説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】安定して高品質な画像を形成することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供する。
【解決手段】回転多面体から得られる時間差に基づいて、回転多面体の複数の面から予め設定された基準面を特定するアルゴリズムと、回転多面体の複数の隣接二面それぞれから得られる複数の時間差が示す特徴とを対応付けて複数記憶する第1記憶部と、第1記憶部において、走査周期計測部により得られる複数の時間差が示す特徴に対応付けられているアルゴリズムを特定するアルゴリズム特定部と、アルゴリズムと、時間差とに基づいて、基準面を特定する基準面特定部と、回転多面体の各面と、各面により偏向されるレーザ光により書き込まれる書込位置の調整量とを対応付けて記憶する第2記憶部と、第2記憶部において、各面に対応付けられている調整量に基づいて、各面に照射するレーザ光の照射を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビームをポリゴンミラー(回転多面体)により反射させ、感光体上を露光走査して画像を形成する画像形成装置が知られている。ポリゴンミラーは、回転軸方向から見た形状が正多角形を成すように形成され、正多角形の各辺を形成する複数の面においてレーザビームが偏向される。しかしながら、ポリゴンミラーを正確に正多角形の形状に形成するのは難しく、このため各辺の不均一に起因したレーザビームによる書き出し位置のずれが生じてしまうという問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法としては、ポリゴンミラーの各面を特定し、各面に対して主走査オフセット値を付与することにより、各面間で生じる書き出し位置のずれを調整する技術が知られている。
【0004】
また、特許文献1には、第1レーザ光源に対応する第1の走査ステーションと第2レーザ光源に対応する第2の走査ステーションを備えた対向走査光学系において、水平同期センサを削減する目的で、水平同期センサを第1の走査ステーションのみに設け、この水平同期センサの検知結果に基づいて、第1レーザ光源用の画像データおよび第2レーザ光源用の画像データの2つの画像データの出力を制御する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ポリゴンミラーの各面に対し主走査オフセット値を付与することにより、各面間で生じる書き出し位置のずれを調整することが可能であるが、主走査方向オフセット値を付与するためには、ポリゴンミラーの各面を正しく特定する必要がある。しかしながら、各面を取り違える場合があり、この場合には、所定の面に対し、当該面とは異なる面に設定すべき主走査オフセット値を設定してしまい、これにより画質が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、安定して高品質な画像を形成することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像形成装置であって、レーザ光を照射する光源と、複数の面を有し、前記複数の面により前記レーザ光を偏向走査する回転多面体と、前記回転多面体の各面により偏向された前記レーザ光を受光する受光部と、前記受光部が前記回転多面体の隣接する2つの面である隣接二面それぞれから前記レーザ光を受光するタイミング間の時間差を計測する走査周期計測部と、前記回転多面体から得られる前記時間差に基づいて、前記回転多面体の前記複数の面から予め設定された基準面を特定するアルゴリズムと、前記時間差が示す特徴とを対応付けて記憶する第1記憶部と、前記第1記憶部において、前記走査周期計測部により前記回転多面体の複数の前記隣接二面それぞれから得られる複数の前記時間差が示す特徴に対応付けられている前記アルゴリズムを特定するアルゴリズム特定部と、前記アルゴリズム特定部により特定される前記アルゴリズムと、前記走査周期計測部により前記回転多面体から得られる前記時間差とに基づいて、前記基準面を特定する基準面特定部と、前記回転多面体の各面と、各面により偏向されるレーザ光により書き込まれる書込位置の調整量とを対応付けて記憶する第2記憶部と、前記基準面特定部により特定された前記基準面に基づいて、前記回転多面体の各面を特定する面特定部と、前記第2記憶部において、前記面特定部により特定される前記各面に対応付けられている前記調整量に基づいて、前記各面に照射する前記レーザ光の照射を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
画像形成装置で実行される画像形成方法であって、画像形成装置で実行される画像形成方法であって、前記画像形成装置は、レーザ光を照射する光源と、複数の面を有し、前記複数の面により前記レーザ光を偏向走査する回転多面体と、前記回転多面体の各面により偏向された前記レーザ光を受光する受光部と、前記回転多面体から得られる前記時間差に基づいて、前記回転多面体の前記複数の面から予め設定された基準面を特定するアルゴリズムと、前記時間差が示す特徴とを対応付けて記憶する第1記憶部と、前記回転多面体の各面と、各面により偏向されるレーザ光により書き込まれる書込位置の調整量とを対応付けて記憶する第2記憶部とを備え、前記受光部が前記回転多面体の前記隣接二面それぞれから前記レーザ光を受光するタイミング間の前記時間差を計測する走査周期計測ステップと、前記第1記憶部に記憶されている複数の特徴から、前記走査周期計測ステップにおいて前記回転多面体の複数の前記隣接二面それぞれから得られる複数の前記時間差が示す特徴を特定する特徴特定ステップと、前記第1記憶部において、前記走査周期計測ステップにおいて前記回転多面体の複数の前記隣接二面それぞれから得られる複数の前記時間差が示す特徴に対応付けられている前記アルゴリズムを特定するアルゴリズム特定ステップと、前記アルゴリズム特定ステップにおいて特定される前記アルゴリズムと、前記走査周期計測部により前記回転多面体から得られる前記時間差とに基づいて、前記基準面を特定する基準面特定ステップと、前記基準面特定ステップにおいて特定された前記基準面に基づいて、前記回転多面体の各面を特定する面特定ステップと、前記第2記憶部において、前記面特定ステップにおいて特定される前記各面に対応付けられている前記調整量に基づいて、前記各面に照射する前記レーザ光の照射を制御する制御ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安定して高品質な画像を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、画像形成装置の主要構成を示すブロック図である。
【図2−1】図2−1は、5面ポリゴンの書き出し位置のずれを説明するための図である。
【図2−2】図2−2は、5面ポリゴンの書き出し位置のずれを説明するための図である。
【図3】図3は、アルゴリズム記憶部のデータ構成を示す図である。
【図4】図4は、各アルゴリズムを説明するための図である。
【図5】図5は、主走査オフセット値記憶部のデータ構成を示す図である。
【図6】図6は、画像形成処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、面特定処理(ステップS104)における詳細な処理を示すフローチャートである。
【図8−1】図8−1は、4面ポリゴンミラーにより得られた走査周期計測結果を示す図である。
【図8−2】図8−2は、5面ポリゴンミラーにより得られた走査周期計測結果を示す図である。
【図9】図9は、他の例にかかる画像形成装置の主要構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、画像形成装置および画像形成方法の実施の形態を詳細に説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置1の主要構成を示すブロック図である。画像形成装置1は、LD(レーザダイオード)ドライバ101と、LD102と、ポリゴンミラー105と、fθレンズ106と、感光体108と、水平同期センサ110と、書込位置調整部120とを備えている。
【0012】
LD(レーザダイオード)ドライバ101は、画像信号および書込みクロックを入力とし、これらの信号に基づいてLD102を制御する。具体的には、LDドライバ101は、画像信号に応じた変調信号を生成し、この変調信号をLD102に出力する。さらに、後述の書込位置調整部120から出力された主走査オフセット値に基づいて、レーザビームによる画像の書き出しを制御する。
【0013】
LD102は、LDドライバ101の制御の下、画像信号により変調されたレーザビームを照射する。LD102により照射されたレーザビームは、ポリゴンミラー105により反射され、fθレンズ106を経由し、感光体108および水平同期センサ110に照射される。なお、ここでは省略するがLD102から感光体108までの光路には、fθレンズ106以外のレンズが複数配置されているものとする。
【0014】
以上の構成において、画像信号により変調されたレーザがポリゴンミラー105の高速回転により感光体108の主走査方向に走査されることで、1ラインずつ光書き込みが行われ、感光体108上に静電潜像が形成される。その後、この静電潜像は、トナーにより現像されて可視像となり、記録用紙に転写される。未定着トナー像が転写された用紙は、その後図示せぬ定着部に搬送される。そして、定着部において、未定着トナー像の定着が行われる。
【0015】
一方、水平同期センサ110は、感光体108の脇、すなわち有効な画像書き込みが行われる領域の外側の領域に配置されている。水平同期センサ110は、各ポリゴン面により偏向されたレーザビームを受光すると、受光したことを示す同期検知信号を書出位置調整部120に出力する。なお、水平同期センサ110は、具体的には、フォトダイオード、フォトトランジスタ、またはこれらの周辺回路と一体となったフォトICである。
【0016】
書出位置調整部120は、ポリゴンミラー105の各面により偏向されたレーザビームによる書き出し位置のずれを調整する。ここで、図2−1および図2−2を参照しつつ、ポリゴンミラー105としての5面ポリゴンの書き出し位置のずれについて説明する。なお、本実施の形態においては、5面を有するポリゴンミラー105について説明するが、ポリゴンミラー105の面の数は実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図2−1に示すように、説明の便宜上ポリゴンミラー105の各面をそれぞれ1面(1)〜5面(5)と称する。図2−2は、図2−1に示すポリゴンミラー105の各面により偏向されたレーザビームに基づいて、水平同期センサ110から同期検知信号が出力されるタイミングを示す図である。なお、図2−2においては、実際に得られた同期検知信号を実線で示し、理想的な正五角形のポリゴンミラーから得られるべき同期検知信号を点線で示している。また、ポリゴン面の1面で偏向されたレーザビームにより生成された同期検知信号が出力されたタイミングt1とポリゴン面の2面で偏向されたレーザビームにより生成された同期検知信号が検知されたタイミングをt2とする。また、タイミングt1とタイミングt2の時間差をcnt12とする。なお、このように隣接する2つのポリゴン面それぞれにより偏向されたレーザビームにより生成された同期検知信号が検知されたタイミングの時間差の測定を走査周期計測と称する。
【0018】
5面を有するポリゴンミラーにおいては、理想的には、隣接する2つのポリゴン面に対する時間差cnt12,cnt23,cnt34,cnt45,cnt51は、すべて同一の値となるべきであるが、実際には、図2−2に示すように、時間差の値にばらつきが生じてしまう。書出位置調整部120は、このばらつきに起因した書き出し位置のずれを調整する処理を行う。
【0019】
書込位置調整部120は、走査周期計測部121と、アルゴリズム記憶部122と、アルゴリズム特定部123と、主走査オフセット値記憶部124と、主走査レジスト制御部125と、書込位置調整部120全体を制御する制御部126とを有している。
【0020】
走査周期計測部121は、水平同期センサ110から入力された同期検知信号に基づいて、走査周期計測を行う。具体的には、走査周期計測部121は、同期検知信号が入力されると、初めに入力された同期検知信号を、ポリゴン面の仮1面から得られた仮1信号と定義する。走査周期計測部121は、続いて入力される同期信号を、ポリゴン面の仮2面〜仮5面それぞれから得られた仮2信号〜仮5信号と定義する。そして、走査周期計測部121は、ポリゴンミラー105の隣接する2つのポリゴン面それぞれに対する時間差(仮cnt12,仮cnt23,仮cnt34,仮cnt45,仮cnt51)を算出する。
【0021】
図3は、アルゴリズム記憶部122のデータ構成を示す図である。アルゴリズム記憶部122は、アルゴリズム特定部123がポリゴンミラー105の基準面を決定する際に用いるアルゴリズムを特定する際に参照する情報を記憶している。具体的には、アルゴリズム記憶部122は、ポリゴンミラー105から得られる走査周期計測の結果が示す特徴と、ポリゴンミラー105の複数の面から予め設定された基準面を特定するためのアルゴリズムとを対応付けて複数記憶している。
【0022】
走査周期計測の結果が示す特徴とは、具体的には、走査周期計測により得られる5つの時間差が示す特徴である。本実施の形態においては、アルゴリズム記憶部122は、走査周期計測の結果が示す特徴として、計測の結果得られた複数の時間差(仮cnt12,仮cnt23,仮cnt34,仮cnt45,仮cnt51)において時間差の最大値が検知された、計測の結果得られた複数の時間差において時間差の最小値が検知された、または計測の結果得られた複数の時間差において同一の時間差が連続して検知されたという3つの特徴が記憶されている。なお、本実施の形態においては、時間差としてのカウント値の差が±5カウント以内である場合には、時間差が同一であると判断することとする。
【0023】
さらに、アルゴリズム記憶部122において、各特徴にはそれぞれアルゴリズムが対応付けられている。図4は、各アルゴリズムを説明するための図である。まずアルゴリズム1について説明する。アルゴリズム1は、時間差の最大値が検知されたという特徴に対応付けられている。アルゴリズム1は、検知された複数の時間差(仮cnt12,仮cnt23,仮cnt34,仮cnt45,仮cnt51)の最大値から数えてl番目の走査周期の時間差(カウント値)を基準時間差と定め、基準時間差のうち早いタイミングの同期検知信号に対応する面を基準面として決定するものである。なお、本実施の形態においては、最大値から数えて1番目の時間差、すなわち最大値となる時間差を基準時間差として定めることとする。
【0024】
例えば、図4上段に示すように、仮cnt23が最大値として検知された場合には、仮cnt23が基準時間差と設定され、基準時間差としてのcnt23のうち早いタイミングの同期検知信号である仮2信号に対応する仮2面が基準面と決定される。なお、本実施の形態においては、基準面を1面とし、これに続く各面を順に2〜5面とする。
【0025】
次に、アルゴリズム2について説明する。アルゴリズム2は、時間差の最小値が検出されたという特徴に対応付けられている。アルゴリズム2は、検知された複数の時間差の最小値から数えてm番目の走査周期の時間差を基準時間差と定め、基準時間差のうち早いタイミングの同期検知信号に対応する面を基準面として決定するものである。なお、本実施の形態においては、最小値から数えて1番目の時間差、すなわち最小値となる時間差を基準時間差として定めることとする。
【0026】
例えば、図4中段に示すように、仮cnt34が最小値として検知された場合には、仮cnt34が基準時間差と設定され、基準時間差としての仮cnt34のうち早いタイミングの同期検知信号である仮3信号に対応する仮3面が基準面と決定される。
【0027】
次に、アルゴリズム3について説明する。アルゴリズム3は、連続して同一の時間差がn回検知されたという特徴に対応付けられている。アルゴリズム3は、連続する同一のn個の時間差のうちn個目の走査周期の時間差を基準時間差と定め、基準時間差のうち早いタイミングの同期検知信号に対応する面を基準面として決定するものである。なお、本実施の形態においては、連続する2個の同一の時間差のうち2個目の時間差を基準時間差として定めることとする。
【0028】
例えば、図4下段に示すように、仮cnt51と仮cnt12が同一の時間差となる場合には、仮cnt51に続いて得られる仮cnt12が2個目に対応するので、cnt12が基準時間差と設定される。そして、基準時間差としての仮cnt12のうち早いタイミングの同期検知信号である仮1信号に対応する仮1面が基準面と決定される。
【0029】
図1に戻り、アルゴリズム特定部123は、走査周期計測部121により得られた走査周期計測の結果がアルゴリズム記憶部122に記憶されているいずれの特徴に合致するかを判断し、合致すると判断した特徴に対応付けられているアルゴリズムを特定する。
【0030】
図5は、主走査オフセット値記憶部124のデータ構成を示す図である。主走査オフセット値記憶部124は、主走査レジスト制御部125がレーザビームの照射タイミングを制御するための主走査オフセット値を決定するために参照する情報を記憶している。具体的には、主走査オフセット値記憶部124は、ポリゴン面を特定する面Noと、各面により走査されるレーザビームに付与すべき主走査オフセット値とを対応付けて記憶している。
【0031】
図1に戻り、主走査レジスト制御部125は、アルゴリズム特定部123により特定されたアルゴリズムを用いて、走査周期計測部121により得られた複数の時間差から基準面を特定する。さらに、主走査レジスト制御部125は、画像形成時には、主走査オフセット値記憶部124を参照し、特定した基準面に基づいて、各面に対応する主走査オフセット値を特定し、特定した主走査オフセット値をLDドライバ101に出力する。これにより、LDドライバ101においては、各面により偏向されるべきレーザビームの照射を各面に対して設定された主走査オフセット値により制御することができる。
【0032】
なお、走査周期計測の結果が示す特徴や、各特徴に対応するアルゴリズムは、画像形成装置1の設計者がポリゴンミラー105の特性に応じて予め特定しておき、これを例えば画像形成装置1の出荷前の時点において予めアルゴリズム記憶部122に設定しておくこととする。また、ポリゴンミラー105の各面に対応する主走査オフセット値についても、同様に、設計者がポリゴンミラー105の特性に応じて予め特定しておき、これを例えば画像形成装置1の出荷前の時点において主走査オフセット値記憶部124に予め設定しておくこととする。なお、これらの値は例えば、ポリゴンミラー105の交換時など出荷後のタイミングにおいて適宜更新することも可能である。
【0033】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置1による画像形成処理を示すフローチャートである。画像形成装置1においては、ポリゴンミラー105を駆動する図示せぬポリゴンモータの動作が開始すると(ステップS100)、LDドライバ101の制御の下、LD102が点灯する(ステップS102)。次に、ポリゴンミラー105の基準面を特定する面特定処理が行われ(ステップS104)。その後、画像形成が行われる(ステップS106)。画像形成においては、主走査レジスト制御部125は、面特定処理により特定された各面に応じた主走査オフセット値を付与することにより、書き出し位置のずれを調整する。以上で、画像形成処理が完了する。
【0034】
図7は、面特定処理(ステップS104)における詳細な処理を示すフローチャートである。面特定処理(ステップS104)においては、まず、走査周期計測部121は、水平同期センサ110から入力された同期検知信号に基づいて、走査周期計測を行う(ステップS110)。次に、アルゴリズム特定部123は、走査周期計測部121により得られた走査周期計測結果が示す特徴がアルゴリズム記憶部122に記憶されているいずれの特徴と一致するかを判断する(ステップS112)。すなわち、アルゴリズム特定部123は、走査周期計測部121により得られた走査周期係争結果が示す特徴を特定する。次に、アルゴリズム特定部123は、アルゴリズム記憶部122において、先に特定した特徴に対応付けられているアルゴリズムを特定する(ステップS114)。次に、主走査レジスト制御部125は、特定したアルゴリズムを用いて、ポリゴンミラー105の複数の面から基準面を特定する(ステップS116)。以上で、面特定処理が完了する。
【0035】
このように、本実施の形態にかかる画像形成装置1においては、ポリゴンミラー105により偏向された光に応じて得られた同期検知信号に基づいて走査周期計測を行い、その結果が示す特徴を特定し、特徴に適したアルゴリズムを用いてポリゴンミラー105の基準面を特定するので、より正確に基準面を特定することができる。したがって、本実施の形態にかかる画像形成装置1においては、基準面を基準とし、各面を特定し、各面に応じた主走査オフセット値を付与することができるので、面の取り違えに起因した書き出し位置のずれが生じることがなく、安定して高品質の画像を形成することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態にかかる画像形成装置1においては、ポリゴンミラー105は、レーザ光を反射させる反射面を5面を有している。このように、ポリゴンミラーが有する反射面は、奇数の数であることが好ましく、素数の数であることがより好ましい。
【0037】
図8−1は、素数以外の例として4面ポリゴンミラーにより得られた走査周期計測結果を示す図である。図8−2は、素数の例として、5面ポリゴンミラーにより得られた走査周期計測結果を示す図である
【0038】
例えば、走査周期計測の結果、時間差として、所定の値Aと、Aに比べて低い値Bとが交互に検知される場合がある。このような場合には、図8−1に示すように、4面ポリゴンミラーにおいては、Aの値とBの値とが交互に続くパターンが連続して得られる。このため、cnt12とcont34の検知結果およびcnt23とcnt41の検知結果に異なるところがなく、上述のように走査周期計測の結果の特徴に適したアルゴリズムを用いた場合であっても、ポリゴンミラーの基準面を特定するのが難しい。
【0039】
これに対し、図8−2に示すように、素数の面数のポリゴンミラーにおいては、面の数が素数であるため、cnt12とcnt51のところで、Aの値またはBの値が連続することとなる。このため、Aの値またはBの値が連続する点に着目したアルゴリズムを用いることにより、ポリゴンミラーの基準面を特定することが可能である。すなわち、素数の面数のポリゴンミラーを用いることにより、より精度よくポリゴンミラーの基準面の特定することができる。
【0040】
なお、実施の形態においては、説明の便宜上、1つのLDから照射されたレーザビームを、ポリゴンミラーが走査し、1つの感光体に画像を書き込む構成について説明したが、他の例としては、画像形成装置は、対向走査光学系の装置であってもよい。図9は、他の例にかかる画像形成装置2の主要構成を示すブロック図である。画像形成装置2は、4色に相当する4つのLD102a〜102dを備えている。
【0041】
LD(レーザダイオード)ドライバボード109a〜109d上のLD102a〜10
2dから各色に対応するレーザビームが照射される。レーザビームは、シリンドリカルレンズ103a〜103dやミラー104a,104b等の光学部材を経由し、ポリゴンミラー105に入射する。レーザビームはさらに、ポリゴンミラー105において偏向走査され、fθレンズ106a,106bや折り返しミラー107a〜107d等の光学部材を通過し、感光体108a〜108d上に書き込まれる。画像形成装置2においては、1つのポリゴンミラー105により、4つの感光体108a〜108dに対応する4つのステーションが走査される。
【0042】
さらに、所定のステーションに水平同期センサ110が設けられており、画像形成装置2は、水平同期センサ110による検知結果に基づいて、ポリゴン面の特定を行う。具体的には、画像形成装置2は、4つのLD102a〜102dそれぞれに対応する主走査レジスト制御部125a〜125dを備えており、各主走査レジスト制御部125a〜125dは、アルゴリズム特定部123により特定されたアルゴリズムを用いて、走査周期計測部121により得られた複数の時間差から基準面を特定する。さらに、主走査レジスト制御部125a〜125dは、画像形成時には、主走査オフセット値記憶部124を参照し、特定した基準面に基づいて、各面に対応する主走査オフセット値を特定し、特定した主走査オフセット値をLDドライバ101に出力する。
【0043】
なお、画像形成装置の他の例としては、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機であってもよく、また他の例としては、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,2 画像形成装置
101 LDドライバ
102 LD
108 感光体
110 水平同期センサ
120 書込位置制御部
121 走査周期計測部
122 アルゴリズム記憶部
123 アルゴリズム特定部
124 主走査オフセット値記憶部
125 主走査レジスト制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2006−187868号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射する光源と、
複数の面を有し、前記複数の面により前記レーザ光を偏向走査する回転多面体と、
前記回転多面体の各面により偏向された前記レーザ光を受光する受光部と、
前記受光部が前記回転多面体の隣接する2つの面である隣接二面それぞれから前記レーザ光を受光するタイミング間の時間差を計測する走査周期計測部と、
前記回転多面体から得られる前記時間差に基づいて、前記回転多面体の前記複数の面から予め設定された基準面を特定するアルゴリズムと、前記時間差が示す特徴とを対応付けて記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部において、前記走査周期計測部により前記回転多面体の複数の前記隣接二面それぞれから得られる複数の前記時間差が示す特徴に対応付けられている前記アルゴリズムを特定するアルゴリズム特定部と、
前記アルゴリズム特定部により特定される前記アルゴリズムと、前記走査周期計測部により前記回転多面体から得られる前記時間差とに基づいて、前記基準面を特定する基準面特定部と、
前記回転多面体の各面と、各面により偏向されるレーザ光により書き込まれる書込位置の調整量とを対応付けて記憶する第2記憶部と、
前記基準面特定部により特定された前記基準面に基づいて、前記回転多面体の各面を特定する面特定部と、
前記第2記憶部において、前記面特定部により特定される前記各面に対応付けられている前記調整量に基づいて、前記各面に照射する前記レーザ光の照射を制御する制御部と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記回転多面体は、素数の数の面を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記光源を複数有し、
前記受光部は、前記複数の光源のうち所定の光源から照射された前記レーザ光を受光し、
前記制御部は、前記調整量に基づいて、複数の光源それぞれから照射される前記レーザ光の照射を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像形成装置で実行される画像形成方法であって、
前記画像形成装置は、
レーザ光を照射する光源と、
複数の面を有し、前記複数の面により前記レーザ光を偏向走査する回転多面体と、
前記回転多面体の各面により偏向された前記レーザ光を受光する受光部と、
前記回転多面体から得られる前記時間差に基づいて、前記回転多面体の前記複数の面から予め設定された基準面を特定するアルゴリズムと、前記時間差が示す特徴とを対応付けて記憶する第1記憶部と、
前記回転多面体の各面と、各面により偏向されるレーザ光により書き込まれる書込位置の調整量とを対応付けて記憶する第2記憶部と
を備え、
前記受光部が前記回転多面体の前記隣接二面それぞれから前記レーザ光を受光するタイミング間の前記時間差を計測する走査周期計測ステップと、
前記第1記憶部に記憶されている複数の特徴から、前記走査周期計測ステップにおいて前記回転多面体の複数の前記隣接二面それぞれから得られる複数の前記時間差が示す特徴を特定する特徴特定ステップと、
前記第1記憶部において、前記走査周期計測ステップにおいて前記回転多面体の複数の前記隣接二面それぞれから得られる複数の前記時間差が示す特徴に対応付けられている前記アルゴリズムを特定するアルゴリズム特定ステップと、
前記アルゴリズム特定ステップにおいて特定される前記アルゴリズムと、前記走査周期計測部により前記回転多面体から得られる前記時間差とに基づいて、前記基準面を特定する基準面特定ステップと、
前記基準面特定ステップにおいて特定された前記基準面に基づいて、前記回転多面体の各面を特定する面特定ステップと、
前記第2記憶部において、前記面特定ステップにおいて特定される前記各面に対応付けられている前記調整量に基づいて、前記各面に照射する前記レーザ光の照射を制御する制御ステップと
を含むことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111796(P2013−111796A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258125(P2011−258125)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】