説明

画像形成装置及び光走査装置

【課題】機内温度に基づいて、複数の色間の走査光同士の位置ずれを予測して、補正する場合に、例えば、経時的に変化する光走査部のひずみに起因する光走査光の走査軌跡のずれをさらに補正する。
【解決手段】機内温度を温度検知センサ18でモニターし、機内温度がOLT1に達したことを検知すると、温度勾配単位が1℃であれば、OLT1×AUpをカラーレジずれの補正量として算出する。この補正量は、経時劣化によるカラーレジずれ量が加味されていないことになる。そこで、ひずみセンサ50による検出結果Hを補正量に反映させる。ひずみセンサ50による検出結果Hは、検出出力値Hmと、予め実験で求めた基準出力値Hdとの差Δを示す。この結果、補正値HOSEIは、以下の式で表すことができる。
HOSE=HOSEI+OLT1×AUp+H

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、プリンタや複写機等の画像形成装置において、カラーの画像を形成する装置が広く普及している。この種の画像形成装置では、例えば、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色毎に設けられたそれぞれ画像形成部が、記録用紙等の転写対象の移動方向に沿って配列されたものがある(タンデム型画像形成装置)。
【0003】
タンデム型画像形成装置では、各画像形成部での画像データに基づいて光ビームの照射による画素パターンにより感光体ドラム上に静電潜像を形成し(主走査及び副走査)、現像処理によって色の異なる画像(トナー画像)に現像し、このトナー画像を、定速で搬送される転写対象に順次重ねて転写することで、カラー画像を得るようになっている。
【0004】
画像形成部は、一般に、光学系機差、組付誤差、温湿度等の環境変動等により、主走査方向の長さが変動することがある(主走査方向倍率ずれ)。
【0005】
タンデム方式の画像形成装置においては、各画像形成ステーションで形成されるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の各色の画像を、如何に精度良く重ね合わせて、一枚のカラー画像を得るかが重要となる。
【0006】
そこで、従来の画像形成装置では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の各色の画像のずれ量を検出し、各色の画像のずれ量(カラーレジずれ量とも称する)に応じて、画像形成位置を補正するように構成されている。
【0007】
補正に関する技術として、装置内の温度を検出して、カラーレジずれを予測補正するように構成した場合に、温度の上昇時と下降時とも、カラーレジずれを精度良く予測補正することが可能な画像形成装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
この特許文献1では、画像形成装置内の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出結果に基づいて予測補正する位置ずれ予測補正手段とを備え、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、温度の上昇時と下降時とで、前記位置ずれ予測補正手段による予測補正を異ならせたことを特徴としている。
【特許文献1】特開2005−234099公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複数の走査光同士の位置ずれの要因となるひずみ量を検出することができる画像形成装置及び光走査装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、筐体に覆われた空間に設けられ、画像データに基づいて走査光を出力する光走査部、並びに前記光走査部から出力された走査光に基づいて像保持体に像を形成する複数の画像形成部を備え、当該複数の画像形成部で形成された色の異なる画像を互いに重ね合わせることによって、単一の画像を形成する画像形成手段と、前記光走査部における走査軌跡を逸脱させる原因となるひずみを検出するひずみ検出手段と、前記ひずみ検出手段による検出結果に基づいて、前記複数の画像形成部のうち、少なくとも1つの画像形成部で形成される画像の位置ずれを補正する位置ずれ補正手段と、を有している。
【0011】
請求項2に記載の発明は、筐体に覆われた空間に設けられ、画像データに基づいて走査光を出力する光走査部、並びに前記光走査部から出力された走査光に基づいて像保持体に像を形成する複数の画像形成部を備え、当該複数の画像形成部で形成された色の異なる画像を互いに重ね合わせることによって、単一の画像を形成する画像形成手段と、前記筐体内の温度を検出する温度検出手段と、前記複数の画像形成部のうち、少なくとも1つの画像形成部で形成される画像の位置ずれを、前記温度検出手段の検出結果に基づいて予測補正する位置ずれ予測補正手段と、前記光走査部における走査軌跡を逸脱させる原因となるひずみを検出するひずみ検出手段と、前記ひずみ検出手段による検出結果に基づいて前記予測補正手段による予測補正値をさらに補正するひずみ補正手段と、を有している。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ひずみ検出手段が、前記光走査部の構成部材を収容する収容躯体、前記構成部材の一部である光学系を保持する保持部材、前記光学系の非光学作用領域の少なくとも何れか1つに設けられている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1〜請求項3の何れか1項記載の発明において、前記温度検出手段の検出結果に基づいて、温度の上昇時と下降時とで、前記位置ずれ予測補正手段による予測補正を異ならせている。
【0014】
請求項5に記載の発明は、軸受に支持されて回転する回転多面鏡と、回転多面鏡の反射鏡面に向けて光ビームを照射する光出力手段と、前記光ビームが回転する前記回転多面鏡に入射したときの反射光である走査光を、感光体へ案内すると共に、前記走査光の走査方向両端が保持部材によって保持された光学部材と、少なくとも前記回転多面鏡、光出力手段、光学部材を収容する躯体と、前記躯体、保持部材、光学部材の非光学作用領域の少なくとも1つに取り付けられ、当該取付部位のひずみ量を検出するひずみ検出手段と、を有している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、複数の走査光同士の位置ずれの要因となるひずみ量を検出することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、機内温度に基づいて、複数の色間の走査光同士の位置ずれを予測して、補正する場合に、例えば、経時的に変化する光走査部のひずみに起因する光走査光の走査軌跡のずれをさらに補正することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、ひずみ検出手段による検出精度を向上することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、機内温度検出による位置ずれ予測の精度を向上することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、複数の走査光同士の位置ずれの要因となるひずみ量を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る画像形成装置110の構成を示す図である。
【0021】
画像形成装置110は、4色のトナー(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))によるフルカラー画像形成を行うプロセスカートリッジ120を各色に対応して上下方向に4つ配列している。
【0022】
各トナーY、M、C、Kは、特に製造方法により限定されるものではなく、各種のトナーが使用可能である。
【0023】
ここで、プロセスカートリッジ120は、感光体ドラム116と、感光体ドラム116の周囲に配設された帯電ロール118、イレーズランプ122、及び感光体ドラム116に作像される静電潜像に対して、各色のトナーの現像を行う現像装置111A、111B、111C、111Dなどで構成されている。
【0024】
一方、画像形成装置110の下部には、用紙Pが収納された給紙カセット124が設けられている。給紙カセット124の近傍には、用紙Pを所定のタイミングで送り出すピックアップロール126が設けられている。
【0025】
ピックアップロール126は、給紙カセット124から用紙Pを送り出し、搬送ロール128、用紙搬送路132及びレジストレーションロール130を介して、用紙Pをプロセスカートリッジ120に搬送する搬送装置144へ搬送する。
【0026】
プロセスカートリッジ120は、用紙搬送路132の上流側(紙面の下側)から前述のY、M、C、Kの色の順に配設されている。プロセスカートリッジ120の図1の左側には、プロセスカートリッジ120に走査光を照射する光走査装置20が配設されている。
【0027】
光走査装置20は筐体20Aに覆われており、Y〜K4色それぞれのモノシリックな半導体レーザー(面発光レーザー)から発せられた光ビームをコリメータレンズ、シリンドリカルレンズで集光し、ポリゴンミラー23で主走査方向に偏向(走査)して、fθレンズに入射し、2色ずつ副走査方向に分割されるようになっている。
【0028】
fθレンズを出射した光ビームは、複数の反射ミラー25により、最終的に1色ずつ副走査方向に分割されて、各感光体ドラム116へ結像する。
【0029】
搬送装置144は、画像形成装置110の側壁110Aに沿って設けられた一対の張架ロール146、148と、この張架ロール146、148に巻き掛けられた搬送ベルト150と、を備えている。
【0030】
張架ロール146の近傍には、吸着ロール154が配設されており、この吸着ロール154にバイアス電圧が印加されることによって、搬送ベルト150に用紙Pが静電的に吸着される。張架ロール148は、図示しないモータによって回転され、搬送ベルト150を側壁110Aに沿って移動させる。搬送ベルト150を挟んで張架ロール148に対向する位置に、基準パッチの濃度を検出する濃度センサ155(画像位置検出器)が設けられている。
【0031】
搬送ベルト150の内周側であって各色の感光体ドラム116に対向する位置には、それぞれ転写ロール152が配設されている。各々の転写ロール152は、感光体ドラム116上に形成されたトナー像Y、M、C、Kを、搬送ベルト150によって搬送されている用紙Pに順次転写する。
【0032】
そして、定着装置156は、用紙Pに転写されたトナー像を定着する。排出ロール158は、トナー像が定着された用紙Pを排出トレイ160へ排出する。
【0033】
また、制御ユニット166は、本装置全体の制御を行うものであり、例えば外部から入力された画像データや濃度センサ155の出力に基づいて、露光装置134や現像装置111を制御する。
【0034】
また、各々の転写ロール152は、感光体ドラム116上に形成された画像位置検出用パターン(基準パッチ)のトナー像Y、M、C、Kを、搬送ベルト150に順次転写する。ここで、画像位置検出用パターンは、現像装置111内のトナー濃度と基準パッチ位置を測定するために用いられる。具体的には、濃度センサ155で検出される画像位置検出用パターンの濃度に応じて、現像装置111へのトナーの補給や露光量等の画像形成条件が制御される。また、画像位置検出用パターン位置は、各画像位置検出用パターンが濃度センサ155を通過するタイミングを測定し、ずれ量が検出される。測定されたずれ量に応じて、画像形成開始タイミング補正量や、主走査方向倍率ずれの補正量が決定される。
【0035】
上記の如く構成される、所謂タンデム方式の画像形成装置110では、運搬・設置時の振動や、給紙トレイの開け閉め、あるいは温度変化や経年変化等、種々の要因によって、各画像形成部そのものの位置や、各画像形成部を構成する感光体ドラム116や光走査装置20等に位置的な変動が生じ、画像の位置ずれ(カラーレジずれともいう。)が発生する場合がある。表1にその一例を示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示されるような、種々の原因によって、主走査方向及び副走査方向の位置、主走査方向の倍率、主走査方向の部分倍率、副走査方向の倍率、副走査方向の部分倍率、リードのスキュー、サイドのスキュー、リードのリニアリティ、サイドのリニアリティ、副走査方向の周期的ずれ、主走査方向の周期的ずれ等のレジずれが生じるが、これらの画像のレジずれが重ね合わされて、DC的なずれ(均一なずれ)やAC的なずれ(周期的なずれ)が生じ、カラーレジずれとなって現れる場合がある。
【0038】
そこで、特定の時期に、感光体ドラム等に画像位置検出用パターンを形成し、この画像位置検出パターンを濃度センサ155によって濃度を検出して、画像の位置ずれ量を求める、カラーレジずれ量の演算及び補正(フィードバック補正)が一般的に実行されている。
【0039】
図2に示される如く、制御ユニット166は、マイクロコンピュータ10を備えている。マイクロコンピュータ10には、レジずれ補正動作で適宜使用されるレジずれ検出用パターンの画像情報やパラメータを記憶する記憶手段としての不揮発性メモリ(NVM)12が接続されている。
【0040】
また、上記制御ユニット166のマイクロコンピュータ10には、画像データを展開するための描画メモリ14を備えた画像データ展開回路(Video Asic)14が接続されており、当該画像データ展開回路(Video Asic)14からは、光走査装置20のROS制御部16に各色の画像データが送られるようになっている。
【0041】
また、上記制御ユニット166は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのうち、例えば、基準色以外の3つで形成される画像の位置ずれを、後述する温度検出手段の検出結果に基づいて予測補正する位置ずれ予測補正手段としての機能を備えている。
【0042】
さらに、上記制御ユニット166は、濃度センサ155による画像位置検出用パターンの検出結果に基づいて、各画像形成の位置ずれ量を演算する位置ずれ量演算手段としても機能するようになっている。さらに、18は画像形成装置110内の温度(以下、適宜「機内温度」という)を検出する温度検出手段としての温度センサーである。
【0043】
また、光走査装置20には、ひずみセンサ50(詳細後述)が備えられ、当該ひずみセンサ50による検出信号は、マイクロコンピュータ10へ送出されるようになっている。
【0044】
カラーレジずれ量の演算及び補正動作は、図3に示すようなプロセスに従って行われる。
【0045】
まず、現在の色ずれ量を測定するため、画像位置検出用パターンを感光体ドラム116、搬送ベルト150上の記録用紙Pを保持する領域以外に形成し(ステップ200)、この画像位置検出用パターンを濃度センサ155で検出し(ステップ202)、当該濃度センサ155の検出データに基づいて色ずれ量を演算し(ステップ204)、その演算結果から色ずれを補正するための色ずれ補正量を判定して(ステップ206)、最終的に色ずれの補正動作が行われる(ステップ208)。
【0046】
また、本実施の形態の画像形成装置110では、画像位置検出用パターンを検知して、色ずれの補正を行う間隔よりも短い間隔で、画像形成装置110の温度が温度検知センサ18(図2参照)によってモニターされるようになっており、画像形成動作に伴って機内温度が上昇したり、休止時間に伴って機内温度が下降したりするかを判別する。
【0047】
この判別に基づき、機内温度が上昇傾向のときと、機内温度が下降傾向のときとで、ことなる特性曲線(図4のヒステリシス曲線)に基づいて、カレーレジずれ量、又はその補正量を予測するようにしている。
【0048】
ところで、画像形成装置110では、上記温度変化による予測だけでは、経時劣化等に起因するカラーレジずれが考慮されない場合がある。
【0049】
例えば、光走査装置20の筐体20Aが機内で支持されているが、この支持状態が、経時劣化により、徐々にずれる場合がある。
【0050】
また、ポリゴンミラー23は高速で回転し、停止する機械的構造の中でも、最も苛酷な動作を繰り返す構造となっており、例えば、ポリゴンミラーモータの回転軸を支持する軸受が摩耗すると、軸受損失が増加し、光走査装置内部の温度が上昇することになる。これにより、光走査装置を構成する部品の機械的な位置が変わり、光ビームの走査位置が変化する場合がある。なお、光ビームの走査位置の変化は上記に限定されるものではない。
【0051】
そこで、本実施の形態では、前記温度変化による予測制御に、機内の適宜箇所にひずみセンサ50を取り付けて、このひずみセンサ50によって検出した値に基づいて、温度変化によるカラーレジずれ量またはその補正量を、さらに補正するようにした。
【0052】
図5は、本実施の形態に係るひずみセンサ50の概略図が示されている。
【0053】
図5(A)に示される如く、ひずみセンサ50は、ストレンゲージ52とブリッジ回路54を備えている。すなわち、ブリッジ回路54の四隅を結ぶ4個の配線54A、54B、54C、54Dの内、対面する2個の配線54A、54Cには、それぞれ固定抵抗56、58が介在されている。
【0054】
また、配線54Bには、摺動抵抗60が介在されており、定電圧駆動の印加電圧値Eiに対する出力電圧値Eoの調整用とされている。
【0055】
ここで、残りの配線54Dには、ストレンゲージ52が介在されている。
【0056】
図5(B)に示される如く、ストレンゲージ52は、長方形のゲージベース62と、ゲージベース62上を平面視で略U字状に往復配線されたゲージ64と、ゲージベース62の一方の短辺側に設けられた一対の外部配線端子部66と、を有している。このストレンゲージ52がひずむことでゲージ長が変化し、抵抗値が変化するようになっている。一対の外部配線端子66は、前記配線54D(図5(A)参照)の両端に接続されている。
【0057】
上記構成のひずみセンサ50は、図6に示される如く、光走査装置20に取り付けられている。
(光走査装置20の筐体20Aへの取付例)
図6(A)に示される如く、光走査装置20は筐体20Aに覆われており、図6(A)の左右方向が主走査方向となっている。
【0058】
筐体20Aの外側には、機内に対して3点支持するためのボス部70、72、74が突出されている。
【0059】
筐体20A内には、前述したポリゴンミラー23(図6では図示省略)の他、光走査に必要な部品(レーザー、光学系)が取り付けられており、その中でも光ビームの主走査方向に沿って長手方向となる反射ミラー25が、前記筐体20Aにおける主走査方向両端の側壁部に沿って設けられた一対の保持部材20Bに掛け渡されている。
【0060】
前記ひずみセンサ50は、この保持部材20Bに貼り付けられている(図6(A)の「保持部材貼付例1」及び「保持部材貼付例2」参照)。貼り付け位置は、ひずみ検出方向を温度変化に基づく予測に反映させたい向きとすればよい。
【0061】
例えば、保持部材20Bに対して前記ゲージ64の長手方向を主走査方向に沿うようにすれば、主走査方向の温度変化に基づくカラーレジ予測補正のさらなる補正が可能である。また、例えば、保持部材20Bに対して前記ゲージ64の長手方向を副走査方向に沿うようにすれば、副走査方向の温度変化に基づくカラーレジ予測補正のさらなる補正が可能である。当然、2個のひずみセンサ50を主走査方向及び副走査方向にそれぞれ貼り付けることも可能である。
【0062】
図6(B)及び(C)は、光走査装置20の筐体20Aの変形状態を示したものである。このような変形があると、図6(B)の状態から図6(C)に示すように、各色の矢印C,M,Y,Kのように副走査方向にずれが生じることになる。このような場合は、ひずみセンサ50のゲージ64の長手方向を、保持部材20Bに対して、副走査方向に沿うように貼り付ければよい。
(反射ミラー25への取付例)
図7は、前記ひずみセンサ50を、光走査装置20、或いは光走査装置20と感光体ドラム116との間を案内する反射ミラー25へ貼り付けた例を示している(図6(A)の「反射ミラー貼付例」参照)。
【0063】
図7に示される如く、反射ミラー25における非反射面、すなわち裏面側にひずみセンサ50を貼り付ける。この反射ミラー25の裏面への貼り付けにより、ひずみセンサ50は、走査線の倍率誤差ずれに対する補正の、さらなる補正に適用される。
【0064】
一般的には、ひずみセンサ50は、反射ミラー25の裏面において、主走査方向の中間位置に貼り付けられる。これは、温度変化による筐体20A又は保持部材20B(図6参照)の伸縮で、反射ミラーの長手方向に応力がかかり、ミラー面が湾曲することによる倍率ずれ量を、実温度変動の下でひずみ量として検出することが可能となる。なお、ひずみ量と倍率ずれ量とは予めテーブル化しておけばよい。
【0065】
以下、前述した図4の温度−カラーレジずれ補正量特性図に基づいて、温度変化によるカラーレジずれ量又はその補正量の予測手順、並びに、ひずみによる温度変化によるカラーレジずれ量又はその補正量のさらなる補正について説明する。
【0066】
図4に示すように、制御ユニット166では、画像形成装置110内の温度変化に対して、例えば、2つの閾値温度OLT1とOLT2を設定している。
【0067】
ここで、上記2つの閾値温度OLT1、OLT2によって分割された温度領域をエリアA、B、Cとする。
【0068】
また、各々の温度領域内での温度を因子としたカラーレジずれの補正成分の変位勾配を、温度が上昇する場合には、AUp、BUp、CUpとし(図4の鎖線参照)、温度が下降する場合には、ADwn、BDwn、CDwnとする(図4の一点鎖線参照)。
【0069】
図4は、シアン色を基準色とした場合、当該基準色としてのシアン色の画像に対する他のイエロー色、マゼンタ色、ブラック色の各色の画像位置ずれを、画像形成装置110内の温度に対して、予め予測したものであり、当該図4に示すような特性は、実験によって予め求められており、制御ユニット166の不揮発性メモリ等に予め記憶されている。
【0070】
また、図4において、縦軸のカラーレジずれの補正量は、走査線の副走査方向に沿った位置ずれ(Yマージン)、走査線の傾き(スキュー)、走査線の湾曲(ボウ)などレジずれ量のうち、いずれか1つに対応して、これを補正するための補正量を示したものである。基本的に、図4に示すような温度に対するレジずれ補正量の特性は、レジずれの種類毎に用意されるが、同様の特性を有するものは、1つの特性グラフで代表させて、この1つの特性グラフを用いても良い。
【0071】
予測制御を行う場合には、画像位置検出用パターンを形成しないので、上記カラーレジずれの結果か、当該カラーレジずれを補正するための補正量の結果を予測することになる。
【0072】
まず、カラーレジずれの補正量を予測する場合について説明する。
【0073】
(温度上昇時の制御)
制御ユニット166は、図4に示すように、画像形成装置110内の温度を温度検知センサ18によってモニターし、画像形成装置110内の温度がOLT1に達したことを検知すると、温度勾配単位が1℃であれば、OLT1×AUpをカラーレジずれの補正量として算出する。そして、最終的な補正量は、パターンを検知して補正したときの現補正量をHOSEIとした場合に、
HOSEI=HOSEI+OLT1×AUp・・・(1)
となる。
【0074】
ところで、この(1)式には、前述した経時劣化によるカラーレジずれ量が加味されていないことになる。そこで、本実施の形態では、ひずみセンサ50による検出結果Hを前記(1)式に反映させる。
【0075】
ひずみセンサ50による検出結果Hは、ひずみセンサ50からの検出出力値Hmと、予め実験による求めた基準出力値Hdとの差Δを示すものである。
【0076】
この結果、(1)式は、
HOSE=HOSEI+OLT1×AUp+H・・・(2)
となる。
【0077】
制御ユニット166は、この算出結果に基づいて、図3のステップ105に示すように、フローチャートの補正部分に進み、実際の補正が行われる。
【0078】
次に、画像形成装置110内の温度がさらに上昇し、温度検知センサ18によってモニターされる画像形成装置110内の温度が、第2の閾値OLT2に達すると、上記で補正された補正量に加えた補正が制御ユニット166によって行われる。制御ユニット166は、温度勾配単位が1℃であれば、(OLT2−OLT1)×BUpを追加して補正を行う。カラーレジずれの補正量HOSEIは、
HOSEI=HOSEI+(OLT2−OLT1)×BUp・・・(3)
となる。
【0079】
上記と同様に、ひずみ量を考慮すると、(3)式は、
HOSEI=HOSEI+(OLT2−OLT1)×BUp+H・・・(4)
となる。
【0080】
また、この場合は、前回の閾値OLT1のときに補正した補正量の値HOSEIが、何らかの形で次の閾値OLT2の補正を行うまで記憶されて残されている場合に適用できる。
【0081】
(温度下降時の制御)
一方、上記画像形成装置110において、画像形成動作の休止状態が続いた場合には、画像形成装置110内の温度が徐々に低下し、当該画像形成装置110内の温度の下降が温度検知センサ18によってモニターされる。
【0082】
なお、本実施の形態では、画像形成装置110内の温度が上昇から下降に変化した場合には、基本的にその時点で画像位置検出用パターンを形成したレジずれ補正を行うように構成されている。
【0083】
制御ユニット166は、図4に示すように、画像形成装置110内の温度を温度検知センサ18によってモニターし、画像形成装置110内の温度が下降して閾値OLT2に達したことを検知すると、温度勾配単位が1℃であれば、OLT2×CDwnをカラーレジずれの補正量として算出する。そして、最終的な補正量は、パターンを検知して補正したときの現補正量をHOSEIとした場合に、
HOSEI=HOSEI−OLT2×CDwn・・・(5)
となる。
【0084】
ところで、この(5)式には、前述した経時劣化によるカラーレジずれ量が加味されていないことになる。そこで、本実施の形態では、ひずみセンサ50による検出結果Hを前記(5)式に反映させる。
【0085】
ひずみセンサ50による検出結果Hは、ひずみセンサ50からの検出出力値Hmと、予め実験による求めた基準出力値Hdとの差Δを示すものである。
【0086】
この結果、(5)式は、
HOSEI=HOSEI−OLT2×CDwn+H・・・(6)
となる。
【0087】
制御ユニット166は、この算出結果に基づいて、図3のステップ105に示すように、フローチャートの補正部分に進み、実際の補正が行われる。
【0088】
その他の動作も上昇時と同様に行われる。
【0089】
なお、上記補正は、色毎、あるいはカラーレジずれ成分毎に独立なパラメータ(OLTX、XUp、XDwn)を設定すればよく、温度の閾値の数も例では2つであったが、それに拘束されるものではない。
【0090】
また、前記で述べた補正量そのものをパタメータとして持つ場合には、温度上昇、下降の回数を数えてそれに見合うだけの補正量を決定するように構成しても良い。
【0091】
このように、上記実施の形態では、画像形成装置110内の温度を温度検知センサ18によって検出して、カラーレジずれを予測補正する際に、温度の上昇時と下降時とで、位置ずれ予測補正量を異ならせるようにした。さらに、ひずみセンサ50を用い、予測補正量をさらに補正している。
【0092】
なお、本実施の形態では、温度変化量を図4に示される如く、エリア(Area)に分類し、それぞれの勾配(傾き)に基づいて、補正量を演算するようにしたが、ヒステリス曲線に近似する、二次曲線を生成するようにしてもよい(図8参照)。これにより、本実施の形態では、補正を行うときに温度を因子とした一次式を用いて補正を行うように構成されていたのに対し、実際のずれ量と乖離の大きさを減らすことが可能である。また、この応用としてヒステリシス曲線が線形であれば、そのままその線形を示す関数を利用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】本実施の形態に係る画像形成装置を制御するための制御系を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る画像形成装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施の形態に係る画像形成装置において、機内の温度とカラーレジずれの補正量との関係を示す特性図である。
【図5】(A)は本実施の形態に係るひずみセンサの概略図、(B)はひずみセンサに適用したストレンゲージの拡大図である。
【図6】(A)は本実施の形態に係る光走査装置の正面図、(B)は正常時(ひずみ無し)の図6(A)の左側面図、(C)は異常時(ひずみ有り)の図6(A)の左側面図である。
【図7】ひずみセンサを反射ミラーの非反射面(裏面)に貼り付けた場合の側面図である。
【図8】本実施の形態の変形例に係る画像形成装置において、機内温度とカラーレジずれの補正量との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0094】
P 用紙
10 マイクロコンピュータ(予測補正手段、ひずみ補正手段)
12 不揮発性メモリ(NVM)
14 画像データ展開回路(Video Asic)
16 ROS制御部
18 温度センサ(温度検出手段)
20 光走査装置(躯体)
20A 筐体
20B 保持部材(光走査部)
23 ポリゴンミラー(光走査部)
25 反射ミラー(光走査部)
50 ひずみセンサ(ひずみ検出手段)
52 ストレンゲージ(ひずみ検出手段)
54 ブリッジ回路(ひずみ検出手段)
54(A、B、C、D) 配線
56、58 固定抵抗
60 摺動抵抗
62 ゲージベース
64 ゲージ(ひずみ検出手段)
66 外部配線端子部
110 画像形成装置
110A 側壁
111(A、B、C、D) 現像装置(画像形成手段)
116 感光体ドラム(画像形成手段)
118 帯電ロール(画像形成手段)
120 プロセスカートリッジ(画像形成手段)
122 イレーズランプ(画像形成手段)
124 給紙カセット
126 ピックアップロール
128 搬送ロール
130 レジストレーションロール
132 用紙搬送路
146,148 張架ロール
150 搬送ベルト
152 転写ロール
154 吸着ロール
155 濃度センサ
156 定着装置(画像形成手段)
158 排出ロール
160 排出トレイ
166 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に覆われた空間に設けられ、画像データに基づいて走査光を出力する光走査部、並びに前記光走査部から出力された走査光に基づいて像保持体に像を形成する複数の画像形成部を備え、当該複数の画像形成部で形成された色の異なる画像を互いに重ね合わせることによって、単一の画像を形成する画像形成手段と、
前記光走査部における走査軌跡を逸脱させる原因となるひずみを検出するひずみ検出手段と、
前記ひずみ検出手段による検出結果に基づいて、前記複数の画像形成部のうち、少なくとも1つの画像形成部で形成される画像の位置ずれを補正する位置ずれ補正手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
筐体に覆われた空間に設けられ、画像データに基づいて走査光を出力する光走査部、並びに前記光走査部から出力された走査光に基づいて像保持体に像を形成する複数の画像形成部を備え、当該複数の画像形成部で形成された色の異なる画像を互いに重ね合わせることによって、単一の画像を形成する画像形成手段と、
前記筐体内の温度を検出する温度検出手段と、
前記複数の画像形成部のうち、少なくとも1つの画像形成部で形成される画像の位置ずれを、前記温度検出手段の検出結果に基づいて予測補正する位置ずれ予測補正手段と、
前記光走査部における走査軌跡を逸脱させる原因となるひずみを検出するひずみ検出手段と、
前記ひずみ検出手段による検出結果に基づいて前記予測補正手段による予測補正値をさらに補正するひずみ補正手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項3】
前記ひずみ検出手段が、前記光走査部の構成部材を収容する収容躯体、前記構成部材の一部である光学系を保持する保持部材、前記光学系の非光学作用領域の少なくとも何れか1つに設けられている請求項1又は請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記温度検出手段の検出結果に基づいて、温度の上昇時と下降時とで、前記位置ずれ予測補正手段による予測補正を異ならせている請求項1〜請求項3の何れか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
軸受に支持されて回転する回転多面鏡と、
回転多面鏡の反射鏡面に向けて光ビームを照射する光出力手段と、
前記光ビームが回転する前記回転多面鏡に入射したときの反射光である走査光を、感光体へ案内すると共に、前記走査光の走査方向両端が保持部材によって保持された光学部材と、
少なくとも前記回転多面鏡、光出力手段、光学部材を収容する躯体と、
前記躯体、保持部材、光学部材の非光学作用領域の少なくとも1つに取り付けられ、当該取付部位のひずみ量を検出するひずみ検出手段と、
を有する光走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−72325(P2010−72325A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239532(P2008−239532)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】