説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】 感光体と中間転写ベルト間に発生する放電を抑え、感光体から中間転写体に転写されるトナー像の帯電ムラを防ぐ。
【解決手段】 1次転写部51が1次転写出力に基づいて感光体41上に形成されたトナー像を中間転写体50に転写し、2次転写部70が2次転写出力に基づいて中間転写体50上に転写されたトナー像を転写する。2次転写部70による転写後、2次転写残トナー検知部91により中間転写体50上に残ったトナー75のトナー量のムラを検知する。そして、2次転写残トナー検知部91からの出力に基づいて、感光体41上に形成されたトナー像を転写する際に発生する帯電ムラの有無を判定し、1次転写出力の値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写体を用いてトナーの転写を行う画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中間転写体(ベルト、ドラム等)を用いた画像形成装置が知られている。このような画像成形装置では、感光体を帯電させると共に原稿画像に合わせて電荷を消去して露光し、感光体に静電潜像を形成する。次に、感光体の静電潜像に現像部を用いてトナーを付着させる。そして、感光体に付着したトナーを中間転写体に転写(1次転写)して、中間転写体に付着したトナーを用紙に転写(2次転写)する。
【0003】
ところで、1次転写後の中間転写体上のトナー像に帯電ムラが生じると、その帯電量の違いによって2次転写後の用紙上のトナー像(画像)に濃度差(濃度ムラ)が発生することがある。図10は、2次転写後の濃度ムラが生じた画像の例である。この例では、用紙の搬送方向に複数の濃度ムラ201が生じている。本明細書では、このような縞状の濃度ムラを畳状ノイズと称す。
【0004】
特許文献1には、用紙に画像を転写する際の各々のトナーの転写効率の違いを最小限に抑える画像形成装置が開示されている。
この特許文献1に開示された画像形成装置では、2色のトナーを重ね合わせて画像を形成した際に、中間転写ベルト上の残存する2色のトナーの総量と、その2色のトナーの比率をそれぞれセンサにより検出する。これら検出結果に基づいて、2色のトナーの総量の転写効率と、各々のトナーの転写効率を演算する。そして、この転写効率に基づいて、2色のトナー総量の転写効率が所定値よりも大きくなる範囲内で、各々のトナーの転写効率の差が最も小さくなる2次転写電圧を選択する。これにより、用紙に画像を転写する際の各々のトナーの転写効率の違いを最小限に抑え、かつ総トナー量の転写率が高い高画像再現性を有する画像形成装置を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−106206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1次転写後の中間転写体上のトナー像における帯電ムラは、感光体と中間転写ベルト間に発生する放電が一因であると考えられる。この放電によって1次転写後のトナー像の帯電量に意図しない不均一が発生し、2次転写後の用紙上の画像に濃度ムラが発生する。それとともに、2次転写後の中間転写体上の残トナーにもトナー量にムラが発生する。また、中間転写体上のトナー像の帯電ムラは、1次転写時における環境等の条件によって発生状況が変化する。
【0007】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたものであり、感光体と中間転写ベルト間に発生する放電を抑え、感光体から中間転写体に転写されるトナー像の帯電ムラを防ぐものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、1次転写部が1次転写出力に基づいて感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、2次転写部が2次転写出力に基づいて中間転写体上に転写されたトナー像を転写する。2次転写部による転写後、2次転写残トナー検知部により中間転写体上に残ったトナーのトナー量のムラを検知する。そして、2次転写残トナー検知部からの出力に基づいて、感光体上に形成されたトナー像を転写する際に発生する帯電ムラの有無を判定し、1次転写出力の値を設定する。
【0009】
本発明の一側面によれば、予め設定された1次転写出力の値を用いて2次転写残トナー検知動作が実施され、2次転写残トナーのトナー量のムラが検知されて帯電ムラありと判定された場合には、1次転写出力の値が大きくなるよう変更される。そして、変更後の1次転写出力の値を用いて2次転写残トナー検知動作を繰り返すことにより、2次転写残トナーのトナー量にムラが発生しない最小の1次転写出力の値が決定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1次転写部の1次転写出力の値を適切に設定することにより、感光体と中間転写ベルト間に発生する帯電ムラの発生が抑えられるので中間転写体に転写されるトナーの帯電ムラを防ぐことができる。それゆえ、用紙上の画像ムラを低減することができる。
また、1次転写部の1次転写出力を最小限の出力に設定できるので、1次転写部が複数ある場合に中間転写体から1次転写部(特に最下流側)へのトナーの逆転写を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像形成装置の全体構成例を示すブロック図である。
【図2】2次転写残トナー検知部及び環境センサの配置例を示す説明図である。
【図3】1次転写出力と2次転写残トナーの発生状況との関係の一例を示す表である。
【図4】1次転写電流と逆転写率との関係の一例を示すグラフである。
【図5】画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】図3の画像形成装置の動作例を示すフローチャートである。
【図7】A,Bは感光体に形成する画像パターンの一例である。
【図8】2次転写残トナー検知部から出力される信号の波形と閾値の例を示すグラフである。
【図9】本発明の第1の実施形態の変形例を示す説明図である。
【図10】2次転写後の画像の濃度ムラの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。説明は下記の順序で行う。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
1.第1の実施形態(2次転写部:用紙に転写した例)
2.変形例(2次転写部:2次転写ローラに転写した例)
【0013】
<1.第1の実施形態>
[画像形成装置の構成例]
まず、画像形成装置の第1の実施の形態の構成例について、図1を参照して説明する。
図1は、本例の画像形成装置を示す全体構成図である。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真方式により用紙に画像を形成するものであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナーを重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。この画像形成装置1は、原稿搬送部10と、用紙収納部20と、画像読取部30と、画像形成部40と、中間転写ベルト50と、2次転写部70と、定着部80を有する。
【0015】
原稿搬送部10は、原稿をセットする原稿給紙台11と、複数のローラ12とを有している。原稿給紙台11にセットされた原稿Gは、複数のローラ12によって、画像読取部30の読取位置に1枚ずつ搬送される。画像読取部30は、原稿搬送部10により搬送された原稿G又は原稿台13に載置された原稿の画像を読み取って、画像信号を生成する。
【0016】
用紙収納部20は、装置本体の下部に配置されており、用紙Sのサイズや種類に応じて複数設けられている。この用紙Sは、給紙部21により給紙されて搬送部23に送られ、搬送部23によって転写位置である2次転写部70に搬送される。また、用紙収納部20の近傍には、手差部22が設けられている。この手差部22からは、用紙収納部20に収納されていないサイズの用紙やタグを有するタグ紙、OHPシート等の特殊紙が転写位置へ送られる。
【0017】
画像読取部30と用紙収納部20との間には、画像形成部40と中間転写ベルト50が配置されている。画像形成部40は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー像を形成するために、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kを有する。
【0018】
第1の画像形成ユニット40Yは、イエローのトナー像を形成し、第2の画像形成ユニット40Mは、マゼンダのトナー像を形成する。また、第3の画像形成ユニット40Cは、シアンのトナー像を形成し、第4の画像形成ユニット40Kは、ブラックのトナー像を形成する。これら4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは第1の画像形成ユニット40Yについて説明する。
【0019】
第1の画像形成ユニット40Yは、ドラム状の感光体41と、感光体41の周囲に配置された帯電部42と、露光部43と、現像部44と、クリーニング部45を有している。感光体41は、不図示の駆動モータによって回転する。帯電部42は、感光体41に電荷を与え感光体41の表面を一様に帯電する。露光部43は、原稿Gから読み取られた画像データ又は外部装置から送信された画像データに基づいて、感光体41の表面に対して露光操作を行い感光体41上に静電潜像を形成する。
【0020】
現像部44は、感光体41に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させる。これにより、感光体41の表面に、イエローのトナー像が形成される。クリーニング部45は、感光体41の表面に残留しているトナーを除去する。
第2の画像形成ユニット40Mの現像部44は、感光体41にマゼンタのトナーを付着させ、第3の画像形成ユニット40Cの現像部44は、感光体41にシアンのトナーを付着させる。そして、第4の画像形成ユニット40Kの現像部44は、感光体41にブラックのトナーを付着させる。
【0021】
感光体41上に付着したトナーは、中間転写体の一例である中間転写ベルト50に転写される。中間転写ベルト50は、無端状に形成されており、不図示の駆動モータで感光体41の回転方向とは逆方向に回転駆動する。中間転写ベルト50における各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの感光体41と対向する位置には、1次転写ローラ51が設けられている。この1次転写ローラ51は、本発明の1次転写部の一例であり、中間転写ベルト50にトナーと反対の極性のバイアス(1次転写出力)を印加することで、感光体41上に付着したトナーを中間転写ベルト50に転写する。
【0022】
そして、中間転写ベルト50が回転駆動することで、中間転写ベルト50の表面には、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで形成されたトナー像が順次転写される。これにより、中間転写ベルト50上には、イエロー、マゼンダ、シアン及びブラックのトナー像が重なり合いカラー画像が形成される。
【0023】
中間転写ベルト50の近傍で、かつ搬送部23の用紙搬送方向下流側には、2次転写部70が配置されている。2次転写部70は、本発明の2次転写部の一例であり、中間転写ベルト50のトナー像が形成される面に圧接される2次転写ローラ71と、中間転写ベルト50を介して2次転写ローラ71に対向する2次転写対向ローラ72を備えて構成されている。これら2次転写ローラ71及び2次転写対向ローラ72は、中間転写ベルト50の回転駆動に従動して回転する。2次転写部70は、搬送部23によって送られてきた用紙S上に中間転写ベルト50に形成されたトナー像(カラー画像)を転写する。この中間転写ベルト50の近傍には、2次転写残トナー検知部91及び環境センサ92(図2参照)が設置されており、これらは後で詳しく説明する。
【0024】
2次転写部70における用紙Sの排出側には、定着部80が設けられている。この定着部80は、用紙Sを加圧及び加熱して、転写されたトナー像を用紙Sに定着させる。
【0025】
定着部80の用紙搬送方向下流側には、切換ゲート24が配置されている。切換ゲート24は、定着部80を通過した用紙Sの搬送路を切り換える。すなわち、切換ゲート24は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、用紙Sを直進させる。これにより、用紙Sは、一対の排紙ローラ25によって排紙される。また、切換ゲート24は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、用紙Sを下方に案内する。
【0026】
フェースダウン排紙を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって表裏を反転して上方に搬送する。これにより、表裏が反転された用紙Sは、一対の排紙ローラ25によって排紙される。
両面画像形成を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって表裏を反転し、再給紙路27により再び転写位置へ送られる。
【0027】
一対の排紙ローラ25の用紙搬送方向下流側に、用紙Sを折ったり、用紙Sに対してステープル処理等を行ったりする後処理装置を配置してもよい。
【0028】
[2次転写残トナー検知部及び環境センサ]
ここで、2次転写残トナー検知部91及び環境センサ92について、図2を参照して説明する。
【0029】
(2次転写残トナー検知部の配置例)
2次転写残トナー検知部91は、本発明の2次転写残トナー検知部の一例であり、2次転写後の中間転写ベルト50上に残留したトナーを検知する。図2に示すように、2次転写残トナー検知部91は、2次転写部70の中間転写ベルト50の回転駆動方向(以下、ベルト移動方向という)の下流側で、中間転写ベルト50の近傍に設けられる。
【0030】
図2に示すように、例えば、画像形成ユニット40Kの現像部44が備える現像ローラ44−1により、感光体41の表面にトナーが付着し、静電潜像に応じたトナー像が形成される。感光体41に形成されたトナー像(トナー像52−1,52−2)は、1次転写ローラ51により中間転写ベルト50に転写される。
【0031】
1次転写ローラ51に対してベルト移動方向下流側には、転写前搬送ローラ73が設けられている。転写前搬送ローラ73は、中間転写ベルト50の内側(トナー像が形成される側とは反対側)に接触し、その他の複数のローラと共に中間転写ベルト50を回転駆動させる。中間転写ベルト50の回転駆動に伴い、中間転写ベルト50のトナー像(トナー像52−1,52−2等)が形成された部分が2次転写部70へ順次移動される。また、2次転写部70は、中間転写ベルト50の回転駆動に合せて用紙Sが供給される。
【0032】
2次転写部70の2次転写ローラ71と中間転写ベルト50とのニップ部を用紙Sが通過すると、中間転写ベルト50に形成されたトナー像74が用紙Sに転写される。
【0033】
2次転写対向ローラ72は、中間転写ベルト50の内側(トナー像が形成される側とは反対側)に接触している。2次転写対向ローラ72には、用紙Sへの転写時に、トナーと同極性のバイアス(2次転写出力)が印加される。これにより、2次転写部70に転写電界が形成され、ニップ部において中間転写ベルト50のトナー像が用紙Sに転写される。
【0034】
なお、2次転写時のバイアス(2次転写出力)は、2次転写ローラ71に印加してもよい。2次転写ローラ71にバイアスを印加する場合は、トナーと逆極性のバイアスを印加する。
【0035】
2次転写残トナー検知部91は、2次転写部70による2次転写後、中間転写ベルト50上の2次転写残トナーを検知する。
【0036】
2次転写残トナー検知部91には、一例として、反射型光センサを用いることができる。反射型光センサは、反射型光源と受光素子を備えている。反射型光源と受光素子は、中間転写ベルト50のトナー像が形成される側に、中間転写ベルト50と対向するように設置される。反射型光源から中間転写ベルト50に照射された光は、中間転写ベルト50表面又は中間転写ベルト50上に残存したトナーに反射した反射光となって、受光素子で受光される。受光される反射光量は、その光の波長に応じたトナーの残存量によって異なる。この反射光量に応じて、反射型光センサから信号が出力される。
【0037】
なお、2次転写残トナー検知部91の他の例として、透過型光センサを用いてもよい。透過型光センサは、透過型光源と、透過型光源からの光を検出する受光素子を備える。透過型光源と受光素子は、中間転写ベルト50を挟んで対向するように設置される。透過型光センサを用いる場合、中間転写ベルト50は、透過型光源からの光の波長に対して透過性を有する材料から構成される。
【0038】
反射型光源及び透過型光源は、LED(Light Emitting Diode)が好ましい。また、透過型光源からの光としては、中間転写ベルト50に対して透過性を有する波長であることが好ましい。
【0039】
(環境センサの配置例)
環境センサ92は、一例として温度を測定する温度計と湿度を測定する湿度計の機能を備え、所定のタイミング又は指示に応じて測定を行い、測定した温度と湿度の情報を出力する。環境センサ92は、画像形成部40の感光体41の近くに設置することが好ましい。本実施形態では、4つの画像形成ユニット40Y〜40Kのうち、中間転写ベルト50の移動方向最下流に配置された第4の画像形成ユニット40Kが備える感光体41の近くで、例えば感光体41に対してベルト移動方向下流側に設置している。
【0040】
(2次転写残トナー及び逆転写)
既述したように、1次転写後の中間転写ベルト50上のトナー像に帯電ムラが生じると、2次転写後の用紙S上のトナー像(画像)に濃度差(濃度ムラ)が発生する。すなわち、2次転写の際に用紙S上に転写されなかった2次転写残トナーが中間転写ベルト50上に付着する。表面的には、中間転写ベルト50上の濃度ムラの有無はわからない。図3に、1次転写ローラ51の1次転写出力(転写電流:μA)と2次転写残トナーのトナー量のムラの発生状況を測定した結果を示す。
【0041】
図3に示す表から、2次転写残トナーのトナー量のムラの発生は、1次転写時における環境等の条件によって発生状況が変化し、2次転写出力(転写電流:μA)とは関係のないことがわかる。すなわち、2次転写出力の値に関わらず、温度及び湿度の条件によって2次転写残トナーのトナー量のムラが発生する1次転写出力の閾値が変化している。
【0042】
測定の結果は以下のとおりである。
・感光体41付近の環境が常温・常温(NN)、例えば温度20℃かつ湿度50%のとき、1次転写出力が20μAでは2次転写残トナーが発生した(×印)。同25μAでは2次転写残トナーのトナー量のムラは発生しなかった(○印)。
・感光体41付近の環境が常温・高湿(NH)、例えば温度20℃かつ湿度80%のとき、1次転写出力が25μAでは2次転写残トナーが発生した(×印)。同30μAでは2次転写残トナーのトナー量のムラは発生しなかった(○印)。
・感光体41付近の環境が高温・高湿(HH)、例えば温度30℃かつ湿度80%のとき、1次転写出力が30μAでは2次転写残トナーが発生した(×印)。同35μAでは2次転写残トナーのトナー量のムラは発生しなかった(○印)。
【0043】
この結果から、1次転写時の温度・湿度の条件が同じであれば、印加する1次転写出力の値の大きい方が、2次転写残トナーのトナー量のムラの発生を抑えられる。すなわち、1次転写時に感光体41と中間転写ベルト50間における放電が抑えられ、中間転写ベルト50上に転写されるトナー像の帯電量が均一になり帯電ムラを解消できる。したがって、1次転写時に放電が発生した場合、そのときの1次転写出力よりも高い値の1次転写出力に変更、印加することにより、放電の発生を抑えることができる。
【0044】
また、常温・常温(NN)と常温・高湿(NH)における2次転写残トナーのトナー量のムラ発生の結果を比較すると、同じ温度でも湿度が高い環境にある方が、1次転写出力の閾値が大きくなる。
感光体41と中間転写ベルト50間に発生する放電は、温度よりも湿度により影響されるので、環境センサ92が少なくとも湿度計の機能を有し、湿度に応じて1次転写出力を設定するようにしてもよい。
【0045】
ところで、1次転写出力を最初から十分に大きい値に設定しておけば1次転写後のトナー像の帯電量が十分に確保され、2次転写後における用紙S上の濃度ムラの発生を回避できる。しかし、図4に示すように、1次転写出力(転写電流:μA)の値を高くすると、逆転写率(%)が増加するという不具合がある。逆転写とは、ある感光体41から中間転写ベルト50に転写したトナーが、その下流に配置された感光体41に再付着することである。逆転写低減の観点からは、1次転写出力の値は低い方が好ましい。
【0046】
特に、中間転写ベルト50の移動方向最下流に配置された第4の画像形成ユニット40Kの感光体41には、その上流に配置された第1〜第3の画像形成ユニット40Y〜40Cの各感光体41から中間転写ベルト50上に転写された各色(イエロー、シアン、マゼンダ)のトナーが逆転写する。したがって、この最下流に配置された感光体41に形成されたトナー像を転写する際、1次転写ローラ51の1次転写出力の値を大きく設定してしまうと、逆転写によって、その上流で中間転写ベルト50上に転写された各色のトナーの損失が増えてしまう。この逆転写は、中間転写ベルト50の移動方向の上流から2番目、3番目に配置された感光体でも起こるが、トナーの損失は最下流に配置された感光体で最も大きくなる。そのため、特に最下流に配置された感光体に形成されるトナー像を転写するときの1次転写出力の値は、帯電ムラが生じない範囲で最小の値に設定することが好ましい。
【0047】
また、ブラックのトナーは、通常、炭素主体の微粒子であるカーボンブラックが用いられており、他の色のトナーと比較すると帯電量が少ない。しかし、帯電量が少ないと転写の際に放電の影響を受けやすく、1次転写後のトナー像に帯電ムラが生じる。そこで、感光体に形成されるトナー像の色がブラックの場合、帯電ムラを無くすため1次転写時の1次転写出力の値は大きくしたいが、大き過ぎると逆転写率が増加してしまう。したがって、感光体に形成されるトナー像の色がブラックの場合にも、1次転写出力の値は、帯電ムラが生じない範囲で最小の値に設定することが好ましい。
【0048】
なお、上述の説明では、1次転写出力及び2次転写出力として転写電流を挙げて説明したが、転写電圧を用いて同様に説明することができる。
【0049】
[画像形成装置の各部のハードウェア構成例]
次に、本例の画像形成装置1の各部のハードウェア構成について、図5を参照して説明する。
図5は、本例の画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。
【0050】
図5に示すように、画像形成装置1は、例えばCPU(中央演算処理装置)101と、CPU101が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)102とを有する。ROM102に保存されるデータには、例えば画像形成装置1の電源投入時などのタイミングで参照する、画像形成の際の1次転写出力及び2次転写出力の値や、帯電ムラの有無を判定する際の閾値などがある。なお、ROM102としては、例えば、通常電気的に消去可能なプログラマブルROMが用いられる。
【0051】
また、画像形成装置1は、CPU101の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)104と、操作表示部105を有する。
【0052】
CPU101は、制御部の一例であり、装置全体を制御する。このCPU101は、ROM102、RAM103、HDD104及び操作表示部105にそれぞれシステムバス107を介して接続されている。また、CPU101は、画像読取部30、画像処理部106、画像形成部40、給紙部21、2次転写残トナー検知部91、環境センサ92にシステムバス107を介して接続されている。
【0053】
HDD104は、画像読取部30で読み取って得た原稿画像の画像データを記憶したり、出力済みの画像データ等を記憶したりする。操作表示部105は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部105は、ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部105は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付けて入力信号を出力する。
【0054】
画像読取部30は、原稿画像を光学的に読み取って電気信号に変換する。例えば、カラー原稿を読み取る場合は、一画素当たりRGB各10ビットの輝度情報をもつ画像データを生成する。画像読取部30によって生成された画像データや、画像形成装置1に接続された外部装置の一例を示すPC(Personal Computer)120から送信される画像データは、画像処理部106に送られ、画像処理される。画像処理部106は、受信した画像データに対してアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮等の処理を行う。
【0055】
なお、本例では、外部装置としてパーソナルコンピュータを適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、外部装置としては、例えばファクシミリ装置等その他各種の装置を適用することができる。
【0056】
例えば、取得部108によってファクシミリ装置から画像形成装置1に取り込んだ原稿画像のカラー印刷を実行する場合、画像読取部30等によって生成されたR・G・Bの画像データを画像処理部106における色変換LUT(Look up Table)に入力する。そして、画像処理部106は、R・G・BデータをY・M・C・Bkの画像データに色変換する。そして、色変換した画像データに対して、階調再現特性の補正、濃度補正LUTを参照した網点などのスクリーン処理、あるいは細線を強調するためのエッジ処理などを行う。
【0057】
画像形成部40は、画像処理部106によって画像処理された画像データを受け取り、用紙S上に画像を形成する。
【0058】
[画像形成装置の動作例]
次に、画像形成装置1の動作例を説明する。
図6は、1次転写出力値の設定処理を示すフローチャートである。
【0059】
まず、CPU101は、画像形成に際して2次転写残トナー検知動作を行うべきタイミングであるか否かを判定する(ステップS1)。2次転写残トナー検知動作を行うべきタイミングとなるまでこの処理を繰り返す。
2次転写残トナー検知動作を行うべきタイミングとは、例えば画像形成装置1の電源投入時や環境、耐久等の条件が変化したときである。耐久の条件の変化とは、例えば経年により1次転写ローラ51又は2次転写ローラ71の中間転写ベルト50に対する抵抗が増し、放電そして帯電ムラが生じやすくなるような場合をいう。
【0060】
CPU101は、2次転写残トナー検知動作を行うべきタイミングであると判定した場合、1次転写を行う際の1次転写出力の値をROM102から読み出しRAM103に展開する(ステップS2)。なお、1次転写出力を決めるための動作(例えば電源オン時のATVC等)が必要な場合は、1次転写出力の値を決定してRAM103又はROM102に記憶した後に、2次転写残トナー検知動作を実施する。
また、環境センサ92の出力に基づいて、感光体41の環境(温度・湿度)が図3の表のいずれの条件に該当するかを把握し、該当する条件の1次転写出力の値を初期値として用いてもよい。例えば、電源オン時の感光体41の環境が常温・常湿(NN)に該当する場合、1次転写出力の値を30μAに設定する。
【0061】
CPU101は、2次転写残トナー検知用の画像パターンの原稿画像を作成し、この原稿画像に基づくトナー像を感光体41に形成する制御を行う(ステップS3)。
【0062】
2次転写残トナー検知用の画像パターンは、トナー量が多いほど2次転写残トナーの検知が容易である。このため、図7Aに示すような画像全体にトナーが付着したベタ画像の画像パターン46が好ましいが、2次転写後の残トナーが検知できればどのような画像パターン(濃度)でもよい。画像形成装置によってはトナーの特性を維持するために現像部44に滞留するトナーを入れ替える目的で、定期的にベタ画像を形成して排出しているものがある。したがって、この定期的に形成されるベタ画像を2次転写残トナー検知に利用することにより、従来は排出するだけのトナーを他目的にも利用することができるので効率がよい。
また、図7Bに示すように、トナーが用紙移動方向(図7B縦方向)に連続して付着した帯状の画像パターン47でもよい。この場合、2次転写残トナー検知に使用するトナー量を節約しつつ、ベタ画像の画像パターン46と同様の検知結果を得ることができる。なお、この場合、2次転写残トナー検知部91は、帯状の画像パターン47を検知できる位置に配置する。
【0063】
CPU101は、読み出した1次転写出力の値に基づくバイアスを1次転写ローラ51に印加し、中間転写ベルト50にトナー像を転写(1次転写)する制御を行う。次に、予め設定された2次転写出力の値に基づくバイアスを2次転写対向ローラ72に印加し、用紙Sにトナー像を転写(2次転写)する制御を行う(ステップS4)。
【0064】
ここで、2次転写残トナー検知部91が2次転写後の2次転写残トナーの検知を実施し、その内容をCPU101に通知する(ステップS5)。
【0065】
ステップS5の判断処理において1次転写後に帯電ムラが発生している場合、中間転写ベルト50上の2次転写残トナーは、中間転写ベルト50の幅方向に筋状のトナーの濃度差として現れる。したがって、2次転写残トナー検知部91が出力する信号の波形は、その濃度差に応じて変動する。2次転写残トナー検知部91が出力する信号の波形の変動によって帯電ムラの有無を判定する。
【0066】
図8は、2次転写残トナー検知部91から出力される信号の波形と閾値の例を示すグラフである。
本実施形態では、一例として2次転写残トナー検知部91に反射型光センサを用いている。反射型光センサでは、受光素子が受光光量を電気信号に変換して出力する。したがって、反射型光センサの受光素子は、2次転写残トナーが少ない部分については信号91outの出力が高く、2次転写残トナーが多く存在する部分については中間転写ベルト50からの反射光が弱いため信号91outの出力が低くなる。そこで、CPU101は、信号91outの出力の極小値が閾値91th以上であれば1次転写後の帯電ムラなし、信号91outの出力の極小値が閾値91th未満であれば帯電ムラありと判定する。
【0067】
なお、2次転写残トナー検知部91に透過型光センサを用いた場合でも同様である。また、本実施形態では、信号91outの出力の極小値(歪み)と閾値91thを比較して帯電ムラの有無を判定しているが、この例に限られない。例えば、2次転写残トナーのトナー量にムラがない場合の理想的な信号波形に対して、信号波形の歪み部分の面積が何パーセントに相当するかによって、帯電ムラの有無を判定してもよい。
【0068】
CPU101は、2次転写残トナー検知部91が出力する信号の波形から帯電ムラの有無を判定する(ステップS6)。
【0069】
ステップS6の判定処理において帯電ムラありと判定した場合は、1次転写出力の値が大きくなるよう設定する(ステップS7)。そして、ステップS3の処理へ移行して2次転写残トナーの検知処理を再度実施する。ここで、1次転写出力の値をどのくらい大きく設定するか、そのステップ幅については、信号波形の変動が小さくなるように、かつ逆転写を考慮して適宜決定する。好ましくは、ステップ幅は小さいほうがよい。
【0070】
ステップS6の判定処理において帯電ムラなしと判定した場合は、このときの1次転写出力の値をROM102に保存する(ステップS8)。なお、この例では、帯電ムラなしと判定したときの1次転写出力の値をROM102に保存すると説明したが、ROM102に保存せず、所定の初期値を用いて2次転写残トナーの検知処理を開始してもよい。
【0071】
上述した実施形態によれば、予め設定された1次転写出力の値を用いて2次転写残トナー検知動作を実施し、2次転写残トナーのトナー量のムラが検知されて帯電ムラありと判定した場合には、1次転写出力の値が大きくなるよう変更する。そして、変更後の1次転写出力の値を用いて2次転写残トナー検知動作を繰り返すことにより、2次転写残トナーのトナー量のムラが発生しない最小の1次転写出力の値を決定することができる。
したがって、感光体と中間転写ベルト間に発生する放電を抑え、感光体から中間転写体に転写されるトナー像の帯電ムラを防ぐことができる。それにより、用紙に転写されるトナー像の濃度ムラを低減できる。
【0072】
<2.変形例>
図9は、本発明の第1の実施形態の変形例を示す説明図である。
2次転写残トナー検知動作時において、必ずしも画像パターンを用紙に転写する必要はない。例えば、図9に示すように、中間転写ベルト50上のトナー像を2次転写ローラ71に転写してもよい。2次転写ローラ71に転写する場合でも、1次転写時に帯電ムラがあれば中間転写ベルト50上に2次転写残トナー75のトナー量にムラが発生するので、これを検出することにより1次転写時の帯電ムラの有無を判定できる。なお、2次転写ローラ71に転写されたトナー像74は、2次転写ローラ71に設けられたクリーニング部76によって除去される。
【0073】
なお、上述した第1の実施形態では、2次転写残トナー検知部として光センサを用いたが、IDCセンサを用いてもよい。IDCセンサにより2次転写残トナーの濃度を検出し、その検出結果から1次転写時の帯電ムラを判定してもよい。この場合、IDCセンサに対応した位置にパッチ等の画像パターンを作成すればよい。
【0074】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0075】
以上、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
1…画像形成装置、 10…原稿搬送部、 11…原稿給紙台、 12…ローラ、 13…原稿台、 20…用紙収納部、 21…給紙部、 22…手差部、 23…搬送部、 24…切換ゲート、 25…排紙ローラ、 26…用紙反転搬送部、 27…再給紙路、 30…画像読取部、 40…画像形成部、 41…感光体、 42…帯電部、 43…露光部、 44…現像部、 44−1…現像ローラ、 45…クリーニング部、 50…中間転写ベルト、 51…1次転写部、 70…2次転写部、 71…2次転写ローラ(転写ローラ)、 72…2次転写対向ローラ、 73…転写前搬送ローラ、 76…クリーニング部、 91…2次転写残トナー検知部、92…環境センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される感光体と、
1次転写出力に基づいて前記感光体上に形成されたトナー像を転写する1次転写部と、
前記1次転写部によって、前記感光体上のトナー像が転写される中間転写体と、
2次転写出力に基づいて前記中間転写体上に転写されたトナー像を転写する2次転写部と、
前記2次転写部による転写後、前記中間転写体上に残ったトナーのトナー量のムラを検知する2次転写残トナー検知部と、
前記2次転写残トナー検知部からの出力に基づいて、前記感光体上に形成されたトナー像を転写する際に発生する帯電ムラの有無を判定し、前記1次転写出力の値を設定する制御を行う制御部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記帯電ムラが発生したと判定した場合、前記1次転写出力の値を大きくする
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記中間転写体の移動方向に沿って設けられた複数の感光体と、
前記感光体ごとに設けられた1次転写部を備え、
前記制御部は、前記中間転写体の移動方向最下流に配置された前記1次転写部の1次転写出力の値を設定する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記中間転写体の移動方向最下流に配置された感光体上に形成されるトナー像の色はブラックであること
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
少なくとも湿度を測定できる環境センサ、をさらに備え、
前記制御部は、前記環境センサで測定された湿度に応じて前記1次転写出力の値を設定する
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記環境センサはさらに温度を測定し、前記制御部は、前記環境センサで測定された湿度及び温度に応じて1次転写出力の値を設定する
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
1次転写部が1次転写出力に基づいて感光体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する工程と、
2次転写部が2次転写出力に基づいて前記中間転写体上に転写されたトナー像を転写する工程と、
前記2次転写部による転写後、2次転写残トナー検知部により前記中間転写体上に残ったトナーのトナー量のムラを検知する工程と、
前記2次転写残トナー検知部からの出力に基づいて、前記感光体上に形成されたトナー像を転写する際に発生する帯電ムラの有無を判定し、前記1次転写出力の値を設定する工程と、
を含む画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−104978(P2013−104978A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247961(P2011−247961)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】