用バイアス発生手段」として機能している。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、ブラック用画像形成ステーション2Kに帯電バイアスを与えるためのバイアス発生回路を他の色のものとは独立して設けているが、全ての色についてバイアス発生回路を共通化してもよい。
【0069】
また、上記した実施形態の画像形成装置は、それぞれが感光体を有する4個の画像形成ステーションが中間転写ベルト81の移動方向に沿って並べて配置された、いわゆるタンデム型の画像形成装置であるが、本発明は、回転自在の現像ロータリーに複数の現像器を装着し、これらを選択的に感光体との対向位置に位置決めして画像を形成する、いわゆるロータリー型の画像形成装置に対しても適用することができる。
【0070】
また、上記した実施形態の画像形成装置はドラム状の感光体を備える画像形成装置であるが、本発明の静電潜像担持体としては、このようなドラム状のもの以外に、例えばベルト状の感光体を使用してもよい。
【0071】
さらに、上記実施形態では、YMCK4色のトナーを使用したカラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、色の種類や色数の異なる画像形成装置に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置における画像形成ステーションの主要部を示す図。
【図3】帯電部の構成を示す図。
【図4】一次転写位置を示す図。
【図5】帯電部の電気的構成を示す図。
【図6】直流電圧発生器の回路例を示す図。
【図7】画像形成指令が与えられたときの動作を示すフローチャート。
【図8】ルックアップテーブルの例を示す図。
【図9】帯電バイアス設定の実行タイミングを示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0073】
2Y,2M,2C…画像形成ステーション(画像形成ステーション)、 2K…画像形成ステーション(単独動作用画像形成ステーション)、 21…感光体、 81…転写ベルト、 101…CPU(制御手段)、 105…ルックアップテーブル(補正テーブル)、 231…帯電ローラ(帯電器)、 231K…帯電ローラ(単独動作用帯電器)、 2321YMC…交流電圧発生器(交流バイアス発生手段)、 2322YMC…トランス(交流バイアス発生手段)、 2324Y,2324M,2324C…抵抗(直列抵抗)、 2325Y,2325M,2325C…直流電圧発生器(直流バイアス発生手段)、 2321K…交流電圧発生器(単独動作用バイアス発生手段)、 2322K…トランス(単独動作用バイアス発生手段)、 2325K…直流電圧発生器(単独動作用バイアス発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体および該感光体表面を所定の表面電位に帯電させるための帯電器をそれぞれ有し、前記帯電器により帯電させた前記感光体表面に静電潜像を形成するとともに該静電潜像をトナーにより顕像化して画像を形成する画像形成動作を実行する複数の画像形成ステーションと、
前記複数の帯電器のそれぞれに対応して設けられ、当該帯電器に与える帯電バイアスの直流成分としての直流電圧を発生する複数の直流バイアス発生手段と、
前記複数の帯電器のそれぞれに対応して設けられ、前記複数の帯電器と当該帯電器に対応する前記直流バイアス発生手段とを1対1の関係でそれぞれ電気的に接続する複数の直列抵抗と、
前記各帯電器に与える帯電バイアスの交流成分としての交流電圧を発生する交流バイアス発生手段と、
前記各直流バイアス発生手段が出力する直流電圧の電圧値を制御する制御手段と
を備え、
前記複数の帯電器のそれぞれには、当該帯電器に対応する前記直流バイアス発生手段から当該帯電器に対応する前記直列抵抗を介して出力される直流電圧と、前記交流バイアス発生手段から出力される交流電圧とが重畳されて前記帯電バイアスとして印加され、
前記制御手段は、前記直流バイアス発生手段のそれぞれについて、該直流バイアス発生手段が出力する直流電圧の電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器に印加すべき電圧として予め設定された目標電圧と、当該帯電器に流れる直流電流に起因して当該帯電器に対応する前記直列抵抗に生じる電圧降下に相当する電圧とを加算した電圧値に設定し、しかも、
前記電圧降下に相当する電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器により帯電させる前記感光体の稼動履歴に応じて補正する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記感光体の稼動履歴と、それに対応する前記直流バイアス発生手段の出力電圧とを関連付けた補正テーブルを予め有しており、該補正テーブルに基づき前記直流バイアス発生手段の出力電圧値を設定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記感光体の稼動履歴をその稼働時間によって判定する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記感光体の稼動履歴を画像形成枚数によって判定する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記各画像形成ステーションは、前記画像形成動作として互いにプロセス速度の異なる複数の動作モードを選択的に実行可能となっており、
前記制御手段は、前記動作モードに応じて前記補正による補正量を異ならせる請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記稼動履歴に基づき求められる前記感光体の稼動量が増加するにつれて、前記直流バイアス発生手段の出力電圧の絶対値を増加させる請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記複数の画像形成ステーションとは別に、単独動作用感光体および該単独動作用感光体表面を所定の表面電位に帯電させるための単独動作用帯電器を有し、前記複数の画像形成ステーションを稼動させない状態で前記単独動作用帯電器により帯電させた前記単独動作用感光体表面に静電潜像を形成するとともに該静電潜像を顕像化してモノクロ画像を形成する単独画像形成動作を実行する単独動作用画像形成ステーションと、前記単独動作用帯電器に直流電圧および交流電圧を重畳した帯電バイアスを印加する単独動作用バイアス発生手段をさらに備える請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
複数の感光体のそれぞれに対応して設けた帯電器により、前記各感光体をそれぞれ所定の表面電位に帯電させて静電潜像を形成し、該静電潜像をそれぞれトナーにより顕像化して画像を形成する画像形成方法において、
直流電圧を発生する直流バイアス発生手段を前記複数の帯電器それぞれに対応して複数設けるとともに、前記各直流バイアス発生手段からの直流電圧をそれぞれ直列抵抗を介して交流電圧を発生する交流バイアス発生手段からの交流電圧に重畳し帯電バイアスとして前記各帯電器に印加し、
前記直流バイアス発生手段のそれぞれについて、該直流バイアス発生手段が出力する直流電圧の電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器に印加すべき電圧として予め設定された目標電圧と、当該帯電器に流れる直流電流に起因して当該帯電器に対応する前記直列抵抗に生じる電圧降下に相当する電圧とを加算した電圧値に設定し、しかも、
前記電圧降下に相当する電圧値を、当該直流バイアス発生手段に対応する前記帯電器により帯電させる前記感光体の稼動履歴に応じて補正する
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−224994(P2008−224994A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62431(P2007−62431)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】