説明

画像形成装置

【課題】 画像形成装置の初期設定時またはメンテナンス時に、担当エンジニアにかかる負担を増加させることなく通信環境データの設定ミスの有無を把握することを可能にする。
【解決手段】 通信部と、操作部と、前記操作部を介して入力された指示に応じて画像形成を行うとともにその稼動状況を所定の宛先へ通知する通常モードの処理と、該通常モードの処理を実行することを可能にするデータを前記操作部を介して設定させるエンジニアリングモードの処理と、を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記エンジニアリングモードの処理を行っている状況下で、前記宛先との通信を可能にするための通信環境データの設定が為され、かつ、前記通常モードへの切替を指示された場合に、前記通信部によって前記宛先との通信を試み、その通信が成功した場合に、前記通常モードへの切替を実行することを特徴とする画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像形成装置の初期設置およびメンテナンスを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置によって印刷用紙などの記録材上に形成される画像の品質(以下、画像品質)を一定に保つためには、定期的にその画像形成装置のメンテナンスを行うことが必要である。このようなメンテナンスは、メンテナンス対象の画像形成装置が設置されている顧客の事業所などへ担当エンジニアが出張して行われることが一般的である。しかしながら、このようなメンテナンス形態では、交通費や宿泊費などの費用(以下、メンテナンスコスト)が必要になってしまう場合がある。このため、近年では、メンテナンスコストを削減するために、通信回線を介して画像形成装置に接続された監視装置を用いてその画像形成装置の稼動状況を把握したり、故障が発生した場合にはその監視装置を用いて通信回線経由で復旧作業を行ったりすること(以下、「遠隔メンテナンス」)が行われるようになってきている。
【0003】
上述の如き遠隔メンテナンスを行うためには、通信回線を介して監視装置に接続された画像形成装置に、その稼動状況を表すデータ(以下、稼動状況データ)を適宜その監視装置へ送信させる必要がある。しかしながら、画像形成装置の初期設置時やメンテナンス時に、例えば、監視装置に割り当てられている通信アドレスやその監視装置との間の通信経路を表すデータなどその監視装置との通信を可能にするデータ(以下、通信環境データ)が誤って設定されるなどの設定ミスがあると、本来送信されてくるべき稼動状況データが送信されてこなかったり、逆に、稼動状況データの送信を行う必要がない画像形成装置(例えば、遠隔メンテナンスについての契約を結んでいない顧客の利用する画像形成装置)から上記稼動状況データが送信されてくるなどの不具合が起こり得る。このため、画像形成装置の初期設置時やメンテナンス時に、上記通信環境データの設定ミスの有無を容易に把握できるようにすることが望まれており、このようなことを可能にする技術の一例としては、特許文献1に開示された技術が挙げられる。この特許文献1には、遠隔メンテナンスの対象である画像形成装置の初期設置時に、その画像形成装置に設定した各種データ(通信環境データを含む)を担当エンジニアにファクシミリなどによって監視装置の設置された監視センタへ送信させ、それら各種データをOCRなどによって読み取り設定ミスの有無をコンピュータ装置に自動判別させることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−175128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像形成装置に設定した各種データを一々ファクシミリなどにより監視センタへ送信することは煩わしい作業であり、担当エンジニアにかかる負担を増加させてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、画像形成装置の初期設定時またはメンテナンス時に、担当エンジニアにかかる負担を増加させることなく通信環境データの設定ミスの有無を把握することを可能にする技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、通信部と、操作部と、前記操作部を介して入力された指示に応じて画像形成を行うとともにその稼動状況を所定の宛先へ通知する通常モードの処理と、該通常モードの処理を実行することを可能にするデータを前記操作部を介して設定させるエンジニアリングモードの処理と、を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記エンジニアリングモードの処理を行っている状況下で、前記宛先との通信を可能にするための通信環境データの設定が為され、かつ、前記通常モードへの切替を指示された場合に、前記通信部によって前記宛先との通信を試み、その通信が成功した場合にのみ、前記通常モードへの切替を実行することを特徴とする画像形成装置を提供する。このような画像形成装置によれば、上記通信環境データの設定にミスがあった場合には、通常モードへの切替を指示されても、エンジニアリングモードの処理が継続して実行される。
【0007】
より好ましい態様においては、前記通信部による前記宛先との通信が失敗した場合に、前記稼動状況を前記宛先へ通知しないように設定し直すことを促す旨の報知を行う報知部を更に備えることを特徴とする。このような態様にあっては、上記画像形成装置に対して上記宛先へ稼動状況の通知を行うことを可能にする設定を行う必要があったか否かを、係る設定を行った担当エンジニアに再確認させることが可能になるといった効果を奏する。
【0008】
また、別の好ましい態様においては、記憶部を備え、前記制御部は、前記エンジニアリングモードの処理を実行している場合には、前記操作部を介して入力されたデータを前記記憶部へ書き込む一方、前記通常モードの処理を実行している状況下で、その稼動状況を前記通信部により前記宛先へ通知した後に、稼動状況の通知を行わないように設定を変更する旨の指示が前記宛先から返信されてきた場合には、前記記憶部に記憶されているデータを該指示に応じて更新することを特徴とする。このような態様にあっては、遠隔メンテナンス契約が終了したことに起因して稼動状況の通知を行う必要がなくなった場合に、稼動状況の通知を行わないように設定を変更する旨の指示が上記宛先から送信され、この指示に応じて上記記憶部の記憶内容が更新される。これにより、稼動状況を通知する必要がなくなった画像形成装置について、メンテナンス時にその設定を手動で変更する必要がなくなるといった効果を奏する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置の初期設置時またはメンテナンス時に、通信環境データの設定ミスがあるか否かを担当エンジニアに容易に把握させることが可能になる、といった効果を奏する。また、本発明によれば、上記初期設置時またはメンテナンス時に上記担当エンジニアは設定作業以外の作業を行う必要がないため、その担当エンジニアに係る負担を増加させることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する際の最良の形態について説明する。
(A:構成)
(A−1:システム全体構成)
図1は、本発明の1実施形態に係る通信システム10の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、この通信システム10は、画像形成装置100と、ファイヤウォール(以下、「FW」)200とインターネットなどの通信回線300とを介して画像形成装置100に接続された監視装置400とを含んでいる。なお、図1では1つの画像形成装置が例示されているが、複数の画像形成装置が含まれているとしても勿論良い。
【0011】
図1の画像形成装置100は、例えば、スキャナ機能とプリンタ機能とを備えた複合機であり、通常モードの処理と、エンジニアリングモードの処理と、の何れかの処理を実行するものである。ここで、通常モードの処理とは、印刷用紙などの記録材上に形成された画像を上記スキャナ機能によって読み取りその画像に応じた画像データを記憶する処理や、上記プリンタ機能によって記録材上に画像を形成して出力する処理である。なお、詳細については後述するが、通常モードの処理を実行している状態、または、通常モードの処理の実行を指示する旨の入力を待ち受けている状態の画像形成装置100は、その稼動状況を表わす稼動状況データを書き込んだポーリング信号を定期的に監視装置400へ送信することができる。これに対して、エンジニアリングモードの処理とは、例えば画像形成装置100の初期設置時に実行される処理であり、上記通常モードの処理を実行することを可能にする各種データを担当エンジニアに設定させるための処理である。このエンジニアリングモードにて設定されるデータの一例としては、監視装置400との通信を可能にする通信環境データが挙げられる。本実施形態では、上記エンジニアリグモードにて、監視装置400に割り当てられている通信アドレスが上記通信環境データとして設定される。なお、本実施形態では、監視装置に割り当てられている通信アドレス(すなわち、稼動状況を通知する際の宛先を表すデータ)を上記通信環境データとして設定する場合について説明するが、画像形成装置に割り当てられている通信アドレスやサブネットマスクを表すデータなどを含んでいても良く、また、画像形成装置と監視装置との間に介在するネットワーク機器を表すデータ(すなわち、画像形成装置と監視装置との間の通信経路を特定するデータ)を含んでいても良い。要は、画像形成装置と監視装置との通信を可能にするデータであれば何れであっても良い。
【0012】
図1のFW200は、画像形成装置100と監視装置400との間の通信を中継するコンピュータ装置であり、画像形成装置100から送信されたポーリング信号を監視装置400へ転送するとともに、そのポーリング信号に対する応答信号を監視装置400から受信し、画像形成装置100へ転送するものである。このFW200は、上記ポーリング信号とそれに対する応答信号のみを中継し、他の信号が通信回線300を介して画像形成装置100宛てに送信されてきても、その信号を中継せずに遮断するようになっている。これは、画像形成装置100に記憶されているデータを盗み出したり、そのデータを改竄するなどの不正アクセスが通信回線300を介して為されることを回避するためである。なお、図1では、画像形成装置100がFW200に直接接続されている場合について例示されているが、LAN(Local Area Network)などを介してFW200に接続されているとしても勿論良い。また、本実施形態では、画像形成装置100と監視装置400とがインターネットである通信回線300を介して通信する場合について説明するが、専用線を介して通信するようにしても勿論良い。このように画像形成装置100と監視装置400とが専用線で接続されている場合には、両者の間にFW200を介在させる必要はない。何故ならば、画像形成装置100と監視装置400とが専用線で接続されている場合には、その画像形成装置100に対して通信回線経由の不正アクセスを試みることが不可能だからである。
【0013】
図1の監視装置400は、例えばパーソナルコンピュータ(以下、「PC」)であり、通信回線300を介して送信されているポーリング信号を受信するとともに、そのポーリング信号を受信したことを示す応答信号をそのポーリング信号の送信元へ返信するものである。例えば、上記ポーリング信号に上述した稼動状況データが書き込まれている場合には、監視装置400は、その稼動状況データをポーリング信号から読み出して記憶するとともに、その稼動状況データを液晶ディスプレイなどの表示装置(図示省略)に表示させる。これにより、上記稼動状況データの送信元である相手装置の稼動状況の監視が可能になる。
【0014】
図1に示す通信システム10においては、画像形成装置100は、上記エンジニアリングモードの処理を終了し、通常モードの処理を開始することを指示する旨の操作(以下、モード切替操作)が担当エンジニアによって為されると、上記エンジニアリングモードにて担当エンジニアによって設定された通信環境データに基づいて監視装置400との通信を試み、その通信が成功した場合には、上記モードの切り換えを実行し、逆に、その通信が失敗した場合には、エンジニアリングモードの処理の実行を継続する機能を備えている。このため、例えば、監視装置400の通信アドレスを設定し忘れたり、誤った通信アドレスを設定したりするなどの設定ミスがある場合には、監視装置400との通信は必ず失敗し上記モード切り換えは行われない。つまり、エンジニアリングモードにて上記モード切替操作を行ったにも拘わらず、通常モードへの切り換えが行われないことは、上述の如き設定ミスがあることを表わしている。このように、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、通常モードへの切り換えが行われたか否かを根拠にして設定ミスがあるか否かを担当エンジニアに容易に把握させることが可能になる。以下、図面を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の構成および動作について詳細に説明する。
【0015】
(A−2:画像形成装置100の構成)
まず、図2を参照しつつ画像形成装置100の構成について説明する。
図2は、画像形成装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。この画像形成装置100は、スキャナ機能を担っている画像読取部(図示省略)やプリンタ機能を担っている画像形成部(図示省略)の他に、制御部110と、表示部120と、操作部130と、通信部140と、記憶部150と、これら構成要素間のデータ授受を仲介するバス160とを備えている。
【0016】
図2の制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部150に格納されているソフトウェアにしたがって、画像形成装置100の各部を制御し本発明に係る画像形成装置100に特有な機能を実現するものである。表示部120は、例えば液晶ディスプレイとその駆動回路であり、バス160を介して引き渡された画像データに応じた画像を表示するものである。この表示部120に表示される画像の一例としては、上記エンジニアリングモードにて、上述した通信環境データの設定を担当エンジニアに促す画面(以下、データ設定画面)の画像が挙げられる。
【0017】
操作部130は、例えばテンキーなどの操作子(図示省略)を備えており、その操作子の操作内容に応じたデータ(以下、操作内容データ)をバス160を介して制御部110へ引き渡すものである。この操作部130は、上記エンジニアリングモードの処理を実行する旨の指示や、上記通信環境データ、上記エンジニアリングモードから通常モードへの切り換え指示を担当エンジニアに入力させるものである。また、上記通常モードで稼動している状況下では、画像形成装置100のユーザは、画像読取指示や画像形成指示などを上記操作子を適宜操作し入力することができる。
【0018】
通信部140は、FW200に接続されており、FW200や通信回線300を介して監視装置400と通信するためのものである。記憶部150は、図2に示すように揮発性記憶部150aと不揮発性記憶部150bとを含んでいる。揮発性記憶部150aは、例えばRAM(Random Access Memory)であり、各種ソフトウェアにしたがって作動している制御部110によってワークエリアとして利用される。一方、不揮発性記憶部150bは、例えばハードディスクであり、上記画像読取部によって読み取った画像データを記憶したり、通信部140を介して受信したデータを記憶したりするものである。また、この不揮発性記憶部150bには、制御部110に上述したエンジニアリングモードや通常稼働モードの処理を実行させるための制御ソフトウェアが格納されている。以下、この制御ソフトウェアにしたがって作動している制御部110が行う処理について説明する。
【0019】
画像形成装置100の電源(図示省略)が投入されると、制御部110は、上記制御ソフトウェアを不揮発性記憶部150bから読み出し、これを実行する。この制御ソフトウェアにしたがって作動している制御部110は、操作部130を介して指示されたモード(すなわち、通常モードとエンジニアリングモードとの何れか)に応じた処理を行うことができる。これら2つのモードのうち、通常モードの処理(例えば、操作部130を介して入力された指示に応じて画像読取や画像形成を行う処理や、稼動状況を監視装置400へ通知する処理)については、従来の画像形成装置が行う処理と何ら変わるところがないため、説明を省略する。以下では、エンジニアリングモードの処理について詳細に説明する。
【0020】
上記エンジニアリングモードの処理を実行している制御部110には、以下に述べる4つの機能が付与される。まず、第1に、上記データ設定画面を表示部120に表示させる画面表示機能である。第2に、操作部130から引き渡された操作内容データを解析し、担当エンジニアによって行われた操作が“通信環境データの入力”であるか、それとも、“モード切替指示”であるのかを判定する操作内容判定機能である。第3に、上記操作内容判定機能により“通信環境データの入力”が為されたと判定した場合に、上記操作内容データからその通信環境データを抽出し揮発性記憶部150aへ書き込み記憶するデータ記憶機能である。そして、第4に、上記操作内容判定機能により“モード切替指示”が入力されたと判定した場合に、上記データ記憶機能にて揮発性記憶部150aに記憶された通信環境データの表す宛先との通信を試み、その通信が成功した場合には、その通信環境データを不揮発性記憶部150bへ書き込むとともにモード切替を実行し、逆に、その通信が失敗した場合には、エンジニアリングモードの処理を継続して実行するモード切替制御機能である。
【0021】
このような構成としたため、本実施形態に係る画像形成装置100によれば、エンジニアリングモードにて通信環境データの入力ミスがあった場合には、通常モードへの切替を指示してもその切替が行われないので、係る入力ミスがあることを担当エンジニアに容易に把握させることが可能になる。
【0022】
(B:動作)
以下、本実施形態に係る画像形成装置100が行う動作のうち、その特徴を顕著に示す動作について図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する動作例では、画像形成装置100の初期設置時に、監視装置400との通信を可能にするための通信環境データを設定する場合について説明する。そして、以下に説明する動作例では、画像形成装置100の制御部110は上記制御ソフトウェアにしたがって作動しているものとする。
【0023】
図3は、上記制御ソフトウェアにしたがってエンジニアリングモードの処理を実行している制御部110が行う制御動作の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、制御部110は、まず、通信環境データを担当エンジニアに設定させるためのデータ設定画面を表示部120に表示させる(ステップSA1)。より詳細に説明すると、制御部110は、上記データ設定画面の画像に応じた画像データを表示部120へ供給し、その画像データに応じた画像を表示させる。なお、本実施形態では、画像形成装置100の初期設置時に制御部100が行う制御動作の流れについて説明するが、その画像形成装置100の定期メンテナンス時などには、まず、不揮発性記憶部150bに格納されている通信環境データを読み出し、その通信環境データを書き込んだデータ設定画面を表示させるようにすれば良い。このようにすることにより、既に設定済みの通信環境データを書き換えることが可能になる。
【0024】
上記データ設定画面を視認した担当エンジニアは、操作部130に設けられている操作子を操作し、監視装置400や画像形成装置100に割り当てられている通信アドレスなどの通信環境データや、エンジニアリングモードの処理を終了し通常モードの処理の実行を開始する旨のモード切替指示を入力することができる。一方、制御部110は、上記操作子の操作内容に応じた操作内容データを操作部130から取得し(ステップSA2)、その操作内容データを解析して、“通信環境データ”と“モード切替指示”との何れが入力されたのかを判定する(ステップSA3)。例えば、操作部130に設けられている操作子の1つに上記モード切替指示を入力する機能を割り当てられている場合には、制御部110は、その操作子が押下されたことを示すデータが上記操作内容データに含まれている場合に、“モード切替指示”が入力されたと判定し、テンキーが押下されたことを示すデータが上記操作内容データに含まれていた場合には、“通信環境データ”が入力されたと判定する。
【0025】
上記ステップSA3にて、“通信環境データ”の入力が為されたと判定した場合には、制御部110は、ステップSA2にて取得した操作内容データからその通信環境データを抽出し揮発性記憶部150aへ書き込み(ステップSA4)、ステップSA2以降の処理を再度実行する。これに対して、上記ステップSA3にて、“モード切替指示”の入力が為されたと判定した場合には、制御部110は、揮発性記憶部150aに記憶されている通信環境データの示す宛先へポーリング信号を送信し、そのポーリング信号に対する応答信号が返信されてくることを待ち受ける(ステップSA5)。そして、制御部110は、予め定められたタイムアウト時間が経過するまでに、上記応答信号が返信されてきたか否かに基づいて、上記通信環境データの示す宛先との通信が成功したか否かを判定する(ステップSA6)。具体的には、上記タイムアウト時間が経過するまでに上記応答信号が返信されてきた場合には、制御部110は、上記通信が成功した、と判定し、逆に、上記タイムアウト時間が経過しても上記応答信号が返信されてこない場合には、制御部110は、上記通信は失敗した、と判定する。
【0026】
そして、ステップSA6の判定結果が“Yes”である場合(すなわち、上記通信が成功したと判定した場合)は、制御部110は、揮発性記憶部150aに書き込まれている通信環境データを不揮発性記憶部150bへ書き込んだ後に、通常モードへモード切替を行う(ステップSA7)。逆にステップSA6の判定結果が“No”である場合には、制御部110は、ステップSA2以降の処理を実行し、エンジニアリングモードの処理を継続する。
【0027】
(C.変形)
以上、本発明の1実施形態について説明したが、以下に述べるような変形を加えても良いことは勿論である。
(C−1:変形例1)
上述した実施形態では、エンジニアリングモードにて通信環境データの入力ミスなどの設定ミスがあった場合には、通常モードへの切替指示が為されてもその切替を行わないようにすることで、何らかの設定ミスがあったことを担当エンジニアに把握させる場合について説明した。しかしながら、エンジニアリングモードの処理を継続する際に、監視装置400による監視を行わないように設定を行うか否かを問い合わせるメッセージを表示させるようにしても良い。これは、監視装置400による監視を要せず通信回線に接続されていない画像形成装置に対して、監視装置400の通信アドレスを設定するなどの無用な設定が行われた場合に、その旨を担当エンジニアに把握させるためである。このように通信回線に接続されていない画像形成装置については、例え正しく監視装置400の通信アドレスを設定したとしても、その監視装置400との通信は必ず失敗するので、上記無用な設定が為されたことを担当エンジニアに容易に把握させることが可能になる。また、上述した実施形態では、エンジニアリングモードにて通信環境データの設定が為される場合について説明したが、係る通信環境データの設定は必ずしも必須ではないため、係る通信環境データの設定が為され、かつ、モード切替を指示された場合にその通信環境データの示す宛先との通信を試みるようにしても良い。そして、通信環境データの設定が為されることなくモード切替指示が為された場合には、上記メッセージを表示させ、監視装置400による稼動状況の監視の有無を問い合わせるようにすれば良い。
【0028】
(C−2:変形例2)
上述した実施形態では、エンジニアリングモードにて担当エンジニアに入力させるデータの一例として、監視装置400との通信を可能にするための通信環境データについて説明した。このような通信環境データは、画像形成装置100の稼動状況の監視を監視装置400に行わせる際に必須のデータであるが、係る通信環境データ以外のデータについても上記エンジニアリングモードにて設定するとしても勿論良い。また、監視装置400との通信に必須なデータ以外の付加データについては、画像形成装置100毎に予め監視装置400に記憶させておき、上記ポーリング信号に対する応答信号に書き込んで返信するようにしても良い。このようにすると、画像形成装置100では上記応答信号に書き込まれている付加データをその応答信号から読み出して記憶することが可能になり、その付加データについての設定ミスを確実に回避することが可能になる。
【0029】
また、上記付加データに監視装置400にアクセスするための認証データ(例えば、所定の認証機関によって発行された電子証明書データなど)を含めておき、上記稼動状況の通知を行う際には、稼動状況データとともに上記認証データを画像形成装置に送信させるとともに、上記認証データとともに稼動状況データが送信されてことなかった場合には、その稼動状況データに基づく稼動監視を監視装置に行わせないようにしても良い。このようにすると、上記認証データを用いて稼動状況の通知元の認証を行うことが可能になり、監視装置に対する不正アクセスを防御することが可能になるといった効果を奏する。
【0030】
(C−3:変形例3)
上述した実施形態では、画像形成装置100の初期設置時またはメンテナンス時の設定ミスを回避する手法について説明した。しかしながら、稼働状況の監視を行うべき画像形成装置100の通信アドレスが格納されたデータベースを監視装置400に設け、画像形成装置100のユーザと監視装置400を運用している事業者との間で結ばれている遠隔メンテナンス契約の終了などに起因して、その画像形成装置100の通信アドレスが上記データベースから消去されるなどした場合には、その画像形成装置100から送信されてきたポーリング信号に対する応答信号に通信環境データを消去し設定を変更する旨の指示を書き込んで監視装置400に送信させるようにしても良い。なお、監視装置400に、稼動状況データをその受信順に記憶するキューを設け、監視装置400にかかっている処理負荷に応じてそのキューから稼動状況データを読み出すタイミングを適宜調整させるようにしても勿論良い。
【0031】
また、稼動状況の監視を行うべき画像形成装置の通信アドレスが格納されたデータベースを監視装置400に設けておく場合には、このデータベースに格納されている通信アドレス以外の通信アドレスを割り当てられた画像形成装置からポーリング信号が送信されてきても、応答信号を監視装置400に返信させないようにしても良い。このようにすると、稼動状況の監視を行う必要がない画像形成装置に対して、監視装置400の通信アドレスを設定するなどの無用な設定が初期設置時に為された場合であっても、このような画像形成装置に対しては応答信号が送信されてこないため、通常モードへのモード切替が行われず、無用な設定が為されたことを担当エンジニアに把握させることが可能になるといった効果を奏する。なお、本変形例では、監視装置400に上記データベースを設ける場合について説明したが、上記データベースを有するデータベースサーバと監視装置400とをLANなどにより接続し、そのデータベースサーバを介して監視装置400に上記データベースの格納内容を参照させるようにしても良い。
【0032】
(C−4:変形例4)
上述した実施形態では、本発明に係る画像形成装置に特有な4つの機能をソフトウェアモジュールで実現する場合について説明したが、係る4つの機能を担っているハードウェアモジュールを組み合わせて本発明に係る画像形成装置を構成するとしても良いことは勿論である。
【0033】
また、上述した実施形態では、本発明に係る画像形成装置に特有な機能を制御部110に実現させるためのソフトウェアをその端末装置の記憶部に予め記憶させておく場合について説明した。しかしながら、例えばCD−ROM(Compact Disk- Read Only Memory)やDVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータ装置読み取り可能な記録媒体に、上記ソフトウェアを記録しておき、制御部を有する一般的な画像形成装置に係る記録媒体を用いて上記ソフトウェアをインストールするとしても良いことは勿論である。このようにすると、制御部を有する一般的な画像形成装置を本発明に係る画像形成装置として機能させることが可能になるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の1実施形態に係る画像形成装置100を含む通信システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】同画像形成装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】同画像形成装置100の制御部110が行うエンジニアリングモードの動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10…通信システム、100…画像形成装置、110…制御部、120…表示部、130…操作部、140…通信部、150…記憶部、150a…揮発性記憶部、150b…不揮発性記憶部、160…バス、200…FW、300…通信回線、400…監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部と、
操作部と、
前記操作部を介して入力された指示に応じて画像形成を行うとともにその稼動状況を所定の宛先へ通知する通常モードの処理と、該通常モードの処理を実行することを可能にするデータを前記操作部を介して設定させるエンジニアリングモードの処理と、を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記エンジニアリングモードの処理を行っている状況下で、前記宛先との通信を可能にするための通信環境データの設定が為され、かつ、前記通常モードへの切替を指示された場合に、前記通信部によって前記宛先との通信を試み、その通信が成功した場合に、前記通常モードへの切替を実行する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記通信部による前記宛先との通信が失敗した場合に、前記稼動状況を前記宛先へ通知しないように設定し直すことを促す旨の報知を行う報知部を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
記憶部を備え、
前記制御部は、
前記エンジニアリングモードの処理を実行している場合には、前記操作部を介して入力されたデータを前記記憶部へ書き込む一方、
前記通常モードの処理を実行している状況下で、その稼動状況を前記通信部により前記宛先へ通知した後に、稼動状況の通知を行わないように設定を変更する旨の指示が前記宛先から返信されてきた場合には、前記記憶部に記憶されているデータを該指示に応じて更新する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−88479(P2006−88479A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275888(P2004−275888)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】